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福島委員 今の日本の政治に課せられた最大の
課題は、この
経済危機からいかに早く脱出をするかということが
一つ。そしてまた、
経済危機を脱すると同時に、その後財政再建をいかに図るのか、この
課題であるというふうに思っております。そうした一連の流れの中で、安定した財源の
確保ということについて明確な道筋をつくっていく必要がある、このように思っております。
また、
年金再計算について、再度お聞きをしたいと思っております。
所得代替率、これは五〇%を維持できることが示されたというふうに思っております。
もちろん、これは
年金数理計算の話でありますから、前提の置き方によっては結論の数値は変わってくる。出生率はどうなのか、
経済成長はどうなのか、物価の上昇はどうなのか、こういったことがすべて影響するわけであります。さまざまな議論の中で、五〇%を維持するために数字をつくったのではないか、ためにするようなこういう議論もございますけれども、政府として、将来の
経済成長等の見通しについては一貫した数字を用いているわけでありまして、
年金再計算のためだけに何か数字をいじくったというふうに考えることは妥当ではないと私は思っております。
そしてまた一方で、五〇%をようやく維持するにすぎない、こういう指摘も当たっているんだろうというふうに思っております。五〇%ということで、どれだけ国民の皆様に納得していただけるか。この点については、これからの
経済成長をいかに
確保するのか、そしてまた少子化対策を通じて出生率についてどのような
改善を図っていくのか、まさに、政府を挙げて取り組まなければならない
課題、そしてまた国民を挙げて
年金の充実のために努力しなければならない、こういう
課題であろうというふうに私は思っております。
続いて、社会保障制度全般の話、
年金制度も含めましてお話をしたいと思っております。
大臣、私は今、日本の社会保障制度というものは改めて再構築をしなければならない、こういう時期に来ているというふうに思うんです。
昭和三十六年、国民皆
年金の達成。
国民年金であり、また国民健康保険であり、成立をいたしました。戦後、日本は、混乱の後に、こうした社会保障制度というものをしっかりと構築することによって、極めて安定した社会をつくってきた。私どもの先人の努力というものは極めて大きかったというふうに思っております。
そしてまた、自民党が長きにわたりまして政権を担当してきた、この理由は一体どこにあったか。国民の支持をかくも長きにわたって
確保することができた理由はどこにあったか。私はそれは、自民党の戦後政治というものが、保守政治ということもありますけれども、総中流社会というものを所得再分配を極めて上手にやることによってなし遂げてきたところに大きな理由があるのだろうというふうに思っております。
この所得再分配というのは幾つかの柱があるわけでありまして、
一つは、終身雇用、そしてまた
経済成長を通じた市場
経済の中での所得再分配が非常にうまく機能していたと思うんです。そして二つ目は、地方交付税や公共事業といったものを通して、都市から地方への所得再分配というものが極めてうまくいっていた。そして三番目が、社会保障という制度を通じて再分配が、例えば
高齢者に対しての再分配が非常にうまく機能していた、こういうことなんだろうと思います。
そしてまた、この社会保障に係る所得再分配機能というものは、戦後、高度
経済成長の中で国富はどんどんふえていきます、そういう中で、必ずしも国民に直接的に、明示的に
負担増を求めることなく給付の拡大をするということが可能であった。そしてこのことは、非常に人口構造が若かった、そのことも
一つは背景にあると思います。
ですから、五年ごとに
年金再計算が行われて
年金制度改革を行ってきた、そのときの
国会の議論というものは、給付をいかに充実するか、そして負担はいかにふやさないか、実は、せんじ詰めて言うと、その議論をずっとしてきたんだろうというふうに私は思います。現在の
年金制度が非常に世代間格差を内包している、その結果となっているのも、こうしたある意味で非常に優しい政治というものが行われてきた結果なのではないかというふうに私は思っております。
そしてまたもう
一つは、こうした社会保険制度が成立する背景として、日本の社会が極めて均質で、そしてまた国家に対しての帰属意識といいますか社会に対しての帰属意識が高い集団であったということではないかと思っております。国民健康保険にしても
国民年金にしても、かつて
高齢者の方々の、今でもそうですけれども
高齢者の方々の納付率というのは極めて高い。しかし、今やそういった条件は失われていると言わざるを得ないわけであります。こうしたことを背景として日本の社会保障制度ができてきたけれども、今我が国においてはそうした戦後の社会保障制度の発展を支えてきた諸要素というものはどうなっているのか。失われていると言わざるを得ない。
一つは、人口構造は急速に高齢化をしている。かつてのように若い人口構造ではなくなっている。
経済も低成長
経済になった。そして、国家財政というものは極度な悪化をしている。かつて私は社会保障改革の三重苦というようなことを申し上げたことがありますけれども、今までの右肩上がりの社会の中から右肩下がりと言ってもいいような社会構造になったときに、この社会保障というものをどうしていくのかということが問われているんだと思います。
この数年間、
年金制度改革や、また
介護保険制度改革、
医療保険制度改革をやってまいりました。こうした一連の改革は、決して評判がよくありません。さまざまな御批判をいただいておる。こうした改革が必要であるということについて、国民の理解が必ずしも十分に得られていないと私は思います。
それは
一つには、先ほど五年ごとの
年金改革の議論を申し上げましたけれども、給付と負担の関係ということについて、国民の理解というものは必ずしも十分に得られていない。
昨年の社会保障国民
会議そしてまた
経済財政諮問
会議で示された日本の社会保障給付に占める公費負担割合は、三十兆円を超えております。しかし、その三分の一は赤字国債で賄われているという事態、これは私は、非常に深刻な事態、そして改めなければならない事態、こういうふうになっていると思います。
そしてまた、もう
一つ指摘しておきたいことは、かつて均質な社会の中で社会保険というものが比較的よくワークしておりました。しかし、今の日本の社会は、例えば働き方でいえば、非正規雇用がふえて、そして所得格差が広がっている。そしてまた、かつて中曽根元総理が砂のような社会になってしまったということを言っておりますけれども、コミュニティーの力も弱くなっている。そういう中で、社会保険制度そのものもほころびを生じ始めている。こういう中で、私は、総合的な改革をやはりやらなければいけないと。そして、
大臣は非常に活力のある方でございますから、そうしたビジョンというものをしっかりと示していただく。
そして今、
高齢者の方々、金融資産が千五百兆ありますね、なぜ使わないか。贈与税控除枠を拡大すると使うのかと、こういう話になりますとですね。比較的、例えば大企業にお勤めであったサラリーマンの方々、所得も高くて、そして退職金もある、何千万という資産を持っております。使わないんですね。心配ですから使わない。私は、そういう資産がたくさんあると思う。もちろん大金持ちの人もいますけれども、そうではなくて、総中流社会の中で、お一人お一人が非常に勤勉に働いて貯蓄していただいた金融資産がかなりある。しかし、それは不安があるので使えない。ですから、ここのところをどう解消するのかということに向けて、社会保障制度全般にわたっての再構築という作業をしていただかなければならない。
そしてまた、今ほころびつつある社会保険については、現在の社会がかつての社会とは違う、第一次産業そして自営業が多い社会とは違うんだ、コミュニティーのしっかりした社会とは違うんだ、その中でどういう制度をつくればきちっとワークするのかということを考える。
厚生労働省の話を聞いておりますと、実はこういう制度になっておりますからこういう改革はできませんという話が多々あるわけでありますけれども、そういうことを一度総ざらえしていただいて、そして合理的な制度に改めていただく必要がある。
このように思いますが、
大臣、御見解いかがでしょうか。