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仁比聡平君 日本共産党の
仁比聡平でございます。
裁判官の
定員増を図る本法案に我が党はもちろん賛成でございます。
裁判官あるいは
裁判所職員を始めとして、抜本的な増員が私はむしろ望ましい、それこそと思っておりますので、その点で
最高裁や
関係の部局の
方々にエールを心からお送りをしておきたいと
思います。
今日は、私も、
刑事司法の
在り方に関連して、三月の五日、福岡
地裁小倉支部で殺人と放火の公訴事実について
無罪判決が下され、
検察庁も控訴せずに確定しました
引野口事件について、
大臣の御認識をお尋ねしたいと思うんです。
この
事件では、
被告人と犯行を直接結び付ける唯一の
証拠として、
警察の留置場、つまり代用監獄で一緒に勾留された別
事件の
被告人、A子と申し上げておきますけれ
ども、このA子が留置場で
被告人から聞いたという犯行告白ですね、これが中心的な争点になりました。
判決を私なりに要約をいたしますと、判決は、
捜査機関は、同房者を通じて
捜査情報を得る目的で意図的に
被告人と同房者を同房状態にしたのであり、代用監獄への
身柄拘束を
捜査に
利用したとのそしりを免れないとした上で、本来、
取調べと区別されるべき房内での
身柄留置が犯罪
捜査のために濫用されたこと、それは
被告人の供述拒否権、黙秘権への配慮に欠けること。そして、同房者自身も
捜査機関に処分をゆだねている身なわけですから、
捜査機関に迎合するおそれがあり、その同房者を介して聴取、聴き取りする
内容には虚偽が入り込む危険性があること。
これらを厳しく
指摘をした上で、こう言っています。本件における聴取は、単なる参考聴取の域を超え、同房者を通じて
被告人の供述を得ようとするもので、虚偽供述を誘発しかねない不当な方法であり、
被告人の犯行告白が任意になされたものとは言えない。
身柄留置を犯罪
捜査に濫用するもので、
捜査手法の相当性を欠いており、
適正手続確保のためにも
証拠能力を肯定することはできないと厳しく指弾しているわけですね。平たく言いますと、卑劣、ひきょうな人権侵害で、
刑事司法を誤らせる許されない
捜査手法だと、そういう判決だと私は受け止めました。
無罪判決は出たんですけれ
ども、その
捜査の結果もたらされた犠牲は余りにも大きいものがございます。
この
事件で
被告人とされた片岸みつ子さんという女性に私もお会いしました。物静かな、本当にいいお母さんなんですよ。
平成十六年の五月に逮捕をされて以来、
身柄拘束はこの
無罪判決まで三年九か月に及びました。釈放されてから、周りから、うその
自白をせずによく頑張ったねとみんなから励まされるそうなんですけれ
ども、そのたんびに戸惑ってしまうんだそうです。やってないことはやってないとしか答えようがないとそのたんびにその片岸さんはずっと
思い続けられているんですね。しかし、
事件の話になりますと、
捜査機関のおごりあるいはむごさ、これに対する憤りは抑えることができないという御様子だと私は
思いました。人を人間と扱わない
取調べで、人の話も聞かずに初めから犯人扱いして
自白を強要し続ける。
自白が取れないとなると同房者を送り込んで、犯行告白なるものまで獲得しようとすると。人間としてどうしてこんなことができるんですかというのが片岸さんの
思いなんですよね。
先ほど
今野委員からもございましたように、殺人罪で逮捕されて十日目に御主人が自殺をされました。片岸さんは
身柄拘束をされていて、そして接見も禁止されていましたから、御家族とは全く会えません、
弁護士としか会えない。ですから、
弁護士から御主人が亡くなられたということは聞いていたけれ
ども、そのときに本当に大きな衝撃を受けたけれ
ども、だけれ
ども三月に釈放されて、解放されて、御主人が共犯扱いされ、精神科に通わなければならないほどどんどん落ち込んでいって、そして最後は自殺にまで追い込まれたというその経過を少しずつ知りつつあるわけですよね、今。そのことが片岸さんにとってどれほどのショックか。
御長男がいらっしゃいます。
和彦さんとおっしゃいますけれ
ども、今三十三歳になられましたが、この
事件が起きて、勤めていた仕事を辞めたんですよ。それは、お母さんを信じて、その
無実を明かすために支える活動、支援する活動に奔走をする上で仕事を続けられなくなったからです。片岸さんは、この一か月間、
無罪判決の後の一か月間、自分の不幸の四年間よりも、釈放されて子供の四年間の苦労を知っていくたびに、時がたてばたつほどひしひしとその苦労を感じ続けている、その子供の苦労や怒り、悔しさを思うと、家族の時間を返してくれ、夫を返してくれと、そういう
思いが募るばかりですというふうにおっしゃっておられました。
失われたものは余りにも重たいと思うんです。ですので、
大臣にお尋ねしたいと思うんですけれ
ども、訴訟のルールだとか
証拠の理屈というのはあります。ただ、それをおいても、人間として、政治家として、こんなひきょうなやり方で人の家族と人生が台なしにされると、そんなことなんかあってはならないと思われませんか。