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2009-04-23 第171回国会 衆議院 安全保障委員会 第6号
公式Web版
会議録情報
0
平成
二十一年四月二十三日(木曜日) 午前十時
開議
出席委員
委員長
今津
寛君
理事
江渡 聡徳君
理事
嘉数 知賢君
理事
仲村
正治
君
理事
松本
剛明君
理事
山口 壯君
理事
佐藤 茂樹君 安次富 修君 愛知 和男君 赤城 徳彦君 小野
晋也君
大塚 拓君 瓦 力君 木村 太郎君
武田
良太
君 寺田 稔君 山内 康一君 山崎 拓君
逢坂
誠二
君 神風 英男君 津村 啓介君 馬淵 澄夫君 田端 正広君
笠井
亮君 照屋
寛徳
君 西村 真悟君 …………………………………
防衛大臣政務官
武田
良太
君
参考人
(
東京大学大学院情報学環教授
)
田中
明彦
君
参考人
(
拓殖大学大学院教授
)
森本
敏君
安全保障委員会専門員
金澤 昭夫君
—————————————
委員
の異動 四月二十三日
辞任
補欠選任
長島
昭久
君
逢坂
誠二
君
赤嶺
政賢君
笠井
亮君 同日
辞任
補欠選任
逢坂
誠二
君
長島
昭久
君
笠井
亮君
赤嶺
政賢君
—————————————
本日の
会議
に付した案件
防衛省設置法等
の一部を改正する
法律案
(
内閣提出
第三一号) ————◇—————
今津寛
1
○
今津委員長
これより
会議
を開きます。
内閣提出
、
防衛省設置法等
の一部を改正する
法律案
を
議題
といたします。 これより
質疑
に入ります。 本日は、
本案審査
のため、
参考人
として、
東京大学大学院情報学環教授田中明彦
君、
拓殖大学大学院教授森本敏
君、以上二名の方々に御
出席
をいただいております。 この際、両
参考人
に
一言
ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中のところ本
委員会
に御
出席
をいただきまして、まことにありがとうございます。心からお礼を申し上げたいと思います。それぞれのお
立場
から忌憚のない御
意見
をお述べいただき、
審査
の
参考
にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。 次に、議事の順序について申し上げます。 まず、
田中参考人
、
森本参考人
の順に、お一人十分程度御
意見
をお述べいただき、その後、
委員
からの
質疑
にお答え願いたいと存じます。 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は
委員長
の許可を得ることとなっております。また、
参考人
は
委員
に対し
質疑
をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御
承知
をいただきたいと存じます。 それでは、まず
田中参考人
にお願いいたします。
田中明彦
2
○
田中参考人
東京大学
の
田中
でございます。 本日は、
安全保障委員会
にお招きいただきまして、大変名誉に存ずるとともに、感謝を申し上げます。 今回の
審議
の関連でありますが、私は、
平成
十九年十二月三日に設置されました
防衛省改革会議
の
一員
として、
防衛省改革
についてみずからの
見解
を述べるという
経験
をさせていただいております。それからまた、
国際政治
、
安全保障
について
研究者
として研究しているという
立場
でございます。
防衛省改革会議
は、御案内のとおり、
平成
二十年七月十五日に
報告書
を取りまとめまして、これに従って
防衛省
では漸次
改革
をお進めいただいているところだというふうに
承知
しております。私が申し述べることは、
防衛省改革会議
の
報告書
と関連していることは当然でございますが、あくまでも、本日申し上げることは私
個人
の
見解
、見方でございます。 ただ、そうは申しましても、この
改革会議
の
審議
に参加させていただきまして、
防衛省
で起こった
幾つ
かの
不祥事
を個別に検討した結果、
最高幹部
が
規則違反
を行い、
現場部隊
では初歩的な
ルール
さえ守られないという
状況
に深刻な憂慮を覚えました。脅威が多様化し、過去の先例のみに従っていては対処できないような複雑な
事態
が発生したときに、適時適切に対応できるかということが
大変心配
になりました。圧倒的多数の
防衛省職員
、
自衛官
がまじめに
任務
を遂行していることは間違いないというふうに思いますし、私はこれに
常々敬意
を表するものでありますが、今回の一連の
不祥事
を検討したとき、どこか全体としての
組織文化
、気風、
組織自体
の
制度設計
に問題があるのではないかと感じるようになりました。恐らく、そのような
認識
を
防衛省改革会議
の
メンバー
は共有したところが多いと私は理解しております。 そこで、
報告書
では、全体の
改革
の方向として、
三つ
の
原則
を守り、これを担保するために大胆な
組織改革
が必要であるという結論に達したわけであります。
三つ
の
原則
というのは、
規則遵守
の徹底、プロフェッショナリズムの
確立
、全体最適を目指した
任務遂行優先
型の
業務運営
の
確立
という、この
三つ
でございます。 これまで、多くの場合、学界でも、あるいは
現代社会
の議論の中でも、
文民統制
というのは
軍事実力組織
からの安全ということが強調される概念でありました。これはもちろん現在でも重要なところでございます。しかしながら、
安全保障
を確保するということが
国家
の
基本
的な
任務
であるとすると、
軍事実力組織
をいかに活用するかということもまた
文民統制
の非常に重要な観点であると思っております。 そのために、今回の
不祥事等
を検討した結果でも、いたずらに
文官
と
自衛官
を分離することがよいということではない。
お互い
が協調し、チェックし、そして切磋琢磨する
関係
が必要であるというふうに思います。前の事務次官の
事例
や、あるいは
防衛省改革会議
のときではありませんけれども、最近の
前空幕長
の
事例
というのを見ますと、これは、それぞれ分離された
組織
の中で、本来
防衛大臣
の
監督
のもとにあるべき人物が傍若無人に振る舞った、だれもとめられなかったということではないかというふうに思っております。 つまり、
防衛大臣
による
指揮監督
を十分貫徹させるということが、
軍事組織
からの安全にしても、
軍事組織
を活用した安全にしても必須であるということだと思います。それにもかかわらず、
防衛省
が省に昇格したときには、ほとんど
組織的見直し
が行われなかったというのが実情ではないかと思っております。 そこで、
防衛省改革会議
の
報告書
では、官邸の
司令塔機能強化
というものについての提言とともに、
防衛省
における
司令塔機能
の
強化
のための
組織改革
を提言したわけであります。ちなみに、これに加えて、より細かい
政策面
、
運用面
、
整備面
、
教育面
などにおける
組織改革
についても
報告書
は
指摘
をしておりますけれども、これは
防衛省
で漸次実行していると了解しております。
防衛省
の
司令塔機能強化
ということのために提言したのが、大きく言って
二つ
でございます。つまり、第一が、形骸化している
防衛参事官制度
を廃止し、
防衛大臣補佐官
を設置すべきであるということ。第二が、訓令に基づいて置かれている
防衛会議
を
法律
で明確に位置づけ、より実効的な
防衛省
の
最高審議機関
として活用すべきであるということでございます。
国民
から選出された国会によって成立した
内閣
、その
一員
である
防衛大臣
というのは、必ずしも常に
防衛
や
安全保障
問題の細部にわたって詳しいというわけではないのではないかと思います。
防衛省
といった
組織
の
あり方
についても、直ちに適切な
統制
のもとに置くのは困難である場合があるかと思います。
個人
的に信頼でき、
防衛
、
安全保障
問題や
防衛省
の
運営
に通じた
補佐官
を任用できれば、早い段階から
幹部
を
統制
しつつ、適切な
指揮監督
を行うことができるのではないかと
考え
た、これは私の
考え
でございます。
防衛参事官
は、本来はそのような
意味
で
防衛大臣
を支える
存在
として設置されたのではないかと思われますが、実質的にはそのような
機能
を果たしてきませんでした。また、
防衛参事官
が
基本的方針
について
防衛大臣
を補佐すると
防衛省設置法
で
規定
されていまして、そこで
文官
のみが
防衛参事官
になる。
文官
のみが
防衛参事官
になって、これが
