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2008-06-10 第169回国会 参議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年六月十日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  六月五日     辞任         補欠選任         山崎 正昭君     南野知惠子君      木庭健太郎君     浜四津敏子君  六月六日     辞任         補欠選任         柳田  稔君     鈴木  寛君      椎名 一保君     舛添 要一君      南野知惠子君     山崎 正昭君      浜四津敏子君     木庭健太郎君      福島みずほ君     近藤 正道君  六月十日     辞任         補欠選任         舛添 要一君     神取  忍君      山崎 正昭君     長谷川大紋君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         遠山 清彦君     理 事                 千葉 景子君                 松岡  徹君                 山内 俊夫君                 木庭健太郎君     委 員                 小川 敏夫君                 今野  東君                 鈴木  寛君                 前川 清成君                 松浦 大悟君                 松野 信夫君                 青木 幹雄君                 岡田 直樹君                 神取  忍君                 長谷川大紋君                 丸山 和也君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    衆議院議員        修正案提出者   倉田 雅年君        修正案提出者   細川 律夫君        修正案提出者   大口 善徳君    国務大臣        法務大臣     鳩山 邦夫君    副大臣        法務大臣    河井 克行君    大臣政務官        法務大臣政務官  古川 禎久君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   高橋 利文君        最高裁判所事務        総局家庭局長   二本松利忠君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 一夫君    政府参考人        内閣犯罪被害        者等施策推進室        長        殿川 一郎君        警察庁長官官房        長        米村 敏朗君        法務大臣官房長  池上 政幸君        法務省刑事局長  大野恒太郎君        厚生労働省社会        ・援護局障害保        健福祉部長    中村 吉夫君    参考人        東京大学大学院        法学政治学研究        科教授      川出 敏裕君        日本弁護士連合        会副会長     角山  正君        社団法人被害者        支援都民センタ        ー相談支援室長  望月 廣子君        元国立武蔵野学        院長       徳地 昭男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○少年法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまから法務委員会開会をいたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、柳田稔君、福島みずほ君及び椎名一保君が委員辞任され、その補欠として鈴木寛君、近藤正道君及び舛添要一君が選任をされました。     ─────────────
  3. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事木庭健太郎君を指名いたします。     ─────────────
  5. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 少年法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授川出敏裕君、日本弁護士連合会会長角山正君、社団法人被害者支援都民センター相談支援室長望月廣子君及び元国立武蔵野学院長徳地昭男君でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、今後の審査参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方について申し上げます。まず、川出参考人角山参考人望月参考人徳地参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、川出参考人からお願いをいたします。川出参考人
  6. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) おはようございます。じゃ、座って発言させていただきます。  東京大学川出でございます。本日は、少年法改正法案につき、参考人として意見を述べる機会を与えていただきましてありがとうございます。  私は、本法案の基となりました要綱骨子審議した法制審議会少年法部会に幹事として参加いたしましたので、部会における議論も踏まえまして、改正法案に対する意見を述べさせていただきたいと思います。  なお、今回の改正法案は幾つかの内容を含むものですけれども、時間の制約もございますので、皆さんの御関心が最も高いと思われます少年審判被害者による傍聴に絞りまして、かつ、その基本的な枠組みの部分を中心にお話をさせていただきます。  まず、被害者による審判傍聴を認めるべきかどうかを考える前提としまして、そもそも少年法の下で犯罪被害者の地位をどのように位置付けるべきなのかという点が大前提の問題となります。この点で、今回の改正法出発点となっております犯罪被害者等基本法はその三条におきまして、すべての犯罪被害者につき、個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するとしております。しばしば指摘されておりますように、被害者側から見ますと、犯人とされる者が成人であろうと少年であろうと被害を受けたことに変わりはなく、その意味では、少年事件での被害者についても同様に、その尊厳にふさわしい処遇をする要請が働くはずです。  また、犯罪被害者等基本法は、刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備を求めておりますけれども、そこには少年法による手続も含まれると考えられますし、その前提の下で、犯罪被害者等基本計画も「少年審判傍聴の可否を含め、犯罪被害者等意見要望を踏まえた検討を行い、その結論に従った施策を実施する。」としていたところでございます。  他方で、少年法には少年健全育成という動かし難い基本理念がございます。ここで言う健全育成というのが具体的に何を意味するのかということについては見解の相違はございますけれども、私自身は、それは、少年法による手続及びその結果として言い渡される処分がその少年が将来再び犯罪を行うことを防止するために少年改善教育改善更生するものであるということを意味していると考えております。そして、この意味での少年健全育成ということと被害者権利利益保護ということは、場合によっては対立する場面が出てまいりますので、少年法の下で被害者権利利益保護を考えるということになりますと、この両者の関係をどのように位置付けるかということが必然的に問題とならざるを得ません。  この点に関する一つ考え方は、犯罪被害者等基本法が制定され、それが少年法の下での手続対象としていることから、それによって少年法目的が変容したと考えまして、少年健全育成ということと被害者権利利益保護ということを対等なものとして位置付ける見解です。この立場に立ちますと、今回問題となっております被害者による少年審判傍聴についても、少年健全育成という点と被害者傍聴する利益を対等のものとしてはかりに掛けた上で制度設計をすべきだということになります。  正直に申し上げますと、私自身は、今回の少年法部会が始まる段階では、このような方向での結論が出る可能性もあるのではないかと考えておりました。現に、部会でもそれに近い意見も述べられました。しかしながら、結論としてはそうではありませんで、被害者による傍聴というのも少年健全育成という少年法目的を阻害しない範囲内で認められるのだということで部会意見は一致しました。  提出法案自身の法文では、傍聴が認められますのは、「少年年齢及び心身の状態、事件の性質、審判状況その他の事情を考慮して相当と認めるとき」となっておりまして、その文言だけからは明確ではございませんが、部会においては、例えば、被害者の方が審判傍聴していることによって少年が萎縮してしまい率直に心情を述べることができなかったり、あるいは、被害者の方がいらっしゃることでプライバシーにかかわる事項を取り上げられないために十分な情報が得られなかったりすることで裁判所による適正な処遇選択が妨げられたり、あるいは少年内省が深まらないおそれがあるような場合、つまりは、先ほど述べました意味での少年健全育成を図るという少年審判機能が害されるという場合には、この条文で言う相当性を欠いて傍聴は認められないのだというのが部会での共通の理解でした。  この点で、衆議院では、傍聴が認められる場合を「少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるとき」とする修正案が提案され、可決されたと承知しておりますけれども、これは以上の点を確認したという意味を持っておりまして、妥当な修正であったと思います。  このように、改正法案の下では、少年健全育成利益被害者傍聴する利益は完全に対等なものではないわけです。このことは、諸外国の制度と比較するとはっきりいたします。  この改正法案関係資料の中にも一覧表が掲載されておりますけれども、例えばドイツですとかフランスでは、少年審判非公開とする一方で、被害者に対しては無条件で傍聴を認めております。これらの諸国の少年審判というのは日本少年審判構造が全く同じではございませんが、ドイツであれフランスであれ、少年審判非公開としている趣旨は我が国と共通しておりまして、その基礎には少年改善教育改善更生を重視する考え方があります。そうであるんですが、事被害者による傍聴に関しましては、仮にそれによって何がしかの悪影響があるとしてもそちらを優先するという立場を取っているわけです。  これに対して、今回の改正法案はそれとは異なる考え方を採用しております。このように、少年健全育成を妨げない範囲被害者権利利益保護するという枠組みは、これまで少年法の下で認められていました審判記録の閲覧、謄写、意見陳述審判結果の通知について取られていたものでして、その意味では今回の改正は、同じ枠組みの下で、被害者権利利益保護という観点からもう一つメニューを増やしたというふうに位置付けられるものです。  被害者の方やその親族が、自己ないし自分の肉親に被害を与えた少年審判がどのように行われ、そしてどのように処分が決定されるのかを自分の目で見て確かめたいと考えるのは当然のことで、それは被害者がその尊厳にふさわしい処遇を受ける権利をうたった基本法考え方からも十分に保護に値する利益であると思います。  他方で、少年法がさきに述べた意味での少年健全育成目的としていることにも十分に合理性がありますし、これまでの少年司法運用我が国少年司法運用というのはうまく機能してきたと思いますので、この少年健全育成という理念は維持すべきものだと考えます。  また、私自身は、基本的には刑事手続少年保護手続のいずれにつきましても被害者関与をより認めるべきだという考え方を持っておりますけれども、ただその場合、少年審判への被害者関与というのは、それによって少年に対して、被害者視点を踏まえた形でより適切な処分がなされることになるからこそ意味があるものだと思いますので、仮に被害者権利利益保護を図ることによって少年審判機能が害され、適切な処遇選択ができなくなる結果として少年の再犯を防止できないということになるとすれば、それは本末転倒の感を否めません。その点で、少年健全育成という目的を害さない範囲被害者傍聴を認めるという今回の法案の基本的な考え方は支持できるものだと思います。  他方少年法部会では、このような枠組みの下であったとしても傍聴を認めることに反対意見がございましたし、刑事法刑法学会の中でも同様の意見が少なくございません。反対論の最大の理由は、被害者傍聴を認めると少年が萎縮してしまい、自らの心情を述べにくくなったり、あるいはプライバシー等に関する事項を取り上げにくくなったりして、少年審判機能が害されるという点です。  先ほど申し上げましたように、傍聴がそのような結果をもたらす可能性があるということは改正法案前提としていますので、結論の分かれ目は、傍聴というのがあらゆる事件について一律にそのような効果を持つと考えるかどうかということだろうと思います。この点は予測の問題ですし、私自身少年審判実務経験したことがございませんので断定的なことは申し上げられません。ただ、被害者意見陳述等を認めた平成十二年改正当時の議論を思い起こしてみますと、その当時裁判所は、今申し上げた理由から、意見陳述等から更に進んで傍聴を認めることには否定的だったという記憶がございます。  しかしながら、今回の部会審議では、裁判所側からは傍聴を一律に否定するという意見は出されませんでした。それは、この間に基本法が成立したことなどで被害者権利利益保護に関する裁判所の認識が変わったということもあるのかもしれませんけれども、それ以上に、平成十二年改正後、被害者意見陳述というのが多数行われまして、最近では被害者側希望すれば原則としては審判廷少年を前にしての意見陳述を認めていくという運用がなされる中で、被害者少年状況というのは事件によって様々であり、被害者傍聴を認めたとしても一律に審判機能を害することにならないんではないかという印象裁判官の方が持たれるようになったということによるものではないかと思います。  もちろん、被害者の方が傍聴することによる少年への影響は全くないとは言えないでしょうし、また審判雰囲気もこれまでとはやはり変わるだろうと思います。改正法案が、少年健全育成という少年法目的に反しない限りでという前提に立ちつつも、対象事件傍聴利益が特に大きいと考えられる一定の事件に限定しているのは、そう考えないと説明が付きません。  ただ、そうだとしても、その影響審判機能を害するほどのものになるかどうかというのは事案によるのであって、それを裁判所が個別の事件ごとにきめ細かく判断した上で傍聴を認めるかどうかを決定するというのが改正法案立場であり、それは支持できるものだと思います。  なお、このこととの関連で、部会では、傍聴を一律に否定しないにしても、触法少年事件での審判については認めるべきではないという意見もありました。確かに、触法少年は低年齢ですので、被害者傍聴によって萎縮してしまう可能性が類型的に高いということはそのとおりでしょうから、裁判所傍聴を認めるに当たってその点を考慮しなければならないことは間違いありません。それは、少年年齢考慮要素として明示していることに表れているとおり、改正法案も当然の前提としているところです。しかし、その上で考えますと、触法少年事件というのもやはり様々でありまして、類型的に未成熟であるから一律に傍聴を認めないというのは、この個別の事案ごと傍聴相当性を判断するという改正法案の基本的な考え方に合わないものだと思います。  それからもう一点、審判機能を害するという点ではやや別の視点から、被害者傍聴しておりますと、裁判官がそれを意識した審判運営をせざるを得なくなって、そうなると今までのようには少年に語りかけるということができなくなり、審判の持つカウンセリング的な機能、ひいてはその審判教育的機能が失われてしまうという意見もございます。  先ほど申し上げましたように、審判雰囲気傍聴によって変わるということは事実だと思いますので、それが教育的な機能を喪失させるところまで行くのかどうかが問題です。ここは裁判官の力量の問題であると言うしかないと思いますけれども、少なくとも部会出席された裁判官の方の発言を聞いている限りにおいては、そこまでの変容はないのではないかというのが私の印象です。  それから、傍聴を認めることへの反対論二つ目として言われますのは、審判というのは犯罪が行われてから間もない時期に行われますので、少年自身の反省がまだ深まっていない。そのような状況を見た被害者がかえって傷つき、二次被害を受けるのではないか。そうすると、傍聴というのは被害者にとっても望ましくないという意見がございます。確かに、そういうことが起きるというのはあり得ることであろうと思いますけれども、そういった状況もあるということを承知した上で、それでも傍聴したいという希望を持たれる被害者がいらっしゃる以上、そのことによって傍聴を一律に否定するという理由にはならないと考えます。  この点とも関連しますけれども、審判状況を知りたいという被害者要望を満たすためには、傍聴を認めるよりは、例えば調査官被害者に対してそれを説明する制度が望ましいし、かつ、それで十分であるという意見もございます。しかしながら、審判でのやり取りを実際に自分の目で見、耳で聞くということと、他人からその様子を聞くというのとではやはり本質的な差異がありまして、自分の目で確かめたいという被害者の方の希望というのは十分尊重に値するものだと思います。このことは、部会被害者の方からのヒアリングをお聴きすることを通じて改めて実感したところです。  もっとも現行法の下では、被害者の方には審判結果が通知されるだけですので、傍聴以外の形で審判状況を知ろうとしますと、審判記録を閲覧するというしかないわけですけれども、記録に書かれていることには限界がございますので、その中間的な措置として、裁判所による審判状況説明を求めるという選択肢を設けるということ自体は、傍聴が認められる事件が限定されていることですとか、仮に対象事件であったとしても傍聴には耐えられないという被害者の方もいらっしゃることを考慮すれば望ましいものだと思います。  そこから私自身部会において、まあ傍聴を認めるかどうかとは別に、例えば調査官の方が審判状況説明するといった運用をすべきではないのかということを申し上げた記憶がございますが、これも、衆議院で可決された修正案の中では、被害者側から申出があった場合に裁判所審判状況説明するという内容を明文で定めるということになっているようでして、これも妥当な修正だと思います。  以上、済みません、早口になりましたが、かいつまんで少年審判傍聴についての意見を述べさせていただきました。どうも御清聴ありがとうございました。
  7. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ありがとうございました。  次に、角山参考人お願いいたします。角山参考人
  8. 角山正

