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2008-06-05 第169回国会 参議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年六月五日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月三日     辞任         補欠選任         白  眞勲君     神本美恵子君      西田 昌司君     舛添 要一君      南野知惠子君     山崎 正昭君      近藤 正道君     福島みずほ君  六月四日     辞任         補欠選任         神本美恵子君     鈴木  寛君      長谷川大紋君     青木 幹雄君      浜四津敏子君     木庭健太郎君      福島みずほ君     近藤 正道君  六月五日     辞任         補欠選任         鈴木  寛君     柳田  稔君      舛添 要一君     椎名 一保君      近藤 正道君     福島みずほ君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         遠山 清彦君     理 事                 千葉 景子君                 松岡  徹君                 山内 俊夫君                 木庭健太郎君     委 員                 小川 敏夫君                 今野  東君                 前川 清成君                 松浦 大悟君                 松野 信夫君                 柳田  稔君                 青木 幹雄君                 岡田 直樹君                 椎名 一保君                 丸山 和也君                 山崎 正昭君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    衆議院議員        修正案提出者   倉田 雅年君        修正案提出者   細川 律夫君        修正案提出者   大口 善徳君    国務大臣        法務大臣     鳩山 邦夫君    副大臣        法務大臣    河井 克行君    大臣政務官        法務大臣政務官  古川 禎久君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局家庭局長   二本松利忠君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 一夫君    政府参考人        警察庁長官官房        長        米村 敏朗君        警察庁刑事局長  米田  壯君        法務省民事局長  倉吉  敬君        法務省刑事局長  大野恒太郎君        法務省矯正局長  梶木  壽君        法務省保護局長  西川 克行君        法務省人権擁護        局長       富田 善範君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○少年法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日までに、白眞勲君、西田昌司君、南野知惠子君、浜四津敏子君及び長谷川大紋君が委員辞任され、その補欠として柳田稔君、舛添要一君、山崎正昭君、木庭健太郎君及び青木幹雄君が選任をされました。     ─────────────
  3. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事木庭健太郎君を指名いたします。     ─────────────
  5. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  少年法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会警察庁長官官房長米村敏朗君、警察庁刑事局長米田壯君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省矯正局長梶木壽君、法務省保護局長西川克行君及び法務省人権擁護局長富田善範君を政府参考人として出席を求め、その説明聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 少年法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明聴取いたします。鳩山法務大臣
  8. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) この度、政府から提出しました少年法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  少年審判手続において、被害者やその遺族の方々への配慮を充実させることは極めて重要であり、これまでも様々な取組が行われてきましたが、多くの被害者等にとって、その被害から回復して平穏な生活に戻るためには依然として様々な困難があることが指摘されています。  このような現状を踏まえ、平成十六年には犯罪被害者等のための施策基本理念等を定めた犯罪被害者等基本法が成立し、これを受けて平成十七年に閣議決定された犯罪被害者等基本計画には、法務省において、平成十二年に改正された少年法のいわゆる五年後見直しの検討において、少年審判傍聴の可否を含め、犯罪被害者等意見、要望を踏まえた検討を行い、その結論に従った施策を実施することが掲げられております。  また、少年法第三十七条第一項に掲げる成人刑事事件により適切に対処するため、その裁判権家庭裁判所から地方裁判所等に移管することが必要であるとの指摘がかねてからなされております。  そこで、この法律案は、犯罪被害者等基本法等を踏まえ、少年審判における犯罪被害者等権利利益の一層の保護等を図るため、少年法改正し、所要法整備を行おうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げます。  第一は、被害者等による少年審判傍聴を許すことができる制度を創設するものです。  すなわち、家庭裁判所は、殺人事件等一定重大事件被害者等から、審判期日における審判傍聴申出がある場合において、少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その申出をした者に対し、これを傍聴することを許すことができるとしております。  第二は、被害者等による記録閲覧及び謄写範囲を拡大するものです。  すなわち、少年保護事件被害者等には、原則として、記録閲覧又は謄写を認めることとするとともに、閲覧又は謄写対象記録範囲を拡大し、非行事実に係る部分以外の一定記録についてもその対象とすることとしております。  第三は、被害者等申出による意見聴取対象者を拡大し、被害者心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹をもその対象者とするものです。  第四は、成人刑事事件に関し、少年法第三十七条一項に掲げる罪に係る第一審の裁判権家庭裁判所から地方裁判所等に移管するとともに、家庭裁判所少年保護事件の調査又は審判により同項に掲げる事件を発見したときの通知義務について規定した同法第三十八条を削除するものです。  このほか、所要規定整備を行うこととしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第ですが、衆議院において修正が行われております。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。  以上です。
  9. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員大口善徳君から説明聴取いたします。大口善徳君。
  10. 大口善徳

    衆議院議員大口善徳君) ただいま議題となりました少年法の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正部分につきまして、その趣旨及び内容を御説明いたします。  政府提出法律案は、平成十六年に犯罪被害者等基本法議員立法として全会一致により成立したことなどを踏まえ、少年審判における犯罪被害者等権利利益の一層の保護を図るための法整備を行うものです。  衆議院会議及び法務委員会における政府案に対する質疑全体を通じて、少年健全育成を図るという少年審判目的を損なうことなく、いかなる形で犯罪被害者等権利利益の実現を図ることができるかということが各党一致した問題意識であったかと思われます。そこで、このような共通認識を基盤として、衆議院において修正を行うこととした次第であります。  次に、修正部分内容について申し上げます。  第一に、被害者等による少年審判傍聴要件及び手続について、次の三項目の修正を行うこととしております。  その一は、少年の健全な育成を妨げるおそれがないことを判断基準として明示することとしております。  その二は、傍聴する被害者等の座席の位置、職員の配置などを定めるに当たって、少年心身に及ぼす影響に配慮することとしております。  その三は、被害者等傍聴を許す際に、弁護士である付添人意見を聴くこと、加えて、意見を聴く際に弁護士である付添人がないときは、少年及び保護者弁護士である付添人を必要としない旨の意思を明示したときを除き、弁護士である付添人を付さなければならないものとすることとしております。  第二に、触法少年に係る事件傍聴について、特別の規定を設けております。すなわち、十二歳未満の少年に係る事件傍聴対象から除外するとともに、十二歳以上の触法少年については、傍聴を許すか否かを判断するに当たり、一般に、精神的に特に未成熟であることを十分考慮することとしております。  第三に、家庭裁判所による被害者等に対する審判状況説明について規定を設けております。  最後に、この法律施行後三年を経過した場合における、被害者等による少年審判傍聴に関する規定などの施行状況についての検討規定を設けております。  以上が本法律案に対する衆議院における修正部分趣旨及び内容であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたしたいと思います。  以上です。
  11. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分説明聴取は終了いたしました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 千葉景子

    千葉景子君 おはようございます。民主党の千葉景子でございます。  今日は少年法質疑をさせていただくということになりますが、それに先立ちまして何点かお聞かせをいただきたいことがございますので、お許しをいただきたいというふうに思います。  その第一点は、昨日、大変画期的な最高裁判決が出されました。私は、大変感慨深いものがございますとともに、最高裁もなかなか捨てたものじゃないと、こういう感を強く覚えるものでもございます。どういうことかはもう報道等がされておりますので多くを申し上げることはないかと思いますけれども、いわゆる日本人の男性とそして外国人女性との間に生まれたお子さん国籍取得に関する最高裁判例ということになります。これを、いわゆる婚姻関係要件とすることが、憲法の第十四条、平等原則違反をすると大変明快に判断を下されました。少年法子供さんにかかわる大変重要な法案でございますけれども、やはり子供たち国籍を、本当に納得できる国籍を持つことができずにこの間過ごしてきた、そういうことを考えますときには、本当にこの最高裁判断というのがこれから私たちにも大変大きな考え方を突き付けているのではないだろうか、こう感じているところでございます。  この判決理由も、本当はもう全部御紹介をしたいような気がいたしますけれども大変示唆に富む、そしてまた、今の日本社会のありよう、こういうものを的確につかんだ大変中身の深いものであろうかというふうに思っております。  この国籍法が確かに作られた当時は、憲法違反する、こういうものではなくて、合理的な理由もあったのだろうと。しかし、その後の我が国における社会的、経済的環境等の変化、こういうことの中で、夫婦共同生活在り方を含む家庭生活親子関係に関する意識も大きく変わってきている、こういうことも指摘をいたしております。  そして、とりわけ国際化が進む中で、両親の一方が日本国民である場合あるいはそうでない場合、違う場合には、より一層複雑なあるいは多様な、こういう人間関係があるのだということを指摘をしているところでございまして、こういうことを考えますと、最高裁判決が示しているこの指摘は、今回の国籍法の問題のみならず、今いろいろと議論をされております家族をめぐる様々な法制度在り方、あるいは国籍をめぐる法律制度在り方、こういうものをやはりもう一度私たちが根本から見直していかなければいけないのだということを示しているのではないだろうか、こう感じているところでございます。  そういう意味では、私は、この最高裁判決、これが日本社会のある意味ではこれからの大きな分岐点になっていく、そんな歴史的なひょっとしたら判決になるかもしれないな、これぐらいの感じで受け止めさせていただいているわけですけれども、少なくとも、この間本当に数多くの子供たちが悲しみ、悩み、そして苦しみ、そうしてきた国籍取得についてこういう最高裁判断が出たということを受けて、まずはこの国籍取得について早急に私は法的な措置をする、法的な改正も含めて、これは国会もそれから政府としても取り組んでいく必要があるのではないだろうかというふうに思っています。  極端なことを申し上げれば、まだこの国会は会期が残されております。そういう意味では、これだけ子供たちに本当に明るい希望を与えた判断があるとすれば、この国会中に国籍取得について、ここだけでもみんなで法改正あるいは取得ができる条件を整えようと、これくらいの私たちには覚悟があってもよろしいぐらいではないかというふうに思っております。  是非、私どももこの問題について、できるだけ早くこの国会にも、そして多くの皆さんにもこうすべしという提言を是非させていただきたいというふうに思っておりますけれども、どうでしょうか、大臣。昨日のこれは判決でございますので、まだどのようなお考えをおまとめかどうかはちょっと分かりませんけれども、ただ、やはりこれだけの重みのある最高裁判決ということでございますので、これを受けてどのようにまず受け止められたか、そしてこれからどんなふうに対応を取られていこうと今考えておられるのか、率直な大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 昨日の最高裁判決は非常にありとあらゆる意味で衝撃的であったことは間違いないと思いますし、今、千葉先生からお話のあった内容について、私は特に異議を挟むものではありませんし、共通認識も幅広く存在をしていると思うわけでございます。  最高裁判決でございますから、私がそれを論評、批判するということはこれは全くあり得ないことでございまして、ただ、国の主張としては、これが退けられた形になって、国籍法第三条が憲法違反であるとされた点については、とにかくこれを厳粛に受け止めなければならないと思っております。  今後の対応でございますけれども、これはもちろん、最高裁というのは司法判断最高部分のものをされるところでありますが、裁判所立法機関ではありません。したがって、今後、法改正をするということであれば、それはまさしく、提案議員立法であるか政府提案があるかは別として、国会がお決めになることでございまして、国会立法がどうなるかということだろうと思っておりますが、法務省といたしましては、判決内容をこれから更に十分に吟味をいたしますが、基本的には国籍法第三条は改正する方向検討、対処していかなければならないと考えております。  最高裁判決の中で、国籍法改正することによって、我が国との密接な結び付きの指標となるべき他の要件を設けることは、それが立法目的との間に合理的関連性を有するものであれば許されるとされる補足意見が付けられておりまして、その要件の例として、日本国民である父が出生後に認知したことに加えて、出生地本邦内であることや、本邦内において一定期間居住していることなどが挙げられているわけでございます。  もちろんこれは補足意見にすぎないわけでありますが、これから国会で実際に立法作業が、あるいは、立法というのは国会がするものですから、立法される場合においてこうした事柄がまた配慮されるのかどうか、今私が予測できることではありません。  ただ、いずれにいたしましても、千葉景子先生に対して私が胸を張って申し上げられることは、民法七百七十二条問題を含めて、親の事情子供が強い影響を受ける、罪のないお子さんが親の事情によって不利益を被る、あるいは立場が不明確になるということがないようにという、これは戸籍国籍を扱う法務省として、法務大臣として基本の精神として持っていなければならないと考えております。
  14. 千葉景子

    千葉景子君 大臣からも、やはりこれに対応できるような方向検討しなければいけないというお言葉でございました。それについては多分私ども共通の思いでございますので、是非早い解決の道をつくってまいりたい、立法機関としての責任であるとも認識をいたしております。  今、大臣からちょっとお言葉がございました。これに関連するということではありませんけれども、その民法七百七十二条に絡んで、戸籍の、これもないお子さんが今たくさんいらっしゃいます。それだけではなくして、つい先般、その戸籍のないお母さんからお子さんが誕生されて、そうするとまた戸籍を持つことができないという事態が生じていること、これも皆さんが御承知のところでございます。  いろいろとこの部分も法的な問題はございますけれども、やはり今大臣がおっしゃったように、生まれてきたお子さんには本当に責任がない、しかし戸籍を持つことができない。そうなりますと、本当にいろんな部分不利益やあるいは大変な事態を背負わなければいけないと、こういう状況でございます。  何とかこれも一刻も早く対処方を考えていかなければいけない。立法での措置も必要だというふうに思いますけれども、まず緊急にも何らかの対応を取っていく必要があるのかなというふうに思いますけれども、その点について大臣大変心を痛めておられるというふうに伺っております。今、どんなふうにこの問題について対応を取られようと考えておられるのか、お知らせをいただきたいと思います。
  15. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) まず、一般的な七百七十二条問題、三百日規定でございますけれども、今お隣におられる大口先生が大勢のそういう悩みを抱えた方々大臣室にお連れいただいて、一時間にわたってそれぞれのお母さんから話を聞かせていただきました。それによると、それぞれなかなか厳しい。例えばドメスティック・バイオレンスであるとか、あるいは署名して預けておいた離婚届が出されていたと思ったら出されていなかったとか、あるいは裁判所の反応も若干違って、強制認知というやり方あるいは親子関係存在の訴えの在り方等、扱いも裁判所によって若干違うとかいろんなお話を聞かせていただいて、これは何とかしなくちゃならないと。  ただこれは、実は与党間で協議している事柄でもあり、少なくとも私は、自民党の政調会長に対しては公明党の政調会長との話合いをどんどん進めていただきたいと、党内にもいろんな意見があるけれどもどんどん進めていただきたいというお願いをしております。恐らく大口先生も同じだろうと思います。そして、こういう問題は与党だけで決めることではありませんから、当然与野党で協議をしていただいて、どういう方法が一番いいのか、これは考えていただきたいというふうに思っておりまして、法務省が単独で判断できることというよりは、私は政党間でどんどん話合いを進めていただきたいという気持ちであります。  今、千葉先生指摘の、無戸籍の二十七歳の女性お子さんをお産みになった件でございますけれども、これは先ほどから何度も申し上げておりますように、生まれてきたお子さんの福祉の観点から、何らかの方法戸籍に記載することができるように、これは民事局長には何度も何度も、優しく優しく対応するように厳しく指示をしております。ですから必ずやってくれると思いますが、ただ民事局話合いをいたしますと、いろんな方法がある、幾つか方法があるけれども、それをどれをお選びになるかという問題があるので、それはプライバシーに明らかにわたってまいりますので、その点については私から答弁することはできないという部分がありますが、結果としていい形になるように、私は民事局長に本当に厳しく伝えてはございます。
  16. 千葉景子

    千葉景子君 大臣の多分今のお言葉の裏に、必ずいい形にするという御決意が込められているものと受け止めさせていただいて、どうぞよろしくお願いをしたいというふうに思っております。  済みません、もう一点、別件でお聞かせをいただくことにしたいと思います。それは、今ちょうど中央更生保護審査会についての人事がいろいろと議論をされております。この中央更生保護審査会というのは恩赦決定をする、こういう機関でございます。そういう役割を負っている機関でございます。なかなか余り目立たない地味なところでございますので、一体どういう方がこういう議論を、あるいは恩赦についての決定審議をしていただくのがいいのかということを私はこの際改めて検討してみたらいいのではないかというふうに思っております。  というのは、これまではやはり裁判官とかあるいは検察官とかの御出身の方というのがかなり多く任に就かれておられました。でも、考えてみますと、片方でこの被告人にはこのくらいのやっぱり重い刑罰が必要だと求刑をする検察、それから、それに基づいてこのくらいのやっぱり刑罰を科さなければならないと判断した裁判所、そういう皆さんが逆に今度はそれを一部否定をして軽くすると、こういうところに就くというのは矛盾といえばある意味では矛盾でもあるわけですね。だから、全部駄目だとは私も申しませんけれども、やはり、社会にどうやって復帰していくのか、もうこれなら社会の中で生活をするということが十分に考え得るんだと、こういうような観点審議をしていただくわけですので、かなり幅広い社会のいろんな分野の皆さんに加わっていただいて、そして審査をするということは大変私は有意義なことではないかというふうに思っております。  そういう意味で、何か過去の例を見ますと、作家の方とかあるいは動物園の園長さんであるとか、非常に多様な方が加わって審査をしていたという経過もあるようでございます。そういう意味では、この辺りも、これまでなかなか私どもも気付かない部分もありましたけれども、是非こういうところも、開かれた、そしてやっぱり多くの皆さんが加わるような審査ということを考えていったらよいのではないかというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  17. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 今、千葉先生から、中央更生保護審査会委員長委員、もちろん常勤委員もいるわけでございますけれども、幅広く人材を募って選択をすべきである、それがより広く国民の視点が反映できて恩赦決定によりいい影響が出るだろうというそのお話につきましては全くそのとおりでございまして、誠に傾聴すべきお話であり、さすが千葉先生だなとつくづく思うわけでございます。  ただ、ただ一つだけ申し上げたいことは、したがって幅広く人材を募るということは全く正しいのでございますが、私も月に一遍、ほとんど復権でございますが、恩赦の報告を受けるわけでございます。これが閣議決定されるわけでございますが、やはりなかなか難しい問題もあると。つまり、専門的な知識を持って刑事司法について明るい方、そういう方々も中には必要なんだろうというふうに思うわけでございます。  ですから、裁判員制度で、我が国では裁判員が多数の六人であるが、裁判官三人との合議をするということと同じように、中にはそういう専門家もいなければいけないんだろうと。ただ、今後の委員の構成等はより広く国民意見が反映されるような、そういう中更審、中央更生保護審査会在り方について、具体的かつ真剣に検討してまいりたいと思います。
  18. 千葉景子

    千葉景子君 ありがとうございました。  それでは本題に入りたいというふうに思います。  今回の少年法改正と申しますのは、大きな流れといたしましては、犯罪被害者皆さんの言わば保護や救済、こういうことをより一層進めていこうという流れの中で審議をされているものだというふうに言われております。私ども民主党も、犯罪被害者皆さんの救済やあるいは支援、こういうことには積極的に取り組んでいかなければいけない、こう考えております。  犯罪被害者基本法、この制定も議員立法でなされたものでございますけれども、その際も私どももその議論に、そして案をまとめさせていただいて、この議員立法の策定に私たちも大きく寄与させていただいたものだと自負をいたしているところでございます。この犯罪被害者基本法、それに基づきまして基本計画が作られて、そしてその下で様々な被害者保護・救済の施策が進められてきているというふうに私は承知をいたしております。  ただ、この犯罪被害者基本法、それから基本計画、それぞれ大変幅広い問題を指摘をいたしておりまして、例えば損害回復、経済的支援等への取組、あるいは精神的、身体的被害の回復、防止への取組、もちろん刑事手続への関与というものも指摘をしているところでもございますし、それから支援等のための体制の整備、そして国民の理解の増進、こういう問題などを重点に指摘をいたしております。  こういう施策が、この間、政府の中でも進められてきているというふうに思いますけれども、どうでしょうか、大臣として、この被害者支援、こういうことがこの間十分に行われてきたというふうに御認識でしょうか。それとも、いやいや、まだまだこれからもやっていかなきゃいけないことがたくさんあるなというふうに感じておられるでしょうか。その辺の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
  19. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 千葉先生の御質問の最後の部分で申し上げれば、後者の方だと思います。まだまだこれからやらなければいけないことが山ほどあるんではないかと。  私は、いつも申し上げることでございますが、犯罪のない社会あるいは凶悪犯罪が少ない、そういう社会をつくることが国民共通の目標ではありますけれども、現実にはそう簡単にそうなるわけではないわけでありまして犯罪が起きると。刑事司法制度というものがあって、それはいろいろな仕組みがあるわけでありましょうが、そうした中で一番お気の毒なのは、被害者あるいは最愛の家族を失ったという場合の遺族の方々なんだろうと思います。そうした被害者被害者遺族に対する手当てというものが今まで余りにも不十分であったということの中から、先生お話しのような犯罪被害者等基本法平成十六年に、そして基本計画が平成十七年に成立をしたと。  そして、我々がタッチする一種の閣僚会議として犯罪被害者等施策推進会議というのがございまして、時々開かれております。これは官房長官が会長を務める会でございまして、総務大臣法務大臣、厚労大臣、国土交通大臣、国家公安委員長、あと有識者なんです。私もこの会議へ出たときにつくづく思いましたのは、法務省で管轄していることあるいは法務省でできることというのはほんの一部なんだと。  つまり、犯罪とか裁判とか、そういうことについては一生懸命努力している法務省だとは自負いたしておりますが、実際、犯罪被害者の尊厳を守り、これを救済すると、まして今千葉先生がおっしゃったような、例えば損害回復、経済的支援、精神的なサポートあるいは身体的なサポートということになりますと、これはむしろ他省庁にやってもらわなければならないことが山ほどあるというふうに思います。  私は中身を全部承知してはおりませんが、この少年法改正衆議院における審議参考人から様々な意見を聴いたようでありますが、やっぱり被害者はまだ置き去りにされているよという、そういう感覚は世の中一般にかなりあると思います。そういう意味では、我々がやっていることがまだまだ不足なんだと、これからもっともっとやらなくちゃいけないんだと、こういう認識でございます。
  20. 千葉景子

    千葉景子君 同じことをお聞きをするわけですけれども修正案の提出者の方にもお聞かせをいただきたいと思います。  やはり、この間、犯罪被害者に対する支援等の施策が講じられてまいりましたけれども、本当にそれが十分行われてきたのだろうか、今回は、そういう一環というふうに位置付けられてこの少年審判への傍聴という問題も出てきているわけですけれども。  さて、この少年審判への傍聴ということを実現することによって、その被害者の救済ということに本当に十分寄与するのだろうか。私もいささか、それだけでとても寄与できるものではないという認識は持っているんですけれども、この修正案の提案者としてはどんなふうに認識をなさっておられるでしょうか。
  21. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 民主党の衆議院議員の細川律夫でございます。修正案を提案をいたしました一人としてお答えをしたいというふうに思います。  犯罪被害者基本法に、その基本理念として、すべての犯罪被害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有すと、こういう規定がありまして、基本理念をうたっております。そして、犯罪被害者の支援のためにはいろいろな施策、とりわけ司法への参加などもこれまで取り組まれてきておりますけれども衆議院参考人意見聴取のときにもありましたけれども、何物にも代えられない命が奪われた、そういうような事件で真実を知りたいと、こういうときに、それが知ることができないということの苦痛を、心情を吐露されておられました。そういうことを考えますと、少年審判での傍聴というのは、この被害者基本法の理念の一助にはなるかというふうには思いますけれども、しかし、私ども認識としてはまだまだ犯罪被害者皆さんへの支援というのは不十分だというふうに考えております。
  22. 千葉景子