局長
と兼務となるということによって、すべての
自衛官
、制服は
局長クラス
の
文官
の下位に立つ、そういう
統制関係
に事実上なったと思われます。 その結果、
自衛官組織
と
文官組織
が不必要に分離され、しかも
上下関係
に立つというようなことになったというふうに私は
分析
しております。その結果が
防衛省
・
自衛隊
全体としての
機能低下
を招き、しかも
不祥事
を生み出す土壌になったというふうに思われる面がございます。先ほど申し上げましたように、別々に分けて
上下
になって、その中は分離していますから、その中で好き放題するという
傾向
が生まれたのではないかと思います。 したがって、今回の法案で、
防衛会議メンバー
が
文官
、
自衛官双方
のトップとなり、全体として
基本的方針
の策定に関与させたということは、私は望ましい
改革
であるというふうに思っております。 ただ、往々にして、この種の
会議
は、公式化すればするほど形骸化するという危険がありますので、これを防ぐためには、
情報分析
などを含めたさまざまな問題を
議題
にして、できるだけ頻繁に
会議
を開催することが求められると思っております。 以上で、私の公述を終わります。(
拍手
)
今津寛
3
○
今津委員長
ありがとうございました。 次に、
森本参考人
にお願いいたします。
森本敏
4
○
森本参考人
本日、この
審議
に
参考人
として招致され、
田中先生
とともにこの場に
出席
できましたこと、大変名誉なことだと思います。 私
個人
について言えば、
防衛
大学校を出て
自衛隊
に入り、十五年の
勤務
を経て外務省に入り、十五年の
勤務
を経て、その後、研究所あるいは大学に籍を置いているものでありますが、
自衛隊
を離れてことしでちょうど三十年になりますので、
知識
はあるとはいえ、私がいたときの
自衛隊
と今日とでは全く
様相
が違い、必ずしも
防衛
について正しい
認識
を持っているとは自分で
考え
ておりません。しかしながら、きょうは非常によい機会でありますので、
設置法
に係る
参事官制度
の廃止と、いわゆる
防衛補佐官
の
制度
というものについて、
個人
的な
考え方
を申し述べることはもちろん、そもそもこのような問題が出てきた背景について
一言
、私見を述べてみたいと思います。 そもそも、戦後、
朝鮮戦争勃発
を契機に発足しました
警察予備隊
を源流として一九五四年にでき上がった
自衛隊
は、この半
世紀
の間、絶ゆることなく発展し成長し、今やアジアで有数の
防衛力
として
国際社会
でも広く活躍できるようになっていると思います。この間の先人あるいは
隊員
の不断の努力と
国内
の多方面にわたる支持と理解というもののおかげで、多種多様な
任務
に対応できる
精鋭部隊
が育成されるに至ったことは、
我が国
の
誇り
であると
考え
ます。
他方
、二十五万人の
自衛官
を含む二十七万人の
職員
と
近代装備
を有する
自衛隊
を
運営
するに際し、不測の
事態
あるいは
ミスマネジメント
はでき得る限り局限する必要があると
考え
ますが、
他方
において、全く
事故
のない
実力集団
などが本来ありようはずもなく、近年、
田中先生
御
指摘
のようないろいろな問題が起こり、このあってはならない
事故
が
国民
の失望を買ってきたことも事実であると
考え
ます。 今日、
実力組織
としての
自衛隊
と
国家行政組織
としての
防衛省
には、
幾つ
か重要な問題に直面していると思います。 その
一つ
は、言うまでもなく、
冷戦
後、特に九・一一以降、
国家
の
防衛
あるいは
防衛力
の
あり方
について、その
役割
、
意義
、
機能
を
国民
にわかりやすく説明できる
基本
的な
原理原則
がなかなかうまく説明できないということであり、この
国民
から見てわかりにくくなっている
防衛
の持っている
存在意義
あるいは
役割
について不透明なところが、結局のところは、
防衛予算
の
減少
を招き、
主要装備
の導入がおくれ、
隊員
の
士気
やあるいは
充足率
、あるいは
部隊
の
士気
、
規律
に一定の影響を与えるということではないかと
考え
ます。 現在、
防衛省
・
自衛隊
は新大綱をつくる作業中でありますが、その中で、
防衛力
が持つ
役割
と
任務
について
国民
にわかりやすく説得できるような論理が見つかればよいなと思っているところであります。 もう
一つ
の問題は、より本質的な問題として、この半
世紀
、
日米安保体制
とともに
我が国
の
安全保障
や
防衛
を担ってきた
我が国
の
自衛隊
が、その本来の
性格
であるいわゆる
軍隊
としての
実力集団
、
武力集団
でありつつも、領域を一歩外に出ると
国際法
で言う
軍隊
として扱われながらも、
国内法
上は、
国内
において依然として
国家行政組織
の一部であるという
扱い
を受けていることに起因するものであります。
一般国際法
上は、
軍隊
が遵守すべき
法律
というのは
国際法
で
規定
されているわけですが、それ以外に、本来、
軍隊
というのは、どこの国の
軍隊
も同じですが、その
軍事目的
のためには、余り厳しい
法的規制
を受けずに行動の自由が認められているという
性格
を持っているわけであります。しかるに、
我が国
の
自衛隊
というのは、他の
行政機関
と同様、あるいはそれに比べてはるかに厳しく法のもとで管理され、法の
規定
を守ることが精鋭なる
組織
の証拠であるかのごとき
扱い
を受けております。
一般
に
軍隊
というのは、
規定
は守るが
戦闘
に強い
集団
でなければならず、法は厳しく守るけれども
戦闘
のたびに負けるという
軍隊
は国にとって不要なものであります。しかし、兵器というのは法では動かず、
戦闘
の
様相
も法の
規定どおり
にはいかないわけで、そういう
意味
で、いわゆる
実力集団
としての
自衛隊
というものと、
国内法
で
規定
される
行政組織
としての
防衛省
というものの
相互関係
をいかに
調和
するかという、もう
一つ
の問題に今日直面しているのではないかと
考え
ます。 以上を
考え
るときに我々が特に重視すべきなのは、もちろんシビリアンコントロールの
あり方
ということでありますが、今、
田中先生
の御
指摘
のように、
防衛大臣
の
指揮監督
のもとで
文官
と
自衛官
がそれぞれのスペシャリストとしての技能を効果的に発揮して、全体として
組織
の持つ
役割
を果たしていくためには、いかなる
実効性
のある
組織
があり得るのかということは、
防衛省
や
自衛隊
が不断に検討し、それを実現していく義務を負っているというふうに
考え
ます。
実力集団
としての
自衛隊
の
機能
を最も効果的に発揮するためには、
状況
に適合する柔軟な
組織
を常に編成できるように各
級指揮官
には裁量を与えつつも、これを全体として
運営
できる
防衛省
としての
機能
がなければならないと思います。その
意味
で、現行の
防衛参事官
という
制度
は、
複雑多岐
にわたる膨大な
業務
を主管する
官房長
や
局長
に、
防衛省
の
所掌事務全般
にわたって
大臣
を補佐するという
役割
を与えているものであり、やや
実効性
に欠ける面があるということは否定できないと思います。 今日、こうした
文民統制
の
原則
に従って、
防衛省
の
主任大臣
は
文官
でなければならないわけですが、平均すると九カ月ごとに交代になってきた
防衛大臣
が複雑な
機能
を有する
国家
の
防衛
について万般の
知識
を有するとは限らず、
他方
、
防衛大臣
の
決断
は
国家
の
防衛
という極めて重要な
国家
の
基本機能
にかかわる問題であり、国の
防衛
について
決断
を誤ると国は滅び、失敗は許されないということだと思います。したがって、今まで
防衛参事官制度
という他の官庁には見られない
制度
が
存在
したのも係る理由によるものであり、これが十分
機能
しないということになりますと、その欠陥を補う
制度
を取り入れざるを得ないということになると思います。 しかし、
防衛大臣補佐官
の
新設
がそれに対する唯一の回答であるかどうか、私
個人
は必ずしも確信を持っておりません。 特に、
防衛大臣
に
補佐官
が必要ということであれば、
総理
、
官房長官
にも
防衛補佐官
が必要なのではないかと
考え
ます。ただ、この場合は、
防衛省
の
補佐官
とは異なり、
総理
、
官房長官
の
補佐官
は、現職の
統幕
の
自衛官
が兼職で
勤務
するということだってできるのではないかと
考え
ます。 さらに、
防衛大臣
には、省の
所掌事務
全体について
官房長
、各
所掌事務
については