    参考人角山正君) 日弁連会長角山でございます。  日弁連は、この少年審判における被害者傍聴制度の導入については基本的に反対であるという立場を一貫してまいりました。いろいろこれまで御説明申し上げてきたことを繰り返すことになるわけですけれども、やや視点変えまして、現実に少年審判の現場、さらには被害者、私自身も娘さんを殺されたという事件被害者代理人として相当長期にその代理人を務めたという経験もございますので、被害者側のお気持ちも十分分かり、かつ少年審判実務に携わった者としての経験も踏まえまして、若干御意見を述べさせていただきたいというふうに思うわけであります。  私自身、その被害者代理人経験を通じて、被害者方々の事実を知りたい、真実を知りたい、少年に向き合いたいというお気持ち、これはまさに生のものとして向き合ってまいりましたので、そのお気持ちの深さということはもう十分に承知をしております。しかしながら、現在の少年審判というものの持っている基本構造、これを変えるということについてはやはり慎重でなければならないのではないかというふうに考えているわけであります。  これは、現在の日本少年司法は極めて高い水準にあります。国際的にも高い評価を受けております。いい結果を出しているわけであります。これを大きく変えなければならないというその契機は少年審判の中にはございません。結局、被害者権利利益保護というものがどれだけ今現在十分に、十分にといいますか、それはどのレベルの結果を求めるかによるわけでありますけれども、少年審判に持ち込むことによって得られるものと失われるものとを慎重に比較考量していただきたいということでございます。  もちろん、少年健全育成、端的に言えばそういう少年更生改善という問題と、そういう被害者権利利益保護という問題、これは全く次元を異にするもので単純に比較することはできません。いずれも意味を持ち、尊重されなければならない。双方を実務として経験した一人の弁護士としても痛感するわけですが、いずれについてもそれは大切なものであろうというふうに思います。  しかし、事は制度の問題でありますから、制度としてどういう制度が最も適切かということは、やはり全体的な考察ということをしなければならず、日弁連としては、そういう意味において、今まで十分に機能してきたこの少年審判を大きく変えるということに関しては十分に慎重な御審議をいただきたいということをずっとお願いをしてまいりました。  その理由ということは再三申し上げているわけですけれども、やはり被害者傍聴の下で少年が萎縮し、事実を説明したり心情を語ったりすることが果たしてできるだろうかということでございます。さらには、審判を担当する裁判官は、傍聴している被害者に配慮することによって審判の持っている教育的な機能、福祉的な機能、これを十分に発揮することができるだろうかということでございます。さらには、少年の適切な処遇選択に不可欠であるところの少年の特性、生い立ち、家族関係、深くプライバシーにかかわる事項、それを取り上げるということに対してちゅうちょをすることが起きないかということでございます。  さらには、これは傷つくか傷つかないかは被害者の側の選択ではないかというお話もございますけれども、しかし率直に言って、審判というのは非常に時間的制約ございますので、審判が行われるのは事件があってからさほど時間がたっておりません。そういう、まだ時間が経過せず、端的に言えば内省が深まっているとは言い難い少年を目の当たりにするということによって被害者が更に傷つくということは、これは十分に起こり得ることでありますし、現実に私の担当した被害者は、これは事件は娘さんを殺されたという事件だったんですが、加害者は未成年者で、大部分が逆送されて刑事事件になり、一部は家庭裁判所に行ったわけですが、端的に言えば、刑事裁判を傍聴することによって非常に傷ついたということをおっしゃっておりました。つまり、要するに被告人の姿を見ることによって更になぜだという、なぜこういう者たちに自分の娘が殺されたのかという苦しみをそこで言わば繰り返したということだと思うんですけれども。  しかし、私自身は、それはだけど傍聴するなということは申し上げられず、ただつらい思いをするということは覚悟して行きなさいというふうに申し上げたわけですけれども。しかし、そういう権利があるんだということになれば、それはもう行かざるを得ないということになると思うのですね。そこで、被害者が選べるということではなくて、もし傍聴ができるということであれば、ほとんどすべての被害者の方はそれは傍聴に行かれるんではないかというふうに思います。  更に言えば、これは現在の審判廷構造にも深くかかわるのですけれども、非常に狭い。現在の家庭裁判所の実情からして、あそこで被害者傍聴を実施したときに、何といいますか、問題なく傍聴が行われるという環境にはないということもこれ率直に申し上げざるを得ない。そういうような意味において、仮に傍聴を導入するにしても、十分な物的、人的対応体制を構築して、そこで被害者が二度傷つくことのないようなそういう十分な体制の下に導入をするということであれば、またそれは一つ選択肢かもしれませんが、少なくとも現在の家庭裁判所審判廷構造の下に被害者傍聴を持ち込むということは非常な問題性をはらんでいるということは、これは指摘せざるを得ないわけでございます。  そういうことで、日弁連としては、この法改正の重大性にかんがみ、国会において徹底した審議ということを要望してまいりました。率直に申し上げまして、衆議院においてそういう徹底した審議がされたかということについてはやはりいろいろ申し上げたい点もございます。  ただ、その衆議院審議におきまして、少年法理念目的の重要性ということが再確認をされたという形で修正がされたということについては、これは非常に重く受け止めたいというふうに思っております。特に、少年健全育成を妨げるおそれがないということを明記したということは、これまで日弁連が申し上げてきたことの一定の御理解を得たかなというふうに考えております。さらに、審判傍聴を許すためには、あらかじめ弁護士付添人の意見を聴かなければならないということも付されたということも、これは非常に大きい意義があるというふうに考えております。さらに、十二歳未満の少年事件についてこれを除外し、十二歳、十三歳については未熟であることを十分に考慮するということを明記したということも、これは大きなことであるというふうに考えております。  そういう意味で、修正された中身について極めて意義大きいというふうに考えてはおりますが、しかし、今申し上げましたように、現段階における被害者傍聴の導入ということについて基本的に反対であるという日弁連立場に変更はございませんので、是非とも参議院においても更に一層慎重な御審議お願いしたいというふうに考えております。  あと、それから、修正された規定に関しましてもかなり大きな部分が最高裁判所規則の方にゆだねられておりますので、そこでその規則のありよういかんによっては、例えば先ほど、あらかじめ弁護士付添人の意見を聴かなければならないということなどにつきましても、これは少年及び保護者が付添人は不要であるということを言えば付かないということになっておりまして、その辺、規則の定め方あるいは運用のいかんによっては形骸化するおそれなしとは言えないというようなこともございまして、そういう意味で、法の趣旨がきちんと最高裁の規則の中に生かされるというようなことをも今後見守っていきたいというふうに考えておる次第でございます。  極めて取り留めのない、個人的な体験も含めて申し上げましたけれども、是非とも意のあるところを御理解いただければというふうに考えております。  ありがとうございました。
  9. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ありがとうございました。  次に、望月参考人お願いいたします。望月参考人
  10. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 社団法人被害者支援都民センターから参りました望月です。  本日は、参考人として意見を述べさせていただく機会を与えられましたこと、ありがとうございます。  初めに、私が所属する被害者支援都民センターについて少し説明させていただきます。  都民センターは、平成四年、当時、東京医科歯科大学の教授であった山上皓先生によって、先生の研究室に日本で初めて設置された犯罪被害者相談室が発展的に改組され、平成十二年四月、東京都港区に開設されました。平成十四年五月には東京都公安委員会から犯罪被害者等早期援助団体の指定を受け、以後、その規定に基づき犯罪被害相談員、犯罪被害支援員がボランティアスタッフとともに様々な被害者への支援活動を行ってきました。  具体的な支援の内容は、電話、面接、メールなどによる相談支援、自宅訪問、病院、警察署、検察庁、裁判所等への付添い等の直接的支援、自助グループの開催、犯罪被害者等給付金の申請補助、そのほかシンポジウムやキャンペーンの開催、広報誌の発行、ホームページの開設や講演などを行っています。  実際の支援においては、生活面を支える支援、司法手続に関する支援、そして精神面を支える支援という三つの視点に立ち、様々な専門機関との連携を図りながら被害者への総合的な支援の提供を目指して支援活動に取り組んでいます。  本日は、被害者を支援する立場から主に少年審判傍聴にかかわる改正案について、今まで行ってきた支援の体験を踏まえて意見を述べさせていただきたいと思います。  都民センターは開設以来八年目を迎えていますが、犯罪被害に巻き込まれるという過酷な体験の中で人生を寸断され、それまで当たり前のように持っていた社会や周囲の人々に対する安心感や信頼感、生活者としての感覚や充足感、将来への展望など一度に失ってしまう被害者に数多く接してきました。  そして、そのような被害者から、日常生活を維持し、失ってしまったものを少しずつ取り戻していく道筋がどんなにつらく厳しいものであるか、様々な言葉で何度も何度も語られるのを聞いてきました。被害者がたどる被害からの回復の道のりは本当に想像を絶する困難なものであるといつも実感させられています。社会全体で被害者を支える制度が整わなければ、いつまでたっても被害者被害者のまま放置され、忘れられることになってしまうのではないでしょうか。  都民センターでは、開設当初から自助グループを開催していますが、毎月一回、殺人事件や悪質な交通犯罪等で家族を失った遺族が集まり、日常生活の中で感じる様々な思いを語り合っています。少年事件で息子さんを亡くしたお母さんも参加していますが、刑事事件とは異なり、事件状況や加害者についての情報がほとんど得られず、なぜ息子が殺されなければならなかったのか、加害者はどのような少年でどのような理由があって息子を殺したのか、息子の感じた恐怖や痛みはどのようなものだったのか、息子は最後にどんな言葉を残したのかなどなど、真実を知りたい、納得のいく事実を知りたいという事件直後の思いは本当に切実でした。  都民センターでは、毎年自助グループ参加者の遺稿集を出していますが、第三集に載せられたこのお母さんの言葉を抜粋して読ませていただきます。  平成十二年、見ず知らずの少年四人により息子は一瞬にして命を奪われてしまいました。殺された怒りはいまだに消えることはありません。被害者には加害少年らの情報は何も入ってきません。子供が殺されたのだから被害者には当然知らされると私は思っていました。しかし、現実は違ったのです。知りたい部分が知りたい。しかし、私の目の前には法律の厚い壁がありました。加害少年らを見事法律がしっかり守っていたのには驚きました。思わず私は息ができないような思いにさらされました。今、加害少年らは遺族の私が知らない間に釈放になっています。こんなこと信じられません。被害者、当事者さえも知らせずに、人を平気で殺した少年らをかばい、もう死んでしまった大切な我が子のことは何一つも考えてもらえていません。こんな現実おかしいと思います。間違っていると思います。加害少年からは何の謝罪もありません。彼らの様子も事件当時から何一つ私たちには知らされていないのです。  このお母さんはその後、大変な思いをして民事裁判の中で加害少年と会うことを実現させました。そして第四集の遺稿集の中で、これで良かったのかどうかは分かりませんが、今まで何も分からず悶々としていた気持ちが、何か一歩進めたような感じで良かったと思っていますと、そのときの気持ちを述べています。  私たちは、このお母さんを支援する過程の中で、被害者にとって事件の背景や加害者の様子や、犠牲になった家族の状況を知ることがどんなに大切なことであるのか改めて感じさせられました。自分の知りたい真実を自分の目で見て、自分の耳で聞いて確かめ、現実を受け入れていくことが、その後の一歩を踏み出すためには欠かせないことであると強く感じさせられました。この現実を受け入れるという段階を経なければ、被害からの回復は非常に困難なものになってしまいます。被害者事件の背景を知りたいと思う気持ちは当然のことであると是非理解していただき、少年審判への傍聴を認めていただきたいと願っています。  少年審判傍聴は、少年保護育成目的とする少年法理念に反するものになるという多くの意見を耳にします。また、被害者傍聴することによって、少年が萎縮し何も言えなくなってしまうのではないかという意見も聞きますが、私たちは、罪を犯してしまった少年の立ち直りに反対するものではありません。少年保護、更生を支えていくのはとても重要なことだと認識しています。しかし、少年権利を保障すると同時に、今まで余りにも忘れられていた被害者権利も守られるべきであることを理解していただきたいと思っているのです。かけがえのない大切な家族の命を奪われた被害者事件の背景を知り、現実を受け入れ、その後の生活を立て直していくために是非とも審判傍聴したいと願うことは、決して無理難題を主張することにはならないと思います。  都民センターでは、平成十七年度から、市原刑務所の矯正教育で取り上げられている被害者感情理解プログラムの受刑者とのグループワークに自助グループのメンバーとともに参加しています。また十八年度からは、事故を起こした少年対象とする家庭裁判所の交通講習にやはり自助グループのメンバーとともに参加しています。  被害者の支援にかかわる立場にある者が加害者の矯正教育の現場に足を踏み入れるという初めての体験にいろいろ感じるところもありましたが、担当者の方々が熱心に、誠実に矯正教育に取り組んでいる姿を見られたことは良い勉強になりました。同時に、加害者にとって、被害者の存在を知り、被害者の実情を知ることが更生には不可欠であるということを改めて強く実感しました。そのことを抜きにしては、自分の犯した罪と向き合うことも、被害者に対する謝罪の気持ちが生まれることもあり得ないのではないかと感じています。  市原刑務所でも、家庭裁判所の交通講習でも、直接の被害者、加害者が向き合うことはありませんが、自助グループのメンバーの語る一つ一つの言葉を受け止めている様子はしっかり伝わってきます。間接的にではあれ、実際に被害者の存在を知ることで加害者も新たな一歩が踏み出せるのではないかと感じています。罪を犯した少年にとっても、被害者と向き合うことが更生の第一歩になるのではないでしょうか。少年審判被害者傍聴することは、加害少年にとって決してマイナスに働くことばかりでないことをもっと積極的に考えていただきたいと願っています。  今、私が被害者支援にかかわった当初のことを振り返ってみますと、やっとここまでたどり着いたという思いに駆られます。当時は、外国の文献などはありましたが、被害者支援の専門家はいないと言われる状況にあり、私たち一人一人が、支援の中から適切な支援の方針や方法を手探りで見付け出していくという状態でした。そして、被害者権利がいかに見過ごされ放置されているかということを、被害者とともにあらゆる機会に訴えていくという状態でもあったように思います。  平成十六年に私たちの念願であった犯罪被害者等基本法が成立し、翌十七年に犯罪被害者等基本計画が閣議決定されたときは、被害者支援の充実のために活動を続けてきた多くの被害者や支援者のことを思い、胸が熱くなりましたが、同時に、やっとスタートラインに立つことができたというほっとした気持ちを実感することもできました。  確かに、平成十七年度以降、被害者被害者支援を取り巻く状況は少しずつ変わってきていると思います。警察署でも、被害者の心身の状態に配慮しながら無理のない対応を心掛けてくれる担当者が増えているように思います。検察庁でも、担当の検察官が被害者との連絡を密にし、公判前と公判終了後に説明会を開き、被害者が望む情報の提供に努めてくれます。また、被害者の負担を軽減し、少しでも安心して公判に臨むことができるように、私たち支援員の付添いにも積極的に協力してくれます。  今まで被害者の生活面を支えるために私たち支援員が一方的に連携を取ることに努めてきた行政機関も、被害者支援をするための人材育成被害者専門の相談窓口の設置に向けた計画などに取り組むようになってきています。昨年の十二月からは保護局でも新制度の施行が始まり、その制度を利用して加害者の仮出所や仮退院について自分心情を伝えたり、加害者の情報を得ることで不安感を軽減することに努める被害者も増えているのではないかと思います。  少年法も、このような時代の流れの中で見直され、改正されることになったのではないでしょうか。少年保護育成に重点が置かれ、被害者への配慮に欠けた法律は余りにもバランスが悪いと思います。本当に知りたいと思う情報は全く知らされず、ただ自分を責めながら、消えることのない悲しみや苦しみを背負い、それでも現実を生きていかなくてはならない多くの被害者の犠牲をこれ以上見過ごしてはいけないと思います。  犯罪被害者等基本法の前文には、国民のだれもが犯罪被害者となる可能性が高まっている今こそ、犯罪被害者等視点に立った施策を講じ、その権利利益保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならないという文言があります。私たちはこの前文からのメッセージをしっかり受け止めなければならないと思います。犯罪被害者になるということは決して人ごとではありません。だからこそ、真摯に被害者の言葉に耳を傾け、被害者の思いを受け取り、被害者の回復のために何をしていけばよいのか、真剣に取り組んでいかなければならないと思います。支援にかかわる者として、被害者尊厳に配慮した改正を心からお願いいたします。  以上です。ありがとうございました。
  11. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ありがとうございました。  次に、徳地参考人お願いいたします。徳地参考人
  12. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) 元国立武蔵野学院長徳地昭男と申します。  本日は、私の意見を述べる……
  13. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御着席の上で御発言いただいて結構です。
  14. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) 私が意見を述べる機会を与えていただきまして、御礼申し上げます。  私は、昭和四十三年、当時の厚生省の所管であります、非行児童を扱います国立武蔵野学院に採用されまして、約三十七年間、千八百名の非行少年、非行少女と一緒に出会いがありました。その間、十五年間、私たち家族とそれから十二名前後の少年たちと一緒に一つの棟、いわゆるコテージの中で起床から就寝まで二十四時間一緒に生活する、そういうふうな仕事をやってきました。七十八名の子供を社会復帰させまして、扱った児童の中にはもう既に四十歳になる退所生もおりまして、今でも手紙とかそれから電話で自分の悩み、それからまた相談に来たり、また家族のみんなで元気な姿を、私の方に来まして、そういう者もおります。  今回は、私の現場経験を通しましてちょっとお話をしてみたいと思っております。  この施設は少年院と異なりまして、非常に知名度の低い、非行児童若しくは非行少年を扱う施設なんですが、感化院時代から現在の児童自立支援施設まで約百二十余年間の長い歴史と伝統のある施設であります。一貫して保護者の監護能力に問題のある子供が対象でありまして、今で言います虐待児童を受け入れ、それに対する行動化が実際、非行という、そういうふうな問題行動として現れた、そういうふうに考えられております。  その最も有効な処遇方法といたしまして、先ほど申しましたとおり、夫婦の職員とそういうふうな非行を犯した児童と一つの疑似的な家庭環境の中で、家族的な雰囲気、それからまた温かい人間関係、そういうふうなものを育てる、そういうふうな配慮があります。子供たちが職員と一緒に生活を共にして触れ合いながらつくり出す雰囲気、こういうふうな雰囲気を昔から非常に大事にしてきました。家庭的な雰囲気というものは少年院にはない特色ということで、この施設の存在意義は非常に大きいものと言われている次第であります。普通の生活と普通の人間関係のモデルを与える、その中で児童は言わば育て直し、そういうふうなことをする、子供たちが職員との基本的な信頼感、こういうものを構築するのを支援するという、そういうことかと思います。  施設に入所する児童の問題行動の背景には、当然、両親の不仲、それからまた離婚問題、人間関係の触れ合いの少なさ、それから家庭的な問題等非常に大きな影響を与えているわけです。先般、五月一日付けの統計ですが、国立武蔵野学院の家庭的な状況を見ますと、母のみの家庭が六七%、それからお父さんのみの家庭が八%、いわゆる一人親家庭が七五%を占めております。それでは両親そろっている家庭はどうかといいますと、たったの一三%が両親がそろっている家庭であります。  施設は自然に恵まれた環境の中で存在しまして、その自然との触れ合いの中で子供たちは少しずつ少しずつ気持ちが素直になります。やがて落ち着きを取り戻しまして、また夫婦職員とかほかの職員とのそういうふうな交流を通じまして、少しずつ少しずつ大人に対する不信感を取り除いて心を開いていくわけです。  平成十年に五十年ぶりに児童福祉法が改正されまして、私が勤務した当時は、単に不良行為をなし又はなすおそれのある児童、こういうふうな者を入所させる施設でしたが、五十年ぶりに変わった児童福祉法の中では、非常にそういうふうな目的対象児童のほかに、特に家庭環境等その他環境上の理由により云々というような対象児童の一項が入りました。その結果、入所児童の対象の幅が大幅に広がりまして、今までなかなか入所することができなかった精神医学的な若しくは心理学的な診断名の付いた子供が大幅に入所するようになってきました。  特に、重大触法事件というものにかかわる児童の中には何らかのそういうふうな診断名が付いている児童が多く入ってきておりました。重大事件に対しては、このような児童はいかに事件に真剣に向き合うかが必要なんですが、この診断名の付いている子供というのは他人にはなかなか見えにくい、それから理解できない面が多々あるわけです。本人の頭の中は他人には見えませんが、当然、パニックになっていましたり、事件についても淡々と語りかける、初対面の人に対しては非常になれなれしい、そういうふうな態度を示す者もおります。  ある重大事件の鑑定人からの話があるんですが、当然、重大事件の場合は鑑定人が付きます。そのとき、大きな事件を起こしまして、おまえは一体何を考えているのか、本当に真剣に考えているのか、その鑑定人は、ただ、その少年に対して、口だけの反省なのか、それからまた、そういうふうな態度かということで厳しい指導があったということを聞いております。本人としましたら、いつもと変わらないまじめな応答態度だと思っていますが。  施設入所後、うちの場合は精神科のドクターとかそれからまた心理職員が定期的なカウンセリング、そういうふうなものを行いまして、矯正施設での贖罪指導、今では被害者視点に立った教育という呼び方で呼んでおりますが、我々の施設では事件への直面化ということで、そういうふうな重大事件の子供に対してやっております。事件そのものを想起させようとしても、なかなか彼らはよく思い出すことができないという、そういうふうなことを語ります。必ずしも意識的に隠しているということはないかと思います。何回かの面接を繰り返すうちに職員の信頼関係もできる、それからまた詳細に事件のことを語り始める、そういうふうになっていきます。それからまた、感情を伴って事件を想起したり、それからまた本当の意味での事件に直面化でき、また反省を語ることができます。しかし、この期間は短期間ではできません。非常に長期間を掛けてやらなければそういうことは実現できません。  入所児童の多くの中では、学童の児童も非常におります。こういうような児童に関しては、情操の安定上、家庭的な保護を必要とする年齢であります。しかし、施設では虐待経験を有する子供が非常に多いです。全国の児童自立施設では六〇%、私が勤務しました国立武蔵野学院では八三%が何らかの虐待を被っている児童という。こういうふうな児童は、特にやはりまた特異な行動を示します。非常にやっぱり衝動性が高い、それから行動化の際に非常に解離現象という、例えば喪失感とかそれから感情的に受容できないとか、施設の中では無断外出、いわゆる逃走事故を繰り返すとか、あとはパニック状態に陥るとか、そういうふうな解離現象を起こします。  審判のとき、そういうふうな状態を見たり、またぼおっとしてみたりあくびをしてみたり、そういうふうな態度を、加害少年を前にした場合、被害者若しくは被害者の遺族の方は、その診断名若しくはそういうふうな根底に虐待があるとか、そういうふうなことが存じてない方が多いかと思います。そうした場合、そういうふうな具体的な面を目にした場合、非常にやはり精神的なショック若しくは感情的な見方になりましたり、それからまた不信感、最悪な場合はまた増悪を募らせる。そういうふうなことがありまして、今後のやはり対応には大きな大きなやっぱり支障が想定されるかと思います。  少年審判というのは、重大事件であっても事件発生からやっぱり比較的短期間のうちに行われております。これらの少年たちは、冷静に自己の行為を見詰める若しくは被害者の苦しみ、そういうものにはなかなかやっぱり共感できません。そのような少年を目の当たりにするに当たり、更に被害者に対しては心の傷を深めることにはなりかねないかと思っております。  年少加害少年、体型的には非常にやはりそれなりの体型していますが、彼なんかの内面を見ますと大体が精神的に非常にやっぱり未成熟、それからまた基礎学力が非常にやっぱり著しく劣っております。大体今、平均児の学力は小学校三年生ぐらいしかありません。入所時の年齢は中学二年生、三年生、こういう少年が大部分なんですが、学力は非常にやはり劣るということです。  また当然、言語表現能力、それから理解力には非常に劣る児童が多いです。それからまた、先ほど来出ておりますそういうふうな審判の場に被害者の若しくは被害者の遺族が同席した場合、彼らが更にやっぱり萎縮し、それからまた自分意見を十分に述べるということに関してはなかなか不得手な面がありますので、十分に内容的には伝わらないかと私は思います。  また、重大事件の場合、必ず少年審判の中で処遇勧告というものが付きます。何回かの、裁判官、それから調査官が動向視察ということで施設の方に何回か出向きます。それからまた、裁判官調査官、それから関係書記官を含めまして、何回かの対象児童につきましてケースカンファレンスということを実施するわけです。しかし、その中で、施設の処遇内容とかそれからまた家族の状況、それから施設内での生活、それからまた事件に対して彼はどういうふうな罪の意識を持っているのか、それからまた被害者に対する慰謝、それからまた最終的には退所先をどうするか、そういうようなものを種々検討するわけですが、こうした状況の下で、加害者の情報というものは裁判所が非常にやはり把握しているわけです。ですから、こういうふうな情報を是非ともやはり被害者の方に支障のない範囲で情報提供してほしいと私自身は思っております。  今回、やはり改正の大きな大きな問題点は、重大非行の被害者若しくは遺族に対する少年審判傍聴制度ということに対する新設にあるわけです。成人の事件に関しては当然自由な傍聴ができるのに、なぜ少年審判はできないのか。ましてや、重大な非行、殺人若しくは傷害致死等、こういうふうな被害を受けた被害者といいますのは、少年審判傍聴することが何が問題になるのか、これは当然そういうふうな意見はあります。また、そういうふうな意見を私は尊重しなければいけないのかなという感じはあります。  従来の少年司法機関が被害者への配慮若しくはそういう十分な説明責任、これがやはり十分でなく、また経済的、心理的なそういうふうな支援が不十分であった、これが一つの原因ではないかと思っております。特に、被害者がこの目で加害少年を見たい、それから事件関係するいわゆる事実関係、こういうふうなものを是非知りたい、これは当然かと思います。こういうふうな主張は私自身はよく理解できます。二〇〇〇年で改正されて新設されました被害者等の意見聴取制度が周知されたとは言えておりません。被害者心情とか主張、こういうふうなものを正確に受け止めまして、裁判所としましてやはり説明責任を果たすことが必要かと考えております。  前述しましたとおり、加害少年若しくは加害児童、特に年少の少年は、体型は年齢相応でも非常にやはり表現能力に劣る、それからまた理解力も非常に同じように劣る、そういうふうな児童が非常に多い。特に、やはり先ほど来申しましたとおり、被害者審判廷で顔を合わせる、それだけでもパニックになる、そういうふうな性格特性を持っている少年もいるということ。それからまた、そういうふうな被害者の方に対して特異な性格特性をやはり知ってもらう必要もあるのではないかと私には思えます。  今では、必要に応じまして被害者に、少年審判に参加し、若しくは意見聴取が試行的にされていると聞いております。実際、加害少年に対しまして、被害者若しくは遺族の方から加害少年に対して非難をしたり、それからまた場合によったらプライバシーが一般社会に流出したり、そういうふうなケースがあると聞いております。こうしたような防止策も検討しながら、被害者の主張に立った、若しくは沿った少年審判の改善を望みたいと私自身は考えております。  以上です。
  15. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、参考人の皆様におかれましては御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 松岡徹

    ○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。  四人の参考人の皆さん、本日は本当にありがとうございます。また、貴重な意見を聞かせていただきまして、是非参考にしていきたいと思います。  そこで、幾つか、限られた時間ですので、絞って質問をしたいと思いますが、まず川出参考人にお聞きしたいんですが、先ほど、私たち、少年審判少年法の趣旨というのをどういうふうに理解するのかといったときに、一般の刑事事件とは違って、なぜこのような小さな子供たちがこのような犯罪を犯すのかということを私たち社会で一般の刑事事件とは違う物差しで見てきたはずなんですね。それは、子供、少年がゆえの特性といいますか、そういったことを考慮し、そして審判の結果とすれば、その更生やあるいは少年の立ち直りというものを実現することによってその目的を達成していこうということがあると思います。  私自身も、少年がなぜこんな犯罪を犯すのか、先ほど徳地参考人の現場の経験からもおっしゃっておりましたけれども、なかなか理解のできないところでありますが、考えられる背景とすれば、その少年が育ってきた社会的背景とかそういったものが大きく少年影響しているということも否めない事実だというふうに思っているわけです。少年法の趣旨は、そういったことを含めて対処していくというのが基本だというふうに私も今も思っているわけですが、今回の被害者傍聴を認めていくという少年法改正については、一般の被害者救済法ができまして、その趣旨はよく分かるわけであります。  そういう意味で、問題は、それがこの少年法の趣旨で言う目的を阻害することになりはしないかという議論になるわけでありまして、その中で、川出参考人がおっしゃったように、例えば審判に与える影響も当然あるであろうということをおっしゃっておりまして、問題は、それをやるのは裁判官の力量の問題というふうにおっしゃいました。  私たちも、例えば審判のところにかかわって、あるいは傍聴することによって審判に与える影響、そのことが少年法目的である加害少年をどういうふうに更生させていくかということに影響を与えるんではないのかというふうに、我々も当然そういう視点で心配をしています。それは、決して被害者権利を抑制しようということではなくて、その趣旨をどういうふうにしようかということでありまして、それが裁判官の力量というふうになると、ちょっと、極めて乱暴だというふうに私は考えるんですね。そういう意味で、幾つか、まだ傍聴にかかわって議論があるところはたくさんあると思うんですね。  そういう意味では、もう一度、川出参考人には、どういうふうな、傍聴によってその少年法の趣旨に与えるような影響というものを考えられるのか、それは今の段階で避ける方法、回避する方法はどういうようなことがあるのかということをお聞きしたい。  同時に、角山参考人にも同じ趣旨で、例えば弁護する側からすればあるいはそういった影響をどういうようにお考えなのか、併せて角山参考人からも同じ趣旨でお聞きをしたいということであります。  それと、望月参考人にお聞きしたいんですが、被害者自身が今までずっと蚊帳の外に置かれてきたというのも私たちもよく分かりますし、そういったことを乗り越えていこうということで救済法ができたというのも重々分かっています。被害者の方たちが、先ほどおっしゃったように、なぜ私たちの家族がどういう状態で死ななくてはならなかったのか、この事実をまず知りたいと、その事実を受け入れることによって被害者のこれからの人生の立ち直りにしていきたいという気持ちも私も重々よく分かります。そういう意味で、傍聴というのがその第一歩だというふうに思っているんです。  それは、そういう意味も私もよく分かりますが、要するに被害者の救済といったときに、私は被害とは何なのかということを考えたときに、まずやっぱり情報とかそういったことを知るということ、やっぱりしっかりと伝えていくといいますか与えると、公開するというか、そういうものとアクセスできるという環境をどうつくるかというのは非常に大事だと思います。それが、傍聴がすべてではないと私は思っています。  それと、被害者の救済というふうに考えれば、望月参考人らが活動していらっしゃる内容について、私は心から敬意を表したいと思います。被害者が持つ心の痛みや精神的なつらさというものをサポートするという立場というのがいかに大事かというのは、私は私自身の体験からもよく理解できます。そういう活動をされていることに敬意を表したいと思いますけれども、彼らのこういった心の痛みとか精神的なつらさをどう支えていくのかという方法が、これ以外にどんなことがあるというふうにお考えなのか。あるいは、被害者を救済する場合は、それを何か更に強化するように、例えば経済的に窮地に追い込まれるとかいうことが当然のように被害者の中にはありますね、それを一体だれが支援するべきなのか。すなわち、被害者方々の思いは傍聴一点だけではないと思います。被害者の救済というのは、事実を知り、事実とアクセスできるということとか、あるいはそういった心の痛みとか精神的なつらさをどうケアする、あるいは支えていくのかという体制をどうつくっていくのか、あるいは経済的なダメージにどう支援していくのか、だれが支援するのかということが当然あると思います。そういったことを含めたものとしていかなくてはならないと思うんですね。  おっしゃったように、被害者方々の中には、いや、私は傍聴もしたくないという方もいると、二次被害を感じる人もおります。そういう人も確かにおるでしょうし、いや、見てみたい、あるいは会ってみたい、話をしてみたいという人もおるかと思います。そういう意味では、まだまだどれがすべてかということではないと思いますので、それ、傍聴以外の被害者支援の在り方、あるいは情報のアクセスの在り方というものをどういうふうな意見を持っておられるのか、お聞かせいただきたい。  それと、徳地参考人には、これまでの徳地参考人の活躍といいますか活動に頭が下がる思いでありますが、少年審判の趣旨からすれば、是非とも、少年法の趣旨、目的であるものがこれまでの歴史の中でどれぐらい達成できてきたのかという検証が必要だというふうに私は思うんですね。  そういう意味では、その間に、少年ゆえに持つ様々な幾つかの問題点、先ほどおっしゃっていただきました。それをどういうふうに更生させていくのか、あるいは立ち直りをさせていくのか、そして自らの罪にどういうふうに向き合わさせるのか、それにどういうふうに責任を持っていくような人生を歩むような更生をさせていくのかということは非常に大事だと思うんですね。  それで、今までやってきた活動の中で、経験からで結構でありますが、例えばこういう点が足らない、あるいは加害者の更生にとってこういう点が足らない、こういうことが課題だということがもしあれば、お聞かせいただきたいというふうに思います。  以上です。
  17. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 各参考人からそれぞれ二、三分以内で御答弁をいただければと思います。質疑時間限られております。最初に、川出参考人
  18. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) 御質問のあった点ですが、まず少年審判が何が成人の場合と違うかというのは、御指摘のとおり、その少年のこれまで育っていた環境ですとか少年の内面の問題、そういうものを非常に詳細に明らかにした上で、それを審判の中で少年に今までの自分の問題点も認識させるような形で考えさせると、それと行った非行事実も含めて考えさせるというところに少年審判機能があるのだろうと思います。  その点で、傍聴が認められた場合どういう影響があるかというのは、二つ申し上げましたが、一つは、そういういろんな情報が出てきにくくなるだろうということはもちろんあるわけですね。それからもう一つは、考えさせるということですと、裁判官といろいろやり取りをする中で自分の問題を考え、何か発言するということがしにくくなるんじゃないかと、その二つの点があるんだろうと思います。  プライバシーの情報に深くかかわる情報が出てこなくなるんじゃないかという点の対処としては、これは、例えば非常にプライバシーにかかわる事項を調べるような場合については一時的に被害者の方に退席していただくというような措置も可能でしょうし、それから、少年が話しづらくなるということであれば、本当にもうそこまで行ってしまう場合、当然被害者の方がいらっしゃる場合には少年は緊張するでしょうから、そうでない場合とは当然違うんですけれども、緊張ということが進んでいってもう物も言えなくなると、また緊張して考えることもできなくなるというところまで行けば、もうそれは相当性を欠くということで傍聴が認められないということになるんだろうと思います。そういう点での対処ということになると思います。  それから、裁判官の力量ということを申し上げたんですが、あの趣旨は、少年審判というのは職権主義で行うものですから、刑事裁判と違って、まさに裁判官が主宰して少年に語りかけ、いろいろ話を聞き出し、少年に考えさせるということだったと思うんですね。そういう点では、通常の審判でもやはり裁判官の力量というのはまた決定的な意味を持っていると私は思います。  そうだとすると、傍聴があったときに、その批判として、傍聴被害者がしていらっしゃると、要するに被害者のことだけを考えてしまって今までのように働きかけができなくなるというのは、そうなるかどうかというのはやはり裁判官の力量だと思うんですね。そのときにもう一律にそうなってしまうということではなくて、やはり裁判官が、被害者の方がいたとしても今までのような教育的な働きかけができるというふうに考えるかどうか。それは私が部会お話を伺った裁判官の方からの印象では、それはできるだろうというふうに思います。
  19. 角山正

