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2008-01-22 第169回国会 参議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年一月二十二日(火曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二号   平成二十年一月二十二日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、裁判官訴追委員予備員辞任の件  一、裁判官訴追委員予備員選挙  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 江田五月

    議長江田五月君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  佐藤昭郎君から裁判官訴追委員予備員を辞任いたしたいとの申出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 江田五月

    議長江田五月君) 御異議ないと認めます。  よって、許可することに決しました。      ─────・─────
  4. 江田五月

    議長江田五月君) この際、欠員となりました裁判官訴追委員予備員一名の選挙を行います。  つきましては、裁判官訴追委員予備員選挙は、その手続を省略し、議長において指名することとし、また、同予備員職務を行う順序は、これを議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 江田五月

    議長江田五月君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、裁判官訴追委員予備員牧山ひろえ君を指名いたします。  なお、同君の職務を行う順序は、第四順位といたします。      ─────・─────
  6. 江田五月

    議長江田五月君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る十八日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。輿石東君。    〔輿石東君登壇、拍手〕
  7. 輿石東

    輿石東君 質問に先立ち、今は亡き山本孝史先生の御冥福を心からお祈り申し上げます。  民主党・新緑風会・国民新日本輿石東です。会派を代表し、政府演説に対して質問をいたします。  迎えた新しい年、今年はねずみ年福田総理昭和十一年、一九三六年生まれの年男とお聞きしております。今から七十二年前のこの年には二・二六事件が起こり、その後日本は暗い時代へと一挙になだれ込んでいきました。  この二・二六事件の背景には、昭和恐慌など当時の日本社会閉塞状態があったとされておりますが、現在の日本社会もまた、自民党長期政権の下でバブル崩壊以降の不況から十分立ち直れず、これに加えて深刻な少子高齢化など、ひどい閉塞状態に陥っている点では当時と似ているところも少なくありません。  そして、平成も、はや二十年、平成元年当時の竹下総理から現在の福田総理まで、日本総理大臣はこの二十年間に何と十三人を数えます。驚くべき数であり、まさに政権の非力と迷走を物語っていると言わざるを得ません。  総理は次々に替わっても、年金制度の将来設計は一向に見えず、借金漬け財政にも、進む少子高齢化にもこれといった対策を打ち出せず、経済の陰りは隠せず、生活苦のワーキングプアは増えるばかりであります。日本はいよいよ沈みつつある船になっているのではないかと全国民は不安に思っております。  それにもかかわらず、福田総理、あなたはこのような国内の事情を一顧だにせず、ほとんど何の対策も打ち出しておりません。その一方で、アメリカの顔色ばかりうかがい、給油新法の成立に血道を上げました。前国会の会期を二度も延長し、異常な越年国会にした挙げ句、参議院給油新法案を否決した際には、両院協議会の開催も求めずに、直ちに、半世紀、五十七年ぶりの衆議院での再可決を行ったのであります。  近年の事例を見ますと、再延長までした昭和六十三年の臨時国会や、越年、年越しになった平成六年の臨時国会においては、竹下、細川の両総理が退陣に追い込まれております。また、今年は洞爺湖サミットが開催されますが、日本サミットが開催された年にはいずれも衆議院解散・総選挙が行われているのであります。歴史は繰り返すと言われますが、今年はまさに決戦の年となるでありましょう。  さて、私たち政権交代を目指して昨年の参議院選挙与野党逆転を果たすことができました。これを受けて、前国会では、来るべき総選挙国民の皆様から政権への御支援をいただくため、民主党の重要な政策をすべて法案の形で議論してまいりました。その結果、ねじれ国会では法案が一本も通らないのではないかという当初の懸念をよそに、暮らしに関係の深い法案中心に、改正も含め、一昨年の臨時国会を超える二十六本の法案が成立したのであります。給油新法案のように足して二で割るというわけにはいかない分野はともかく、多くの分野与野党国民立場に立って歩み寄った結果であります。既に本格的な政権交代への助走期間は終わったのであります。  これに対し、与党は今のねじれ国会異常事態ととらえ、国会審議を円滑に進めることができるような与野党間協議ルールづくり提案しております。しかし、それは与党案を押し通そうとする考えから出てくるこそくな発想であり、本末転倒であります。  ねじれを生んだのは参議院選挙で投じられた一票の積み重ねであることを忘れてはなりません。民意は、自公政権法案をやすやすと成立させることよりも、与野党間の真摯な議論を経て法律が生まれてくることを望んだのであります。政府与党ねじれで苦しむのは、国会政府のやることを追認するための機関としてしか見てこなかった長年のツケが回ってきたからにほかなりません。  そこで、まず、ねじれが続いている今度の通常国会に臨む福田総理の基本的な政治姿勢についてお聞かせいただきたいと思います。  ところで、衆議院参議院で否決された法案を三分の二の多数で再可決できることは憲法が定めたところではありますが、同時にそれはあくまでも憲法上の例外的なことだと考える必要があります。総理は、この点についてどのような考えをお持ちでしょうか、伺っておきたいと思います。  報道によれば、自民党の中には、四月からのガソリン等の値下げを阻止するために租税特別措置法など予算関連法案を再びこの方法を使って可決、成立させるべきだという意見もあるようであります。しかし、そのようなことが許されるでしょうか。最初から与党がそのような態度で来られるなら、参議院は不要、要らないということになるからであります。  先ほども述べたとおり、さき臨時国会では、我が党の賛成可決、成立した法案もたくさんありました。そもそも国会とは議論の場であります。そして意見対立をすり合わせ、良い結論に持っていくのが議会制民主主義というものではありませんか。  最初から多数決でといえば、選挙投票日国会は終わってしまうということになります。開票された時点で既に国会の採決が決まるのですから、与党内閣提出法案賛成か反対かを私たちに迫ることになりますが、それは明らかにおかしいのであります。許されることではありません。法案はあくまで案であって、それをより良い法律に仕上げるのが我々国会の仕事であります。  国民のために良い法律を作ることが何よりも重要であり、そのために法案を十分議論しようではありませんか。そして、折り合いが付くところでは折り合う。どうしても賛成できない点は反対する。それが議会であります。  しかも、給油新法案は与党がたまたま衆議院で三分の二の多数を持っているから再可決できたのですが、これから与党が常に衆議院で三分の二の多数を持つことは不可能でしょう。また、総理は、今回給油新法案を国際公約だといって再可決を使われた。私たちは認めないが、あなたにとってこの法律国際公約だったのでしょう。  そこでお尋ねします。あなたは今後も三分の二の再可決をお使いになるのか。特に国際公約でもない法案、例えば租税特別措置法等でもお使いになる意向があるのか、明快にお答えください。  さて、間もなく始まる租税特別措置法審議などで、もし与党側今期通常国会においても再び参議院をないがしろにするようなことがあれば、私たち総理大臣問責決議案提出も辞さない覚悟であることをこの通常国会の冒頭においてあらかじめ明らかにしておきたいと思います。  国政において総理大臣問責決議は極めて重いものであります。それを総理が適切に受け止めるならば、自ら総辞職するか又は衆議院解散を行わざるを得ないと思われます。したがって、私たち参議院はそれだけの責任考え総理問責決議を行わなければなりません。しかし、その一方で、私たち参議院も、直近の民意を反映しているという国民に対する責任もあるのであります。  もちろん、私たちは、政府与党意見が異なれば何でも反対し、総理問責決議案提出しようとは考えておりません。  その条件は、一つには国民生活にかかわる大きなテーマであること、二つには与党との対立について十分な国会の場で議論し、問題点が明らかにされていることなどであります。そして、できる修正は折り合いますが、それでもなおかつ政府が無理押ししてくるならば、そのとき私たち国民民意を受けて重大な決意をしなければなりません。それが参議院第一党の責務であると考えます。総理見解を伺います。  福田内閣がスタートして百日余りが経過しました。私はさき代表質問で、福田総理政権をスタートさせるに当たって、貧乏くじかもしれないなどと述べた消極的姿勢を批判してまいりましたが、残念ながらその懸念は的中してしまいました。  前の小泉安倍の両政権は、その方向に大きな問題があったとはいえ、内閣でやりたいこと、その意欲は明快でした。しかし、福田総理、あなたは一体何をやりたいのか、日本社会をどういう方向に導いていきたいのか、今もってさっぱり分かりません。むしろ、何もしないことによって単に政権交代を遅らせ、日本社会の混迷を更に深めさせているとしか思えないのであります。  まず、あなたの目指す社会とは何か、そして、そのためにこれまでどのような政策対策を打ち出されたか、はっきりとお答えいただきたい。  その上で、これまで百日間で総理姿勢が問われた次の三点について伺います。  福田内閣姿勢最初に試されたのが防衛省をめぐる汚職事件です。政治と金の問題をめぐっては、前の安倍政権において亡くなった松岡農水大臣を始め、事務所経費透明化をめぐって大騒ぎになりました。昨年末になって、私たちが主張してきた一円以上の領収書の公開に自民党が同意したため、ようやく政治資金規正法改正が実現しました。  しかし、昨年十一月二十八日、防衛省の天皇と呼ばれた守屋武昌前次官の逮捕をきっかけに、その後、巨大な防衛利権をめぐる不可解な役人や政治家の行動が次々に指摘されました。