    千葉景子君 私も、少年審判への参加ということで何か事が済むような認識を持つことなくして、むしろ先ほど、この基本計画などで示されている多様な支援、そして保護、こういうことをより一層幅広くやっていくことがまず大事なんだろうというふうに思っております。  さて、今回はその一つの一場面ではあろうと思いますけれども少年審判への傍聴ということでございます。ただ、これは、少年審判というのも基本的には立て方が、少年についてこれからどういう対処をしていったらいいのかということを定め、あるいは審理をする、そういう場面でございますので、やっぱりその基本的な理念というのは忘れてはならないだろうというふうに思います。  そういう意味で、まずその原則でございますけれども、この少年審判、この基本的な理念というものはどういうところにあるのか、まず確認をさせていただきたいというふうに思います。
  23. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 全く千葉先生のおっしゃるとおりですが、私は衆議院委員会のときにも、実は自らの恥をさらしたというか、自分で告白をしたんですが、私は少年法というものを、国会議員になってからは知っておりますが、国会議員になる前は、少年法というのは、いわゆる少年審判について、保護処分等について書かれているだけでなくて、もっと幅広く、まあ文科省的部分あるいは厚労省的部分というのでしょうか、義務教育については当然別だろうと思いますが、もっと少年について一般的に書かれているものかと実は思っておりました。国会議員になって少年法というのが、要するに刑事裁判ではなくて少年審判について書かれているものだということを知ったときに、ああ、なるほど、少年というのはやっぱりそこまで特別な目を持って教育的な部分を含めて性格の矯正等をしなければならないものかと、ある種の感銘を覚えたわけでございます。  したがいまして、第一条の、「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」となっております。ですから、どんなことがあっても、このことは、この目的部分が害されることがあってはならないということは私よく分かっております。  ただ、残念ながら、少年が犯罪、非行を犯した場合の事柄でございますから、そこには被害者というものが存在をする。被害者被害者の遺族にしてみれば、加害者の年齢が成人であろうとあるいは十六歳であろうと十四歳であろうと十二歳であろうと十一歳であろうと、その部分についてはほとんど変わらないという点がある。  そして、先ほど千葉先生から御指摘があり、私からも細川先生からもお答えを申し上げましたように、犯罪被害者に対する、物すごく大きく言ってしまえば、扱いというものが今まで丁寧ではなかった、その尊厳の重視という点でも足りなかったということで、犯罪の被害者にもっと視点を移して物事を考え直してみる必要があるという中において、この少年審判傍聴という改正案を提出したわけでございますので、そのバランスというのはなかなか難しいところがあるということは十分認識しながら、少年法第一条の目的を侵すことがないようにこれからも対処していかなければならないと思っております。
  24. 千葉景子

    千葉景子君 さて、今回の傍聴につきましては、その言わば傍聴可能な審判要件が記されております。傍聴可能な対象犯罪、それをある意味では絞っておりますとともに、傷害を受けた場合、生命に重大な危険が生じた場合と、こういう規定になっているわけでございます。  さて、この生命に重大な危険というのはどういう場合であろうか。そして、それは結局は、傍聴を申し出る側が言わば立証といいましょうか説明をしなければいけないということになるのではないかというふうに思うんですけれども、そうなりますと、被害を受け、そして生命に重大な危険が逆にあるという状況ですから、そういうときに、また、いや、実はこれこれしかじか、こういう診断書で、こういうことをその被害者に強いるとなると、それによる過度の負担あるいは二次的なまた心の傷ということにもなりかねないわけですけれども、この点についてはどのような扱いがなされるのでしょうか、法務省にお聞かせいただきたいと思います。
  25. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 生命に重大な危険を生じさせたときの意義でございますけれども、傷害の程度に様々なものがある中で、被害者の生命に重大な危険が生じた場合といいますのは、被害者が死亡した場合に準じる場合であります。  もう少し具体的に申し上げますと、医療措置を施しても被害者が死に至るような蓋然性が極めて高い状態であったことを意味するわけであります。例えば、危篤状態に陥った場合これに当たりますし、また自発呼吸が停止するなどして人工呼吸器等を欠かせない状態になり、医療措置をやめれば直ちに死亡すると考えられるような場合、これは一般に、死亡に至る蓋然性が極めて高かったということで、生命に重大な危険を生じさせたときに該当するというふうに考えられるわけであります。  その要件をどういう形で裁判所判断してもらうかということでありますけれども裁判所がこの要件に当たると認めなければ傍聴は認められないことになるわけであります。  この傷害の程度なんでありますけれども少年審判における非行事実あるいは情状に関する大変重要な事情であります。したがいまして、少年審判の中で、こうした点につきましては、通例、医師の診断書や関係者の供述調書、写真撮影報告書等の証拠により認定されるものでありますし、さらにさかのぼって申し上げるならば、捜査段階においても、こうした資料、証拠の収集に努められるのが通常であります。  したがいまして、裁判所は、こうした証拠によりまして被害者に、生命に重大な危険を生じさせたかどうかという判断ができると考えられますので、被害者に言わばその疎明のために過大な負担を負わせるということにはならないというように考えております。
  26. 千葉景子

    千葉景子君 さて、今回のこの法案、修正案におきまして、被害者少年審判傍聴を許す場合については、弁護士付添人意見を求めるという規定修正で加えられました。この付添人意見を聴くことにした理由を、まず修正案の提案者に趣旨を御説明いただきたいと思います。
  27. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) この傍聴を認めるということは、非公開の少年審判、言わば例外を付けると、こういうことでありますから、そのことが少年の健全な育成を阻害する、悪いことになってはいけないと。そういうことから、傍聴を許すかどうかについては、これはもちろん裁判官は、個々の事件についていろんな事情を考慮して相当というような判断をするわけでありますけれども、しかしその判断の言わば材料といいますか、そのことに専門の弁護士である付添人を付けて、そしてその意見を聴き、それを参考にしながらより適正な判断をしてもらうべきだと。こういうことで、付添人がいる場合には付添人意見を聴く、いない場合には付添人を付けてそして意見を聴くと、こういうことに修正をしたわけでございます。
  28. 千葉景子

    千葉景子君 この付添人ですけれども少年及び保護者がこれを必要としないと、こういう旨の意見を明示したときは、弁護士付添人を付さなくてもよいということになっております。  これは、とかく弁護士なんか付けたらより印象が悪くなるんじゃないかとか、あるいは子供はなかなかその辺がよく分からない、しかし親が、そんなもの金も掛かるし、そんなものとんでもないみたいな、そういう意識であったりして、本意ではなく、弁護人は、付添人は要らないよなどと言うこともあり得るんじゃないかというふうに思います。  そういう意味で、必要としない旨を明示したときは付さないということにした理由と、それから明示をする、どういう形でこれは確認をすることになるのでしょうか。その辺は、提案者はどのようなことを想定をされておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  29. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 少年及び保護者付添人は必要ないと明示をした場合にはこれは付けなくてもいいと、こういう修正になったわけなんですけれども、この修正での付添人を付けるというのは、まず付添人少年に付いている場合はこれは問題ない、しかし付いていない場合に、これは法律できちんと国選の弁護士付添人を付けると、こういうまず形にしたわけなんです。  そのときに、少年保護者の方があえて、あえて付添人は要らないと、こういうふうに主張をしたときにまで付けるかどうかと、こういうことについて、そこまでは必要ないんではないかというふうに判断をいたしました。というのも、検察官が付く少年審判の場合には、これは検察官の方が事実なんかについていろいろ主張もされ、資料なども出される等いろいろあると思う。それに対しては、それに対抗するような形で法律で必要的に付添人を付けると、こういうことになっておりますけれども、しかし、この傍聴については法廷の中でただ傍聴するだけというようなことでもございますから、あえて御本人が、少年保護者が拒否される場合には必要ないというふうに判断をいたしました。  そして、もう一つの質問の明示の場合ですけれども、この明示については私ども考えておりますのは、これはもう最高裁判所の規則できちっとその点については定めていただくと、こういうことにしております。ただ、私どもこの修正提案者としましては、裁判所の方がこういう制度があるんだということを十分に説明をして、そして、その選任をすることが被告にとっても別に不利になるんではないんだというようなことも丁寧に説明をしていただければと、そういうことも期待をいたしております。
  30. 千葉景子

    千葉景子君 これは多分、最高裁判所の規則等で定められるものではないかと思いますけれども、やはり本当にきちっとした意思確認ができるようなことを是非期待をしたいというふうに思います。  さて、もう一点、今回のこの修正では、家庭裁判所被害者等に対して審判状況説明すると、こういう制度を、これも導入するということが加わりました。  そこで、まずちょっとお伺いをしておきたいというふうに思いますけれども、現在、裁判所被害者に対してどんなような対応を取っておられるのか、制度上あるいは実務上どんな説明やらあるいは対応を取るような形になっているのか、裁判所の方に御説明をいただきたいと思います。
  31. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  現行少年法におきまして、被害者方々への配慮の制度として、被害者等申出によります記録閲覧謄写審判結果の通知及び意見聴取という三つの制度がありますが、裁判所ではこれらの三つの制度をそれぞれの制度趣旨にのっとって適切に運用するとともに、その周知にも努めてきたところでございます。  以上でございます。
  32. 千葉景子

    千葉景子君 何となくそっけない御答弁で、これを聞くと、やっぱり余り被害者の方も十分に、どんな審判が行われているのか、こういうことを知らないままにいるんだろうなということが何か推測されるような感じがいたしますけれども。  今回、こういう一定制度はございます。しかし、さらに十分に説明をすべしと、こういう規定修正で盛り込んだ趣旨をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  33. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) この修正をいたしましたのは、傍聴が今度この制度で認められるということになりますけれども、しかし傍聴が拒否されるというか許可されない場合もありますし、また被害者あるいは遺族には、傍聴したいと思っても、あるいは真実を知りたいと思っても、加害少年と会うのがどうもできないというようなことで傍聴しない場合もあるわけですね。そういう方々にも審判状況裁判所の方から説明をするということ、希望があればですけれども、希望があれば説明をしてやると、こういうことが犯罪被害者皆さんにとっていいことだというふうに判断をしてこの修正を作ったわけでございます。
  34. 千葉景子

    千葉景子君 被害者の方にとっても、傍聴することによって逆に大変心が痛むような場合もあると思います。そういう意味では、やはり傍聴ということだけではなくして、むしろ十分な状況説明などが受けられると、そういうことが大変大事だろうと、この修正、大変意味のあるものだというふうに思っております。  これ、裁判所が行うということになっておりますけれども、実際には裁判所のどういう人がこの説明等に当たるというふうに提案者としては想定をされておられますでしょうか。
  35. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) この裁判所からの被害者や遺族などへの説明ということにつきましては、これは最高裁判所の規則でどのようにするかは規定をしていただくというふうになっております。  審判廷で入っておられた裁判所の方といいますと、書記官あるいは調査官、あるいはまた裁判官もありますけれども、そういう方に説明をしていただくということで、裁判官はいろいろお忙しいというようなこともあろうかとも思いますけれども、書記官あるいは調査官の方から丁寧な説明をする、これは我々はそのように考えておりますけれども最高裁の規則でそのことはお決めいただくと、こういうことになっております。
  36. 千葉景子

    千葉景子君 私も、やはり基本的にはいろいろな事前調査などをされている調査官が十分に説明をされるというようなことが期待をされるのだろうというふうに思います。  そうなりますと、今回の傍聴あるいはこの説明、そういうことを含めて、裁判所の体制というのが大変重要になってこようかというふうに思います。調査官も、今でも大変少ないまだまだ人員で大変な任務、そして仕事をされている、大変負担が多いというふうに伺っております。それにプラスして、こういうまた、大臣もおっしゃったように、被害者皆さんに丁寧に、やっぱり痛みやあるいは思いをしっかりと耳を傾けるというようなことになりますと、やっぱりその人員あるいは質の充実、こういうことが求められてくるだろうというふうに思いますが、その点について、時間が限られてまいりましたので、多分修正案の提案者もそういうことを背景に出され、当然のことではございますけれども、と思っております。  裁判所の方に質問をいたしますけれども、こういう法律がもし成立をするということになりますと、その辺が大変重要なんです。その点についての御覚悟というか、あるいは方向性、お聞かせをいただきたいと思います。
  37. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  裁判所といたしましては、これまでにも家庭裁判所調査官及び裁判所書記官の体制の整備を図ってきたところでございますが、本法律案が成立、施行となった場合には、被害者等に対する説明につきましてもきちんと対応することができるよう、これまで整備してきました家庭裁判所の人的体制を活用するとともに、制度の運用状況を踏まえまして、必要に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。また、職員が被害者方々の置かれた状況やそのお気持ち、痛み等を理解するための研修などにつきましても、適切に行ってまいりたいと考えております。  以上でございます。
  38. 千葉景子

    千葉景子君 これまでの延長みたいな、それから一般的な、そういうことを言っているようでは、とてもではありませんけれども、この法の施行、私は大変心配を感じます。やはり、むしろこれまでの人員を言わば倍増すると、あるいは本当に精神的に痛みを分かるような、そういうためのいろいろ実務の研修をするとか、やはり具体的にもう目の前にこうやって法案が準備をされているわけですから、それくらいの本当に意識を持って取り組んでいただかなければ、私は、もう本当にこの法案が成立をしても全く中身が空っぽ、こういうものになってしまうのではないかと懸念をいたします。是非、最高裁にはその辺をしっかりと見極め、そして準備をしていただくことを求めておきたいというふうに思います。  最後に、最高裁、もう一点。今回の傍聴等になりますと、時間がありませんので簡単に言います、審判廷、これのやっぱり在り方というのも考えなければいけないということにもなるのではないかと思います。あるいは、傍聴の方と少年とのトラブルなどを防止すると、こういうことも考えなければなりません。その辺についての考え方だけお尋ねをして、終わりたいと思います。
  39. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) 被害者等による傍聴制度が導入された場合におきましても、少年少年保護者あるいは付添人等の関係者の座られる席は現在と同様となろうかと思いますが、被害者等の座られる位置等につきましては、例えば審判廷の後方の角辺りに座っていただき、そして少年等との距離も一定の距離を保つようにするなどして、少年に与える影響ができるだけ少ないような方向、方策を考えていきたいと思います。  いずれにしましても、今回の法律案に盛り込まれました少年の年齢あるいは少年心身の状態等も含めて、その点につきましては、傍聴を許可するかどうかについてはきちんと判断していきたいと考えております。  以上でございます。
  40. 千葉景子

    千葉景子君 終わります。
  41. 丸山和也

    ○丸山和也君 丸山でございます。  今回の少年法改正について主にお聞きするつもりだったんですが、千葉先生が、幸いというか不幸というか、いい機会に窓口を広げていただきましたもので、若干昨日の最高裁判決とかについても意見を述べさせて、お聞きしたいと思います。  昨日の判決は画期的な判決であると、これは私もそう思うんですが、正直言いまして非常に遅かったなという感じがしております。それで、理由の中で、かつてこの国籍法規定が、三条ですか、こういう制約があったのは当時としては相当な理由があったんだけれども、現在の状況下ではもう適合しなくなっているというふうに言っているんですけど、私はもう当初から、最初からこれはおかしいと思っていました。しかし、それがやっぱり、なかなか最高裁裁判所の方で勇気を持って見直すというか実情に即した判断をどうしてもためらってきたのが、ついにここまで来て、世論とかいろんな動きに押されて、また提訴した方々のマスコミでの活動とかに押されてついに認めたという形で、結構だったんですけど、非常に遅かったなと思っております。  そして、こういう規定は、やっぱりこの国籍法だけじゃなくて、まだ民法の中にも随所に残っているんではないかと私は思います。例えば民法、先ほど出ました七百七十二条の問題ありますし、それから相続に関する民法九百条ですか、嫡出と非嫡出で相続分、あるいは兄弟、親を一方を共通にするかどうかによって相続分を二分の一にすると、こういう規定はいわゆる戸籍主義からくる、実質的法の下の平等を奪っていると思うんですね。これは私はもうずっと何十年前から言っているんですけれども、なかなか、やっぱりかなりラジカル過ぎるのか、そういう意見が少数意見だということで認められてなかったんですが、私が三十年前から言っているのがやっと最高裁今ごろ気が付いてこう直してきたということですね。  いずれこの民法七百七十二条、それから民法九百条も、このままほっておけば憲法違反だという判決が出ることはまず間違いないと私は思っているんですね。そういう意味では、今後、最高裁が言わなくても民法規定改正に取り組むようなお考えがあるかどうか、もし民事局長、勇気があるならばお答えいただきたいと思いますけれども
  42. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 丸山委員に申し上げます。民事局長は今出席をしておりませんので。
  43. 丸山和也

    ○丸山和也君 ああそうか、法務大臣ですね。
  44. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 千葉先生にお答えをしておりますように、子供さんにとってみれば親の事情というのは元々全くあずかり知らぬところである、つまり子供というのは親を選んで生まれてくることはできないわけであります。そういう意味で、親の事情が子に反映をする、非常に不利な形で反映をすることがないようにというのは我々が持たなければならない基本的な思想だと思っております。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  最高裁が時代の変化というものを大胆に表現されたことに関して、今私は感銘も受けておりますが、多少のショックも受けております。というのは、やはり婚姻という制度とか、もちろん日本の戦前の家族制度などというものは私は毛頭頭に描いておりませんが、婚姻というものの意味が大幅に薄れてきてしまっているとは私は考えてはおりません。ただ、時代の変化というものは我々も受け止めなくちゃいけないということなんだろうと思います。  今丸山先生御指摘の嫡出子と嫡出でない子の相続分の倍違う話ですが、これ世論調査をしますと、この世論調査というのはなかなか難しい世論調査だと思うんですよね。だれに聞くかということで随分違うんですが、まあ一般的な世論調査の結果でいうと、嫡出子と非嫡出子と同じにすべきであるとする意見は二四・五%、四分の一で、やっぱり倍の違いがあった方がいいという人が四一%いると、こういうことでございまして、それはある意味でいえば嫡出子の方が圧倒的に多いので当たり前の結果なのかなというふうな気もしますが。  これは大変難しい問題でございますが、今後、法務省としても検討課題の一つにのせなければいけないとは思います。思いますが、しかしこういう問題は、法務省というのは裁判官や検事がすごく多い役所でございますから、これは、何というんですか、世の常識とそのまま一致しているかという問題はあるわけですね。何というか、比較的個性の強い方というのが多いと。  これは、私はびっくりしたんですが、裁判員制度をめぐって新聞で鼎談の記事があったんですよ。要するに、検事総長と日弁連の会長と最高裁の事務総長。その中で、事務総長はこういう発言をされているんですよね。要するに、法律の専門家であるプロの裁判官が下す判決にもプロであるがゆえに盲点があることがある、だから、その盲点をなくすために六人の裁判員が必要だと、こういうことをおっしゃっていると。  そういう意味でいうと、こういう問題こそ私は、国民の代表である国会が先陣を切って議論をすべきことだと私は思いますので、どうぞ丸山先生、中心となって各党間の有志でまず協議を始められたら、私も一国会議員としては参加をしたいと思います。
  45. 丸山和也

    ○丸山和也君 非常にお力強い応援の答弁をいただいてありがとうございます。  この民法九百条の嫡出子、非嫡出子の相続分に関しましては、たしか私の記憶では最高裁の、何年か前、四、五年前ですかね、数年前の最高裁判決の中でも、三分の一ぐらいの最高裁判事はやはりこれは法の下の平等に抵触するというような意見を既に持たれていたと思うんですね。ですから、時間の経過でそういう流れにあると私は思っています。  また、大臣おっしゃったように、世の中、やっぱり嫡出子の方が多いですから、たくさん財産が来た方がいいと思いますから、そういう意味では、そういう利害も絡んだ世論調査の結果が出ると思いますので、そこは一歩離れてフリーの立場から、法の下の平等という観点からやはり積極的に検討していただきたいと思います。  それから、先ほどの大臣の御答弁の中で、やっぱり親の事情によって生まれてきた子に不利益が生じてはこれは断じてならないとおっしゃった。これは、一見正しい、一見正しい。非常に正しいんですけど、やっぱりどうしても親の事情によって子に差が生じるということは事実なんですね。例えば、戸籍制度を設けて、婚姻制度を設けている以上、やはりそれに適合したというか、まさに嫡出子で生まれた子とそうでない子というのは差は生じているんですね。だから、その差は認めるんだけれども、差によって不合理な差別が生じないようにということを配慮するという、そこが大事だと思うんですね。じゃないと、極端な話、戸籍制度を廃止せいというところまで、極論から言うと、行くと思うんですね。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  例えば、アメリカ辺りは、私も何年かいましたけれども、やはり嫡出子とか非嫡出子というような概念というのはほとんどないというか、社会的に問題にならないと。要するに、出生証明を報告するだけで、それが記録に残るというだけで、だれが嫡出子だとか非嫡出子だとか、そういうことすらが問題に全くならない社会と、日本のように延々として戸籍を重視する、すべてが戸籍に、昨日の裁判もそうですけど、戸籍があるかどうかでがらっと待遇が違ってしまうと。戸籍主義をだから取っている国で大きな違いが出る。  どうしても、だから戸籍主義を取る以上はその差は生じる、これはやむを得ない。しかし、その差が、やっぱりどう見たって不合理だなという差を是正するという点で大いなる配慮が必要じゃないかと思うんですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  46. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) それは、子は親を選んで生まれてくることはできないと申しましたけれども、それは親の条件によって子供の生き方とか運命とか随分違うのはこれは仕方のない部分もあるわけで、私もあの両親の下で生まれてこなかったら政治家やってなかったかもしれませんから、それはいろんな要素はあると思うんですが、ただそれがひどい不利益が生じることは何とか避けなければならないということで、千葉先生にもお答えをしてきております。  今、丸山先生がおっしゃった戸籍主義のような事柄について私も実は十分まとまった考えは持っておりませんで、今日の先生のお話を基にしてこれから考えていきたいと思います。  例えば、私自身、国際結婚をしております。結婚したのがさっき調べましたら、(発言する者あり)いやいや、それは結婚式の日にちは覚えておったんですが、婚姻届はちょっとそれより前でして、四十八年の九月十八日なんですね。子供が翌年、長男が生まれて、それから約二年たってから女房が国籍をオーストラリアから日本に変更というか帰化を認めていただいたと。そうしますと、息子は、何も威張るわけではありませんけれども、要するにお母さんより自分の方がお父さんの戸籍に先に入ったんだと、お母さんは後から入ってきただけじゃないかと、こういう論理も、戸籍主義ですからそうなるわけですね。たしか私の戸籍には、何年何月、エミリー・ジェーン・ベアードと婚姻と書いてあっただけだったと思います。  ですから、戸籍主義のいいところとその限界と、光と影と両方あると思いますので、これから勉強させていただきたいと思います。
  47. 丸山和也