    参考人角山正君) 今の点についてですが、やはり二つの矛盾した目的裁判官が言わば仕えると言わば引き裂かれる形になるんではないか。つまり、ここの場面で被害者心情に配慮すべきか、それともいま一歩踏み込んで、言わば少年に対してこういう言葉を掛けるべきかと。そのときに、それは当然ちゅうちょ、葛藤が生ずるわけで、それは力量によって解決できることなのかなというのが率直な疑問です。  更に言えば、被害者が加害者と対面したいという物すごい気持ちを持つ、これは私の経験からも分かります。ただ、恐らく審判廷というのは対面するに最も不適切な場面ではないんだろうかと。先ほど、矯正の場面で被害者と、言わば一定のプログラムを経て本当に被害者に向き合う場面が更生改善に必要だという、その場面こそがある意味で最も向き合うに適切な場面なのであって、処遇を決める審判の場ということは恐らく被害者と加害者が対面するには最も不適切な場面ではないかと。これは刑事裁判でも同じで、多分傍聴することによって、言わば自分のそういう納得といいますか、加害者と向き合うということが全く実現していないというのがこれ実情です。それは経験した被害者がそうおっしゃっております。  だから、私はどこかでやはり加害者はきちんと被害者に向き合わなければいけないと思います。ただし、それは刑事裁判でいえば刑確定後であろうし、少年審判であれば、言わば処遇が決まり、そういう更生改善のプロセスの中でだろうと。そちらの方を考えるべきであって、何か今ある審判のところで傍聴という機会をとらえて向き合えというのは余りにもちょっと便宜的ではないのかなと。それは被害者にとっても決してプラスではないというふうな理解をしております。
  20. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 今御質問の中にあったように、確かに被害者というのは総合的な支援に支えられることが絶対に必要だと思うんですね。しかも、事件直後から時間の経過を経る中で、その時々に問題を整理して優先順序を決めて、その方に適切な支援を提供していくことが絶対に大切だと思っています。  そういう意味では確かに裁判の傍聴というのはその一部分だと思うんですけれども、私たち刑事裁判の付添いをする中で、やっぱり嫌だとおっしゃる方もいらっしゃいます、もう聞きたくないし、見たくない。でも、代理傍聴をすることもできますよというふうにお伝えすると、ではお願いしますと言って、そのことに関してやっぱり事実を、裁判で何が起きたか知らせていただいて本当に良かったということをおっしゃる、皆さんおっしゃいます。  そういう意味で、大げさな言い方をしますと、被害者というのは人生を再構築していかなくてはならないわけですね、被害後。その中で、やっぱり本当にあったこと、事実をしっかり知って、それを苦しいんだけれども受け入れる。もうどんな加害者か分かりません、本当に刑事裁判の中でも傷つかれる方はたくさんいらっしゃいます。でも、知らないより知ることの方が不安はないわけです、その後のことを考えやすくなる。それはもう決定的な事実だということを私たち経験の中で実感していますので、少年法、本当に審判の中で私たち何かいろんなことをしたいと思っているわけではなくて、本当に事実を知りたい、真実を知りたいというそういう一点で、やはりそういうものが改正されることを祈っています。
  21. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) それでは、実際の施設の課題ということですので、お答え申し上げます。  先ほどちょっとお話しした中で、児童福祉法が改正されまして、非常にやはり精神医学的な診断が付く児童が非常に多く入ってくるようになった、もう一点、被虐待児の子供も非常に多く入ってきた。そういうふうな少年たちは特異な行動パターンを示すという、そういうふうな少年が非常に多いです。  その場合、当然、今までの単に不良行為を犯す若しくは犯すおそれのある子供ですと集団的な処遇ということが非常にやはり効果的な処遇方法なんですが、こういうふうな医学的な問題のある子供というのは、集団的な方法ではこれはやっていけません。ということは、おのずとしまして個別対応が必要なんですね。集団から離しまして、そういうふうな行動化した場合は職員が個別対応するという。  そうした場合、当然、単なる職員が絶えずやはりそういうふうな子供と一緒にいるということは相当エネルギーも必要ですし、場合によったら、職員との関係性が不調に終わったときは職員が相当やはり精神的に参って、場合によったら休職になるようなケースも多々あります。  ですから、そういう場合、必ずそういうような施設には、そういうふうな対応をする医者若しくは精神科の医者ですね、それからまた心理的ないわゆる臨床心理士、心理専門的な職員、そういうふうな職員を是非ともやはり施設には配置しなければならないということが一点です。  もう一点は、特に施設退所した後のアフターケアの整備、これをやはりある程度整備しなきゃいけないと思っております。  武蔵野学院の場合は、一年六か月が平均的な在所期間ですが、なかなか退所した後、家庭的な環境に非常に大きな問題があるということを先ほど申しましたが、中には入ってくる前以上に環境的に悪くなるような家庭環境が非常に多々あります。そういうふうな下に少年たちが退所し、これは当然やはり再非行する可能性が非常に高くなってきます。大体二四%が児童自立支援施設の場合は再非行するというようなデータが出ております。  それからもう一点、同じようなアフターケアですが、特にやはり重大事件を起こした少年に関しましての在所期間、これはなかなか退所する先が見つかりません。  まあ、ある少年は小学校の六年生のとき大きな事件を起こしたわけですが、最終的には、先ほど言いました一年六か月が在所平均期間ですが、そういうふうな重大事件の場合はなかなか家庭に帰すこともできませんし、それからまた受入先もありません。当然、やはり中学三年、卒業生若しくは高校に入った後も武蔵野学院にいわゆるそのまま処遇継続するという、若しくは四年以上も中にいるという、そういうふうなケースがありますもので、是非ともそういうふうなアフターケアの問題含めまして、重大事件の退所先のそういうふうな改善案、改善策も何かこれからは講じなきゃいけないかと私自身は思っております。
  22. 松岡徹

    ○松岡徹君 ありがとうございました。  時間がなくてもう質問はできませんが、少年法の趣旨というものは、要するに少年が犯した事件をどう解決するか、それによって生まれた被害者をどう救済するかという観点からも、私はその趣旨をより発展さしていかなくてはならないという立場であります。  少年たちが自分の犯した罪を真正面から受け止めて、本当にその罪の重さを自覚して更生していくということがなければ、そういう結果を生み出さなかったら、被害者の真の救済にもつながらないだろうというふうに私は思っています。  そういう意味では、今回の傍聴によって少年法のそういった趣旨がゆがめられるということになってはならないという立場でありますし、一方で被害者の、やっぱり本当に今まで蚊帳の外、まさにらち外に置かれていた被害者の人たちの実態をしっかりとつかまえて、彼らを本当に救済するという措置を責任持った者としてこれからも継続して課題として取り組んでいかなくてはならないというふうに思っておりますので、皆さん方の今日の意見を是非とも参考にさしていただきたいと思います。ありがとうございました。  以上です。
  23. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 自由民主党の山内俊夫でございます。  今日は参考人の皆様方、貴重な時間、我々のために割いていただきまして、ありがとうございます。  私の質問は、確かに時間がございませんので、今回の少年法の大きな柱であります、四つばかり改正案があると思うんですが、少年審判傍聴という大きな柱、それと記録の閲覧、謄写の範囲の拡大、意見聴取の対象者の拡大、それと成人の刑事事件の管轄の移管等という大きな柱が四つばかりあるんですが、私は今回、少年法の一部改正審判傍聴に絞って質問をさしていただきます。  まず、川出参考人にお聞きしたいんですが、私のところにこの二月ぐらいから全国の弁護士会の会長声明というのが随分書面が届きました。一通り目を通させていただいておりますけれども、大体、各三十件ぐらいの会長声明は、共通している部分が、被害者が今回傍聴に参加すれば少年が非常に萎縮してしまうんではないかと、先ほどから議論が随分出ておりますけれども、それで明確な事件の解明がなされないことにつながってくるし、ひいては健全育成という少年法の大きな柱に多少問題を起こすのではないかという意見なんですね。  それと反対に、今日もお越しいただいております望月さんなんかの被害者の皆さん方の御意見は、確かに被害者としての権利も認めてほしいよと、これがもう長年の念願でありますと、我が身内がどのような形で、どのような状況で命を落としたのかということをやはり知っておきたい、その権利は是非守ってほしいと。私は、今回の一部改正はそこら辺りの葛藤にあるんだろうと思いますし、意見が大変ふくそうもしておるわけでございますけれども。  もう先ほど申し上げましたように、特に審判廷が少し小さいんだと、それに傍聴すると確かに加害者が萎縮してしまう、まあ少年ですから。そういった問題点が多々あるというのが弁護士会の御意見なんですが、その点について川出参考人に御意見をちょっとお聞かせいただけたらと思うんですが。
  24. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) 萎縮ということの意味なんですけれども、意見の中で申し上げましたように、当然、被害者の方が後ろで傍聴されていれば少年は緊張することは間違いないと思います。そういう意味での少年に対する影響というのは当然あると思うんですね。その上で、萎縮というふうに言われる場合というのは、要するに緊張するということを超えて自分の言いたいことも言えなくなる、それから、裁判官からいろいろ働きかけを受けて、何か考えてくださいということであっても考えることもできなくなると、そこまで行ってしまう場合も確かにあるだろうと思うんですね。  ですから、萎縮することはないかと言われれば、それはあることもあるでしょうというのが私の意見でして、ただ、それはすべての事件でそうということにはならないのではないかというふうに考えております。
  25. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 ありがとうございます。  それともう一つ、例えば弁護士会の御意見の中に、裁判官被害者等の傍聴を意識して少年心情に配慮する発問をためらうようなことになり、その結果、懇切を旨とする審判の教育的、福祉的機能が後退し、審判の運営が刑事裁判化してしまうおそれがあるというような表明をされているんですよね。それについてもどのようにお考えになっているか、お聞かせいただきたい。
  26. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) これは、ですから、裁判官の方がどういう対応を取られるかということなんですが、先ほど力量と申し上げましたけれども、その言葉が不適切であれば、要するに、裁判官として、当然、少年審判を運営する立場から、今までと同様に少年に対する一種カウンセリング的な働きかけというのは当然なさるだろうと。被害者の方が入ってこられることで、じゃそれが全然なくなってしまうかということは、それはそうではないだろうと思います。  ただ、先ほど角山参考人がおっしゃったように、ある意味で矛盾した側面があるということは間違いないと思うんですけれども、それによっておよそ審判のこれまでの教育的な機能が害されるということにはならないでしょうと。私自身は、そういう面では家裁の裁判官の方の運営というのを信頼していいんではないかというふうに考えております。
  27. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 そして、角山参考人にお聞きしたいんですけれども、同じように、先ほどもコメントの中にありました弁護士会の意見の中で、日本少年審判は非常に優秀であると、言わばレベルが高いとおっしゃっておりました。確かに弁護士会の方も、日本は先進国の中でももう少年非行が極めて少なくて、大変効果を現しているんだと、それは日本の持つ少年審判の言わばおかげなんだと、こういうような理由付けされておりますけれども、じゃ具体的に、少年非行が少ないというのは、どういうところでどう比較されて日弁連はそうおっしゃっているのか、参考人からちょっとお聞きしたいんですけれども。
  28. 角山正

    参考人角山正君) それは統計的にはもう明らかに出ております。ただし、それがすべて少年審判がすばらしいからその結果を生じたかといえば、日本社会総体の在り方の産物ですから、要するに犯罪統計というものは単純にいろいろな因子に帰着できない、総合的な結果として出ると。ただし、やはりいろんな意味日本少年審判が十分に、十分にといいますか、それはどの目標を設定するかにはよるんですが、明らかにアメリカとかヨーロッパとかの言わば先進諸国と比較しても、まあ優れた少年司法を実現しているということは、これは恐らく裁判所もそのように認識しておられるんではないかと理解をしております。  ただ、じゃ現状でいいんだということを言うつもりはございません。ただし、それがそういう結果を出しているものを変えなければならないような重大な立法事実があるのかということになれば、それはその少年審判運営の中にはなかったわけです。先ほど言ったような被害者権利利益保護という別なファクターが出てきて、こういう傍聴という制度になったと。  私は、もちろん被害者の知りたいというお気持ちは分かるということを再三申し上げておりますが、しかし、知る手段というのはいろいろ考えられるわけなので、最も処遇を決めるに重要な審判という場が果たして被害者と加害者が対面するに最もふさわしい場かといえば、恐らく最も不適切な場ではないかと、そのように理解をしております。
  29. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 今、角山参考人から法廷の場が決してベストじゃないという御意見をいただいたんですけれども。  さて、望月参考人にちょっとお聞きしたいんですけれども、やはり日弁連の中に、事件から時間がそれほど経過をしていない段階で審判が開かれることがある、少年発言や態度によって被害者が更に傷つくこともあるんではないかと、こういう御意見が述べられておるんですが、被害者をお世話をされている立場、また御自身がそういう立場になったということも体験をされまして、この御意見に対して望月参考人意見を少しお聞きしたいんですが。
  30. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 被害を受けたことで、本当にどん底というかもう傷ついているわけですよね。確かに直後というのはいろんな急性の心身の反応があったりしていろいろ大変なこともあるんですけれども、でも、それが加害者のことを知ったら更に傷つくということにはならないと思います。むしろ、そういうことがあってもやはり締め出されることの方が被害者にとっては傷つきは大きいと思いますし、締め出されて知ることができなかった傷というのは消えることはないですし、それがひいてはやっぱり社会や周囲の人々に対する信頼感の回復を遅める、回復に悪い影響を与えることになっていくと思いますので、そういう被害者を支えるために私たちのような支援センターがあるわけですから、それは十分、私たち、いろんな意味でケアをしながら裁判などに臨めると思いますので、それは大丈夫だと思います。
  31. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 もう一度、望月参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど角山参考人さんから、その知る権利の手段としては審判廷が最高の、ベストではないという御意見なんですが、それについて望月さんのグループが検討、検証をいろいろされておられると思いますけれども、手段としてはどのようにお考えでしょうか。
  32. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 確かに、例えば閲覧ができたりですとか、説明を聞いたりですとか、意見を陳述できたりとか、そういう意味で接触できる場所、場面、あるいは知る場面もあるかと思うんですけれども、やはり、これは私自身が思うことですけれども、自分の大切なかけがえのない家族が亡くなったことを人づてに聞いたり、紙一枚で知らされたりして納得ができることでは絶対ないと思うんです。少年審判を決定する大事な場所であるからこそ、被害者もやはりそこに参加したいというのは当然のことだと思います。
  33. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 ありがとうございました。  じゃ、最後に徳地参考人に少しお聞きしたいと思いますのは、徳地参考人はもう既に三十七年間、加害者になった少年健全育成また社会復帰というものに大変お世話されておられるということで、実感として、最近の現代の若者、大体中高生ぐらいの年齢ですね、大体十五歳前後と、例えば三十年ぐらい前の子供たちの、言わば社会適応における感覚というのはどのぐらいの差が出てきておるか、特徴はどうなのかというのをちょっとお聞きしたいんですけれども。
  34. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) 先ほど言いましたとおり、昔は単に非行児童、非行少年対象児童だったんですけれども、今から十年前に法律変わりまして、一気にやはり対象児童が変わってきたということを先ほど申し上げましたが、昔はそういう点では、無意識に一緒に職員と生活すれば、本当にやはり借りてきた猫のような形で職員の指示、指導には従うようなタイプの人間が多かったんですね。ということは、本当に非行少年といいますのは、やはり一回職員との関係性がしっかりできますと、先ほど言いましたとおり、基本的な信頼感、これができますと非常にやはり職員にすべて従う、そういうふうな感覚が多いんですね。  最近の子供、十年以降たつんですが、子供を見ますと、やはり経済的に裕福な家庭が非常に多くなってきた。その反面、非常にやはり自己中心的な、いわゆる自己中ですね、それからまた親が非常にやはり権利意識が強い、また親が自分の愛玩動物のような形でかわいがる。そういう点では、昔のような、経済的に中の下若しくは下の家庭が大部分、若しくは三分の一ぐらいは大体いわゆる公的扶助を受けている家庭だったんですけれども、最近は非常にやはり幅広くいろんな面で、経済的な状況もそうですし、それからまた、お父さんの仕事が特に変わってきたということがあります。  昔は本当に、親の仕事にしましてもブルーカラーが大部分だったんですが、最近は、職業としましたら、何とか大学の息子が来たり、あとは公務員、学校の先生だ、あとは国の公務員とか、そういうふうな人も来ますし、それからまた、社会的な地位の高い、そういうふうな家庭の子供も来ますし、昔と違いますのは、内容的に非常にやはり軽微になってきたといいましょうか、昔は本当にその道で食事をするぐらいのいわゆるプロですね、そういうふうなものが非常に多かったわけです。  具体的なちょっと話を申し上げますと、昔は昭和三十年代まですりの子供が非常に多かったです。すりの子というのは三つの特徴がありまして、やっぱり顔がかわいい、それから非常にやはり運動神経がなければいけない、それからもう一つ、手先が器用じゃなきゃいけませんので、手を見ますとやはりピアニストのような手をしていたわけですね。こういうふうな子供というのはやはりなかなか予後の成績も難しいわけですね。  といいますのは、自分たちでそういうふうなすりというような自覚する意思がないし、また退所してもやはりこれで飯を食っていくという意識が強いわけですね。ですから、彼なんかは自分の利き腕は必ずもう、作業というものがあるんですが、利き腕を使いますと指が太くなる、イコールもうこれからはすりで飯が食えない、そういうふうな子供の一つの立ち直りというものは、利き指を使うか使わないか、これで決まるわけですね。あっ、この子はもうこれからいわゆるすりでは飯を食わない、そのために作業で利き指を使って作業をする。そういうふうな対象の子供がいたんですが、今はそういうふうなすりの子供はまずいないと、そういうふうな対象も随分変わってきたということです。
  35. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 ありがとうございます。  徳地さんに年代のことをお聞きしたのは、私も昭和三十年代は大体その年代だったものですから、その辺りの周りの友達、それと非行に走っている少年たちも直接的にかいま見させていただいておるんですけれども、最近少し情報が、年代が離れてしまったものですから。  二〇〇〇年ごろに少年法改正のとき、十六歳から十四歳に年齢を下げるといったときに、若手の弁護士の皆さんが大挙して二、三回私のところに来ました。少年法についての御意見を賜りたいとか、いろいろ意見交換をさせていただいたんです。  そのときに私は、自分でも余り知識を持ち合わせていなかったので、昔、暴走族の頭をやっていた私の友人がいるものですから、彼と数時間にわたっていろいろ聞いてみたんです。最近どんなんですかというアバウトな問いかけだったんですけれども、今の若者は、自分は十八歳からはもう現場を離れたと言うんです、彼らは。そして、十六、十七辺りはばりばりの現役だと。彼らに、これをやると捕まるよ、これをやると始末書で済むよ、これをやると少年院へ送られるぞとかいうマニュアルを後輩に託していくんですね。ですから、弁護士の現役の皆さん、我々政治家も、そんな現場のことは余り知らないんですね。ですから、我々は少年少年と思って非常にかわいい少年だろうという認識でいたんですけど、いやいやもう山内さん、そんなことないと、もう十五、六歳になるとそういう知識を全部先輩から受け継ぐんですと、だからあなた方が考えている以上に子供たちの方がある意味では賢いんですよとこういう、いいのか悪いのか別にしまして、賢いんですよという意見があったんですよ。ああ、なるほどねと。  それと、一つの特徴は、最近はボスがいまして、ボスは手を掛けないんです。命令をするんだと。その命令に従わなければ仲間外れにしたり、その命令に逆らったやつは逆にリンチに遭う。だから、教唆をする。それが怖いから集団で、仲間、じゃ、おまえたち、下部の人間、七、八人であれをやっつけてこいと、こういう指令を出す。それが実態なんだと。ですから、案外一人一人の子供はそうでもないんだけれども、集団になって、それをあるところで強制をし始めると、考える以上の犯罪、現代我々が考えている犯罪を平気で犯してしまう、そういうことが往々にしてあるという私は意見を聞き、弁護士の皆さんとそういう話をいたしました。ああ、なるほどと。  弁護士の皆さんは当然、一生懸命勉強されて社会正義に燃えて弁護士稼業に入っていくわけですから、そういう人たちのたまりの話は余り知らない、大変参考になりましたということで、私自身参考になったんですが、それが実態であるということも考えて、今回、最後に一つ徳地さんにお聞きしたいんですが、十二歳より若い人たちの傍聴はこの法律ではやめたということは私も非常に評価しております。これについて御意見いただいて、私の質問を終わらせていただきます。
  36. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 徳地参考人、簡潔にお願いいたします。
  37. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) はい、分かりました。  私も同意見です。先ほど言いましたとおり、重大触法事件でいわゆる児童自立支援施設に入ってくるんですが、こういう少年は非常にやはり、先ほど言いましたとおり未成熟、精神的に非常に未成熟な部分も多いし、それからまた、いわゆる基礎的な学力も非常に顕著な、著しいそういうふうなことがあるという、また理解力、表現力も非常に未熟、劣るという感じもしましたので、できましたら、やはりそういうふうな形でやってもらった方が私自身はいいかと思っておりますので。
  38. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 ありがとうございました。終わります。
  39. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 四人の参考人方々、貴重な御意見を本当にありがとうございました。心からまず御礼を申し上げます。  概括的なことはお二人の委員の方から御質問がありましたんで、この委員会また法制審でも個別のことで幾つかテーマがあったようでございまして、そういったことについて四人の参考人方々からお聞きしたいと思うんです。  まず、少年審判傍聴制度に対して反対あるいは慎重な立場角山参考人徳地参考人という立場だと思うんですけれども、確かに狭い審判廷被害者等が傍聴されている場合に少年が萎縮するんじゃないかということ、これが一つの大きな反対若しくは慎重な立場理由だと思われます。  そこで、これ、今回傍聴制度をつくる際にも議論になったと思うんですけれども、例えば、じゃ仮に被害者等がモニター等を通して少年審判傍聴するというモニター傍聴という、こういう在り方についてどう角山参考人徳地参考人、お考えになられるか。萎縮という事態についてはこれは避けることができるのではないかとも思いますが、モニター傍聴についての考え方角山参考人及び徳地参考人からお聞きをしておきたいと思います。
  40. 角山正

