○藤本祐司君
民主党の藤本祐司です。会派を代表して、
国家公務員制度改革基本法案について
質問をいたします。
本
法案は、五月九日に
衆議院で審議が始まり、今週、
民主党と
与党との間で修正案に
合意いたしました。修正協議に御尽力をいただいた衆参の議員に敬意を表したいと思います。修正案には若干消化不良の面もありますが、
与党の議員に対しましても、
民主党の
考えを、一〇〇%とは言いませんが、存分に取り入れてくださったことを評価いたします。
本日は、その修正
法案を審議するわけでございますが、本
法案はあくまでも閣法の修正案です。参議院規則等により、本
会議では修正案の提案者には
質問ができないことになっております。しかも、アフリカ開発
会議の関係で総理も本
会議に出席してもらえません。こうした制約
条件の下での
質問ですので、多少ぎこちなさがあるかと思いますが、町村
内閣官房長官や渡辺公務員
制度改革担当
大臣がその点をカバーする分かりやすい
答弁をしていただけると信じております。
まずは、渡辺
大臣にお聞きします。難産の末に誕生させた
政府提出
法案が修正されたことに関しましてどのような感想をお持ちになりますでしょうか。率直にお答えください。
また、町村
内閣官房長官が
国民の
立場というよりも官僚の
立場に立っているため、本
法案の成立に消極的であると受け取られるような報道を私は何度か目にしました。修正された
法案が
衆議院を通過し、参議院で審議されるに至った今、本
法案の成立に向けての官房長官の本音をお聞かせください。
それでは、
法案の中身の
質問に入ります。
第一条には、
国家公務員制度に関する
政府の問題意識が書かれていると思います。
社会情勢の変化に対応した
国家公務員制度を構築しなければならないという問題意識です。つまり、変化が著しい
社会経済の中、いわゆる官僚システムが機能しなくなった、そのため、起業家精神あふれ、絶えず革新し続ける公共組織とシステムをつくることが
社会の要請となっていると解釈ができると思います。言い換えれば、優秀な
人材に
国家公務員となるインセンティブを与えつつ、雇主である
国民の
立場に立って国家のために
能力を発揮できる環境を
整備することが本
法案の目的であると思います。
渡辺
大臣にお聞きします。本
法案が成立した場合、現在の霞が関はどのように変わるのでしょうか。
第五条では、
政府案に「
政府は、
議院内閣制の下、政治主導を
強化し、」と、政治主導という言葉が追加されました。そもそも、
議院内閣制であれば政治主導は当たり前なんです。最近、官僚
内閣制という言葉をよく聞きます。官僚
内閣制とは、官僚から成る
省庁の代理人が
内閣を構成すると解釈ができます。言ってみれば、
大臣が各
省庁の代弁者であるという意味になります。修正案で政治主導という言葉が追加されたのは、
議院内閣制であるはずの
日本がいつの間にか官僚
内閣制になってしまった、それを正しい方向に戻そうという意図があると私は思います。
官房長官は、この言葉を追加した意図は何だとお
考えになりますでしょうか。
政府案では政官接触が制限されていました。恐らくイギリスを参考にされたのでしょう。イギリスの官僚は、不偏不党が最も大事だと
考えて、政治家との関係には細心の注意を払っていると言われています。しかし、修正案では政官接触の制限条項が削除されています。
我が国はイギリスなどのヨーロッパの先進諸国と比べて
情報公開が遅れています。官僚の
情報隠し、さらには公文書管理のお粗末さが
日本の
行政府の大きな問題なんです。それゆえ、
我が国では政治家ですら
情報を入手することが困難です。特に野党に対しては、
情報入手に際しては、時間は掛かるわ露骨な
情報隠ぺい工作はするわとひどいものです。
また、イギリスは成熟した
議院内閣制の国であり、政治家が官僚をコントロールしています。それに比べ、さきに述べましたように、
我が国は官僚
内閣制であります。そのため、政治家と官僚との接触を制限すると、官僚に
情報が集中してしまい、ますます官僚
内閣制が強くなってしまいます。それゆえ、政官の接触を制限する条項を削除したと推測します。
その代わりに、修正案では、官僚が政治家と接触した場合、記録を作成し、
情報公開の
対象とするとしました。より透明化を高めることによって、政治家の口利きを抑制できるとの意図だと思います。しかし、これでは今の仕組みとほとんど変わらず、実効性には疑問が残るとの批判もあります。確かに、当の官僚と政治家が談合して接触したことを隠してしまえば、今と変わらない結果になってしまうかもしれません。
渡辺
大臣にお聞きします。政治家と官僚の接触を
禁止することを主張されていた
大臣ですが、
禁止どころか制限条項も削除されたことについて、お
考えをお述べください。また、修正案の実効性を高めるために努力していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
さて、多くの
国民は
国家公務員の度重なる不祥事に激しく怒っております。恐らく
国民は、霞が関
改革の中心は官僚の不祥事をなくし、税金の無駄遣いをなくすことだと
考えているのではないでしょうか。その不祥事の原因の一つが天下りです。天下りが税金の無駄遣いを助長することは
国民はみんなが知っています。しかし、本
法案には天下りについての
規定はありません。
政府は、官民
人材交流センターを
設置することで天下りを是正できると主張していますが、私はそうは思いません。天下り問題に対する
見解を渡辺
大臣にお聞きします。
天下りの原因は、早期退職勧奨
制度にあります。つまり、早期退職勧奨
制度を廃止することが天下りの廃止につながるんです。本
法案では、定年まで勤務できる環境を
整備するとしており、修正案では一歩踏み込んで、定年を段階的に六十五歳に引き上げることを
検討するとしています。引き上げると断定せずに、
検討するにとどめたことは残念ではあります。
渡辺