戦後、自民党長期政権下で繰り返し指摘されてきた利権体質がいまだに続いていたと言わざるを得ません。  とりわけ、本当にそのような装備が必要かどうか、価格が適正かどうか、きちんと検討されることなく水膨れしてきた膨大な防衛予算絡み疑惑については、徹底的に精査する必要があると考えます。  この問題について、今後検察の捜査が進めば、より多くのことが明らかになってくると思われますが、総理疑惑解明への取組について伺います。  政府は、今年の三月を目途に、宙に浮いた年金記録五千万件について、だれの納めたものか突き止めるとし、コンピューターによる名寄せ作業を進めてきましたが、先月十一日、社会保険庁は、期限の三月までに持ち主が判明しそうなのはおよそ千百万件、全体の二割にとどまるという衝撃的な結果を明らかにしました。明らかな公約違反です。総理はいまだに見解の相違といった趣旨の言い訳に終始し、公約違反とはっきり認めておりません。  しかし、本当に問題なのは、公約違反約束違反があったかどうかということよりも、今回初めて明らかになった宙に浮いた年金記録の深刻なその内容であります。  それによれば、三月中に完了するとされているコンピューター上の名寄せ作業では、結局、全体の四割に当たる約二千万件について持ち主が特定されず、このうちの半分近い九百四十五万件に至っては入力ミス等持ち主の発見さえ難しいということであります。ここまでひどい内容とは予想していませんでした。  今の国民年金ができて今年で四十年余り、その間に積み重ねられた職務怠慢と責任回避の結果とも言えます。この間、年金行政責任があった自民党政治家官僚たちのたった一人でも職を賭して現状を告発し、国民の老後の生活が懸かった年金制度をきちんとするよう努めたとすれば、このようなことにはならなかったはずであります。まさに、戦後長きにわたった自民党政権の本質を象徴するような問題と言えます。  さらに、こうした宙に浮いた年金の問題だけでなく、納めたはずの年金のデータが全く保険庁に残っていない、まさに消えた年金の問題についても、最初政府の意気込みはどこへやら、被害者権利回復作業は遅々として進んでおりません。  とにかく、期限の今年の三月を国民は注目しております。その時点国民を納得させる結果が出せるかどうかに福田政権の命運が懸かっていると言っても過言ではないと思いますが、総理見解を伺っておきたいと思います。  年末になって、政権への信頼を更に失わせたのが薬害C型肝炎訴訟への対応でした。  政府は、いったん大阪高裁和解骨子案の提示を受け、原告が要求しているすべての患者に対する一律救済を拒否しました。そして、本当は一律救済したいのだが、裁判所がそれを認めていないから、三権分立で司法の風下に立つ政府としてはできないと言い訳をしました。  しかし、国民の批判は予想以上で、福田総理は、政府責任をあいまいにするため、一律救済のための議員立法というこそくなやり方をされました。結局、政府与党は、当初原告側が求めていた薬害を引き起こした責任を明記せず、被害の拡大を防げなかった責任を認めることで原告側と合意しました。  民主党としても、原告の方々を一刻も早く苦しみから救うために、直ちに法案賛成いたしましたが、政府の無責任さを否定することはできないと考えます。政府は、薬害エイズを始め、度重なる薬害を深刻に反省し、この法律に基づく患者たち救済はもちろん、今後二度と同じような薬害を引き起こすことがないように、製薬会社をしっかりと監視していくべきだと思いますが、見解を伺います。  もちろん、これで肝炎の問題が終わったわけではありません。B型とC型の肝炎患者感染者は全国で三百五十万人にも上ると推定されております。インターフェロン治療を受ければ約六割が完治すると言われていますが、多くの方が経済的な理由治療を受けられない状況にあり、患者医療負担を軽減し、肝炎、肝硬変への進行を止めることが緊急の課題となっております。  現在、衆議院継続審議となっている与党案は、国の責任を明記せず、自己負担月額上限が三万円となっているのに対し、参議院継続審議となっております民主党案は、国の責任において医療費の助成をすべきだとし、自己負担上限月額一万円に軽減する内容となっております。  一刻も早く、患者立場に立って与野党が協力し、救済法律を成立させるべきだと考えますが、福田総理考えを伺っておきたいと思います。  次に、我が国が直面している具体的な課題の主なものについて順次総理見解をお聞きするとともに、政権を目指す我が党の対応方針についてもお示ししてまいりたいと思います。  現在、世界的にも、また国内的にも激動の時期を迎え、大きな転換が求められております。国の在り方それ自体が根本的に問われているのであります。  長年の自民党政治最大問題点、言うまでもなく官僚への丸投げ政治であります。前の小泉安倍政権では、実際の対策は場当たり的で国政に混乱を引き起こしただけに終わりましたが、一応政治家主導によって官僚政治から脱却したいというポーズだけは示していました。  しかし、福田総理、あなたの政権では、こうしたポーズさえかなぐり捨て、再び官僚べったりの政権運営に戻ってしまいました。このことを典型的に示しているのが、官僚のもう一つの財布とも言われることもある特別会計、とりわけ最大政治課題となりつつある道路特別会計の中の道路特定財源です。  自民党小泉安倍政権は一貫して、道路の建設にしか使えない道路特定財源を自由に使い道を決められる一般財源に変えることを前提に見直しを行うと公約してきました。しかし、福田内閣になって急にトーンダウンし、平成二十年度予算案では、三兆三千億円のうちのわずか六%の一千九百二十七億円しか一般財源化されていません。これは明確な公約違反ではないですか。  しかも、このところのガソリン等の高騰でドライバーが悲鳴を上げているのを知りながら、政府与党は、道路特定財源の半分を占める揮発油税等暫定税率について、今年三月末の期限切れを前に、更に十年間維持することで合意してしまいました。  しかし、私たち民主党としてはとても賛成することはできません。この国会では、総力を挙げて暫定税率を維持するための租税特別措置法などの改正を阻止する考えであります。その結果、四月からは、ガソリンでは一リットル当たり二十五円、軽油は十七円安くなるはずであります。  もちろん、地方人たちにとって道路生命線です。しかし、その一方で、次々と造ったものの、ほとんど使われないで放置されているような道路が多いのも事実です。問題は、だれのための、何のための道路なのかということであります。  暫定税率廃止などによって、地方自治体には道路を造る財源がなくなると心配する声がありますが、そんなことはありません。例えば、国の直轄事業地方負担金廃止するなどすれば、自治体は減った分を十分賄うことができます。さらに、道路特定財源一般財源に繰り入れ、それを地方自主財源に回すことにすれば、住民の本当の意思によって、道路を造るか、それとも福祉等別のことに使うかを自由に決めることができるようになります。これが本当地方自治ではないでしょうか。総理見解を伺います。  また、官製談合等官民癒着の温床となってきた官僚天下りへの対策福田内閣になって後退しております。昨年の六月、安倍政権の下で強行採決された国家公務員法改正別名天下りバンク法抜け穴だらけの上、重要な制度設計を先送りするものでした。そして、今行われている制度設計において更なる骨抜きが進んでおります。  私たち民主党は、天下りを根絶するためには、キャリア制度と一体となっている早期退職勧奨を禁止するとともに、関係のある営利企業だけでなく、公益法人等に対しても公務員天下りを禁止すべきだと考えております。こうした民主党考え方を取り入れる考えはありませんか、伺っておきたいと思います。  このように福田政権は、中央での官僚政治の復活を図る一方で、財政難に苦しむ地方自治体に対し冷たい政策を取り続けております。例えば、政府与党は、いわゆる三位一体の改革により、わずか三年間に交付税を約五兆円削減しました。また、地方自由度を拡大することなく、補助金も四兆七千億円削減し、地方財政は大変疲弊しています。  こうした失政に対する福田政権の答えが、平成二十年度税制改正において特別枠を設けて、地方再生対策費として交付税を四千億円上乗せするだけだったとは驚きであります。もっと抜本的な対策を行う考えはないのか、お答えいただきたいと思います。  これに対し私たち民主党は、補助金原則廃止という根本的な解決策を提示しております。なぜならば、現在、中央官僚自治体支配中心となっているのがこの補助金制度だからであります。そのため自治体は、苦しい財政の中、本来必要のないものまで併せて導入させられ、そこに国民の税金がつぎ込まれているのであります。  こうした補助金廃止し、自治体本当に必要なものが自由に使えるひもなしの一括交付金として支給されることによって、地方財政は大きく効率化されると思いますが、総理考えを伺います。  また、さき小泉安倍政権の下で進められた弱者切捨て政策地方にも及びました。安倍総理の、頑張る地方は支援するという考え方は、結局、地方民間企業と同じような競争に投げ込むことになりました。しかし、これは公共の福祉を守る国がやるべきことではありません。その結果、地方の疲弊は甚だしく、地方都市商店街は、不況後継者不足に悩まされ、いわゆるシャッター通りが延々と続いているところも少なくありません。  また、六十五歳以上のお年寄りの数が半数を超える限界集落と呼ばれる地域も次第に増える傾向を見せ、まさに国土の荒廃が進んでおります。政府与党国土を放棄するような政策をいつまで続けていくのでしょう、お答えいただきたいと思います。  次にお尋ねしたいのは、内政の諸課題であります。  まず、この国会で間もなく始まる平成二十年度予算審議に関連し、我が国財政についてお尋ねします。  政府は、高い経済成長を維持させることによって、先進国では最悪の我が国借金財政を改善し、財政再建の指標となる基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランス平成二十三年度に黒字化することを公約してきました。しかし、小泉安倍政権から受け継いだこの成長戦略危険信号がともっております。  その原因の一つは、現在ますます世界経済悪影響を与えているサブプライムローン問題です。ただし、日本金融機関の損失は欧米のものに比べると比較的少ないものにとどまっているにもかかわらず、このところの株価の下落はむしろ日本の方が著しく、日本経済足腰の弱さとともに、福田政権成長戦略が市場に相手にされていないことを表しております。  日本のこれまでの成長戦略には、地場や中小を始めとする産業の足腰を強くするための具体的で地道な提案はほとんどなく、今や根本的に見直す必要があると思いますが、福田総理のお考えを伺います。  しかも、参議院選の大敗のショックからか、平成二十年度予算で、政府は新しい削減策も打ち出さずにばらまき的な編成を行った結果、プライマリーバランスは八千億円も赤字幅が拡大してしまいました。本当公約は実現できるのでしょうか、確認しておきたいと思います。  