    参考人角山正君) まず、モニターによる傍聴についてもやはり同様の問題があるというふうに考えております。  まず、立法趣旨との関係で言いますれば、被害者の方が審判を直接見聞きしたいという要請があるというところがスタートだったというふうに思うので、その審判非公開という原則の例外として制度化するのであれば、むしろ直接在廷という傍聴に限るべきという考え方になるのではないかと。新たに審判傍聴を認める場合でも、法一条の下で運用されるという説明はされるわけですけれども、被害者が直接在廷するからこそ少年健全育成に資するような運用がなし得るというふうにも言えるわけであります。モニターによってはそれはできないと。  次に、弊害のおそれということでございますけれども、これを許す要件というのが逆にあいまいになってしまうのではないかと。少年健全育成という法の目的との関係で、より大きな問題を生じはしないかという危惧を抱きます。モニターによる傍聴でも、いろいろなプライバシーにかかわる事柄を取り扱うことや、少年に対する働きかけ、教育的な働きかけが困難になるという状況については変わらない。逆に、言わば見えないところで、まあ監視という言い方をすればちょっと失礼なわけですけれども、しかし、少なくとも少年なり裁判官にとってみれば、言わば監視されている下での審判ということになるのではないかと。更に言えば、そこにはもう裁判長の審判指揮が及ばない、つまりモニター室の方にはですね。  いわゆる情報の流出のリスクというようなことも、またいろいろそこに生ずるのではないかと。極端なことを言えば、携帯で中継するというようなこともこれ、ないとは言えない。いろんな問題が生ずると。そこで、極端なことを言えば、そういう傍聴する被害者の方の身体検査というようなことができるのかと、私はちょっとできないんではないのかなというふうに理解をしております。  あと、萎縮効果が低減されると一概には言えない、そこにいないからまあいいでしょうというわけにはいかないんじゃないか。やはり少年は、いや、どこかで自分は見られていると、被害者の遺族が自分を見ているんだという意識があれば、もうそれはその場に在廷するのと同じ萎縮効果を生ずるのではないか。聞いている被害者の反応が分からない分だけ、むしろ大きい萎縮効果を生ずるということも言えるんではないかと。  逆に、じゃ、モニターされていることはもう言わないよということになれば、これは逆に審判の公正という点でどうだろうかと。これまでの裁判傍聴においてもいわゆるモニター傍聴というのはないわけですね。少年審判に限ってモニター傍聴を認めるということになれば、今度は、いわゆる民事裁判や刑事裁判でも、やはりその被害者のかかわるそういうところでモニター傍聴というようなことに広がるというんであれば、言わば在廷する萎縮を防ぐためというその限度で導入してもその影響は極めて大きいと思うので、在廷の傍聴よりもより一層慎重な検討が求められるのではないかと、そのように理解をしております。
  41. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) 私自身は、年少の子供に、ケースに限って考えますと、やはり年少児童が少年審判廷で被害者若しくは遺族の方と同席するということ自体非常に萎縮するとさっき申しましたけど、萎縮することによってやはり十分な意見が言えないという、一つあるかと思うんですが。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  その反対に、やはり、先ほど来例に申しましたとおり、被害者からいろんなバッシングを受ける。中には、悪魔とか、それから死ねとか、戻ってきたらただじゃ済ませない、こういうふうな例が九十例のうち五例あったという話を聞いております。  それからまた、もう一つ、モニター視聴に関しましては、そういうふうな被害者、加害者が同席するに当たって、加害少年に当たっては、非常にやはり自分が起こした事件に対するそういうふうなバッシングもありますし、それから自分自身もやはり事件に対する当然反省、そういうふうなものもありますし、それからまた非常に、先ほども申しましたとおり、精神的なそういうふうな問題を自分自身で持っていると、三つの大きな大きな問題を実際に持っているわけですね。  そういうふうなことを考えますと、やはり被害者、加害者の同席するのにはちょっといろいろ無理があるんじゃないかと。また、場合によりましたらモニター視聴、この場合は御対面しませんので、そういうふうなことはせめて最低限必要じゃないかと思っております。  もう一つ言いましたのは、やはり加害少年に対して被害者、これは当然分かるんですね、感情的なものを。特に、やはりいろいろ非難がありましたり、それから場合によりましたらプライバシーまで世間一般に流れてしまう、こういうふうなことはせめてやはり何らかの形で防止策、こういうふうなものを論じてほしいと思っております。
  42. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 望月参考人にお伺いをしたいんですけれども、今回の法案は、被害者の方の少年審判傍聴を一定の範囲で認めていくということになっている。望月参考人意見書を出されて、その中で、対象犯罪範囲、もう少し広げるべきだと、お読みをいたしました。ただその点を、つまり犯罪被害者立場からしてみると、傍聴における対象犯罪というのをどう考えればいいのかという点をもう一度この場で参考人として御意見を伺っておきたいと思います。
  43. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 被害者を支援する立場の者としては、範囲は広ければ広いほどいいというのが実際の思いです。ただ、やはり殺人事件ですとか暴行傷害で重圧な被害を受けた被害者ですとか、あるいは性被害ですとか、身体犯の被害者に関しては是非傍聴を認めていただきたいというふうに思っております。それが第一歩かと思います。そして、その結果を踏まえて、やはりもう少し広い目で被害者気持ちを拾っていただくということが起きてくればいいなというふうに思っています。
  44. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は、川出参考人に代理傍聴の点についてちょっとお聞きをしておきたいんです。  刑事裁判等で傍聴をされる場合は、途中で気分が悪くなったり退廷しなければならないというようなことがあった場合、この代理傍聴、つまり傍聴する被害者の方のために付添人という制度をどう考えるかという問題ともかかわってくるんですけれども、これは法制審議会でも随分議論をされたようでもございますけれども、やっぱり被害者の方自身審判を見届けられないという事態になったとき、だったら付添人の方が残って審判状況を最後まで見届けることができないかというような問題は残っていたと思うんです。  今回の法案ではそれは認められないという形にはなっておるんですけれども、言わばこういう付添い、そして代理傍聴というものについてどうお考えになられるか、川出参考人の御意見を伺っておきたいと思います。
  45. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) 代理傍聴につきましては、付添いの問題と代理傍聴はちょっと違う話だと思うんですが、付添いは当然私は認めるべきだと思いますけれども、代理傍聴につきましては、一つには、今回傍聴を認めるということの意味というのは、やっぱり被害者の方が自分の目で見、自分の耳で聞くというところに本質があるんだろうと思います。かつ、そういう利益があるからこそ、やはり何がしかの影響がその少年審判に対してあるとしてもその傍聴が正当化できるということだろうと思います。  代理傍聴ということになりますと、被害者以外の方が傍聴して、それを被害者の方に伝えるということになりますので、それは言わば間接的に情報を得るということなんですが、それであれば私は、例えば今回修正案で入りました調査官の方が審判状況説明するということと本質的な違いはないと思いますので、むしろそちらでやるべきだろうと。代理の方が入るというのは、要するに、やはり審判非公開被害者ではない別の方が入るということですから、それはやはり影響から考えると正当化するのは難しいんではないかというふうに思っています。
  46. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に四人の方にそれぞれ同じ御質問をしておきたいと思うんですけど。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  それは衆議院において修正が二点なされたわけでございまして、そのうちの一点の方、つまり、少年審判において一定の重大事件の場合、被害者の方が傍聴したいという申出をし、裁判官が相当と認めたときは被害者の方は傍聴することができるというのが本来の政府提出法案。これに、傍聴制度について衆議院修正は、一つは、先ほど評価もしていただいた十二歳未満の少年事件については傍聴ができない、これを決めたというのが一点。もう一つは、傍聴が許される場合は少年及び保護者が不要と言わない限り少年及び保護者に弁護士付添人が付くということになったわけでございます。この修正部分についてそれぞれどう評価をなさるのか。私が五十九分までですか、じゃ、四人の方。
  47. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) まず、十二歳未満の場合の傍聴ができないということですが、私の基本的な考え方年齢で一律に引くというよりは個別判断の方がいいと思います。ですから、触法少年一律で認めないというのはおかしいと申し上げましたが、十二歳未満であってもおよそ否定してしまうというのが本当に妥当なのかというのは、私自身は疑問があります。  それから、付添人が付くということにつきましては、元々の考え方は、主に少年心情の問題ですので、調査官などがよく分かるだろうということで付添人というのは付けないというのが提出法案になったと思うんですが、しかしながら、そうはいっても、裁判所側では分からない事情というのも当然あり得ると思いますので、付添人の方が付いて意見を述べるということはそれは妥当な内容だと思います。
  48. 角山正

    参考人角山正君) 修正についてはいずれもこれを高く評価するということは先ほど申し上げたとおりで、ただ、弁護士付添人については無条件に付けていただきたかったということでございます。
  49. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 触法少年の方に関しましては、やはり個別の判断にしていただきたいというふうに考えております。  それから、付添いなんですけれども、これもやっぱり事例によって考えていただきたいというふうに思っています。
  50. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) 私は、十二歳未満の子供に関してはそれで結構かと思っています。  それから、付添人ですが、やはり付添人の方のいろいろな援助も必要かと思いますので、これは妥当な策であると思いますし、また心強い味方になってほしいと思っております。
  51. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございました。終わります。
  52. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。今日は四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。  これまでにお尋ねのあった点で、川出参考人にはちょっと再度確認のようなお話から入って申し訳ないんですが、先生のお書きになられた資料が調査室の方から私どもの方にございまして、少年審判廷の被害者傍聴というこの問題の本質は、一定の範囲少年保護手続目的が害されることがあるとしても被害者利益保護すべきだという基本的な考え方を受け入れるか否かにあるという問題の所在を提起されておられる部分がございまして、この御趣旨がどこの辺りにあるのかということが、今日随分先生のお考えははっきりしてきたかと思うんです。  その中で、少年の萎縮という問題をめぐって、先ほど他の議員の質問にお答えになられて、影響がないとは言えない、審判廷雰囲気は変わるでしょうとおっしゃっておられます。影響はないことはないんだが、だけれども許されるのであるという、その少年の心身の状況の、どんな心身の状態にある限りは許されるというふうにお考えなのか、もう一度、ちょっとお尋ねできますか。
  53. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) まず最初の一節に書いた論文の話ですが、そこで考えましたことは、傍聴というのを先ほど意見の中で述べました諸外国のように無条件に認めるというような制度を取るとすれば、それは場合によっては少年健全育成という目的が害される場合も出てくるでしょうから、そこをどう考えるかという話としてその論文自体は書きました。ですから、そうではなくて今回のように絞るということであれば、それはまた別の話になると思います。それが一点目です。  それから、二点目ですけれども、少年の状態ということなんですが、先ほど申し上げましたが、やはり緊張するということは間違いなくて、その点はこれまでのように被害者の方がいない場合とは当然違ってくるだろうと。それはそうなんですが、その上で許されなくなる場合というのは、要するに裁判官からの働きかけを受けて、いろんな問題を指摘され、今までの自分のやってきたこと、それから今度の非行事実等をいろいろ考えるということが恐らく少年審判の非常に重要な側面だと思いますので、それができなくなるような状態になってしまうか、あるいは意見が述べられないような状態になってしまう、そこまで行かない形での心身への影響というのはあってもそれは許される範囲ではないのかと、非常に抽象的ですけれども、そのように考えております。
  54. 仁比聡平

    仁比聡平君 今、川出参考人からもお話のあった少年の萎縮あるいは少年の心身への被害者傍聴影響というのをどういうふうに考えるべきか、どういうふうにとらえるべきかという点を角山参考人、それから徳地参考人にも続けてお尋ねをしたいと思うんですけれども。  その前に、川出参考人に一点ちょっとそれにかかわってお尋ねしておきたいんですが、これまで少年審判廷で被害者はもちろん傍聴されないんですけれども、審判廷で一般に少年が緊張した場の中で萎縮しやすくて、加えて言語的理解力や表現力に劣る場合もあるので、これまでの審判廷の中において自己の意見を十分に表明するのは困難であるという認識が少年手続にかかわる関係者の中には共通のものとして私はあるように思うんですね。冒頭、川出参考人からは実務経験はないのだがというお話だったんですけれども、今現状の少年審判において少年自分意見を十分に表明するのは困難である、もとより萎縮している状況にあるというその指摘についてはどのようにお考えですか。
  55. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) そういう状況にある少年というのもそれは当然あるだろうと思うんですね。それは少年それぞれだと思うんですけれども、それを、ですから裁判官がどう解きほぐしていくかというところに今の運用があると思うんですけれども。ですから、そもそも今の状態ですべて萎縮してしまっているという認識に立てば、もちろん傍聴を認めればますますそういうことになるでしょうから駄目ですけれども、そこは必ずしも全部が全部そうというわけではないですし、そうならない形での運用が今は裁判官ないしは調査官によってなされているというふうに私は認識しておりますが。
  56. 仁比聡平

    仁比聡平君 角山参考人はその辺りどのようにお考えでしょう。
  57. 角山正

    参考人角山正君) 萎縮という言葉は逆に誤解を招くかなという気もするんです。つまり、心を閉ざしている状態にあるわけですね、つまり大人の働きかけを受け入れないと。審判廷というのは、その審判廷にいる人が全員協力して何とかこの少年の心を開かせようというところでは共通目的を持ったチームになっているわけです。それは、審判官も付添人も調査官も親も、要するにその審判廷にいる少年以外の全員が何とかこの子の心を開かせて、自分のやったことを分からせて、そこから立ち直らせたいということでの共通目的で言わばチームの作業をしておるわけです。ただし、被害者の方に加害者の更生改善のために協力せよということは、これはお願いできないんだろうというふうに思うわけです。とてもそういう気持ちのゆとりは被害者の方は持つことはできないと。そこが傍聴の一番の難しいところではないかと。  単に、いたら萎縮するとかというような非常に現象的なところではなくて、審判廷という構造の中に言わば共通な目的を持たない方がおられるという、ここが最大の問題かなというふうに理解をしております。
  58. 仁比聡平

    仁比聡平君 この法改正案は、先生のおっしゃる審判廷被害者傍聴を許す場合があるということを要件としても定めていこうとするわけですけれども、私自身経験からしましても、付添人として付いて、そうしたらその少年の心のうちが分かるものかといえば必ずしもそうではないと。加えて、その少年との間の信頼関係が結ばれた、成立したと感じることがあっても、それは一様なものではなくて、どんどん深まっていくこともあれば、いろんな形で揺れ動くこともあるだろうと思うんですね。  少年審判に立ち会っておって、それは、同じことは裁判官審判官にとっても言えることではないかと感じることが多々ありました。第一回の審判裁判官は初めて少年と向き合うわけですけれども、もうそれまで家裁の調査官やあるいは鑑別所の技官の報告書は読み、付添人の意見は聴いておるでしょうし、法律記録、社会記録は読み込んでおられるでしょうけれども、その上に立って、少年といざ向き合ったときに審判官がどのように感じるのか、その審判官が少年とどう向き合っていくのかというところも審判廷の大きな機能としてあるのではないかと思うんです。そのような審判官が少年の心身の状態に対して、被害者あるいは御遺族が傍聴されることがどのような影響をもたらすのかを事前に判断し得るのだろうかというところについて私はかなり疑問を禁じ得ないんですけれども、角山参考人はどのようにお感じでしょう。
  59. 角山正

    参考人角山正君) それは極めて困難だろうと思います。言わば予測できない事態ということですから、それはどういう反応を少年が示すかということは、事前に予測というのはちょっと、いかな優秀な裁判官でもなかなか難しいところではないかと思います。
  60. 仁比聡平

    仁比聡平君 徳地参考人に、長い御経験を踏まえた上での少年の心理や心身の状態ということについて今日随分お話をいただいているわけですけれども、私も、昨年少年法の改定問題があったときに調べたことがございまして、徳地参考人を始めとした自立支援施設や、あるいは法務省が全国の少年院を対象に、被虐待経験を持っている子供たちが少年院在院者のうちどれだけいてどういう状況にあるかというのを調べた法務総合研究所の調査がございまして、それを見て、少年院在院者の約半数が被虐待経験を持っているという報告を読んでショックを受けたことがございます。  この点について法務当局も、虐待によって、子供たちは外傷、外側から見られるけがといった身体的な影響ばかりではなく、人から愛され、あるいは人を愛するという愛着行動への障害を持っている。また、破壊的な行動を行うパニック行動、自傷行為、そういった感情や行動への影響も出てきている。また、他人に対する基本的な不信感が植え付けられることによって、自分に対する自己イメージが低い、あるいは強い対人不信感がある。そういった子供たちの特質を法務当局も答弁しておるんですけれども、徳地参考人の今日のお話を聞いて、この報告や研究と同じような感じをやっぱり持ったわけですけれども、そういった少年審判廷という場でどのように心を閉ざしているのかということについては、徳地参考人はどのようにお考えでしょうか。
  61. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) 先ほど来、基本的な信頼関係という話出ていますが、これはもうもちろん職員との関係が中心ですので、そんな短期間の間に基本的信頼関係ができないわけですね。本来そういうふうな関係性ができると、それでやはり自分の本当の気持ち、本当のやはり真摯な気持ち、そういうふうなものを自分の方から出すわけですね。  ですから、審判の中で、いわゆる少年審判の場合、非常にやっぱり短期間の間に審判やるわけですね。重大事件の場合は、鑑定留置とかそれからまたいろんなことがありまして長期に及ぶことがありますが、大体一般的にはやはり二月もあればいわゆる少年審判ということでやるわけです。その場合、裁判官というのはカウンセラーじゃありませんから、調査官にはやはり心理出身のカウンセラーの方が何人かおりますので、その辺の細かいケアというのは、また細かいそういうふうな、根底に虐待児童が発するいろんなものというのは分かるかと思うんですね。  ですから、そういう点では、やはり先ほど言いましたとおり、そういうふうな虐待児という特有の、非常にやはり虐待の行動化が中に向けば、いわゆる先ほど言われたとおり、自傷行為とかあとは場合によったら薬物依存に行っちゃうとか、そういうふうなこと。行動化が外に向けば、当然これ他人に対する暴力行為、それからまた指導者に対する暴力行為とか、いろんなそういうふうな外に対する行動化として現れるわけですね。  ですから、そういう点ではやはり先ほど来申しましたとおり、虐待の根底にある子供のそういうふうな特性をしっかり把握してそれから審判に臨まなければ、私自身はやはりいけないかと思っておりますので。
  62. 仁比聡平

    仁比聡平君 戻って川出参考人にお尋ねしたいんですが、今、角山参考人徳地参考人の御意見をお尋ねをして、さらに私としては、審判官が少年健全育成という理念を損なうことなく被害者傍聴を許可するという判断を審判前に行い得るのかという点については強い疑問を持っているんですけれども、法制審議会の議論というのは三か月程度でしょうか、昨年の十二月からということだと思うんです。そういった少年の心身の状態についての言わば科学的な知見に基づく検証の報告であるとか、あるいは実務的な経験に基づく報告であるとか、そういったことは検討がなされたんでしょうか。
  63. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) 科学的な知見に基づく検討というのが具体的にあったかと言われると、特に何か資料が出てきて検討したということはございません。  それから、実務の話としましては、そこには裁判官の方が出てきていらっしゃいましたので、その裁判官の方のお話としては、それは調査官は当然調査をされた上で、その少年状況とそれから被害者側のことも含めて調査された上でその資料等に基づいて判断すると、それはできるんだというのが実務家としての裁判官の方の意見だったというふうに理解しています。
  64. 仁比聡平

    仁比聡平君 裁判官にもいろんな人がいるというのは私たちは常々経験をしてきていることでございまして、川出参考人がお会いになられた裁判官は理想的な方だったのかもしれないけれども、そうではないという現実にも私たちはたくさん直面してきているわけでございます。  ちょっと時間がなくなってまいりまして、望月参考人に全く別の角度ですがお尋ねしたいと思うんですけれども、この間の被害者方々心情へ配慮しようという改正運用の改善が先ほどもお話がありましたけれどもなされてまいりまして、私も被害者が置き去りにされてきたこれまでの刑事司法、これは裁判所だけではなくて警察から矯正の段階まで通じてのことだと思うんですけれどもね、ここで置き去りにされてきたという事態は正さなければならないとかねがね申し上げてきたんです。  その中で、特にこの少年法関係で、二〇〇〇年の改正が施行されて以降、被害者方々心情に変化があるのか、それともないのかという点についてお尋ねをしたいと思うんですが。
  65. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 被害者支援都民センターでは少年事件被害者にかかわる件数は少ないんですね。それというのも、やはり圧倒的に情報がないものですから、電話相談とかそういうことで相談をされても、こちらとしてはもう基本的な、もう一般的な情報をお伝えして、専門の弁護士さんと御相談してくださいとかというような、そういう助言のようなことしかできる状態ではなかったんですね。ただ、たまたま自助グループというものがありまして、そういう中で少年事件被害者の方を支援するということをやらせていただいておりますので、そういう方からの意見なり思いなりを聞くという中で私たちが学ばせていただいているという状況です。  二〇〇〇年以降の状態ということなんですけれども、私は変わりはないと思うんです。つまり、被害者が知りたいことを知ることができるようになった状況ではないということです。
  66. 仁比聡平

    仁比聡平君 あと一分ほどあるんですけど、どういう意味で変わってないという意味でしょうか。
  67. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 確かに記録、閲覧など、見られるようになりましたけれども、何人かの被害者のお言葉から、自分たちが知りたいことはほとんどもう消されていて知ることができないという状況であるということは聞いています。  だから、やはり、それでも知ることができて良かったという方はいると思うんですけれども、やはり見られない、知ることができない、締め出されている状況に傷つく被害者の方が私は圧倒的に多いかと思います。
  68. 仁比聡平

    仁比聡平君 終わります。
  69. 近藤正道

    近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。  今日は、四名の先生方、大変ありがとうございました。少年法改正の問題を審判廷への傍聴というところにポイントを当てていただいてそれぞれ貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。この午後からの質疑の是非参考にさせていただきたいというふうに思っています。  それで、二、三お聞きをしたいことがあるんですが、最初に角山参考人徳地参考人に、お二人に質問したいというふうに思っています。  お二人は私が拝見する限りは、今回の改正審判廷への傍聴に対しては非常に慎重な立場で御発言をされているなというふうにお見受けをしたんですが、そこでお尋ねをいたしますが、今回、修正案少年の健全な育成を妨げるおそれなく相当と認めるときという、より絞りを掛けた傍聴の許可要件が盛り込まれたわけですよね。ですから、裁判官運用よろしきを得るならば、かなりの部分ここで歯止めが掛けられるということが一般的に想定されるという気がするんですけれども、これが歯止めとして機能し得るかどうか。  皆さんは、それぞれ少年事件の付添人の経験も豊富でありますし、あるいは少年の非常にナイーブな内面等についても熟知をされるお二人でございますので、この辺について、歯止めたり得るかどうかということについてどんな御見解をお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思いますが。
  70. 角山正

    参考人角山正君) 歯止めを設けていただいたということは、これは誠に有り難いことではあるのですが、じゃ、それが歯止めたり得るかといえば、やはり非常に難しい問題があるだろうというふうに理解をしております。  というのは、結局、判断する裁判官の中において二つの価値が、つまり傍聴を求める被害者心情に配慮しなければならないという考慮と、それとこの少年健全育成が妨げられるかどうかという二つのことをはかりに掛けなければならないわけですが、これ自体、本来的にはかりに掛けて比較できるものではないんだろうと思うのです。そうしますと、妨げるおそれがなければ傍聴を許すよと言いつつも、しかし、そこで傍聴を求める被害者の極めて強いお気持ち裁判所が感じたときに、おそれというものは言わば裁量的な判断ですから、非常にそのハードルが低くなるという状況もないとは言えない。  そういう意味で、確かに一定の歯止めではあるけれども、それが歯止めとなるかどうかは、今言ったように、裁判所がその二つの異なる価値、被害者権利利益保護という価値と少年健全育成という価値とをどう見るかという、そこのところに帰着してしまうんではないか。そういう意味では、それはこの条文が入ったとしても依然いろいろな問題はそのまま残るのではないかなという理解をしております。
  71. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) 私はいつも思うのは、やっぱり被害者立場、感情、これをいつも中心に考えるわけですね。  先ほども言いましたとおり、やっぱり被害者の感情としましたら、加害少年に対して顔を見たい、それからまたどういうふうな事実があるんだろうか、それからまた実際反省しているのか、どういうふうに自分の子供が被害を被ったことに対して思っているのか、そういうふうなこともありますし、場合によっては、審判廷の中でそういうふうな加害少年がいろんな被害者若しくは被害者の遺族が理解できないような特異な行動パターンを取ったとき、これは精神的なショックも当然ありますし、それからまた感情的な見方になりましたり、それからまた不信感、それからまた最終的には憎悪を感じたり、はたまた、場合によったら敵意を感じる、最終的にはやはり後々の非常に感情的なしこりがそのままずっと尾を引くとかいう、そういうふうなことも当然予想されるわけですね。  ですから、この件に関しては、やはり基本的にはそういうふうなことをある程度解消するところまで考えておいてやらなければ、一つのその歯止めになり得るかどうか、一概には私自身は言えないんじゃないかと思っております。
  72. 近藤正道

    近藤正道君 今度は、川出参考人望月参考人にお尋ねしたいと思います。  お二人の参考人は、今回の法案の原案といいましょうかあるいは修正案といいましょうか、これを言わば是とする立場でいろいろ御発言を今日していただきましたし、望月参考人がこれは人生の再構築のまさに問題なんだということは、非常に私も理解することができるというふうに思っています。  ただ、私も少年審判はそんなに経験が多いわけではないんだけれども幾つかやっておりまして、東京家裁辺りは、家庭裁判所辺りはそれなりにスペースもあって、刑事法廷に比べれば小さいけれどもそれなりに形は整っているんだけれども、東京家裁以外の周辺だとかあるいは地方の家庭裁判所審判廷なんかを見ますと、やっぱりスペース的には非常に小さいと。ここにそれこそ被害者あるいは遺族等が同席をしたときにどういうことになるかなということについては大変私は懸念があるんです。  お二人とも、審判廷は狭さについては知っておられるというふうに思うんですが、ここについてもう少し具体的なやっぱり歯止めがないとちょっと私としては非常に心配なんですけれども、この審判廷の物理的な狭さみたいなものを踏まえて、様々傍聴について懸念する方がいろいろなことをおっしゃっているんですけれども、それについて皆さんとしてはどういうふうに、まあ反論という言い方はおかしいんだけれども、御見解をお持ちなのか、お二人からお聞かせいただきたいと思うんですが。
  73. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) 構造上非常に狭いということ、一つには、非常に少年被害者の距離が近くなるので、さっきの話で萎縮とかそういうことがより生じやすくなるのではないかという面はおっしゃるとおりあると思います。それはもう配置の問題ですので何とも言い難いところがあるんですけれども、その距離がどうしても取れなくて、まさに萎縮してしまって話ができないというようなことがあるとすれば、もう傍聴は認めないということにならざるを得ないだろうと思いますので、まあそこはそういう処理になると思います。  あと、まあ不測の事態が生じるというようなこともいろいろ言われるんですけれども、それはもう被害者側の事情を調査官等が被害者調査で調べた上で判断して、もしそういうおそれが高いということになればもちろん認めないということになるでしょうし、例えば、よく言われていますが、その被害者の方の前に机を置くとかいうような話もありますね。  ですから、そういう形で対処していくしかないと思いますね。最終的には、余り狭過ぎるということであれば、それは裁判所の側にその施設面の整備も含めて考えていただくしか差し当たりはもうないんではないかと思いますが。
  74. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 施設の問題に関してはやはりそれは考えていただきたいというふうに思いますし、たとえ狭くてもやはり傍聴させていただきたいというふうに思っています。  今までもいろいろ参考人方々の御意見にもありましたけれども、傍聴人が入るということで今までの審判とは変わるというふうな御意見があったと思うんですけれども、私もそういうふうに思っています。  ですから、やっぱりそのことに関してそれぞれの専門家があるいは担当者が役割をしっかり果たして準備をするということが大事かと思います。萎縮をしたりとか何か騒ぎが起こってしまうのじゃないかというような懸念が話されていますけれども、それを最小限にとどめるために、私たち支援者として被害者に対してできる支援をしていきたいと思いますし、またそういう中で裁判所とかあるいは調査官の方ともお話合いを持って、被害者のためにやはり傍聴して良かったという結果が出るような審判にしていく努力をしていくつもりですので、それはそれぞれがやはりそういう心積もりで準備をしていくということではないかというふうに思っています。
  75. 近藤正道

