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2008-03-27 第169回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年三月二十七日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         遠山 清彦君     理 事                 千葉 景子君                 松岡  徹君                 山内 俊夫君                 木庭健太郎君     委 員                 小川 敏夫君                 今野  東君                 鈴木  寛君                 前川 清成君                 松浦 大悟君                 松野 信夫君                 青木 幹雄君                 岡田 直樹君                 丸山 和也君                 山崎 正昭君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    国務大臣        法務大臣     鳩山 邦夫君    副大臣        法務大臣    河井 克行君    大臣政務官        法務大臣政務官  古川 禎久君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   小川 正持君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 一夫君    政府参考人        警察庁刑事局長  米田  壯君        警察庁警備局長  池田 克彦君        法務省刑事局長  大野恒太郎君        法務省保護局長  西川 克行君        法務省入国管理        局長       稲見 敏夫君        外務大臣官房参        事官       山崎  純君        国税庁調査査察        部長       杉江  潤君        厚生労働大臣官        房審議官     中尾 昭弘君        厚生労働省労働        基準局長     青木  豊君        厚生労働省職業        能力開発局長   新島 良夫君        経済産業大臣官        房審議官     瀬戸比呂志君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○平成二十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付)、平成二十年度特別会計予算内閣提出  、衆議院送付)、平成二十年度政府関係機関予  算(内閣提出衆議院送付)について  (裁判所所管及び法務省所管)     ─────────────
  2. 遠山清彦

  3. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 昨二十六日、予算委員会から、三月二十七日の一日間、平成二十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管について審査委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  裁判所及び法務省関係予算につきましては既に説明聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 松野信夫

    松野信夫君 民主党の松野信夫です。  時間をいただきましたので、今日は、鹿児島公職選挙法、十二人全員無罪となりましたいわゆる志布志事件について御質問をさせていただきたいと思います。  志布志事件は、私は大変重大ないろんな問題を抱えているというふうに思います。現在の検察警察、この在り方、私は根底から問う問題も含まれている、それくらい大変重大な問題だという認識であります。  最近、この志布志事件関係で幾つか判決も出ております。まず、今年三月十八日にいわゆる踏み字の刑事判決、これは浜田さんという警部補鹿児島県警警部補が踏み字をやったということで公務員暴行陵虐罪に問われたわけであります。福岡地裁が三月十八日に判決を下しまして、懲役十月ということであります。  この判決、私も見ましたが、取調べにおける説得行為として許容される範囲を大きく逸脱した違法だ、こういうことで厳しく指摘がありまして有罪判決が下っているわけでございます。現職警察官取調べの中でこういう公務員暴行陵虐をしたということは大変重大なことだというふうに考えておりますが、まず大臣はこの判決をどのように受け止めておられますか。
  6. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 非常に残念なことが現実に行われ、それが厳しく問われ、判決が出たというふうにとらえております。地裁がその元警察官に対し特別公務員暴行陵虐の罪により懲役十か月、執行猶予三年、有罪判決を言い渡したわけでございます。  もちろん、刑事事件というのはすべてあってはならないことでございましょうが、とりわけ私の現在の立場から申し上げれば、特別公務員暴行陵虐罪などというのは絶対にあってはならないこと、特に今後絶対にないようにしなければいけないことと、こう考えております。  個別の事件についての地裁判決内容については私が所感を述べることはできないわけでありますけれども、一般論として、捜査は適切に行わなければならない、捜査の中でも取調べというものは日本の刑事司法手続の中で非常に大きな意味を持っているわけでありますから、取調べは特に適正に行わなければならないと、その大きな反省材料であるととらえております。
  7. 松野信夫

    松野信夫君 この踏み字を無理やりさせられたという被害者川畑さんという方ですが、川畑さんに対して私はやっぱりきちっとおわびをするということが必要だと思います。この刑事判決の中でも量刑の中で書いてありますが、川畑被告人に対する厳重処罰を希望しているということで、とても許すというような状況ではありません。だからこそ、やっぱりしっかり謝罪すべきところは謝罪するということが必要だと思いますが、この謝罪について、法務あるいは警察の方はいかがでしょうか。
  8. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) これは警察ですか。
  9. 松野信夫

    松野信夫君 警察だと思います。
  10. 米田壯

    政府参考人米田壯君) この川畑さんに対します謝罪でございますけれども、鹿児島県警は昨年の二月二十一日、これは国賠敗訴が確定をいたしまして、そしてこの当該警部補に対する懲戒処分をしたときでございますが、このときに被害者の方に対しても申し訳ないという旨の謝罪の意を表明をしております。それから、県警本部長が県議会におきましても謝罪の意を表明しているところでございます。  それから、実はこの川畑さんに対します直接謝罪につきましては、この元警察官、当時はまだ現職でございましたけれども、昨年二月、直接謝罪をしたいという旨のお手紙をこの川畑さんに対して送っておりますけれども、それは拒絶をされているということでございます。確かに、被害者の方の御納得をいただくという努力は続けなければなりません。それは、鹿児島県警としては今後もいい方法を模索していくと思います。
  11. 松野信夫

    松野信夫君 これは被告人になったのは浜田隆広警部補ですけれども、私はこれ、浜田隆広一人の問題ではないと。むしろいろいろ情報を取りますと、いささかスケープゴートにされて、一人だけ悪者にされたという気がしないでもない。私は、こういう問題を起こした全体のやっぱり責任は厳しく問われなければいけないんで、やっぱりその鹿児島県警本部長なりそれなりの人が被害者川畑さんの自宅まで赴いてきちっとしたおわびをするのが筋だと思いますが、いかがですか。
  12. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 謝罪方法につきましては、それぞれの県警が最も適切と思う方法で行われるということと承知しておりますけれども、先ほども申しましたとおり、現在、川畑さんの御納得をなかなかまだ得るまでに至っていないという段階でございますので、そのような推移を見つつ、鹿児島県警として適切に対処するものと承知しております。
  13. 松野信夫

    松野信夫君 推移を見守るというような状態ではないと思うんですね。この刑事判決も出た、国賠判決も出た、にもかかわらず一回も川畑さんの自宅まで行っておわびをするということもきちんとしていない。推移を見守っているような状態ではない。だからこそ、この刑事判決の中でも、いまだに川畑さん、怒りが収まらない、厳重な処罰を望むと、こういうくだりになってしまっているわけです。やっぱり間違ったことをしたら、それなり責任持っている人がおわびをすると。例のイージス艦の「あたご」だって、総理自らが行っておわびをしているじゃないですか。なぜできないんですか。
  14. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 鹿児島県警としては、そのような問題意識も持ちながら適切に対処していくものというように考えております。
  15. 松野信夫

    松野信夫君 この問題ばっかりやっているわけにいきませんが、この踏み字という違法な捜査、これについてもちょっとお聞きしたいと思いますが、鹿児島地検の方は、実は警察がこういう踏み字という違法な捜査を行っているというのはいつの時点で分かったんでしょうか。
  16. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) どなたに答弁を求められますか。
  17. 松野信夫