次に、福祉の問題について伺います。  少子高齢化がもたらす不安の中で、宙に浮いた年金、消えた年金の問題は論外としても、保険料の未納、未加入の増加などで、年金制度そのものについて国民の不安が高まっております。  私たちは、年金を一元化し、最低保障部分財源保険料ではなく国庫負担で賄う仕組みを以前から提案しており、財界を始め次第に理解が広まっておりますが、政府はこの提案をかたくなに拒み続けております。まず、その理由をお答えください。  政府は、その代わりに、基礎年金財源に投入される国庫負担の比率を三分の一から二分の一に引き上げることでお茶を濁そうとしております。しかも、安倍総理は、そのための消費税引上げ議論参議院選挙悪影響を与えることを懸念し、昨年の秋以降に先送りしていましたが、さき参議院選挙の敗北と近く予想される総選挙によって、議論はまたもや先送りされてしまったのであります。  このままだと、ろくに審議を行わないまま、再び強引なやり方での消費税引上げ懸念をされますが、今後の消費税議論の進め方について明快に説明していただきたいと思います。  次に、医師不足への対策について伺います。  このところ、救急患者たちたらい回しになるケースが一層増加しており、医師看護婦人手不足は深刻化する一方です。政府医師の絶対数は足りているとの主張を崩していませんが、絶対数であろうと相対数であろうと、いずれにせよ、不足不足なのであります。自民党長期政権の下での医療行政が、いかに患者を無視したいいかげんなものであったことを示しております。  劣悪な医師勤務条件を改善し、OECD加盟国平均並みの配置を実現するためには、十万人程度の増員が必要です。早急に地域別、診療科別に医師の数の目標数を設定すべきであります。  政府は、平成二十年度予算で、医師確保対策費に百六十一億円計上していますが、この程度の施策で本当医師が足りない病院に十分な数の医師が確保できるのか、どの地域においても産科医、小児科医の診療ができるようになるのか、見解を伺いたいと思います。  さて、昨年一年間に我が国で生まれた子供の数は、一昨年を約三千人下回り、再び減少に転じました。少子化は依然として歯止めが掛かっておりません。  私たち民主党は、社会全体で子育てを応援しようと、中学終了まで一人当たり月額二万六千円を支給する子ども手当法案さき国会提出しましたが、与党審議に応じようとさえしませんでした。この法案について、改めて総理考えを伺います。  また、高校についても、民主党は、家庭の負担軽減のため、昨年の参議院選マニフェストにおいて高校無償化を提案しました。現在、日本の高校進学率は九七%に上り、高校全入時代を迎えています。具体的には、公立高校の授業料を実質的に無料にすること、また私立高校通学者へは授業料補助を行う等の方策を検討していますが、こうした施策について総理見解をお聞かせください。  こうした子供たちが通う学校も依然として様々な問題を抱えており、教員の質、量の充実が求められております。いじめや不登校等学校現場が抱える問題には、教員が忙し過ぎて子供一人一人に向き合えていないことも原因の一つと指摘されます。  こうしたことから、民主党は昨年の十一月、教員数拡充法案衆議院提出しました。これは、学校の教員数の総数について定めた行革推進法を改正し、少人数の児童又は生徒による学級の編制など、きめ細かな教育を行えるようにするため、教育職員の十分な人数配置の確保を促すものであります。しかし、与党側の抵抗で審議は行われず、廃案となりました。教員不足についての総理の認識と今後の対応を伺います。  また、民主党は、国内総生産の三・五%、OECD加盟国中最低レベルにある教育予算を平均の五%くらいまで引き上げるべきだと考えますが、総理考えを伺います。  ところで、農業は今や単なる産業と見るべきでなく、環境の維持や食料の安全保障といった観点から見直さなければなりません。しかし、現実には、農村は過疎化、高齢化などが進み、食料自給率は三九%にまで低下しています。しかし、政府は、経営規模によって農業者を選別し、小規模農家を切り捨てる政策を進めています。  これに対し、昨年十一月八日に参議院可決された民主党の農業者戸別所得補償法案は、農家ごとに所得補償金を交付するもので、小規模農家を含め、米、麦、大豆などの農産物を対象に一兆円規模の支援を実現するものであります。これによって、農業経営の安定のみならず、食料自給率の向上や地域社会の維持及び活性化といった農業の多面的機能が維持されるものと考えますが、総理考えを伺います。  最後に、年明け早々、日本の株価は下落し、暗い事件も次々に起こっております。日本の昨年の国民一人当たりの国内総生産はついに世界十八位まで落ちてしまいました。  その一方、再び激動の時代を迎えている国際社会には次々と新しい指導者が登場しようとしております。山場を迎えているアメリカ民主党の大統領候補者選びは、ヒラリー氏が勝つかオバマ氏が勝つか予断を許しません。いずれにせよ、イラク問題などでの共和党ブッシュ政権の失政によって政権交代の可能性が高いと言われ、そうなれば全く新しい指導者がアメリカに誕生します。こうした中で、日本だけが旧態依然たる政治や外交に埋没していることは許されません。  私たちは、今こそ政権交代国民生活が第一を合い言葉に、他の野党の皆さんと手を結び、二十一世紀に生きる子供たちに夢を、夢ある日本を取り戻すため全力を尽くし、国民の皆様の期待にこたえていくことをお誓いし、質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇、拍手〕
  8. 福田康夫

    内閣総理大臣(福田康夫君) 輿石議員にお答えを申し上げます。  ねじれが続く国会に臨む私の基本的な政治姿勢について、まずお尋ねがございました。  輿石議員が御指摘されたとおり、さき臨時国会では二十六本もの法案が成立いたしました。国民にとって最善の結論を出すという考え方の下で与野党で真摯な議論を行い、互いに譲るべきものは譲りながら合意が成立したものであります。与野党いずれも多数を頼んで自分の考えを押し通すのではなく、根気強く合意に向けた努力を継続した結果でありまして、関係された与野党議員各位に対して深く敬意を表するものであります。  さき国会を通して明らかとなったことは、国民のための政策を実現していかなければならないという思いは、これは与野党立場を超えて共通のものであるということであります。与野党対立によって国民生活に悪い影響を与えるようなことは絶対に避けなければなりません。国会ねじれは続いておりますが、こうした政治責任について認識を共有している限り、今後とも与野党がよく話し合うことによって国政を動かしていくことができるものと信じております。輿石議員を始め、議員各位の御協力を何とぞお願い申し上げる次第でございます。  衆議院での再議決、憲法上の例外的なことだと考えるか、また、今後も再議決を行うのかについてお尋ねがございました。  私も、衆議院における再議決はめったにあることではないと考えておりますが、丁寧な話合いを真剣に行った後に一つの結論を出す方法として憲法で認められた決定手続であると考えております。  さき国会における補給支援特措法につきましても、参議院だけでも約二か月にわたって四十時間以上に及ぶ審議をいただき、私ども政府といたしましても本当に丁寧に説明をさせていただきました。今後についても、再議決先にありきということではなく、まず何よりも政策を分かりやすく丁寧に説明させていただき、野党の皆様とよく話合いをさせていただくことが重要であると考えております。与野党の間で党利党略にとらわれることなく忌憚なく話合いを行えば、国民にとって最善の結論が必ず得られるものと信じております。  次に、総理大臣に対する問責決議についてどう考えるかというお尋ねでございました。  輿石議員からの、何でも反対しようと考えていない、できる修正は折り合うという力強い発言をいただき、大変勇気付けられました。私も、与野党が党利党略にとらわれることなく忌憚なく話し合うことによって国民のために最善の結論を得ることができると考えております。輿石議員が懸念されているように、国民生活のことを真剣に考えずに政府考え方だけを無理に押し通そうというつもりは全くございません。今後とも、野党の皆さんともよく話合いをさせていただき、皆さんの御意見も積極的に取り入れながら責任ある政治を遂行してまいります。  私の目指す社会、そのための政策についてお尋ねがございました。  人々の価値観が多様化しつつある今、私は一人一人の国民が前向きに夢を抱くことができる社会をつくり上げていきたいと考えております。そして、人々が抱く不安や政治、行政への期待も多様化しつつある中で、一人一人の国民立場に立ったきめ細かな政治、行政へと転換していかなければなりません。  現在、すべての法律や制度について、国民目線の総点検を進めております。また、今後、各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的、一元的に推進するための強い権限を持つ新組織を発足させるなど、消費者が主役となる社会へと転換してまいります。  さらに、今月中には国民各層から成る社会保障国民会議を開催し、年金制度はもとより、社会保障制度や少子化対策のあるべき姿や、政府の役割、負担の仕方などにつきまして議論を行い、高齢化時代の中にあっても国民が安心して暮らせる社会を目指します。  このほかにも、施政方針演説では、低炭素社会への転換や平和協力国家日本の在り方について具体的に述べておりますが、今後、このような目指すべき社会像を明確に意識しながら、一つ一つ政策を着実に前に進めてまいります。  次に、防衛調達をめぐる疑惑解明への取組についてであります。  前防衛事務次官の逮捕や、防衛装備品の調達をめぐる過大請求事案の発生等により、防衛調達の公正性、透明性に疑念を生じさせ、ひいては防衛行政に対する国民の信頼を損ねる結果となっていることは、極めて遺憾であります。  防衛調達をめぐる過大請求等の問題については、引き続き防衛省で徹底的に調査を行い、問題を解明するとともに、防衛省改革会議における議論をも踏まえ、政府としてしっかりした検討を行い、防衛調達の公正性、透明性を確保するための施策を講じてまいります。  次に、年金記録問題についてのお尋ねがございました。  この問題については、昨年七月五日に政府与党として決定した方針に基づき、本年三月までに五千万件の未統合記録と一億人のすべての年金受給者や現役加入者の方々の記録をコンピューター上で突き合わせ、その結果、記録が結び付く可能性がある方々へねんきん特別便をお送りすることを予定どおり順次実施しております。コンピューターによる名寄せでは特定できない記録につきましても、記録の内容に応じた調査、照会等の対策を講じることにより、本年四月以降も引き続き粘り強く着実に統合作業を進めてまいります。