    近藤正道君 ありがとうございました。  いずれにしましても、今回の改正案については、先ほど川出参考人の方で少年健全育成被害者権利利益をどう位置付けるかという話が冒頭にありましたけれども、この点について言うと、少年健全育成優先という形で一応整理が付いたと。ただ、これが具体的に行われるときにどういう問題が出てくるだろうかということで様々な議論がそれから出てくるわけですが。  私は自分の体験からいっても、今の家庭裁判所の体制で、調査官あるいは書記官、その上に裁判官がいていろいろやっているんですけれども、実務調査官とかあるいは書記官が相当程度やっぱり担うわけですよね。これで被害者が参加をしてきて、そうすると、参加に伴って様々な説明とか配慮をいろいろしなきゃならないんだけれども、今の体制で大丈夫かなという思いが非常にするんですよ。  皆さん、裁判所の今の人的体制についてどういう認識をお持ちなのか分かりませんが、私自身は、もう少し、こういう形で改正をして被害者に配慮をするという体制を取るならば、もっと人的体制を、スタッフの体制をやっぱり強化すべきではないかなという思いがしているんですけれども、参考人の皆さんはこの人的体制の整備についてどういう御見解をお持ちなのか、お一人ずつコメントをいただければ有り難いんですが。
  76. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) 実務が分かりませんので何とも申し上げられないんですが、おっしゃるとおり負担が増えるのは間違いない、また、先ほどの修正案では説明というようなことも入れるという話でしたので、更に裁判所側の負担が増えることは間違いないと思います。その点では人的な面での整備が当然必要になってくるだろうと思います。  それが今の段階でできるかということについては、まあ何といいますか、その法制審で裁判所側ができると言ったことを信じざるを得ないわけですけれども、今後それが整備していく必要があるというのは、もうおっしゃるとおりだと思います。
  77. 角山正

    参考人角山正君) 御指摘のとおり、今の家裁の人的な体制では対応できない、もし、被害者に対して二次被害を与えないような遺漏なき対応をするというのであれば、調査官なり書記官の定員を倍にしても恐らく追い付かないんではないかというふうに理解をしております。
  78. 望月廣子

    参考人望月廣子君) 私も人的体制を是非整えていただきたいと思っています。
  79. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) 私も同じです。  それから、審判も一回限りの審判ではなしに、場合によりましたら審判継続ということで、やはり裁判所の方も被害者と最後の最後までかかわってほしいなと思っております。
  80. 近藤正道

    近藤正道君 時間前ですけれどもこれで終わりにしようかなと思っておりましたら、徳地参考人が一番最後に審判一回説、まあほとんどそうですよね、このことについて御意見を言われましたので、ならば更にお聞きしたいと思うんです。  私もこの審判一回説というのは、普通の一般的な刑事裁判の場合は何回かやって、そして最後、判決言渡しは次回という形で終わるんですよね。ところが、少年審判の場合は、とにかく事前調査をやって、そして一回きりなんですよ。これは被害者の皆さんでも、意見を言ったら直ちにその場で審判しますので、さっきの自分意見はちゃんと聴いてもらっているのかなという、そういう不満があるし、あるいはまた今度は少年の側から見ると、何か被害者意見を言ったらすぐその場で裁判官審判を下したと、公平にやっているんだろうかなという、こういう不満も出ると思う。  だから、私は少年事件でも、即決というのはそれはいいかもしらぬけれども、問題だってたくさんあると思うんですけれどもね。これについて、今、多分徳地参考人は私と同じ問題意識でちょっとおっしゃったのかなというふうに思うんですが、今私はそういう気持ちを持っていたんですが、徳地参考人がそういうふうにおっしゃるんで、もう少し敷衍して、なぜ一回の審判は問題なのか、お話しいただけますか。
  81. 徳地昭男

    参考人徳地昭男君) やはり被害者立場を考えますと、先ほど議員さんがおっしゃったとおり、納得できない部分がたくさんあるかと思いますし、ましてや、また被害者心情から考えますと、もっともっと言いたいことがたくさんあるわけですね。またなかなか意見が通らない。  ですから、そういうふうなことも踏まえまして、それプラスまた加害者の方の言い分、先ほど言いましたとおり一回限りで、また萎縮して何にも本人からもやっぱり言うことができない、そういうふうなことも想定されるわけですね。そういうふうな場合、お互いにやはり考え方が理解できない点がたくさんあるし、考えようによってはお互いに不幸だという結果が出るかと思うんですね。  そのためにはやはり、一回限りの審判決定ではなしに、場合によったら一回、二回、若しくは数回、そういうふうなことで、やはり両者が納得できるぐらいの時間的な余裕を持ってやってほしいなという感じがありますので。
  82. 近藤正道

    近藤正道君 川出参考人にお尋ねしますが、今のような議論は法制審でありましたか。
  83. 川出敏裕

    参考人川出敏裕君) 審判の回数について特に議論した記憶はありません。
  84. 近藤正道

    近藤正道君 ああ、そうですか。  角山参考人はいかがですか。私は今のような話は時々裁判所関係者、調査官辺りから聞くことがあるんですけれども、どうでしょうか。
  85. 角山正

    参考人角山正君) それは十分に考慮に値する、言わば制度の変更になりますが、検討すべき課題だろうというふうに考えております。
  86. 近藤正道

    近藤正道君 ありがとうございました。終わります。
  87. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午後一時半に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ─────・─────    午後一時三十四分開会
  88. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  少年法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会内閣犯罪被害者等施策推進室長殿川一郎君、警察庁長官官房長米村敏朗君、法務大臣官房長池上政幸君、法務省刑事局長大野恒太郎君及び厚生労働省社会援護局障害保健福祉部長中村吉夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  90. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 少年法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  91. 今野東

    ○今野東君 民主党の今野東でございます。  今日は少年法改正案について質問をさせていただきたいと思いますが、その前に、近ごろ永田町あるいは霞が関で話題になっております、官僚の方々が深夜お帰りになるときにタクシーをお使いになって、その中で缶ビール等の接待を受けているということで、各省庁にまたがってその実態が明らかになってきております。  これは官僚の方がタクシーの中で缶ビールなんかを出された新しいカンカン接待だというふうに思いますけれども、これは法務省では、各省庁調査をしたようですけれども、法務省ではどうだったんでしょうか、大臣
  92. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 全くけしからぬことで、本当に。大体私など、ああいう話を報道で見ると、夜間、深夜にタクシーを使うんでしょうけれども、実際にはもっと早く帰れば電車で帰れたというようなケースもあるんじゃないかなんて疑ってしまうぐらいですが、全く情けない話でございます。  今の今野先生の御質問で、法務省はゼロ件と回答をしたわけでございます。それは、平成十九年度においてタクシー内での金品の受領とかビールとか接待とか、そうしたことがあったかということを調査したときに一つも出てこなかった。それでは、この五年間で、十五、十六、十七、十八、十九ですか、平成十五年から十九年度までの五年間においてどうであったかというふうにアンケートというかみんなに問うたところ、それも事実はないということではあるんです。  したがいまして、法務省の全職員に対して適当な方法によって事実の有無を照会して自己申告の形で得た結果なんですが、これは一人ずつ呼んで全部問いただしたというほどのものではない。したがいまして、絶対にゼロかといえば、まだ調査は継続中で、更に調査をして、徹底して調査をしてみるというふうにしか申し上げられないと。会計課においては、タクシー会社から送付された使用済みのチケット、つまり半券及び請求書について、記載漏れがないか、あるいは行き先がちゃんとしておるか、それから金額、時間など、不適切な使用がないかどうかについても今まで確認してきております。  第一次的には、今野先生に今お答え申し上げましたように、そのようなタクシー内での接待はないとこう思われますが、例えば、本省においては、保管しているチケットの半券に基づいて、職場から自宅に帰宅する際に、同じ人が帰宅する際に最低額と最高額の差が大きいとか、そういうことがあればやっぱり疑う要素になるわけですね。まあ捜査の達人は多くいるはずですから、その辺はきちんとやりまして、あるいは同一の乗務員のタクシーに乗車した割合が多いということになりますと、電話して常連になって、常連でいてほしいから接待ということがあり得るわけですから、そういうようなケースがないかどうかも鋭意調査中でございます。その結果を踏まえて、いずれもっと自信を持って御報告できるようにしたいと、こう考えております。
  93. 今野東

    ○今野東君 今のところそういう接待は受けている人はゼロだということで、お喜び申し上げます。結構なことでございまして、なお調査をしていただいて、清らかな法務省であり続けていただきたいと思います。よろしくお願いします。  それでは、いよいよ少年法についてお尋ねをいたしますが、様々な事件被害者の方が、受けるべき支援を十分に受けられずに苦しんでおられるという実態は実際にあって、とりわけ、少年が犯した犯罪被害者についてはその傾向も強く、テレビなどでもしばしば取り上げられてきたところでありました。  そういう情勢の中で少年法改正案が提出されたわけですが、私は、少年犯の審判廷被害者等の傍聴を許すということについて幾つかの疑問がぬぐい切れずに今日まで来ておりまして、今日はこういう質問の機会を与えていただきましたので、幾つかお尋ねしたいと思います。  私は日本の難民問題に関心を持っておりますが、日本の難民行政の根本的な問題はどこにあるかというと、不法に入国してきた人を取り締まるという業務と保護するという業務、この相矛盾する業務を同じ入国管理局がやっているというところがそもそもの問題だと思っているんです。それが硬直した難民行政を生んでいます。それと同じことが少年審判廷で行われようとしているのではないかと思うのです。  犯罪被害者等基本法にあるように、「その受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるよう支援し、」ということと、少年法にある「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分」ということは、どうも矛盾するのではないかと思います。報復したいという思いを必死に抑えて、被害者の方は、代わって法が報復してくれるものと期待する。そういう被害者の方の気持ちと、こんなに残酷なことをやった少年だというマスコミの報道。これは、非行の少年にとっては恐らく、その段階では、その時期ではといいますか、共感することができないでしょう。これは反発ではなく、あるいは理解できないということもあるのかもしれません。犯罪を犯すまでに荒れている少年の心は、恐らくそうした声に抵抗すらしようとするかもしれません。  しかし、少年法にある性格の矯正、少年の健全な育成ということを目指すならば、その時期には、その少年にとって、そういう荒波の前に立ちはだかって、個別に、深い慈愛を持って、なぜそのようなことをしたのか、どのような環境の中にいてそういうことをしてしまったのかということを諭しながら調査をし、非行少年の心を正常なところに戻すという作業をしなければならないのではないかと思います。  つまり、被害者権利利益とそれから少年の矯正、健全育成という矛盾した業務を少年審判廷に無理に入れ込もうとしているのではないか、相矛盾した業務をそこで行わせようとしているのではないかと思うのですが、大臣、どうお考えになりますか。
  94. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 大変鋭い御指摘だと思います。それから、難民保護や認定あるいは入管における取締りについての御指摘も大変鋭いものがあると思っております。  ですが、確かに今野先生のおっしゃる点はありますが、この矛盾というのは、やはり弁証法的にアウフヘーベンして、止揚することによって解決に導くことが十分可能だと私は正直考えます。それは、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」という少年法の第一条がございます。これは、犯罪や非行があっても年齢ゆえに特殊性を認めて、教育的に物事を進めよう、矯正や更生の可能性もより高いだろう、長い人生が残っているだろうという、あるいは精神的に未熟、成熟度が低かったから非行に走ったんではないかというような、年齢というものに着目をして少年法が特別な定めを置いているんだろうと、そう思うわけです。  二十歳以下、十八歳以下、十六歳以下、十四歳以下、あるいは今回の修正案で言うと十二歳と、あるいはおおむね十二歳というのは以前からある、様々な年齢区分がここに見られるわけでございまして、少年法はそういう年齢が低いがゆえにということで制定されたものでございましょう。ところが、犯罪被害者等基本法は、「犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」と。これはつい最近できた法律でございます。  つまり、二つの価値があるとして、少年法の方はしっかり機能をしておるが、犯罪被害者の方がその尊厳が踏みにじられるようなことが多かったという考え方の中から犯罪被害者等基本法や政府の基本計画が出てきたと。  今日の午前中の望月廣子参考人の御発言の中に、例えば、被害者事件や加害者の情報をほとんど得られていない、被害者の真実を知りたいとの思いは切実であると。あるいは、被害者から見ると、法律が加害少年をがっちりと守っている感じがする。かけがえのない家族を失った場合に、人づてに聞いたり紙一枚で知らされても遺族としては納得できるものではないというようなことが述べられたようでございまして、そういう観点の不足を補って、何というんでしょうか、二つの価値の平衡ということで言うならば、傾いておったものを平衡に戻したという形でございます。ただ、あくまでも二つの大きな守るべき利益というのがあるとして、これは是非とも法の運用によって弁証法的に止揚していきたいと、こう考えております。
  95. 今野東

    ○今野東君 今の大臣お話を伺っても、私は、被害者権利利益少年の矯正あるいは健全育成というこの矛盾した業務を少年審判の中で行うということの疑問がぬぐい切れません。こういうことを行ってしまったときに、最も戸惑い、つらい思いをするのは、そこで仕事をする裁判官調査官ではないかと思います。むしろこうすることによって、時には被害者権利利益を守る方に裁判官が判断をしたり、あるいは少年の矯正、健全育成という側に判断をしたりという、非常にむらのある仕事になってしまいはしないか、過重な負担を強いるということになるのではないかと思います。  さて、それではその中身についてちょっとお尋ねしたいと思いますが、法案では、その申出をした者に対して審判期日における審判状況説明するものとすることとなっております。処分決定前ですと非公開を原則している少年審判ですが、申出があった被害者等に対して説明するということは、一部の人に対して説明という形で公開するということになります。ここまでは私もいいのかなと思うんですが、その先です。こうして、その一部の人に公開されたことが処分決定前に漏えいがあった場合、例えばマスコミ等に流れてしまった場合、世論の影響を大きく受けてそれをマスコミで増幅して放送することによって、世論の影響を大きく受け少年審判が疑似公開されることになるのではないか、こういう心配はどう考えれば払拭できるんでしょうか、修正案の提案者と裁判所にお尋ねしたいと思います。
  96. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 民主党の細川でございます。私の方からまず御説明をしたいと思います。  裁判所の方から遺族等に説明をするというこの制度をつくりましたのは、まずこの傍聴制度が取り入れられて、しかし裁判所の方から傍聴を許可されない場合もございます。それから、傍聴を申し出るというのが心情的にどうしてもできないという遺族の方もおられます。そういう方が、審判状況がどういう形で行われたかということを知りたいという方にこの審判状況説明をする、申出があったならば説明をする。通常、だから審判の後になるだろうというふうに思います。そういう意味では、途中でこの事実を公開をするとかいうようなこともまず考えられないというふうには思っております。  ただ、丁寧に説明すれば、審判というのは何回かにわたってあることもあります。そういう場合に第一回目の状況がどんなことであったかということを遺族の方が申出すれば、それは説明をすることになりますけれども、しかしその場合の説明にしても、プライバシーのことについては説明もいたしませんし、特に途中の経過であれば一番最後の審判が終わった後で詳しく御報告をするとか、そういうことになろうと思いますので、委員御指摘のような御心配はないものだというふうに思っております。
  97. 今野東

    ○今野東君 裁判所
  98. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  今回の裁判所による説明制度につきましては、家庭裁判所は、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときに説明するものとされており、被害者等が情報を漏らすおそれがある場合など、少年の健全な育成を妨げるおそれがある場合には説明が行われないことになろうかと思います。  また、今申し上げました少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときとありますので、少年等のプライバシーの根幹にかかわる事項についてはやはり説明は控えるということになりましょうし、そのほかの事実関係につきましても、裁判所の最終判断の前、つまり最終処分を決める前の事実関係についてはまだ確定的なこととも言えませんので、そういった点についても説明は控えることになろうかと考えております。  以上でございます。
  99. 今野東

    ○今野東君 聞いた情報を漏らすか漏らさないか、他に漏らすか漏らさないかというのは事前に分かりますか。
  100. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) それはなかなか判断は難しいかと思います。  ただ、その前にいろいろ記録の閲覧、謄写制度の利用状況等もありますので、そこら辺のところで被害者の方の状況が分かればそういった点は考慮されるのではないかと考えております。
  101. 今野東

    ○今野東君 そんなことで分からないでしょう。まあそのことをやり取りしていると時間がどんどんなくなりますから。  それで、その説明ですけれども、裁判官あるいは調査官、書記官がやることになると思うんですが、例えば調査官や書記官が説明を行った結果、これ説明というのは広辞苑を調べると「ときあかすこと」となっていますから、時には難しい法律用語ではなくて別の言葉で説明をするということもあるわけです。そうすると、結果的に決定文を超えた説明になってしまうという場合もある。そうなりますと決定者である裁判官の権限を侵したことになりませんか。そこはどう考えますか。
  102. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  裁判所書記官や家庭裁判所調査官被害者の方に審判期日における決定の内容について、今回新しくできます制度に基づいて説明をする場合におきましては、説明内容について事前に裁判体の指示を受け、その指示に従って審判期日に行われた決定の範囲内で説明がなされることになるものと考えられます。もちろん、難解な用語については分かりやすく説明するなどの配慮は必要と考えておりますが、裁判官が行ったその決定の内容と書記官等がする説明内容とにそごが生ずることは想定しにくいのではないかと考えております。  以上でございます。
  103. 今野東

    ○今野東君 そごが生ずることが想定しにくいと考えるか考えないかの違いしかないんですね。可能性は、そういう説明があっても、裁判官の決定を超えて説明をしてしまうということはあり得るわけで、そういうときにどうするかということを、これ運用の段階になれば考えておかなければならないことではないかと思います。  さて、犯罪被害者への支援についてですが、犯罪被害者等基本法はその二十一条で、国及び地方公共団体は、犯罪被害者等に対し専門的知識に基づく適切な支援を行うことができるようにするため、犯罪被害者等の心身の健康を回復するための方法等に関する調査研究の推進並びに国の内外の情報の収集、整理及び活用、犯罪被害者等の支援に係る人材の育成及び資質の向上等必要な施策を講ずるものとするとなっておりまして、具体的には平成十七年の犯罪被害者等基本計画で、少年にかかわるものとしては、少年被害者に対する学校におけるカウンセリング体制の充実あるいは被害少年が受ける精神的打撃軽減のための継続的支援の推進といった項目があるんですが、こうした対策が幾つかの省庁にまたがっているということは承知しておりますけれども、これらのことを、どのようにこの基本計画の進捗状況になっているのかということを調査等行っているのでしょうか。  これは、恐らく内閣府の犯罪被害者等施策推進室が所管しているんだろうと思いますけれども、内閣府においでいただいておりますね。よろしくお願いします。
  104. 殿川一郎

    政府参考人(殿川一郎君) 犯罪被害者等施策の推進状況につきましては、適宜、関係省庁におきます連絡を取り合いまして、現在の進捗状況を把握しております。年に一回にはそれらの施策を取りまとめて白書という形で御報告もしているところでございますが、その中で犯罪被害者等がどのような支援を受けているかということの調査も行っておりまして、これにつきましては本年一月から二月にかけて犯罪被害者等の置かれた状況について調査なども行っております。  また、その利用状況についても、アンケートという形での被害者の方からの調査、あるいは各省庁別に、これはいろんな施策がありますので、ここで一々、一つ一つ申し上げられませんけれども、いろいろな制度の利用状況というものについても、すべてではありませんけれども、そういった統計的なものもフォローするようにいたしているところでございます。
  105. 今野東

    ○今野東君 犯罪被害者等施策推進室では白書を出しているということなんですけれども、その白書なんですけれども、少年の重大事件についてはそういうものは出ているんでしょうか。附則で施行後三年を経過した場合、必要があると認めるときは所要の措置を講ずるとありますが、私は、この間様々に指摘している法曹界や各界の不安にこたえるためにも、処分の決定から終了後までの少年の様子を追跡調査をして、そして重大事件の研究白書といったものをまとめることがむしろ社会への真の説明責任を果たすということになるのではないかと思いますし、むしろ、そういう資料を生かしていくことが少年健全育成に資することができるのではないかと思うのですが、今そういう点は、少年の例えば重大事件の研究白書等はどのようなことになっているでしょうか。
  106. 殿川一郎

    政府参考人(殿川一郎君) 私は、犯罪被害者施策……
  107. 今野東

    ○今野東君 これは家庭裁判所に。
  108. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  家庭裁判所としましては、少年審判非公開原則や関係者のプライバシー等に配慮しつつ、取り扱いました少年のケースをそれ以後の再非行防止のために生かしております。具体的には、各家庭裁判所において過去の事件を通じて把握された少年事件の傾向等を踏まえまして、実際の事件処理において再非行防止のための働きかけに生かしております。  また、プライバシー等へ十分配慮しつつ、実際の重大な少年事件記録に基づく事例につきまして、家庭裁判所調査官が中心になり、裁判官のほか外部の有識者も加わったメンバーにより共同研究を行い、各事例に共通して見られる特徴等を取りまとめた重大少年事件の実証的研究というものをまとめまして、これを公表したこともございます。  以上です。
  109. 今野東

    ○今野東君 重大少年事件の実証的研究を公表したこともございますという説明なんですが、これは平成十三年のことなんですね、七年前。やっていないんですよ、全然。これは毎年出さなきゃいけないんじゃないんでしょうか。  被害者に対して十分な権利保護する、守るということももちろん大事です。そして、少年の矯正、健全な育成を守るということも大事です。私は、これは全く矛盾することなので、二本立てで十分な施策を講ずる必要があると思います。  そして一方では、重大な事件を犯した少年がどういう環境に育ち、どういう事件を犯していき、そしてどういう気持ちになって更生していったのかというような白書を、大臣、毎年出すべきじゃないかと思いますけれども、今のやり取りを聞いていてどうお感じになりましたでしょうか。
  110. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 正直言って、そういう調査あるいは研究というものは常に行うことあるいは継続性が大事だと思いますから、今野委員の御意見に私は賛成でございます。
  111. 今野東

    ○今野東君 ありがとうございます。是非、毎年これを出していただいて、少年たちの健全育成のために役立ててほしいと思います。  ありがとうございました。
  112. 松野信夫

    ○松野信夫君 民主党の松野信夫です。  まず、大臣にお伺いをしたいと思います。  今回の法案の中では、被害者等による少年審判傍聴というものが大きなポイントになっているかと思います。そうすると、裁判所の方は傍聴を許すか許さないか、この判断を迫られることになるわけですね。私は、できるだけやはり客観的に、こういう場合は傍聴ができる、こういう場合は傍聴ができないと、できるだけやはり客観的にそういうものが明確化される方が望ましい、こういうふうに考えております。  というのは、やはり裁判所もなかなか大変です。今までの審議の中でも出てきておりますけれども、一方では、被害者等は傍聴してみたい、犯罪を犯した少年がどんなことを言うのか、どういうような反省の色をしているのか、一方では見たいという要求ももちろんある、これは大事にしなきゃいけない。他方では、やっぱり少年の健全な育成を図る、十分に言うことは言ってもらえるそういう状況もつくり出さなければいけない。この調整を図るというのは、私はなかなか容易なことではないと思います。  そういう中で今回傍聴ということになりますので、できるだけやっぱり裁判所の負担を余り重くさせない、また裁判所の間のバランスも取らなければいけないと思います。こっちの裁判所では簡単に傍聴が認められる、別の裁判所ではなかなか厳格で傍聴が認められない、そういうバランスを失するというようなことであってはいけないと思います。  そういう意味で、できるだけ客観化した方がいいということでございまして、その中で、この法案の二十二条の四のところで、死亡に至るような事件はこれは入ると。しかし、死亡に至るものではなくて傷害した場合については、「これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限る。」と、こういう書き方になっているわけです。  傷害といっても非常に幅が広いわけですが、生命に重大な危険を生じさせたと、こうなっているんですが、私はこれでもまだあいまいだと。私個人的には、もうそういうのは取っ払って、死亡なら死亡した事例に限ると、そういうような形の限定の方がぶれがなくて望ましいと私は思っているんですが、こういうような、生命に重大な危険を生じさせたということの解釈をどれだけ裁判所間でばらつきがないように厳格化するか、この点については大臣はどのようにお考えでしょうか。
  113. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 先ほども引用いたしましたが、午前中の望月廣子参考人意見要旨の中で、加害少年が事実を受け止めること、被害者の存在を知ること、その被害の状態を知って被害者と向き合うことが更生の第一歩になるのではないかと、少年審判傍聴少年改善更生にとってマイナス方向のみに働くものではないという意見が述べられたようでございます。  ただいまの松野先生の御質問は、先ほどの今野先生の二つの価値の間の矛盾についての御質問がありましたが、それと深くかかわる点だろうと本来思っております。「生命に重大な危険を生じさせたとき」という書き方をもっと限定的に書けないかという御指摘なのでありますが、来年の五月二十一日から始まる裁判員裁判と今度の少年審判傍聴範囲というのは相当ずれているわけです。  御案内のように、これは釈迦に説法ですが、基本的に、故意で悪意を持って行った犯罪しか裁判員裁判の対象にはなりませんけれども、少年事件の場合は、いわゆる業務上の過失致死とかあるいは過失による傷害というのも入ってくるわけでございまして、その辺も考え方が、裁判員制度というものの考え方少年審判について傍聴を認めるかということで概念が違ってきているからそういう違いがあるんだろうと、そう思います。  医療措置を施しても被害者が死に至るような、被害者が死亡に至る蓋然性が極めて高い状態というものを想定して、生命に重大な危険を生じさせたときと、これは交通事故なんかがその典型になるんだろうと思っております。したがって、危篤状態に陥った場合、あるいは自発呼吸が停止するなどして人工呼吸器等を欠かせない状態となり、医療措置をやめれば直ちに死亡すると考えられるような場合と。死に至る、死亡する蓋然性が極めて高いというような状況をこのような表現にさせていただいたわけでございまして。  今の私の説明で大体、かなり具体的ではないかと思うのですが、非常にこれ以上に細かく条件を規定すると、実際の事件は傷害の生じた部位とか程度、様々、最終的には証拠に照らして判断されるべきものでありましょうが、これ以上細かく具体的に書くというのは困難であったということで、松野先生御不満なようですが、このような書き方に落ち着いたということでございます。
  114. 松野信夫