    松野信夫君 法務省の方、法務大臣でも刑事局長でもいいです。
  18. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 鹿児島地検が踏み字という事態を承知したのは、本件の一連の捜査が終了して、すべて起訴が行われた後であるというように承知しております。  検察におきましては、福岡地検告発を受けまして、今回の踏み字行為特別公務員暴行陵虐罪に該当するものと認めて捜査を行って起訴をしたと、こういうことでございます。
  19. 松野信夫

    松野信夫君 起訴後にこういう踏み字というとんでもない、これは特別公務員暴行陵虐犯罪が行われたということを鹿児島地検は分かったわけですね。ところが、鹿児島地検の方は、それについて特段捜査をするとか、何らかの注意をするとか、それは何にもやっていないというふうに思いますが、何らかのこの特別公務員暴行陵虐罪についての捜査はやったんでしょうか。
  20. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 刑事事件としての捜査は、先ほど申し上げたように、告発を受けてから行ったということでございます。
  21. 松野信夫

    松野信夫君 これは、事件鹿児島で起こっているわけですから、本来ならきちんと鹿児島地検取調べをして、そこで起訴すべきものであればちゃんと起訴すると、これが本筋ですよ、どう見たって。  ところが、まあ恐らく鹿児島地検県警と仲良くいろいろやっていたからやりにくいと、こういう面もあったんだろうかなという予想をしますけれども、犯罪が行われていることを確知しておきながらほったらかしにして、それで結局、告発受けて福岡地検がやらざるを得ない。福岡地検福岡地裁に起こして、三月十八日、刑事判決を受けたと。おかしな話ですよ。なぜ鹿児島地検は動かなかったんですか。
  22. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 告発を受けて刑事事件として処理する場合には、もちろんこれを適切に行う必要があるわけでありますし、また適切に適正に行ったということがきちんと分かる形で行う必要があるわけであります。そうしたことで、検察といたしまして、どこの地検がこれを担当するのが一番適切であるかという観点から、本件については福岡地検責任を持ってこれを処理するということで処理をしたわけでございます。
  23. 松野信夫

    松野信夫君 まあこれはもう率直に言うと、鹿児島地検県警なれ合い状況になっていたから、鹿児島地検捜査できずに仕方なしに福岡がやったというのが私は実態だと思います。  これは後ほどまたちょっと説明をいたしますが、鹿児島地検とそれから警察の方でこの踏み字どうするかという相談までやっている、地検警察の方でこの踏み字はどうしようかという相談までやっているということ。公職選挙法刑事事件の中でこの踏み字の問題は触れないでおこうというような、これはもうなれ合いですね。そこまでやっているんですが、そういうなれ合いをやっていたということは確認をしておられますか。
  24. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 鹿児島地検県警が今回の公職選挙法違反事件捜査して、検察が公訴を提起したわけでありますから、その過程検察警察が必要な連絡をしていたことはございますけれども、しかし、それがいわゆるなれ合いのようなものであったというようなことは承知しておらないところでございます。
  25. 松野信夫

    松野信夫君 まあ、この問題また後でお聞きします。  次に、三月二十四日に、いわゆる接見交通権を違法に侵害されたということで鹿児島弁護士さんたち裁判を起こしました。国賠訴訟です。鹿児島県と国を訴えた。この国賠訴訟が三月二十四日、つい先日、判決が言い渡されました。この判決によれば、弁護士さんたちに一人五十万支払えと、それだけの判決が下ったわけであります。  この判決を見ますと、とんでもない状況だなというふうに私は言わざるを得ないんですね。何をやっていたかというと、被疑者被告人弁護人接見交通で面会をする、そうすると、その後になって、警察検察の方で被疑者被告人弁護人がどういう内容接見をしていたか、どういう内容やり取りをしたのか、それを一つ一つ聴き出しているわけです、聴き出しているわけ。  だから、本来、接見交通権というのは秘密被疑者被告人弁護人とが十分打合せをするということがちゃんと保障されているわけですけれども、それが終わった後に一々一々、おまえたちはどういうようなやり取りをしたのかということを、その接見内容を問いただして、それを供述調書にまとめて録取して、結局、全部で七十八通ですよ、七十八通もそういう調書を作り立ててやっていたということが明らかになりました。  それで、これはどう見ても組織的にやっているとしか言いようがありません。結果的に、この判決、この民事の国賠判決を見ますと、検事が一人、副検事が三人、警察官が九名、これは共同してやったという共同不法行為だという認定をしております。まさに、これはもう組織的に弁護人秘密交通権を侵害しようという、これはもう悪らつな意図の下にやったというふうに私は言わざるを得ないとんでもない事件だというふうに思います。  こういう捜査もやっていたということについては、大臣はどのようにお考えですか。
  26. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 今お尋ねの国家賠償請求訴訟国賠につきましては、国及び鹿児島県の一部敗訴判決がなされた。今先生から七十八通というお話がありましたが、その大半の五十何通かが違法というような判定を受けたのであろうと、こう考えております。  当然、弁護人被告との間には接見交通権というものが確保されているわけでありましょうし、立会、立会いなくして会えるという形に法の定めもなっているんだろうと考えるわけでありますから、そういう接見交通権は大切にしなければならないわけでございます。  じゃ、どういう場合なら接見交通状況聴取することが許されるかと。これは非常に微妙で難しい問題でありますけれども、言わば捜査妨害的行為等、まあ接見交通権とあるんですが、捜査妨害を専ら目的とするような、保護に値しない事情が、特段の事情があった場合のみ聴取していいということでありましょうから、当然に、弁護人固有接見交通権は通常の場合であれば侵害されたというふうに判定をするわけでございましょう。  大変残念な、国賠の結果について中身を個別に私が論評する立場にはないですが、非常に残念なことが起きているわけでございまして、今後、そういう判決内容が出ている以上は十分注意をしていかなければならないことと思っております。
  27. 松野信夫

    松野信夫君 これはもう残念というよりか、そういうレベルじゃないですよ。これはかなり悪らつに、組織的にやっている。しかも、今大臣が言われた、捜査妨害的行為というふうに言われましたが、確かに捜査妨害的なことがあったみたいなことを国の方は裁判でも主張しておられます。どういうのかというと、今まで自白していた人が弁護人と会ったら途端にその自白を翻したと、否認に転じたと、だから捜査妨害だみたいな、とんでもない話です、これは。これはもう弁護人としての正当な権利を行使しているわけです。これが一点。  もう一つは、親族手紙接見のときに見せた、これが捜査妨害だと。親族手紙を見せて、捕まってつらい思いをしている人に親族がこうして励ましているよと、こういう手紙を見せるのが何で捜査妨害なのか。これは全くむちゃくちゃな捜査妨害でっち上げですよ。  私はもう本当に、この事件は全く捜査妨害という口実、でっち上げそのものだというふうに思いますが、大臣はちょっと細かい話になるからお答えにくいなら、刑事局長の方で、そういうふうに私は思いますが、いかがですか。
  28. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 本件国家賠償訴訟におきまして、今委員の御指摘になったようなことが争点になったわけでございます。  国家賠償請求訴訟におきましては、国側といたしましては二つの場合を例にして、そういう場合には接見内容について聴くことが許されるのではないかというような主張をしたわけであります。一つは、被疑者が自発的に供述した場合であります。それからもう一つは、接見内容聴取捜査権行使として行われた場合でも、その目的正当性や手段、方法相当性の点から、接見交通権行使との間の合理的な調整の範囲を超えていないというような場合には、接見内容についての供述を取り調べて調書に録取しても許されるのではないかというような主張をしたわけでございます。そこの主張は、今回の判決もおよそ接見内容聴取することが絶対に許されないという立場には立っていない、先ほど大臣の方から御答弁申し上げたとおりでございます。  今回の事件における接見内容聴取調書化が違法であったという御指摘につきましては、国家賠償請求訴訟、今回の事件がいまだ確定していないことから、ここでのお答えは差し控えさせていただきたいというように思います。
  29. 松野信夫