さらに、ねんきん特別便を三月までにお送りした以外の方々にもお送りすることにいたしておりまして、四月から五月までにすべての受給者に、六月から十月までにすべての加入者に順次お送りをいたします。  このように、国民お一人お一人に記録を確認をいただくなどによりまして、年金記録の統合作業を行ってまいります。  また、年金記録確認第三者委員会においては、申立て件数の増加に対応するために事務局職員を大幅に増員するなど審議体制を強化しており、今後、処理の促進を図ってまいります。  こうした取組を通じて、この年金記録問題について私の内閣で解決するよう、全力を尽くしてまいります。  薬害肝炎の問題についてのお尋ねがございました。  まず、この問題につき、与野党合意の上、迅速に救済法の法律を通していただきましたことに感謝を申し上げます。  医薬品による健康被害の再発防止については、薬害を繰り返してはならないという決意の下に、命の尊さを認識し、製薬企業等に対して迅速かつ的確な措置がとれるような体制の在り方などを含めて、医薬品行政の見直しに取り組んでまいります。  肝炎対策については、与野党それぞれから法案提出され、今後引き続いて御議論されるものと考えておりますけれども、御指摘の肝炎患者インターフェロン治療に対する医療費助成については、政府としても早期治療の観点から早急に実現すべき課題考えておりまして、平成二十年度予算に約百二十九億円を計上し、来年度から実施することとしております。  次に、道路特定財源一般財源化についてお尋ねがございました。  道路特定財源については、厳しい財政事情の下に受益者の負担の考え方を踏まえ、真に必要な道路整備に充てた上で、道路歳出を上回る税収について、納税者の理解の得られる歳出の範囲内で一般財源を確保することといたしております。  平成二十年度予算においてもこうしたこれまでの見直しの方針に変わりはなく、これに沿って十九年度を上回る金額を一般財源として確保することを政府与党政治家が決定したところであり、公約違反という指摘も当たりません。官僚べったりという批判も根拠はございません。  暫定税率の撤廃に伴う地方財源問題等についてお尋ねがありました。  御主張のように、仮に直轄事業負担金を廃止するとしても、引き続きその分、国の負担でその事業を行うのであれば、国、地方全体としての道路のための財源は半減することに変わりはなく、暫定税率廃止に伴う財源問題の解決策とはなりません。また、道路特定財源に加えて一般財源道路建設に充てている多くの自治体においては、道路財源一般財源に繰り入れることは困難であると考えております。  政府としては、道路特定財源については、厳しい財政事情の下でありますが、暫定税率を維持しつつ、真に必要な道路整備を重点化、効率化を徹底しつつ行い、地域の自立、活性化につなげてまいりたいと考えております。  次に、天下りの根絶についてお尋ねがございました。  昨年の通常国会で成立した国家公務員法改正においては、天下り問題を根絶するための各般の措置が導入されたところでございます。この改正においては、各府省の再就職あっせんを官民人材交流センターに一元化することとしております。これによりまして、各府省から中立的な立場で職員本人の能力、経験を生かした再就職の支援を行い、押し付け的なあっせんを根絶します。その際、営利企業等に再就職する場合に限らず、特殊法人や公益法人等に再就職する場合についても各府省の再就職あっせんの禁止等の規制の対象といたしております。  引き続き、行政に対する信頼を取り戻すため、公務員が能力を高め、国民立場に誇りと責任を持って職務を遂行できるよう、総合的な公務員制度改革を進めてまいります。  次に、地方財政についてお尋ねがございました。  三位一体の改革においては、地方の自主性、主体性を高めるとともに、国、地方を通じた財政の健全化を図るため、補助金廃止、縮小、税源移譲、地方歳出の見直しに伴う地方交付税総額の抑制を行ったところでありまして、結果として地方交付税の削減が急激に行われたこともあって、特に財政力の弱い地方団体には厳しいとの声があったということを認識いたしております。  平成二十年度におきましては、財政健全化の方針を維持しつつ、近年の地域間の財政力格差の拡大に早急に対応するため、税体系の抜本的な改革までの間の暫定措置として、地方と都市の共生の考え方の下に地域間の税源の偏在をより小さくする措置を講じるとともに、その効果を活用して、特に財源の厳しい市町村に交付税を重点的に配分することにより地域の活性化を図っていくことといたしております。もとより、ばらまきをすることは避けなければなりません。  補助金制度についてのお尋ねがございました。  地方への補助金廃止し、それを地方が自由に使える財源として一括交付するという御提案でございますが、地方への補助金社会保障など義務的な性格のものが多くを占めておりまして、また御提案一括交付金の具体的な内容や方法が示されておりませんので、実現できるかどうかは分かりません。政府としては、国と地方公共団体との役割分担に応じて地方財源を充実確保する観点から、補助金交付税、税源配分の見直しの一体的な改革に向け検討を進めております。  次に、地域間格差についてお尋ねがございました。  地方と都市の格差の拡大のこれ以上の拡大を防ぎ、地方の活力を取り戻すために、昨年十一月に地方再生戦略を取りまとめたところであります。この地方再生戦略に基づき、内閣官房に地域ブロック別担当参事官制を設け、地方の出先機関との連携体制を整えるとともに、地方が取り組む事業についてその立ち上がりを地方の元気再生事業として全面的に支援します。これらの取組を通じて、シャッター通りと言われる地方都市の疲弊やいわゆる限界集落の抱える問題等についてもきめ細やかな対策を講じ、政府一体となって地域の活性化に努めてまいります。  次に、成長戦略についてのお尋ねでございますが、我が国は本格的な人口減少社会の到来などの難題に直面している状況にありまして、経済活力を維持するとともに社会保障制度や少子化対策を充実するためには、引き続き持続的な経済成長が不可欠であるというように考えております。  そのため、技術革新の加速、開かれた日本、中小企業や農業の活力を引き出し、すべての人が成長を実感できる全員参加の経済の三つの柱から成る経済成長戦略を具体化し、直ちに実行してまいります。  そのため、従来型の同業種間の縦のつながりに加えて、企業規模や業種をまたいで横断的に協力し合うつながり力を更に強化し、地域経済の活力の復活や中小企業の生産性の向上に取り組んでまいります。  具体的には、地域連携拠点を全国に二百ないし三百か所整備し、ITを徹底して活用し、経験豊富な大企業の退職者や、中小企業、農業、大学が相互に連携して新たな商品やサービスを生み出す取組を支援します。また、中小企業の事業承継を円滑にするための税制の抜本的見直しを行うことといたしております。これらを始めとする取組により、中小企業などの底力を引き出し、活力ある経済社会を構築してまいります。  次に、財政健全化に向けた公約の実現についてお尋ねがございました。  平成二十年度予算編成に当たっては、基本方針二〇〇六で定められた歳出改革を着実に実現しているところであり、こうした取組によりまして、平成二十年度の国と地方を合わせた基礎的財政収支は、前年度に比べGDP比で〇・三%程度改善する見込みであります。今後とも安定した成長を図るとともに、歳出改革を徹底して実施し、それでも対応し切れない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにします。こうした取組を進め、まずはこの二〇一一年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を確実に達成してまいります。  次に、年金制度改革についてのお尋ねがございました。  民主党の御提案による全額を税による最低保障年金に関しては、納付した保険料に応じて給付が行われる現在の制度の在り方を見直すことについて国民がどう受け止めるか、消費税収のすべてを年金に充てた場合、医療や介護などの他の社会保障の財源との関係をどう考えるか、また、制度の切替え時点において、これまで保険料を納付してきた者と保険料を納付しなかった者との公平をどう図るのかといったようなことにつき検討すべき課題が多いと考えております。政府としても、幅広く国民各層から成る社会保障国民会議を開催し、年金制度を含む社会保障のあるべき姿、負担の仕方などについて議論を行っていくことといたしておりますが、私といたしましては、各党各会派が党利党略といったことではなく、この年金制度の在り方に関し真摯に話し合うことを望んでおります。  次に、消費税議論の進め方についてお尋ねがありました。  これからの社会保障を持続可能な制度とするために安定した財源を確保しなければなりません。このため、社会保障給付や少子化対策に要する費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を行う必要があります。  具体的には、平成十六年度年金改正法において、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的改革を行った上で平成二十一年度までに基礎年金国庫負担割合を二分の一へ引き上げることとされていること等を踏まえまして早期に実現を図る必要があります。  政府としては、社会保障国民会議において社会保障のあるべき姿、負担の仕方などについて国民的な議論を行っていくことといたしておりますが、そこでの議論を踏まえながら、税体系の抜本的改革についての検討を進めてまいりたいと思っております。  医師確保対策についてお尋ねがございました。  産婦人科、小児科などを中心地域に必要な医師を確保していくことは喫緊の課題と認識しておりまして、医師不足問題の解決に向けて昨年五月末に緊急医師確保対策を取りまとめたところであります。  具体的には、医師不足地域や診療科の医師を確保するために医学部の定員を増やすこととしたほか、来年度予算案においては、医師確保対策の推進のための予算を大幅に増額し、小児科、産科を始めとする病院勤務医の働きやすい職場環境の整備などの対策を盛り込むとともに、本年四月の診療報酬改定においては、病院勤務医の負担軽減や産科、小児科等の重点的な評価を行うこととしております。  民主党の子ども手当法案についてのお尋ねがございました。  御提案によれば、子ども手当には平年度五・六兆円もの経費を要するにもかかわらず、その財源について具体的な確保の見通しが明らかでありません。次世代に対する支援だとしても、その負担を次世代に先送りするようなことがあってはならないと考えております。  政府としては、安心して子供を産み育てられる社会とするため、仕事と生活の調和の実現や、多様できめ細かい保育サービスの充実を始めとする総合的な取組が必要であると考えております。  次に、高校の無償化でございますが、これにつきましては、膨大な財政負担の問題などを含め慎重な議論が必要であると考えております。