    ○松野信夫君 今大臣の方から裁判員制度お話がありましたけど、裁判員制度対象事件というのは、これは極めて明確に書いてある。紛れがない。ところが、今回の審判傍聴の件は、傷害という場合も一応含めるけれども、重大な危険というふうになっているものですから、率直に言うと、これは判断でかなり迷う場合が現実には出てくるのではないかと。何でこういうあいまいなふうに設計したかなというふうに私は思っております。  それで、これからちょっと細かい話ですので当局の方にお伺いしたいと思いますが、例えば、被害者の主観的な側面というのは、これはどういうふうに判断されるんだろうかという点ですね。被害者の主観では、例えば非行少年からナイフで切り付けられて、ぶすっと突き刺さったと。そうすると、ああこれ、おれはもう当然殺されるという大変な恐怖感を受けるわけですね。ところが、主観的にはそうであっても、客観的には、例えば心臓から一センチ外れたところに突き刺さったものですから命だけは何とか取り留めたというようなこういうケース、これはどうなんですか。入るんでしょうか。当局にお願いします。
  115. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 法律に「生命に重大な危険を生じさせたとき」と、こう書いてあるわけでありますから、この点はあくまでも客観的に判断されるべきものであるというように考えております。  今委員が御指摘になりました、殺意を持って胸を突き刺したけれども心臓を外れていたということで、実際には客観的には死亡の危険性は大きくなかったというような場面でありますけれども、これは、先ほど申し上げた生命に重大な危険を生じさせたという評価にはなりませんので、今回の要件からは外れるという解釈でございます。
  116. 松野信夫

    ○松野信夫君 分かりました。そうすると、今の当局の解釈では、被害者の主観という点は関係ないと、あくまで客観的な点だけをとらえるんだと、こういうことだということですね。はい。  それはそれで分かりましたが、次に、それじゃ、被害者側の過失というのは何らかに影響してくるんでしょうか。例えば、今回の法案ですと業務上過失致死傷も対象事件になります。ですから、車同士がぶつかって、少年が一方にいたというケースも当然あり得るわけですね。ところが、客観的には少年の側には過失があるけれどもそれはごくわずかであると、被害者の方の車の運転の過失の方が極めて高いと、しかし実際に死ぬか生きるかになっているのは被害者の側であると、こういうような場合は、つまり被害者側により多くの過失がある、こういう場合はどうなんでしょうか。
  117. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今言われたような事例は非行事実が認定されるかどうかという、そういうところに影響する部分はあるかもしれませんけれども、事審判傍聴の可否という観点からはかかわりのない、つまり、生命に重大な危険を生じさせたの判断にはかかわりのない事情であるというように考えます。
  118. 松野信夫

    ○松野信夫君 そうすると、少年の方にわずかでも過失がある、一定の非行事実があるということであれば、過失割合に問わず、被害者側に生命に重大な危険があるという場合には、まず傍聴対象事件の要件はクリアするんだと、こういう理解でよろしいんですね。
  119. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) ただいま委員が言われたとおりでございます。
  120. 松野信夫

    ○松野信夫君 それでは次に、客観的には生命に重大な危険が生じているんですが、それは何も加害行為、つまり非行少年の加害行為のみによって生じたものではない場合。例えば、具体的に言うと、大したけがではないけど病院に運び込まれた、そうしたら病院の方のミスで生命に重大な状態になっちゃったと、これは専ら病院の方のミス。もちろん、原因として少年が何らかの加害行為はしているんですが、でも客観的には生命に重大な危険を生じさせている原因を当初はつくっていると、こういう場合はどうなんでしょう。
  121. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) これも今回の法案の条文の解釈になるわけでありますけれども、二十二条の四は、「被害者を傷害した場合にあつては、これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限る。」と、こうなっておりまして、これは少年の加害行為によって生命に重大な危険を生じさせたと、こういうことでございます。したがって、例えば医療機関への搬送中の交通事故等、この少年による傷害とは別の要因によってそうした危険が生じた場合には審判傍聴対象にはならないというように考えます。
  122. 松野信夫

    ○松野信夫君 はい、ならないということで分かりました。  済みません、細かい議論を少しさせていただいて恐縮ですが、例えば、具体的にこの審判事件、これまでの例見ますと、大体一回の審判で終わっているケースが恐らく八割、九割だろうと思います。私も関係しておりましたけれども、大体一時間ぐらい、一回の審判が行われて、それでもう結論が出るというケースが大半ではないかなと、このように思いますが、例えば、今後こういう少年審判傍聴ができるというふうになった場合、審判当日の始まる直前に被害者の人が何らかの診断書を持ってきて、生命に重大な危険が生じているんだということで、診断書、例えばその診断書に生存の確率は五割だと、死ぬかもしれないし生き続けるかもしれないと、そういうような、例えばそんな診断書を持ってこられたときには裁判所はどうするんでしょうか。
  123. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) これは答弁者は。
  124. 松野信夫

    ○松野信夫君 局長で。
  125. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) ただいまの設例は、直前に診断書を持ってこられた場合ということでございましたけれども、基本的に、被害者の傷害の程度といいますのは、少年審判における非行事実の認定あるいは少年に対する処遇を決める際に非常に重要な事柄であるわけであります。したがいまして、捜査段階におきましても、この点については十分な捜査、資料収集が行われ、これが家庭裁判所に送られているというように考えられるわけでありますので、基本的には、裁判所傍聴の可否を判断する際に必要な資料は裁判所の手元にあるだろうというように考えるわけであります。  もちろん、当日の朝、そうした申出が行われるという極端な事例があることを否定する趣旨ではありませんけれども、しかし実務運用上は、できる限りそうした申出が早く行われるように、その周知の方法等具体的な運用につきましては裁判所においていろいろな工夫がなされるのではないだろうかというふうに考えております。  また、少年審判傍聴対象になる重大事件におきましては、裁判所は、事件係属後、比較的早い時点で被害の実情や少年処分等に関する意見等を調査するいわゆる被害者調査を行うというように聞いております。そうした調査を契機に、早い段階で傍聴の申出、傍聴のお考えがあるかどうかを把握する場合もあるのではないかというように考えております。
  126. 松野信夫

    ○松野信夫君 いや、私の質問に答えてもらっていないんです。私の質問は、生きるかもしれない、死ぬかもしれない、生存の確率五割だという診断書を持ってきたときに、この要件、該当するんですかという質問です。
  127. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 最終的には、そこのところは家庭裁判所の総合判断ということになるわけであります。したがいまして、その朝提出されたその資料も含めて、裁判所において生命に重大な危険があるというように判断すれば要件が満たされていると、こういうことになろうかというふうに思います。
  128. 松野信夫

    ○松野信夫君 もう時間があれですけれども、総合判断ということにはならないはずなんですね。この生命に重大な危険を生じさせているかどうかと、これは一つの独立した要件ですから、これとまた別のいろんな要素とを総合判断することはあり得ないんで、まさに対象事件かどうかというそれで判断するべきものだろう、私はそのように思っておりますので、今の総合判断というのはちょっと理解に苦しむ。  つまり、例えば五割だとか六割だとか、そんなの持ってこられたときには、恐らく裁判所も大変お困りになる、困る、直ちに判断ができない、こういうおそれも私はあるんで、また被害者の人も、事前にはもう余りその非行少年の顔も見たくないから私は傍聴しませんよというふうに言っていたって、当日になって気が変わってやっぱり見たいというふうに申し出たとき、これは拒否はできないだろうというふうに思いますので、その点だけ指摘しておきたいと思います。  念のために、この裁判所傍聴を許可するあるいは不許可する、この決定についての不服申立てはどのようになっているんでしょうか。当局。
  129. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 不服申立ては手続上認められておりません。
  130. 松野信夫

    ○松野信夫君 これは、要するに一つの訴訟指揮に準ずるものとして、双方から異議の申立てはできるんではないんでしょうか。
  131. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) そのような手続は法律上規定されておりませんので、異議の申立てもできないというように解釈しております。  その理由でありますけれども、やはり少年審判手続少年保護の観点から早期に行われる必要があるということで、仮に不服申立てを認めるということになりますと、本体である少年審判手続の進行に影響を与えてその遅延を招くというおそれもございます。そうした考慮から、不服申立ての手続は設けないという判断をしたものでございます。
  132. 松野信夫

    ○松野信夫君 不服申立てができないということは、それだけ裁判所の判断というのは非常に重要だと。ですから、私先ほどから申し上げているように、生命に重大な危険を生じさせたかどうかというようなあいまいな基準ではなくて、そこのところはもっと客観的にすぱっと答えが出るような書きぶりにすべきではないかというふうに指摘をさせていただいているところです。  次に、質問を移りますが、次は副大臣の方にお伺いをしたいと思います。  今回の法案では、五条の二というところで記録の閲覧、謄写が原則として認められる方向になっているわけですが、しかし、記録の閲覧、謄写が認められたと、その記録がいろんな形で、少年の氏名だとか住所だとか非行事実だとか、そういうものが外に漏れるということになるとこれは大変な問題になる。少年に与える影響もこれは非常に重大でありまして、少年法にある少年の健全な育成にこれは重大な影響を与えるだろうと思います。これの漏えいの防止というのはやっぱりきちんとしなければいけない、このように私は考えております。  ところが現行法上は、少年法五条の二の第三項に漏えい行為はしてはいけませんよと、みだりにそういうことをしてはいけません、こういう第三項の規定はあるんですが、どうもせいぜいそれくらいの防止措置しかしていない。第三項と今申し上げたのは、みだりに漏えいしてはいけませんと、そんなのは当たり前のことであって、それだけ書いてあれば済むんだという問題ではないと思いますが、この点はいかがお考えでしょうか。
  133. 河井克行

    ○副大臣(河井克行君) ただいま委員御指摘の少年法第五条の二第三項におきましては、まず初めに、少年の身上、氏名等についてですが、その事項については守秘義務が課されております。その上で、知り得た事項をみだりに用いることなかれという注意義務が課されております。  これらの義務に違反した者に対しまして、直接の法律効果が生じることとはされておりませんが、仮に、被害者等が閲覧、謄写した記録を悪用して少年を含む関係人の個人的情報を違法に侵害した場合には民法第七百九条の規定しております不法行為、またその名誉を毀損した場合には刑法第二百三十条の名誉毀損罪が成立する場合がございます。また、再度の閲覧、謄写や審判結果の通知が認められなくなる場合も多いというふうに思われます。さらに、被害者等から委託を受けました弁護士が閲覧、謄写をしてその記録を悪用した場合には、その弁護士に対する懲戒事由に該当し得るものと考えております。
  134. 松野信夫

    ○松野信夫君 今のお話はごくごく一般論、一般的なお話でありまして、私はやっぱり少年法については特別の配慮をしなければいけないのではないか。やはり、少年にとっていろんなプライバシーにかかわることが外に持ち出されてしまう、いったん持ち出されたときの少年の受けるマイナスの利益というのはこれは大変重大な問題ではないか、私はむしろ、一定の制裁、みだりに用いてやった場合には一定の制裁も科して相当ではないかな、このように思っております。ところが、今のところはそういう制裁がないんですね。  しかし、ほかの法律とのバランス考えますと、例えば刑訴法の二百八十一条の三、四、五という規定がありまして、これは刑事事件で被告人あるいは弁護人の方が刑事記録を謄写する、この謄写した記録を刑訴法の方ではちゃんと保管しなさい、みだりに漏らしちゃいけない、そう書いてある。その点では少年法のこの五条の二の第三項と同じなんですが、さらに刑訴法の方では、二百八十一条の五でこれ罰則まで掛けているんです。被告人や弁護人が閲覧、謄写した証拠を弁護の目的以外に使って人に渡した、提示したという場合には、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金、これだけ厳しい制裁が科されているわけです。ところが、少年法の方は一般論としてやっちゃ駄目ですよと書いてあるだけで、非常に私はバランスが悪いと、非常にバランスが悪いというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  135. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今委員が指摘されましたように、秘密の漏せつ絡みで、刑事訴訟法における目的外使用に今罰則があるのに対して、この少年法傍聴等につきましては罰則がないのはバランスが悪いじゃないかと、こういう御指摘でございました。  刑事訴訟法で目的外使用について罰則を設けましたのは、被告人等については、自己に不利益な証拠を提供した第三者に対する嫌がらせや報復等を目的として開示証拠の複製等を使用することが考えられるということから、そうした事態を防止するためにこの目的外使用の規定を設けたわけでございます。  これに対しまして被害者等につきましては、一般にそういう事情は認められないのではないかと思うわけでありますし、元々、傍聴を認めるかあるいは開示を認めるかという際に、一律に認めるということではなしに、問題を生ずるおそれがないというようなことを判断した上で傍聴あるいは開示を認めるというような仕組みになっている点、これも違うわけであります。先ほど副大臣から御答弁申し上げましたように、一定の担保措置も設けられているということで特に罰則を設けなかったわけであります。  なお、現行の少年法の閲覧、謄写につきまして守秘義務が規定されておりますけれども、これについても罰則は設けられておりません。また、被害者関係で申し上げますと、被害者保護法で公判記録の閲覧、謄写につきましても守秘義務が設けられておりますけれども、これについても罰則は設けられていないわけであります。  そうしたバランスを考慮して現在のような条文になっておるということでございます。
  136. 松野信夫

    ○松野信夫君 少し時間を掛けてこの点について議論をしたいところですが、私は、少年事件のこの被害者の人たちも、やっぱり加害少年に対してはまさに憎たらしいというか、ある意味では憎悪の気持ちを持っている方も大変多いわけですね。そういう気持ち持たれても、私は人間である以上自然だと。ですから、そういう被害者の人たちがやっぱり記録を外に持ち出すというおそれというのは、やはりこれは被疑者、被告人、弁護人の場合とそんなに変わるものではない、このように考えております。  それで、時間も余りありませんので、最後に、発議者の方にお尋ねしたいと思いますが、今度は発議者の方で、法二十二条の六ということで家庭裁判所被害者等に説明をしてあげると、こういう条項が新たに作られたわけです。しかし、少年法は元々三十一条の二という規定で通知をすると、こういう規定もありまして、私は実際にどういう通知がなされているのかなというふうに思いまして、最高裁より取り寄せた資料が皆さんのお手元にございます。  結果の通知がこういう形でなされている。少年の住所、氏名あるいは非行事実、処遇理由、大体こんな感じでなされて、ある意味では、悪いけれどもこれは通り一遍の通知だな、こういうふうに言わざるを得ないと思いますが、今度の二十二条の六で、そうではなくて、単なる通知ではなくて説明だということが書いてあるわけで、そうすると、このお手元の資料のような通知と説明は具体的にどう違うのか、どのように、もっと懇切丁寧な御説明か何かがなされるのか、その点は発議者の方はどのようにお考えでしょうか。
  137. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 今、松野委員からの御質問、私も今ここで参考資料を拝見しておりますけれども、これは書面で被害者等に通知がされるわけでありますけれども、しかし、被害者としては、こういう書面ではなくて直接裁判所裁判官なりあるいは書記官、調査官から審判廷での状況をお聞きをしたいと、こういう気持ちが強い、強く要望も出されておりまして、それはそれとして、私どももその気持ちは大切にしなければいけないと。こういうことで、そういう要望があったときには審判廷での状況を口頭で丁寧に説明をすると、こういうことでございます。例えば、非行事実について少年がどういうふうに受け答えをしていたかとか、そういうようなことを直接口頭で聞くことによって被害者の方の気持ちも、感情も和らぐのではないかということで説明をするということをしたわけでございます。  以上です。
  138. 松野信夫

    ○松野信夫君 時間が来ましたので終わりますが、そうすると、単なる通知ではなくて、かなり丁寧な、審判状況での非行少年がどういう態度、そぶり、反省の具合、そういう等々のものも説明対象になるということでございますので、是非そういう方向でお願いしたいと思います。  以上です。
  139. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今も松野委員がちょっと論議をされておりましたが、傍聴対象事件について最初に少しお聞きしておきたいと思うんです。  今回の傍聴ができる可能性があるという対象事件一つとして、業務上過失致死傷等の罪にかかわる事件も含まれることになるわけですけれども、そのような、これ過失犯ですね、過失犯まで傍聴を認める必要があるのかどうかというような御指摘が途中段階であったとも聞いておるんですけれども、これについてどのように考えているのか、まず当局から伺っておきたいと思います。
  140. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今回の法案における被害者等による少年審判傍聴制度でありますけれども、これは犯罪被害者等の人権の尊厳を重んじ、その尊厳にふさわしい処遇を保障するという犯罪被害者等基本法基本理念に基づくものであります。個人の尊厳の根幹を成すものは、人の生命あるいはこれに準ずる被害を受けた場合の被害者であります。まず、そうした今回の立法の基本的な考え方との関係で業務上過失致死傷罪等、過失犯であっても傍聴対象事件とすべきであるという考え方が出てくるわけであります。  また、少年事件一般が非公開とされております趣旨からいたしますと、少年事件傍聴を認める対象事件といたしましては、やはり何物にも代え難い家族の生命を奪われた場合のように、被害者側が知りたいという審判傍聴利益といいましょうか、要望が最も強い場合にこれを認めるのが相当だろうというふうに考えられるわけであります。  そうしたことから、被害者から見ますと、被害者の死亡等の結果の重大性という点におきましては、故意事件であろうと過失事件であろうとそれは異ならないわけでありますので、業務上過失致死傷等につきましても傍聴対象事件としたわけであります。
  141. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 また、傷害の限定要件、先ほどから議論になっておったこの生命に重大な危険を生じさせたという点でございます。  先ほど、個別事例を松野委員が挙げられて、そのお話をお聞きしておりましたら、やっぱり生命に重大な危険を生じさせたというだけではなかなかこれ、不明確な部分が多過ぎるんではないかというような気もしないでもないわけです。これも、この法案成立するまでの、成立というか、作るまでの間にやっぱり更に明確な要件にすべきでないかという指摘が随分あったというふうに伺っておるんですけれども、それでもあえてこの生命に重大な危険を生じさせたということでおまとめになった理由は何なのか。これは当然、だれが判断するかといえば裁判所が判断することになるんですが、一方でその被害者の方に立証の負担を強いることになるおそれがあるんではないかなというような危惧もあるんですけれども、この点についても確認をさせていただきたいと思います。
  142. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) まず、生命に重大な危険を生じさせた要件の明確性でございますけれども、先ほど松野委員の御質問にもお答えいたしましたように、被害者が死亡に至る蓋然性が極めて高い状態にあったことを意味するわけでありまして、要件といたしましては、これ以上なかなか具体的に書き込むことは困難ではないだろうかというように考えております。  今、委員が御指摘になりましたのは、被害者に立証の負担を与えることになるんじゃないかという点でありました。ただ、これまでも御説明申し上げておりますように、生命に重大な危険を生じさせた、つまり少年による傷害によって生命に重大な危険を生じさせたと、こういうことでありますけれども、実際の事件におきましては傷害の生じた部位や程度は様々であります。最終的には証拠に照らして判断されるべきでありますけれども、そうした証拠の関係であります。  傷害の程度は非行事実や情状に関する大変重要な事実であります。現在の少年審判におきましても、医師の診断書や関係の供述調書、写真撮影報告書等の証拠によって認定されているところであります。したがって、これに先立つ捜査段階でもこうした証拠や資料の収集に努められておりまして、これが家庭裁判所に提出されているわけでございます。家庭裁判所は、そうした証拠に基づきまして個別の判断に応じて適切な判断を行うことができるわけでありますので、被害者側に過大な立証の負担を与えるというようなことはないというように考えております。
  143. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一点確認で聞いておきますが、まあ念のためですが、結局ここは生命に重大な危険が生じてなければということが最大の要件になるんであって、例えばその被害者の方がその後介護を要するようなもう重篤な後遺障害がたとえ生じたとしても、生命にその時点で重大な危険が生じてなければ傍聴は認めないと、こういうことになるんだろうと思うんですが、それは一応なぜかということとともに、念のためこの点を確認をさせていただきたいと思います。
  144. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今、委員が御指摘になりましたように、被害者に介護を要するような重篤な後遺障害が生じた場合も傍聴を認める事件に含めるべきではないかというような意見は立案の段階でございました。  ただ、傷害により生じ得る身体機能の障害といたしましては、例えば手の指が欠損するというものから下半身が不随になる等々、様々なものが考えられるわけでありまして、どのような機能障害を対象にするのか、どうも一義的に明確にならないのではないかという意見があったわけであります。また、先ほど来申し上げておりますように、傍聴対象は、被害者が死亡した事件あるいはこれに準ずる場合というような形である程度限定的に考えた場合に、一体その死亡した場合に準ずるのに含まれるのかどうなのか辺りも様々な評価が可能であって、明確性を欠くのではないかということで、結局その重篤な後遺障害というだけでは要件に当たらないというような判断をしたわけでございます。  なお、個別事案ごとの判断になるわけでありますけれども、御指摘のように介護を要する重篤な後遺障害を生じさせた場合につきましては、例えばそれによって寝たきりになってしまった、これがその先ほど来申し上げている生命に重大な危険を生じさせた場合に該当するケースもあるのではないだろうかというように考えております。
  145. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、三十七条以下を削除した問題について、これも当局に確認をしておきたいと思うんです。  この法案では、少年の福祉を害する成人の刑事事件を家庭裁判所が管轄することを定めた少年法の三十七条を削除して、さらに三十八条、少年の福祉を害する成人の刑事事件を見付けた場合の家庭裁判所による通知義務、この三十八条を共に削除をしたわけでございまして、これ、なぜこの削除をするようになったのか。  家庭裁判所がそのような事件を管轄していることが何か不都合があるのか、そんなことも含めて、三十七、三十八条を削除した理由を御説明していただきたいと思います。
  146. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 現行の少年法が三十七条一項で、児童福祉法違反等少年の福祉を害する成人の刑事事件は家庭裁判所の管轄権に属せしめているわけであります。  その理由は、こうした成人の刑事事件少年事件を専門に取り扱って少年に理解のある家庭裁判所が取り扱うのが適当である、あるいはこうした事件少年事件の調査の過程で発覚することが多く、証拠関係も共通することが多いので家庭裁判所が取り扱うのが相当である、こう考えられたためであるとされているわけであります。  しかし、実際のところ、最近では刑事事件担当の裁判官少年に対する十分な理解を有しておりまして、適切な対応が可能であります。また、少年事件少年の福祉を害する成人の刑事事件の証拠が共通の場合は確かにあるわけでありますが、少年保護事件の証拠が自動的に成人の刑事事件の証拠になるわけではありません。  かえって、今のような少年の福祉を害する成人の刑事事件を家裁の管轄にしておりますと不都合な点があるのではないかというような指摘もなされております。  一つは、家裁の管轄を有する少年の福祉を害する事件とそれ以外の事件があった場合に、併合罪と申しますけれども、があった場合に、家裁と地裁に別々に訴訟を提起するということになりますと審理期間が長くなります。あるいはまとめて審理された場合と異なる刑が言い渡されることもあるというような点が指摘されております。  また、家裁専属管轄の成人の刑事事件というものを設けますと、いわゆる略式命令による罰金の処理という簡易迅速な処理が認められない。これは簡裁の管轄とされておりますので、家裁ではそうした手続が取れないというような不都合もございます。  そうしたことで、今回、少年法三十七条を削除いたしまして、児童福祉法違反等成人の刑事事件につきましては、ほかの事件と同様に地方裁判所で取り扱うものとしたわけであります。  それから、この三十七条の削除に併せまして、三十八条、つまり少年の福祉を害する成人の刑事事件を発見した場合の家庭裁判所による通知義務を削除することとしておるわけでありますが、この理由について申し上げます。  少年法三十八条の家庭裁判所による通知といいますのは、家庭裁判所における調査、審判の過程で少年法三十七条に規定する少年の福祉を害する事件が発見されることが多いということを考慮いたしまして、刑事訴訟法二百三十九条二項の特則、これは公務員の告発義務に対する特則という趣旨でありますが、そうした特則として設けられたものと理解されております。  しかし、最近の少年犯罪をめぐる状況を見ますと、家裁の調査、審判の過程で発見されることが多い少年の福祉を害する成人の刑事事件は決して少年法三十七条に規定された事件に限られるものではありません。それ以外の事件も発覚することが多いわけであります。そうだといたしますと、この三十七条に規定された事件に限定して特別の通知を行うというような合理性は必ずしもなく、むしろ刑事訴訟法二百三十九条二項、公務員に求められる告発で十分に対応できるのではないかと考えられましたことから、この法律案では三十七条と併せて三十八条も削除することとしたということでございます。
  147. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 これ、衆議院参考人意見陳述でございました。神戸の連続児童殺傷事件被害者の方が参考人で来られて、少年事件における健全育成対象となる少年というのは一般的には加害少年とされているけれども、少年事件の当事者というのは一体だれなのか、それは、加害少年のほか、被害を受けた少年であり、その兄弟たちであるとおっしゃっております。被害を受けた少年たちは、加害少年と異なりまして何の全く支援も受けられなかったという意見も述べられた。そういうのが非常に印象に残りました。  今、国として犯罪被害者基本計画を策定して、犯罪被害者の基本計画に基づいて様々な施策をやっているわけですが、本当にこれをきちんとやらなければ、今回の少年法改正というのはまさにその一つだけであって、本当にこれから全般的に施策を進める必要性、特に被害を受けた方たちにどうしていくかが大事だなということを痛感した次第でございました。  そこで、全般的な今のこの基本計画に基づいた推進状況につきましては、先ほど御答弁があっておりました。白書の問題とか御説明ありましたが、個々の問題で幾つかちょっとお聞きしておきたいんですけれども、まず警察は、被害者に総合的支援を行うために、各県ごとに今被害者支援連絡協議会を設置されてやっておられますが、簡潔にこれ、どういうことを今まで進められたのか、御説明を警察の方からいただきたいと思います。
  148. 米村敏朗

