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山口参考人 お答えいたします。
まず、今回の
米欧におきます
金融システムないし
金融市場の動揺ということにつきまして、その本質いかんということでございます。
この一年、昨年の夏から、特にサブプライム問題に端を発する形でこの問題がクローズアップしてきた、このように見ていいんだろうと思いますが、当初は証券化商品の価格下落という形で、それを反映する形で流動性の問題として登場いたしました。それが次第にその問題の態様といいますか
内容を変化させてきまして、そういった証券化商品の下落に伴って、
金融機関の不良債権の問題ですとか、あるいはその結果として
金融機関の資本の十分性の問題ですとか、そういったようなことになってくるにつれまして、次第に
金融機関自身が貸し出し態度あるいは広く与信態度、こういったものについて非常に慎重化するという形に変わってまいりました。簡単に言ってしまいますと、信用収縮が起きる、こんなことが起きてきたわけでございます。
したがって、当初流動性の問題から次に信用収縮の問題に転換したということでございますが、さらに、実はそうした信用収縮をきっかけといたしまして、特に米国でありますけれども、
実体経済面、例えば、発端はサブプライムという住宅ローンであったわけでありますが、それが、商業用不動産、オフィスビルとかそういったものでありますけれども、そういったもののローン、それから広く自動車ローンなども含めまして消費者ローン、こういったものにまで延滞率が
上昇するという形で影響が広がってまいりました。
ということはどういうことかといいますと、信用収縮の結果として
実体経済にマイナスのインパクトが及ぶ、こんなことが生じてきたわけでありまして、結局のところ、
金融面と実体面が、マイナスのスパイラルといいますか、負の相乗作用を起こすようになってきているというのが現状でございます。
したがって、この本質というのを見抜くのはなかなか難しいのでありますが、この一年を振り返ってみますと、流動性の問題、それが
金融機関からの信用収縮の問題、そして結果として、
金融と実体の間の負の相乗作用が生じるといった問題に変わってきているということでございます。
これを振り返ってみますと、私どもが、
我が国で九〇年代、
金融機関の不良債権問題で非常に苦労してきたわけでありますが、その本質において
我が国の
経験と似たようなところがあるなというような感じを持っているところであります。
そうした本質論を見据えた上で、日本として、
我が国としての対応いかんということでございますが、そうした海外での影響というのは日本の
金融市場にもじわじわと広がってきております。
金融機関同士のお金をやりとりする場におきます金利についても、
金融機関の信用度において結構ばらつきが見られるということになっておりますし、それから、企業
金融におきましても、コマーシャルペーパー、CPの市場でありますが、レートが高どまりするといったようなことも生じておりまして、こういった面においてどのように対応するかが当面の課題という感じにはなってきております。
日本銀行としても、そういったことを見据えながら、
金融市場安定のために大量の資金供給を行う、それから、企業
金融を多少とも円滑化するということで、コマーシャルペーパーについてはオペレーションを積極化する、このようなことをやってきておるところでございます。今後とも、そうした構えを維持しながら万全を期してまいりたい、このように思っております。
それから、BIS規制についてでありますが、これは既にいろいろな議論が出てきております。いわゆるトレーディング勘定といいますか、証券化商品をやりとりする勘定につきまして、どのようにそのリスク管理を求めていったらいいのか、こういったことも含めまして、見直しの
動きが出てきているということだろうと思っております。
それから、もう一点は低金利のゆがみということでありますが、確かに、そういった目線というのは、私どもも大事な視点であるということでいつも意識しておるところでありますが、日本
経済の現状を見ますと、海外
経済からくるもろもろの影響、輸出も含めましていろいろな影響があるわけでありますが、そうした中で、やはり目下のところ、
景気は
停滞しているということでありますし、当面その
停滞を続けるという
状況でございます。したがって、我々としては、やはりそうしたことも踏まえながら
金融政策を考えていくべき
状況にあるんだろうというふうに思っております。
簡単ではございますが、以上でございます。