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下条みつ君
民主党の
下条みつでございます。
私は、ただいまの
麻生総理の
金融サミットの
報告に対しまして、
民主党・
無所属クラブを
代表して
質問させていただきます。(
拍手)
麻生総理、
大変ハードスケジュールな
金融サミット、お疲れさまでした。
総理の得意とされている外交と
経済分野ですが、二十カ国の
首脳の中で、わずか二日間でその
存在感をアピールされるのは、さぞかし大変だったとお察し申し上げます。
ただ、きょうは、本音で思い切った
質問をさせていただきますので、
総理、よろしく御回答をお願いいたします。
まず、今回、緊急に
会合が
開催されるに至った
世界金融危機の問題です。その
原因とその
責任の所在について、
総理は一体どのようにお
考えでしょうか。
世界的な
経済学者ポール・
サミュエルソン教授は、悪魔的な
金融工学が
原因と指摘した上で、
金融商品に何が組み込まれているか理解していた
経営者は一人もいなかった、一連の
危機は過去八年間にわたる
市場の
規制緩和がなければ起きなかったと、
米国ブッシュ大統領の
政策の失敗を明確に指摘しています。
つまり、
アメリカの
住宅バブルの
崩壊によってサブプライムローンの
焦げつきに端を発した
巨額の
不良債権が、細かく切り分けられた
証券化商品のどこに入っているのかだれにもわからない状態になっており、
アメリカ政府も何のチェックもしなかったということであります。自由な
市場経済が
モラルハザードを引き起こすまで、
アメリカ政府が放置した結果だと言えます。
まず、この
金融危機の
原因と
責任について、
総理の御
認識をお伺いしたいと思います。
次に、
総理が表明された
IMFへの一千億ドル、つまり
日本円で約十兆円の
融資についてお聞きします。
原因と
責任の大
部分が
アメリカにある
金融危機に対して、なぜ、今、
日本が約十兆円もの
巨額の
融資を
IMFに対してしなければならないかであります。
日本の
外貨準備高は、
平成二十年九月末、約百兆円です。この
外貨準備高の一〇%に相当する十兆円を
融資する
根拠は一体何かということであります。
IMFの
資金規模は全体で約三十二兆円、
主要国からの
出資比率は、
アメリカが一八、ドイツが六
パー、イギリスが五
パー、フランスも五
パー、そして
日本は六
パーで、約二兆円の
出資をしております。
アメリカに次いで
世界で二番目の
出資国であります。今までは、自国の
経済規模に応じた応分の負担をきちんとしてきております。
総理は、
各国からの
IMFへの
出資規模を現在の三十二兆円から六十四兆円へ倍増することを提案され、これが
実現するまでの
緊急融資として、十兆円、実に提案された
増資額の三分の一を
日本が先につなぎ
融資するという大盤振る舞いを御提案されたわけであります。
そこで私が疑問に思うのは、第一に、現在、
IMFには約二十兆円の
余剰資金があります。それなのに、今なぜ
日本が十兆円
融資するかの
根拠が不明であります。
第二に、
世界各国の
外貨準備高を円建てで見れば、二〇〇八年四月時点で、
日本は約百兆円であるのに対して、
中国は百七十六兆円、ロシアが五十二兆円、
インドは三十一兆円となっております。したがって、
日本一国が千億ドル、つまり十兆円を出すには、非常に無理があると思います。
一体、
総理は、何を裏づけに、
日本だけが十兆円の
融資をするという判断をされたのか、理解に苦しみます。その
根拠をお示しいただきたいと思います。
このようにお聞きしますと、
総理は、
IMFへの
出資比率を
拡大することで、
発言力を確保するねらいがあると
お答えになるかもしれません。また、
IMFの
資金力増強に貢献して
新興国を味方につけ、
増資の際に
出資比率を
拡大する戦略と
お答えになるかもしれません。では、この
発言力とは一体何のことでしょうか。
もし
発言力が増すと、
日本国民にとってどのような
メリットがあるか、明確に御答弁いただきたいと思います。
さらに、百八十カ国を超える
IMF加盟
各国が
総理の提案した二倍の
増資に直ちに応じてくれれば結構ですが、もし、追加の
出資が実行されず、
IMFの資金が現在の三十二兆円から六十四兆円にならなければ、
日本が出す十兆円は、一体、いつどこから
日本に返済され、その
IMFの倍額
増資の計画は、どこまで話し合われ、
合意が取りつけられているのでしょうか。聞くところによりますと、
金融サミットに参加した二十カ国のうち、まだどこも
増資をオーケーしていないのではありませんか。
イギリスの