    政府参考人(米村敏朗君) お答えいたします。  警察は、犯罪被害が発生いたしますと、言わば当初より被害者の方と接触するなど、最も身近な立場にあろうかと、こう思います。そうした中で、被害者対策要綱でありますとか、あるいは全国の警察署に支援要員を指定いたしまして被害者の方とお会いをして様々な支援をしていく。ただし、警察だけでその支援が全体を賄うことはなかなかできないということでございまして、そういう意味で、関係する機関と連絡協議会を全国に設置をいたしております。都道府県すべてに設置をされているわけでありますが、あわせて、警察署のレベル、市町村のレベルでも被害者支援の地域のネットワークをつくって当初より支援活動を行っているということでございます。  平素は、それぞれの機関の間での情報交換でありますとか、支援のありようについての意見交換、あるいは職員のいわゆる研修でありますとか等々をやっておりますが、個別のケースにつきましては、それぞれ被害者の方あるいは関係者の方の要望に応じて、関係機関と連絡を取りながら支援を行っているという状況でございます。
  149. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 この法律が通るとどうなってくるかというと、裁判所、特に家庭裁判所はこれから加害者じゃなくて被害者と本当に真っ正面から向き合うことが多くなるわけであって、もちろん人的体制の整備、御指摘がありましたから裁判所から要求があれば我々も頑張るつもりですが、それ以上に職員一人一人が本当に被害者にどう向かっていくかという、研修とかそんなことをどうお考えになっているか、施行されるんですからね、そこをどんなふうにしてやっていかれるのか、お聞きしておきたいと思います。
  150. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  現在、全国の裁判所におきまして、犯罪被害に遭われた方やその御遺族、被害者支援に携わっておられる方、さらに犯罪被害者問題に関する専門家等のお話を直接伺い、個々の裁判所職員が被害者の方の置かれた立場あるいはお気持ち、痛みなどを理解して応対できるようにするための研究会等を実施しております。  本法律案が成立いたしまして傍聴制度が導入される場合には、これまでの取組を更に続けるとともに、被害者方々審判廷での留意事項を理解していただくことを含め、傍聴の実施に当たり、被害者方々にどのように職員が応対させていただいたらいいかについて十分検討の上、施行までの間に必要な研修は実施していく予定であります。  以上でございます。
  151. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今度は、少年審判が終わった後、被害者方々の心の悩みというのは全然それは取り除かれるわけではなく、ある意味では一つの大きな転換にはなるかもしれませんが、まさにその後の今度は精神的ケアの問題になっていくと思います。  基本計画含めて、いろんな犯罪被害者の問題については厚生労働省もかかわる部分が大きいと思うんです。つまり、被害者そのものでなく、その被害者関係者であり、なおかつ、先ほど申し上げました、子供であればその兄弟姉妹、この方たちに対する心のケアの問題も重要だと思うんです。  こういったことに対して、厚生労働省は何か考え方はあるんでしょうか。
  152. 中村吉夫

    政府参考人(中村吉夫君) お答えいたします。  犯罪被害に遭われた方やその御家族、御遺族、さらには現場を目撃された方を含めまして、事件や事故によりPTSDなど精神的に影響を受けられた方の心のケアにつきましては、保健所、精神保健福祉センター、医療機関などを中心に継続的、体系的な支援が重要であると認識しております。  このため、保健所や精神保健福祉センターにおきまして心の健康問題に関する相談を行うとともに、必要であれば医療機関への受診を勧めるといった取組が行われております。県警本部の依頼によりまして、被害者や御家族のカウンセリングを行っているケースもございます。また、こうした相談活動の質の向上を図るため、病院、精神保健福祉センターなどに勤務する医師、保健師などを対象といたしましたPTSD対策専門研修会を開催し、この中で犯罪被害者などの心のケアに関する研修も行っておるところでございます。  さらに、厚生労働科学研究によりまして、平成十七年度から十九年度にかけましては、犯罪被害者の精神状態についての実態とニーズの調査や、精神保健福祉センターなどの職員が犯罪被害者にかかわる場合のマニュアル作りなどに関する研究を行いましたし、今年度からは、犯罪被害者に生じる外傷性ストレス反応を中心といたしました精神疾患の実態把握と治療方法に関する研究を実施しておるところでございます。  今後とも、関係省庁と連絡いたしまして、犯罪被害に遭われた方やその御家族、御遺族に対する心のケアの充実に取り組んでまいりたいと思っております。
  153. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 内閣府に来ていただいておりますので、内閣府として、かじ取り役として、この少年法、通りますと傍聴の問題は一つ山を越えるんですけれども、何が残された課題だと考えていらっしゃいますか、簡潔にお聞きしておきます。
  154. 殿川一郎

    政府参考人(殿川一郎君) 現在、基本計画に基づきまして二百五十八の施策に取り組んでおりまして、それぞれいろいろな施策ごとに、順調に進んでいるもの、あるいはいろいろな推進のやり方について検討中のもの等々ございますけれども、いずれにしましても、被害者にとってそういった施策が効果的であるのか、十分であるのかということについて今後しっかりと監視、検証、評価をしていく必要があると考えております。  例えば、内閣府として担当しております被害者問題につきましての一般国民の理解を更に強める必要があるとか、あるいは地方公共団体、特に住民に身近な市町村のレベルでの被害者支援というものにつきましてはまだ十分であるとは言えないという状況にあると考えておりまして、今後、引き続き取組を強化する必要があると考えております。  いずれにしましても、こういった計画の進展状況をしっかりと検証等しながら、将来的には二十二年度に現在の計画の見直しというのも課題になってまいりますので、そういったところに向けて今後更に積極的な推進に努めていきたいと、このように考えております。
  155. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に大臣に。  今それぞれの省庁、一応どんなことをして、どうしようかという話、聞かせていただいて、もちろん中核の一つ法務省であることは私は間違いないと思っているし、法務省として法的整備をすることは随分進んできたと思います。  ただ、やっぱり私は、どっちかというと、一番残っているのは、教育の分野みたいなところに、被害少年がいて、加害少年がいてと、そのときの教育現場ですよね、この厳しさみたいなことも本当に感じてみたり、もうやらなくちゃいけない、検討しなくちゃいけないことは山ほどあると思っております。  是非とも、この法案の成立を機に更に犯罪被害者に対する様々な施策、取組を強めていきたいと思っておりますが、大臣の決意を聞いて質問を終わりたいと思います。
  156. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 被害者方々のための施策として本法律案は立案をされて、今御審議をいただいているわけでございますけれども、そのことによって被害者尊厳を守るということ、あるいは被害者の救済というのがどこまでできるかといえば極めて限定的でありまして、犯罪被害者等基本計画に盛り込まれた施策は政府全体で二百五十八あるということでございます。これは、今それぞれ木庭先生が聞かれた政府の方々は、ぺらぺらぺらぺらとよくお答えになっておられますが、問題はそこに心が入るかだと思うんですよ。それを是非、私どもも含めて政府全体で心を込めてやらなければならないとつくづく思います。  そして、今日の参考人ですね、午前中の、また引用いたしますが、望月さん、被害の回復には様々な困難が立ちはだかっており、社会全体で被害者を支えることが重要だと冒頭おっしゃっている。この意味は今、木庭健太郎先生がおっしゃった、衆議院での参考人の方の御意見、あの神戸の事件被害に遭われた少年のお父様であったと思いますけれども、確かにその参考人がおっしゃったとおりで、先生が御指摘されたとおりだと私は思うんです。  私も、この審議衆議院、参議院で、例えば被害者あるいはその遺族と、最愛の家族を失われた遺族の気持ち、これを考えるとという表現を何十遍と使ったんですけれども、考えてみると、被害者の御遺族というのは被害者なんですね。加害少年によって殺人という非行あるいは事件が起きる、確かに亡くなった方は被害者なんでしょうけれども、兄弟が被害者ではなくて、遺族と言われる方全員が被害者であって、それをメンタルな面も含めて温かく見詰めて、尊厳を守り、救済するというのは、言葉で言うのは簡単だけれども、実際には大変な仕事なんだろうと、こう思って、法務省ができることは限定的かもしれませんけれども、先陣を切って努力するというつもりでございます。  ちょっと、先ほど答弁の機会を与えていただけなかったので、私、ちょっと言いたいことがあるんですが、説明ですね、家裁の説明の件。  これ、例えば家裁には調査員という特別の方がいる。調査官ですね、調査官。書記官、まあ書記官はほかにもいますが、調査官というのは、裁判所って普通自分では調査しないわけですが、家裁は自分で調査するという特別な働きをすると。だけれども、行き過ぎてしまわないかと今野先生、質問されましたね。  私は、その辺を含めて、やはり懇切丁寧に被害者、遺族に説明をされるんだったら、それはもう原則は裁判官説明をするというぐらいの気持ちでやってもらいたいと思いますね。それができなければ、もうよほどよく打合せをして、調査官、書記官が説明することあってもいいが、家裁は、私が裁判所に何か口出しするようでいけないのかもしれませんが、気持ちとしては、家裁の裁判官が直接説明するような温かみを持ってもらいたいと思います。
  157. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  158. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  まず、法務省の刑事局長に、被害者傍聴による少年のいわゆる萎縮のおそれについて、少年の心理や性格などについてのどのような御検討の上で法案を提出されたのかについてお尋ねをしたいと思います。  今日午前中、参考人にも紹介をしましたけれども、昨年の少年法改定の議論の際にこの委員会でも私紹介をさせていただきました平成十二年の法務総合研究所の研究部報告十一という冊子がございます。これは、少年院在院者のうちに被虐待経験を持っている子供たちがどれほどいて、その実情がどうなっているかということを調査をしたものですけれども、約半数に上るという大変衝撃的な結果でございました。  これを取り上げた私の質問に対して、今日はお呼びしていませんが、梶木矯正局長が、虐待等によって、身体的な影響ばかりではなく、人から愛されあるいは人を愛するという愛着行動への障害を子供たちが持っていること、破壊的な行動を行うパニック行動、自傷行為、こういった感情や行動への影響も出てきている、また、他人に対する基本的な不信感が植え付けられることによって、自分に対する自己イメージが低い、あるいは強い対人不信感があると、こういったことが個々の子供たちの特質として浮かび上がってきたという御答弁をされているんですね。  こうした少年たちの心理や性格などに照らして、審判廷において被害者傍聴をするということがその心理にどのような影響を与えるのであろうかという、そういった科学的な知見に基づく検討がなされたんでしょうかとこれまで政府、当局にもお尋ねをしてきまして、私ははっきりそのような検討は伺ってきていないんですね。今日、法制審に参加をされた川出先生にもお尋ねをしてみましたら、法制審にそのような検討結果が出されたとは思っていないという旨の御発言だったと私は理解をしていますが、そのような検討は行っていないですね。
  159. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) ただいま御指摘がございましたけれども、今回の立案に至る経過におきましては、関係団体あるいは少年審判関与されている弁護士会、裁判所あるいは刑事法学者等を交えた意見交換会、ヒアリング、パブリックコメント等を中心に様々な御意見参考になる資料等を集めまして、それに基づいて傍聴制度の導入の可否等についての調査、審議を進めたと、こういうことでございます。
  160. 仁比聡平

    仁比聡平君 私が指摘をしているような科学的な知見に基づく検討というのはなされていないんです。今、局長がおっしゃった意見交換会あるいは法制審も十二月の中下旬からでしょうか、わずか三か月程度という形でなされておりまして、その間に少年の心理や性格、特質あるいは供述心理、そういったものについての科学的な検証抜きにどうして被害者傍聴を許可をするという制度枠組みやあるいはその運用というのができるのかと、私は一人の政治家として大変疑問に思うんですが、そこで修正案発議者にお尋ねをしたいと思います。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  修正案提案者は、少年健全育成を妨げるおそれがなく相当などの要件を付されるという修正をされたんですけれども、その前提として、少年審判廷でどのような心理状態にあるのかというような御検討はされましたか。
  161. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 特に詳しく検討をしたわけではありませんけれども、この法案が出てまいりましてから、いろいろな専門家の方にお話を聴くということはいたしました。その際、やっぱり傍聴を認めるということは、少年に対していろんな心理的影響を与える、特に萎縮をするんではないかと、そして真実を話さないようになるんではないかというような強い意見が出されました。  そういうことで、具体的な詳しい研究はいたしませんでしたけれども、そういう少年にいろんな影響があるというようなことは、いろんな方から指摘を受けて私なりに知っております。
  162. 仁比聡平

    仁比聡平君 衆議院における修正の経過というのは、私は関心を持って見ていたつもりですけれども、その私にとっても全く分からない、まあ水面下というんでしょうか、そういった形で、私は中身は全然分からないままこの参議院での審議を迎えたんですけれども、である以上は、私が申し上げているような科学的な検証というものはなかったのではないかなとやはり思います。  今、細川先生からお話を伺いましたので、引き続き細川先生にお尋ねをしたいんですけれども、修正で付された健全育成を妨げるおそれがなく相当というこの考え方について、提案者の皆さんからも、それから政府当局からも、これまでの少年法理念目的を変えるものではないんだと、これまでの少年法理念の上に可能な限り被害者心情を受け止めるようにするんだといった趣旨の御議論がされてきたわけです。  その少年法理念を踏まえて、少年法健全育成に照らして相当と認めるときという要件を付すべきではないかという意見少年司法関係をしてこられた方々から幾つも出されていたと思いますけれども、この妨げるおそれがなくということと健全育成に照らして相当というのは、これ、意味は同じなんでしょうか、それとも違いますか。
  163. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 私の考えでは、照らしてというのと健全な育成を妨げるおそれがないということでは、意味がちょっと違っているというふうに思っております。  照らしてという場合には、少年健全育成ということと、それから被害者心情被害者傍聴権利とか、そういうのをある程度比較をするような、そんなニュアンスがあるんではないかと。しかし、そうではなくて、この健全な育成を害することが、おそれがないということが、より縛りを掛けていくというような表現だというふうに考えております。
  164. 仁比聡平

    仁比聡平君 そうしますと、修正意味は、少年法理念達成のために相当な場合に認めようという、私が紹介した意見というのはそういう御趣旨の意見だろうと思うんですけれども、提案者の方々としては、その表現よりもより厳しく少年法理念健全育成を害させないと、そういう理解で提案されているということですね。
  165. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) まあ、大体そのとおりでございます。より明確にしたと。少年健全育成、この理念というのに合うという形で、おそれがないということで、それを基準を明確にしたと、こういうことでございます。
  166. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の御答弁を運用に当たられる裁判所は銘記すべきだと私は思います。  そこで、少し話は戻りますが、少年の心理状態をどのように判断するのかということについて少しお尋ねしたいんですが、大野局長も、前回のこの質疑でもそれから今日も萎縮という言葉を御答弁の中でお使いになっていらっしゃいます。萎縮というのはどのような状態なのかと。この立法の問題として言えば、少年が萎縮するという状態を裁判官は何を資料として、あるいは何を徴憑として判断するということになるのか。この萎縮という言葉については、日常用語としては大変語義が広いのではないかと思うんですね。そこはどう考えていらっしゃるんですか。
  167. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 大変、萎縮という言葉はある意味ではっきりしない点があるのかもしれませんけれども、少年審判被害者傍聴されるということになれば、少年被害者のことを意識するといいましょうか、被害者が来ておられるということを意識する、これは当然のことだろうというふうに考えるわけであります。  問題は、そうした意識が少年にどのような影響を及ぼすかということでありまして、被害者がそこにおられるということで過度に緊張してしまって、例えば裁判官等からの問いかけに対してきちっと耳を傾けられなくなるというようなことがあればこれはもちろん問題があり、萎縮と言われる場面なんだろうというふうに思います。また、そうした問いかけ等を受けてきちっと頭の中で考えられないということになればこれも問題だろうというふうに思いますし、またさらに、表現の過程でも被害者がおられるということで黙り込んでしまう、あるいは言いたいことも言えなくなるということになればこれは萎縮なんだろうと。  つまり、少年審判影響を与える、少年審判目的である適正な処遇選択のための様々な情報を審判の場で明らかにすること、それから少年心情の安定を害さないようにして内省を引き出す教育的効果を及ぼすという観点からすれば、今申し上げたようなレベルになっていれば、これは萎縮であって問題だろうというふうに考えます。  しかし、そこまで行かない、単に被害者がそこにおられるということを意識している、若干の緊張ということになるのかもしれませんけれども、その程度であれば、直ちにこれは少年審判機能目的影響は及ぼさないだろうというふうに考えます。
  168. 仁比聡平

    仁比聡平君 今局長が答弁されたような内容が今日午前中の参考人質疑の中でもちょっと出ましたので、その点、細川先生にお尋ねしたいと思うんですけれども、今の局長の答弁のような場合に限られるんでしょうか。局長は、そのような場合はもちろん問題ですと先ほどの答弁の冒頭のところでおっしゃったんですね。  私に言わせれば、今大野局長が紹介になったような裁判官発言が耳に入らないとか、その働きかけを考えることができないとか、あるいは黙り込んでしまうとか、言いたいことも言えないとか、そんな状態になったら審判機能が害されていることはもう明白じゃないですか。それは極度の限界事例ですよ。少年の心理状態がどのようなものであるかということについて科学的な知見に基づく検証もされておられないのに、そうでない場合は、あたかも被害者方々が在廷しておられるという意識にとどまって審判機能が害されないというような、そんな御答弁は私はあり得ないと思うんですけれども、細川先生はどう思われますか。
  169. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 今局長が答えられたようなそういう状態に少年がなっては、それは当然審判を害することでありますからそれはいけないことでありますけれども、私どもが考えましたのは、そういう健全な育成を害するおそれがあればそれは駄目なんだと、こういうことで前回の委員会でも申し上げたとおりでございます。
  170. 仁比聡平

    仁比聡平君 続けて伺いますけど、そのおそれというものをどのように認識すべきであるというふうにお考えですか。
  171. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) それは、条文中にも書いてありますように、少年年齢とかあるいは心身の状態、事件の性質、審判状況、これらについていろいろ調査官も調査して、そしてそれが報告されていると思いますので、それはまさに個々具体的な少年あるいは事件などによって異なると、一概に言えるものではないというふうに思います。
  172. 仁比聡平

    仁比聡平君 政府案が修正案によって修正されてこの参議院に送られているわけですから、今の細川先生の御答弁で私は納得しているわけではありませんが、その修正の意義というのは、これは政府当局においても、それから裁判所においても当然重いものであるということを改めて申し上げておきたいと思うんです。  裁判所傍聴の許可をするに当たって、裁判官が何を資料としてどのように判断するのかということについて家庭局長にお尋ねをしたいと思うんですけれども、これ前回の私の質疑の中で局長は、この法案の様々な考慮要素、それらの事情を十分考慮し、被害者少年審判傍聴された場合に起き得る問題も含めて検討して、そこは審判機能が損なわれない場合に審判傍聴を認めるということになろうかという御答弁をされたんですね。  この起き得る問題というものの中には、平成十二年の家庭局長答弁に言う、少年の内面に相当踏み込んだそういう審理に不可欠な、内面に関するあるいはプライバシーに関する事項について発言することをためらうということだとか、あるいは少年の情操の安定や内省の深化が妨げられるおそれがあるというような場合、これが含まれますね。
  173. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答えいたします。  まず、どのような資料から傍聴を認め、あるいはこれを認めないこととするかにつきましては、これまで申し上げたとおり、捜査機関から送られてきました証拠資料に含まれる少年被害者等の供述調書を始め、あとは被害者調査を含めた家庭裁判所調査官による調査の結果など、本法律案に掲げられた諸事情を把握できる資料に基づいて、付添人の意見も踏まえて判断することになると思います。  そして、御指摘の二点につきましては、そういった点も十分考慮して傍聴を認めるのか認めないのか、あるいは仮にその点、一度傍聴を認めたけれども、少年の様子等からやはりこれはこれ以上傍聴を認めるのは良くないということであれば、被害者の方に退席していただく等の措置を講ずることもあろうかと考えております。  以上でございます。
  174. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の御答弁を前提としてなんですが、少年に直接裁判官が向き合うのは審判廷の場面でございます。一回で審判が終わるというそういうことも多い中で、その一回目の審判の前に裁判官少年にそのような影響が起こらないということを判断が可能なのかと。  それはもちろん、調査官やあるいは鑑別所技官の意見もあるでしょうし、付添人の意見もあるでしょう。だけれども、私自身経験からしても、審判廷裁判官少年と向き合うことによって新たに少年の性格あるいは心理の状況が分かってくるということもよくあることであって、調査官やあるいは付添人が信頼関係を結び、いろんな調査をしてもなおその少年の内面になかなか届かない。だからこそ、できる限り科学的に、そして裁判官も適正に努力をしてこられたということだと思うんですよね。なのに、審判廷に臨む前に少年にどんな影響を与えるのかということを本当に判断できるんでしょうか。  付添人をどのような形で付けるかという議論も、前回、近藤先生とそれから修正案発議者中心になされましたけれども、付添人をきちんと付けて、付添人活動をきちんと取り組んでいただいた上で、裁判官が実際に少年と向き合って審判に入って、その上で判断すべき場合ももちろんあるだろうし、むしろその場合を原則にするべきではないかと思うんですが、いかがですか。
  175. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  現在におきましても、裁判官は係属した事件についての記録を十分検討し、少年についてどういう問題があるのか、あるいはどんな少年であるのかというイメージをつかみ、一方、家裁調査官の調査等を経まして、少年状況について報告を受け、そして審判の前には家庭裁判所調査官、書記官、裁判官等が集まりまして、カンファレンスといいますが、こういったときに審判をどういうふうに運営するかということで審判に臨むわけです。  そして裁判官も、その少年の特性に応じて一番最初どういう声を掛けたらいいのかとか、そういうことをイメージしながら審判を始め、そして少年の対応等を見てそれを修正して、何とか少年に本心を語らせ、あるいは内面に踏み込んで問題点を指摘してその内省の深化を迫るという、そういうことを各裁判官はいろいろ工夫して行っているわけです。  ですから、今回の場合も、そういったことも踏まえまして、傍聴を認めることによって審判機能が害されるかどうか、裁判官は慎重に判断することになるでしょうし、いったん被害者の方の傍聴を認めて審判を始めたところ、その少年の様子が調査官に前にしゃべっているときと大分様子が違うとかそういうことが分かったり、あるいは少年の様子自体を裁判官が観察して、そして後、それからは被害者に退席していただく等のそこは柔軟な対応を取ることになるのではないかと考えております。  以上でございます。
  176. 仁比聡平

    仁比聡平君 私も司法修習生の時代に、今局長がおっしゃったようなカンファレンスに参加をさせていただいたこともございます。実際、そのようなカンファレンスをした上で審判廷に臨んだときに、シナリオどおりに審判を行われるのではなくて、実際にそこの審判廷での新しく得られた審判官の御判断によって、審判を続行するだとか、様々な保護処分を考えるだとか、試験観察に付するだとか、いろんな判断がされているのが審判廷の現実だと思うんです。そこの機能を決して損なわれることのないように強く求めたいと思います。  ちょっと最後に、一点だけ修正案発議者にお尋ねしたいんですが、低年齢少年……
  177. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 質疑者の質疑時間、終了しておりますので。
  178. 仁比聡平

    仁比聡平君 はい。低年齢少年についての十二歳の区別の問題で、昨年、少年院送致下限年齢に関しての改定がなされたときに、大口先生おられますけれども、私ここでお尋ねしまして、政治家としての識見と、それから参考人方々がこうおっしゃったということ以外に、何か十二歳という線引きの根拠がありますかとお尋ねしましたら、それはないというお話で、民主党の皆さんは、送致の下限年齢については、ここは同意はされなかったんだろうと思うんですけれども、今回何か事情が変わったんでしょうか、そこだけ伺いたい。
  179. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 細川律夫君、簡潔に御答弁をお願いします。
  180. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 質問の趣旨はあれですか、十二歳ということと……
  181. 仁比聡平