局長
がおられますし、その他、
国際担当
の
参事官
、あるいは
衛生監
、
技術監
などもおられます。そうすると、
防衛大臣
が
防衛政務
に関して、
防衛行政
、
防衛政策
に関して見識のある者を政治任用するといっても、
防衛大臣
を補佐することのできる
人材
を
大臣
が交代するたびに探すということは容易なことではなく、
防衛省
以外の
人材
で、
複雑多岐
にわたる
防衛
の
機能
、
任務
をよく
承知
し、
大臣
を的確に補佐できる人がその都度そろうということは、なかなか難しいことなのではないかと思います。 したがって、私が
考え
る
防衛補佐官
に期待される
業務
というのは、結局のところ、
防衛大臣
の行う
政務
あるいは
行政
を
国民
、
地域社会
、メディアあるいは国外に広く知らしめ、これと連携して
国家防衛
の
あり方
について、より広範な
国内世論
、
国際世論
を醸成する
役割
を果たすということであれば、
防衛補佐官
の
役割
は少しは
機能
するのではないか、このように
考え
る次第でございます。 以上は、
防衛参事官制度
を廃止して
防衛補佐官
を
新設
するということに必ずしも否定的な
考え
を示すものではありませんが、この
制度
を最も効果的あらしめ、長期にわたってこの
制度
が
機能
するためには、さらなる知恵が必要なのではないか、かように
考え
る次第でございます。 以上でございます。(
拍手
)
今津寛
5
○
今津委員長
ありがとうございました。 以上で両
参考人
の
意見
の開陳は終わりました。
—————————————
今津寛
6
○
今津委員長
これより
参考人
に対する
質疑
に入ります。
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。
仲村正治
君。
仲村正治
7
○
仲村委員
先ほどは、両
参考人
から貴重な御
意見
をお述べいただき、本当にありがとうございました。
我が国
は、昭和二十九年に
自衛隊
ができましてから五十五年になりました。当時、
我が国
の
防衛政策
は、
専守防衛
、
文民統制
の
基本理念
でスタートしたのでありますが、この
基本理念
は今でも
我が国
の不変の
理念
だと思っております。 しかし、その後、
世界
は
冷戦構造
が崩壊しましたが、
世界各地
で
民族紛争
、
宗教的対立
、
テロ活動等
、内戦や
紛争
が頻発している状態です。
我が国
は、
専守防衛
、
文民統制
だから
世界
で何が起こっても我関せずではいられない。
世界
が平和でなければ
日本
の平和を維持することはできないという
考え方
から、
自衛隊
は、PKOの協力など、
世界
の平和を維持するための
活動
に参加するようになりました。 私は、
常々
、
安全保障政策
は
独立国家存立
の
基本
だという信念を堅持していますので、
防衛省設置法
が、
我が国
の平和と
国家国民
の安全を維持するために、その時代に合わせて
運用
できるように改正することは当然のことだと思っているところでございます。 そこで、
森本参考人
にお尋ねいたします。 今般の
海賊対処
や
弾道ミサイル対処
の例から見ても、
防衛省
・
自衛隊
には、多様な
事態
に対し、迅速かつ的確に対処できるような
組織
と
意思決定システム
の構築が求められていると
考え
ます。今般の
防衛省設置法等
の
改正案
では、
防衛大臣
の
補佐機能
の
強化
として、
防衛会議
や
防衛大臣補佐官
の
新設
などの
組織改革
を行うこととしていますが、
参考人
は、
防衛省
・
自衛隊
の
組織
はどのようにあるべきと
考え
ておりますか。
森本敏
8
○
森本参考人
防衛省
というのは
二つ
の
側面
を持っていることは、
先生
御
承知
のとおりであります。
一つ
は、
国家行政組織
として、
自衛隊
という
実力組織
を
国内
において
指揮監督
するという
機能
と、もう
一つ
は、
実力組織
である
自衛隊
を、まさにその持っておる
機能
を
最大限
に発揮できるように
運用
するという責任であります。 五十五年にわたる、当時
防衛
庁、現在
防衛省
、そして
自衛隊
の
運用
の
あり方
というのは、どちらかというと、
実力組織
としての
自衛隊
がその持っておる
機能
を
最大限
に発揮するようにということより、むしろ、
国家行政組織
として間違いなく
国家
の
機能
を発揮できるように、どのようにして
自衛隊
を統括管理すればよいのかということをメーンにして、主たる
目的
にして今まで
国家行政組織
としての
機能
が動いていたと思います。 この
二つ
の
側面
は、一見、合理的に
運営
できそうですが、実は、
性格
としては非常に矛盾をした
性格
を持っていて、
状況
に的確に迅速に判断するためには、
権限
をそれぞれの
指揮官
に委譲し、例えば
アメリカ
でいえば、
軍事作戦
については
現地
の
指揮官
に任せ、
行政組織
たる
国防総省
は、
アメリカ
の議会あるいは
アメリカ政府
全体の調整をやるという
役割
を確実に分担して、
機能
を発揮しているのではないかと思います。もともと、このようなことになったのは、
ベトナム戦争
のときに、余りに
現地司令官
の
指揮監督
に
国防省
が手を入れたために、
指揮系統
というものが非常に複雑になって難しい過ちをした過去の
経験
に倣って、そのような
制度
になったのではないかと思います。 このような教訓を我が
防衛省
及び
自衛隊
の中に取り入れた場合、現在の
防衛省
の
組織そのもの
を、
会議
を連ねて意思決定するということよりも、むしろ、いかにして
統幕長
以下の各
級指揮官
がその与えられた
権限
の中で
決断
ができるように、
部隊
が迅速に動けるようにするか、ここを
防衛省
・
自衛隊
としてどのようにして
調和
をしていくかということが、
自衛隊
の、このような
海賊
あるいは
ミサイル
といった、時間がなく、かつ、
状況
が変化をする
事態
に迅速に対応できる
組織
の
運営
の
あり方
なのではないか、かように
考え
ている次第でございます。
仲村正治
9
○
仲村委員
防衛省改革会議
の
報告書
では、
文官
と
自衛官
、そして
陸海空自衛官
を
組織
的に混在させるなど、緊密に協働する
体制
をつくるべきと提言していますが、
森本参考人
は、
文官
と
自衛官
の
関係
はどのようにあるべきと
考え
ておりますか。
森本敏
10
○
森本参考人
文官
と
自衛官
は、それぞれ
プロフェッショナリティー
が違う、
組織
と育てられ方、持っておる
権能
が全く
性格
を異にするわけですが、それをどのように
調和
をして全体として
機能
するかは、どこの国の
国防省
でも大きな悩みであります。 それぞれの国によって、
軍隊
のでき方の経緯に基づいて
組織
が構成されていますので、一概に
一般
的な
ルール
を申し述べることはできませんが、仮に
アメリカ
を例にとれば、
国防総省
の
文官組織
の中には軍人が
少数入り
、そして各
陸海空軍参謀本部
の中にも
文官
が
少数入り
、
双方
がそれぞれの
役割
を十分に発揮して、
文官組織
は
文官組織
の中に
自衛官
の
プロフェッショナリティー
の
知識
と
権能
を取り入れる、あるいは各幕の中にも
文官
がしかるべき配置で入ってそれぞれアドバイスをするという、この全体の
組織
を、
防衛省
として、
文官
と
自衛官
が
お互い
に
機能
を十分に発揮できるように
組織
をして、
一つ
の
組織
が、
防衛省
という
行政組織
としての役所と
自衛隊
という
実力組織
と、
二つ
を統合して
指揮監督
ができるようになるのではないかと思います。 これは、現在は
防衛省改革
の中で鋭意検討されているところでありますけれども、私は
原則
は、あくまで、
文官
と
自衛官
が持っている本来
機能
が違い、本来
機能
が阻害されないように
組織
と
権能
がつくられる必要がある、このように
考え
ている次第でございます。
仲村正治
11
○
仲村委員
近年、
防衛省
・
自衛隊
において
不祥事
や
事故
が頻発していますが、この
根本原因
として、年々、
自衛隊
の
任務
が増加している一方、
自衛隊
の人員は
減少傾向
にあり、
隊員
が
業務
に忙殺され、
士気
や
規律
を維持することが難しくなっているということがあると思いますが、この点についてどのようにお
考え
ですか。
森本敏
12
○
森本参考人
冒頭申し上げたように、
防衛省
及び
自衛隊
が、近年、あってはならない各種のいろいろな
事故
だとか事案を起こしてきたということは非常に残念でありますけれども、この本来の