    ○丸山和也君 最後にもう一点だけ。  今婚姻に関して、非常にやっぱり婚姻あるいは男女のカップルの形態の多様化ということがこれはもう社会現象として、もちろん日本は遅れているかと思いますけれども、かなり多様化していると。そこで、やはりシングルマザーなんという問題がもう随分前から起きている、シングルマザー。こういう生き方も、生き方の選択としてやっぱりあるわけですね。そして、そういうものに対する日本社会の許容度というのはかなりやっぱり低かったし、法的にもほとんど保護対象になってないと。これ、やっぱり少子化の問題とも絡むと思うんですね。やっぱり結婚して子供を産むという選択を正規の婚姻でしか選べないのと、シングルマザーというのを認めるかによって、これはやっぱりかなり違うと思うんですね。  ですから、家族関係、親子関係に関する実はいろんな、何というか、時代に即応した対応というのは、本当は物すごい地殻変動を起こすほど大きな意味を持ってくると思っているんですね。そういう意味で、是非、こういうシングルマザー問題とかそういうことに対しても、法務省として、先見性を持ってといいますか、勉強をしながら関心を持ってやっていただきたいと思いまして、この関連の質問を私は取りあえず終わらせていただきまして。  それから、次に今回の少年法の問題なんですけれども、これに関しましては私も今般、すべてではありませんけれども、いろんな弁護士会から基本的には慎重意見、反対意見を中心にした要望書をたくさんいただいていまして、そこで述べられている点が要するにこの改正を是とするか非とするかの本質論なんですね。ですから、反対声明は全部賛成というわけじゃないんですけれども、それをちょっと、取り上げているポイントを軸にして実質的な少しやり取りをさせてもらいたいと思うんですけれども。  例えばこれ、私の手元に一つあるのは滋賀弁護士会会長からの声明というか要望なんですけれども、この改正案は、若干読ませていただきますが、少年健全育成目的とする少年法の理念を後退させるだけでなく、犯罪被害者等が求める真実発見にも資するところは少なく、かえってその悲しみや憎悪をかき立てる結果になる可能性が高く、当会はこれに強く反対すると。  こういう中で二点を挙げているんですね、これはもう共通の問題なんですけれども。まず、少年法一条というのは、非行を行った少年健全育成を図り、再非行を防止することを目的としているんだけれども傍聴の点ですが、少年審判犯罪被害者等傍聴を認めた場合、少年が萎縮して自らの心情や非行に至る経過を率直に語ることができず、内省を深めることができないおそれがあると。二つ目、裁判官や調査官も少年に対する教育的、福祉的見地よりも少年社会責任を優先した審判を志向するおそれがある。これでは少年法の理念にある少年健全育成を図ることができないと。  つまり、少年の非行を防止し健全育成を図るというところから、責任追及型に移ってしまうんじゃないかと。また、傍聴することによって、少年自身がじっくりと時間を掛けて、そういう環境の中で自分の反省を深め、成長していくということがむしろ閉ざされるんじゃないかという非常に深いところからの危惧を表明している。これは、反対表明の中には必ずこれが入っているんですけれども、この点についてはどういうふうに反駁といいますか、そういう心配はないんだというお考えなのか、御答弁いただきたいと思います。
  48. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) まず、今回の法改正少年法の理念あるいは目的との関係でございます。  少年法目的でありますけれども、非行をした少年に対して適切な保護処分を講じることによってその改善更生を図るといういわゆる保護主義の理念に立っているわけでありますけれども、そうした少年法目的自体は今回の改正で全く変わるものではございません。ただ、先ほど来答弁申し上げておりますように、そこに被害者の尊厳を重視するという観点一定の限度で被害者傍聴を認める、そうした制度にしようということでございます。  懸念の点が御指摘がございました。一つは、少年審判傍聴を認めると少年が萎縮して、その弁解が封じ込められて誤った事実認定に至ることもあるんじゃないかというような点でございました。  ただ、傍聴を認める場合につきましては、これはあくまでもその個別の案件に即しまして、少年の年齢、心身の状態等々裁判所が考慮してきめ細かく判断をする。そして、そこで審判あるいは少年法目的等に照らして問題がないという場合に少年審判傍聴を認めると、こういうことでございます。したがって、その事実認定に影響を及ぼすような、そういうおそれのあるというような場合は基本的にこの傍聴対象にならないという、そういう形になっているわけでございます。  それから、審判被害者側に傍聴されるということによりまして少年の内省が妨げられる、あるいはその教育的な機能が損なわれるのではないかという御指摘もございました。  これもただいま申し上げたことと重なるわけでありますけれども、そもそも傍聴を認めるか否かの裁判所の相当性判断の中で、そうした点に問題があるケースはこれは除かれることになるんだろうというふうに考えられるわけであります。そして、少年法の中では、裁判官等その関係する者が、少年の内省を深め、そしてその教育的な点に十分に配慮して審判に臨むべきであるというような規定が設けられておりまして、これは当然改正後の少年審判におきましても有効な規定でございます。そうしたことから、少年審判被害者傍聴を認めることによってそうした教育的な機能が損なわれるということもないだろうというふうに考えております。  まとめて申し上げれば、少年審判に現在期待されている目的といいましょうか機能を損なわない、そういう限度でと申しましょうか、で少年審判被害者による傍聴が認められると、こういうことだというふうに理解しております。
  49. 丸山和也

    ○丸山和也君 すると、現在、これまで行われてきた少年審判の機能は損なわれないし教育的配慮も十分あって問題ないと、一方、被害者等の尊厳を重んじて参加、傍聴させると、こういうことのようです。  すると、やっぱりメーンは被害者等の参加といいますか権利の尊重と、こういうのが主眼であると。別に、少年審判自身がそれによってより充実したものになるとかということとは別に、あくまで被害者側あるいはその親族等のための改正であると、こういうふうに端的に言うととらえてよろしいわけでしょうか。
  50. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今回の法改正目的は、今委員が御指摘になりましたように、少年の改善更生といいましょうか、教育的、保護的な機能を目的とする少年審判の中に、被害者の尊厳を重視するという観点から被害者傍聴等を入れるということになるわけであります。  ただ、立案の過程の議論の中では、被害者審判傍聴することによって、それが少年の、何というんでしょうか、反省といいましょうか内省を深める契機になる場合もあるのではないか、こういうような指摘もなされておるところでございます。
  51. 丸山和也

    ○丸山和也君 これは、かなり私深い問題があると思いますね。例えば、これちょっと違いますけれども、やはり被害者の救済とか支援という問題と、被害者がいわゆる司法手続に参加するかどうか、またどこまで参加するかどうかという、これは全く実は異質のものだと思うんですね。  例えば、極端な話、明治政府ができる前までは一定の限度で手続を踏んであだ討ちというのが認められていたと。申請して、幕府とか藩とかですか、そこで許可をされると自分があだ討ちしていいわけですよ。ところが明治政府になってからそれが禁止されたと。それから、それだけじゃなくて、正々堂々とする決闘も今は禁止されているんですね、決闘に関する件って今も法律が生きていますけれども、決闘を挑んだだけでも処罰されると。これ、私知らなかったんですけれども。そういうこともあるように、要するに私的な制裁、争いというのをすべて、実力行使を伴うものについては国家が禁止した。その代わり、国家が全部代わりとしてやってあげるよというのが建前だと思うんですね。  それでずっと来てたと、戦後六十年も来ているんですけれども、先般山口光市でのあの事件を見ていますと、本村さんが、大分前ですけれども、私の記憶ですけれども、国が死刑にしてくれないなら私が犯人を捕まえて殺しますと、たしかこういう趣旨の発言をされたと思うんですね、テレビの前で。私もショック受けたんですけど、ある意味じゃ、要するに犯罪の処罰ということに対する原型をそこに表されているなと思ったんですね。  ということは、国がきちっと裁判なりで、究極死刑なり、死刑をしないんであれば私がやりますというような発言、かなり過激だったんですけれども、それがかなり過激という、とんでもない発言だというわけでもなく、むしろそれがやや世論の支持を受けるような形で、一審の無期懲役、それから高裁の無期懲役、最高裁で破棄されていますし、それで最終的には、先般、死刑判決が出ましたけれども、こういうふうに流れをつくった一つの原因にもなったと思うんですね。  つまり、これは国家がきちっとした司法をやらないから私がやりますよと、やらないんならばという発言だったと思うんですが、今回の例えば裁判傍聴、それから成人刑事事件における参加とかいろいろ見ておりますと、やはりどうも被害者等が司法手続にある程度参加するという方向に流れを切ったのかなと。これは、単なる被害者保護とか支援という、言葉はきれい事言っていますけれども、そういう私は感じがするんですね。  すると、例えば今後、傍聴だけじゃ足りない、あるいは一般の成人刑事事件でももっと権益を拡大しろと。さらに、刑が確定した後の例えば死刑の執行をボタンを押させろとか、これはもう極論のようですけれども、あり得ると思うんですね、考え方としては。こういうことについて、当局としてはこれをどの程度まで、今は世論がこの程度だから取りあえずここまで拡大すると。しかし、国民あるいは被害者等が司法に参加する、あるいは刑の執行にまで参加するという要望が出てきた場合、ここは国家による犯罪捜査、国による裁判、それから刑の執行というところの関連においてどのようにお考えになっているのかということを法務大臣にちょっとお聞きしたいんですけれども
  52. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) さすが行列のできる方で、より深い御質問で私ごときが簡単に答弁できることではないと思いますし、先ほどの最高裁の昨日の判決の話ではありませんが、刑事司法制度というものもこれが最高というものが確定的に定まっているんではないだろうと思います。やはり時代というものの流れの中でこれらもまた形態を変えていく宿命にあるだろうと、そう思います。  ただ、何度も申し上げておりますように、被害者やその遺族、それはもう最愛の家族を、殺人ということを想定すれば、殺されてしまう、失った遺族のお気持ちというのは一体何であろうかと。それは、千葉先生からも御質問がありましたように、経済的な面でもございましょうし、精神的な、身体的な、いろいろな面でも被害者というのはもっともっと厚く扱われなければいけないと。  そういう一連の流れの中で山ほどやることがあって、先ほど総理官邸で行われる会議の話をいたしましたけれども法務省分野というのは意外と狭いんだと、被害者対策という意味では、他省庁にも相当お願いをしなければいけない、あるいは他省庁がその責務においてなさなければならないことが非常に多いと、こう考えております。  じゃ、法務省は一体何をすべきなのかという様々な議論がある中で、今、丸山先生御指摘のような被害者が刑事裁判に参加をするという、そういう仕組みができ上がった。それは、まさに出席できる、傍聴でなくて出席をして、被告人質問もできれば証人尋問もできれば、あるいは論告求刑ではないが論告のような形で意見を述べることができると。あるいは、その裁判で損害が出ておればその損害賠償を、その刑事裁判を使ってごく簡単な手続で損害賠償を請求することが認められるというような、そういうような事柄をやってきた。  じゃ、少年事件の場合はどうなんだという議論の中で、例えば法制審の少年部会での議論をちょっと御紹介いたしますと、参考人Aさんは、三回目の意見陳述で私が裁判所に訴えてきたことは刑事裁判への逆送です、少年審判では被害者側が直接加害少年と接触することはできないからです、少年はどんな態度で何を言うのか、裁判官や弁護士がどんな質問をしてどう答えるのか、被害者遺族の思いをどこまで理解しているのか、そういうところが知りたいんです。参考人Bさん、可能だったら傍聴に行きたかったんです、当時、弁護士の先生から裁判所での流れを教えていただいておりましたので、じかに少年の発言や態度を見てみたかったのです、死亡事故の場合は目撃者もいなければ片一方の証言だけが正当化されがちですから、その証言が慎重なものか死亡した被害者の家族としても聴けるのがいいと思いますと。  これ、生の表現をお伝えいたしましたけど、そういう最愛の家族を失ったような方々がじかに加害少年の顔を見たい、あるいは何を言うか見たい、聴きたい、そのことを、その願いをやっぱりかなえるということが一つの道かと、こう思いました。  ただ、丸山先生の今のお話の中でぐさっと胸に突き刺さった部分があるのは、そのことと被害者が救われる被害者救済とは直接は結び付かぬでしょうとこう言われますと、確かに次元としては異なる部分があるかなと思って、いろいろこれからまた勉強して、先生のお客さんの行列に加えていただこうかと思っております。
  53. 丸山和也

    ○丸山和也君 やはり被害者の支援という、救済という問題と、訴訟、審判傍聴も含めた参加ということは、共通する部分もあると思うんですね。でも、全く同じ次元の話とはやっぱりちょっと違う。制度としてはやっぱりかなり違うということを知っておかないといけないと思うんですね。  それで、やっぱりこれは参加であるし、それから一般の成人事件のような場合には、意見を述べたりあるいは尋問したりとか、これはかなり積極的に認めているわけですね。こういう流れというのは、ですから一応、今後どこまで、例えばそこまで行ったけどこれでは不十分だという意見も必ず出るでしょう。すると、やはりもっと拡大するという要望も出ると思うんですね。  そういう意味で、私、例えば外国では、前、松浦先生もおっしゃっていましたけど、御自分の意見かも分かりませんけれども、死刑執行を公開するとか報道するとかそういう、少なくとも自分の最愛の配偶者あるいは子供が殺されたと、その最期の瞬間だけは見届けたい、この目でと、こういう要望も当然出てくると思うんですよ。すると、やっぱりそれは、そういう人たちは立ち会う権利があるんじゃないかという主張が出ても絶対おかしくないし、それどころか、やっぱりボタンを押させろと、裁判は決めた、国家が、ボタンぐらいを、ボタンぐらいと言ったらおかしい、ボタンを押すのは当然の権利じゃないかというような主張も出てくる可能性は僕は十分あると思うんですね。  ですから、国家がやる仕事、司法というものと被害者がどこまで参加するかというのは、かなり厳しく、異質のものがある、また融合する部分もあると思うんですけど、これは追求していかないと、何となく、世論があれだとか、あるいは特定の被害者がすごく主張するから何となく迎合的に動くというのはやっぱり危うい面もあるということを指摘し、はっきり言って、今までの刑事司法裁判、あるいは死刑の執行も含めてですけれども判決があっても全然執行もされないと。七年半ぐらい、まあたなざらしと言うと言葉は悪いですけれども、そういう状況で、どうなっているのか分からないと。こういう状況が積もり積もってやっぱり刑事司法に対する信頼を損ねた原因もありますので、被害者が単に参加するとか傍聴したからそれで権利が充実されるというものでは必ずしもないということを若干、行列として力説させていただきたいと思います。  それから次に、やや細かな問題をお聞きしたいと思うんですけれども、十二歳未満の少年傍聴は認めない、これは恐らく少年法趣旨に反していくと、十二歳未満は余りにも幼いからということだと思うんですけれども、まあ適当と言えば適当、十二歳で線引いたという、ここらはどのように適切であったかという、十二歳ということについて御説明いただけたら有り難いと思っています。
  54. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 答弁者は。  大野刑事局長
  55. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 申し訳ございません。  政府案は十二歳で切っておらなかったわけでございます。したがいまして、私が答弁申し上げるのが適切かどうか……
  56. 丸山和也

    ○丸山和也君 倉田先生に。
  57. 倉田雅年

    衆議院議員(倉田雅年君) お答えを十分にできるかどうか分かりませんけれども、やはり触法少年被害者等傍聴されることによる影響が殊に大きいであろうと。しかしながら、先ほど来お話が出ております、被害者の方の知りたいという立場とどこで折り合うかということなんですけれども、結局のところ、同じ触法少年の中でも特に幼いほど大きいであろうと、影響は。  そこで、おおむねという言葉がいいかどうか、おおむねということは後で説明しますが、中学生と小学生になる辺りを目安としてということで決めたらどうかという提案でございますけれども、ただ、さきの改正のときに、今言ったおおむねということで少年送致の年齢を決めたんですね。そのときとは違ってかっきり決めたというのは、一つは、処遇を決めるのについては年齢をかっきりというよりも、個々の少年によって、これは少年院へと送らなければ元へ戻せないぞ、教育できないぞと、こういう個々の状況があるんですね。それに対して傍聴というのは第三者、一般的な被害者等で第三者のものですから画一的に決めておいた方がいいであろうと、こういうことで十二歳のところで、未満ということで切ったということでございます。  もう一つは、十二歳未満の少年の例ですね。非常に統計的にも少ないという、対象がですね、十二歳未満で重大な犯罪を犯したという、触法したというのは、実はそれほど多くはないと、こういうこともありまして、そこで切ったらどうかと、こういうことでございます。
  58. 丸山和也

    ○丸山和也君 同じく二十二条の四の相当性の判断についてちょっとお聞きしたいんですけれども、「少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるとき」というふうに修正されたんですけれども、この実際の、どういうファクターといいますか、要素を判断基準としてこういう判断をされるのかという点について、これも極めていろんなケースがあると思うので難しいと思うんですが、少し御説明いただいたらと思うんですけれども
  59. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 答弁者はどなたがいたしますか。  大野刑事局長
  60. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 相当性の判断を行う際の考慮要素につきましては、原案でも「少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判状況その他の事情」と、こうなっているわけでございます。そして「相当と認めるとき」とこうなっていたわけでありますけれども、ここに、修正案で「少年の健全な育成を妨げるおそれがなく」というのが付け加えられたわけでございます。
  61. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 丸山委員修正提案者から答弁を求めますか。
  62. 丸山和也

    ○丸山和也君 はい。  それで「妨げるおそれがなく相当」というのは、その経過じゃなくて、どういう判断をされるのかという中身のことをちょっとお聞きしているんです。
  63. 倉田雅年

    衆議院議員(倉田雅年君) 少年法目的は、言うまでもなく、理念は、少年の健全な育成を図るべく適正な処遇を定めるということにあると。  これを定めるに当たりまして、審判廷の在り方というものが少年法の二十二条に書いてございますね。ちょっと読みますと、「審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならない。」と、こうあるわけですね。これが審判廷の在り方でございまして、そういう和やかな雰囲気の中で少年に内省を促すことができる、こういう状況を阻害するような傍聴はできませんよ、許すわけにはいきませんよと、そのことをより明確に判断基準として掲げておきましょうと。  理念からいけば当然のことではありますけれども、それをより念のため、ここのところへ形容詞としてというか注意書きとして入れておきましょうと、これが改正趣旨でございます。
  64. 丸山和也

    ○丸山和也君 ありがとうございました。  次に、記録閲覧とか謄写の問題についてお聞きしたいと思うんです。  これも改正の重要な一つの要素になって従来より拡大されているんですが、範囲が。これについてお聞きしたいと思うんですが、ここでもやはり心配する、反対する方々から、それは必要ないんじゃないかと。あるいは、現行法上犯罪被害者等記録への閲覧謄写は十分機能しているんだと、逆にこれを拡大することによって内容がマスコミやインターネットを通じて、あるいは一般に流れたりして被害者のプライバシーその他、加害者も含めてプライバシーの侵害とか余計な問題が起こるんじゃないかというような指摘がされているんですが、この点についてはどういう配慮をされておるんでしょうか、お聞きしたいと思います。大野刑事局長、いいですか。
  65. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 現在の少年法、十二年の改正一定記録閲覧謄写被害者にも認められることになっているわけであります。そして、その後の五年間、相当程度これは活発に運用されておりまして、希望されている方の九割五分を超える形でその運用がなされているというふうに聞いておるわけでありますけれども、しかし、そうした現行制度の運用を通じても、被害者方々からはなお十分でないというような御指摘がなされております。  具体的に申しますと、一つはどういう場合に閲覧謄写が行われるのかということでございます。二つ目は閲覧謄写の認められる範囲についてでありますけれども、まず、どういう場合に閲覧謄写が認められるのかという点につきまして、現行法は損害賠償請求等正当な理由がある場合というふうに積極的に要件を記載していたわけでありますけれども被害者方々は、むしろ事件を知りたいんだ、それが一体この正当な理由にならないのか、知りたいというだけでは足りないのかというような御主張がございました。そうした御要望にこたえるため、今回の改正では、具体的な弊害がない場合にはむしろ原則として閲覧謄写を認めるということで閲覧謄写の認められる場合を拡大したわけでございます。  それから二つ目は、閲覧謄写を認める記録範囲でありますけれども、現行法は非行事実に関する記録ということに限定していたわけであります。そうなりますと、例えば少年の身上、経歴というのは、非行事実に直接かかわる部分ではありませんので外れてきてしまいます。しかし、被害者方々は、一体どういう少年なのか、そういう辺りも知りたいんだ、こういう御希望がございました。そこで、今回、そうしたものも含まれるように閲覧できる記録範囲を拡大したわけでございます。  ただ、これは決して無制限ではありません。家裁の記録の中にはいわゆる社会記録といいまして、少年の要保護性を判断するために必要な家裁の調査官あるいは鑑別所が作成した記録があるわけでありますけど、これは閲覧対象にはなっておりません。身上、経歴に関する記録は今回閲覧対象になったというふうに先ほど申し上げましたけれども社会記録が除外されており、特にプライバシーあるいは外に明らかにされては相当障りのある部分というようなものにつきましては、社会記録を除外しているという趣旨にかんがみましても、これはやはり裁判所の相当性判断の中で引き続きこれは開示が行われないという形で一定の歯止めが掛かるんだろうというふうに考えているわけであります。  それは、どういう場合にその閲覧謄写が認められるかという点についての御説明でありましたけれども、そこで、したがって一定の歯止め、安全装置が掛かっているわけでありますけれども、他方、じゃそうした形で閲覧謄写をした資料が被害者の側から仮にも流出してそれがその少年の改善更生を妨げることになってはいけないので、その点の手当てはどうなっているのかと、こういう御質問もあったかというふうに思うわけでございます。  法律は、今回の改正法案は、この点につきまして、今回の改正法案といいましょうか、従来から、閲覧謄写した情報につきまして一定範囲で守秘義務と、それからこれをみだりに用いて少年の改善更生を妨げてはならないという注意義務が規定されております。したがって、この規定は今回拡大されました閲覧謄写につきましても当然に適用されることになるわけであります。したがいまして、被害者側にはそうした秘密と申しましょうか記録をみだりに用いないという義務が掛かっておりまして、これに反した場合には違法ということになるわけでございます。  ただ、その違法に対して直接の罰則はございません。直接の罰則はございませんけれども、それにより少年のプライバシーを害して損害を与えるということになれば民法の不法行為が成り立ちますし、少年の名誉を毀損する、関係者の名誉を毀損するということになれば刑法の名誉毀損罪も成立し得るということになるというふうに考えております。
  66. 丸山和也

