○
橋本参考人 私は、
道路公害反対運動
全国連絡会、通称
道路全国連と言うんですけれ
ども、事務局長をしております
橋本と申します。
かつて、
道路公団民営化のときに仙台で行われた
地方公聴会でも、私、
参考人に呼ばれたことがあります。とりわけ、今度の
一般財源化ということは、私、資料を皆さんにお配りしていますが、
特定財源、
道路しか特定目的を持たない
財源ということは、長い間
日本でずっとやられてきましたけれ
ども、現在においては、
財政は逼迫化しているし、そして
地方の
財政な
ども大変な中で、もちろん
国家財政もそうですけれ
ども、そういう中で
一般財源化するということは、私たちも、
国民も大変望んできたことでありますので、これについては、私も大変賛成ですし、我々
全国連としても、この声明に出したように、これを求めていたという経緯がございます。
そして、きょう私が申し上げたいのは、やはり現場で、実際に
道路建設が行われている、そういう沿線住民が、自分の望む望まないにかかわらず、
建設問題が頭から急に降ってきて発表されるという中で、特に都市部の住民が大変困っているという
状況がある、このことを私はちょっと申し上げたいと思います。
そして、この
全国連ですけれ
ども、何でこんな、
道路公害反対運動なんて、何か非常に化石のような名前がついているというふうに思われるんですが、実は、この連絡会は、一九七五年に名古屋で第一回の交流集会をやったときから活動しているんです。我々の先輩たちがこういうことをやられた時期というのが、やはり
日本の中に大変大きな、いろいろな公害問題が発生し、車であれば、排気ガスからの大気汚染や振動等について悩まされた時期にあったということで、こういう名前をつけて運動をしたんだなということで、あだやおろそかにこの名前を簡単に変えるということもできない、私もそういう思いでおります。
そして、皆さんも御存じかもしれませんけれ
ども、都心からわずか四十キロ足らずで、電車で一時間足らずで行くことのできる国定公園高尾山というところに、今、首都圏中央連絡
自動車道という
道路建設が進んでいます。ほぼ
高速道路ですね。
何とかこの貴重な自然、これは一昨年に、よくレストランなんかに星をつけて紹介するということで有名なフランスのタイヤメーカーのミシュラン社が
日本ガイドをつくりまして、その中で、この高尾山が、
大都市に至近な距離にあって、フランスのパリなんかでは考えられないすばらしい自然を持っている、特に
日本の植物種のおよそ四分の一、千三百二十種といいますけれ
ども、これが
日本一小さな国定公園の中に存在しているという植生の豊かさ、生物多様性の最も豊かな山として大変評価したということで、私
ども、大変うれしく思っています。
そういう山にトンネルを掘るということが現在もう既に進められているわけで、何とかこういう計画は、たとえ圏央道の是非はともかくとしても、高尾山だけは何とか避けてもらえないんだろうかということで、実は、私ごとですけれ
ども、昨年一月にあった八王子の市長選挙にも、私、じくじたる思いで立候補して、つらい思いをしたということもございます。
道路問題というのは、そういうふうに実際にいろいろなところで人の人生を大きく左右するような問題が実に起こるわけでして、私たちの先輩たちも、もう既に、長い人では、
東京外郭
環状道路の運動をされている方なんかは、実に大学院生ぐらいの二十そこそこでこの運動に引き込まれて、あえて私が引き込まれてと言うことは、自分で好んでやったのではなくてやって、四十年もたっちゃって、まだその運動から手が抜けないということでして、住民は大変つらい思いをしているというわけです。
それで、私は、もう
一つここではっきり申し上げたいのは、
地域活力基盤創造交付金のことですけれ
ども、これは、やはり今度の
道路特定財源の
一般財源化ということ、名を捨てて、そして実を、実際には
道路予算に使えるそういう
予算をきちっとつけたのではないかというふうに、私はちょっとこれについては疑問視しています。
そういう点では、先ほど
高知の町長さんがおっしゃっていましたが、私も国が北海道なんです。実に、旭川というところで生まれましたから、大学
時代まで北海道で過ごしまして、
東京に出てきました。こういう首都圏に、都心に住んでいると、車の利便性よりも、非常に公共
交通網が発達していますから我々は余り感じないんですけれ
ども、
地方の疲弊というのは大変なものでして、私も、父親がまだ九十四で頑張っていますから、心配で毎年何回か戻るんですけれ
ども、いろいろなところの小さな町に講演で呼ばれたりすると、そこの実情に本当につらい思いをします。
やはり、
道路を考えるときは、
大都市部や中核都市の
道路と、都市と都市を結ぶ
道路と、それから
地方の中山間部での、特にそういうところの
道路づくりというのは、これは明らかに違いがあるわけでして、そこはまずきちっと分けてやる必要があるということを私は申し上げたいと思います。
そして、どうしてもこれは申し上げなきゃいけないんですけれ
ども、今の
道路づくり、行政の手続の中で、例えばパブリックインボルブメントというものがあります。これは、住民との合意を求めるということで進められるということで、
国土交通省も大変このことを重視しているわけですけれ
ども、例えば、四十年間ぐらい凍結されていた
東京外郭
環状道路の
東京都内区間十六キロ部分を、都市計画を外してもう一回やり直す、そして住民との合意形成のもとにこれを進める、そして、その前提としては
道路をつくらないということも前提の中の
一つにあったんですね。
ただし、私、そういう中で、どうしても行政のやり方、
東京都も
国土交通省もそうですが、
大前提としてまず