原因
はどこにあるのかということは、
改革会議
で鋭意
分析
されたわけです。 私は、その
分析
の結果は確かに正しい面を
指摘
していると
考え
ますが、最も重要なことは、やはり、
国家
の
防衛
を担っている
自衛隊
が、
日本
の
国内
ではいわば
行政組織
として扱われ、例えば、法に触れた場合には
司法官憲
に
捜査
をされ、
軍法会議
もなく、裁判所あるいは海上保安庁などで
捜査
をして裁かれるという実態を
考え
た場合、
隊員
がみずから
誇り
を持ってその
任務
を完遂するというためには、やはり、
実力組織
としての
自衛隊
が、本来、
軍隊
として独立をした
機能
を発揮できるような
組織
として扱われ、そのような法体系になっていること。これは、理想の姿は、憲法を改正して国の
軍隊
にして、名称も、例えば一等陸尉などと言わずに、
我が国
の、
日本
国の国軍の陸軍大尉というふうにきちっと呼称できるような状態になること、それが、よい
人材
が集まり、
部隊
の
士気
、
規律
が今後維持される
一つ
の基礎なのではないかと思います。
組織
をさわって
事故
がなくなるというふうには思いません。機構を変更したら次の月から
事故
がなくなってしまうなどということは少し
考え
にくいことです。したがって、中にいる人間がどのように感じて毎日の仕事に従事しているかということに立脚して現在の
自衛隊
のありようを
考え
た場合に、
隊員
が、みずから国の
任務
を背負ってその
任務
を完遂できるような
誇り
のある状態にしてやること、これが最も重要な手段なのではないか、かように
考え
る次第でございます。
仲村正治
13
○
仲村委員
次に、
田中参考人
にお尋ねいたします。
田中
教授は、
防衛省改革会議
の
メンバー
として
報告書
の取りまとめに当たられましたが、
防衛省改革
の必要性について、
防衛省改革会議
ではどのような議論がなされたのか、また、
参考人
御自身はどのように
認識
されておられるのか、これがまず一点。 二点目は、このたびの法案では、
防衛省改革会議
報告書
において提言されている
防衛会議
の
新設
や
防衛大臣補佐官
の
新設
、
防衛参事官制度
の廃止等が盛り込まれておりますが、
防衛省
の
組織
はどのようにあるべきと
考え
ておられますか。お尋ねいたします。
今津寛
14
○
今津委員長
田中参考人
、時間の
関係
で端的にお願いいたします。
田中明彦
15
○
田中参考人
防衛省改革会議
でどのような
審議
が行われたかということは、全体の
メンバー
を代表するわけにはいきませんが、
報告書
に盛られている議論はすべて行われているわけであります。かなり大部な
報告書
でございますが、
森本参考人
がおっしゃられたように、
事故
ゼロというようなことはなかなかどの
組織
でも難しいにしても、それからまた、
国家
の
安全保障
を担う
実力組織
としてある種の特別の環境があるにしても、ほかの
組織
でも
業務
予算が減ったり大変になっている、それと比較しても近年少し
不祥事
が頻発し過ぎているという
認識
は、私どもも持ってきたことであります。 そこで、提案させていただいたことがこの
防衛省改革会議
の報告に盛られておりますし、
組織
を変えればすべてが変わるなぞということは私どもは思っておりません。先ほど申し上げましたように、
組織文化
、気風、これまでの慣行、
隊員
の
誇り
、そういうものすべてが影響してきますが、やはり
組織
を変えることによってそのようなものを変えるきっかけになるということもある。 そこで提案申し上げたのは、私どもは形骸化しているというふうに判断したわけですが、
防衛参事官制度
はやめてしまった方がよい、それから、
文官
、
自衛官
ともに参加するような
防衛会議
をつくって実質的な
審議
をしていただく、こういうことが大事だというふうに思っておりまして、ですから、今回の法案にこれが盛られたことは、私は、
防衛省改革会議
の
メンバー
をやっておった人間としてみると、大変ありがたいと思っています。
仲村正治
16
○
仲村委員
続きまして、
田中参考人
にお尋ねをいたしたいと思います。
今津寛
17
○
今津委員長
仲村
君、時間になっておりますので。
仲村正治
18
○
仲村委員
はい。
防衛省改革
を進めていく上で
防衛省
に求められるものは何か。また、
防衛省改革会議
報告書
では、国全体として
考え
るべき課題についても提言されておりますが、政府や国会に求められることは何であるのか。お尋ねをいたしたいと思います。
田中明彦
19
○
田中参考人
防衛省
に私どもあるいは私が求めたいことは、やはり
国家
の存亡を担う
組織
として、できるだけ早く
改革
を進めていただきたいということであります。 それから、政府全体ということでありますと、
防衛政策
、
安全保障政策
というのは必ずしも
軍事実力組織
のみが行うわけではない、政府全体として行う面が非常に多いわけでありますから、やはり、
内閣
、官邸としての整合性のとれた統一的な戦略を実行する形をぜひともとっていただきたい。 それから、国会におかれましては、やはり
安全保障
の問題というのは国の存立にかかわる問題でありますから、できれば、非常に大きなコンセンサスのもとで
安全保障政策
を政府が実現できるような議論を深めていっていただきたいというふうに思っております。
仲村正治
20
○
仲村委員
どうもありがとうございました。 終わります。
今津寛
21
○
今津委員長
次に、津村啓介君。
津村啓介
22
○津村
委員
民主党の津村啓介と申します。 本日は、
日本
を代表する
安全保障
の専門家でいらっしゃいます
田中先生
、
森本
先生
にこのような質問の機会をいただきまして、大変光栄に思っており、また興奮もしております。どうぞよろしくお願いいたします。 最初に
田中先生
にお伺いしたいと思いますが、
先生
は、
防衛省改革会議
の
メンバー
のお一人として、
報告書
の策定、提言の取りまとめに当たられたわけですけれども、
防衛省改革会議
という名称ですから、どうしても
防衛省
という枠の中での議論が中心になったと思うんですが、やはり、
防衛政策
を
考え
る上では、官邸であるとか外務省であるとか、
組織
としてはより広い問題意識というものも、当然
先生
やほかの
メンバー
の皆さんはお持ちだったと思うんですね。 ただ、結論の中には当然、
防衛省改革会議
の結論ですから、それ以外の話は余り書かれなかったんじゃないかな、そういう気がするんですけれども、例えば
日本
版NSCの議論というのも、近年与野党ともに熱心に議論をしたということがありました。この
日本
版NSCについてどういうお
考え
をお持ちかということも含めて、それからもう
一つ
は、どうしても
日本
の
防衛政策
は、
我が国
の置かれた歴史的な特殊性といいますか、そういうものが、どの国もそうでしょうけれども歴史的な経緯に縛られる面がありますので、他国と比べてどういう特徴を持っているのかということに目が行かずに、ついつい
日本
の
国内
での議論というものが中心になるのかなと思うんですが、海外と比べて
日本
の
防衛省
あるいは
防衛政策
は、どういう特徴をプラスマイナス含めて持っているのか。
先生
の御
見解
をお聞きしたいと思います。
田中明彦
23
○
田中参考人
どうもありがとうございました。
先生
おっしゃるとおり、
安全保障政策
というのは本来極めて総合的なものでございまして、その最終的なところには
軍事実力組織
が
存在
するというのはどこの国でも通例であると思いますけれども、
安全保障
を保つという
活動
自体は、国が全力を挙げて、政府
組織
全体を使って行っていくものだというふうに私は
常々
思っております。 ただ、やはり
国家
組織
というものがそれぞれの職掌に分かれて行われているということからすると、それぞれの職掌を十分に効果的にするということになってくる。この場合、私は
防衛省改革会議
に参加させていただきましたけれども、やはり
総理
がおつくりになる
会議
でもそれなりの
任務
というものがございますので、その
任務
の範囲内で書く。
防衛省改革会議
において政府全般についてここを
改革
せよというのは、やはり
任務
を外れていることだと思いますので、
防衛省改革会議
自体は主に
防衛省
の
改革
について述べております。 ただ、それでも、官邸においてより有効な
司令塔機能
を果たすための措置は
幾つ
か提案したところであります。その
一つ
が、
先生
おっしゃられましたような、いわゆる
日本
版NSCに
関係
する議論であります。 このあたりはなかなか難しいことですが、