    ○丸山和也君 今のお答えに若干関連してもう少しお聞きしたいんですけど、いわゆる社会記録と言われるもの、今御説明になった、それは除外される、閲覧謄写対象から。それで、ただ、そこの判断ですけれども、これについてもやっぱり、これだけ拡大するならいっそのこともう全部記録閲覧謄写させてもいいんじゃないかという要望なり意見もあったんじゃないかと思うんですけれども、ここで一線をやっぱり引かれた、先ほど若干おっしゃいましたけれども、もう少し、なぜ一線を引かなければならなかったかということについてお答えをいただいたら有り難いと思います。大野局長
  67. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 先ほどのお答えと重なるかもしれないんでありますけれども少年法のやはり基本理念は、非行を犯した少年の改善更生といいましょうか、がきちっと社会復帰できるようなそういう仕組みを設けるという理念に基づいているわけでございます。  被害者の尊厳を重視するという観点から被害者記録閲覧謄写を認め、今回その範囲を拡大することになったわけでありますけれども、しかし、そのことが少年法の一条に掲げます少年法基本理念を害するようなことになるのは、これはやはり少年法全体の在り方として問題があるという、そういう考え方が基本にあるんだろうというふうに考えております。  先ほど申し上げましたように、現行の閲覧謄写範囲は非行事実に関する部分に限られております。しかし、被害者側の御希望にかんがみるならば、何もそこまで限定しなくてももう少し広い範囲で御覧に入れることも相当なのではないかということでありますけれども、しかしそれが、社会記録少年のプライバシーと申しましょうか、非常に個人的なあるいは他に出すこともはばかられるようなそういう記録になりますと、やはりこれは、その少年の将来の健全育成を図るという観点からそこまではやはり行き過ぎなのではないだろうか、こういう判断で今回一線を引くことになったというふうに理解しております。
  68. 丸山和也

    ○丸山和也君 余りしつこいのは嫌いなんですけれども、ここだけあれですが、すると、何が除外される社会記録だというのははっきり判別はできるんでしょうか。それとも、その場その場でこれは社会記録だというような形になるんでしょうか。
  69. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) その点でありますけれども社会記録というのは、現在の家庭裁判所におきましてはその枠は非常にはっきりしております。少年の要保護性に関して行われる調査についての記録でありまして、少年調査票、これは家裁の調査官が作成するものでございます。鑑別結果通知書、これは少年鑑別所が作成するものであります。そのほか、例えば学校の照会の回答書等でございまして、これらは現在でも、法律記録と申しましょうか、非行の存否等を認定する記録、特に捜査機関から送られてきた記録等とは別に編綴されております。  また、その記録の所在自体も、その法律記録は個別事件ごとに作成されるわけでありますけれども、この社会記録は言わば少年に付いて回るような形になりまして、家庭裁判所からその後例えば少年院に行った場合にはそちらにその記録が付いていく、また別の事件を仮に犯した場合にはそこの今度は家庭裁判所に行くというような形で、その記録の動きといいましょうか、管理、保存も全く別になっております。  そういう意味で、画然と法律記録と区別された意味社会記録、これは一律に今後もお見せできないという、そういう仕切りでございます。
  70. 丸山和也

    ○丸山和也君 すると、一つの解釈として、これは私が今思ったんですけれども、そういう調査官の報告書なり鑑別所の鑑別書というんですか意見書といいますか、そういうもの、少年保護育成に関する一つの評価といいますか意見といいますか、その判定した人のオピニオンが述べられていると、こういうことであって、それは事件そのものではないからというような一つの、だから、そういう観点判断の基準に大きくなっているように私は思ったんですけれども、そういう理解は正しいんでしょうか、正しくないんでしょうか。
  71. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 社会記録に含まれる調査記録あるいは鑑別所の意見書等も、もちろん意見にわたる部分もあるんですけれども、それだけではなしに、例えば家裁の調査官が少年の家庭環境あるいは育成された経過等について事実を事細かく調べた、そういう結果も含まれているわけでございます。  ただ、これは類型的に見まして非常にプライバシーに深くかかわる部分でありますので、そうしたものを含む社会記録は今回も閲覧対象にしなかったと、こういうことでございます。
  72. 丸山和也

    ○丸山和也君 いろいろお聞きしますと、るる配慮もされているし、一方被害者の方ですね、いろんな形での参加も認められるということで工夫をされていると思うんですが。  何せこれやっぱり非常にデリケートな問題を含んでおりますし、少年法の第一条の趣旨から見て、実際、これがうまくいくか、あるいは逆効果か、そこら辺も含めて、やはりその運用が、非常に運用の実際が大事やと思うんですが、ただ、最後に最高裁の方にちょっとお聞きしたいんですけれども。  最高裁自身、裁判所は、被害者あるいは少年、こういう状況把握というのはどの程度……(発言する者あり)じゃ、今の質問は撤回いたします。  十二時過ぎましたので、ここらで終わりましょう。
  73. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時七分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  74. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、少年法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  75. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 民主党・新緑風会・国民新・日本の松浦大悟でございます。  前々回、前川議員が冒頭、裁判でのうその証言をすると偽証罪ですが、国会でうその答弁をすると罪にはならないんですかという質問をされました。今日は私が同じ質問を警察庁にしてみたいと思います。  警察庁、裁判でうその証言をすると偽証罪ですが、国会でうその答弁をすると罪にはならないんでしょうか、どうでしょうか。警察庁にお伺いをいたします。
  76. 米田壯

    政府参考人米田壯君) ちょっと質問の御趣旨がよく分からないんですが、国会においての答弁がどのような責任を問われるかということについては私どもが答弁すべきことではなく、国会で御判断されるべきことであろうと考えております。
  77. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 私は、犯罪にならないからといって国会でうその答弁はしてもらったら困るというふうに思うんです。なぜなら、私たち国民の代表としてこの席に座らせていただいて、国民に代わって質問をさせていただいているからです。うその答弁は国民に対してうそをつくことにつながるというふうに私は思います。  実は、前回、大阪澤野事件について警察庁に質問をさせていただきました。大阪澤野事件における交通事故の調書の捏造疑惑について質問をいたしました。それについて警察庁の御回答は、きちんと処分をしていると、数字はございますということでした。直ちにそのような数字を調べた上で御連絡を申し上げるということでございましたが、これが真っ赤なうそでございました。  質問が終わって、議員会館に帰って自分の部屋でくつろいでいたところ、真っ青な顔をして警察庁の部下の方が私の部屋に飛び込んでこられました。松浦さん、データを出すことは今すぐにはできません。どういうことですかと聞きましたところ、ほかの公文書の偽造と一緒になっていて、これが分類していないんだと。今すぐには出せない、これから各都道府県警に連絡をして調査するから待ってほしいということでございました。あれだけ胸を張って把握しているというふうにおっしゃっていたのに、やはり把握をされていらっしゃいませんでした。  その後、待てども待てども連絡がないんです。やっと連絡が来たのが十二日後、そして、いただいたのがこのペーパーです。たった二行の御回答でございました。二行作るのに十二日間も掛かったのでしょうか。  これ、なぜこんなうそをついたのかということをお伺いをしたいんです。一年生議員だから丸め込めるというふうにお考えになったのでしょうか。警察庁、いかがでしょう。
  78. 米村敏朗

    政府参考人(米村敏朗君) お答えをいたします。  お尋ねの虚偽の供述調書を作成したことによって懲戒処分を受けた警察官の数はということでございますが、これにつきましては委員の方に、お手元にお渡ししているかと思いますが、十七年が三人、十八年が二人、十九年が三人ということでありまして、その限りにおいてはさほど時間の掛かる話ではないというふうに私は思います。  ただ、これもその調書偽造の内容が具体的にどういうものであるのかということについて、関係する都道府県に確認をするという意味で相応の時間が掛かったということでございますが、先ほど委員がおっしゃられたように、いささか説明が不適切であったようにも思いますので、この機会におわびを申し上げたいというふうに思います。
  79. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 このいただいた報告書にはどのような偽造であったかという内容は書かれていません。何人が懲戒処分を受けたのかということだけ書かれているわけです。懲戒処分を受けた数を把握するのには時間は掛からないというふうにおっしゃいました。十二日間掛かった理由が分かりません。  これ読み上げますと、平成十七年から十九年までの間に虚偽の供述調書を作成したことにより懲戒処分を受けた警察官の数は、十七年が三人、十八年二人、十九年三人であるということですけれども、これも表面化したもので、氷山の一角かもしれません。例えば先日質問をいたしました大阪の澤野事件のようなケースは、これは警察が認めていないので入っていないのでしょう。  そもそも、なぜ懲戒処分に至ったのかを警察庁がきちんと把握していないようでは何の改善策も取られないのではないかというふうに思いますし、いつまでたってもこうした調書の捏造はなくならないのではないでしょうか。その点、どのような認識をお持ちでしょうか。警察庁、お願いいたします。
  80. 米村敏朗

    政府参考人(米村敏朗君) お答えをいたします。  私どもの方では、現場におきまして調書が偽造されたのではないかというような疑いが生じた場合には、調査あるいは場合によっては捜査を行いまして、その事実関係を明らかにするということは当然の責務であります。そうした形で事案を明らかにし、その内容に応じて懲戒処分を行うということで対応しているものであります。  また、当然のことながら、なぜそういう事案が発生したのか、いわゆるその要因について分析をし、今後の絶無を期するという意味で一線を指導していくという対応をしているところでございます。
  81. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 警察庁の不祥事といいますと、今週は千葉県で警察官が下半身を露出したというものが報道をされています。この件の現状について教えてください。
  82. 米田壯

    政府参考人米田壯君) お尋ねの事案は、今年の五月三十一日に千葉県の多古町の町内におきまして、コンビニ店の駐車場にいた女性店員に対しまして陰部を露出した男がいると、こういう事案でございました。千葉県警察において事件を認知いたしまして現在捜査をしておりまして、実はこの被疑者として千葉県警察の二十歳代の警察官が容疑者として現在浮上をしております。この者からの事情聴取を進めるなど、今事案の解明に向けて捜査中でございます。
  83. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 この件で問題なのは、名前が明らかにされていないんです。こうした事件を、例えばマスコミですとか学校の教員あるいは官僚ですとか、もちろん我々政治家が起こせば必ず名前が出ると思うんですが、この事件では一向に出てきません。  ここで名前を出せとは私は言いませんけれども、どのような基準で名前を出す出さないを決めているのか、身内の警察官だから出さないというようにしか国民には見えないんですが、その点どうなんでしょうか。お答えください。
  84. 米田壯

    政府参考人米田壯君) いろいろな方が事件を起こして、そしてその事件の関係で発表をすると。そして名前を、その場合、広報で名前まで言うこともありますし、そうでないこともございますが、いずれにいたしましてもそれは立件をしたとき、例えば逮捕をしたとき、あるいは送致をしたときにどの程度広報をするかということを判断をするわけでございます。その際の判断基準といたしまして、それはそれぞれ個別の事件ごとの判断ではございますけれども、公表することの公益性の度合い、あるいは被害者等の名誉やプライバシーの保護、あるいはその後の捜査の遂行に及ぼす影響等を勘案して個別に判断されるべきものと考えてございます。  ですから、現在、この今御指摘の事案につきましては、これまだ捜査を進めておりまして、立件をするという段階にまだ至っておりませんので、そもそも広報をするとかしないとかのまだ段階ではないということでございます。
  85. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 この事件は同じ女子高校生が二度も被害に遭いました。それのみならず、これはまだ同一犯かは分かっていませんが、ほぼ同じ時期に露出事件の際の言葉とほぼ同じ言葉でわいせつな電話があったり、さらには車に連れ込まれそうになったりなどの被害も受けています。  公然わいせつだけでなく、ストーカー規制法やわいせつ目的の誘拐未遂などももしかしたら当てはまるかもしれません。そのような重大な犯罪の容疑者でありながら、なぜ既に事実を認めている公然わいせつで逮捕はされないのでしょうか。車のナンバーも被害者は覚えていて、さらにコンビニでのアルバイト中の被害ですから、防犯カメラも撮っているのではないかと思います。そのような客観的な証拠もありながら、さらに本人も容疑を認めていながらいまだ逮捕されないというのは、警察だからというダブルスタンダードを私は感じるんですが、これはなぜなのか、教えてください。
  86. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 今のお話は、私どもがいろいろその全容を解明する中で、必ずしもまだ確認できていない点も多々ございます。  いずれにいたしましても、捜査はその容疑の事案を解明して容疑がどれほど強まるか、そして逮捕の必要性がその間に生じてくるかということで逮捕をするしないということを決めるわけでございます。  ちなみに、ダブルスタンダードとおっしゃいましたが、一般に刑法犯全部の検挙人員の中で逮捕をするというのは大体年間二五%前後でございます。警察官の場合、これは数が少ない、まあ数が少ないからいいというものではなくて、本当はゼロでなきゃいけないんですが、数が少ないものですから年間ばらつきがございますけれども、例えば昨年でございますと、検挙人員に占める逮捕人員の割合は三六%ぐらいということで、決して警察官であれば逮捕がされにくいとか、そういったことではないと考えております。
  87. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 これは誘拐未遂の可能性もあるわけですけれども、誘拐未遂等も視野に入れて捜査はされているんでしょうか。
  88. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 先ほどから委員おっしゃっておりますような事案、そのすべてを私ども把握しているものではなくて、一部報道等で出ているものもございますが、そういったものもすべて含めまして事案の全容解明に向けて捜査を進めてまいりたいというように考えております。
  89. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 いまだ逮捕していない中、千葉県警から被害者の家族に対して、同じ警察官として恥ずかしい、二度とさせないから安心してという電話があったといいます。  逮捕された後そのような電話があるならまだいいんですが、逮捕の前に電話するのはなぜなんでしょうか。二度とさせないように約束する、その代わり警察の不祥事になるから黙っていてという半ば脅しではないか。どのような趣旨で電話をしたのか、お答えください。
  90. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 捜査の過程で様々なことを行っておりますし、もちろん警察官の犯罪ということになりますと、これは内部不祥事で懲戒処分の対象にもなるということで様々な調査を行っている過程のことでございまして、具体的なことは申し上げることはできません。  ただ、そんな関係者の口を封じるとか、そういったことは一切ないと承知しております。
  91. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 恥ずかしいと思うぐらい容疑が固まっているのなら、速やかに何らかの処置をされればいいと思うんですけれども。  やはり警察官が関与した事件を警察が捜査するというのは、どうしても身内に甘い捜査が行われているのではないかと見られかねません。ほかにも、衆議院でこの後お見えになる細川律夫議員が指摘されていますけれども、白バイとの交通事故などもそのような報道がなされております。これは公正公平に捜査を行っている多くの警察官にとっても大変不幸なことではないかと思います。  検察には独自の捜査権があるわけですから、警察が関与した事件は最初から検察が扱うなどすれば警察がダブルスタンダードをしているのではないかというような批判が起きないのではないかと思います。そのような検討をすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。警察庁、お願いいたします。
  92. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 松浦委員、検察は法務省所管でございますので。
  93. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 警察に聞きたいんですが。  警察が捜査するのではなくて検察に任せたらどうかという質問を警察庁にいたします。
  94. 米田壯