他方、家庭の経済状況によって就学の機会が奪われないようにすることが必要であるとも考えます。このため、すべての都道府県において、経済理由により就学困難な高校生に対し公立高校の授業料等の減免を行うとともに、奨学金事業を実施しているところでございます。また、国において私立高校の授業料減免のため都道府県に対する補助を行っているということであります。今後とも引き続き、こうした取組への支援を通じて、子供たちの就学の機会の確保に努めてまいります。  教職員定数及び教育予算対GDP比についてのお尋ねがございました。  国民の皆様から信頼される公教育を確立することは必要です。平成二十年度において、教職員の定数の改善や学校支援地域本部の創設などにより、子供たちと向き合える時間を増やすとともに、教員の質の向上に取り組みます。教育予算のGDP比については、我が国における児童生徒数の総人口に占める割合が小さいことなどから一概に低いとは言えないと考えております。また、教育予算を引き上げるという民主党の案については、財源をどこに求めるのか明らかにされておりません。  民主党の農業者戸別所得補償法案についてのお尋ねがありました。  我が国の農業が直面している最大課題は、農業従事者の減少、高齢化等により生産構造の脆弱化が進んでいることでございます。こうした状況に対応して、国民が期待する食料の安定供給、農業の多面的機能の発揮という課題にこたえていくためには、小規模、高齢の農家の方々へのきめ細かな対応に努めつつ、現場の実態に即した経営所得安定対策の改善による意欲ある担い手への支援の充実、地域ぐるみの環境保全活動に対する支援の実施、さらには、農業と商工業等が連携し、地域産品の開発、販売等を行う農商工連携の強化等によりまして、力強い農業経営の育成と農村地域の活性化を総合的に推進してまいります。  一方、民主党提出の農業者戸別所得補償法案については、必要となる予算財源も含め、制度の詳細に不明な点も多く、地域の農業の体質強化が図られるのかどうか疑問があるところでございます。  以上であります。(拍手)     ─────────────
  9. 江田五月

    議長江田五月君) 尾辻秀久君。    〔尾辻秀久君登壇、拍手〕
  10. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 質問に先立ち、今は亡き山本孝史先生の御冥福をお祈り申し上げます。  山本孝史先生は、病魔と壮絶な闘いを続けながら、がん対策、自殺対策の立法に尽力されました。その先生のお姿がこの議場に見えないこと、国民が最も関心を寄せている社会保障の御専門の先生がいらっしゃらないことは残念でなりません。  山本先生をしのびつつ、これから質問をさせていただきます。  今年のNHKの大河ドラマは「篤姫」です。篤姫は薩摩の幕末の名君、島津斉彬の養女から十三代将軍家定の正室になりました。徳川家と討幕派、薩摩藩の板挟みとなりながら、いったん嫁いだからにはと、最後まで徳川家を守った薩摩の女性が一年にわたってテレビで描かれます。  幕末の薩摩といえば、西郷や大久保など多くの偉人を輩出しましたが、彼らの共通点は、母親が偉かったことだと言われています。薩摩の男は威張っているように見えますが、お釈迦様の手のひらで踊っている孫悟空のようなもので、しょせん、女性の手のひらに乗せられているだけと言われています。私自身のことを申しました。  そういえば、総理はかかあ天下と空っ風の上州の御出身であります。総理日本のお母さんについて語ってみてください。総理のお人柄をのぞいてみたく、お願いをいたします。  総理は、昨年の暮れ、今年の世相を表す漢字にちなんで、信じるの信という漢字を挙げられました。総理のお人柄を示す言葉であると思います。どうぞ、政治や行政に対する信頼を取り戻してください。  本年七月には洞爺湖サミットが開催され、開催国の議長としての大任も待っております。まず、総理にとって初めてのこの通常国会を乗り切っていただかなければなりません。実りある国会となりますよう、私たちも努力してまいります。  前国会では、ねじれの中で十二本の議員立法と十四本の閣法が成立しました。総理はこの衆参ねじれの下でどのような国会対応考えておられますか、お伺いをいたします。  次に、今年の景気はどうなるのかお尋ねします。  今、世界経済は多くの不安を抱えています。一番の不安定要因となっているのがアメリカのサブプライムローンと言われる個人向け住宅融資の焦げ付きであります。アメリカの金融機関の業績悪化、株式市場の下落を引き起こして、広く世界のマーケットにも悪影響を及ぼしています。さらに、原油価格の高騰があります。国内では軽油やガソリンなどの小売価格がびっくりするほど高くなりました。  一方で、中国経済は毎年一〇%前後の高成長を持続しています。二〇〇八年の北京オリンピック、二〇一〇年の上海万博を控えておりますので、今後も経済活動の活性化は続くと考えられます。  これらを踏まえ、昨年末に発表された政府経済見通しでは、来年度の実質GDP成長率が二・〇%と今年度の見込み一・三%を上回る比較的高い成長となり、さらに名目GDP成長率は二・一%と十一年ぶりに実質成長率を上回るとされています。デフレからの脱却が実現することになります。  ただ、国内の状況を見ますと、建築基準法の改正により建築確認が厳しくなり、住宅投資の落ち込みを招くのではないかと心配されています。また、日銀短観で見る企業の景況感も、頭打ちから低下の方向を示しています。内閣府の景気ウオッチャー調査でも景気の実感は低迷しているようです。  内外の様々な状況を織り込んで、我が国経済の今後をどのように見ておられるのか、総理にお伺いをいたします。  景気の回復が続いていると言われますが、あくまでマクロ的に見たもので、ミクロで見るとかなり厳しい状況が指摘されています。特に地方経済では、これまで長きにわたって公共事業や農林水産業、そして零細小売業が産業の中心でありましたが、今や公共事業が削減され、農林水産業が国際競争にさらされ、大規模小売店の進出など、いずれの産業も深刻な影響を受け疲弊しています。  かつては、都市や大企業が良くなれば地方、中小企業は時間差で回復すると言われましたが、この経済法則は崩れたのではないでしょうか。地域間格差など、経済格差の問題について御認識を総理にお伺いをいたします。  景気による税収増が余り期待できない中で、税制をどうするのかお尋ねします。  来年度の税制改正では、いわゆるふるさと納税が創設されました。そこで、今回の税制改正の柱である地方税体系の見直しに関して、地方経済へのてこ入れ効果をどのように判断されているのかを伺います。  少子高齢化の進展による社会保障費の増加に対応するためにも、消費税の見直しを中心とした税制の抜本的な改革は避けて通れない課題であります。特に、公的年金国庫負担二分の一への引上げは待ったなしの課題であります。昨年末の与党税制改正大綱では、消費税に関して、持続可能な社会保障制度とするための安定した財源として位置付けられています。  消費税の在り方や今後の見直しに関して、総理の御見解をお伺いいたします。  平成二十年度予算は、税収の伸びが小幅にとどまる中でも、歳出歳入全般にわたる努力で新たな国債の発行額は四年連続の減額となりました。一般会計規模と一般歳出ともに増額ではありますが、公共事業関係費や政府開発援助は減額し、小泉内閣以来の歳出削減方針は堅持されました。評価したいと思います。  しかし、課題も多くあります。例えば、今年度一般会計の削減の中、特別会計の歳出合計は昨年度より六兆円多い約三百六十八兆円となりました。特別会計の数は、今年度七つ減らして二十一会計、平成二十二年度までに十七会計とする方針と聞いています。もちろん、数を減らすことは大事ですが、まず国民の目に見える会計にすべきであります。  総理、初めて編成された来年度予算をどう評価されるか、お伺いをいたします。  来年度予算案では、財政健全化の主要指標である基礎的財政収支は約五兆二千億円の赤字で、五年ぶりに悪化することになりました。  これまでの政府の方針は、骨太の方針二〇〇六で示されています。すなわち、黒字化目標を二〇一一年度と明記、財源不足額十六・五兆円を十一・四兆円から十四・三兆円の歳出削減と二兆円から五兆円の税収増で対応するとしております。しかし、直近の内閣府の試算では、税収の減少により、二〇一一年度は名目GDP比マイナス〇・一%、七千億円程度の赤字となりました。  総理は、国民に新たな活力を与え、生活の質を高める、生活者や消費者が主役となる社会を実現する国民本位の行財政への転換を基本方針にされました。そうであれば、黒字化達成目標について多少の見直しが必要ではないかと思いますが、総理のお考えをお示し願います。  関連して申し上げます。  プライマリーバランス黒字化に向けての歳出削減方針の下で、このところ毎年社会保障費を二千二百億円削減してきました。来年度予算でもそうなっております。  しかし、社会保障費を削るのはもう限界です。乾いたタオルを絞っても水は出ません。来年のことを言うと鬼が笑うと言いますが、あっという間に平成二十一年度予算の概算要求の時期になりますので、申し上げます。平成二十一年度予算では社会保障費二千二百億円の削減は行わないと約束していただきたいのであります。  経済財政について伺いましたので、この問題の最後にお聞きします。  私が大臣をさせていただいたときに、しばしば経済財政諮問会議に呼び付けられました。経済財政諮問会議内閣府設置法に規定されておりますが、その議員のうち、民間議員の選任は官邸で行われ、国会が相談を受けることはありません。同意案件ではないのです。民間議員から、国会決議を無視すればいいという発言を耳にしたこともあります。会議が実績を残したことは否定しませんが、一方で格差を広げたことも事実であります。福田内閣においては、議院内閣制の下でこの経済財政諮問会議をどのように運営されていかれるか、お考えを伺います。  次に、外交問題について伺います。  日本の直面する外交課題は、北朝鮮の拉致、核問題を始め、拡張路線をひた走る中国との関係、北方領土をめぐる日ロ関係、テロとの戦いなど非常に厳しいものがございます。  昨年、総理は、就任以来初の米国訪問を皮切りに、シンガポールにおける東アジア首脳会議や日中韓首脳会議等に出席されました。そして、年末には訪中をされ、日中両国の関係を一層深められました。日米同盟とアジア外交との相乗効果を目指す総理提唱の共鳴外交が展開されたと理解しております。  今年は我が国においてサミットが開催されます。議長を務められる総理には、是非とも気候変動問題やアフリカ支援の取組等に強い指導力を発揮していただきたいと思います。  北朝鮮問題について伺います。  国家の役割は国民の生命、財産を守ることにあります。北朝鮮による拉致は断じて許すことはできません。一刻も早く解決をしなければなりません。  また、核問題は北東アジア全体にとって安全保障上重大な脅威となっております。