内閣
には
安全保障
会議
というものが現在ございます。この
安全保障
会議
が、見方によるとやや形骸化しているんじゃないかという議論がございまして、これをさらに実質化するにはどうしたらいいかというところの議論は
防衛省改革会議
でもしたというふうに私は理解しております。それから、別途、国会でも、あるいは前の政権等でも
日本
版NSCについての議論はなされているわけです。この辺の
制度設計
はなかなか難しいと私は思います。 私の私見では、今度の
防衛会議
についてもそうなんですけれども、フォーマルに
ルール
をつくった仕組み、
組織
をつくるということも非常に大事なんですけれども、最終的に大事なのは、最高意思決定者がチームとして相互の意思疎通がとてもうまくいって一体として動くということであります。
安全保障政策
に関して見れば、やはり
総理
、
防衛大臣
、外務
大臣
、
官房長官
、少なくともこの四人が、非常に緊密な意思疎通のもとで、さまざまな長期戦略から中期戦略から危機管理に至るまで行うような形ができれば、それを担保する法制とかその他は、実は二義的だと思います。 ですから、
法律
がなくても、例えば四
大臣
会合というのを頻繁に開いて、この四
大臣
が適時適切に国の将来について
意見
調整を行いリーダーシップを発揮する仕組みをつくっていけば、それが私は
日本
版のNSCなのじゃないかと思っています。もちろん、これは四人だけでできるわけではありませんから、これをうまく支える事務スタッフの
体制
というのをつくっていくということは非常に重要だというふうに思っています。 それから、
日本
の
安全保障政策
にどういう特徴があるかといいますと、これはなかなか
一言
では言えませんけれども、先ほど
森本参考人
がおっしゃられたような、
安全保障
に関する
組織
を
国家行政組織
として扱う
傾向
が非常に強い。これは、
冷戦
の間、実際に
自衛隊
を
防衛
のために使わなくてよかったという幸運に恵まれてきたことがあるわけであります。ですが、先ほど私が申し上げましたように、
軍事実力組織
を活用して、現下の非常に複雑な
安全保障
環境の中で生かしていくということになりますと、
国家行政組織
としての
あり方
に加えて、やはり
安全保障
を担保する
組織
としての柔軟性を維持し、かつ実効的にさせるためにどういうふうにしたらいいかという点の議論がもう少しふえてもらえるといいかなというふうに思っている次第です。 以上です。
津村啓介
24
○津村
委員
ありがとうございました。今の議論だけでもかなり深めたいところなんですけれども、時間の制約がありますので。 今回の
防衛省設置法
改正の
一つ
の大きな論点であります
参事官制度
の見直しに関連して、これは
先生
お二人ともにお伺いしたいんですけれども、
文民統制
ということが言われて、
ルール
としてどういう
文民統制
の設計図をかくかということはもちろん
一つ
重要なんですが、もう一方で私が重要だと思うのは、潜在的な
人材
といいますか、例えば
アメリカ
で政権交代が起きれば、ポリティカルアポインティーで文民の部分がまさに入れかわるわけですよ。それは、
日本
でいえば国
会議
員ももちろん文民の重要な一部ではありますけれども、やはり在野にというか民間に
防衛政策
というものを実務面でも担えるような
人材
というのが果たして今
日本
にどれだけいるんだろうか。両
先生
のような専門家の方というのは実は大変少ないのではないかというところが、
日本
の
安全保障
の議論を非常に矮小化してしまいかねないことを心配しております。 これから政治の方がどう動くかわかりませんけれども、政権交代あるいは二大政党制ということが仮に定着していくとすれば、
日本
でもそういった政権交代による文民の入れかわり、そういうことが今後予想されるわけで、そういうときに、
人材
がいないぞということで、官僚のOBばかり、
防衛省
のOBばかりに頼るのかということでは、ちょっと心もとないなという思いがあるんですけれども、そういった
人材
をこれからふやしていくには、実際そのフィールドにいらっしゃる両
先生
から見て、これからどういう工夫をしていけばよいとお
考え
でしょうか。
田中明彦
25
○
田中参考人
人材
をふやすということは、まさに
先生
おっしゃるとおりであります。 私は、
安全保障
面に関しても、在野を含めて
日本
には潜在的にかなり
人材
はいると思います。ただ、潜在的にと言った
意味
はどういうことかといいますと、
研究者
やジャーナリストやビジネスに携わる人間は、ある程度は
防衛政策
、
安全保障政策
について勉強することはできますし、それから国際的な外国の専門家と交流することによって比較的正確な
知識
を身につけることもできますが、やはり一番問題なのは実務面、
防衛省
の中の実態がどうなっているかというようなことです。ですから、私は、比較的若手の
研究者
あるいは在野のシンクタンクにいる人等が、
防衛省
に関して言えば、
防衛省
の中のことがよくわかるような人事交流等を早目に行っておくということが重要なのではないかと思っております。 ここから後はいささか
先生
方から御批判を受けることを覚悟で申し上げますが、官僚OB、
防衛省
OB、
自衛官
OBはみんなだめだ、みんな天下りになってしまうんだという言い方は、今の
人材
を育てるという観点からするといささか不適切な面があると私は思っております。つまり、在野に
研究者
がいても、先ほど申し上げましたように、実務的なことがわかるためには人事交流をしなきゃわからないんですね。もうちょっと言うと、現に官僚をやっている人、
防衛省
をやっている人が
研究者
になるということもあって、
防衛省
をやめた人が
研究者
になって、その人がもう一回なったらこれは官僚OBなのか、そういう問題がある。 私は、望ましい姿は、もちろん、能力のない人間があるポストに前いたからといって何かのポストにつくというのは、これはあってはならない話でありますが、能力のある人間が、官界、学界、実業界、そういうところを行ったり来たりするというのは望ましいことであって、そういう雰囲気をつくっていかないと、
防衛大臣補佐官
をつくるといっても、なかなか人が見つからないということになると私は思います。
森本敏
26
○
森本参考人
田中先生
は、まさに御
指摘
になったことが正論なので、重複を避けて申し上げると、官僚及び
自衛隊
のOBを
補佐官
にしないということなので、もしそういうことであれば非常にほっとして、私がなることは絶対にないなと思って、裁判員
制度
よりも確率が低いと思って安心しているわけですけれども。
田中先生
がおっしゃったように、確かに、
安全保障
を知悉している
人材
の底というのは、それほど諸外国に比べて多くはないですけれども、でも、結構リソースはあります。 ただし、
防衛
を知るためには何が必要かというと、やはり
防衛
のハードとそれから多少の
部隊
運用
というものがわからないと、空理空論の議論をする人に
大臣
の補佐をさせるということはかえって危ないわけで、そのような
人材
をつくるためには、どこかシンクタンクで一定期間
防衛
について勉強をしたり実務を
経験
するプロセスがあることか、あるいは、例えば防研の
一般
課程にもう少し幅広くいろいろな分野の人が入れるような
組織
にして、一年なり一年半なり勉強した人がこの
人材
のいわばベースをつくるということでないと、単に本を読んで
知識
のある人が
防衛
を語るというのは、実は
実力組織
である
自衛隊
というものの本来の責任者である
大臣
を補佐するのにはやや危なっかしい面があるので。 私は、そういう
意味
では、
防衛補佐官
の
人材
を探すというのはさほど容易なことではない、一回、二回は探せても、一年以内にくるくるとおかわりになるかもしれない
防衛大臣
の
補佐官
をその都度探してくるというのは、現在の
日本
の状態ではなかなか難しく、長期にわたって
人材
を育成するシステムを別途つくらないといけないのではないか、かように
考え
ています。
津村啓介
27
○津村
委員
簡潔に、最後の質問にいたします。 今のお話、大変示唆に富むお話で、
個人
的なことを言いますと、実は私も
日本
銀行のOBでして、昨年、日銀総裁の人事の件では似たような悩みといいますか
経験
をしたので、大変共感できるところはあるんです。 今後、そういう
自衛隊
OB、
防衛省
OBの方々の話を
考え
ていく上で、ちょっと話はかなり矮小化というか
一つ
の話にしますけれども、ついつい脳裏をよぎるのは、田母神さんの件があると思うんですよね。これは、この件について盛んに発信をされていました