    政府参考人米田壯君) これまでも私ども、警察官であるからといってそのような特に優遇するということもなく、厳正公平に事件捜査をしてまいりました。今後ともそのように捜査を進めてまいりたいと考えております。
  95. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 調書の件もそうですけれども、身内の不祥事や犯罪が万が一起きてしまったら、まずすべてを公表するとともに、警察としてもきちんと把握をする、その上で再発しないような対策を検討する、ごくごく基本的なことだと思います。不祥事を隠すのではなくて、このようなことを繰り返していかないと、警察の不祥事や犯罪というものはなくならないのではないかと思います。法の正しい執行をつかさどる法務大臣として、大臣、感想で結構ですので、御答弁をお願いいたします。
  96. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) ダブルスタンダードという言葉をお使いになりましたが、私はダブルスタンダードというのはあっていいんじゃないかと。つまり、警察は司法警察職員ということでありましょうし、検察もそうでありましょうし、我々国会議員も権限を持っているわけでしょうし、あるいはマスコミのように世の中により大きな影響力を持っている人たちもいるでしょうし、そういう人は、より厳しいという意味でのダブルスタンダード、それくらいの気持ちで我々はやっていくべきだと思うし、警察もまた同じで、身内だからこそ一般人よりより厳しくということで、これはそれ以上のことは私は言えないのかもしれませんが、名前の出る出ないという話ですね、あなたがいい質問だと申し上げたのは、昨日の本会議での私に対する質問はちょっと余り良くない部分もありましたけれども、いや、いい質問だと申し上げたのは、やっぱり私も日ごろから思っていたことなんですよ。名前の出る出ないって、それはマスコミとの関係で何か基準があるのかどうか分からないんですが、より厳しく、それこそダブルスタンダードでより厳しくならより名前ははっきり出た方が、市民はAでも、警察官はだれのだれべえ、検察官はだれのだれべえ、裁判官であればだれのだれべえでいいんじゃないかなと、私は市民感覚でそういうふうに思っております。
  97. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 名前をはっきりさせることこそが警察の信頼回復につながるというふうに私は思います。  こうしたずさんな捜査、ずさんな供述聴取在り方というのが大変問題になっています。少年法においても、例えばあの山形のマット死事件ども、被疑少年の弁護人が一番最初に指摘したのが、こうした警察のずさんな捜査についてです。  山形マット死事件におきましては、体育館用具室の扉の指紋を取っていなかったりだとか、物証がなかったりだとか、例えば髪の毛など採取できるはずのものだと思うんですが、それさえもやっていなかったりだとか、その結果、当時はっきりとやったことを認めていた少年たちは全員否認に転じ、事件はやぶの中となってしまいました。殺された被害者は確かに存在するのに、だれがやったのか分からないという、こういう状態になっています。  少年による事件でも、捜査に当たるのは主に警察です。その警察がきちんとしていただかないと、少年審判にも少年の更生にも悪影響を及ぼします。きちんとやっているでは済まされないと思います。改善できる部分はどこなのか、絶えず向上心を持っていただきたいとお願いをいたします。  それでは、少年法改正質疑に移ります。  今回、少年法の一部を改正する法案に対する質問ということになるわけですが、被害者遺族の傍聴を認めるのかどうかというところが最大のポイントだと思います。その被害者遺族の傍聴についてなのですが、そもそも被害者遺族が真実を知りたいということならほかにも私は方法があると思うんですが、なぜ傍聴なのかということをお尋ねしたいと思います。  少年審判傍聴は、被害者遺族の方々から事実を知りたいという強い要望があった、これが大きな議論となっていったと認識をしています。これまで、被害者遺族の皆さん審判の蚊帳の外に置かれていました。十分な情報が手に入りませんでした。記録閲覧謄写審判結果の通知といった情報提供の制度はありましたけれども、遺族の皆さんの満足のいくものではありませんでした。  私は、審判傍聴することによってより事実に近づくことができるという御遺族の気持ちはよく理解ができます。ただ、事実を知ることが真の目的なら、ほかにも様々な方法があるのではないか。例えば、モニターを使った傍聴もその一つですし、あるいは被害者遺族と裁判官とのパイプ役である調査官制度をもっと機能するようにつくり変えるなど、いろんな方法考えられると思います。  そうした数ある選択肢の中で、なぜ被害者遺族の傍聴という方法を選択されたのでしょうか。法務大臣に伺います。
  98. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 先ほど丸山議員の御質問で、非常に重要な部分があったと思います。というのは、被害者中心に物を考えろと。被害者の尊厳というものが軽んじられていたのではないかというようなことで、犯罪被害者等基本法あるいは計画を作ってやっていると。私たちはいつもそのことを何度も御説明しているわけですが、そのことだけで被害者が救われるというのか、それは次元が同じ部分もあるが違う部分もあるのではないかと、こういうふうに指摘をされますと、そのとおりであって反論はできないという思いがあります。  今の松浦先生の御質問も、確かにいろいろな側面があって、簡単に割り切ってお答えできることではないのかもしれない。ただ、審判結果の通知だとか今回の改正法よりも狭い記録閲覧謄写とかあるいは意見を表明するということだけでは、幾ら何でも、例えば最愛の御家族を失った被害者の遺族の方々にとってはそれは不十分であると。そういう中で、法務省関係法律として、あるいは司法手続の中で何ができるかということで、一般の大人の事件では被害者参加制度というのができたわけでありますし、どんな御希望を被害者方々がお持ちであろうかということを我々も調べましたし、法制審も意見を募ったわけです。  先ほどちょっと申し上げましたが、少年犯罪被害当事者の会の会員の方から、少年はどんな態度で何を言うのか、裁判官や弁護士がどんな質問をしてどう答えるのか、被害者遺族の思いをどこまで理解しているのか、そういうところが知りたいんだと。これ切実な思いだと思うんです。知ったからといってすべてが救われるわけでないことは、その傷がいえるわけではないことはよく分かりますが、しかし切実な思いでそうおっしゃっている。  あすの会会員の方は、可能だったら傍聴に来たかったです、当時、弁護士の先生から裁判所での流れを教えていただいておりましたので、じかに少年の発言や態度を見てみたかったですと。死亡事故の場合は目撃者もいなければ片一方の証言だけが正当化されがちですから、その証言が慎重なものか、死亡した被害者の遺族としても聴けるのがいいと思いますと。これは本当に切実な思いだと思うんです。やはりその辺を反映させようと思いまして、被害者あるいは遺族の傍聴ということを提案をさせていただいているわけでございます。  ただ、昨日本会議で松浦議員とは随分やり取りをさせていただきましたけれども、例えばモニターによる、これは後でまた御質問があればお答えしますが、モニターで審判を見るというのも、それは一つの方法として法制審でも議論された。しかし、直接、じかにという希望にこたえることにはならないということ。  家裁調査官が審判状況説明するということは、これはもう是非あるべきだと。私はそういう親切さが、被害者や遺族に対する親切さを裁判所が、家裁が示すべきだということを申し続けてまいりましたし、そのことが今回の修正案に盛り込まれたわけでございます。  ですから、モニターについては今後の課題でございますけれども、先生の質問内容から言葉を選ぶならば、モニターとか家裁調査官による説明というものは、今後全部合わせて、すべてを実行することによってより被害者に厚いものにしていきたいと、こう思います。
  99. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 モニターについてなんですけれども、情報が外に漏れるんじゃないかということはさておきまして、実際に目で見るのとモニターで見るのと、その違いは大臣はどの辺りにあるというふうにお考えになっていますか。
  100. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私、それは被害者や御遺族でどういう希望をされるかという方によって違うんではないかなと。とにかく直接、同じ部屋で同じ空気の中で顔を見たいと、やり取りを聞きたいと思われる方が多くおられると思いますし、逆に、やっぱりそういうふうに直接傍聴をすれば、ふさがりかけた傷からまた出血するというような思いで、ちょっと離れた状況で、つまりモニターで傍聴したい、その方が少しでも気が楽だと、そうお思いになる方もおられるでしょうし、私は、被害者や遺族の方々のお気持ちによって両方あるだろうと、分かれるだろうと、こう思います。
  101. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 私は、やはり傍聴できるようになっただけでは御遺族の方たちのお気持ちというのは充足されることはないだろうというふうに思っています。傍聴は一つの大きな方法だとは思いますけれども、それだけではなくて、例えば調査官から話を聞いたりなど、様々な方法をミックスしてやらなければならないと思っています。  被害者の事実を知りたいという気持ちに少しでも多くこたえていけるようにきめ細かな対応が必要だというふうに思いますが、そのことが本改正案の本来の趣旨ではないかと思いますが、大臣の御見解をお聞かせください。
  102. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) もう全く先生おっしゃるとおりで、今おっしゃったようなことのためにこの改正案を提出をさせていただいているわけでございまして、被害者や遺族の皆様方の知りたいというお気持ちをどこまで充足させることができるかが課題だと思っております。  もちろん、少年法というものに大きな立法目的があることは私は十分承知いたしております。しかし、犯罪の被害に遭われた方々、場合によっては最愛の家族を失った遺族の方々にしてみれば、加害者があるいは非行を行った人が少年であるのか大人であるのか、二十歳なのか十八歳なのか十六歳なのか十四歳なのか、あるいは今度も一つのラインが入っておりますが、十二歳なのかそれ以下なのか、それによって被害方々の傷は大きく変わるものではない、そう思いますと、やはり少年法においてもその立法目的を害さない範囲の中において、被害者方々や遺族の方々審判を、その内容を知りたいというお気持ちを少しでも満足させられるように努力したいと、こう考え改正案を出しております。
  103. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 とはいうものの、大臣被害者の方たちの真実を知りたいという気持ちをおもんぱかって法改正を今回するわけですけれども、その場合に、結局は対審構造に限りなく近づいていくその端緒になるのではないかというふうに私は懸念をしています。  事実が知りたいということでございますけれども少年審判では厳密な事実認定が行われない傾向が強い。警察や検察の捜査もそのためにおざなりになってしまう傾向があると言われています。一般の公判のような対審構造がなくて、証拠の採用、不採用でやり合わない、もみ合わないわけですから、基本的に調書の取り方が甘いと言われています。これは、少年審判は刑事裁判ではないので、事実関係をはっきりさせることよりも少年の健全な育成を優先させるからだというふうに言われています。  今回の被害者遺族の傍聴というのは、被害者遺族の方たちの事実を知りたいという思いの中から議論が起こりました。そうしますと、対審構造を導入しない限り、遺族の方たちが望むような事実というのは出てこないかもしれません。そうした場合に、遺族の方たちの思いというのはどんどん加速していってしまうだろうと私は予測をいたします。  今回の法改正は対審構造に限りなく近づけていくその端緒となるのではないか、その可能性があるのではないかということについては、大臣、どのようにお考えになっているでしょうか。
  104. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私は、対審構造に近づいていく端緒になるものとは思っておりません。それは少年法第一条の法目的がありますし、そもそもが家庭裁判所における少年審判というものが非常に職権主義的な考え方、つまり当事者同士のやり取りという当事者主義でなくて職権主義であって、言わば家裁の裁判官にかなりの部分が任されるという形で行われるという、その基本の枠組みは、これは現在のところ全く変える必要もないし、また変えてはいけないものと考えておりますので、今回の法改正は、あくまでも被害者やその遺族の方々の尊厳をより重んじようという観点からのものでございまして、対審構造に近づけるというような思いは全くありません。  私は、少年法の今までのずっとの沿革を知りませんけれども、言わば原則逆送の問題とか、あるいは逆送年齢を引き下げてきたということからも、よほどの凶悪性があって一定の年齢であるならば刑事裁判という仕組みができておりますので、いわゆる少年審判に係るものについては、それは対審構造とは無縁のものにしなければならないということは大原則なのではないでしょうか。
  105. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 逆に傍聴したことによって加害少年の心ない言葉被害者遺族は傷つけられるという心配もあると思うんです。被害者遺族のケアについても考えておく必要があるというふうに思います。  先ほど来、この被害者遺族のケアについては法務省の中だけの問題ではなくて関係省庁と連携を取り合いながらやらなくてはいけないというお話が出ていますけれども法務省に伺いますが、他省庁との連携、研究を行うおつもりはおありになるでしょうか。
  106. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 審判傍聴をした被害者の方が少年言葉で傷つくこともあり得るのではないかというような御指摘でありました。  実際に被害者方々審判傍聴した結果どのような感情を抱くことになるか、これは個々の事件によって異なると考えられますし、また傍聴中に負担を感じた場合にはもちろん退室することも可能なわけであります。  もう一つ、この法律案の中では、審判傍聴を認めるに当たりまして、被害者方々に二次被害が生じることのないようにする観点から、傍聴する方の不安や緊張を緩和するために適当な人を付き添わせることができると、こういう制度が設けられております。  その上で申し上げますと、仮に傷つくというような事態が生じた場合、現在、日本司法支援センター、いわゆる法テラスや検察庁におきましても、被害者方々から御相談がありますと、精神的支援を行っている関係機関や団体を紹介するというような支援活動を行っているというように承知しております。  法テラスの紹介先の例といたしましては、臨床心理士会の相談窓口あるいは医療機関に置かれた相談窓口等も紹介しているということでございます。また、検察庁の方でも、女性のカウンセラーとか臨床心理士のいる地方自治体の相談機関と連携をしているというようなことも聞いておりますし、また民間の犯罪被害者支援センター等とも連携関係を取っているというようなことを聞いているところでございます。
  107. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 この傍聴に関しては、加害者と被害者が対面することが和解の第一歩になるのではないかという御意見もあるんですけれども、私は、短い審判過程で加害少年の心の変化を期待するわけにはいかないというふうに思っていまして、長いスパンで考えていかなければならないと思います。そうしますと、やはり少年院における教育ということが問題になってくるだろうと。  少年院での教育について、改善もされていると伺うんですが、いまだに再犯率は六〇%以上を占めていまして、高いですよね。この問題点というのはどの辺りにあるのか、伺わせてください。
  108. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) まず、少年院では問題群別指導というのをしておりまして、個々の少年が持っている問題に合わせて特有の教育をするということをしてきておるつもりでございます。  例えて言えば、薬物でいえば薬物を断つ指導をするようにしておりますし、今議論をしていただいております被害者が生じているような事件を犯してきた子供たちに対しては被害者の視点を取り入れた教育というのをしております。これは、最近特に重大な結果を伴う事案が多いものですから、今御指摘があったように、できる限り再犯を減らしたいということと同時に、やはり少年の心を自分たちのやった非行にしっかりと向き合わせる、そして被害者の心情を十分に理解させる、その上で誠意を持って対応していけるような、そういった素地、土台をつくってやろうということでやっておるところでございます。  これは相手方がある話でございますので、他の問題群別指導と比べますと若干センシティブな部分がございまして、少年の両親がどういうふうに考えているかとか、あるいは被害者皆さん少年の謝罪を受け入れる気持ちになっておられるかどうかとか、そういったことも踏まえて検討しておるわけでございます。  こういったことを少しずつ積み重ねて、いろいろな分野での再犯ができる限り少なくなるように地味な努力を積み上げているというのが実態でございます。
  109. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 欧米では修復的司法が行われていますけれども日本においてこれを導入するのであれば少年院だろうという声が非常に大きいです。アメリカでは、少年院から出るときに、おまえは社会に何をするのかと十項目の約束をさせたりだとか、被害者に対してどう贖罪をするのかと宣誓をさせたりしています。それをコーディネーターが見届けて、被害者出席し、何度もミーティングを重ねてお互いにお互いを結び付けていくと、こういうことが行われているわけでございますが、日本少年院においてこうした修復的司法は可能なのかどうか、取り入れることは可能なのかどうか。また、それが難しいとするならば、どういう条件をクリアすればこれを取り入れることは可能だと考えられているのか。そうした修復的司法についての研究というのはされているでしょうか。
  110. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 我々なりに、諸外国で努力をしておられるものを現場の教官を中心に勉強をしているところでございます。  先ほど申しましたように、これを修復的司法というふうに呼ぶのがふさわしいのかどうか分かりませんが、実態としては、少年の改善が進んで、少年が直接謝りたいという意向を漏らした場合には、先ほど申し上げたような点を慎重に検討して実施の可否を決めているところでございます。  これを実施する場合には、謝罪の手紙を出させるという選択をする場合もございますし、施設内で被害者の方と面会をさせるという場合もございます。それから、更に進んで被害者等の下に赴いて謝らせるというような手法をつくることもございます。  非常にセンシティブな部分を含んでいる、事案によって被害者と加害者の関係というのが千差万別であるということがありますので、慎重に事案、事例を積み上げて努力していきたいというふうに考えているところでございます。
  111. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 次に、非行や事件を起こした少年の実名が報道されると、大変社会に復帰する際の妨げになります。実は、今現在において少年審判では被害者遺族の意見陳述が認められていますけれども、大変混乱が相次いでいるそうです。  四月二十八日の東京新聞にこんな記事が載っています。ちょっと読み上げます。  少年審判での意見陳述を認められた被害者遺族が、審判廷で加害者の少年に物を投げ付けたり、閉廷後、ネットに少年の実名を書き込み、態度を非難したりするケースがあったことが、二十七日、日弁連少年法問題対策チームの調査や関係者の証言で明らかになった。悪魔、あなたが死ぬまで許さないなど陳述する被害者もいたという。政府は今国会被害者審判傍聴などを認める少年法改正案を提出している。これに先行して裁判官の裁量で審判での意見陳述を認めたケースで混乱が出ていることは改正案の審議にも影響を与えそうだ。  こういうことでございます。当然、被害者遺族の皆さんは加害少年に対して怒りを持っているわけですから、ばり雑言を浴びせたり収まらない気持ちをブログにつづるのは、これは当たり前だと思います。多分、傍聴を認めればこうしたケースは数多く出てくるのではないでしょうか。  少年法第六十一条では、審判に付された少年又は少年のときに犯した罪で公訴を提起された者について、氏名、年齢、職業、住居、容貌等、本人を推知させるような記事や写真を新聞その他の出版物には掲載してはならないとするとされております。  被害者遺族が少年の実名や生育歴をブログに書き込んだ場合、法務省はこれは勧告を行うのでしょうか。また、この新聞記事のケースでは勧告は行ったのでしょうか。お聞かせください。
  112. 富田善範

    政府参考人富田善範君) お答えいたします。  委員指摘の新聞記事の件につきましては、少年又はその保護者からの被害申告もなく、私どもとして削除要請は行っておりません。  こういった事例についてどのような判断基準で行うかということになりますけれども法務省の人権擁護機関では、インターネット上のブログ等において、名誉毀損やプライバシー侵害等に当たる悪質な書き込みがされたとして被害申告がされるなどした場合、プロバイダー等に対しその書き込みの削除を求めるなど適切に対応しております。  少年の実名がインターネット上のブログ等に書き込まれた場合、これは主として少年のプライバシー侵害の成否という観点から、関連する最高裁判例等を踏まえ、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較考量し、その事実を公表されない法的利益が公表する理由に優越する場合に削除要請を行っております。  また、法務省の人権擁護機関がプロバイダー等に対して行う削除要請は、表現の自由に配慮し、被害者自ら被害の回復・予防を図ることが困難な場合に限って行っております。  本件につきましては、新聞等によりますと、一部実名等について削除、訂正等がされたりしておりますので、被害者自ら被害の回復・予防を図ることが困難な事案に当たるとは言えませんので、申立てがない以上、こちらから要請は行っていないということでございます。
  113. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 その基準、法律がどのように運用されているのかというのがよく分からないんです。  例えば、光市事件の本村洋さんが週刊新潮に少年の実名を書いたところ、法務省から勧告が来たといいます。しかし、ジャーナリストの日垣隆さんが文芸春秋に本村さんの奥さんと子供を殺した少年を実名で書いたにもかかわらず、勧告は来ていないといいます。  少年法第六十一条には罰則がありません。そうすると、書いた者勝ちになるのではないかというふうに危惧をいたします。法務省は、勧告するしないの線引きをどのようにされているのでしょうか。また、それは今後増えるであろうこうした情報流出に歯止めを掛けることになるとお考えになっているでしょうか、どうでしょうか。
  114. 富田善範

    政府参考人富田善範君) 委員指摘のように、少年法六十一条では実名を公表してはならないということになっております。  先ほどのプライバシー侵害に関する公表されない利益と公表する理由の比較考量ということにつきましては、少年の実名に関する推知報道に関する平成十五年の最高裁判決に基づいております。  それ以前におきましては、基本的に少年法六十一条の利益は上回るという見解が大勢を占めておりましたので、法務省としましても、基本的に実名が公表されればそれは人権侵害であるといった勧告をしてまいりました。しかし、平成十五年の判例が出てからは、これは慎重に比較考量して判断すべきという判例が出ておりますので、それに基づき、各事例に応じて慎重に判断し、削除要請するかどうかを考えているところでございます。
  115. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 では、今回の法改正により、犯罪被害者等傍聴できるようになった場合に、さらにブログやインターネット等を通して少年審判の中身を公表するようなケースがあった場合に、傍聴によって知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはならず、かつ、傍聴により知り得た事項をみだりに用いて少年健全育成を妨げ、関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は調査若しくは審判に支障を生じさせる行為をしてはならないというふうになっていますが、この場合は勧告を行うのかどうか、具体的にはどのようなケースを守秘義務違反とされているのか、これに当たらない情報はどういうものなのか、教えてください。
  116. 富田善範

    政府参考人富田善範君) 考慮すべき事情としては、具体的には、少年の年齢や社会的地位、犯罪行為の内容、情報が伝達された範囲少年の被る具体的被害の程度、書き込みの目的や意義、公表時の社会状況、公表の必要性、その事実を公表されない法的利益などの様々な事情を個別具体的に検討することになります。  過去の事例において検討しました内容としましては、死刑、無期懲役等の判決が宣告され、重大かつ社会的関心が高い事件であって、元少年らがいずれも犯行当時年長少年であった、あるいは報道の時点で成人に達していた、あるいは殺人という重大な犯罪を犯した後、逃亡し、所在不明に至っており、被疑少年の早期発見という公益的要素があったとか、少年が既に死亡した後の報道であるといったような事情を考慮して勧告あるいは削除要請をしない事例がございました。  今後とも、そういった具体的事情を見ながらプライバシー侵害の有無を慎重に検討して判断してまいりたいと考えております。
  117. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 その場合には、どのような罰則が想定されているんでしょうか。
  118. 富田善範

    政府参考人富田善範君) 人権擁護機関の行うものは、任意の調査に基づく勧告、そして説示、あるいは削除要請ということでございまして、現在のところ罰則等があるわけではございません。
  119. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 結局のところ、名誉毀損罪ですとか民事的な損害賠償ということになろうかと思うんですが、民事はもちろん、名誉毀損罪も親告罪ですよね。そうしますと、少年側が訴えるということになります。そうしますと、審判を受けている、あるいは更生に向かっている少年側が犯罪被害者等を訴えるということになります。これは現実的には大変難しいのではないかというふうに思います。訴えたことによって、反省していないというふうに受け取られかねません。その後の社会復帰にも悪影響が予想されますが、こうしたことから何らかの制度的な担保が必要ではないかと思いますけれども、その辺りはどうお考えになっているでしょうか。
  120. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) ただいま守秘義務違反等に対する制裁についてのお尋ねがあったわけでありますけれども、名誉毀損罪の告訴あるいは民事の損害賠償請求の提起につきましては、これは本来、少年が犯した非行あるいはその非行についての本人の反省の度合い等とは全く別次元の事柄であるというふうに考えます。  したがいまして、仮に被害者等傍聴により得た情報を用いて関係人の名誉を毀損した場合、あるいは違法にプライバシーを侵害して関係人に損害を与えた場合には、やはりこれは少年やその保護者等により適切な対応がなされるのではないかというように考えております。  こうしたことも含めまして、今の損害賠償あるいは名誉毀損罪あるいはそうした義務違反被害者に対しては、その後、審判傍聴あるいは記録閲覧謄写等が認められなくなるだろうというような事実上の不利益等々にかんがみまして、それに加えて守秘義務に違反した場合の罰則を設けることにつきましてはなお慎重な検討が必要なのではないだろうかというふうに考えております。現在の記録閲覧謄写につきましても同じような問題が生じ得るわけでありますけれども、これにつきましても直接の罰則は設けられておらないということでございます。
  121. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 その情報が漏れた場合に、少年の更生や社会復帰に悪い影響があるというふうに考えますが、社会復帰のための被害の回復というのはどのように行っていくというふうに考えていらっしゃるでしょうか。
  122. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) まずは御指摘のような情報が漏れるということがないように、この法律案では傍聴する者等に対し守秘義務が課せられ、また様々な担保措置が講じられているわけであります。  ただ、万一それでも漏れた場合にはどうするのかという、そういうお尋ねかと思いますけれども少年につきましては、その更生や社会復帰を図るために、少年審判それから処遇の過程におきまして個別の事情がきめ細かく配慮されることになっております。万が一、審判の過程で少年に関する情報が漏れた、そういう事態が生じた場合におきましても、関係機関におきましてそうした事情も考慮の上、更に少年の更生あるいは社会復帰に向けて適切な対応が行われるというように考えております。
  123. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 それでは、審判傍聴において遺族が物を投げたり、ばり雑言を投げかけたりするケースが続出しているわけでございますが、こうしたことについて今後どのような対処を行っていくのかを聞かせてください。
  124. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) この法律案におきまして審判傍聴を認める仕組みでありますけれども裁判所少年の年齢、心身の状態、事件の性質、審判状況その他の事情を考慮してきめ細かく相当性判断を行うということになっておりまして、その中には、例えば被害者の気持ちが収まっておらずに少年に対する報復的な行動を取ることが予想されるような場合、こういう場合には傍聴を許可しないことになるんだろうというふうに考えております。  そういう判断裁判所が行うに当たりまして、裁判所といたしましては、家庭裁判所調査官の調査報告書あるいは重大事件について行われる被害者調査の結果等を参考にするわけでありますので、少年の状態だけではなしに、被害感情等被害者側の事情被害者少年の関係についても十分把握できるのではないかというように考えております。  また、いったん傍聴を認めた場合でありましても、仮に被害者等が不当な行動に出た場合には、当然そういう行為を制止し、被害者に退席を命ずることもできるわけであります。  先ほど、非常に問題のある事例が続出しているのではないかという御指摘でありましたけれども、まれにそういう事例は生じた事実があったといたしましても、そういう事態が今後、今回の法改正によって続出するようなことにはならないんじゃないかというふうに考えております。
  125. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 結局、今被害者遺族の方たちは、事実を知るために民事の裁判を起こさなければならないというところに追い込まれているというふうに私は認識をしています。  この民事では、弁護士少年に対して大変厳しい追及をいたします。弁護士皆さんは、少年審判を対審構造にすると少年が萎縮するとか健全育成に良くないということをおっしゃるんですが、しかし、今現在においてすべてこれは民事でやられていることだというふうに私は思うんです。一方では健全育成ということを弁護士皆さんは言いながら、一方では同じ弁護士皆さんが民事の裁判において少年を厳しく追及している。反少年法的なそういう現場になっているというふうに私は思っています。  今回の法改正によって事実を明らかにすることがある程度できるということになるのであれば、こうした民事の裁判というのは今後少なくなっていくのかどうか、どのような見通しをお持ちでしょうか。
  126. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 被害者側が加害少年に対して提起する民事訴訟につきまして、もちろんいろいろな事情があるんだというふうに考えております。ただいま委員指摘されました少年審判記録を見たいという理由で民事訴訟を起こす事例もあるということは私どもも耳にしておりますけれども、一体そういう事例がどれくらいあるのか、数として把握しているわけではありません。  ただ、今回少年審判傍聴が認められ、また少年保護事件記録閲覧謄写が拡大されるということによりまして、仮に審判記録を見たいということで民事訴訟を提起するというような被害者方々がおられたとすれば、今回の制度改正によって記録を見る、記録を確かめたいと、審判の中身を確かめたいという要望は相当程度満たされるのではないかというふうに思いますので、そうした理由からの民事訴訟は提起されなくなるのではないかというふうに考えております。あくまでもこれは推測でございます。
  127. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 続いて、修正部分を中心にお話を伺っていきたいと思います。  家庭裁判所による被害者等への説明について質問いたします。  説明する側は犯罪被害者等基本法趣旨にのっとり説明に当たるべきであり、間違っても被害者等に対して二次被害を負わせるような対応をすることがないよう、この点、ある意味特殊な専門的技能が必要ではないかと本会議でも指摘をさせていただきました。懇切を旨として、和やかに行うのは加害少年に対してだけでなく、被害者に対してはそれ以上に懇切に説明することが必要になるかと思われます。  実際の運用については最高裁検討されると思いますが、修正案の提案者としてはどのような点に留意されて検討されることを期待しておられるでしょうか。
  128. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 家庭裁判所による被害者等への審判状況説明をすると。この修正は、傍聴された方はまだその状況が分かると思うんですけれども傍聴が許されなかった、許可されなかった、あるいはまた傍聴して真実を知りたいと思っても、法廷で加害者と目を合わすのはできないような、そういう心理的状況にある人などは傍聴できませんから、そういう方に審判状況説明してもらって、それでその中で被害者等が知りたいことが説明をしてもらえると、こういうことでこの修正ができたわけです。  そこで、犯罪被害者基本法でその理念というのは、やはりすべての犯罪被害者は個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい処遇が保障される権利を有すと、こういうことでありますから、当然、説明を受けるときには説明する側は十分そのことを配慮して、二次的被害が起きないようにすることはもちろん、懇切丁寧に説明をすべきだというふうに思っております。そのためには、いろいろな犯罪被害者の方の心理を十分にまた裁判所の方も研修などで身に付けていただきたいというふうに提案者の方は思っております。
  129. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 最高裁としてはどのように運用するつもりなのか、どのように説明をされるつもりでしょうか。
  130. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  今回の修正案に基づく被害者等に対する説明制度の運用についてお尋ねがございましたが、この制度が導入された場合には、実際の制度の運用につき必要な検討を行った上で、二次被害を与えないようにすることを含め、制度趣旨を踏まえ、被害者の方の心情に十分配慮した説明がされるよう努めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  131. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 次に、調査官について伺いたいと思います。  被害者遺族の方たちからお話を伺いますと、どうも今の調査官制度では限界があるのではないかというふうに私には思えます。調査官が被害者の声を全く聞いてくれない、被害者側の情報を裁判官に上げてくれない、こちらから出向いても追い返される、こうした積もりに積もった不満が調査官への不信感につながっているんだろうというふうに思います。  実際のところ、法務省にはどのような苦情がどれぐらい届いているか、これは最高裁に伺いたいと思います。
  132. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  委員指摘のような苦情は恐らく各裁判体の審判運営上の判断に関するものと思われますが、事務当局といたしましては把握しておりません。  以上でございます。
  133. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 これだけ週刊誌やいろんな本で指摘をされていることなんですよ。これを把握していないということはどういう状況最高裁としてあるのかということを疑ってしまいます。  たくさん苦情が届いていると思っていましたので、そうした意見を踏まえてどのような改善、研修が行われているのかということを質問しようと思ったんですが、状況が分かってないんじゃ、これ質問できませんね。どういうことなのか、最高裁の中はどういう状況なのか、伺わせてください。
  134. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) 平成十二年改正少年法被害者配慮制度が導入されたことも踏まえ、近年、全国の裁判所におきましては、犯罪被害に遭われた方やその御遺族、あるいは被害者支援に携わっている方、さらには犯罪被害者問題に関する専門家等のお話を直接伺い、家裁調査官を含めた個々の裁判所職員が被害者の方の心情や痛みというものを理解して応対するための研究会あるいは研修等を実施しているところでございます。  今後も、被害者の方の痛みやつらさといった心情に少しでも理解が深まっていくよう、職員に対する研修などを実施してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  135. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 加害者に対しては調査官の皆さんお話を聞くということはあるけれども被害者に対してはそういったお話を聞くという意識を持っていらっしゃらないのではないかと思えてなりません。  昨日も家庭裁判所の調査官の方が要望書を持ってこられましたけれども、これからは加害少年被害者等に双方に向き合うことになるわけです。家庭裁判所の裁判官や調査官の方々の負担もかなり増えていくのではないかと思います。被害者等の要望にきちんとこたえられるような、そうした体制にしていくためにも充実をさせていかなければならないというふうに考えるんですが、修正案の提案者としてはどのように期待をされているでしょうか。
  136. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) その点につきましては、裁判所の調査官などの仕事の量も増えるでしょうし、また、被害者の気持ちをよく理解するためのそういう専門的な、学問的な研修もされなければいけないと、そういうふうに思います。そうしますと、やはり現在の人的な人数ではとても対応ができないんだろうと、そのためには思い切った人員の増員も必要であろうというふうに思います。そういう意味では、私どもとしては、被害者皆さんにきちんと対応できるような人的な増員をきちっとできるように望んでおるところであります。
  137. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 今、その人員を増やす必要があるだろうというお話がありましたが、最高裁に伺います。  現在、既に人は増えないのに仕事は二倍に増えたという調査官の皆さんの声も聞かれます。少年審判における被害者等傍聴により、更に仕事量は増えると思います。例えば調査官の人数を増やす、あるいは加害少年側と被害者側、別々の調査官を付けて複数制にするなどのやり方、様々考えられると思うんですが、最高裁としてはどのように改善していくお考えでしょうか。
  138. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  これまで家庭裁判所の人的体制の確保に努めてまいりましたが、今後とも、今回導入されることになる制度の詳細や、あるいは制度実施後の運用状況、さらには少年事件の動向等を踏まえまして、必要に応じて適切に対処してまいりたいと考えております。  以上です。
  139. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 今までの議論の流れからいって、人員を二倍に増やすというふうに解釈してよろしいですね。
  140. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、今回の導入される制度の運用状況や、あるいは少年事件の動向等も含めて十分検討してまいりたいと考えております。  以上です。
  141. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 それはいつまでに検討されるんでしょうか。
  142. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) 今回の新しい制度が導入され、その後の運用状況を十分見極め、さらには先ほど申し上げました少年事件の動向等も見極めながら検討してまいりたいと考えております。
  143. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 それは一年ですか、二年ですか、十年ですか。
  144. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) それは、これから導入してどの程度の今度の制度の利用者が増えるか、そういったことも含めて検討しなければなりませんので、一年なのか二年なのか、そこら辺については今の時点で確定的なことはお答えできないことは御理解いただきたいと思います。
  145. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 そうすると、十年の可能性もあるというふうに理解してよろしいでしょうか。
  146. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) その十年というスパンがどういうことで出てきたのか分かりませんが、先ほど申し上げましたように、必要があれば一年後でも対応することになるでしょうし、それは三年後ということもあり得るかと考えております。  以上です。
  147. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 十年後と言ったのは、あなたがやる気がないのではないですかといった私の皮肉です。  続いて、付添人について質問をいたします。  家庭裁判所被害者等審判傍聴を認めるには、付添人意見をあらかじめ聴くという慎重さが必要だと私は思います。一方、多少懸念があるのは、私の事務所にもファクスや郵便で大量に各地の弁護士会から反対意見が送られてきていますが、被害者等の支援を主に活動されてきた弁護士の皆様以外の弁護士会の多くが今回の少年審判における被害者等傍聴に反対していることです。弁護士である付添人の多くもこのような考えを持っておられるかもしれません。実際は、その少年ならば心身に及ぼす影響がないような場合でも反対するようなケースも出てくるかもしれません。  そこで質問ですが、家庭裁判所付添人意見にどの程度左右されるんでしょうか。もちろん全く影響されないというのも問題だとは思いますが、必ず拘束されるというのも問題ではないかと思います。修正案提出者のお考えを聞かせてください。
  148. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 少年審判傍聴というのは少年にとっては大変大きな問題でございますから、したがって、判断するためには専門の弁護士付添人として付けて、そしてその意見を聴くということにしたわけでございます。  そこで、裁判官がその付添人意見にどの程度拘束されるのか、あるいは拘束されないかということにつきましては、それはそのときそのときの事件内容によっていろいろその裁判体が判断をすることでありまして、付添人意見に拘束される、あるいは拘束されないというような形での裁判官の判断では私はないと。裁判官が独自の自由な判断少年の健全な育成に阻害がある、可能性があるとなればそれは許可をしませんし、そうでないということで相当というときには許可をされると、こういうふうに裁判官が判断をされると思います。
  149. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 松浦大悟君、質疑時間、終局しております。
  150. 松浦大悟

