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参考人(
白川方明君) お答えいたします。
まず、倒産の件でございますけれども、今年に入りまして倒産の件数が増加をしているということは私どももはっきり
認識しております。倒産件数、月々もちろん変動がございますけれども、十一月には、これは
民間調査でございますけれども、千二百七十七件にまで達しました。これは前年同月を五・三%上回る水準でございます。
先ほど、黒字であるけれども倒産をするというお話がございましたけれども、倒産の原因、これはなかなか特定することは難しい面がございますけれども、
民間の
調査機関が倒産原因を分類してこれを発表しております。その内訳を見ますと、運転
資金の欠乏を主因とする倒産というのは、これは八十一件で、全体でのシェアはこれは六%でございますけれども、しかし前年との比較でいいますと四割方上回っております。
民間調査機関の分類でいきますと、いわゆる不況型ですね、つまり売上げが減ってくるという、こちらが一番シェアとしては高いわけですけれども、しかし運転
資金が欠乏するということでの倒産も増加をしているということはそのとおりだというふうに
認識しています。倒産の原因は、
景気の
停滞色の強まりを
背景に、今申し上げた不況型の倒産あるいは連鎖型倒産、それもそれぞれ五・五%、二二・四%というふうに増加をしております。
我々としては、個々の倒産の全体の動き、これも
経済の動きを見ていく上で、それから
金融機関への
影響を見ていく上で大変重要だということで、これは丹念に分析しておりますけれども、その原因、
背景も含めてしっかりと見ていきたいというふうに思っています。
それから、二つ目の御
質問でございます、
日本銀行が先般決定しました新しいオペの件についてお答えします。
ちょっと長くなって恐縮でございますけれども、まず
日本銀行がなぜこうした
措置を導入したかということを御
説明したいと思いますけれども、
国際金融資本市場やあるいは
米欧の
金融システムの
動揺が深刻化しました秋口以降、
我が国の
金融市場の安定を確保するために
日本銀行として様々な
措置をとってまいりました。先ほど冒頭の
説明でも申し上げましたけれども、ドル
供給オペあるいは
補完当座預金制度の導入、それから国債現
先オペ、
CP現
先オペ、こうした
措置をとってまいりました。こうした対応の
効果もありまして、
我が国の
金融市場は欧米と比較しますとこれは相対的に安定を確保しているというふうに言うことはできると思います。
しかし、
我が国の
金融環境を見てみますと、
CP・
社債市場での
資金調達環境が
悪化しているほか、
資金繰りや
金融機関の貸出態度が厳しいとする
企業が増えるなど、全体として
緩和度合いが急速に低下しています。
こうした情勢を踏まえまして、
委員が御指摘になりました年末あるいは年度末に向けた
企業金融の
円滑化に資するという
観点から、十二月二日に開催しました臨時の
金融政策決定会合で、来年四月末までの時限
措置としまして、
民間企業債務の
適格担保範囲の拡大と、それから
民間債務を活用しました新たなオペレーションの実施という二つの
措置を決定しました。
少し長くなって恐縮ですけれども、新たなオペレーションということでありますけれども、これは
民間企業債務の
担保価額の
範囲内で、無担保コールレートの誘導目標と同水準の
金利により
金額に制限を設けずに年度末越え
資金を
供給するというものであります。ちょっと長ったらしくて恐縮ですけれども、これは要するに
CP、
社債あるいは貸付債権などの
企業債務を担保としまして相対的に有利な
金利、つまり現在コールの目標
金利が〇・三%ですけれども、コールはこれはオーバーナイトの
資金ですけれども、これを長めの
資金であるにもかかわらずこのコールレートを適用する形で
金融機関に
資金を
供給するということでございます。
したがいまして、このオペは、
金融機関からいいますと
資金調達のコストという面それから量という面、その両面からこれは有利なオペレーションでございますから、
金融機関の融資活動や
CP・
社債市場での
取引を後押しする
効果を持つというふうに思っております。
この
金額が今三兆円ということ、言及ございましたけれども、これは、現在受け入れています担保の額からしますと最低三兆円
程度は見込めると、
資金供給が見込めるということであります。
今回、
日本銀行が担保の条件を
緩和しましたので、
金融機関が新たに担保を持ち込むということが可能になりまして、今、
日本銀行には、信用判定と呼んでいますけれども、その判定依頼がたくさん来ております。そうしたものが加わりますと
金額がもう少し潜在的には増え得るというふうに思っていますけれども、そうした
措置を行いまして、先生の御
質問の
最後にございました年末、年度末の
資金繰りに向けて
日本銀行という立場から貢献をしたいというふうに思っています。
こうした手段を取っても、しかしこれは基本的に大
企業向けではないか、中小
企業には余りその恩典が均てんしないのではないかという御
質問でございます。
今申し上げましたその新しいオペレーションは、これは
金融機関に対して有利な条件で
資金供給をし、最終的に
企業金融に貢献をしていくということでありますけれども、こうした
措置は
金融機関の融資活動を全体として後押しするものでありますから、その
影響は中小
企業の
金融の
円滑化という形でもつながっていくというふうに期待しています。
それから、多少これ細かな話、技術的な話で恐縮ですけれども、例えば、コマーシャルペーパーということが先ほど来話に上がっておりますけれども、コマーシャルペーパーの中にAB
CP、アセットバックト・コマーシャルペーパー、AB
CPというものがございます。これは資産を担保とするコマーシャルペーパーですけれども、この資産の中には例えば中小
企業の保有する売掛債権というものも、これは担保資産になるもの、裏付け資産になるものでございます。したがって、現実にこういうAB
CPの持込みもございますけれども、こうしたAB
CPの持込みが増えれば、我々のオペを通じて中小
企業にも波及していくというメカニズムもございます。
ただ、いずれにせよ、
日本銀行のこうした
措置だけで中小
企業の
資金繰りが
円滑化するというふうに思っているわけではございませんけれども、
中央銀行の持っている手段を最大限活用して、知恵を絞ってこれからも対応を考えていきたいというふうに思っています。