    松野信夫君 とんでもない答弁だと思いますけど、この接見交通権妨害だけじゃないんですよ、この志布志捜査手法というのは。とんでもないことを次から次にやられています。  例えば、取調べ室から電話をさせているんです、被疑者に。それを秘密に録音をして、それをまた調書に作っている、こういうようなこともありました。またそれから、弁護人を辞めさせろというようなことを警察官が言って、あの手この手で、結局弁護人解任というのが、逮捕された十五名のうち四名が初公判までに弁護人が交代をする。また、国選弁護人についても、検察サイドで辞めさせろと、解任請求のようなことを裁判所の方に言って、また裁判所も、私本当に情けないと思うけれども、裁判所もその解任を容認したという、とんでもないことが次から次に起こりました。  こういうようなとんでもない捜査手法、今申し上げた取調べ室から電話を掛けさせて秘密録音しちゃう、接見交通を組織的に侵害する、これはどっかが司令塔になってそういうことをやらせていたんだろうというふうに思いますよ。個人個人が思い付きでやっているとはとても思えない。これは、どこがそういうような指令を出してそういう捜査をやれというふうにやっていたんでしょうか。つかんでいますか。
  30. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 個別事件において捜査機関の内部で具体的にどういう決定が行われたかということでございますので、ただいまの御質問につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  31. 松野信夫

    松野信夫君 この志布志事件それから富山の氷見事件、併せてこれはとんでもない事件だということで最高検察庁も、それから、今年の一月になっては警察庁もかなり反省も込めて検証をやっているんですよ。検証をやっています。ところが、私も読みましたけど、最高検総括は、若い未熟な検事社会的経験も不十分であったために十全な捜査ができなかったと、そういう程度でお茶を濁している。そんなものじゃないですよ、この事件は。  また、警察庁検証報告書も拝見しましたけど、これも、長時間の取調べが悪かった、威迫した取調べが悪かったと。そんなの当たり前の話で、今後はそういう長時間の取調べはやめましょうみたいな、もうそういうお茶を濁すようなものじゃこの事件はないですよ。(発言する者あり)  これはもう構造的だという話もありますけど、そういうような総括をきちんとやらないと、ちょっと捜査に行き過ぎがあったというぐらいの総括では、とてもとてもこの志布志事件から教訓を得ることはできないというふうに思います。その点だけちょっと指摘をさせていただきたいと思います。  それで、もう少し志布志のこの捜査手法について確認しますが、どうも私から見ると、もう無理やり起訴に持ち込んだとしか思い得ないんですね。  その一つは、まず起訴段階で、この一番中心人物中山さんという県会議員の方ですが、中山さんの、県会議員のこのアリバイ、この人が金を配ったというふうにされているんですけど、このアリバイをほとんど確認をしていないのではないかなというふうに言わざるを得ないし、また起訴そのものが、いつ買収があったのかという、これは四件起訴されているんですが、中山さんは一回目の会合と四回目の会合です。起訴自体は、二月上旬ころ、二月下旬ころ、三月中旬ころ、三月下旬ころと、起訴状段階でもこのくらいですね。それで、当然これは裁判で問題になって、いつなんだというふうになったら、やっと起訴して二年ぐらいたってから、一回目の会合というのは二月八日ですと。中山さんが買収したとされる四回目の会合、これは三月下旬と言っていたのが三月二十四日ですというふうに、二年もたってからようやく特定がなされると。これは私はもう信じ難い話ですよ。  要するに、それで結局判決は、いずれもアリバイがあると、こういうことで無罪になっているわけで、だから、何でこういう、一番大事なアリバイのところを起訴時点確認していないのか。これは、警察検察両方にお聞きします。
  32. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 判決におきましてこうやってそのアリバイ認定をされたというのは、これ大変残念なことでございまして、警察捜査をその以前一生懸命やったわけでございますが、平成十五年の七月十七日に起訴がされました。その一週間後に、この事件の更に補充捜査をしている過程でこの中山さんが別の会合に出ていたという情報をつかみまして、その会合の場所のホテルをその翌日、七月二十五日に確認をしたということでございます。  ただ、その時点でも、いろいろ、志布志の今度その事件の舞台となりました集落との走行試験等々を行いまして、若干、何といいますか時間的には少しせっぱ詰まった感じはありますけれども、それでも何とか両方出席することが可能ではないかというように県警の方では考えたものでございます。
  33. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今、委員指摘のときに、起訴時点でこのアリバイの事実を確認していなかったわけであります。この点は、最高検検証報告書の中でも非常に重視している点でありまして、いわゆる消極証拠の把握、検討の不十分ということで、ここは致命的なミスであったということを認め、これは改めなくてはいけないというふうに戒心しているところでございます。  その後のことでございますけれども、今警察庁の方からも御答弁がありましたけれども、その一回目と四回目の会合に相当し得る日にアリバイに関する事実関係が浮上したということで、その時点では、一つは、まずアリバイに関する関係者の供述が果たして信用できるものなのかどうかという点に疑問があるんじゃないかということが一つと、それからもう一つは、仮にそうした別の会合出席していた事実があったとしても、なお今回の買収とされる会合出席することが可能だったのではないか、つまり両立する事実だったのではないかというような検討でその後の公判が進行したというように理解しております。
  34. 松野信夫

    松野信夫君 事実関係ちょっと確認しておきますと、起訴段階ではアリバイのことはほとんど念頭になくやっていたのではないかというふうに私は見ております。アリバイについてどうも警察検察できちっと受け止めた形跡がないです。その後、起訴されてからいろいろ指摘されて、慌てて日時も特定をし、つまり二月八日なら何とか両方会合中山被告人は出れるんじゃないかと、だから二月八日ということでやっていると。これはもう全く逆さまですよ、やり方が。  通常、合理的にアリバイが成立する疑いがあるというのであれば、まず、それを押し切って起訴するということはまずないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  35. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) もちろん、一般論ということで申し上げたいわけでありますけれども、起訴する前にといいましょうか、捜査段階で確かなアリバイが明らかになれば、これはもちろん当然に起訴は行われないわけでございます。
  36. 松野信夫

