○倉吉
政府参考人 赤池
委員から大変重い御
指摘をいただきました。
今回の改正、
最高裁の判決が出た、それに伴う違憲状態を解消するための改正ではございますが、ただいま御
指摘のようなさまざまな御批判等々の文書が先生方のところにも来ているということも私ども承知しております。できるだけそのような御懸念、特に
委員のおっしゃっていた国家のあり方にかかわるということを十分に踏まえつつ、そのような御懸念のないように私ども精いっぱい努めてまいりたいと思っております。
簡単に、ただいま御
指摘のありました三点について申し上げます。
まず、罰則の点でございます。これは今度、虚偽の国籍取得届けがされたという前提で
お話しだと思いますので、それでされたと。そうすると、害されるのは
法務局等の事務の適正や信頼ということになります。しかし、何だ、役所の事務が害されるだけかということになろうかとは思いますけれども、そうは申しましても、国籍取得に関する事案というのは、
日本国の構成員である
日本国民の資格、これを適切に認定するための重要な責務であります。
そこで、類似の規定を見てみました。例えば、戸籍の記載または記録を要しない事項について虚偽の届け出をするという戸籍法百三十二条という規定がございます。あるいは、
外国人登録法の関係で、その申請の関係でさまざまな虚偽の申請をするということが起こり得る。これについて定めている
外国人登録法十八条というのがございますが、これらの規定の法定刑がいずれも一年以下の懲役または二十万円以下の罰金でございます。そこで、これに合わせまして今回も一年以下の懲役または二十万円以下の罰金としたところでありまして、これ自体は適切であると
考えております。
一つつけ加えさせていただきますが、よく誤解されやすいのが、いわゆる偽装認知、虚偽の認知をして届け出をしたときはこの一年以下だけなのかというふうに誤解されている向きがあるということでございます。
この一連の届け出をいたしますには、まず認知届けというのを市
町村に父親がいたします。そうすると、それについて、父親の戸籍の身分事項欄に、子の○○、どれそれという子を認知したというのが載るわけでございます。それから、その戸籍の証明書を持って
法務局に参ります。それで、今回新設するこの罰則に当たるところですが、国籍取得届けというのをいたします。
法務局では、そこで国籍があるという証明書を出しますと、それを持って今度、三回目、また市
町村に参ります。そこの市
町村で新たに届け出をいたしますと、今度はその子が
日本人になるということになりますので、その子供の戸籍を新たにつくる。つまり、三
段階あるわけでございます。
この第一の
段階と第三の
段階で、認知が実はうそなのに、親子関係がないのに虚偽の認知をしたということで届け出をしたということになりますと、これは公正証書原本不実記載等、戸籍に載りますので広く世の中をだますことになる、こういうことでございます。この罪名で、五年以下の懲役または五十万円以下の罰金となります。
だから、それぞれ個々の事案で、恐らくこの三つまで行ってしまうというのが多いだろうとは思いますが、途中で発覚して途中にとどまったとしても、それぞれの罰が科されるということになるので、適正な科刑ができる、こう
考えているわけでございます。
それから、DNA鑑定の話がございました。偽装認知のためにDNA鑑定すべきじゃないかと。これもよくわかる議論なんですが、実は、
委員の
皆様方御承知と思いますが、
日本の民法の親子関係を決める手続というのは認知で決まる、そのときにDNA鑑定を出せなんということは言わないわけでございます。ここに家族の情愛で自分の子供だと認知したというんだったら、それでとりあえずの手続を進めて、後でおかしなことがあったら、親子関係不存在とかそういうのでひっくり返していく、あるいは嫡出否認なんかでひっくり返していく、こういう法
制度、これが
日本の独特の
制度でございます。
それを踏まえますと、DNA鑑定を
最初の認知の
段階で持ち込むことになりますと、やはり親子関係法制全体に大きな影響を及ぼすな、これを私どもとしては
考えざるを得ません。
さらに幾つか問題がございまして、
一つは、DNA鑑定で一番難しいのは、検体のすりかえがないかということであります。すりかえられた検体で来られるとみんなだまされてしまいますから。それから、現在の科学技術水準に合ったきちっとした鑑定ができているか、そこを判断しなければなりません。しかし、それの判断が迫られるのは、
最初の認知届が出される市区
町村の窓口あるいはこの国籍取得届が出される
法務局であります。そういうところでそんな判断はできないという、ここに大きな問題が
一つございます。
それから、鑑定には相当の費用がかかります。そうすると、この費用の負担能力がない人にはどうしても手だてがない。それから、
外国国籍の子を認知する
機会にはDNA鑑定を義務づけるとすれば、それは
外国人に対する不当な差別ではないか、こう言われる可能性もあるということで、DNA鑑定の採用については消極に
考えております。
それでは対策できるのかというのが先生の一番おっしゃりたいことだと思うんですが、申しわけありません、長くなって。
法務局では、
最初に国籍取得の届け出が参ります。これには届け出人が出頭することが必要でありまして、また必要な戸籍などの書類を出していただきます。そのときに、当然に必要なことを聞きます。お父さんとどこで知り合ったのかとか、どこでどういう過程で子供ができたのかというようなことは聞きますし、その関係で必要な書類も確認をいたします。場合によってはというか、これはほとんど必然的だと思うんですが、その父親についての協力も求めたい、こう思っております。その子供が懐胎した時期に同じ国に滞在していなかったんじゃないかとか、そういう疑義が生じたということになれば、偽装認知の疑いもあろうかということになりますので、関係
機関とも連絡を密にして、さらなる確認を続けるということで、不正の除去に努めてまいりたい、こう思っております。