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参考人(
佐藤久男君)
NPO法人蜘蛛の糸の
佐藤久男と申します。よろしく
お願いいたします。
自殺率でワーストワンの
秋田県において、二〇〇二年の六月から
中小企業経営者と
家族の
自殺防止に取り組んできました。七年目の
活動になります。
私は、二十六歳まで
秋田県庁の職員でありましたが、脱サラして
会社を四つぐらい立ち上げてきました。年商は当時は十五億ぐらいの
会社で、
社員が四十名ぐらいあったんですけれ
ども、二〇〇〇年の十月二日に
売上げ不振で
倒産をいたしました。
倒産後の後遺症でうつ病に二
年間ぐらいなりましたけれ
ども、そのときに
幻覚症状だとか
フラッシュバックという
状態で死んでいく
経営者の心理というものが
自分で分かってあった時期があります。そのときに友人の
経営者が自殺したんですね。
地域を
代表する有能な
経営者で、
青年会議所の
理事長とかやった方でした。そのときに、その悲報を聞いたときに私は激しい感情が
自分に立ち上がってきたんですね。それで、
中小企業が戦後の
日本を支えてきたんじゃないかと。現在でも九九・七%は
中小企業ですよね。そういう
人方が
倒産で死んでいくというその
日本の
現状に対して、私は
秋田県でありますけれ
ども、ほうっておかれないというような気持ちが、今そういう気持ちで
活動をやっております。
相談
件数が大分増えてきまして、前は四十五社ぐらいだったんですけれ
ども、去年は七十八社だと思います。現段階で、上期だけで七十五社ぐらいになりましたので、一
年間で百社を超えていくだろうというような
状態でありますけれ
ども、今日は二つのことを述べさせていただきます。一つは、相談現場から見る
地域社会の実態というものを少しお話しさせていただきます。もう一つは、
中小企業経営者の自殺問題についてどういうふうに思うかということを、二点をお話しさせていただきたいと思います。
まず、お
手元に簡単なレジュメを渡してありますけれ
ども、これは一人当たりの県民所得の格差を示してみました。
東京は四百七十七万八千円ということで、次第に
景気が良くなってくると同時に一人当たりの所得が上がっていくというのがここに見えていますけれ
ども、
秋田県は四八%、
日本の中の半分ですね。それが
秋田県の
経済の実態です。それで、
地域格差、限界集落とかあるところは百五十四万八千円ということで、
東京の三二%ですね、三分の一ですね。だから、我々は失われた十年という言葉は使わないんですね。失われた十五年とか失われた十八年ということで、そんな
日本の
経済の好況が地方には反映しないということを一言申し上げたいなと思います。
それから、次の表は、
倒産件数と自営業者の自殺者数でありますけれ
ども、
年間、
秋田県は百件ぐらいが
倒産しますが、亡くなる方は大体八十名ぐらいの方が亡くなります。これは、
倒産した方が八〇%亡くなるという
意味ではありませんので、これは現場でだんだん分かってきました。
それで、去年、アンケート、おととしのですね、百社のアンケートを取りましたら、ここにお示ししてありますので簡単に流していきますけれ
ども、まず五十代とかこれ年齢層が下がってきているということですね、
倒産の年齢層が下がってきている。
それから、創業して何年かという質問に対して、三十一年以上、しにせですね、しにせの
会社が
倒産している。しにせの
会社というのは本来は不動産とかいっぱい持っているんですけれ
ども、
秋田県の不動産は三分の一にしかなりません。
秋田市の駅前が八五%下がったんですね。ですから、八五%下がるということはほかの
地域もそれに連動して下がっているということで、不動産の価値、担保価値がなくなったということが言えます。
それから、一番心配しているのは、最初は
小売業の
倒産が多かったんですね。それで、三年ぐらい前から公共事業の
倒産が、相談が増えてきました。それから、農林業に波及しているんですね。これ、非常に大変なことだと思うんですけれ
ども。公共事業の中に農家の世帯主さんが働いているんですね。働いて農協から融資を受けて住宅ローンを使っているんですね。それで、公共事業がなくなるものですから住宅ローンが返せないということで、農家の破産が非常に起こってきていると。林業もそうですけれ
ども、第一次
産業に向かって破産が出てきているということが
現状だと思います。
それから、危機の原因は、
売上げ不振ですね。三分の一とか半分ぐらいは、もう完全に半分ぐらいになっていますね。そんな
状態であります。
それから、
負債金額でありますけれ
ども、一千万以下の方々が相談が多いと。これが初めて私は気が付きました。というのは、
倒産する方々のデータの中には一千万以下のデータはないのですよ。一千万以上の
負債で自殺すると。それはなぜかといえば、サラ金とかやみ金で五百万とか六百万の
負債を抱えて、それで
倒産データに出ない方々が死んでいるということを現場で気が付いたんですね。
それから、相談後の
状況でありますけれ