昨年秋の六者会合では、核施設の無能力化や核の完全申告化等を内容とした合意が行われましたが、北朝鮮はまだ約束を果たしておりません。合意に基づく行動を取るよう、関係国が連携を強め、働きかけていく必要があります。  北朝鮮問題について、総理の御決意をお聞かせください。  次に、ODA問題について伺います。  参議院は、決算とODAを参議院改革の二本柱として取り組んでおり、ODAについては、平成十六年から議員団を海外に派遣し調査を行っています。昨年十二月にはベトナムに調査団を派遣し、我が国のODAで建設中に崩落したカントー橋の現場視察を実施いたしました。また、十八年の通常国会においてODA特別委員会を設置し、昨年六月には中間報告を取りまとめております。引き続き、効果的、効率的なODAの実施がなされるよう、積極的に意見を述べてまいります。  政府は、ODA問題に対する参議院の取組をどのように評価し、本院の提言や議論をODA施策にどのように反映しているのか、総理にお伺いをいたします。  次に、自衛隊派遣の恒久法について伺います。  昨年十一月、福田総理民主党の小沢代表の党首会談で、自衛隊海外派遣のための恒久法制定が話し合われたとの報道がありました。お二人ともその内容について明らかにされておりませんので、総理はどのようにお考えなのか、御説明をください。  また、改めて申し上げるまでもありませんが、自衛隊の最高司令官は総理であります。総理のリーダーシップによってこそ、シビリアンコントロールが確立されます。したがって、総理を補佐する体制が重要であります。日本版NSCと言われる国家安全保障会議についての御見解を伺います。  次に、石破防衛大臣にお尋ねいたします。  現在、防衛省改革問題として、シビリアンコントロール、秘密保全問題、装備品等調達問題の三点が問われていることは、総理も施政方針演説の中で示されました。  そこで、この三点に絡む組織の基本的な問題について質問をいたします。  守屋前次官の証人喚問を聞いていて、私が一瞬びっくりしたのは、彼が、私たちシビリアンがと言ったときであります。しかし、次の瞬間、納得しました。自衛隊員ではあるが自衛官ではない次官が防衛省に君臨することによってシビリアンコントロールが守られていると考えていたことを理解したのであります。  その解釈は正しいのか、すなわち内局とはシビリアンコントロールのための組織なのか、また逆に、自衛官が大臣を補佐するとシビリアンコントロールではなくなるのか、大臣の御見解をお聞かせください。  防衛省設置法第十一条で、大臣が必要あると認めるときは、自衛官を内部部局において勤務させることができるとわざわざ規定しています。なぜか、また過去にその例があるのか、併せてお答えをください。  二点目です。  大臣は、軍政と軍令についてどのように整理しておられるのか、お尋ねします。かつて、軍政は背広、内局が支え、軍令は制服が支えていると答えられましたが、今も同じ御認識なのか、お尋ねをいたします。  三点目です。  防衛省設置法では、内局は、防衛、警備及び自衛隊の行動等にかかわる基本及び調整に関する事務をつかさどるとされています。さらに、内局とは別に、特別の機関として陸海空統合の四幕僚監部が置かれ、陸海空各部隊又は統合上の防衛、警備及び行動に関する計画の立案に関する事務をつかさどるとされています。この違いが分かりにくいのであります。防衛省は、一つで済む組織を背広と制服で別々に二つつくるという無駄なことをしていませんか。  私は、平成十五年三月の予算委員会で、内局にある運用局の英訳を日本語に戻すと指揮・作戦局、すなわち参謀本部になる。この仕事を背広が行うということは、一回もユニホームを着たことのない人が野球やサッカーの監督をするようなもので、そんな無用な組織は廃止した方がいいという質問をいたしました。そもそも陸海空の統合運用をする責任者は、背広の運用局長なのですか、それとも制服の統幕長ですかと尋ねましたら、今後の課題と答えておられます。防衛省の組織に無駄はないか、御認識を伺います。  以上、三点お尋ねいたしました。  今、その防衛省に対する信頼は地に落ちています。シビリアンコントロール、すなわち文民統制の名の下で文官統制を成し、好き勝手したことが大きな原因となっていると考えてお尋ねをしております。防衛省の改革については、今日の御答弁をお聞きした上で、更に委員会で質問をさせていただきます。  少子高齢化と人口減少化が進む中でのこれからの社会保障の理念とその在り方についてお尋ねいたします。  ここ数年の年金、介護、医療にわたる社会保障改革は、社会保障の持続可能性を高めるため、経済財政との調和、給付と負担の均衡、世代間の公平性の確保という観点から行われたものです。しかし、これからの社会保障改革は、そこにとどまらず、地域経済の発展にも貢献し、何よりも、地域社会の助け合い、支え合いの新しい仕組みをつくり、地域社会の連帯感やきずなを取り戻すことこそ基本理念に据えるべきであると考えます。総理のおっしゃる自立と共生の社会づくりは、まさにそのことを目指すものであると考えます。これからの社会保障改革の全体像、福田福祉社会ビジョンを早急に取りまとめていただきたいと願います。  そのために、まず、社会保障の大きさをどの程度にするかを決めなければなりません。日本は、社会保障について、欧州諸国との比較では小さな政府を目指していると言えます。この社会保障の水準が安心できるものとして十分であるかどうか、国民議論が必要であります。社会保障の給付の水準を上げるためには、一方で国民負担が必要となります。そのための国民合意は欠かせません。  私は、負担は大きくとも弱者に優しい国にしたいと願っています。中長期的な社会保障のあるべき形について、総理はどのようにお考えなのか、ずばり、日本国民負担率何%の国にしようとお考えなのか、お聞きをいたします。  総理は、施政方針演説において、幅広く国民各層から成る社会保障国民会議を開催し、社会保障のあるべき姿やその中での政府の役割、負担の仕方などについて、高齢化時代の国民の不安にこたえることができるような議論を行うと表明されました。  そこで申し上げますが、社会保障の在り方についての議論は、小泉内閣時代の平成十六年に設置された社会保障の在り方に関する懇談会など、過去にも行われてまいりましたし、今うわさされているメンバーは、基本的にはこれまでの懇談会と同じ構成であります。今度の国民会議がこれまでと一味違う答えを出せるのか、期待されるような成果を上げることができるのか、会議の運び方について総理にお尋ねをいたします。  更に申し上げますと、経済財政諮問会議もこれまで社会保障に口を差し挟んできました。その諮問会議議論は、社会保障の負担面ばかりに焦点が当てられてきました。社会保障の議論は、超高齢社会を迎える中で持続可能な制度としていくという視点は欠かせませんが、国民が安心して暮らすためにどのような社会保障サービスが必要なのかということが基本にされるべきであります。  新たに設置される社会保障国民会議では、社会保障をいかに抑制するかというような議論ではなく、総理のおっしゃる消費者、生活者の視点からどのようなサービスが必要なのか、そのようなサービスを支えるために政府国民がどのような役割を負うべきかなどについて、広く議論が行われることを期待いたしております。  年金記録問題では、政府は言葉を並べ過ぎました。名寄せ、突合、突き合わせ、統合、照合などであります。そして、それぞれに都合の良い定義をした上で、名寄せはできますが統合はできませんと言っても理解されるはずはないのです。混乱させて国民を不安にしたのですから、厚生労働大臣はまず謝罪をして、その上でいま一度、いま一度、三月までとその後に分けて、できること、できないことをきっちりと説明をしてください。  年金国民の老後生活を支える社会保障の中核の制度であり、今後も安定的に維持していくことが必要です。  先日、福田総理と小沢代表の党首討論がございました。その中で、民主党の小沢代表から、全員に年金の状況を送付して確認してもらう、違うという人は申し出てもらえばいい、まずは往復のはがきでいいから全員に送付して国民みんなの判断と申出を受け付けるべきじゃないだろうかという御提案がありました。  私はかねてから、いわゆるスウェーデン方式に学ぶのであれば、学ぶべきは、長い年月を掛け与野党が一緒になって年金の抜本的改革を行ったことだと考えてきました。年金制度を支えているのは国民の信頼であります。年金記録問題によって揺らいだ国民の信頼を一刻も早く取り戻すために皆で力を合わせるべきです。  参議院においても、年金制度自体の在り方について超党派で議論し、検討していく場を設けるときに来ているのではないかと考えております。まさに社会保障の柱である年金制度が時代を超えて確固たるものとして国民生活を支えていけるように、立場を超えてあらゆる英知を結集すべきではないでしょうか。そのことを申し上げた上で、総理にお伺いをいたします。  先日の小沢代表の御提案は助け船ではなかったのかなと思いますけれども、総理はどのようにお受け止めになったのか、そして、改めてお受けになるおつもりはないのか、お尋ねをいたします。  総理一つ提案をさせてください。  今や社会保障関係費は一般歳出の半分近くを占めます。厚生労働大臣は一人でその責任を負っています。私も厚生労働大臣をさせていただきました。正直に言いますと、余りに忙し過ぎます。一人で担当するのは無理があります。消費者担当大臣も置かれるようですから、年金のみを担当する大臣をつくられてはいかがでしょうか。党派を超えて人材を登用されるなら、国民の不安解消にも役立つと考えます。  安倍総理は戦後レジームからの脱却を掲げられました。そして、約十か月で、防衛省の省昇格、教育基本法の改正憲法改正のための国民投票法の制定と、短い期間ながら懸案の処理に成果を上げられました。  国の形をどうつくるか、その中で国民をどのように導いていくか、国家の最高指導者に課せられた重い課題であります。  そこで、総理の国家観を伺いたいのであります。二千年以上の時が流れる我が国の歴史を踏まえ、今、どのような国をつくろうとなさるのか、その上で、国家百年の計である我が国の将来を担う若者たちの教育をどうするのか、国家の基本たる憲法はいかにあるべきか、お考えを御披瀝願います。  最後に一言申し上げます。  薩摩藩主島津斉彬に次の言葉があります。勇断なき人は事をなすことあたわざるなり。総理、難局に当たる今こそ、断固たる信念の下、国と国民のために先頭に立ってください。私どもも全力を挙げて御一緒に頑張りますことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇、拍手〕
  11. 福田康夫