森本
先生
の方にお伺いしようと思いますけれども、田母神さんは結果から見れば、あの種の、問題と言っていいのかわかりませんけれども、一騒動あった後、今やたくさん本を書かれたり、本当かどうか知りませんけれども国政選挙を
考え
ていらっしゃるとかいろいろなうわさが飛ぶほど、引き続き注目人物なわけです。しかし、やはりあのおやめになり方というのはあれでよかったのかなということは、これからの
人材
登用を
考え
る上で少し整理しておきたいなという思いでお聞きするんです。
森本
先生
は、あの田母神さんの処分の
あり方
、そしてそのもととなった歴史
認識
そのほかの問題について、どういうふうに総括してごらんになっていますか。
森本敏
28
○
森本参考人
お尋ねの点は二点に集約されているので、最初に歴史
認識
について申し上げれば、私は同氏と歴史
認識
を共有しません。戦後の
我が国
のありようは、いろいろな議論があるにせよ、極東裁判そのものを
日本
国として受け入れて戦後が始まったのであって、あのような
考え方
に立って
日本
の歴史を論じることが
日本
の
国家
の将来や
自衛隊
の将来の
あり方
に寄与するというふうに私は
考え
てはいません。 第二の点は、しかしながら、やめ方そのものについては、やはりもう少し、幕僚長なるところまで行った人でありますので、
大臣
が本人をあのような形で処理される際、じっくりと
お互い
に
意見
を述べ合い、
防衛省
の
職員
の時代にどのような歴史
認識
について省内でいろいろな議論をすべきだったのか、あるいはすべきでなかったのかということについては、ひざを合わせてゆっくりと話し、
双方
が納得してその後の身の振り方を決めるということがあってもよかったのではないかと思います。 これは、今急に後知恵でそう思っているのではなく、この
事態
が起きたときから私はそのように書いてもいますし言ってもいるので、そのことについて私の
考え方
は変わりません。 以上です。
津村啓介
29
○津村
委員
ありがとうございました。
今津寛
30
○
今津委員長
次に、
笠井
亮君。
笠井亮
31
○
笠井
委員
日本
共産党の
笠井
亮です。 きょうは、
田中参考人
、そして
森本参考人
、お忙しい中貴重な御
意見
を賜りましてありがとうございました。 まず、
田中参考人
に伺いたいと思うんですが、今議論になっておりました
防衛省改革
のための
組織改革
ということでいいますと、
自衛隊
の情報流出だとか、あるいは「あたご」衝突
事故
から、
防衛
事務次官の供応、収賄の問題などを受けて、
隊員
の意識と
組織文化
の
改革
及び現代的
文民統制
のための
組織改革
の必要性が求められて実施されるというふうにされております。 しかし、過去の
防衛
庁、
防衛
施設庁あるいは
防衛省
ということでもさまざまな問題があって、私もいろいろな機会に国会でも取り上げてきたんですけれども、特に入札とかをめぐる問題、談合事件とかあるいは供応、収賄については、
防衛省
、あるいは
防衛
庁、施設庁は、事が起こるたびに
組織
改編ということで行ってきたんですが、結局、対症療法的なものに終わって、根本的な解決になっていないんじゃないかという意を非常に強くしているんです。 そこで、
田中参考人
は、
改革会議
の
一員
としても議論にずっと携わって参加されてこられたわけですが、この
不祥事
にかかわって、
参考人
御自身が政治による監視という問題や
国民
への説明責任ということについて発言されたこともあると思います。 今回の
組織改革
、機構
改革
によって、どんな
組織
でもゼロは無理という話を言ってしまうとなかなか難しいんですが、談合問題とか供応とか収賄の問題が今後は起きることが難しくなる、あるいは起きないようになるというふうにお
考え
なのか、その辺について
認識
を伺いたいんですが、いかがでしょうか。
田中明彦
32
○
田中参考人
今
笠井
先生
おっしゃったように、
不祥事
もいろいろあるわけですが、その中でも、入札とか調達に関連する問題、やはり、
改革会議
をやっていまして、
国民
に対する説明責任というものがちゃんと確保できるような形というのを何とかつくってもらいたいというのが私どもが
防衛省
に期待するところでございまして、
軍事実力組織
ですから、すべてが他の省庁と同じというわけにはいかないと私は思っております。それから、
防衛
に必要な装備品というものの生産の
あり方
その他も、すべてが他の省庁と同じという形にもいかないと思っております。 ただ、ほかの省庁その他と比較的共通する問題もありますから、その点については、調達方法等、より一層改善していただきたいというのが
報告書
で私が期待したところであります。 ただ、個別の問題にも増して私が最大に遺憾だと思うのは、
組織
の末端で
不祥事
が起こるのではなく、
組織
のトップで起こるということでございます。その面におきましては、重要ないろいろな装備調達について、
防衛大臣
の
監督
のもと、チェックス・アンド・バランシズが中で働くような
組織
をぜひ
確立
してほしい。ですから、
防衛会議
というものにも、重要なものについてそういうことをやってほしい。 それから、
防衛省改革会議
では、やはり調達に関連するようなものの
会議
、関連
会議
はすべて議事録をとって、一定期間の後には
国民
の目に触れる、わかるというような形をつくってほしいというふうに言っているわけでございます。 これで本当になくなるのかと言われると、私に保証せよと言われても、それは保証できませんが、私どもとしてみると、そのような説明責任を図る仕組みを着実につくっていっていただければ、将来的には、少なくともこの間あったような話はなくなるんだと私は期待しております。
笠井亮
33
○
笠井
委員
森本参考人
に伺いますが、田母神前航空幕僚長の問題について、先ほど
田中参考人
からも、傍若無人をとめられずというお話が冒頭にございました。先ほどの
質疑
の中でも、
森本参考人
も歴史
認識
は共有しないと述べられたわけですが、その上で、なぜああいう問題が
自衛隊
の中から起こってくるというふうに、歴史
認識
の問題をめぐってですが、お
考え
なのか。 それから、ああいう発言や問題、論文にかかわって、今回の
防衛省改革
のための
組織改革
について、そういう問題にどう対応する、あるいはそれに対応できるようなものになっているかどうか、
改革
とのかかわりで、ああいう問題についてどういうふうにお
考え
か伺いたいんですが、いかがでしょうか。
森本敏
34
○
森本参考人
どうしてこのような問題が起こるのかというのは、大変難しいんですが、私が中にいて過ごした自分の体験だけを思い起こして言うと、そもそも、どこの国でもそうですが、特に
日本
はそうですが、役人とか軍人の歴史観というのは、
行政
官や軍人は歴史家ではありませんから、多くの思想家あるいは論客の感化、影響を受けたものであることが多いわけであります。 したがって、例えば軍人が歴史家であれば、それは戦史を述べることはできますけれども、みずからが歴史家として歴史
認識
を
確立
するなどということはなく、いわば他人の受け売りをやって、それを自分のものとすると、徐々に自分の思想がそのように感化され、それを
隊員
に説く、そういう思想に固まっていくという
傾向
が、人間
組織
であるわけですから、
組織そのもの
の物の
考え方
や思想や哲学に非常に影響を与えるということはあり得るのではないかと思うんです。
他方
において、そのことを現在の
防衛省改革
の中でどのようにとらえているか、私はつまびらかにしません。できれば、
日本
の
自衛隊
・
防衛省
の中の構成員がバランスのとれた国際
認識
、国際常識というものを幅広くきちっと共有しているという教育や訓練の
あり方
がきちっと確保される、それを客観的にどのように確保したらよいかということは大きな問題ですが、それがなければこの種の問題が起こる。起こるんですが、それは外に出ない限り何ら、つまり外の人にはわからずにそのまま
事態
が過ぎるということがあるわけです。 私も若いときは旧帝国陸海軍の生き残りの方の思想を受けて、ずっと過ごしました。それが正しかったかどうかということを、後に自分で勉強して、はたと
考え
ることがあります。そのときは確信をしていたにもかかわらず、何十年かたって、例えば外務省に行って外交官としての歴史教育を受けてみると非常に違和感があるという。 その
二つ
の、とても違和感のある
組織
を
経験
したので初めてわかるのかもしれませんが、ある
一つ
の
組織
の中で、凝り固まって思想が培養されるということが
組織
全体に与える影響というのを我々はどう
考え