    松野信夫君 それで、最高検検証報告書に当たっても、そのアリバイ云々かんぬんいろいろチェックをしたというふうに言って、それで報告書が出ているようですが、実は起訴された後、磯辺という警部が証人として立つ、裁判所に立って主尋問、反対尋問を受けるということで、何度も何度も警察検察鹿児島地検との間で打合せをしている、いわゆる証人テストをやって、まあ私から言わせれば口裏合わせだというふうに思いますが、そういう協議をしているんです。  私も、そういう協議をまとめた内部資料ですけれども、そういうのを入手することができましたので、それについては一覧表を取りあえずまとめて資料としてお出しをしております。全部コピーしてお出しするのもちょっと量がありましたので一部だけですけれども、番号一番から十二番まで、いつどういう協議を地検警察とでやっているかまとめた一覧表が配付してある資料でございます。  その協議の中では、こういうふうに質問をしたらこういうふうに答えるというやり取りまでいろいろと細かく検討しておられるようですが、そういうのを見ますと、なかなか赤裸々にいろいろ書いてありまして、正直、私拝見して、とんでもないやり取りをしているなと。一部には偽証教唆の疑いすらあるようなやり取りもしていることが分かります。  そういうような、そういう警察地検との協議結果をまとめた報告書、あるいは新聞でも大きく問題にされました取調べの小票。つまり、警察の方で取調べをした、あらかじめ小票を作る、それを基にちゃんとした供述調書を作る、供述調書取調べ小票との間に食い違いがあるのではないかということでいろいろ問題になったんですが。  最高検はこの検証報告書を作成するに当たっては、今私が申し上げた地検警察との証人テストを含めたこういう報告書とか、あるいは取調べの小票とか、こういうようなものについてもきちんと目を通して報告書を作成しておられますか。
  37. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 最高検志布志事件の検討を行うに当たりまして、今御指摘のありました取調べ小票や協議文書ですか、これは検討の対象としておりません。また、入手もしていないというように承知しております。
  38. 松野信夫

    松野信夫君 いや、そういうのをちゃんと入手をして、当時の地検警察とでどういうやり取りをして、どういうような捜査をやっていたかというのをちゃんとそれはつかまなければ、この志布志事件のちゃんとした正確な検証にならないじゃないですか。それは怠慢ですよ、というふうに私はもう言わざるを得ないです。  では、警察庁はどうですか。警察庁も今年の一月にこの志布志事件氷見事件、併せて捜査問題点についての報告書をまとめておられますが、警察庁では、今私が言ったような協議の報告書あるいは取調べ小票、こういうのについても精査しておられますか。
  39. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 私どもの検証のその基に、基といいますかその材料にいたしました資料、それは多々ございますけれども、そのそれぞれ個別のどういう資料を参照にしたかということについてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  40. 松野信夫

    松野信夫君 それを隠す理由はないじゃないですか。隠す理由はないですよ。  きちんとした、これから二度とこういうような問題を起こしてはいけないと、どこに問題があったのか、それはちゃんと調べるものは調べて、私はやっぱり、うみがあればちゃんとこの際やっぱりきっちりうみを出して、二度とこういう問題を起こさないようにやるべきだと思いますよ。それは答えられないはずないですよ。もう一回ちょっと答えてくださいよ。
  41. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 例えば、地検県警とのいろんなやり取りというのは、当然これは公判に際しまして行います。そして、またそれが記録に残っているという場合もございますけれども、ただいま委員が御指摘になりました、そのような文書が存在するとかしないとかということはお答えを差し控えさせていただきたいということで、私どもは様々な資料を材料にいたしまして検証はいたしましたけれども、それがどういう資料であるかということにつきましてはお答えを差し控えさせていただきたいということでございます。
  42. 松野信夫

    松野信夫君 いや、それは到底納得できませんよ、これは。  この小票の問題とか、あるいは協議結果をまとめた報告書というのは、もう既に私が入手する前に朝日新聞でばんばん書かれて、たたかれているわけですよ。あれだけ朝日新聞で書いてたたかれていたのを、それを見ているのか見ていないのか分からないけれども、それについてきちんと精査をしていないなんていったらとんでもないですよ、怠慢だと本当に言わざるを得ないわけで。その取調べの小票はどうですか。取調べの小票についても確認はしているんじゃないんですか、どうですか。
  43. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 取調べの小票につきましては、これはちょっと個々の小票の内容については申し上げることはできませんけれども、当然、私どももそういうものも参照しながら検証を進めたということでございます。
  44. 松野信夫

    松野信夫君 取調べの小票といっても、委員の方々はどんなものか分かりにくいのかなと思って、私が入手した取調べの小票を一部、まあ名前のところは消しましたけれども、参考に資料として出させていただきました。これ見ましても、きちんとワープロで打って、伺い欄、本部長部長以下、印鑑を押す欄もあります。この取調べの小票をどうするかという議論を地検警察とでやっておられます。  もう一つの資料、これは平成十五年十一月九日付けというふうに資料に書いてありますが、これは平成十六年の誤りだと思います。ほかの私が入手した資料は全部平成十六年というふうになっていましたので、これは平成十六年十一月九日の誤りだと思いますが。この資料というのは、捜査第二課企画指導補佐、警部磯辺さんという方が二課長あてに、地検とこういう協議をいたしましたという、その協議の結果を報告をしているわけです。この中身見ますと、協議内容がなかなか生々しく、この磯辺さんという人はなかなかきちんとした人のようで、書いてあります。  これを見ますと、二枚目のところに(四)で小票についてと、小票の問題は頭を抱えていると、検察庁としては絶対に出さないという方針であるがというようなことをやり取りしておられます。その次のページのところへ行きますと、磯辺補佐の発言として、小票が出たら飛ぶって書いてあるんですね。小票が出たら飛ぶというのは、恐らく事件としてもう飛んでしまって成り立たないということかなと思います。そのちょっと前のところを見ますと、内田検事の発言として、検察側としたら死んでも出さないつもりだがと、最終判断は裁判所にあり、裁判所が必要性を認めたら出さざるを得ないと。  こういうようなことで、小票はとにかく出さないんだと、こういうやり取りをしているようですが、こういうことは警察庁の方は確認していますか。
  45. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 検察警察が様々なやり取りをしているというのは事実でございますけれども、その個々の内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  46. 松野信夫