    内閣総理大臣(福田康夫君) 尾辻議員にお答えいたします。  最初に、お母さんについてお尋ねがございました。  たまたま、群馬県、私の選挙区は上州空っ風というふうなことで、空っ風と同時にかかあ天下といったような言葉もございまして、そういうようなところからお尋ねになったんじゃないのかなと、こう思っておりますけれども、かかあ天下は別に上州だけじゃないんです。群馬県だけじゃないんです。山がある地域、群馬県から新潟、そしてまた福井から山梨もそうですけど、関東にもずっとかかあ天下という言葉はあるんです。ですから、我が県特有のものではありません。  しかし、お尋ねでございますのでお答えしますけれども、私も、私の母とか妻とか身近な女性から感じているところですけれども、群馬県は、かかあ天下というのは、だけではないかもしれませんけど、女性がしんが強いですね、しんが非常に強い。そして、また同時に、いざというときに度胸が据わっています。今の若い人がそういう気質があるのかどうか分かりませんけれども、恐らくそうなんだろうというふうに思います。女性の特性なんじゃないかと思います。そういうような女性は頼りがいあるのでありまして、私ども男からすれば、やっぱり女性と男性、お互いに助け合ってより良い社会ができるんではないかなと、こんなふうに思っておりまして、そういう女性を尊重してまいりたいと思っております。  次に、衆参ねじれの下での国会対応についてのお尋ねがございました。  さき臨時国会におきましては、国民にとって最善の結論を出すという考え方の下に与野党で真摯な議論を行った結果、御指摘のとおり多くの法案が成立をいたしました。これは、与野党いずれも、多数を頼んで自分の考えを押し通すんではなくて、根気強く合意に向けた努力を継続した結果であると考えております。  さき国会を通して明らかになったことは、国民のための政策を実現していかなければならないという思いは与野党立場を超えて共通のものであるということであります。この通常国会におきましても、衆参ねじれ状況は変わっておりませんけれども、このような政治責任について認識を共有している限りは、与野党がよく話合いをすることによって国政を動かしていくことはできるというように思っております。  次に、我が国経済の今後についてお尋ねがございました。  我が国経済については、一部に弱さが見られるものの、輸出と生産は堅調でありまして、企業部門が底堅く推移しているということから、回復は持続しているという認識はあります。今後につきましては、住宅投資等が改正建築基準法の施行の影響から回復し、世界経済の回復が続く下で引き続き企業部門の底堅さが持続するとともに、家計部門が緩やかに改善し、物価の安定の下での民間需要中心経済成長になると見込まれております。ただし、サブプライム住宅ローン問題を背景とする米国経済の下振れリスクや金融資本市場の変動、原油価格の高騰等が我が国経済に与える影響については十分注視していく必要がございます。  地域間格差など経済格差の認識についてのお尋ねがございました。  今回の景気回復が長期にわたって続いている中で、地域ごとの状況にはばらつきがあります。産業構造、人口動向の違いなどから、なかなか景気回復を実感できないでいる地域があると考えております。また、企業の業況によっては、特に中小企業で弱い動きが続いておりまして、原油価格の高騰などがコストの増加を価格に転嫁することが難しい中小企業を中心に深刻な影響をもたらしていると認識をいたしております。  政府としては、このような地域間、企業規模間での景況の違いや構造的な問題を十分認識しながら、より広く成長の成果を実感できるよう、地域経済の活力の復活、中小企業の生産性の向上に取り組んでまいります。  地方税体系の見直しと地方経済への効果についてのお尋ねがございました。  今回の地方税制改正においては、近年の地域間の財政力格差の拡大に早急に対応するために、地方と都市の共生の考え方の下に地域間の税源の偏在をより小さくする暫定措置を講じるとともに、その効果を活用して、特に財政力の厳しい市町村に交付税を重点的に配分することといたしております。また、いわゆるふるさと納税により、ふるさとに対する納税者の思いを寄附税制上配慮するということにいたしております。  地方経済につきましては、さきに申し上げたとおりでございますけれども、地域によってなかなか景気回復を実感できないというところもございまして、政府としては、今般の税財政上の措置に合わせて、地方再生戦略を実施して、地方の自主的な取組を生かした地方経済の活性化に努めることといたしております。  消費税の在り方や今後の見直しについてお尋ねがございました。  これからの社会保障を持続可能な制度とするために、安定した財源を確保しなければなりません。このため、社会保障給付や少子化対策に要する費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を行う必要があります。  特に、平成十六年年金改正法において、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で平成二十一年度までに基礎年金国庫負担割合を二分の一へ引き上げることとされていること等を踏まえまして、早期に実現を図る必要があります。その際、御指摘の与党税制改正大綱の基本的な考え方や、欧州諸国において経済動向に左右されにくい消費税が国の主要な財源とされているということも十分参考になると考えております。  政府としては、社会保障国民会議において社会保障のあるべき姿や負担の仕方などについて国民議論を行っていくことといたしておりまして、そこでの議論を踏まえながら税体系の抜本的改革についての検討を進めてまいります。  平成二十年度予算の評価についてお尋ねがございました。  平成二十年度予算においては、基本方針二〇〇六で定めた歳出改革をその二年目においても着実に実現し、新規国債発行額を四年連続で減額するなど歳出改革路線を堅持しております。その中で、無駄の排除を徹底する一方で、成長力の強化、地域の活性化、国民の安心、安全といった重要な政策課題にきめ細かく配慮し、めり張りのある予算といたしております。  また、特別会計についても、統廃合等を着実に実施するとともに、歳出内容を見直し、国の借金の返済や社会保障給付等を除く事務事業の歳出は〇・三兆円削減し、十一・二兆円といたしております。  基礎的財政収支の黒字化達成目標の見直しについてのお尋ねがございました。  我が国の極めて厳しい財政状況を踏まえれば、将来世代に責任を持った財政運営を行うため、二〇一〇年代半ばに向け、基礎的財政収支に一定の黒字幅を確保し、債務残高GDP比を安定的に引き下げることが必要であります。  御指摘の、二〇一一年度には国、地方基礎的財政収支を確実に黒字化するとの目標は、そのための重要な第一歩として平成十八年に基本方針二〇〇六において閣議決定されたものであり、これまでも繰り返し確認されてきたものです。こうした考え方を踏まえ、今後とも安定した成長を図るとともに、歳出歳入一体改革を徹底して進め、まずは二〇一一年度に国、地方基礎的財政収支の黒字化を確実に達成してまいります。  社会保障費の抑制についてのお尋ねがございました。  本格的な人口減少社会が到来する中で、次世代に負担を先送りすることのないように、二〇一一年度には国、地方基礎的財政収支の黒字化を確実に達成するなど、引き続き歳出全般にわたる抑制努力を行っていくことが必要であります。特に、社会保障については、高齢化の進展等に伴い経済の伸びを上回って増大していくことが見込まれております。社会保障の国民の暮らしを支えるセーフティーネットとしての役割の重要性は十分認識しており、こうした認識に立ちつつ、給付の合理化、効率化にも引き続き取り組んでいく必要があると考えております。  経済財政諮問会議の運営方針についてお尋ねがございました。  経済財政諮問会議は、行政府内において経済財政政策に関する重要事項について、内閣総理大臣の諮問に応じ、民間の方の知見も生かしながら調査審議を行う組織であり、内閣としての政策決定は総理の下に関係閣僚も合意して閣議において行われるものであります。  今後とも、経済財政諮問会議において、現在の我が国経済が直面する課題の克服に向けて精力的な調査審議を行っていきたいと考えております。  北朝鮮問題についてのお尋ねがございました。  日朝平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を図るとの方針に何ら変わりはありません。拉致は重大な人権侵害であり、被害者全員の早急な帰国の実現に向け全力を傾注しております。  政府としては、六者会合共同声明を完全に実施するために、朝鮮半島の非核化と拉致問題を含む日朝関係の双方が共に前進するように、米国や韓国とも連携しつつ、最大限努力を行っていく考えであります。  参議院のODAへの取組に関する政府の評価についてのお尋ねがございました。  政府としては、過去三回のODA調査団の報告及び昨年六月の参議院ODA特別委員会における提言を真摯に受け止め、ODA施策への反映に努めております。  具体的には、ODAの事業量確保のための国際公約の達成に努めつつ、選択と集中の観点から国際協力の重点方針、地域別の重点課題の設定を開始しました。これらの取組は、ODA特別委員会の提言にある援助ビジョンについての明確な国民へのメッセージと軌を一にするものであります。政府としては、国民の御期待に沿えるよう、引き続き効果的、効率的なODAの実施に努めていく考えであります。  国際平和協力に関する一般法についての御質問がございました。  いわゆる一般法の整備は、我が国が平和協力国家としての役割を果たす上で、迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくために望ましく、また、国際平和協力に関する我が国の基本的方針を内外に示す上でも有意義と考えております。一般法については、与党における議論国民的な議論の深まりを十分に踏まえて検討を進めてまいります。  国家安全保障会議についてのお尋ねがございました。  我が国の安全保障について官邸の司令塔機能の強化を図ることは、引き続き重要な課題であると考えております。  そのため、既存の安全保障会議の機能を生かすとともに、官房長官、外務大臣、防衛大臣が従来にも増して一層緊密に協議をすることといたしております。このように安全保障に関する諸課題について機動的、効果的に協議することは、安全保障会議審議の活性化にもつながり、内閣総理大臣のリーダーシップの発揮にも役立つものと考えております。  中長期的な社会保障の在り方についてのお尋ねがございました。  社会保障制度は国民全体にかかわる問題であり、給付やサービスの水準に応じ保険料や税金など国民負担の大きさも変わってきます。北欧諸国のように高負担の国もあれば、米国のように低負担の国もありますが、我が国の場合、今後、少子高齢化が進展し、担い手が減る中でどこまで負担が可能なのか、また、その負担を税金か保険料か、どのような形で行うのかといった議論が必要と考えております。  こうした問題認識に基づき、今般設置する社会保障国民会議では、御指摘の社会保障のあるべき姿や負担の仕方などについて、高齢化時代の国民の不安にこたえることができるような議論を行ってまいりたいと思います。  