るかということを
考え
た場合に、やはり、ある
実力組織
の持っておる思想だとか信条とか哲学というのはバランスのとれたものとして教育されないといけない、それが
防衛省改革
の中で生かされていないといけない、このように
考え
ている次第です。
笠井亮
35
○
笠井
委員
最後の質問ということで、お二人に伺いたいと思うんです。 私も振り返ってみますと、お二人の
参考人
に最初に国会で質問をさせていただいたのが一九九七年で、ちょうど今ごろだったんですけれども、当時、参議院の国際問題調査会で機会がありまして、それぞれに伺ったんですが、あのときは、二十一
世紀
を前にしてということで、アジア太平洋の
安全保障
と日米同盟、それからガイドラインの見直しということで、大いに議論があったときでありました。 あれから十二年たって、
世界
はある
意味
で大きく変化していると思うんですが、きょうのテーマにもかかわって、大前提の問題としてお二人に伺っておきたいと思っているのが二点あります。
一つ
は、
アメリカ
のオバマ政権が、欧州や米州でいいますと、米州各国との
関係
では、この間も目に見える変化ということを我々も目の当たりにする一方で、
日本
との
関係
でいいますと、従来を踏襲するというようにも言われておりますけれども、オバマ政権のアジア太平洋政策について、今後どうなっていくというふうに見ておられるか。これは、お話しいただくとそれぞれ一時間とかになっちゃうと思うんですが、端的に
一言
ずつということが一点。 もう
一つ
は、オバマ大統領が四月五日にプラハで演説をして、米国が核兵器のない
世界
の実現を追求することを宣言して、核兵器を使用したことのある唯一の核兵器保有国として米国は行動する道義的責任があるということで
世界
に協力を呼びかけました。私も大いに歓迎しているんですけれども、今こそ、唯一の被爆国としての
日本
の
役割
、イニシアチブを核兵器廃絶という点では発揮すべきだと思いますが、今回のオバマ発言について、両
参考人
の受けとめというか御感想を伺えればと。 この二点、それぞれ端的にお願いします。
田中明彦
36
○
田中参考人
オバマ政権のアジア政策でありますけれども、私は、オバマ政権が今後も
日本
との
関係
を非常に重視していくものだというふうに思っております。 ただ、
日本
との
関係
を重視するとともに、やはりこれは、現実、今の金融危機からの克服、それからその後の
世界
、アジアの展望を
考え
る場合、
アメリカ
が中国との
関係
を大変重視するということもまた間違いないことだと思います。 しかしながら、今のオバマ政権の中の重要人物は、やはり
日本
人は我々の友達であるというふうに思っている。ですから、この友達である
日本
とともに、非常に大事なパートナーである中国との
関係
をどう築いていくかということがオバマ政権の課題だと私は思っておりますし、
日本
もまた、
アメリカ
は重要な友人であるから、重要な友人である
アメリカ
とともに重要なパートナーである中国との
関係
を築いていく、こういう形でなければいけないと思います。 オバマさんがプラハで核兵器のない
世界
を言ったというのは、やはり私は、この大統領の非常なある種の特徴を示していると思います。彼は、具体的な策になると比較的慎重です。実現できそうもないようなことを、具体的に短期のことでこれをやるあれをやるという安受け合いをしない人です。それから、
国民
に負担も求めるというタイプの人ですが、やはりその背景に非常に長期的なビジョンを語るというところがあって、まさにこの核兵器のない
世界
というのは、今の
アメリカ
が長期のビジョンを掲げるといったときに
一つ
の
あり方
だと思っております。 私自身、直ちに核兵器のない
世界
が実現するとは、
国際政治
の
分析
をしている者からすれば思いませんが、ただ、やはり、
アメリカ
が
世界
をリードしていくときに、ある種の目標を掲げてやっていくことに
日本
が協力していくということは当然でしょうし、
日本
にとって核兵器が削減されるということが望ましいことは、これは間違いないことだと思っています。
森本敏
37
○
森本参考人
オバマ政権のアジア政策はまだ全部出そろっていないと思いますが、
一般
論としては、やはりアジア政策を進めるときに、
日本
のような同盟国との
関係
は依然として重視するという方針に変わりはないのですが、同時に、中国、ロシアとの協調を進めること、それから、まさにクリントン国務長官がインドネシアを
日本
の後に訪問したように、ASEANを中心とする多国間の協力を重視すること、これをどのように組み合わせて今後アジア政策を進めるかということに我々は注目しています。まだアクターが全部そろっていないので、東アジア担当の国務次官補も指名もされていないという状態でもありますので、アジア政策全体を語るのは少し早いのかなというふうに
考え
ます。
他方
、プラハ演説については、私は非常に深い印象を持っています。それは、オバマという人は、余り特定のイデオロギーだとか政治哲学、信条を持たないのですが、この軍縮という分野については既に大統領候補のときから常にこう言っていましたし、この核軍縮の演説はまさに彼の持っている非常に強い核心的な政治信条に近いものなのではないかと思います。
田中先生
がおっしゃるように、すぐにこれが実現できると思いませんが、少なくとも、米ロ
関係
をリセットして、米ロの軍縮交渉がことし七月から進めば、これを軸に成果があらわれれば、その他の核兵器国をこの交渉に招き入れてグローバルな核軍縮が進むというのであれば、まさにそれは
日本
がずっと
冷戦
期を通じてやってきた核軍縮の
一つ
の方向と一致するものであり、
日本
としては大変歓迎すべき提案でありイニシアチブと
考え
ます。
他方
、
安全保障
をやっている者は、このように思い切った核軍縮というものが本当に地域の安定と同盟国の安全を確保することになるのかということについて一抹の不安があり、特に、同盟国に対する拡大抑止というものがこういった思い切った核軍縮によってどこまで確保されるのかということについては、まだこれから相当率直に日米間で話し合っていかないといけないのではないか、かように
考え
ております。 以上でございます。
笠井亮
38
○
笠井
委員
ありがとうございました。 終わります。
今津寛
39
○
今津委員長
次に、照屋
寛徳
君。
照屋寛徳
40
○照屋
委員
社会民主党の照屋
寛徳
です。 本日は、両
参考人
に貴重な御
意見
を賜り、ありがとうございました。 最初に、
防衛省改革会議
の
メンバー
でもございました
田中参考人
に尋ねます。
防衛省改革会議
の
報告書
では、「形骸化している
防衛参事官制度
を廃止し、
防衛大臣補佐官
を設置すべきである。」と
指摘
をしております。この
報告書
を受けて、
防衛省
は昨年八月に、
防衛省
における
組織改革
に関する
基本
方針の中で、形骸化している
防衛参事官制度
を廃止するとの
組織改革
を決めております。 しかし、
報告書
や
基本
方針では、なぜ
防衛参事官制度
が形骸化をしたのかという問題点についてはさほど詳細に触れておりません。
田中参考人
は、
防衛参事官制度
が形骸化した理由をどのようにお
考え
でしょうか。 関連して、今度の法改正で
防衛大臣補佐官
を政治任用するとか非常勤
勤務
にするとかということにもお触れいただければありがたいなと思っています。
田中明彦
41
○
田中参考人
確かに、
報告書
の中の分量ということで
考え
ますと、
防衛参事官制度
が形骸化しているということについての理由を詳細にわたって書いていないという部分の御
指摘
はそのとおりかと思います。 議論はしたわけですけれども、
報告書
はある程度簡潔に書くということからそういうふうになったと私は理解しておりますが、理由の
一つ
は、これは先ほど
森本参考人
も少しおっしゃったかもしれませんけれども、本来、
防衛参事官
というのは、
防衛大臣
を
防衛政策
全般にわたって補佐するという、アドバイスする
機能
があるという形で設置されたわけなんですが、これがすべて、特定の
任務
を持つ
局長
というようなもの、それからそうでない三人についても
任務
が割り当てられてしまって、職務分担がはっきりし過ぎてしまった、そればかりやっている。そうすると、結局、本来、
防衛参事官
という形で国の
安全保障政策
について、省昇格以前は長官ですけれども、長官をサポートするということがほとんどなく、他の省庁の
局長
や
官房長
と同じになってしまう、そういうことだと思います。ですから、それが一番大きな形骸化した理由ではないかというふうに思っています。 それから、これに関連して、