ブラウン首相は、
新興国が拠出金をふやすべきだとして、直接
中国に連絡したり、サウジアラビアやカタールなどの産油国へ出向いていますが、まだ
増資を承諾したとは伝えられておりません。今回の
金融サミットでも、
日本以外に
融資の意向を示した国はありませんでした。
日本と
世界銀行との
出資で設立する
中小国向けの三十億ドルの新しい基金についても、
中国に協力を断られ、
日本単独になったと伝えられています。
このように、十兆円の
融資について、どこまで国際的な調整、根回しができているのか、非常に疑問であります。どこかの何とか給付金と同じで、全く生煮えではありませんか。
これまでの
IMFの緊急
支援融資は、その
融資条件が厳しく設定されており、
融資先の国における財政、
金融両面の引き締めや弱体化した
金融機関の閉鎖などが厳格に求められておりましたが、今回は、それを大幅に緩和する方針であると伝えられております。ということは、
日本が
融資する十兆円は、非常に甘い条件、緩い
審査でどんどん
新興国、
中小国へ貸し付けられていくという結果になりかねません。その点についても、
総理は一体どうお
考えなのか、
お答えいただきたいと思います。
冒頭で申し上げましたように、
原因と
責任の大
部分は
アメリカにあります。ブッシュ大統領の
経済政策、
金融政策の失敗と
アメリカの投資銀行の
モラルハザードにあります。その後始末に、
日本一国だけが十兆円もの
巨額で危険な
融資を背負う必要がどうしてあるんでしょうか。
総理は、きちんと国民に
説明すべきです。なぜ、
出資比率に応じた
主要国からの協調
融資ではなくて、
日本一国の
融資なのかをです。
さて、私がなぜこう言うかといいますと、
総理はよく御存じだと思いますが、主要
先進国における
各国政府の債務残高、この対GDP比を国際比較してみますと、二〇〇八年現在、イギリスが五〇%、フランスが七一%、イタリアが一一七%、そして、
日本は一七一%。
日本は、GDPの一・七倍に上る借金大国、先進七カ国の中で最悪の水準であります。他の
先進国が着実に財政健全化を進めて、対GDP比の債務残高を減らしている中で、
日本は急速に悪化、最近の四年間では対GDP比一七〇%を超える借金大国になってしまったんです。その
日本が、なぜ一国だけで十兆円拠出するのかという意味であります。
総理は、
外貨準備からの
融資だから直接財政に響かないとおっしゃるかもしれませんが、
外貨準備も、もとをただせば国民の税金ではありませんか。それも、赤字国債を発行して
日本が借金をしたお金で
米国より買わされているものであります。つまり、
日本は、借金をして積み上げた
外貨準備のお金を
IMFに出そうとしているのではないでしょうか。
また、もう一つ御紹介したい数字があります。自殺率の国際比較であります。
WHOの資料によると、人口十万人当たりの自殺率で見たとき、イギリスは六十三位で七人、イタリアが六十二位で七人、
アメリカは四十三位で十一人、カナダは四十一位で十二人、ドイツは三十四位で十三人、フランスは十九位で十八人、そして、我が
日本は
世界の中でワースト第九位で二十四人であります。先進七カ国の中でやはり最悪です。これが
日本で苦しんでおられる方々の本当の姿ではないでしょうか。
さらに、株価の下落率を見てみます。
この九月から十月末にかけて主要株式指数を比較してみますと、今回の
金融サミットに参加した二十カ国は当然すべて下落しています。その下落率の小さい順番で見ると、先進七カ国で一位は
アメリカです。二位がイギリス、三位がフランス、四位がドイツ、五位がイタリア、六位がカナダ、そして、最下位は
日本であります。悪い悪いと言われた
米国は、実は
参加国で一番下落率が低くて、反対に
日本は一番悪いんです。
総理、これが
日本の株式
市場の現実であります。
借金率も最悪、自殺率もトップ、株価の下落も
最大、そんな
日本のありさまの中で、果たして、十兆円という
巨額の
融資を出すことに、国民感覚として、庶民感覚として非常に大きな疑問、大きな違和感を感じるのは私だけでしょうか。
総理、わかりやすく言えば、そんな場合ではないのであります。
国内を何とかしなくてはとお思いになりませんか。
そして、それでもなお、
総理の提案どおり、仮に
日本が
外貨準備から
IMFを通じて十兆円を
融資するのであれば、その後のチェック、フォローについても
責任を持ってかかわっていく体制にすべきだと思います。
総理、
金融サミットの場で、この点も当然強く主張されてきたはずだと思いますが、御
説明いただきたいと思います。
IMFの二〇〇六年の職員数は二千六百六十七人、このうち
