○
参考人(
村本孜君)
村本でございます。このような
機会に御
発言の
機会を与えていただきまして、大変感謝申し上げます。
お
手元に印刷物といいますか、
資料を配付させていただいておりまして、
衆議院のときと同じものでございますけれ
ども、お話をさせていただきたいと思います。
金融機能強化法自体、私はこれは早急に
整備をしていただきたいという
立場でございまして、
金融機関の
健全性を維持するためには、
資本不足が発生してそれがとことん行ってしまうというようなときに発生するのではもう手遅れであると。我々の
立場でいうと、エコノミックキャピタルなんという
言い方をしておりますけれ
ども、規制上の
資本だけではなくて必要な
資本は
注入していくべきであろうということが従来からの経験でも明らかではないかと思っておりますので、こういう
法律については私は
是非整備をしていただきたいと思っております。
足下で申しますと、
直近ではGDPが二期連続でマイナスを計上しておるとか、そういう
意味で
景気の
後退局面に入っているのではないかということが
指摘されておりましたり、あるいは、
地域銀行の九月期の
決算が発表されておるようでございますけれ
ども、
報道等では上場八十七行中の二十七行、三割強が
赤字決算であるというような
状況になってきておりまして、
中小企業に対する
融資についてはかなり
懸念がされるところでございますので、そういうような
状況にかんがみましても
是非必要な手だてではないだろうかと思っております。
お
手元の
資料の
右下三ページ目、図一というので、
景況調査という
データを掲げてございます。これは、調べたのがもう九月の
データでございますので、ちょっと古くなっておりますが、かなり
直近が悪くなってきておるということでございます。赤い
四角が
日本銀行の短観と呼ばれるもので見ているものですが、比較的大きなところの
中小企業を見ておりますが、これも
相当悪くなってきておると。小
規模の、
四角の青抜きのところですが、これは
規模の小さいところを比較的見ておりますが、これはかなり悪くなってきておるという
状況がございますので、
景況についてはかなり厳しい見方になるのかなということでございます。
めくっていただきまして、四ページ目でございますけれ
ども、同じく
資金繰りというのを
中小企業の
景況調査で見てみますと、これも悪化の一途をたどってきておりまして、恐らく第四・四半期は過去に比べても
相当悪い
水準になるのではなかろうかと考えられます。
同じく五ページ目では、これは
借入難易度という、
借入れがどれぐらいできるかという
難易度をDIにしたものでございますけれ
ども、
直近ではかなり過去の悪い
局面と似たような
水準まで下がりつつあると、こういうような
状況でございまして、
足下の
景況ないし
資金繰り等は過去に比べましても
相当悪い
状況に来ているのではないかというような感じがいたします。そういう
意味では、
中小企業に対する
資金がいかに出ていくかというのはかなり重要な
局面に来ているのではないだろうかと考えております。
私自身は
中小企業周りあるいは
地域周りの
金融ということを研究しておるものですから少し長い目で見るという
視点も常に心掛けておるわけでございますけれ
ども、
中小企業自体のいわゆる
企業数というような
観点で整理をしてみますと、
我が国は人口が
減少している
社会になっていると言われて久しいわけですが、実は
企業自体も
減少をしております。二〇〇一年の
データで
企業数四百六十九万社、二〇〇六年で四百十九万社、この五
年間に五十万社、つまり
年間十万社純減しているわけでございます。
六ページ目の図の四、
開廃業率というのを御覧いただきますと、これは
中小企業白書で使われるものでございますが、緑色が
廃業、つまりやめてしまう業の率、ダイダイが
開業の率、新しく始める率ですが、実は
開業する率は高まってはいるわけで、
企業数は全体では増えるような
傾向があるんですが、それにも増してやめてしまう
企業が多い、したがいまして
年間十万社
減少ということに実はなるわけでございます。
したがいまして、
幾つか問題はございますけれ
ども、例えば次の担い手である
経営者がいない問題、
事業の承継問題と言っておりますが、そういったことがあるのではないか、あるいは地方では
地域産業それ
自体が振るわなくてその結果
廃業せざるを得ないというような問題があるのではないか、様々な問題が実は出てまいりまして、
企業数をいかに維持するかというのも
我が国の長期的な
視点では大事な
視点ではないだろうかと考えているわけでございます。特に、新しい二十一世紀の
産業のプラットホームをどうするかという問題につきましても、
産業自体が支えられている様々な
技術分野が疲弊してしまいますと、これはなかなかうまくいかないという問題もございますので、その辺の問題も視野に入れていかなければいけないのではないだろうかと考えております。
七ページ目をひとつ御覧いただきたいと思うんですが、これは今、