補佐官
を政治任用したり非常勤で政治任用するということが今回の
設置法
改正に盛り込まれているわけですけれども、これについては、私は、
報告書
でもそういうふうに申し上げておりますが、方向性として見るとこれで正しいというふうに思っています。 ただ、先ほども
森本参考人
がおっしゃられましたように、直ちに適切な
人材
をこのポストに切れ目なく供給することができるかどうかというのは、その
人材
源を含めて今後
考え
ていかなきゃいけない問題だと思います。先ほど申し上げたことと
関係
しますけれども、やはり
日本
における
安全保障
関係
の
人材
の他分野での移動可能性ということを
考え
ていかないと、なかなかこのポストを十全に活用するというのは難しいと思います。 ただ、これもまた私見でありますけれども、なぜ我々が
防衛大臣
の
補佐官
が必要かというふうに
考え
たかと申しますと、
防衛大臣
に任命された方が
防衛省
に行っても、直ちに、信頼に足る、すぐ相談できる人が周りにいない、ひとりぼっちだというような雰囲気が時に生ずるというんですね。事務次官、統合幕僚長、それから
局長
その他は、ずっと
防衛省
の中にいる人で、
防衛省
のことを何でもよく知っている。そこに、いかに有能であっても、国
会議
員で
一般
的な
防衛政策
、
安全保障政策
を持った人が一人で行って、その何でも知っている人たちに取り囲まれたときに、どういうイニシアチブでこれをリードしていくかということになると、なかなか難しい。やはり信頼できる一人ないし二人なり三人の人と相談しつつやっていきたいということじゃないかと私は思っているんですね。 その相談できる
人材
に、先ほど
森本参考人
が言われたように、本当にバランスのとれた、しかも実務に詳しい人がどれだけいるかというところが難問ですけれども、私は、
個人
的に言えば、仮に
防衛省
の実務にいささか疎くても、バランスがとれて、特に、
大臣
になられた方が信用できる人、信頼できる人、ですから、
大臣
の見識のもとに有能な
人材
を選べれば、それでもかなり
機能
するんじゃないかと思っております。 〔
委員長
退席、江渡
委員長
代理着席〕
照屋寛徳
42
○照屋
委員
田中参考人
に尋ねますが、
防衛省改革会議
では、
自衛隊
の
不祥事
案として、給油量取り違え事案、情報流出事案、イージス情報流出事案、護衛艦「あたご」衝突事案、守屋前事務次官の背信行為などが議論されております。 一方で、護衛艦「さわぎり」、護衛艦「たちかぜ」、航空
自衛隊
浜松基地において、上官のいじめによって自殺に追い込まれた
自衛官
の事件など、現に
国家
賠償請求が起こされた事案、「さわぎり」については国が敗訴しておりますが、そのような事案については全く議論がなされておりません。 このような
防衛省改革会議
の議論の
あり方
についてどのように思われますか。また、
自衛官
の自殺が多い
原因
を
先生
はどこにあるとお
考え
でしょうか。
田中明彦
43
○
田中参考人
今、照屋
先生
おっしゃいましたように、
幾つ
かの問題についてはこの
報告書
では触れておりません。 これは、そのような問題が重要でないというわけではないのでありますが、やはり
審議
の時間的制約、早く
改革
法案を出さなければならないということから、私どもが重要であるというふうに
考え
た
不祥事
、事案をまず取り上げて、その上で建設的な提案ができればということであります。 ですから、特に今
先生
がおっしゃったような事案を意図的に無視するとか、そういうような形で行ったわけではございません。 それから、
自衛隊
において自殺が多い理由というのは、私は
個人
的には深く研究しておりませんので、まことに申しわけありませんけれども、直ちに
見解
を申し述べることはできないということで、御容赦いただければと思います。 〔江渡
委員長
代理退席、
委員長
着席〕
照屋寛徳
44
○照屋
委員
森本参考人
にお尋ねをいたします。
参考人
の二〇〇八年四月三十日付の産経新聞「正論」を読みました。それによると、
防衛省
や
自衛隊
に関する事件、
事故
が相次ぐ中、
森本参考人
は、
防衛省
の
改革
論議と関連して次のように述べておられます。「これらの事件の
原因
と
組織
・機構は直接の
関係
はない。」事件の多くは「
指揮官
の指揮や
隊員
の
規律
、
士気
にある。」
森本参考人
は、
自衛官
の
規律
の保持あるいは
士気
の高揚の問題と
自衛隊
の
組織
機構
改革
との
関係
についてどのようにお
考え
でしょうか。そして、
規律
、
士気
との
関係
で、具体的な環境整備の方策について御
意見
をお聞かせください。
森本敏
45
○
森本参考人
私が「正論」の中で、特にこの部分で強調しようとしたのは、すべての官庁、すべての
組織
がそうですが、何かしらの問題があり、あってはならない
ミスマネジメント
、
事故
があったときに、
改革
と称して
組織
機構をさわって物事を済ますという
傾向
が
日本
の社会の中には非常に多いわけです。 何となくそれでわかったような気になるのですが、この五十余年の間、
自衛隊
という
組織
が、冒頭申し上げたように、近年いろいろな
事故
が発生し、
国民
の信任を一部失ってきた理由は、
組織
が悪いからではなく、だから
組織
機構をさわれば次の日から
事故
がなくなるということではなく、
組織
を構成する中の人間、人間の素材、素質、人間
関係
、広い
意味
でいうとその中にある
規律
あるいは
士気
という、
組織
全体が持っておるいわばモメンタムといいますか、そういうものが弛緩をして、守るべき規則を守らず、守らないことを横で見ながら黙って過ごし、
指揮官
がそれを
指摘
することもなく、厳しく罰することもなく、罰したらその
隊員
がやめて、次の
人材
を育成するのに多大の時間と労力を要し、結局、与えられた人間の中で何とか目の前の
任務
を遂行していかないといけないという、
自衛隊
の持っている本質的な問題がこのような
事故
を招いたのであって、繰り返しになるが、
組織
機構を変えて
事故
の
原因
がなくなるというものではないという点を強調するために書いたものです。 しかるに、それはどうしたらよいのかというと、それはなかなか
一言
で、ある日突然そこから
隊員
の
士気
や
規律
が立ち直るなどということはなく、非常に総合的な施策を要すると思うのですが、一番重要なことは、
自衛隊
という
実力組織
は
近代装備
を持っていますが、結局のところ、
戦闘
集団
というものを構成するのは人であり、よい人が集まり、よい人とよい人の
関係
が、非常に強固な信頼
関係
と、困難な中で
任務
を遂行していこうといういわゆる強い意識、それが
組織
をつくり、強い
戦闘
集団
となるわけであります。 どうしたらこれができるのかということは、これは
自衛隊
が持っている物すごく本質的な問題であって、一人一人にその意識がなくてはならないし、教育もきちっとしないといけないし、
規律
もきちっと守られるように厳格な処分をしないといけないし、それから、
指揮官
そのものが厳しく教育がなされており、真に
隊員
の模範たる
指揮官
が各級
部隊
指揮官
の中にいるということが求められる。 それはしかし、
日本
の社会の中で与えられたパイをどうやって使うかという非常に難しい問題にみんな直面しているのではないかと思います。
日本
の社会の中で
自衛隊
だけが第一級の人間だけで二十七万を構成しているなどということは期待しがたいわけでありまして、全体として、
国民
が
自衛隊
に負託する期待と、そして持っておる
組織
の全体の
任務
意識というものが人を育て、
組織
を強くする、それしか言いようがないわけであります。 ただ、できれば、冒頭申し上げたように、
自衛隊
という、何か
軍隊
でもない、
行政組織
でもない、警察でもない、消防でもないような、外国に一歩出ると軍人と言われながら
国内
では
軍隊
としても扱われないこの
組織
のありようをもう少し国としてきちっと見直し、あるべき姿にしていただくということを立法府の方々にお願いする以外に方法はない、私はかように
考え
ている次第でございます。
照屋寛徳
46
○照屋
委員
終わります。
今津寛
47
○
今津委員長
以上で
参考人
に対する
質疑
は終了いたしました。 この際、
一言
ごあいさつを申し上げます。 両
参考人
におかれましては、貴重な御
意見
をお述べいただき、まことにありがとうございました。
委員会
を代表して厚く御礼を申し上げます。 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時三十分散会