    ○松浦大悟君 今回の法改正弁護士皆さんもお考えを変えていかなければならない部分も出てくると私は思います。今後どのように弁護士皆さん被害者等傍聴に対処されることになるのか、期待をしたいと思っております。とにかく、これは少年法の精神を守りつつ被害者遺族の方たちの尊厳も守るという、この両方を両立させていかなければならない話だと思いますので、そのことを改めて確認をさせていただき、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  151. 近藤正道

    近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  いつも最終回に質問をやっておるんですが、今日は私の都合を入れていただいて、委員会皆さんの御配慮で、ツーランクアップで質問をさせていただきます。大変ありがとうございました。  今ほど弁護士皆さん意識を変える必要があると、こういうお話もございましたけれども、なかなか、今回の被害者少年審判への傍聴を認めるという、そういう改正法案について、私どもとしましては修正案も含めて納得できないというのが本音でございます。  少年健全育成目的として少年法存在するわけでございますが、少年の言い分を受け止める、そして少年自ら内省を深め更生の意欲を育てるという少年審判の教育的、福祉的な機能がこれで後退させられるんではないかと、こういう懸念を持っております。また、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときという傍聴要件もあいまいでありまして、被害者による記録閲覧謄写要件を緩和する点についても、少年や関係者のプライバシー情報の流出の危険を増すことになり、少年法目的実現の妨げとなりかねない、こういう懸念があると、こういうふうに考えております。ですから、各地の弁護士会あるいは教員の労働組合等もたくさん反対している理由はそこにあるんだろうというふうに思っております。  五月の二十七日の衆議院法務委員会審議の中で社民党の保坂展人議員がこういう質問をしておりました。原則傍聴許可、例外が不許可なのか、あるいは個々の裁判体の判断に従って適不適を判断するのか、こういうふうに問うたところ、最高裁は、様々な事情を総合考慮して、裁判所の方が個別の事情に応じて傍聴を認めるか認めないか、これを判断するんだと、こういうふうに答弁しておりますし、法務省刑事局も個々のケースによって法律に列挙された事情を考慮した上で判断をすると、こういうふうに答弁をされております。  参議院に移ってまいりましたので、もう一回この点について法務省刑事局にお伺いしたいというふうに思いますが、原則傍聴許可、例外不許可ということではなくて、個々の裁判体の判断に従って適不適を判断するということでよろしいのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。
  152. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今回の法律案における傍聴を許可するかどうかの枠組みでありますけれども、条文にありますように、裁判所は、傍聴を認めるかどうかの判断をするに当たっては、適正な処遇選択や少年の反省を深める妨げにならないよう、個別の事案ごとに少年の年齢や心身の状態等の要素を考慮いたしまして、きめ細かくその相当性を判断するものだというように考えております。
  153. 近藤正道

    近藤正道君 そうしますと、原則傍聴許可、例外が不許可と、こういう言わば決め付けではないというふうに私は理解をさせていただきたいというふうに思っています。  そこで、修正案の提案者にお聞きをしたいというふうに思っています。  この修正案では、傍聴許可の要件として、少年の健全な育成を妨げるおそれなく相当と認めるとき、こういうふうな文言になっておりますが、この文言の意味でありますが、明らかに健全育成に反するとまでは言えなくとも、健全育成に反するおそれが否定できない、こういう場合には傍聴は許されないと、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  154. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 私たちが、少年健全育成を妨げるおそれがなくと、こういう文言を入れましたのは、当初の原案には、少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判状況、その他の事情を考慮して相当と認めるときだと、こうなっていたわけです。だから、これでは非常にあいまいだと、こういうことで、しっかりしたやはりここに基準を設けなければいけないんじゃないかということで、そこで、少年の健全な育成を妨げるおそれがないと、こういう文言を入れました。したがって、そのおそれがある場合には認められないと、こういうことであります。
  155. 近藤正道

    近藤正道君 分かりました。健全育成に反するおそれが否定できない、こういう場合にはそうすると傍聴は認めないということでよろしいんですね。
  156. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 立法趣旨はそういうことでございます。おそれがあるというときには認められないということであります。
  157. 近藤正道

    近藤正道君 傍聴時における必要的付添人制度について質問をしたいというふうに思っています。  修正案では、弁護士である付添人がないときには、少年及び保護者がこれを必要としない旨の意思を明示したときを除き、弁護士である付添人を付さなければならないと、こういうふうになっております。しかし、反省している少年保護者ほど、弁護士を付けますと被害者から反省していないんではないか、こういうふうに思われてしまうんではないかと、こういうふうに悩むケースが非常に多いわけでありますし、逆に、非行少年の家庭というのは親子関係が崩壊をしている、そういうケースが多々見られるわけでございます。そのような場合には、親が弁護士なんか要らないと、こういうふうに割と簡単に決め付ける、こういうケースが結構ある。私の体験でもございます。実際、最高裁の資料によりますと、故意致死事件のうち八割前後しか弁護士付添人選任されていない、こういうデータがございます。つまり、約二割の故意致死事件には弁護士付添人が付いていないわけでございます。  このようなことが現実としてあるわけでありますので、こういうような状況、実態を前提といたしますと、修正案でいったとしても、結果的にはせっかくの国選弁護人・付添人制度は骨抜きにされる、そういう余地が出てくるんではないかと、そういうふうに懸念するわけでございます。つまり、少年及び保護者がこれを必要としない旨の意思を明示したとき、これを厳格に解するか、あるいは割とラフに解するかによって、つまり二割は弁護士が付いていない、重大事件でも付いていない事実がありますので、ここのところの縛りがきちっとしているかしていないかで随分差が出てくる、私はそういうふうに思います。  そこで、先ほども、午前中も少し議論になりましたけれども少年及び保護者がこれを必要としない旨の意思を明示したときを除きと、この規定立法趣旨といいましょうか、なぜこれを設けたのか、お聞きをしたい。  つまり、私は、まあ、たかが傍聴ではないかと。傍聴なんだから、検事が出てきて審判廷でちょうちょうはっしやるときであればそれは付添人は絶対必要だけれども、まあ傍聴なんだから、どうしても付添人必要ないんではないか、こういうふうに簡単に思われては困ると。これは傍聴であるけれども、同時にやっぱり意見聴取をやるわけですよね。今までであれば、必要なときに入ってきて、被害者入ってきて、意見聴取だけやって帰っていく。今度は最初から最後までずっといるわけです。単なる傍聴ではなくて、じっとそこで一部始終を全部見ているわけです。そして、これは後でも質問しますが、その中でいろんなトラブル、事件が現に起きている、今までだって起きている。そういうときに、単に傍聴だからという、そういうもし簡単な、安易と言ったら失礼ですけれども、簡単に考えることでやったとしたら、これは大変やっぱり問題があるんではないか。  ですから、私はこれは厳格に解するべきだというふうに思うんですが、どうして少年及び保護者がこれを必要としない旨の意思表示をしたときには弁護士付けなくてもいい、付添人を付けなくてもいいという、こういう規定を設けたのか。午前中にも議論ありましたけど、もう一回、そういう私は問題意識でお聞きしますので、発議者からひとつ御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。
  158. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) この付添人というのは、そもそも原案には付いていなかったところでございます。  そこで、私ども考えましたのは、まず傍聴申出があったら、付添人が付いている場合はいいとして、付添人が付いていない場合には必ず付添人を付けると、これが前提としたわけです。そこで、少年の側からすれば、これは当然法律付添人が付ける権利もあると、こういうことの制度設計をいたしました。そこで、そうしますと、裁判所の方としましては、この少年事件についてはあなたの方で付添人を付けることができるんだと、法律でそういうふうに決まっている、そういうことを裁判所としてきちっと説明もされると。そうしますと、そこできちっと少年あるいは保護者に対してその説明をして、そしてそのことを納得してもらって、その上であえて、保護者もそれから少年も双方がこれに対して必要ないと、こういうことを明言されれば、私どもとしてはあえてそこで強制的な、法的に弁護人までは付ける必要はないんではないかと、こういう判断をいたしました。  ちょっと細かくなりますけれども、私ども、この法案を見た場合に、少年健全育成にとって、少年法の理念に反して少年健全育成に害するのではないかというような心配もありましたので、一つは、実態的なものとして、少年の健全な育成を阻害することがないというところに制限を入れまして、そこで一つの歯止めを掛けました、実態的には。そして手続的には付添人法律で付けると、こういうことで手続的にはその保障をいたしました。  しかし、この手続的な保障のところでは、委員も御存じのように、検察官が付くようなときには、これは強制的に付添人が付くわけです。それは明らかに、言わば刑事被告人あるいは少年、それと相対する形で専門の検察官が付いたならば、それに対してはそれに対抗する形で弁護人を、弁護士付添人を付けなきゃいかぬと、こういう構造になっていると思うんですが、この場合は、委員言われるように、私ども傍聴ということを安易に決して考えているのではありませんけれども、しかし、検察官が付く場合とはちょっと違った形だというふうに判断もいたしまして、あえて保護者少年がそろって必要ないということを言われるときには付ける必要はないのではないかと、こういう判断をしたわけであります。
  159. 近藤正道

    近藤正道君 発議者の御答弁でありますが、私には、検察官が立ち会っているときではない、単なる傍聴ではないかという、そういう思いがやっぱりちらほらするなという、そういう感が否めない。  やっぱり傍聴であっても、さっき言ったように意見聴取ということと結び付いているわけでありますので、もう少しやっぱり慎重であってもらいたいし、私はそれこそ、傍聴であっても必要があれば裁判所が職権で付添人を付ける、こういう制度だって私は考えてもよかったのではないかというふうに思っておりまして、そういう意味では、明示の意思といいましょうか、これはやっぱり非常に厳格に解して縛りを掛けていただきたいというふうに思っています。  いろいろ聞いたところでございますけれども、アメリカのニューヨークの法律、これは家庭裁判所法なのか少年法なのか、ちょっと名前はっきりしないんですが、ここでは以前、少年あるいは保護者の請求によって弁護人を選任する、しかし請求がなければ付けなくてもいいと、こういう今の皆さん修正意見とちょっと似たような制度になっていた。ところが、弁護人選任が非常にやっぱり低いということの中で法改正がなされて、弁護士がいったん必ず選任をされる、そしてやっぱり付いていろいろな話をした上で、その上で本人たちがどうしても必要ないと言ったときには辞めていただくと。  つまり、少年及び保護者が必要ないと言ったときにはいいというのは、全部分かった上で放棄しているのか分からなくて放棄しているのか、そこの見極めが難しいんですよ。ですから私は、やっぱりちゃんと付添い弁護人を付けて、付添い弁護人が、弁護士がなぜ付くのか、付添人がなぜ付くのかという話をちゃんとして、分かってもらって、その上でなおかつ、私はあなたのような人は要りませんと言ったときに初めてやっぱり権利の放棄を認める、事実上そういうふうなことが必要なのではないか、そういう場合に明示の意思だというふうに私は是非すべきだと。それが立法者のやっぱり意思なんだというふうにこの委員会の場で是非言っていただければ大変有り難いと。そのぐらいやっぱり縛りを掛けないと、安易に付添人なんか要らないという形になる可能性が非常に多い、私はそういうふうな懸念を持っておりますが、いかがでしょうか。
  160. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 委員御懸念のあるところはよく分かりました。  そういうこともありますので、裁判所の方としては、しっかり丁寧に、まさに懇切丁寧に保護者少年付添人が付けられることをしっかり話をするということは、これは私は当然のことだというふうに思っておりまして、最高裁判所の規則の方でいろいろそのことは決めるということになると思いますが、そこは是非私どももそういうふうに運用してもらいたいというのが私ども考えでございます。  その上、いろいろ御懸念もあるかと思います。したがって、私どもは、原案にはなかった、取りあえず三年間この法律施行して、改正案を施行して、そしてその運用状況ども見まして、そしてしかるべく不都合なところはまた変えていくということにしたわけでございます。
  161. 近藤正道

    近藤正道君 裁判所少年あるいは保護者に懇切丁寧に説明をする、それは当然のことだと思うんです。  ただ、私は、裁判所が懇切丁寧に説明するだけではとても信用できないというか、信じられない。やっぱり付添い弁護士少年の前にちゃんと立って、私が付添人弁護士です、そして我々の仕事はこうなんですということをやって初めて、ああ、弁護士というのはこういうものかと、少年あるいは親たちが分かって、いろいろ議論をして、その上で意思表示をする、そういうことをきちっとやっぱり間に入れていただきたい。  それをしないと、単なる懇切丁寧な説明なんというのはそれは当てにならない。発議者もそれはお分かりだと思いますけれども、そういう具体的な仕組みづくりをちゃんと立法者意思としてこの中にやっぱり盛り込ませるべきなのではないでしょうか。もう一度御答弁いただきたいと思います。
  162. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 委員指摘されていることは十分承知であります。  裁判所の方としましても、この付添人がどういう者であるのか、そしてその付添人弁護士という職業的な人だと、そしてその弁護士は経験もあり、知識もあり、そしてそれは少年のために活動をしてくれるものだというようなことを、それは裁判所としてはそういう趣旨のことをきちっと説明をさすということは、私どもは期待をいたしております。
  163. 近藤正道

    近藤正道君 次に、傍聴の許否の判断主体であります家庭裁判所意味についてお尋ねしたいというふうに思っています。  法律案では、「家庭裁判所は、最高裁判所規則の定めるところにより」、途中省略いたしますが、「傍聴することを許すことができる。」と。これは法案第二十二条の四というところに規定されているわけであります。修正案でも同様の文言、書きぶりが踏襲をされております。  お聞きしたいことは、この主語である家庭裁判所、これは何を指すのかということでありまして、常識的には、家庭裁判所裁判所でありますので、個々の裁判体あるいはその裁判体を構成する裁判官、これはもう当然のことでありますが、少年審判におきましては、通常の刑事事件とは異なって、裁判官だけではなくて、調査官あるいは書記官も実務的に大きな役割を担っております。とりわけ事前調査などでは本当に圧倒的に裁判所の調査官あるいは書記官が実際仕事をやっているということでございます。  ですから、実際に少年と圧倒的に向き合って、その少年少年の周囲、あるいは被害者等事情をよく知っておる、先ほどいろいろ問題もあるという話もございましたけれども、この事情をよく知っている裁判所の調査官、書記官が事実上登場できるような、具体的に役割を発揮できるような仕組みを是非考えていただけないか。裁判所の、最高裁の規則を改正する際に、調査官、書記官も傍聴許可に実質的に関与できる、そういう余地をしっかり残すような、そういう規定に私はすべきなんではないか、こういうふうに思っておりますが、修正提案者、これは書きぶりとしてはほぼ同じなんですけれども立法者としての意思、この裁判所ということの中に込めた皆さん意味というものについて御披瀝をいただきたい、こういうふうに思います。
  164. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 今委員指摘になったところは私も当然のことだろうというふうに思っております。  とりわけ、調査官の方は要保護性についてしっかり調査をされるわけでありますし、その調査官は本当によく少年のことも知っておられる。そういう調査官の話も裁判官は聴くということは、私はもう当然だというふうに思います。また、書記官の意見も当然聴くべきだと思いますし、そういう少年審判で許可をするかしないか、あるいは説明をするとか、そういうときにはやはりよく少年のことを知った者が説明をすると、こういうことは非常に大事なことだと思っております。
  165. 近藤正道

    近藤正道君 ちょっと時間が中途半端で恐縮なんですけれども、先ほど弁護士付添人がなぜ必要なのか、単なる傍聴といってもやっぱり大変問題があるんですよと、こういうお話をさせていただきました。  被害者傍聴といっても、事実上、被害者審判廷に入って意見を述べるという機会は二〇〇〇年の少年法改正のときに部分的に実現しているわけですよね。意見聴取をするという形で実現しているわけでありますが、最高裁にお聞きしましたら、二〇〇〇年四月の法改正以降、既に千二百三十四件の被害者意見聴取が行われていると、こういうことでございます。  これらのうちで九十件ぐらいの被害者意見聴取少年が現に在廷している審判廷で行われているということでございますが、日本弁護士会、日弁連の調査によりますと、事故も結構起こっているということでございます。何か九十件のうち五件の割合だと、こういうことなんですが、一般の刑事法廷と比較すると、九十件で五件というのはかなり多いんではないかなと。一般の刑事法廷でそうめったにこういうことというのは余り起こらない。九十件に五件というのは率としては非常に私は高いんではないかというふうに思っています。  この辺の情報について最高裁に聞くんですけれども、はっきりしたことを教えてくれないんです。先ほど来の話もきっと多分出たと思うんですが、被害者少年にまさに床に正座しろというふうにどなったり物を投げ付けたり、あるいは審判後、インターネットで少年の実名をさらすだとか、あるいは遺族が少年に面前で死ぬまで許さぬぞと、こういうふうに述べたとか、あるいは殺意が認められない事案であるにもかかわらず、そんなに人を殺したかったのかなどと怒ったとか、あるいは発達障害と診断されている少年が、遺族が審判出席したことによって体調を壊したとか、いろんなケースが報告をされているわけでございます。  九十件のうちの五件ということなんですが、これはたまたま弁護士付添人がいて、その人を通じて日弁連が集計した数字でありまして、付添人がいないところでどんなことが起こっているか分からない。また、聞きますと、裁判官というのは、そういうことを報告すると自分の言わば不始末になるわけで、余り報告したがらない、そういうこともやっぱり厳然たる事実としてあると。ですから、少年審判廷でのトラブルというのはもっと大きな確率であるんではないかと私は思うし、多分そうなんだろうというふうに思っています。  とにかく審判廷というのは小さいわけですよ、スペースが。聞きますと、私も何度か少年審判廷行っていますけれども、二十五平米からせいぜい三十五平米ぐらい、十五畳とか二十畳ぐらい、このぐらいですね。つまり、我々議員会館の議員室がありますよね、あそこぐらいのスペースか、あるいはあれよりはちょっと大きい、隣の秘書室合わせたスペースよりはずっと小さいわけですよ。だから、議員室からちょっと大きいぐらいのところに裁判官も少年被害者も入るわけですよ。  先ほど最高裁は、角の方に座らせておくみたいな話をしていましたけれども、そういう小さいところに入ったときに一体どういうふうになるんだろうかと。私は、一部始終を見たい、目撃、やっぱりちゃんと見届けたいという気持ちはよく分かるけれども、しかし、実際少年審判廷を経験した者として、ああいう小さいところに入ったとき、まさに萎縮するか、あるいは子供によっては逆に何か反発するような、そういう事態にならないだろうかということを非常に心配をするんです。  最高裁にお聞きしますが、被害者少年とのトラブルのケース、この調査はしているんですか、していないんですか。私が聞いても、何かはっきり教えてくれない。これは委員会の場ですから、調査をちゃんとしているのかしていないのか。  とりわけ二〇〇〇年の少年法改正被害者意見聴取制度というのができて、被害者少年があの小さいところで一緒にいる、そういう場面が出てきたんですけれども、それが今度は最初から最後まで一緒にいるわけですよ。今までの瞬時の同席の場でもいろいろトラブルが起きているというんだけれども、どのぐらいのトラブルが起きているのか、皆さんどう把握されているのか、それを聞かしていただいて、今日の私の質問は終わりにしたいというふうに思います。
  166. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) その質問は私も答えますよ、私も答えていいですか。
  167. 近藤正道