    松野信夫君 それじゃ、今、私読んだようなやり取り鹿児島地検警察とであっているかどうか、これは法務省の方、刑事局長の方は確認していますか。
  47. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 個別事件における捜査機関あるいは捜査機関同士の連絡につきまして、個別のやり取りお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、最高検検証結果の中でも、公判経過等を通じて、検察が例えば不利な証拠を隠し通すというような口裏合わせをしたというような事実はうかがわれなかったものというふうに承知しております。
  48. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、最高検は、今私が読んだこういう文書、地検との協議結果をまとめた文書、これもきちんと精査をした上で今のような答弁しているんですか。
  49. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 先ほども御答弁申し上げましたように、今示されているような文書は承知していないわけでありまして、したがって、最高検検証するに当たりまして今お示しのような文書を参考にしたということはないというように承知しているわけでございます。
  50. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、こういう文書も確認していない。しかし、先ほど申し上げたように、朝日新聞にはもう既に暴露されて、ばんばんと新聞記事には書いてあるわけですよ。そういうのも最高検はしっかり確認しないで、こういう口裏合わせしてはいませんとよく言えますね。口裏合わせしていないその何か根拠はあるんですか。新聞であれだけたたかれたんですよ。根拠をはっきり言ってください。
  51. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 最高検の行った検証といいますのは、志布志事件捜査、公判上の問題を明らかにして、その再発防止のための検討を行うことが目的だったわけであります。そうしたことから、確定記録、それから検察庁が保有しておりますそれ以外の訴訟記録を精査し、さらに、関係する検察官等からの聴き取りを実施した上で検証を実施したわけでございます。
  52. 松野信夫

    松野信夫君 何か、自分の都合のいいところだけやっても駄目ですよ。ちゃんと、やっぱりうみを出すところはうみを出して、自分にとって痛いところでもやっぱりちゃんと精査をして、それで二度とこういう問題を起こさない、そのための最高検検証ではなかったんですかね。私はちょっと最高検報告書見ただけでも、これは大した検証になっていないなというふうに見ましたけどね。その実態も極めて不十分だというふうに言わざるを得ないと思います。  もう少しこの内部の協議書を見ますと、次に、秘密録音の問題についてもいろいろとやって、秘密録音について何か勘違いで通そうというようなやり取りをしてもいるようで、これもちょっといかがなものかなというふうに言わざるを得ません。  それから、六番のところでは踏み字、踏み字の字がちょっと間違っていて時間の時になっていますが、これは文字の字の方ですが、踏み字の問題についても協議をしておられるようで、ただ、この内田検事というのは、今の磯辺さんの考えは絶対に言わない方がいいと、言えば追及されると。要するに、踏み字の事実の問題についてはもうほっかむりをしようということを、この磯辺さんと内田検事とでこれやり取りしているわけですよ。だから主尋問でも聞かないし、この三席検事が、いずれにしても主尋問では聞かないし、質問が来たら異議を唱えると。要するに、これは握りつぶそうということですから、内田検事は、今の磯辺さんの考え絶対に言うなと。これはちょっと私は、これはもう偽証教唆に近いですよ、これは。こんなことが証人テストということで現実に磯辺さんと内田検事あるいは三席検事との間でやり取りがされている。これは愕然としますよ。  要するに、これはもういったん起訴した以上、真実がどうかこうかなんてことは関係ないと、とにかく起訴したものは何が何でも有罪に持ち込むんだと、有罪つくっちゃうということで、私はやっぱり検察の本来の役目は、実体的真実は何か、それを通じて社会正義を実現するというのが本筋であって、何も、有罪に何が何でも、でっち上げでも持ち込む、これが検察の役割ではないはずですよ。  率直に、大臣のその点についての御感想でも結構ですので、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  53. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) まず、取調べ小票のお話がありまして、前にそちらの方からお話があったときに、私は取調べ小票というのはちっちゃなメモに何か走り書きしたものかと思ったら、これは取調べ大票ですよね、これ。実は、現物を今日拝見してびっくりしたというのがあれです。  とにかく、また、今のやり取りのようなものがどうしてオープンになって出てくるのかもよく分からない部分はありますが、当然警察検察は様々に打合せはするものとは思いますが、やはり検察といたしましては、例えば警察事件にするあるいは逮捕するという、そして最初に捜査をするということに対して、検察はそれをチェックする立場にあるんだろうと。本当にこれで大丈夫なのかと、それをチェックする立場にあるというのが本筋だろうと、こう思うものですから、その本筋を外さないようにこれからみんなで頑張ると、こういう決意でございます。
  54. 松野信夫

    松野信夫君 もう率直に言うと、この最高検の報告にしても、あるいは警察庁でのこの今年一月の報告にしても、私はもう一遍、こういうような小票の問題、そして警察検察の協議のこういう文書、それから新聞もよく見てください、朝日でさんざんたたかれたんだから。そういうのもしっかり検証した上で、自分にとって不利なところも、警察検察にとって不利なところも十分踏まえて、もう一度これは検証し直す必要があるのではないかなというふうにこれはもう指摘をしておきます。  大臣、どうですか、その点は。
  55. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) これは最高検が判断をされることでしょうから、私がどうしろこうしろと言うべきことではありませんが、今日の委員会やり取り等も最高検は当然読んで、またいろいろと考えていくんだろうと思います。
  56. 松野信夫

    松野信夫君 ちょっとそれは納得できないので、是非これはもう一回志布志事件捜査の在り方、これはきちっと不利なところも有利なところももう一遍やってもらいたいと思います。  それからまた、もう一つ、小票について協議の結果のところを見ますと、検察庁としては絶対に出さない方針だと。小票については、公文書ではなく報告用の私的メモであること、保管状況については、庶務が一括管理し、だれでも見れない状況だったこと、印鑑が打ってあることは、決裁ではなく単に見たという確認印で、現に印鑑漏れもあることなどと証言すると、こういうふうにしている。  確かに、この取調べの小票というのは、印鑑打つ欄が、伺いの印鑑欄があるんでそうだと思いますが、これはしかし、ここまでやっていれば、こういうふうに証言するというふうに幾ら警察検察で打合せしていたとしても、これは単なるメモではなくて、これは公文書ではないんですか。刑事局長、どうですか。
  57. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) これが公文書に当たるかどうか、今、直ちにここで考えを述べることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  58. 松野信夫

    松野信夫君 それから、もう一つちょっとやっぱり問題だなというのは、内部文書を私見まして、平成十六年十一月十四日付け、番号でいうと私の一覧表の十一番のところですが、これは国税が本件捜査に参加していることを証言してもらっては困るというふうな形でやり取りがなされております。  ちょっと言いますね。内田検事がこう言っています。磯辺さんが中山に国税が本件捜査に参加していることを告げているが、国税は捜査権がないので証言してもらっては困ると、こういう言い方。内田検事は、あくまで調査という形であると、本件の場合、国税は検事正の指示で熊田支部長が依頼したものであったと、国税が独自に嫌疑を持って調査に入ったのであれば構わないが、そうではなかったと。磯辺さんが、これを証言してしまえば国税も約束違反だと言ってくるだろうと。  つまり、これはなぜこういうやり取りがあるかというと、この事件は、起訴されただけでも金額は百九十一万円買収金が使われたとなっているんです。それ以外にも多額の金銭供与があったとされているんですが、このお金がどこから出たか、ついぞ分からなかった。この供与金の原資が解明されなかったんですね。で、焦った地検の、これはどうも検事正と書いてありますが、検事正が国税の方にひそかに捜査参加を求めて、国税が協力をしたということは表に出さないからという約束で、事実上捜査を国税にさせたのではないかということが十分にうかがわれるやり取りになっているわけですよ。この点はいかがでしょうか。
  59. 杉江潤