開廃業率ということを申し上げたわけですけれ
ども、
企業全体ですと実は
廃業の方が多いと申しました。ところが、第三者を雇用しているような
企業、つまり
企業としてそこそこやれるようになった
企業というのは実は
直近では少し多くなってきている、つまり
開業が実は多くなっているわけでございます。したがいまして、全く捨てたものではなくて、新しいものをやろう、新しい業を起こそう、そしてそれを雇用に結び付けようという
企業はある
意味では非常に多くなってきているということでございますので、こういうところをターゲットにして、こういうところに
資金がきちっと回るような考え方、仕掛けが必要になってくるのではないだろうかというのが私が申し上げたい
ポイントでございます。
産業というのはそういう
意味では非常に広い
すそ野を持っておりますから、
すそ野をいかに維持するかということが大きな
ポイントになるのかなと考えております。
最近、そういう
分野、こういうことに関連しまして
金融的にはかなり改善が行われてまいりました。八ページ目に、図の六、DDSというのを書いておきましたが、実は
中小企業の大きな問題の
一つは、
借入れがあたかも
自己資金のようになってしまっていて、
疑似資本というような
言い方をしておりますが、長期の
借入れあるいは短期の
借入れが根雪のようになっていると、これを何とか解かしていかなければ
自己資本比率が改善しない、そして
金融監督上、
検査上の
債務者区分で問題が出てくるということがございます。
こういうところで、
借入れの一部を言わば
資本にカウントできるような手法を開発しようではないか、デット・デット・スワップなんという
言い方をしておりますが、こういったものが実はできておりまして、お示ししているのは、
再生支援協議会というところでやる
商品についてはそれを認めましょうというのが最近の
金融検査マニュアルで変わったわけでございますが、こういったものが実は使われるようになりました。ですから、こういうものが普及していくことが非常に重要なことではないかなと。
あるいは、
リスケ債権といいますが、
貸出条件の
緩和債権の見直しというのも実は最近
緊急経済対策以降進められてきておるわけでございますが、これは
債務者区分との
関係で
新規融資が可能になるようなケースが大分出てまいりますので、貸し渋り
対策としては大分よろしいのではないかなというふうに考えておりますが、そういう形で
幾つか
政策が取られておりますので、
是非そういうものをパッケージにしていただきまして新しい
政策に結び付けていただければと、こんなふうに考えております。
最後に申し上げたいことは、
地域密着型金融をより徹底していただきたいということでございまして、これは五年ほど前から
地域密着型金融、
リレーションシップバンキングというようなことを言っておりますが、
地域の
金融機関はそういうことに取り組むべきだ、
顧客との間の長い
取引関係を結んで、そこから出てくるような
情報を使って大いに
融資をしていくべきではないかということを考えているわけでございます。
その際に、従来は、どうしても
財務情報を中心にすると、
景気が現在のように悪くなりますと
財務の
数字は当然のことながら悪くなるわけでございます。ですから、そういう形で
資金が出ていかないということが
課題になるわけですけれ
ども、そこを何とか克服する必要があるのではないか。
私は、九ページ目をちょっと見ていただきたいと存じますが、最近、
知的資産経営という
言葉を実は使っておるのですけれ
ども、
企業の見えない
資産があるではないかと。これは俗に非
財務情報と呼ばれるものでございますけれ
ども、あるいは
定性情報と呼ばれるものでございますが、
企業というのは
数字だけで表れるわけではない様々な、例えば
経営者の理念でありますとかあるいは戦略でありますとか、あるいはその
企業の持っている
技術力あるいはネットワーク、あるいは業界でのレピュテーション等々、
財務諸表では把握できない様々なノウハウあるいは
資産を持っているわけでございます。これはヨーロッパなどではインテレクチュアルキャピタルなんという
言い方をしておりますが、これを
是非我が国でも定着させていったらどうだろうかと。
現在でももちろん
融資にこういうことを考えておるわけですが、これが具体的にビジュアルでない、見えないものですから、見えるような形で、これは
知的資産経営報告書などといっておりますが、そういうものができてそれを
融資に使うというようなことが実は必要ではないかと考えております。
これは一部は
金融庁の
監督指針にも書かれているわけですが、一部の
金融機関でも取り組んでいただいておりますけれ
ども、こういったものを普及させて、こういう時期でございますので、
是非融資の中で活用していただけたら
日本の
中小企業のためには大いに役に立つのではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
私の
発言は以上でございます。