日本は三十六人で、一・三%にすぎません。これまでの
出資比率が六・三%、今回十兆円出せば、実に二八・六%にはね上がります。
IMFから
新興国、
中小国への緊急
支援融資についても、
日本がその
審査や管理に積極的に関与できる体制を要求して当然だと
考えます。
実は、このことは、
総理が
IMFの
役割として提案された
早期警戒機能の
強化に深く関係しております。
そもそも
IMFの目的は、協定第一条に、国際
金融秩序を維持し、また為替制限を撤廃することによって
世界貿易の
拡大を図り、もって
経済成長を促進させるとあり、もともと、個別の
金融機関、個別の
金融商品を
監督、監視する機関ではありませんし、その機能も持っていないんです。そもそも、
経済や
金融状態の違う国ごとにそれぞれのルールに従って経営されている民間
金融機関を、
IMFが一つの基準で
監督していくことは現実的に難しいと思います。すると、
総理の言われる
IMFの
早期警戒機能とは具体的にどういうことなのか、お示しいただきたいと思います。
むしろ、従来からの
IMFの緊急
支援融資の制度の中で、きちっとした
審査、チェックをしていくことが基本であります。国際的取引を専門とする個別の
金融機関や、高度に専門化、細分化された
金融商品の監視、
監督、
規制は、
各国の
金融当局の協調の中で別の
枠組みで取り組むべき課題であると提案いたします。
総理の主張は、
規制、
監督の
強化を強く求めるフランスなどのヨーロッパ
各国と、
規制強化にもともと消極的な
アメリカの中間をとっただけに見えてなりません。
日本国内に目を転じれば、新銀行東京の失敗、農林中金の外債運用の問題など、どれも
融資の素人、運用の素人による失敗と言っても過言ではありません。同じように、
IMFはマクロ
経済の専門家であって、ミクロ
経済のプロではありません。
IMFに個別の
金融機関や個別の
金融商品を
審査、管理することを過大に期待してもかなり難しいと、
各国の多くの専門家の方たちも指摘しております。
現在の資金三十二兆円の
IMFに十兆円出すのですから、その先の運用についても、十兆円が垂れ流しになることのないように、
日本が厳しく
審査して、また、
審査体制について主張をして当然だと
考えます。
金融サミットの場で強く話されたと思いますが、
総理の御
説明をお聞きします。
総理、私は、困っている
中小国、
新興国を助けなくていいと言っているのではありません。
IMFに十兆円出すのなら、
日本は
日本の内情とその分に相応して
対応すべきであり、今、
日本の
国内で困っている人を救うことが先ですと申し上げているのであります。
具体的な例を挙げれば、全国の公立小中学校の耐震補強工事なら、総事業費おおむね三兆円、このうち三分の二を補助するとなれば、二兆円でできます。
子育て
支援を
考えても、全国の三歳から五歳までの幼児教育、つまり幼稚園や保育所にかかる保護者の負担は約七千億から八千億円で十分に賄えます。児童手当支給額を一律二万円にする場合の追加費用は約二兆円です。
医療で見ても、医師不足で困っている全国の自治体の病院の累積赤字総額は、約一兆九千億円で補てんすることができます。未就学児の医療保険の自己負担を無料化した場合、国の経費は千五百億円で済みます。
年金の関係でも、例えば低所得者への基礎年金の公費支給は、一兆一千億円でできます。
民主党が主張している農林漁業を守るための所得補償は、一兆四千億でできます。
そこで、今回発表された
金融サミットの
宣言を見ると、内需刺激の財政
政策の活用が盛り込まれております。
中国、
アメリカ、ヨーロッパ
各国などが打ち出した景気対策の総額は百兆円を超えております。実際の景気浮揚効果については懐疑的な見方も出されていますが、
日本国内の対策は、果たして、
総理が十月三十日に会見を開いて発表された生活対策だけで十分だとお
考えなのでしょうか。
総理は、会見の中でも、ポイントは
スピード、迅速に、選挙よりも景気であると国民への公約として言っておられますが、二次補正予算の提出は一体いつになるんでしょうか。当然、会期を延長してでも速やかに二次補正を提出し、
国会を正常化し、一刻でも早く国民生活を救うべきだと
考えます。会期の延長とあわせて、
総理にお伺いいたします。
総理は、
金融サミットを終えた後の記者会見で、
日本は
金融危機を一国だけで乗り越えてきたと自信満々におっしゃっていました。
総理、今の
日本は生活
危機なのであります。
きのう、与謝野大臣が景気後退を、内閣府がGDP成長率の二期連続マイナスなどを発表していますが、生活
危機を早く救うために、生活対策、景気対策をやっていくのが筋ではありませんか。