大臣にお聞きします。本
法案に記されている定年まで勤務できる環境とは、どんな環境のことをいうのでしょうか。
現在、平均退職勧奨年齢は五十五・八歳です。平均ですから、四十代後半でいわゆる肩たたきに遭う公務員もいると思います。私も五十一歳ですので、そろそろ肩たたきに遭うころだと思います。
私は、年齢にかかわらず、働く
意思と
能力のある
人材には、その
能力を発揮し続けてもらうべきだと思っています。特に、少子化、
高齢化が進む
日本において、高齢になっても存分に
能力を発揮できる環境を整えることが大切です。このことは、
民間だけではなく、公務員の世界も同じだと思います。
また、別の見方をすれば、年を取ってから公務員が
民間に再就職するのは、
能力の有効
活用という点からも問題があるかもしれません。というのは、民でできない仕事を官がやっているのですから、官で長年勤務して身に付けた
能力は、
行政や公務部門で発揮してもらうべきなんです。ほかでは使えない仕事の
能力を特殊人的資本といいます。その特殊人的資本を身に付けた公務員が
民間に転職しても、口利き以外の
能力を発揮することはむしろ困難である場合が多いと思います。
官房長官に伺います。私は、今後、官民問わず生涯現役
社会を構築するべきと
考えますが、御
見解を伺います。また、そのためにも、早期退職勧奨
制度を廃止すべきと
考えますが、いかがでしょうか。
我が国の
国家公務員制度の
人事における大きな特徴は、キャリア
制度による幹部候補の固定化と横並び昇進です。
現実には、
人事権は各
大臣ではなくて、各
府省の事務方が決めた
人事を
大臣が追認して、最後は閣議決定するという手順になっています。つまり、各
府省の官僚が
人事を自律的に行ういわゆる仲間内
人事となっています。
政府案では、
内閣人事庁を
設置して
人事管理を行うとしていましたが、修正案では、
内閣官房長官が
人事を管理し、その事務を行うために、
内閣官房に
内閣人事局を置くと修正されました。
官房長官にお聞きします。修正案で
規定された
内閣人事局を
内閣官房内に
設置する場合、どのような
課題が想定され、どのような
課題解決策が
考えられるでしょうか。
本
法案では、現行のキャリア
制度を廃止して新たな試験
制度を実施するとしています。
国家公務員試験のⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種の採用の試験区分をやめて、総合職、
一般職、専門職試験に改めることとしています。また、新
制度では幹部候補
育成課程を設けることとしています。幹部候補
育成課程における
育成対象者を
総合職試験合格者から選ぶとしたら、これまでのキャリア
制度と実質的には何も変わらなくなってしまうのではないでしょうか。
渡辺
大臣に
お尋ねします。新
制度に移行した場合、幹部の固定化と横並び昇進は本当になくなるのでしょうか。なくなるとしたら、その理由をお答えください。
修正案では、幹部職の
人事は
内閣人事局が一元管理するものの、総合職の採用、配置には関与しないこととしています。今までは、公務員の採用は各
府省で決定してきました。それが縦割り
行政の弊害を生み、省益優先を招いたとの批判があります。
社会が
複雑化している今、
国家公務員にはこれまで以上に
専門性が求められます。ただ、私は、新卒の試験
合格者には
専門性はさほど期待できないと
考えます。大学を卒業しただけで
専門性が身に付くほど、簡単には
専門性は身に付くものではないんです。
国家公務員に
専門性が必要とされるならば、むしろ本人の
意思を重視すべきです。好きこそ物の上手なれなのです。本人の希望を尊重しなければ、やる気のある優秀な
人材が集まらなくなってしまいます。やる気があればあるほど、また問題意識が強ければ強いほど、
自分のやりたいことをやれないかもしれない
国家公務員には応募をしないケースが想定できるのではないでしょうか。
しかし、そうはいっても、どこかの段階で、例えば採用後十年程度がたってその
府省の
文化に染まってしまう、あるいは各
府省の帰属意識が強くなる前に、
内閣人事局で一括管理するということも必要だと思います。渡辺
大臣のお
考えをお聞きします。
労働基本権の
在り方については、本年二月に答申された公務員
制度の総合的な
改革に関する懇談会報告書と比べて
政府案は後退していたような気がしました。修正案は
政府案よりは一歩前進しているような印象を持ちますが、それでもまだ意味不明なあいまいな表現になっている部分もあると思います。協約締結権の付与については、町村官房長官と渡辺
大臣のお二人にそれぞれのお
考えをお聞きしたいと思います。
本
法案は、
国家公務員制度を
規定したものです。しかし同時に、政治家、特に閣僚の
在り方を正す
法案になっていると思います。
法案には
議院内閣制の下とか、政治主導を意識させる表現が盛り込まれています。これらの言葉が
法案に盛り込まれるということは、裏を返せば、これまでの長い間
内閣を構成する政権政党がいかに政治主導でなかったのかを証明していることになります。官僚言いなりの閣僚、
与党政治家のトラの威を借りて省益を守ってきた官僚とその官僚に操られてきた政治家、
質問作りでさえも官僚に任せる議員、そして官僚に書いてもらった原稿を棒読みする
大臣等々、そんな閣僚や政治家に対する批判や自省そのものがこの
法案なのではないでしょうか。
正直言って、私には本修正案でもまだ足りない部分があります。しかし、初めの一歩がなければ前へと進めません。その意味で、本
法案は必要不可欠だと思います。与野党を問わず、官僚
内閣制を破壊して、
議院内閣制へと近づくための努力が必要だと思いますが、最も手っ取り早く
効果的な
方法は、実は政権が替わることであるということを申し上げて、私の
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣渡辺喜美君
登壇、
拍手〕