社会保障国民会議についてのお尋ねがありました。  これまでの内閣においても、その時々の社会保障をめぐる様々な課題について、それぞれの状況を踏まえて有識者会議や懇談会を開催し、議論を行ってきたところであります。  今回の社会保障国民会議は、これまでの会議とは異なり、社会保障制度に関する持続可能性の問題のほか、制度を給付やサービスを受ける国民の皆様の立場に立ったものへと再構築するという視点に立って、国民生活の基盤を支える社会保障のあるべき姿、その中での政府の役割、負担の仕方などについて御議論をいただきたいと考えております。このため、当会議には、経営者、労働者、消費者、女性など国民各層から幅広く参加いただくこととしております。なお、参加いただくメンバーにつきましては、これまでの会議に参加された方々とは異なる方を想定しております。  この国民会議議論を通じて、社会保障のあるべき姿と、その中で政府にどのような役割を期待し、どのように負担を分かち合うのかということを国民の方々が具体的に思い描くことができるような議論を行いたいと考えております。  先日の年金記録問題に関する小沢代表との党首討論についてお尋ねがございました。  年金記録問題について現在政府が取り組んでいる対策の重要な柱は、ねんきん特別便をすべての年金受領者や現役加入者の方々にお送りし、国民お一人お一人に御自身の記録を御確認いただきながら、年金記録の統合作業を着実に進めていくことであります。これは、昨年七月五日に取りまとめた政府与党の方針に基づくものでございます。既に着実に実施をしておりますが、小沢代表の提案はこうした取組と方向性は基本的に同じではないかと受け止めておりまして、引き続き建設的御意見に耳を傾けながら取り組んでまいりたいと思っております。  年金のみを担当する大臣をつくってはどうかとのお尋ねがございました。  厚生労働行政は国民生活に幅広い分野を預かっておりまして、厚生労働大臣の責任は確かに重大であり、御提案の趣旨はよく理解できるところであります。厚生労働大臣経験者としての貴重な御提案と受け止めさせていただきたいと思います。  しかしながら、年金、医療、介護、福祉などの社会保障制度は国民生活の基盤を支えるものであり、その費用も公的負担である税や保険料によって賄われることから、各制度が縦割りに陥ることなく、総合的、一体的に運営されることが重要と考えております。このため、現在の状況においては、年金制度のみを他の社会保障制度と切り離すことなく、一人の担当大臣の下で一体的な政策判断をしていただくことが基本とならざるを得ないと考えております。  なお、年金記録問題を始めとする国政の重要課題については、関係閣僚会議を開催するなど、政府を挙げて取り組んでいるところであり、引き続き国民が安心して生活できる社会の実現に取り組んでまいります。  私の国家観、教育や憲法はいかにあるべきかというお尋ねがございました。  人々の価値観が多様化している今、私は、一人一人の国民が前向きに夢を抱くことができる国づくりを進めていきたいと考えております。そうした国民に活躍の舞台を用意するために、一人一人の国民立場に立ったきめ細かな政治、行政へと転換していかなければなりません。  また、外に目を転じれば、海外との良好な関係は、これは我が国の存立にかかわることであります。世界の平和と安定に積極的に協力することが必要であります。更に目を広げれば、私たち生活を守るためにも、地球環境問題に真摯に取り組むことも我が国の役割であろうかと思います。  こうした将来を見据えた国づくりに当たっては、まず何よりも人が重要であります。ふるさとや国を愛し、国際的にも十分通用する明日の日本を担う若者を育てる環境を整えることは私たち大人の責任であると考えております。志を高く持ち、自立してたくましく社会を生き抜く力、仲間や地域社会とともに生きる心をはぐくむために教育の再生に取り組んでまいります。  また、こうした国の基本的なありようを定めるものは憲法であります。現行憲法の民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重といった基本理念については、将来においても堅持すべきことは言うまでもありません。  一方で、我が国の将来を見据えたときに、より積極的な国際貢献の必要性や環境問題の重要性など、憲法にもかかわるような留意すべき点は幾つか明らかとなりつつあります。  憲法に関する議論については、もとより国会が決めることでありますけれども、すべての政党の参加の下で幅広い合意を求めて真摯な議論が行われることを強く期待しております。  残余の質問については、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)    〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕
  12. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 尾辻議員から、文民統制について本質的かつ極めて重要な御指摘を賜りました。  私は、議員と問題意識の多くを共有するものであります。  まず、文民統制と内部部局の関係についてでありますが、そもそも文民統制とは軍事に対する政治の優先、民主主義国家にありましては軍事力に対する民主主義的な政治統制を意味するものであります。  委員御指摘のように、防衛省・自衛隊におきましては、制服であれ背広であれ、同じく自衛隊員であります。文民統制の主体は、主権者である国民に対して選挙という手段を通じて直接に責任を負い得る、そういうものが第一義的な主体である、そのように考えております。補佐の体制をどうするかということが委員の御指摘の中核ではないかと考えております。  我が国の現行制度におきましては、国防に関する国務を含め、国政の執行を担当する最高の責任者たる内閣総理大臣及び国務大臣憲法上すべて文民でなければならないこととされ、また、国防に関する重要事項については内閣総理大臣議長とする安全保障会議の議を経ることとされており、さらに、国防組織たる自衛隊も法律予算等について国会の民主的コントロールの下に置かれていることなどにより、文民統制への仕組みが構築をされておるわけでございます。  こうした制度の下、防衛省におきましては、幕僚監部が自衛隊に関する方針や計画を作成し、内部部局はこれらの方針や計画について防衛大臣が行う指示、承認に関し補佐するなど自衛隊の業務の基本的事項を担当することとされており、また、各幕僚長は各自衛隊の隊務に関し最高の専門的助言者として防衛大臣を補佐することとされており、内部部局が文民統制を行うとの考え、自衛官が防衛大臣を補佐することが文民統制に反するとの考え方は取っておりません。  また、内部部局におきましては、政策的、行政的な事項に関し大臣を補佐すべく部員等を置くこととしております。自衛官につきましても、その軍事的な専門知識、経験、技能等を必要とし、防衛大臣が必要と認める場合には内部部局において勤務させることができることとなっており、現在でも、兼務の形で他省庁に出向している者を除き、約七十名の自衛官が内部部局で勤務をいたしておるところでございます。  次に、いわゆる軍令と軍政の関係についてのお尋ねをいただきました。  旧日本軍を念頭に置きますならば、お尋ねの軍政は法務、予算、調達など陸海軍省が軍を管理する事務、軍令は作戦、用兵に関する統帥事項にかかわる事務を意味すると考えております。  他方、防衛省につきましては、自衛隊の運用を含め行政事務と整理をしており、例えば自衛隊の行動の基本を内部部局が所掌している一方、各幕僚監部におきましても法務、予算、調達関係事務等を所掌しており、現在の防衛行政は、軍政と軍令とに区分し、異なる組織に所掌させるとの形態を取っておるものではございません。  次に、内部部局と各幕僚監部の関係についてのお尋ねをいただきました。  現在の防衛省の組織におきましては、御指摘の防衛及び警備、自衛隊の行動などの事務を含め、幕僚監部が自衛隊に関する方針や計画を作成し、内部部局はこれらの方針や計画について防衛大臣が行う指示、承認に関し補佐するなど自衛隊の業務の基本的事項を担当することとされており、両者がその所掌に応じ密接に連携しつつ防衛大臣を補佐することとなっております。  したがいまして、このことをもって直ちに組織に無駄があると、そのようには必ずしも言えないのではないかと考えておりますが、しかし、今の在り方がベストであるかどうか、このことは白紙的に考える必要があると、私はそのように考えております。  すなわち、制服、背広、この両者がより効果的、効率的に一体となって防衛大臣を補佐するための今後の防衛省の組織の在り方につきましては、防衛省改革会議議論方向性を受け、議員御指摘の点も踏まえ、防衛省における責任と権限を明確にいたしました上で、その所在が一致する組織といたしますため、基本に立ち返り検討を進め、必要な御議論を経て実行に移してまいる所存であります。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣舛添要一君登壇、拍手〕
  13. 舛添要一

    国務大臣(舛添要一君) 尾辻議員から年金記録問題についてのお尋ねがございました。  まず、年金記録問題につきまして国民の皆様に大変御迷惑をお掛けしていることを、改めて深くおわび申し上げます。  この問題につきましては、政府として本年三月までに実施することをお約束いたしましたのは、五千万件の未統合記録と一億人すべての年金受給者や現役加入者の方々の記録をコンピューター上で突き合わせ、その結果、記録が結び付く可能性がある方々へねんきん特別便をお送りすることでございます。これにつきましては、昨年七月五日に政府与党として決定した方針に基づき、本年三月までに予定どおり実施してまいります。  こうした作業を行いましてもなお統合できずに残る記録につきましては、四月以降も粘り強く統合作業を進めてまいります。具体的には、ねんきん特別便を、三月までにお送りした以外の方々にも、四月から五月までにすべての年金受給者の方々に、六月から十月までにすべての現役加入者の方々に順次お送りし、こうした取組により約一億人の方々お一人お一人に御自身の記録を確認いただきます。また、コンピューター上の突き合わせでは特定できない、婚姻等により氏名を変更していると考えられる記録などにつきましては、その具体的内容ごとに仕分けをし、その内容に応じた調査、照会等の対策を講じることにより、記録の統合を行ってまいります。  引き続き、国民の皆様の信頼回復に向け、全力を挙げて取り組んでまいります。(拍手)
  14. 江田五月

    議長江田五月君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 江田五月

    議長江田五月君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時一分散会