    仁比聡平君 十二歳にどんな根拠があるのかということ。
  182. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 根拠。これは、私どもは特に触法少年、罪を犯しても罪にならない触法少年について、低年齢については何らかのあれを考えなきゃいかぬと。しかし、その場合にどう考えるかといった場合に、小学生以下あるいは中学生以下と一般に区別がありますけれども、私どもとしたら、小学生はこれは傍聴を認めない、しかし、その触法、中学生とではこれは特別に配慮をしなきゃいかぬと、こういうことで区切ったわけでございます。
  183. 仁比聡平

    仁比聡平君 終わります。
  184. 近藤正道

    近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。  最初に、法務省の刑事局にお聞きをしたいと思いますが、今回の改正審判への被害者等の傍聴、これが最大の論点になっておりますが、その前提として、今の少年法をどう見るかという、あるいはどう評価するかということについて質問したいというふうに思うんです。  私は、我が国少年法、比較的良くできている、良く機能している、諸外国と比べてもうまくいっているんではないかと。その一つの言わば徴憑としては、やっぱり再犯率の問題等があると思うんですが、少年の再犯率などを一つの判断根拠としながら法務刑事局としてはこの日本少年法をどういうふうに今評価しているのか、所見を伺いたいというふうに思います。
  185. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今回の少年法改正は、あくまでもこの被害者尊厳を重んじるという観点からの改正でございます。  少年健全育成を図るという少年法目的関係ではいろいろ御意見はあるかもしれませんけれども、私どもといたしましても、少年法は基本的に機能してきているというふうに考えているところでございます。
  186. 近藤正道

    近藤正道君 日弁連もこの国の少年法機能している、良くできていると、こういうふうに言っておりますし、法務省もそういう見解でございますので、うまくいっている少年法の中に被害者審判への傍聴を認めるかどうか、これが今議論になって、私ども、そのことによって、もちろんその被害者権利利益、これはもう最大限尊重しなければならないというふうに思っておりますが、そのことが、バランスの問題でありますけれども少し行き過ぎて、このうまくいっている少年法機能そのものがおかしくなっては困るなということで、いろいろ心配をして質問をしているということでございます。  それで、前回の質疑のところでいろいろ議論がございました。仁比委員からも指摘があったというふうに後で聞いておりますけれども、二〇〇〇年の少年法改正、これは被害者意見聴取あるいは記録の閲覧、これを導入した法改正が行われたわけなんですが、このときに被害者傍聴というものについてどう考えるかという議論が何度かあったというふうに理解をしております。  そのときに、当時の答弁者は異口同音に、意見聴取はいいけれども、被害者傍聴を認めるとやっぱり非常に問題があるよという答弁をしております。平成十二年の十月十日の最高裁家庭局長の答弁がそうでありますし、三月二十九日の臼井法務大臣の答弁もそうでありますし、また同年の十一月の十六日の、これは公明党の発議者高木委員の答弁、これもそうであります。繰り返して被害者傍聴制度には問題がある、意見聴取ならいいけれども傍聴には問題があるということで、とりわけ高木委員については、三点、非常に簡潔に整理をしてまとめておられます。  一つは、少年審判廷の構造からして、少年との間に感情的なトラブルが生ずる、そういう懸念があるんではないかということが一つ二つ目は、記録には要保護性に関する資料がありますよね、いろいろ、少年の資質だとか生育歴だとかあるいは養育環境等。こういうものはなかなか記録閲覧では見れない。しかし、法廷に行けば、審判廷に行けば見れると。しかし、被害者がそこに入ってくれば、傍聴すれば、裁判官がそのことが被害者側に知れるんではないかということで、そういう記録はやっぱり出されない。そのことによって審判、適正な事実認定だとかあるいは処遇選択が誤るんではないかと、こういう問題点。そしてもう一つは、いろいろ議論になっております少年の情操の安定とかあるいは反省の深化、これが妨げられる。当時、こういう主に三つの理由で、意見聴取はいいけれども被害者傍聴するということはやっぱり問題があるということを多くの人たちが指摘をしているわけなんです。  ところが今回、それが言わば一定の場合には実現するということになりまして、これは繰り返し繰り返しそれでいいのかという議論があるんですが、細川発議者にお尋ねをいたしますが、当時そういう形で、懸念がある、これまずいというふうな形で皆さんがおっしゃったんだけれども、今回それが今度は傍聴が許されると。そういう懸念は払拭されたんでしょうか、御答弁いただきたいと思います。
  187. 大口善徳

    衆議院議員(大口善徳君) 平成十二年十一月十六日、我が党の高木陽介からこの三点についての懸念が指摘されております。  これにつきましては、先生ももう議論していただいたわけですけれども、平成十六年に犯罪被害者等基本法議論がありました。そして、平成十七年には犯罪被害者等基本計画でやはり被害者尊厳にふさわしい処遇というものが非常に大事であるということもこれ国会で議論したわけであります。そういう点で、犯罪被害者尊厳にふさわしい処遇ということで、やはり審判のやり取りについて直接聞きたい、加害少年が本当に何を言っているのか、また反省しているのか、そういうことを是非とも聞きたいという、その思いを今回、少年法改正という形でやらせていただいたわけであります。  そして、そういう中で、やはり御懸念が指摘されたということも十分踏まえて、今回修正をやらせていただいたと。一つは、やっぱり少年の健全な育成を妨げるおそれがないということをしっかり明記をして、そしてこれを判断基準として明確にさせていただいた。  それから、弁護士である付添人がいらっしゃる場合は、やはり加害少年と付添人というのは非常にそういう点では信頼関係があるわけですね。そういう付添人から十分意見をお伺いするということ。それによって少年心情ですとか、あるいは性格ですとか、そういうことも情報をしっかりと入れて、そして判断していく。また、弁護士である付添人がいないときには原則としてこれは国選の付添人を付すると、こういうことも修正として今回入れさせていただいたわけです。  しかも、十二歳未満の少年はこれは除外。また、触法少年であります十四歳未満につきましてはその特性を考慮する規定を設けると。そして、被害者等の座席の位置あるいは職員の配置等について裁判長の配慮規定を定めると。  こういうことで、三つの懸念について十分対応していくという修正案を今回盛り込まさせていただいたということでございます。
  188. 近藤正道

    近藤正道君 いろいろこういう手を打ったというのは分かるんですが、それこそ七年前に懸念があると言っていて、そういう認定評価を明確にしているものがここで突然がらりと変わるということの理解が私にはできないんですが。それは、懸念としてあるけれども、ほかの手を打ったということなんですか、それとも懸念そのものがなくなっちゃったんですか、どっちなんですか。
  189. 大口善徳

    衆議院議員(大口善徳君) ですから、そういう懸念があるので、こういういろいろな仕組みをつくって、そしてこれが少年健全育成を害しないようにしっかりしていこうと、こういうことでございます。
  190. 近藤正道

    近藤正道君 分かりました。  これ以上は議論にわたるんでやりませんけれども、いずれにしても、懸念としてはやっぱりあるんだということを認めた上で、それをできるだけ小さくするための装置を幾つか施したと、それでひとつ理解をしていただきたいと、どうもそういうことのようでございますが、しかし、これ以上やってもこれ議論ですのでやめますけれども。  次の質問ですけれども、修正案には附則第三項として三年後の見直しの規定が盛り込まれております。しかし、これだけでは私は歯止めにならないんではないかという気がしているわけでありますが、二〇〇〇年の改正時は五年後の見直し規定がありましたけれども、これが果たして本当に機能していたのかどうか、私にはいまいち気持ちとして落ちないところがございます。  立法府の責任を否定するものではありませんけれども、大きな要因は、現場を掌握している最高裁がきちんと実態を調査して情報を報告、提供していなかったことにやっぱり大きな原因があるんだろうというふうに思っています。  最高裁の二本松さんに、事実に基づいた議論をしたいと思いまして、少年審判意見聴取した被害者少年に暴行を行ったケース、どういうふうに押さえておられますかということを聞いても、何も調査をしていないと、そういうふうにおっしゃいます。この点では、こういう事実を押さえていないという状況の下では議論そのものができない。見直し規定を設けるんなら、ちゃんと状況を調査して時々公表してくれるということがやっぱりなければ、この見直し規定は生きてこないというふうに思うんですね。  それで、最高裁にお尋ねをいたしますが、今までは調査はしていないと。本当かなという思いはありますけれども、調査をしていないということでありますが、少年審判傍聴あるいは少年在廷での被害者意見聴取に関して、今後、どんなような運用状況なのか調査をして、そしてやっぱり一定期間ごとに報告、公表を考えていただきたいと思うんですね。そういうものの集積の上に立って一定期間後に、これだけ議論したわけでありますんで、これをこれからも続けるのか、あるいは見直しをするのか、そういう形にやっぱりなっていくと思うんですよ。  是非今度は、これからはしっかりとやっぱり調査をして、一定期間ごとに公表するということを考えていただきたいと思うんですが、そういうお考えはございますか。
  191. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  まず、平成十二年改正少年法運用状況につきましては、特に被害者配慮三制度記録の閲覧、謄写、あるいは意見聴取の申出、それから結果通知の申出等につきましては、最高裁においては、各家庭裁判所から報告を受けまして、これはきちんと統計を取りまして、それを法務省に提供し、法務省が国会に報告されたというふうになっております。  なるほど、裁判所の方としてはトラブル事例ということできちんと統計を取っていたわけではありませんが、こういった被害者配慮三制度につきましては、申出の件数、それから認めなかった件数、認めなかったのはどういう理由で認めなかったのかとか、ここら辺のところはきちんと統計を取っております。  そして、今回の改正後の最高裁の方の対応ですが、この被害者による審判傍聴制度は新たな重要な制度でありますので、最高裁判所といたしましても、その施行状況の実情を国民に知っていただくことは必要であると考えております。そこで、施行状況を把握するために必要な調査を行い、これを適当な時期に公表してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  192. 近藤正道

    近藤正道君 分かりました。  年に二回ぐらい公表してもらえないかな、あるいは少なくとも一年に一回ぐらいは公表してもらえないかなと、こんな思いがございますけれども、いかがですか。
  193. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) これは、これからのどの程度の申出件数があるのかということも含めて検討することになりますが、余り短期間ごとの公表となりますと、もし件数が少なかった場合は、事件の個別性がかなり統計数値に反映する可能性がありますし、また統計的に見て意味があるかという問題もあろうかと思います。  したがいまして、被害者傍聴制度運用の全般的な状況を適切に把握できるようにするためには、ある程度の期間ごとに公表するのが適当であると考えております。こういったことにつきましても、最高裁としては、施行状況を見ながらそこはきちんと判断してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  194. 近藤正道

    近藤正道君 修正案の中に、家庭裁判所被害者等から申出がある場合において審判期日における審判状況説明すると、こういう規定がございまして、先ほど議論がございました。  このような説明制度を、傍聴制度の代替ではなくてこれと並立する制度として設けますと、被害者等への説明における負担や混乱を恐れて安易に傍聴を認める方向に流れてしまう、そういう危険はありはしないかと、こういう懸念を持つんですが、この説明制度傍聴制度の代替ではなくて並立するものとして設けた立法趣旨、これを御説明いただけますか。
  195. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) この規定を設けましたのは、この改正案では、傍聴を申し出た場合に裁判所の方がいろいろ考慮して許すか許さないかを決めると。そうすると、許さない場合には全然、あとはもう記録の閲覧しかないわけです。それから、被害者あるいは遺族によっては、傍聴をしたいけれども、しかし加害者少年と会うのはどうも心情的に無理だと、こういう方。そういう方がやはり審判状況がどうであったかということは、これは被害者あるいは遺族としては知りたいというのは当然だろうと、こういうことでこの規定を設けました。  したがって、代替だとかあるいは並立とかいうようなあれではなくて、私どもとしては、そういう被害者、遺族の心情を酌んでこういう規定を設けたと、こういうことでございます。
  196. 近藤正道

    近藤正道君 分かりました。  時間が少なくなってきましたので、例の十二歳未満については傍聴を許さない規定について修正発議者にお尋ねをしたいというふうに思っておりますが、先ほども一番最後に、なぜ十二歳なのかという話がございました。私どもは、十二歳で区別する法的根拠はないと、刑事責任年齢である十四歳で区別、そこで線を引くならやるべきではないかというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
  197. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 確かに、衆議院での委員会での議論、あるいはこちらでの委員会での質疑でもそのような意見が度々出てまいりまして、私ども修正案を作るときにもやはりそういうことが問題になりまして、先生の言われるような意見も出たところでございます。  ただ、私どもが最終的に結論を出しましたのは、この十四歳、触法少年でも、中学生と小学生、これは違うんではないかと、年少の少年をどこかで区切る場合に、社会的に小学生、中学生と、こういう区別がありまして、少年の精神発達の中でもやっぱり小学生と中学生は大いに違うんではないかと、こういう認識の下に小学生は認めないと、こういうことにしたわけです。  一方、審議の中では、被害者にとっては少年年齢に区別はないんだと、こういう強い意見も出てまいりました。そういうことも考慮をしながら、小学生は傍聴を認めない、しかし、そのほかの触法少年については特に配慮をして認めるかどうかを決めると、こういう修正案にしたわけでございます。
  198. 近藤正道

    近藤正道君 時間が短いので、議論がなかなかできません。最後の質問に行きたいというふうに思っています。家庭裁判所の人的、物的手当て、これを急いで整えていただきたいということでございます。  今日も、午前の参考人質疑で四名の参考人、それぞれ立場は違いますけれども、裁判所調査官あるいは書記官の人的体制をとにかく整備を急ぐべきだと。人を増やすべきだという点では全員明確におっしゃっておられました。  被害者と向き合う、こういう場面がこれから飛躍的に増えてくるわけでありまして、確かに総事件数は減っているかもしれないけれども、中身がやっぱりずっと濃いものになってくるわけでありまして、そういう意味では、裁判所の人的体制の整備は本当に喫緊の課題だというふうに今思っております。  同時に、いろいろお聞きいたしますと、そういう事件処理あるいは事前調査等でメンタルヘルスの問題もたくさん出ているという話も聞いておりまして、是非、ここのところは体制をやっぱりきちっと整えていただきたいと。つまり、人を増やしていただきたいと、こういうことを最後にお聞きしたいんです。  これは、前回の委員会でも何人かの方がお聞きになりまして、ここは、最高裁は最後まで適切な対応と、この言葉以上のことはおっしゃらなかったんだけれども、今日の参考人質疑でも全員、人を増やしていただきたいと。とにかくやってみて、そして状況を見て、それから考えるというんじゃなくて、これは間違いなく新たな事態で、本当に被害者の人権と、そして同時に少年の健全な育成、このことを同時に果たすということであれば、やっぱり人を増やす以外にはないと。これはもう見てから決めるんではなくて、今から直ちにやっぱり準備をしなきゃならぬという点で、参考人の皆さん、みんな異口同音におっしゃっておられます。  最高裁、是非今度は、一番最後でありますので、適切な対応という言葉ではなくて具体的な言葉で、この委員会の総意とも言うべき期待に是非こたえる御答弁をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  199. 高橋利文

    最高裁判所長官代理者(高橋利文君) 今回の法改正により新設される傍聴制度被害者説明制度への対応も含め、家庭裁判所被害者方々に適切に対応し得るよう人的体制の整備を図っていく必要があると考えております。  裁判所はこれまでも、様々な法改正等により裁判所が行うこととされた新たな業務、例えばDV法のことでありますとか児童虐待、裁判所関与がますます求められてきておるわけでございますが、そういった点も含め着実に人的体制の整備を図ってきたところでございます。  今回の法改正につきましても、これにより裁判所の職員が行うこととされる新たな業務、とりわけ先ほど来議論ございました被害者への説明制度につきましては、その内容、詳細は今後最高裁規則で定めるということになっております。この法律、そして将来規則で定められた業務の内容、そこで予測される利用状況、業務量の程度を精査した上で、さらには、少年事件を含む、先ほど御指摘ありました家庭裁判所における少年事件が減少傾向にあるというようなことも踏まえながら、被害者説明に当たることが基本的に想定されております書記官など、家庭裁判所の職員について必要な人的体制の整備を検討していきたいと考えております。
  200. 近藤正道

    近藤正道君 終わります。
  201. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  202. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、舛添要一君及び山崎正昭君が委員辞任され、その補欠として神取忍君及び長谷川大紋君が選任されました。     ─────────────
  203. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  204. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  本改正案に反対立場意見を申し上げます。  長きにわたって置き去りにされ、あるいは証拠の一つや取材源としてしか扱われてこなかった被害者尊厳を尊重し、その心情を重んずることの具体化は重要な政治課題であり、繰り返し述べてきたとおり、我が党は七〇年代以来、その努力を重ねてまいりました。  とりわけ、被害者や御遺族の知りたいことを知ることができないという要求に対して、警察を始めとした捜査機関が、少年事件だから、少年法があるからといって拒絶してきた被害者対応が少年司法全体への不信感を広げてきたこと、一方で、少年事件においても、捜査機関とそれをうのみにした裁判所による人権侵害と冤罪事件が繰り返されてきたことの猛省を求めるものでございます。  改正案に反対する最も中心の理由は、被害者等の傍聴によって少年審判廷の機能が変質してしまうおそれが極めて強いからです。ある裁判官の、被害者の心はいやされ、その回復がなされなければならない、しかしながら、司法がかなえることのできる措置にはその公的な性格から限界があるとの法案反対の訴えを私たちは真摯に受け止め、徹底かつ慎重に審議を深めなければなりません。  少年手続は、少年の未熟さや可塑性にかんがみ、少年改善更生と再犯の防止を目的とし、健全育成理念としています。そのためには、少年少年司法全体を通じて主体的に参加して自己の意見を自由に表明できなければならず、そのかなめとなる審判廷は、閉ざされた少年の心に向き合い、少年が萎縮することなく審理に参加できる環境、受容的な雰囲気を確保することが不可欠です。  しかし、現実には、これまでの審判廷においても少年は一般に心を閉ざし、特に審判廷の緊張した場でなお萎縮しやすく、また言語的理解や表現力に劣る場合も多くあるため、自己の意見を十分に表明するのは困難であるというのが少年司法関係者の共通認識です。  法案は、被害者傍聴を許す要件として少年健全育成を妨げるおそれがないことを求める修正を経てもなお、被害者などの傍聴による少年の萎縮は否めないこと、当局及び修正案提案者が避けるとする萎縮とはどのような心身の状態をいうのかすらあいまいであり、裁判官による裁量的判断に歯止めが掛かっているとは言えないこと、裁判官審判廷で初めて少年と向き合う前に、その心身にどのような影響が起こり得るのかの判断が可能なのかなどの問題点からすれば、被害者心情に配慮するばかりに、被害者の要求があればこれを認める運用がなされかねません。にもかかわらず、対象少年の心理などについて科学的知見を踏まえた検討がなされたものとは言えません。  審判廷が狭く、少年に与える影響がより強くなること、取り返しの付かないトラブルのおそれを否定できないことへの防止策も全く不十分です。また、傍聴を十二歳未満の場合に認めない修正それ自体は当然ですが、なぜ十二歳かの科学的、合理的根拠は明らかでなく、少年、中でも十四歳未満の触法少年の萎縮の可能性は変わりません。  今回、閲覧、謄写の対象範囲を、法律記録少年心情、経歴など高度のプライバシーを含む部分についてまで拡大することは、少年の更生への影響から見て問題があります。  我が党は、少なくともこのような重大な問題点を有する本法案について、徹底かつ慎重な審議が必要であることを強く求めてまいりました。少年法をめぐっては度重なる改定が続き、その多くが強行採決され、それらの施行後の状況の検証も極めて不十分です。ところが、国民的合意がないまま、本委員会でまた趣旨説明当日の審議入り、参考人意見聴取当日の採決提案など、異例に異例を重ねる審議が行われ、審判廷の視察すら行わずにこうして採決の段階に至っていることに厳しく抗議をし、反対討論を終わります。
  205. 近藤正道

    近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。  今回、三会派提出の少年法の一部を改正する法律案に対する修正案及び修正案を除く原案について、反対立場で討論を行います。  今回の法改正は、被害者等への少年審判傍聴制度の新設、少年事件記録の閲覧、謄写の範囲の拡大などが主な内容です。  本法案により少年審判被害者傍聴すれば、精神的に未成熟で、社会的経験も乏しい少年が心理的に萎縮し、素直に事実関係説明を行ったり心情を語ったりすることが困難となるおそれがあります。また、調査官、付添人などがプライバシー保護の観点から、少年の資質、生育歴、養育環境などの要保護性に関する資料を出しにくくなり、裁判官が適切な処分選択することは困難となります。裁判官傍聴する被害者を意識して少年心情に配慮する発問をためらうようになり、審判の教育的、福祉的機能が後退するおそれもあります。さらには、傍聴で得られた情報が外部に流出する危険性、狭い審判廷内で被害者少年との間でトラブルが発生するおそれ、事件後間もない少年発言や態度により被害者が二次被害を受ける危険性等も指摘されました。  これらの懸念は、二〇〇〇年の法改正時に傍聴制度を認めない理由として政府・与党からも主張されていたものであります。今回の政府及び修正案提出者の答弁でも、残念ながら、これらの弊害について有効な防止策がないことはもちろん、新たな制度導入に伴う人的、物的手当てもないことが明らかとなりました。  三会派による修正案についても、少年の健全な育成を妨げることがないことを傍聴を認める要件として加えるなどの修正を行っておりますが、どこまで有効な歯止めとなるのか不明です。また、十二歳以上ということについては、その根拠も、触法少年刑事責任能力との関係も不明です。家庭裁判所被害者への審判状況説明義務も、傍聴制度との関係が不明確です。三年後見直し規定についても、その間の実施状況の調査、報告がなければ、事実に基づく冷静な議論は期待できません。被害者による少年審判傍聴制度がどのような影響を生むのか、拙速な修正ではなく、徹底的な委員会審議、検証を行う必要があったと考えます。  少年事件被害者についても権利保障が図られるべきです。この点については、少年法の教育的、福祉的機能を損なわない範囲で、二〇〇〇年の少年法改正において整備された諸制度被害者の皆さんに丁寧に知らせ、被害者の方が十分に活用できるように支援体制を整備することこそが求められているのではないでしょうか。被害者支援のすべてを刑事司法制度に持ち込むのは、被害者にとっても刑事司法制度にとっても望ましいことではありません。  政府案、修正案共に拙速のそしりを免れることはできず、傍聴制度は、これまで我が国の安全、安心を維持する上で極めて大きな役割を果たしてきた少年法の教育的、福祉的機能を損なうおそれを否定できないことから、社民党としては反対せざるを得ません。  以上、反対の討論といたします。  以上でございます。
  206. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  少年法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  207. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、千葉景子君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
  208. 千葉景子

    ○千葉景子君 私は、ただいま可決されました少年法の一部を改正する法律案に対し、民主党・新緑風会・国民新・日本、自由民主党・無所属の会及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     少年法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 犯罪被害者等尊厳にふさわしい処遇の保障という犯罪被害者等基本法基本理念を十分に尊重しつつ、今後とも少年の健全な育成という少年法目的が確実に達成されるよう努めること。  二 犯罪被害者等による少年審判傍聴は、審判に支障が生じない範囲で認められるものであることを踏まえ、少年が萎縮し率直な意見表明ができなくなることがないよう、広めの審判廷の使用、座席配置の工夫等適切な審判廷の在り方について検討の上周知すること。  三 犯罪被害者等が別室でモニターにより少年審判傍聴する方法については、犯罪被害者等からの要望等を勘案しつつその利点及び問題点を検証し、幅広い検討を行うこと。  四 犯罪被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大については、社会記録少年関係者のプライバシーに深くかかわる内容を含むものであるとして引き続きその対象から除外された趣旨を踏まえ、法律記録の閲覧又は謄写をさせることの相当性の判断をする場合においても、少年関係者のプライバシー保護に十分留意する旨周知すること。  五 犯罪被害者等による少年審判傍聴犯罪被害者等への少年審判状況説明の適切かつ円滑な実施等のために、家庭裁判所がその責務を十分に担えるよう、家庭裁判所調査官裁判所書記官等の増員、広い審判廷の確保その他の必要な人的・物的体制の整備・拡充に努めること。  六 少年審判手続における犯罪被害者等への配慮に関する制度の在り方についての検討に資するため、関係省庁は、国会に対し、本法に基づく犯罪被害者等による審判傍聴記録の閲覧・謄写、犯罪被害者等への審判状況説明等の実施状況等について、適時、積極的に情報提供をすること。  七 犯罪被害者等基本法基本理念を踏まえ、犯罪被害者等権利利益の一層の保護を図るため、関係機関は連携して、幅広い分野における支援・救済措置の充実に努めること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  209. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  210. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 全会一致と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、鳩山法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。鳩山法務大臣
  211. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) ただいま可決されました少年法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。  また、最高裁判所にかかわる附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと思いますが、問題は、とりわけ附帯決議の第五番目であろうと思っております。  三権分立ということはよく分かっておりますが、裁判所の様々な機能調査官、書記官の増員、審判廷の確保等を考えますと、これは予算の要ることでございまして、予算の議決権はここにおられる国会議員の皆様方がお持ちでありますので、そのことを最高裁判所が重く受け止めるようによく伝えたいと思います。
  212. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  213. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十一分散会