道路建設ありきというのを先に置いちゃうものですから、これは、PI協議会というところで、住民が、沿線の住民の方もいろいろ勉強されて、どんなに一生懸命になって
発言をされても、それが生かされない。結果的には、今度の国幹
会議にももうかかるのではないかというふうな心配を地元の人がしているわけですね。
そして、そういう中で私たちは、私は先ほど申し上げた高尾山のトンネルをどうしてもやらないでほしいという思いがありましたので、二〇〇〇年の十月に、略称、高尾山天狗裁判という裁判を起こしました。実は、現在二千人に及ぶ原告で、私は原告団の事務局長も兼ねております。
これの中で、
道路の
必要性ということに関しては、これは公益性ということがあるわけですから、それをきちっと吟味するということが必要になってくるわけです。ということになると、最近国会の中でもいろいろ審議されていますけれ
ども、需要予測であるとか、それから
道路をつくった場合の費用便益ということが大変問題になってきます。
裁判の中でも、たびたび私たちが、例えば二・六とか二・九とかという高いBバイC比が出てきたときに、このBバイC比が出るに当たってのバック
データというのがあるわけですね。何も、コンピューターでぱっとやってすぐ結果が出るものじゃ決してございません。私も、もともと電子工学をやっていた
技術屋ですから、その程度のことは知っているつもりです。そして、そのバック
データの要求に対して、一切それに対してこたえないという
状況が裁判の中でもありました。現在でもその
状況が続いております。
ですから、費用便益分析マニュアルだけを見ても、どういうような前提条件で、
整備あり、なしの便益を出しているのかということがわからないような
状況になっています。
これは、私は海外の事例が必ずしも全部それがいいとは思いませんが、イギリスとかオランダなんかでやられている、情報をすべて開示して住民とのコンセンサスを得るということをきちっとやっている国、そういうやり方がやられている国では、私が今から申し上げるような、
日本全国でもう数限りない裁判に今なっているんです。
東京都内でも、きょう傍聴席にたくさんの方が来られていますけれ
ども、そういう当事者の方がきょうは多いんです。
そういうような
道路建設というときに、本当にやはり大事になるのは、コンセンサスを得るということなんです。そのコンセンサスを得れば、裁判なんということのそういう修羅場にならないというふうに私は思います。何と、
国土交通省のやり方、行政の手続というのは、余りにもまだ強引だ。
例えば、去年も国交
委員会のところで、私たちの仲間である小井修一さんというのが
参考人として出られたと思うんです。そのときに、奈良の平城宮という、
日本にも世界にも誇るような大変すばらしい木簡がある、そういうところを地下でもって通すという京奈和
道路という
道路が進められていると。これは高尾山も同じなんです。そういうところもパブリックインボルブメントというのでやっているけれ
ども、ここは、私が聞く範囲では、
東京外郭
環状道路のパブリックインボルブメントよりももっと形骸化しているというふうに聞いております。
私は、アセスメントのやり方、説明会のやり方、そして公聴会の持ち方等々もすべてそうですが、全部そういう点では、これはやりさえすればいいという今の
国土交通省の体質をやはりきちっと変えてもらいたいというふうに思います。そういうことさえきちっとやれば、私たちのようなこういうある
意味では不幸な裁判ということにはならないというふうに僕は思います。
そして、海外の事例をあえて言うわけじゃありませんけれ
ども、それは結果的には、一度決定して、みんなで合意したら、
建設までの期間がもう本当に早いんです。ですから、
アクアラインみたいに一メートル一億円もかかるなんということをやらなくても、M25をつくったあのロンドン、片側四車線のああいう
高速道路でさえも、わずか五千億もかからないでできている。圏央道は、一メートルで六千万、七千万の
お金がかかるという、それも期間が二十年も三十年もかかる。計画をしたのがもう三十年前、それで今でもまだ計画も終わらないし、ものの二〇%程度しか開通しないということでは、私はこういう基盤
整備ではやはりまずいだろうというふうに思います。
最後に申し上げたいのは、いろいろあるんですけれ
ども、もともとやはりこういうことを進めていくためには、将来の
日本のグランドデザインという、
日本の国に
国民が安心して生活ができて、平和な
日本ということをみんなだれもが望んでいる。そして、都会の
人間だけじゃなくて、北海道にいる人も
高知の人も沖縄の人も、みんな安心できるということ。
そして、それは、やはり大事なことは、めり張りをつけて、きちっと、
道路づくりであれば
道路をつくる、都市部であれば公共
交通網というものがやはり発達しているんですから、これ以上、
渋滞緩和をするという目的のために、本当に三つの
環状道路が必要なんだろうかということを、もうちょっと立ちどまって考え直すことも必要なんじゃないだろうかというふうに思うわけです。
そして、そういうことを
議論するときに、私は、ある先輩の、尊敬するジャーナリストの方の言葉をちょっと
最後に引用させてもらいますけれ
ども、その方は圏央道の公聴会のときにこういうふうにおっしゃいました。これは、ジャーナリストはジャーナリスト、医者は医者、弁護士は弁護士、裁判官は裁判官、政治家は政治家として、
国家公務員は
国家公務員として、自分の良心に従ってきちっと仕事をするということが最も大切なことなんだと。
私の今申し上げたことを、私も自戒の念を込めて申し上げましたけれ
ども、ぜひともこれからの
道路づくりや法案のつくり方に生かしてい
ただけないかというふうに思いまして、そういうことで私の
意見の公述を終わらせてい
ただきます。
ありがとうございました。(拍手)