    政府参考人(杉江潤君) 個別の調査に関する事柄につきましては、守秘義務が課されている関係上、実施の有無を含め、従来からお答えを差し控えさせていただいているところでございます。いずれにしましても、公職選挙法違反事件捜査については、国税当局は関与する立場にはございません。  なお、一般論として申し上げれば、国税当局は、適正公平な課税の実現を図るため、税法等に基づき、検察当局からの情報提供も含め、様々な機会を通じて資料情報の収集に努めているところでございます。
  60. 松野信夫

    松野信夫君 国税が、例えば所得税法違反、法人税法違反でこれを調べる、それは結構ですよ。だけど、今回のは、公職選挙法の買収があったかどうか。国税と関係ないわけです。だけれども、検事正から国税の方に、その百九十一万円のお金の出どころがどうも分からないということで捜査参加を求めると。  それには協力するんですか、国税、例えばそういうふうなことがあった場合に。一般論でいいですよ。
  61. 杉江潤

    政府参考人(杉江潤君) 個別の調査に関する事柄につきましては、お答えは差し控えさせていただきます。  しかしながら、公職選挙法違反事件捜査につきましては、国税当局は関与する立場にはございません。  一般論として申し上げますと、国税当局は、検察当局からの情報提供を含めまして、様々な機会を通じて資料情報の収集に努めているところでございます。
  62. 松野信夫

    松野信夫君 ちょっともう時間がありませんので、じゃ刑事局長にだけ。こういう、検事正がどうも国税に捜査参加を求めた形跡がありますが、この点については確認をしていますか。
  63. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 国税当局の活動あるいはその内容にかかわる事柄については、法務当局からのお答えは差し控えさせていただきます。
  64. 松野信夫

    松野信夫君 ちょっと時間が参りましたのでもうこれ以上質問できませんが、しかし、答弁いただけない点がありますので、これは引き続いていろいろと私の方も検討させていただくし、この委員会としても是非この志布志事件を大きくやっぱりとらえていただいて、場合によっては国政調査権の発動まで念頭に置いてやっていただきたいというふうに思います。  以上です。
  65. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私の方は、今日は裁判裁判の点について何点か確認をしながら、質問させていただきたいと思います。  裁判裁判、いわゆる裁判員法によりますと、この法律自体は「公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」というふうに規定をされています。つまり、この裁判員法、公布日が平成十六年五月二十八日でありますので、五年ということになりますと来年の平成二十一年五月二十七日までには施行されることになっていると。秋にはもう本番ですから、裁判員の候補者名簿の作成とか、十二月になれば当然調査票が裁判員候補者に送付されると。言わば本格スタートになるということになるんだろうと思います。  ところが、最近になりまして、学者の方とか元裁判官の方とか、また世論調査もそうなんですけれども、なかなかこの裁判裁判に対する準備が十分じゃないんじゃないかと。特にこの裁判員、いわゆる裁判員法の附則第二条二項は配慮規定というのを設けているんですよね。つまり、円滑かつ適正に実施できるかどうか、その状況を配慮しなければならない。そういう規定を根拠にして、施行自体を遅らせるべきではないかとか、いったん凍結しなければならないんじゃないかというような議論が起こされていることも事実でございます。  でも、私どもとしてみれば、この法律を仕上げてきた国会としては、裁判員制度が是非円滑に法の定めたところによってやられることが大事だというふうに認識はしておるんですけれども、その上で幾つか御質問したいんですけれども、つまり、来年五月までに裁判員制度を実施する、それを想定いたしますと、先ほど述べたようにこの秋からいろんな作業が入ってくるわけでございますが、法務省として、いつごろまでにこの制度の実施を目指して、そのための施行令をいつごろ発出予定であるか、大まかな時期をお伺いをしておきたいと思いますし、さらに、この裁判員法の附則の第二条一項に基づきまして、つまり、これはどんな言葉で言われているかというと、裁判員制度についての「国民の理解と関心を深めるとともに、国民の自覚に基づく主体的な刑事裁判への参加が行われるようにするための措置」という規定がございますが、言わばこの措置という問題でいけば、主な実施項目、そしてその実施状況についてどうお考えなのか、法務省及び最高裁判所にお伺いしておきたいと思います。
  66. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) まず、裁判員法の具体的な施行期日についてであります。現段階において確定的なことは申し上げられないのでありますけれども、施行には十分な準備が必要であることを踏まえますと、施行すべき期限に近い来年の春ころということになるだろうというふうに考えております。  そして、その施行時期を定める政令でありますけれども、施行期日の周知を図るためには一定の期間を要することも踏まえますと、近々と申しましょうか、一両月中にも政令を制定する予定でございます。  それから、もう一つお尋ねがございました、裁判員制度が円滑かつ適正に実施し得るような措置の関係についての御説明をさせていただきます。  裁判裁判が円滑かつ適正に実施できるかどうかにつきましては、一つは、まず裁判員制度についての国民の理解と関心の深まりがどの程度のものなのか、これを深めていかなくちゃいけないというのが一つ目であります。それから二つ目は、裁判員法の施行に必要な法令の整備というようなことがございます。三つ目は、裁判員制度を円滑に運用するための体制整備というようなことになるのではないかというふうに思うわけでありますが、こうした点を総合的に進めていく必要がございます。  法務省といたしましては、まず一番目の国民の理解と関心を深めるという点につきましては、最高裁判所あるいは日弁連、関係省庁等と連携いたしまして積極的に広報活動を実施してまいりました。  その結果、周知につきましては相当の成果が上がっているわけでございます。十八年十二月時点の内閣府の特別世論調査によりますと、参加意識につきましても六割以上の方々が、義務であるからということも含めて裁判員として裁判に参加するという御意向を示されるに至っております。そうしたことから、もちろん裁判員になることへの不安をお持ちの方、なお少なくないと思いますけれども、参加意欲は制度を実施するために必要な水準に達しつつあるのではないかというように考えております。  その他の点について申し上げますと、法令の整備の関係につきましては、去年、国会で部分判決制度の創設等を内容とする裁判員法の一部改正を実現していただきました。また、裁判員の辞退事由を定める政令というようなものを制定しております。必要な法令の整備ができたというように考えております。  そして、裁判員制度を円滑に運用するための検察庁の体制整備、あるいは実務運用上の工夫等につきましても鋭意検討を進めているところでございます。  今後も、より多くの国民の方々に不安なく参加していただけるよう広報活動を一層積極的に行うと同時に、裁判所あるいは弁護士会等とも連携いたしまして、円滑適正な裁判員制度の実施ができるように準備を進めてまいりたいというように考えておるところでございます。
  67. 小川正持