    近藤正道君 はい。
  168. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) まず、最高裁二本松家庭局長。簡潔に御答弁ください。
  169. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) 結論から申し上げますと、そういった点についてこちらの方で正式に調査等をして件数等を把握してはおりません。ただ、いろいろな形で報告が上がっておりまして、先ほど委員指摘のような、審判廷で物を投げ付けた、あるいはインターネットで情報が公開された、さらに意見陳述の際に少年に対して悪魔とかいろいろ厳しいことを発言されたという、そういったケースについては把握しております。  以上でございます。
  170. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 何度も申し上げておりますように、少年法第一条の法目的、これは絶対に守るわけでございます。先生がいろいろおっしゃっている御心配の要素については、それがないようにないように我々も努力しなければいけませんし、家裁の方でもきめ細かく判断をするんだろうと考えております。  先ほど先生がおっしゃった九十件のうち、つまり意見陳述を家裁の審判廷の内部でやったという意味ですね、先生、五件、いろんなトラブルがあったということでありますが、それは私が何度も申し上げておりますように、最愛の御家族を失った被害者や遺族の皆さん方のお気持ちというものを我々はもっと重く見なくちゃならないと。全部蚊帳の外じゃないか、加害少年少年審判とか少年法で守られているのに我々遺族は蚊帳の外じゃないかと、そういう御不満がたまたま意見陳述の中で爆発をしたと。そう考えれば、今回傍聴制度を認めればその心配はぐっと減るだろうと、こう考えております。
  171. 近藤正道

    近藤正道君 時間でやめますけれども、私が申し上げたいのは……
  172. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 簡潔におまとめください。
  173. 近藤正道

    近藤正道君 はい。  一般の刑事事件法廷よりもやっぱり少年審判でのトラブルの方が割合としてはずっと多いんではないかということを指摘申し上げさしていただいて、続きは次回させていただきたいというふうに思っています。  終わります。
  174. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 少年法に入る前に一問だけ、私も昨日の最高裁判決についてお伺いをしておきたいと思います。  最高裁判決というのは……
  175. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
  176. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 速記を起こしてください。
  177. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 やり直します。  昨日の最高裁判決について、まず一問だけお伺いしておきたいと思います。  昨日の最高裁判決、つまり結婚していない日本人の父親とフィリピン人の母から生まれた子供十人が日本国籍の、国に確認を求めた訴訟でございます。これについては、最高裁判決は、一言で言うと、家族観の変化を指摘をした上で、国籍法の婚姻要件、今の婚姻要件は不合理な差別であるとして、憲法十四条一項に違反する、つまり違憲だということを明確に判決で位置付けたものでございます。  これを受けて、私ども公明党、先ほど、昼休みでございますが、法務大臣のところにも行かさせていただいて、やはりこの判決を受けて早急に対応すべき課題があると、私ども公明党としてもこう認識をいたしまして、今から申し上げる二項目について、是非とも法務省として、法務大臣として直ちに対応すべきであるということで二点を申し上げました。  一つは何か。この最高裁判決趣旨を踏まえた法改正の問題を速やかに行う、これが一点でございます。もう一点は、法改正が行われるまでの間に、国籍に関する実務、いろんな問題ございますが、これについては最高裁判決趣旨を踏まえて十分に尊重した取扱いをすること。  以上二点を大臣に申し上げました。大臣の見解を求めます。
  178. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 先ほど、このお隣の大口部会長始め、郷土の先輩の木庭健太郎先生や神崎先生、浜四津先生まで、六人の皆様方でお越しをいただいて、昨日の最高裁判決を受けた法務大臣並びに法務省の態度についての御要請をいただいたわけでございまして、それは、最高裁立法機関ではなくて、国の唯一の立法機関国会でありますから、最終的には皆様方や我々の責任に帰するところでありますが、あのような判決が出た以上は、国籍法第三条をそのままにしておくわけにはまいりませんので、改正方向政府検討いたしますが、是非国会も速やかに御判断できるようにお話合いをしていただければ有り難いと存じます。  問題は、その間に、つまり法改正までの間に、今回の裁判を起こした方々は十人とかそういう数でありますが、かなりの数の皆さんが自分も同様の身分であると。日本人の男性、外国人の母親から生まれた、そして生まれてから父親から認知を受けたと。大体、胎児認知などということは知らない例えばフィリピン女性がほとんどなんではないでしょうか。胎児認知を受ければ日本国籍であって、生後認知だと日本国籍にならないなどということは、我々日本人ですら余り知らない。とすれば、東南アジアの女性、外国の女性がそのことを知って対応しているとは思えない。胎児認知を求めた方は極めて例外ではないかと思いまして、そういう方々が大勢おられて、今後、日本国籍を求めてこられるであろうということが十分予測されるわけでございまして、法改正前であっても最高裁判決趣旨を生かした取扱いをしなければならない、こう考えております。
  179. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それでは、是非大臣が言われた方向でお取組をいただきたいし、国会国会でどういう形でこの取組ができるか、ここも我々も検討しなければならない課題だ、こう認識をいたしております。  さて、少年法改正案でございますが、私ども公明党、この少年法改正案、被害者の権利、被害者の救済という視点から、是非とも必要な改正の一つである、こう認識をし、取り組んでまいりましたし、また衆議院におきまして与野党を超えてきちんとした形での修正もできた上で参議院に送付をいただきました。その意味では、私どもは、この少年法改正につきましてはこの国会において是非とも成立をさせたい、そんな思いで審議に臨んでおるところでございまして、今日もいろいろ論議ございました。衆議院でも論議がございましたから、私は賛成の立場を明らかにした上で、それでも皆様方からいろんな点の御指摘をいただいている、この辺も含めて、午前中の議論とダブる点もあるかもしれませんが、確認の意味で答弁を求めていきたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、改正案では少年審判傍聴が変わっていくわけですけれども、事実を知りたいという被害者方々の要望は、記録閲覧謄写制度審判結果通知制度対応すれば足りるんじゃないか、こういう意見を持った方たちもいらっしゃいます。それ以上に、この傍聴を認めるべきという立法事実は存在しないではないか、こんなこともおっしゃる方もいらっしゃる。これらの点について当局としてどう答えるのか、伺っておきたいと思います。
  180. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今委員が御指摘になりました被害者による少年審判記録閲覧謄写制度審判結果の通知の制度、これは平成十二年の少年法改正で新設された制度であります。この制度は十三年四月から施行されているわけでありますけれども、その後、少年事件により家族を亡くされた方から、新しいこのような制度を用いてもなお審判傍聴をしたかったという御意見が寄せられております。先ほど大臣が披露されましたのはその例でございます。また、犯罪被害者団体からも傍聴を認めるべきだという意見が示されておりますけれども、そうした御意見もこの十三年四月以降、つまり新しい制度が始まった以降の御意見も含まれているわけであります。  したがいまして、被害者方々は、十二年の改正で設けられました記録閲覧謄写あるいは審判結果の通知ということではなしに、やはりそれだけではなく、審判におけるやり取りを自らその場で直接見聞きしてその具体的な状況について十分な情報を得たい、こういう強い要望を有しておられるわけであります。これは、十二年の法改正で設けられました記録閲覧謄写制度等によって満たされることのない別次元のものであるというふうに考えられますので、今回、そうした御要望にもこたえ得るように新しい傍聴制度を導入するというような法案を提出したわけでございます。
  181. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 現行法でございますが、この少年審判規則を見ますと、第二十九条でございます、在席の許可という項目なんですけれども、この規則二十九条に基づいて被害者等審判傍聴が認められるんじゃないかと、わざわざこういった形にする必要ないんじゃないかといった意見もございますが、これについてはどうですか。
  182. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 御指摘少年審判規則二十九条といいますのは、「裁判長は、審判の席に、少年の親族、教員その他相当と認める者の在席を許すことができる。」と規定しているわけです。これは、審判の必要がある場合に、少年生活環境や処遇に関係の深い親族、担任教諭、雇主、保護観察官等を在席させるための規定と解されておるところであります。  そういたしますと、そうした審判の必要ということを離れて被害者等審判状況を見聞きしたいという場合に、この条項に基づいて傍聴を認めることは困難であると考えたものであります。
  183. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一点、こうやって少年審判傍聴を認めることによって、審判原則というのは非公開、これが理念でございます、これが変化するのではないかと、これも批判する側の大きな意見の一つになっておりますが、この点についてはどんなふうにお考えでしょうか。
  184. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 御指摘は、被害者傍聴により、少年の健全な育成を期するという少年法の理念が変化するのではないかという御趣旨というふうに理解いたしましたけれども少年の状態や被害者等との関係は様々であります。この法律案では、裁判所による適正な処遇選択や少年の反省を深める妨げにならないよう、裁判所において傍聴を認めるか否かについて、少年の年齢や心身の状態等の事情を考慮してきめ細かく判断することになっております。また、必要に応じ、被害者等に退席してもらうこともできると考えられております。  このように、今回認められます少年審判傍聴は、あくまでも少年法の理念である少年の健全な育成を妨げない範囲で認めるものでありまして、この制度の導入によって少年法の理念あるいは性格が変化することはないというように考えております。
  185. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そこで、提案者、先ほどから同じことを伺っているような形もあるんですけれども修正の一番最初の二十二条四の第一項の相当性の判断ですね。「少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるとき」と、こう修正したと。これについて、先ほど御答弁の中では、少年法の精神自体がこういうものがある、でもそれを明確にするためだと、そういう御意見をおっしゃってもおりました。ただ、そういう意味ではわざわざ、そういう少年法の理念であるんであるならば、あえてまたここに書き加えることにどういう意味があるのかという意見も出てくるんだろうと思うんです。  その辺明確に、なぜ「少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるとき」というふうに修正なさったのか、御提案趣旨を伺っておきたいと思います。
  186. 大口善徳

    衆議院議員大口善徳君) 木庭委員にお答えいたします。  これまでも何回も答弁をさせていただいておりますけれども、やはり少年審判は、少年の健全な育成を図ることを目的としていると、こういう少年法の理念、目的というのは、これは極めて大事なことであると。また、これは犯罪被害者基本法の精神、やはり犯罪被害者の尊厳にふさわしい処遇をしなければいけない。真相を知りたいという被害者の思いにおこたえするために、被害者等による傍聴というものを今回認めさせていただいた。その関係性について、やはり衆議院でも相当議論があったわけであります。まさしく少年審判のこの目的を損なうのではないかとか、それで歯止めはどういう歯止めを掛けるんだとか等々、そういういろいろ議論がございました。  そこで、やはり当然少年法目的ということで、少年法の枠組みにあるわけでありますけれども、あえてここはきちっと「少年の健全な育成を妨げるおそれがなく」と、こういうことを明記することによって、この相当性の判断をする場合において、これをきちっとした基準として裁判官が判断できるようにこういうことを明記させていただいたということでございます。
  187. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 政府原案の方も、これ被害者等少年審判傍聴についてこう記しております。少年の年齢及び心身状況事件の性質、審判状況その他の事情を考慮してと、こうあります。適正な処遇選択や内省というか心の中の深化が妨げられるとして傍聴が許されないというのは、こういう一応条件は付けておりますが、具体的にどのような場合が傍聴が許されないということになるのか、当局に伺っておきたいと思います。
  188. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) どのような場合に傍聴を許しあるいは許さないのかといいますのは、個別の事案を離れて一概にはなかなか述べにくいわけですが、あえてモデル的に例を挙げさせていただきますと、例えば少年の処分を決めるために、その少年が性的な虐待を受けていた事実など少年のプライバシーに深くかかわる事項に立ち入って話をしてもらう必要がある場合、あるいはいじめを受けていた少年がいじめをしていた少年を傷つけた事例などで、少年被害者等の間に特別の関係があって、被害者等を前にしては言いたいことが十分に話せない場合、こうした場合などは傍聴を許すことが必ずしも相当ではない、つまり少年法目的、理念に照らして適当ではないと判断される場合に当たり得るのではないかというように考えております。
  189. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 被害者の方は、そういったこれは傍聴が許されないというふうな判断がもしなされて、結果として傍聴が許されないような場合、これは対抗手段というか不服申立てのようなことができるのか、これも当局に確認をしておきたいと思います。
  190. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) この法律案では、被害者等傍聴を認めない場合に被害者等も不服申立てをすることは、これはできないというふうに考えております。そのような仕組みは設けられていないわけであります。  その理由でありますけれども少年保護観点から、少年審判手続は特に早期に審判を行うことが要請されております。仮に不服申立てを認めるということになりますと、本体であります少年審判手続の進行に影響を与えましてこれを遅延させるということにもなりかねないことから、そのような仕組みにしなかったものでございます。
  191. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つは審判廷の中の問題でございまして、先ほど最高裁の方から御答弁はありましたが、やはり現在の審判廷、狭いですよね、どうしても。そういった上で、傍聴というものをもちろん前提としていない元々造りなわけですから、そういった意味では、これ本当に少年が萎縮せずに円滑に審判を行おうとしようとするならば、やはりいろんなことを考えなくちゃいけない部分もあるだろうし、現実それで対応できないんであれば、裁判員制度のときは中の変更までやっているわけですから、そういったことも含めてやはり検討していかないと、せっかく傍聴というものは認めた、でも現実やるときにトラブルばかり発生させるような結果になりかねないおそれはあるわけであって、この点について最高裁としてどうお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  192. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  これまでも申し述べさせていただいたとおり、個別の裁判体の判断する問題でありますが、現在の審判廷においても、傍聴が相当とされた事件について、広めの審判廷を使用したり座席配置を工夫するなどの方法により少年被害者等の間の一定の距離を保ったり、あるいは少年被害者等の間に机などを置いたりすること、さらには少年状況に配慮しつつ職員を配置する等、様々な工夫をして円滑な審判運営をすることが可能であると思われます。  ただ、一部には審判廷が狭いところもございますので、そういったところについては今後検討していきたいと考えております。  以上でございます。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕
  193. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 あとは、松浦さんがさっきから一生懸命、人員体制の問題なんですよね。  なぜ人員体制の問題と申し上げるかというと、やはりいろいろ傍聴のほかに説明しなくちゃいけない問題、いろんな問題があるんですけれども、やっぱり一番心配するのは、こうやった傍聴がきちんと行われるようになると一番ケースとして考えられるのは、やっぱり不測の事態が起きないかという問題ですよね。先ほど人員を配置してとおっしゃいました。まさに、トラブルが発生しそうな状況もなきにしもあらずですから、やっぱり被害者傍聴する場合のその防止対策、それは事前段階、法廷内の問題も、いろんなところにそういう対処が必要になってくる。  そういった意味では、ここは最高裁としても、この問題は、状況を見ながらということもあるのかもしれないけれども、やはり積極的にこの問題については取組をし、法務省等にも是非言っていただいて、これはもう人員要求の問題にもなってくるわけであって、ただ、本当にきちんとしたものをやるためにはこの人員体制の問題は私も不可欠だと思っています。この点についてどうお考えか、お聞きをしておきたいと思います。
  194. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答えいたします。  この点については法務省の刑事局長の方からも御答弁がありましたが、まず審判傍聴を許可するか許可しないかという判断を適切に行うことが肝要かと思います。その場合は、捜査機関から送られてきました証拠資料に含まれる少年被害者等の供述調書を始め、被害者調査を含めた家庭裁判所調査官による調査資料に基づきまして、事前にその警備の体制や審判廷への職員の配置の要否、必要かどうか、そこを検討することになると考えております。また、傍聴が認められた被害者等方々には、事前に審判廷での留意事項を理解しておいていただくことも必要であろうかと考えております。  いずれにいたしましても、委員指摘のとおり、裁判所といたしましては、審判廷において不測の事態が絶対に生ずることがないように入念な準備の上、審判を運営するように努めてまいりたいと思いますが、御指摘の人的体制についても、今後の制度の運用状況、さらには先ほど申し上げましたとおり、少年事件の動向等も含めて検討してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  195. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 最高裁の答弁は、そういうことはもちろん重要なんでしょうけれども、先ほどの松浦議員からの質問に対する答弁を聞いておりましても、あるいは今の木庭先生の御心配の件につきましても、私は少年審判廷がいかに狭いかというのは見てきましたし、同時に裁判員裁判の東京地裁の法廷も、少年審判廷よりは広いんですが、傍聴席が結構あって、あれがやっぱり注目すべき事件だと、満員になるとかなり圧迫感があって、六人の裁判員により大きな心理的負担が掛かるんではないかと。それが、この委員会室ぐらいのもし大きさがあれば、私は心理的負担が随分違うと思うんですね。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  人員とか少年審判廷や裁判員裁判の法廷の問題は、これかかって予算になるわけです。予算を決めていただく大勢の先生方がおられる前でつまらない答弁するんじゃなくて、よろしくお願いしますと言って、それは我々はみんな応援団で、よりすばらしい、より安心できる少年審判、より充実した裁判員裁判をやろうという、委員長以下皆さんその集まりなんですから、そういう気持ちを少し持たれたらいかがですか。
  196. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大臣から応援していただきました。  そういうことなんですよ。最高裁も決して遠慮することなく、やっぱり足りないものは足りない、はっきり言うことが大事であって、それを我々は我々できちんと応援していきたいという気持ちで皆さん質問しているんだろうと私は思います。是非、不備だ不備だと言いたいわけじゃないんです。本当に応援をしていただいて、せっかく法律通すんですから、そこをやっていきたいと思っているんです。  言いますか。じゃ、最高裁から。
  197. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) 貴重な御指摘ありがとうございました。  裁判所としては、もちろん必要なところはきちんとお願いをしていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
  198. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それではもう一項目、付添人のことについてちょっと聞いておきたいと思います。  この法律の二十二条の四、第二項です。被害者傍聴については、一定の場合に付添いの方に一緒に審判廷に入ることを認める規定が設けられているんですね。しかし、この付添人の代理傍聴については認めないということになっているわけです。被害者の方の中には、事件審判の成り行きを見たいけれども加害者と同じ部屋にいることは耐えられないというような思いがあるような人もいらっしゃるかもしれないし、これは法制審議会の中でもこの代理傍聴の話については随分議論があったと伺っておりますし、その議論内容を教えていただくとともに、例えば被害者傍聴中に気分や体調が悪くなって退席せざるを得ないような場合、付添人が残り、その場の審判を見届けるということはできないのか、そんなことも含めて当局に確認しておきたいと思います。
  199. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 被害者等の代わりに付添い者が傍聴を行ういわゆる代理傍聴であります。法制審議会の部会におきましてもこの点については様々な意見が出ました。  まず、代理傍聴を認めるべしという積極的な意見について御紹介いたしますと、被害者等の中には、心身の状態等によりまして付添いを受けたとしても加害少年と同じ部屋にはいたくないという方もいらっしゃるわけであります。そうした場合、代理傍聴を認めれば審判状況を知り得るのではないかという意見がございました。また、被害者の御遺族が非行が行われた場所、つまり審判の行われる裁判所から離れたところに居住している場合などにも代理の人に傍聴してもらうというのは有用じゃないかということで積極説を唱えられる方がおられたわけであります。  これに対する消極的な意見でありますけれども、今回の法改正趣旨はあくまでも審判におけるやり取りを被害者自らその場で直接見聞きしたいという、そういう要望にこたえるためのものでありまして、代理傍聴は言わば間接的な傍聴でありますので、この法改正趣旨に合わないのではないかというような御意見がございました。また、間接的に審判状況や結果を知りたいという要望につきましては、現在の制度でも被害者等による記録閲覧謄写制度や、あるいは審判結果の通知制度等が既に設けられているじゃないかというような指摘もあったわけであります。  こうした意見がそれぞれ出されまして、議論の結果、結局、いわゆる代理傍聴については多くの委員の賛同を得るには至らなかったものであります。したがって、この法律案におきましては代理傍聴は認められることにはなっておりません。そういたしますと、先ほど委員が例として挙げられました、例えば被害者等傍聴中に気分や体調が悪くなって退席せざるを得なくなったという場合に、付添い者のみが審判廷に残って引き続き審判傍聴するということは認められないということになるわけでございます。
  200. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 同じように、モニターによる傍聴の問題も随分この法制審議会の中で議論になったようでございます。大臣も先ほどこのモニターによる傍聴の問題というのは今後の課題の一つだということもおっしゃっております。そういう意味では、このモニターによる傍聴制度の問題、法制審議会、これも両論分かれて様々な議論があったようですが、そこも御紹介をいただくとともに、最終的にモニターによる傍聴を今回というかこの法改正では認めないことにしておりますが、その理由を明確に御答弁をいただいておきたいと思います。
  201. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) モニター傍聴に関する法制審議会部会の議論状況について御報告いたします。  まず、積極的な意見は、一つは、被害者等が在廷することで少年に与える影響に着目した意見であります。被害者等が現に在廷することで少年に対して萎縮的作用が予想されても、別室でモニターを利用した傍聴を行うのであればこれを相当程度回避することができるんじゃないかという御意見です。また、被害者サイドからの積極的な意見としては、少年審判手続はきちんと見たいんだけれども、しかし少年のすぐ近くに座るというのはやはり心理的な負担が大きいので、そういう場合にはモニターで傍聴させてもらえないだろうかと、こういう御意見でございました。  一方、消極的な意見もあったわけであります。それは、少年にとって審判の経過が見られているということの影響は、直接審判廷の場で見られていようがモニターを通じて間接的に見られていようが、基本的にはやはり変わらないんではないだろうかという点の指摘であります。また、被害者審判廷にいる方が裁判官にとって被害者の反応なども直接目にすることができるので審判はやりやすいというような意見も出されました。  こうした意見がやり取りされまして、結論といたしまして、モニターによる傍聴について多くの委員の賛同は得られず、この法律案にモニター傍聴を認める規定は入れておらないわけでございます。  ただ、衆議院審議の中でも、やはり被害者方々の立場からすると、同じ部屋で対面することに精神的、身体的な負担を感じられる方がおられるんじゃないか、あるいは少年にとってモニターで見られるのと、同じ審判廷で傍聴されるのではやはり心理的な負担に差があるんじゃないかというような御意見もございました。こうした点につきましては、今後、このモニター傍聴の利点、逆にまた問題点等を検証しまして、導入の当否について幅広い検討を行う必要があるのではないかというように考えております。
  202. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一点、修正案の提出者に、これ修正案の二十二条五項の問題、傍聴を許す際に付添人をどうするかという問題については何回も皆さん議論をなさっていたので、なぜこう修正したかという趣旨は随分明らかになっただろうと思うし、私は適切な修正がなされたと、こう認識をいたしている一人でございます。  そこで、提案者の皆さんにもう一点お伺いしておきたかったのは、この修正案の二十二条の六の方でございます。家庭裁判所被害者等審判状況説明することとする規定、これを設けたのはどういう趣旨なのかと。これについてだけは提案者からお伺いをしておきたいと思います。
  203. 大口善徳