ども、相談後に、なかなか自殺問題というのは難しいです、正直言いまして。去年のデータで、二百六十四社のときに二人亡くなりました。相談後ですね。今年も八月の八日に三人目の方が亡くなったんですね。自殺問題は難しいですね。だから、本当に難しいなと。果たして、民間のNPOが自殺問題にかかわることの難しさをしみじみと感じております。目の前で亡くなると一か月前に会った人の顔が浮かびますからね。だから、非常にやっぱり自殺問題は難しいということを思います。
自殺
対策基本法が、本当にこれは有り難い法律だと思うんですけれ
ども、参議院議員の山本孝史先生が作られましたね。我々は、この民間で
活動している者たちは、バックグラウンドを与えていただいたということで、故山本先生に深い感謝を本当に申し上げたいと思います。ただ、自殺
対策はおととし始まったんですけれ
ども、自殺
対策総合大綱も去年できましたが、まだ始まったばっかりですね。だから、これからということですね。
それで、
日本の自殺者数と自営業者の自殺者数の数でありますけれ
ども、おおむね一〇%、亡くなる方の一〇%が
経営者の、この
経営者という分類がないのですよ、自営業者というんですね。これは、御商売やっている人は全部、弁護士さんとかそれから先生だとかお医者さんとか、全部の方を含むんですけれ
ども、まだおおむね
中小企業が大部分ですので、三千人から上の方が毎年亡くなります。
それで、自殺問題のキーワードは、一九九八年という、私、魔の活断層と勝手に名前付けたんですけれ
ども、これが、一九九八年ショックと言う方もいますね。この年に三四%上がったんですね、いきなり。それで、じゃ何で上がったかということなんですけれ
ども、前の年に北海道拓殖
銀行が
倒産しました。山一証券も
倒産しましたね。それから、金融不良債権が七十六兆円とかというので、
銀行が貸し渋りをやった年ですね。いきなり、今まで一九九〇年から、バブル崩壊してからずっと
経営者が悩んでいるときにピストルの引き金引いたんですね。ずっと
売上げが不振の時期に融資を止めちゃったんですね。そのために一気に自殺者が増えましたね。
増えた中身を見ますと、
経済問題だとか勤務問題、家庭問題ということで、
経済苦にかかわるものが増えた、ほとんど増えましたね。だから、この数字を見ていると
対策の前途も見えるんじゃないかなと。
経済問題から考えればいいのじゃないかなというふうに、多重債務だとか
経営者の
倒産とかですね、思います。
それから、次の表は都道府県別の自殺者率でありますが、東北三県は非常に多いということが言えます。それで、
秋田県は、このワーストワンの十三
年間で五千七百六十七人亡くなったんですね。そうすると、
秋田県でいうと、小さな町ですね、町の人口が十年足らずの間に死んでしまったということが言えます。ただ、とはいっても、非常にこの
対策が進んでいまして、ここ五
年間ぐらいで下がってきました。去年四百二十人ということで、一八ポイントぐらい下がりましたね。そういう
状態にあります。
それから、次の表は、
全国的には一〇%前後の亡くなる方でありますけれ
ども、
秋田県は一五%という
状態ですね。だから、やっぱり地方の方が
経営者の亡くなる方の率が多いということがこれで言えると思います。
私は、最初の三
年間ぐらいはダッチロールして、迷走した
活動をしておったんですけれ
ども、三
年間で五百件ぐらいの相談を終えた段階で、
経営者の自殺というのは減らし得るというふうに私は思い始めたんですね。それで、私のこれ目標じゃなくて念願ですけれ
ども、半分にしたいと、十
年間掛けて
秋田県の
経営者の自殺を半分にしたいというのが私の夢です。
それで、なぜ
中小企業経営者の自殺は減らしやすいかということを次に書いておりますね。それは病気じゃないということですね。うつ病だとか、そういう病気じゃないとこれは言っているんですね。それから、
倒産とか
経済事象というのは一過性の要素があります。三
年間ぐらい悩むんですけれ
ども、三
年間の間の一過性の要素があるということも一つ言えると思います。それから、今は民事再生法だとかいう法律ができまして、現場で解決方法を示せるということですね。四つ目は、私は人間というのは生きる力が強いものだというのを現場でつくづく思っているんですけれ
ども、人間とはすばらしいものです。人間というのは強いものですね。だから、人間の強さというものが、それで復元してきますね、一
年間とか二年目、三年目というふうにですね。だから、人間というのは簡単に死なないものですね。だから、復元してくるまで
セーフティーネットを張って下からサポートするということがあれば、
日本の自殺も私は相当防げるんじゃないかなというふうに思っています。
それで、私は
地域を
活性化するためには、
地域を元気にするためには、二つの方法があるんじゃないかと。二つの方法。一つは、既存の
会社の創業だとか
企業誘致だとか、公共事業の投資ですね、
地域社会に
雇用をもたらしたりして
活性化する方法、これが一つですね。もう一つは、自殺問題だとかがん
対策とか、
地域の抱える問題点を解決して
地域社会に活力を取り戻す方法と、この二点があるんじゃないかと思いますので、御報告申し上げます。