    最高裁判所長官代理者小川正持君) お答え申し上げます。  裁判所では、国民が参加しやすい刑事裁判の実現が最重要課題であるというふうに考えております。これまで様々な取組を行ってまいりました。  具体的に申しますと、検察庁や弁護士会と協力して、法曹三者による模擬裁判をこれまで三百二十回以上実施してまいりました。そして、実証的な検討を行っております。これにより、裁判裁判では目で見て耳で聞いて分かる審理を実現する必要があると、こういう点につきまして、法曹三者の間で共通認識が形成されるなど、大きな成果を上げることができたというふうに考えております。  裁判所といたしましては、今後とも、裁判員制度についての国民の理解と関心を深めるため広報活動に力を注ぎますとともに、法曹三者による模擬裁判などを繰り返し実施し、裁判裁判にふさわしい刑事裁判手続を実現できるよう努めてまいりたいと考えております。
  68. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 かなり国民の理解を得られたというお話でございますけれども、そういう世論調査もある一方、一番最新のは三月十六日、東京新聞さん始め日本世論調査会の世論調査が一番新しいものの一つですけれども、これを見ると、先ほどの御答弁とは違って、消極派、言わば裁判員を務めたくないという人が三七%、余り務めたくないという人が三五%、つまり余りやりたくないという人がまだ七二%にも上っているというような、こういう調査もあるわけですよね。  しかも、私はこの調査の中でちょっと、ああこれはもっと頑張らなきゃいけないなと思った一つは、裁判員制度を知っているかという問題について、この認知状況が、いまだによくは知らないという方たちが結構多い、知っているというのが約半分しかないという現状が、一生懸命やっている割にはどうなのかなということも思うんですけれども、この辺、国民の参加意識や認知度が低いという問題について、どんなふうにそれ分析をされて、どう本当にこの問題に取り組もうとされているのかと。  私が言いたいことのもう一つは、そういった、何で参加意欲がなかったり、どこにその問題点があるのかというのは、世論調査を見れば、一つはこれなぜ参加したくないかというと、重要な判断をする自信がないというようなことが非常にパーセンテージ高いとか、それから、やっぱり皆さんの印象からすると、こういうのにかかわると長い期間それに携わってしまって、結局自分のやらなくちゃいけないことからこの制度のためにもう縛られてしまうんじゃないか、そんな認識を持っている方が今いらっしゃるわけですよ。  ところが、さっき話があるように、その裁判の在り方、公判の在り方を様々な仕組みを見直して改善してきているわけですよ。じゃ、そのことを国民が知っているかと。知らない。ならば何が今大事かというと、実はその国民が不安に思っていること、なかなか参加したくないと思っている原因を究明し、そこにピンポイントを当てて、言わばそこに対する答えをやることで、初めてこの裁判員制度に対する認識というのを持ってもらえるのじゃないかなということを思っているんですけれども、今日は委嘱審査ですから、その平成二十年度予算でこういった問題にどう取り組もうと現実にされているのかというようなことをちょっと教えてほしいんですよね。
  69. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 一般の方が刑事裁判に参加する場合に不安を感じる点につきまして、私どもも分析を行っております。  三つぐらい大きな要因があるのかなというふうに考えております。一番大きな点は、やはり重大な判断にかかわることの不安であります。あわせて、身の安全に関する不安というのも相当数ございます。それから、三つ目でいいかどうかあれですけれども、三つ目の点といたしまして、経済的負担や社会生活への影響に関する不安ということも大きな要因であるというふうに考えております。  したがいまして、今後の広報活動はこうした不安の解消に重点を置いて行う必要がございます。具体的に今何をやっているのかということでありますけれども、検察庁の方では、職員が地域の集まりや企業等にお伺いして不安の解消に重点を置いた説明会等をいわゆる草の根広報と名付けまして精力的に行っております。平成十九年度と二十年度の二年間で合計全国で一万二千回こうした会合をやろうということで、既に平成十九年四月から平成二十年一月までの間に一万回を超える説明会を実施して、対象人数は四十七万人に上っているというように聞いております。  説明会に参加した方々の意見を聴くことが大変重要でありますけれども、そうした意見によりますと、裁判員制度について詳しい情報を得るとやはり不安が軽減され、参加意識が高まるというような結果でございます。例えばでありますけれども、説明の中で、一体その裁判員になる通知はいつ届くのか、これについては選任期日の六週間前までに通知が届きますよというような説明をいたします。あるいはどれぐらい裁判が掛かるのかといいますと、約七割の事件は三日以内に終了すると見込まれますよというような説明をいたしますと、ああ、そういうことであればそれほど案じていたほどのことはないなというようなことで不安が軽減されるところがあるようでございます。  したがいまして、今後も、こうした説明会あるいはポスター、パンフレット等の制作配布等、様々なやり方を通じまして裁判員制度についての詳しい情報の提供に努めていく予定でございます。
  70. 小川正持