    衆議院議員大口善徳君) これにつきましては、やはり被害者の方あるいは御遺族の方、こういう方がその尊厳にふさわしい処遇をしなきゃいけない。その場合、これまでも閲覧謄写制度、それから審判の結果の通知制度があって、そして今回、一定の重大な被害者方々についてはその傍聴を認められると、こういうことになったわけでありますけれども、ただ、例えば十二歳未満の場合はこれは傍聴が許されませんし、それから、やはり本当にその審判状況というものを裁判官から聞きたい、あるいは裁判所から聞きたいと、こういうことによって本当に真実を知りたいという被害者方々のお気持ちというのはあるわけです。それはやっぱり大事にしたいということで、今回、被害者方々の真実を知りたいということを最大限配慮するということになりますと、被害者方々申出があって、そしてこういう審判状況について裁判所から聞きたいということに対しては、権利としてやはりそれをしっかり、もちろん少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときはということはありますけれども、それにしっかりおこたえしていきたいと、こういうことでございます。  望む時期に的確に対応しなきゃいけませんので、できれば裁判官ということもあるでしょうし、書記官あるいは調査官ということがあるでしょうが、やはり被害者方々の希望といいますか、それを十分酌み取った形での説明をしっかりやるということによって、これも含めて総合的に被害者方々の真実を知りたいということにおこたえする、そのための規定でございます。
  204. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に大臣に、もちろん大臣も、つい最近ですか、被害者の遺族の方々含めて、この少年法改正について要請書と二万五千人分の署名ですか、大臣室でいただかれたというような話も聞いています。そういう意味では、被害者の権利、救済という意味では極めて大きな意味を持つこの少年法改正だと思いますし、それへ向けての大臣自身の決意も伺っておきたいし、その決意とともに、実は先ほども大臣、冒頭でしたか申されていましたが、少年法改正したからといって、被害者基本法に基づくものからいうとまだまだ本当にごく一部であって、先ほどおっしゃったように、法務省が担当する分野というのは結構小さいものだなということもおっしゃられました。やっぱり被害者皆さんの中には、この少年法改正というのは一つのきっかけであって、まだまだ被害受けた方たちの問題についてはやらなければいけない課題がいっぱいある。  先日、私も守る会の人たち含めてお話お聞きしたんですけどね、今度は少年法改正、これはこれできちんとできたら、次は、一つは被害を受けた方たち被害を受けた少年がいたとします、その少年兄弟姉妹というのが、被害者のですよ、兄弟姉妹というのが実はそれぞれの現場では、加害者じゃないんですよ、被害者兄弟姉妹が実はいろいろ大変な状況に追い込まれているという一面も現場ではございます。やっぱりそういったところにも目を当てたいろんな施策考えるならば、被害少年保護法というか何というか、ある意味では被害者の関連する人たちのバックアップ体制をどうするか。  これは、もう法務省だけの課題じゃなく、文部科学省も、いろんなところがかかわってくる課題かもしれませんが、そういった課題にもそろそろこの少年法改正が一つできましたら取り組まなければならない時期に来ているんではないかなと私は思っているんですが、そういったことも併せてお聞きをして、質問を終わりたいと思います。
  205. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) まず後段の部分からですが、木庭先生おっしゃったとおりだと思います。衆議院法務委員会参考人質疑、私は同席しておりませんが、土師守さんから、被害少年やその兄弟姉妹に対する支援・保護制度の充実を図る必要があるという御要請というか御意見でしょうか、表明されたというふうに聞いておりまして、誠にこれは最重要の課題の一つなんだろうと。  つまり、我々は加害少年のことばかり議論しておりますが、被害少年の御家族、とりわけ若い兄弟姉妹の問題は重要だと思っておりまして、これは警察、検察、弁護士会、医師会、臨床心理士会あるいは地方公共団体の担当部局や相談機関から成る被害者支援連絡協議会というのが各都道府県でできているということでございまして、そういう組織を通じての被害者支援に期待するところがありますが、法務省としても、今、木庭先生が提示された問題について、これは犯罪被害者等保護、支援の大きな部面の一つととらえて努力をしていきたいと考えております。  また、前段の部分でございますが、例の大阪の寝屋川事件、コンビニで万引きをした少年を追いかけた二十七歳の店員の方が少年にナイフで刺し殺される、少年は十九歳と十五歳、何かそういうような年齢だったかと思いますが、去る五月十六日に御遺族の方々とお友達も見えまして、少年審判を含む被害者についての施策についての御要請を陳情書の形でいただきました。これに賛同する、木庭先生御指摘のとおり二万五千人分の署名があり、大変重くこれを受け止めさせていただいたところでございます。  こうした被害者方々の思いにこたえるためにこの法律案を提出いたしておりますが、それはそのほんの一環にすぎないわけでございまして、法務省だけでなくて、政府全体あるいは国会全体で被害者の尊厳を守るために頑張っていきたいと思います。
  206. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。     ─────────────
  207. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、近藤正道君及び舛添要一君が委員辞任され、その補欠として福島みずほ君及び椎名一保君が選任されました。     ─────────────
  208. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  今日は趣旨説明に続けてこうして実質審議に入っておるわけですけれども、私は今日の実質審議入りには同意できないということを強く申し上げてまいりました。本改定案が修正部分を含めて少年審判廷の非公開原則という少年司法の理念と根幹部分に抵触するのではないかという強い懸念が指摘をされ、そしてその点をめぐって国民的な合意が得られているとは私には到底思われない、その状況の下で、この参議院の法務委員会での本法案の慎重かつ徹底した審議を改めて強く求めておきたいと思います。  まず最初に、被害者御遺族の方々の尊厳を尊重し、その心情にどうこたえるかという点から質問を始めたいと思うんですけれども、心情とは何かということについて被害者団体の皆さんからいろんな御意見が出されているのは今日も議論がたくさんありました。  この委員会の調査室の集めていただいた資料を読んでおりましたら、家庭裁判所の判事を長くお務めになっている井垣康弘裁判官が、一般に被害者遺族のニーズを考えてみると次の六つであると思うといって六点を整理しておられるんですね。ちょっとお聞きいただきたいと思うんですが。  ①被害の真実(少年の犯行の動機・目的、なぜ我が子が対象とされたのか、被害に遭った際の経過や状況など)を知りたい。②少年に、我が子の生きて輝いていた姿を詳しく教えたい。子を失った親や兄弟の気持ちも教えたい。③少年が自分のしたことを振り返って今どう思っているのか聞きたい。心からの謝罪の言葉を聞きたい。償いの提案もしてほしい。④少年が殺人を行うに至った原因や背景、少年の抱えていた問題点を知りたい。⑤少年に対する処遇について意見を述べたい。⑥少年に対する処分言渡しを傍聴したい。  この六点を家庭裁判所裁判官、審判官としての経験を踏まえて論文で整理をしていらっしゃるわけです。  私は、裁判官という立場でよく整理をしていただいているのではないかなと思ってこれ拝見したんですけれども、その点について、法案提出を担当されてきた大野刑事局長がそういう整理でもよいのかということが一つ。  それから、今日もこの点にかかわって、つまり被害者傍聴制度趣旨なんですが、法案提出の過程で、例えばこれ読売新聞の社説に二点言われているんですけれども被害者本人や家族がいる場で審判を受けるということによって加害者の少年は起こした事件の重大性を認識し、反省を深めることになる、もう一点、虚偽の供述ができなくなり、正確な事実認定につながる、こうしたことが制度導入の利点あるいは趣旨であるかのような御議論もあるんです。その被害者の心情を尊重しようという国会での基本的な御答弁だと思うんですけれども、それは先ほどの井垣裁判官が整理しているようなそういう心情ということでよいのか、そのことと被害者遺族が審判廷に同席することによって少年の供述に何らかの心理的な作用を加えようということとはこれは別のことではないかと思うんですが、局長、いかがですか。
  209. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) ただいま御紹介のありました井垣元裁判官の分析につきましてでありますけれども被害者少年審判傍聴したいという心情を持たれることにつきましては、いろいろな恐らくお考えがあるんだと思います。ただ、井垣元裁判官が分析されたことの中に、例えば被害の実際の姿がどうだったのかというようなことが入っているようでありまして、恐らくそういうことはどの被害者の方もお考えになっているのか、ただ、被害者の方によりましていろいろなバリエーションはあるのかなというふうに考えております。  法案が審判傍聴を認めることによって被害者の尊厳といいましょうか、被害者の心情にこたえたいというのは、まさに、いろいろなバリエーションはあるにしましても今申し上げたようなことが中心でありまして、委員が後で引用されました、それによって少年審判廷における少年の供述に何らかの影響があるかどうか、これは少なくとも直接の目的というふうには考えておりません。
  210. 仁比聡平

    仁比聡平君 はっきりしないんですが、直接の目的ではないと言われますと、間接的にはそれが目的ですとおっしゃっているんですか。  つまり、供述に影響を与えるということを目的だとこの場でおっしゃると、そのことが、裁判官が当該被害者申出があったときにそれを認めるかどうかというときの判断作用として働き得るということになりますでしょう。ですからお尋ねをしているんです。
  211. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 直接の目的でないという言い方があるいは反対解釈でそういうふうに取られるとすれば言い方を改めたいというふうに思うんですが、私が申し上げたのは、あくまでもこの法律案提案趣旨被害者の心情にこたえるということが目的であります。そのためにこれを導入しているわけであります。  先ほど申し上げた、少年の供述に不当な影響が与えられるような場合、それは少年審判目的に背馳する場合も考え得るわけでありますので、むしろそうした場合は、これは裁判所判断の中のことではありますけれども少年が萎縮する、あるいは自由に供述ができないというような状況になる場合、これはもう排除されるんだろうというふうに考えております。  以上です。
  212. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、まだはっきりしないんですよね。  不当な影響が与えられるような場合はというふうに今おっしゃったんですけれども被害者皆さんの立ち会いたい、傍聴をしたいというその心情にこたえるということだけが制度目的なのであれば、その同席が少年や他の審判関係者にどのような影響を与えるのかということは制度目的とは、制度目的というのはつまり、被害者方々の心情にこたえようとする、その認めようという方向お話とは、趣旨とは別の考慮ということになりませんか。  つまり、被害者方々から申出がございます。それは、その立ち会いたいという心情を裁判所に申し出るということなのであって、裁判官はそれを受け止めるかどうかということを考慮するわけですけれども、その際に、その被害者申出とは別の配慮をしなければならないことは当然あるわけでしょう。ですから、被害者方々傍聴申出が関係者の供述に、あるいは審判廷での行動に影響を与えようとするものであるかないかと、影響を与えたとしても不当でなければいいとか、そういうことではないのではないですかね。
  213. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 実は、繰り返しになるかもしれませんけれども、この法案の趣旨は、少年審判基本的な構造はそのまま、何というんでしょうか、影響なく生かしているわけであります。そういう枠組みの中で、被害者の心情に可能な限りこたえるということで傍聴一定の限度で認めることとしたわけであります。  したがって、傍聴を認めることによって、少年審判の機能である、もちろん事実を発見した上でのことでありますけれども、適正な処遇選択あるいは少年の内省の深化というような審判に期待される機能が損なわれるような、あるいはこれに不当な影響があるような、そういう場合には傍聴は許可されないという、そういうことを申し上げているわけでございます。
  214. 仁比聡平

    仁比聡平君 少年法あるいは審判のこれまでの理念を損なおうとするものではない、変えるものではないという御趣旨の御答弁だと思いますからこれ以上この議論は避けますが、その井垣元裁判官が整理をされた心情の中で、少年の謝罪あるいは内省ということについてもう少し伺いたいんですけれど、家庭裁判所の方で、国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部室長の中島聡美先生でしょうか、の犯罪被害者の心理と支援という講演をなされたようで、これを拝見していて私はなるほどと思うところがたくさんあったんですが、その中で、加害者の謝罪についてこのようにおっしゃっているんですね。  加害者が許してもらおうと思って謝罪するというのは適切ではない。被害者に許してもらえるかどうかではなく、人間として謝罪をするというのが当然の行為だというスタンスでするべきだろう。恐らく被害者は、許せないけれども謝罪はしてほしいと思うのではないか。加害者が反省し、後悔しているということは被害者にとっては重要なことなのだというこの部分なんですね。  加害少年あるいは非行少年が、自分が何かより緩やかな処分を受けたいとかあるいは許されたいとかいうことを目的にして謝罪をするということでは謝罪にならないという指摘は大変重いし、なるほどと私は思うんですよね。そういう少年の内省をどうすれば深めていけるのか、どうすれば少年に向き合えるのかというそのことにかかわると思うんですが、大阪商業大学教授の齋藤豊治教授がこのようにおっしゃっています。  少年の多くは犯行の時点で自らの行為の社会意味を十分に認識していない。行為の社会意味には、自分の家族や周囲の人々に与えた影響や自らの今後の人生に与える影響だけでなく、何よりも被害者やその家族に与えた被害の大きさ、心の傷が含まれる。そうした社会意味を理解させるには教育的な働きかけが重要であり、少年に心を開かせ、裁判官などとの対話を可能にすることが肝要である。少年審判以前に少年鑑別所の担当者や家庭裁判所調査官の面接、付添人との接触などを体験して事件と向き合うようになるが、審判で裁判官とのやり取りを通じて本格的に自らの非行と向き合い、被害者の苦しみを知り、更に自分の過去の生活や行動、生活の問題点を把握するようになる。  というふうに、少年の内省をどう深めていくのかと、先ほども局長から内省の深化というお話がございましたけれども、これが、それを目指して少年手続がどのように組み立てられているのかという、そういう御見識だと思うんですね。  今の点について、大臣はどう思われますか。
  215. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 仁比先生の今のお話を承っておって私が最初に感じたことは、例えば大人の犯した刑事裁判というのがありますね。もちろん、判決が下って、その前に取調べもあって、起訴されて、裁判で判決が下って矯正施設に入っていくという一連のものと少年の場合を比較した場合、今御指摘があったように、非行をやった、もちろんこれはあくまでも逆送されないケースですから、非行を行った、まだ精神的に未熟な状況少年たち、まず少年鑑別所の教官といろんな話合いというか、向き合っていかなければならない。家裁の調査官という方々お話もするであろうと。それから少年審判があって、保護処分が決められて、例えば少年院に行くとしますね。その全体が大人と違ってすごく有機的だなという印象を受けましたよ、有機的。  だから、その全部、その全過程の中で少年法趣旨である第一条の目的が生かされていかなければならないんだと。少年鑑別所から少年院まで、その途中に審判があるわけですが、その有機的に結び付いたすべての中で教育的な効果あるいは少年法で言う性格の矯正とか環境の調整というようなことが実現されていくことが理想なのではないかと。  私は少年審判意味を過小評価するものではありません。ただ、その有機的な一つの大きな流れ全体の中の少年審判というものを取り上げた場合に、いろんな難しい分析をされる方がおられるようではありますが、そうした分析を認めないわけではありませんが、私は、愛するかけがえのない家族を失った遺族や被害者皆さんの、とにかく審判廷でどんなやり取りするか見たい、聞きたい、知りたい、これはできる限り、できる限り私はそういう傍聴の要望というものについてはこたえられる仕組みであってほしいなと。  昨日、本会議で松浦大悟議員に大分批判をされました。それは、法務大臣の答弁は二転三転したじゃないかと、こう言われまして、私も、事実の部分もあるがちょっと誤解の部分もあると思ったんですが、それは民主党の階議員とのやり取りでありました。  階先生は被害者のことをもう本当にずっと取り組んでこられて、私は階代議士の質問に非常に感銘を受けました。感動さえ覚えました。そうした中で、私は、できる限り傍聴を希望したら認められる形がいいのではないかという意味のことを言って、それが刑事局長とは大分言い方が違うじゃないかと保坂代議士にやられたと。そのことを松浦委員はおっしゃったが、気持ちとしては、私は、松浦委員も階代議士の話をよく聞いていただければ私の答弁の意味も分かっていただけるだろうと、こう思うわけですが、私は、そういう意味でいえば、今先生御指摘の有機的な大きな連携の中の一場面である少年審判においては、できる限り遺族の方の知りたいという御希望が実現すればいいと今でも思っております。
  216. 仁比聡平

    仁比聡平君 その少年司法の手続が科学的に、それから公表をされずに、審判廷も始めとして手続全体が公開されずに、審判官の適正な裁量や、あるいは科学的な、人文科学的な、あるいは自然科学的な技術者である鑑別技官や調査官などに担われて行われる中で、審判廷が、それも法曹である裁判官によって主宰される審判廷がどのような役割を果たすのかと。この点、もっと私は深めるべきだと思うんです。  本当はそこを深めたいところなんですけれども、時間がちょっとたったのと、それから、今大臣から後段お話のあった、大臣の答弁をめぐるお話の経過がありました。それで、大臣がその後段の部分で御答弁になられたのは私そのとおりだと理解をしているんですけれども、そこで、そういう経過があるものですから、修正案発議者の民主党の細川先生にちょっと確認をしておきたいと思うんです。  つまり、民主党の質問者によってお立場が違うのかというふうに勘ぐられるような、あるいは私には感じられたんですけどね、率直に申し上げると。そういう感想も持ちまして、それは議員それぞれの質問の立場というのはありますから、それは別にこれ以上言うことでもないんですが、修正提案者として、この被害者傍聴原則なのか例外なのかというような議論については、先ほど大野局長からは個別それぞれに裁判所判断するべきことだという話がありました。どんなお考えですか。
  217. 細川律夫

    衆議院議員(細川律夫君) 私も、衆議院委員会での質疑で、私自身が質問の立場に立ったときには、大臣の答弁が二転三転をしているようなところがうかがえましたので、それはおかしいじゃないかと、刑事局長との答弁と違うのではないかということをただしました、私が。そうしたら、大臣の方からは、局長答弁と同じだと、こういうような答弁もされまして、私など修正提案者も、そういう原則あるいは例外とかではなくて、個々の事件についてその裁判体で判断をすることだと、こういうことで一致をいたしております。
  218. 仁比聡平

    仁比聡平君 そこで、被害者方々の御心情にこたえるという意味での修復的司法という問題についても私も深めて聞きたいと思っているんですが、またの機会にこれはしまして、引き続き、なぜ審判廷なのかということを傍聴の許可要件に照らしながら少し伺いたいと思います。  それで、まず最高裁家庭局長にお尋ねしたいんですが、この委員会、衆参通じて、政府もそれから修正提案者も、少年法の理念や審判廷の機能を損なったり変えたりするものではないと繰り返し御答弁されているわけです。そこでお尋ねをしたいんですけれども平成十二年十月十日の衆議院法務委員会で、当時の家庭局長のこのような御答弁があるんですね。  御存じのようなのですが、会議録に残すために読みますと、被害者による少年審判傍聴を認めるべきであるという声があることは十分承知していると。しかしながら、少年審判におきましては、少年の処遇を適切に選択するためには、事実関係のみならず、その非行の背景となっている親子関係でありますとか、少年の内面に相当踏み込んだ審理が不可欠であると言えるように思います。そういった意味において、被害者の方が審判傍聴できることにした場合には、少年保護者等がそういった内面に関する、あるいはプライバシーに関する事項について発言することをためらって、その結果、家庭裁判所が必要とする情報を得られなくなり、ひいては適切な処遇選択をすることが困難になるおそれがあるように思われる。また、少年審判事件発生から比較的短期間のうちに行われるところでございますし、その行われる場は法廷と違いまして比較的狭い審判廷であるわけでございまして、ここに被害者の方が同席する場合には、少年の情操の安定や内省の深化が妨げられるおそれもあるように思う。その意味では少年審判の持つ基本的な機能に支障を生ずることがあるんだと考えている次第でございますという御答弁なんですね。  この御答弁とこの今の時点は、こういう法案が出ているという背景の状況はもちろん違います。そこをどうこう言おうと思っているんじゃないんですよ。この審判廷をめぐる当時の御答弁の認識ですね、これは、審判廷や少年手続がそう変わっているわけではなし、加害少年、非行少年の性格が何か大きく変化しているというようなことでもなかろうし、となれば、このときの御答弁はその以降、別に特段変わるところはないという認識でよろしいですか。
  219. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  ただいま委員指摘の答弁を当時の家庭局長がしていることは、そのとおりでございます。その当時としては、少年審判の機能等を考慮して、被害者等傍聴については好ましいことでないというスタンスでいたものかと思いますが、しかし、その後、犯罪被害者等基本法が制定され、さらに犯罪被害者等基本計画被害者少年審判傍聴の可否を含め検討するということとされ、さらにこのような今回法案に至ったということでありまして、その意味で、それは一つは立法政策の問題であろうかとも思いますし、もう一つは、今回の枠組みとしては少年審判の機能をできるだけ損なわない形で裁判所がきめ細かく判断するという枠組みとされていること等を考慮して、裁判所としては、今回の制度が導入されました法の趣旨に従って適切に運用してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  220. 仁比聡平

    仁比聡平君 容認できない御答弁なんですよね。  犯罪被害者方々がこれまで置き去りにされてきた、これは尊厳を尊重しなければならないということでいろんな工夫をしなければならないというのはそのとおりなんですよ。一方で、少年審判廷が少年司法の中で果たしている役割を、あるいは機能をどうするのかということは一方の重要問題なわけでしょう。先ほど、総合的な少年司法の中で審判廷がどのような機能を果たしているかという大臣の答弁を家庭局長もうなずきながら聞いていらっしゃいましたと私は受け止めていたんですけれども、その機能をできるだけ損なわないようにするという御答弁は一体どういう趣旨ですか。  法案の提出者である刑事局長に、ちょっとその点確認するしか時間がなくなっちゃいましたけど、できるだけ損なわないようにするのであって、できなければ損なって構わないという、そういう立場ですか。
  221. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 法案は、相当性の判断を、「相当と認めるときは、」と、政府原案はそのようになっているわけでありますけれども、その前提といたしましては少年法一条がもちろんかかわってくるわけであります。少年法の理念であり目的が当然にかかわってくるわけでありますけれども、今回衆議院における修正で、そこに更に「少年の健全な育成を妨げるおそれがなく」というのが付け加えられておりますのでなお明確になっていると思いますけれども少年の健全な育成を妨げるおそれがある場合には、これは相当と認められないであろうというふうに考えております。
  222. 仁比聡平

    仁比聡平君 家庭局長のお立場もございますので、最後、答弁を求めておきますけれども、先ほどちょっと言葉じりとらえたような質問、物の言い方して恐縮なんですけれども、大変シビアな重要な問題だと思って私は確認をしているわけです。  もう一度聞きますけれども平成十二年の御答弁で示された少年審判廷の状況についての認識、これはお変わりないのか。これが変わらないとすれば、これからこの法案が仮に成立して施行されるという段になったときには、現場の裁判官はこの平成十二年の御答弁にあるようなファクターを個別の事案について判断する、考慮するということになると思いますが、いかがですか。
  223. 二本松利忠

    最高裁判所長官代理者二本松利忠君) お答え申し上げます。  少年審判について被害者方々傍聴を認めるかどうかにつきましては、今回の法案の枠組みの中で様々な考慮要素が入れられております。審判傍聴を認めるか認めないかを判断する裁判所といたしましては、それらの事情を十分考慮し、被害者少年審判傍聴された場合に起き得る問題も含めて検討して、そこは審判の機能が損なわれない場合に審判傍聴を認めるということになろうかと考えております。  以上でございます。
  224. 仁比聡平

    仁比聡平君 終わります。
  225. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  226. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  少年法の一部を改正する法律案審査のため、参考人出席を求め、その意見聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  228. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十七分散会