    最高裁判所長官代理者小川正持君) お答え申し上げます。  周知の度合いというのは、徐々にではございますけれども、高まっているというか、進んできているというふうには考えております。  ただ、委員指摘のように、参加意欲なかなか高まらないのではないかという御指摘ございますけれども、その辺りは、ある程度周知が進むにつれて国民の不安や疑問がどうしても具体化してきているのではないかという面があるというふうに思っております。  それで、裁判所といたしましては、これに対応するためには、選任手続や裁判員の職務内容などこうした点、それから制度に関する基本的で重要な事項を具体的にお伝えして、不安や疑問を解消することが有効ではないかというふうに考えているところでございます。このような考えから、裁判所では、各地において双方向型の説明会とか企業訪問、これは平成二十年二月現在、約四千四百回行っておりますけれども、を積極的に実施して、制度に関する基本的な事項に関する具体的情報をきめ細かく伝える広報活動を行っているところでございます。  制度実施の前年に当たる平成二十年度につきましては、十二月ころまでに裁判員候補者名簿記載通知が発送される、先ほど委員指摘ございました、など制度に対する現実感のある関心が高まる環境にございますことから、メディアに対する情報提供による各種報道の誘発を図りつつ、適時適切な広報企画を実施していく予定でございます。  このような広報活動を実施するために、広報予算としては平成二十年度も本年度と同規模の予算、合計約十三億九千万円を計上しているところでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  71. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうやって法曹三者でこれ取り組みながら、私も是非期日までに始めていただきたいと強い念願を持っているんですけれども。  それにしても、例えば、今年の二月の二十九日でしたか、新潟県の弁護士会さん、弁護士会というのはある意味じゃこれに一緒に取り組んでいる仲間のはずなのに、その弁護士会が弁護士会として決議をした。何を決議しているかというと、裁判員制度については延期することとか、再点検しろと、改正できなかったらこの法案を廃止しろとか、すごい指摘なんです。私は、ここまで言われると、ちょっといろいろ思いはあるんですけれども。  更に加えて、いろんな話出てくるのは何かというと、先ほど申し上げましたこの裁判員法の附則二条二項、つまり配慮条項というこの条項にきちんと合致していないから、今はいわゆる円満かつ適正に実施している状況にないから施行が違法であるというような論理を、これは元東京高裁の何か判事の方がおっしゃったり、そういう論文が出てみたりと。私はちょっとこの辺、えらい一生懸命やっていることに対してのそういう問題がある。  私は、特にこの円滑かつ適正に実施していく状況にないから今施行は違法であるとおっしゃる方たちに対しては、断固きちんとした、今状況はこうなんだということをはっきり法務省の方から、どういう状況にあるのかと、今。そういう発言に対して、これは間違いであるということなら間違いであるとはっきり言う部分があるならば言っておいていただきたいと思いますが、いかがですか。
  72. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 先ほどの答弁と重なってしまうかもしれませんけれども、国民の周知あるいは参加意識につきましてはいろいろな世論調査ございます。積極的に参加されるという方もおられますし、また参加に消極的な方もおられますけれども、しかし、義務として定められたのであれば参加するという方も相当数おられるわけでありまして、そうした方は実際に裁判員制度が施行されたときには恐らく参加をしていただけるんだろうというふうに考えております。  もちろん、法務省といたしましては、そういう方にもできるだけ積極的に参加していただく方向で更に広報に努めてまいりたいというふうに思うわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、義務だから、義務である以上参加せざるを得ないとおっしゃる方も含めて六割以上の方が裁判員として裁判に参加するという意向を示されているということは、必要な水準に達しつつあるのではないだろうかというふうに考えているわけでございます。  また、法律、法令の整備は、先ほど申し上げたように、部分判決制度の創設あるいは辞退事由政令の制定等でおおむね整ったというように考えております。  あとは、法曹三者が実際に対応できるような、国民に分かりやすい迅速な充実した審理ができるようにトレーニングを重ねていくことだというふうに考えておりまして、実施は十分に可能であるというふうに考えておるところでございます。
  73. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に大臣、私申し上げているのは、どんな世論調査しても、今おっしゃるみたいに、しようがないでも何でもいいですよ、ともかくこれに参加するということが大事だという国民意識が徹底するように、もう十二月になれば名簿の問題も始まるわけですよ、具体的に。本当に国民世論を喚起するだけのことに、裁判員制度の本当に実施へ向かっての決意を大臣から伺って、質問を終わります。
  74. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 今日は私の答弁が少なくて、大野恒太郎参上という感じの委員会でございますが。  実は私、木庭先生のお話聞いておりまして、先生最初に一番重要なことをおっしゃったんではないかと思うんです。というのは、今うちの刑事局長が、例えば世論調査、内閣府ので、重大な判断にかかわることへの不安、身の安全に関する不安、経済的不安や社会生活への影響に関する不安というのは、世論調査で聞かれたらこういうことを適当に挙げるんですよ。つまり、裁判員制度が何か分かってないんですよ。その周知が図られていないから、分かっていないから、強いて聞かれればこれかなということになるわけです。裁判員制度というのがこういうものですよということをとにかく分からせる努力がまだ不足しているんです。分からせれば、こういう世論調査の結果にならないですよ。私はそう思うんです。  実は、木庭先生は我が郷土福岡県の大先輩でございますが、この間、私実は地元で二百人ばかり集めて、裁判員制度の私が説明をして、その後、プロフェッショナルも法務省から呼んで説明をさせたんですね。そうしたら、何となく聴衆二百人がまだ首かしげているわけですよ。で、私はその専門家に言ったんですね。要するに、裁判員になったら朝から晩まで何日間どういう生活をするか、どこで評議が入るのか、つまりどんな生活を三日間だか五日間だかするか、それ説明してごらんと言ったんです。それを説明したら、ああ何だそんなことだったのか、じゃやってもいいなというふうに雰囲気が変わったんです。  つまり、裁判員、もう説明会いっぱい開いているんです、模擬裁判も随分やっているんですが、裁判員って何するのかということがいまだに徹底していない。それは、国会の中歩いておりまして、同僚の国会議員から、裁判員制度って民事事件はあるのなんて聞かれたこと何度もありますよ、私。国会の中でもまだその程度なんですよ。だから、とにかく裁判員制度というのはどういうものであるかをどうやって教えたらいいのか、それを周知徹底しないで世論調査かけるといい結果出てこないんだろうと、こう思います。  だから……(発言する者あり)はい。そういった意味で、広報の有効な使い道はもっと考えなくちゃいかぬと。まあ裁判員参上じゃやっぱりうまくないなと、こう思います。
  75. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  76. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  一昨日の大臣所信に続きまして、外国人研修生・実習生問題について、不正行為が認められる場合の在籍研修生、技能実習生の保護という角度で幾つかお尋ねをしたいと思います。  一昨日に閣議決定もこの関係でなされておりまして、その中で「研修生・技能実習生の保護のため早急に講ずべき措置」というテーマがございます。この全体のこれからどうしていくのかという問題は、私はこれからしっかり吟味をさせていただきたいと思っているんですけれども、この早急に講ずべき措置というものの中の一つとして、受入れ機関が不正行為の認定を受けた場合及び受入れ機関の倒産などにより研修・技能実習が継続できない場合であって、研修生、技能実習生の責めに帰すべき理由がないときは、原則として、当該研修生、技能実習生が他の受入れ機関において研修・技能実習を継続できるよう受入れ先機関の開拓を行う仕組みを構築をしようと、そういうお話がございます。  つまり、前回御紹介をしたような不正行為の認定がされる、あるいは企業が倒産すると、こうなれば外国人労働者たちはほうり出される格好になるわけですね。その場合、原則として、ほかの受入れ先機関の開拓をしっかりつくっていこうじゃないかという御趣旨だと思うわけです。  不正行為や倒産の場合に、その奥にパスポートの取上げだとか強制貯金だとか、あるいは賃金未払だとかという問題があるわけで、労働者たちを帰国させるということが何の解決にもならないどころか、逆に、母国での保証金や罰金などの重大な人権侵害をもたらすケースが多々あるということは、もう前回の質疑大臣も御理解いただいていると思うんです。だからこそ、こういった場面で、研修生や実習生を受け入れた国なんですから、私たちはきちんと保護するという立場に立って、こういった考え方を具体化そして運用をしていっていただきたいというふうに思っております。  大臣、いかがですか。
  77. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 今仁比先生おっしゃったように、これは本来、国際交流というか、日本外交の問題でもあるわけでして、そして技術移転という非常に大きな目標があって、日本のすばらしい技術や制度を外国の方に学んでいただこうという、そういう目的でやっていることですね。これを食い物にするようなやからが出てくるから非常に困っているわけで、そういうことは防いでいかなくちゃならないわけですが。  つまり、外国から研修・技能実習という形で希望に燃えてやってくる方、あるいは、おまえのようなやつは優秀だから行ってこいといって歓呼の声に送り出されてくる方もいるんだろうと思うんですね。その方々が、一次受入れ、二次受入れとあって、今先生おっしゃったように、そこに不正があったと、あるいは倒産しちゃったというんでお帰りなさいということは絶対しちゃいけないと思うんです。  つまり、倒産しちゃったならば、その一次受入れ機関が、じゃ別のところにきちんと面倒を見る、あるいは不正があったところは、もうこれは駄目ですから、不正があったところから引き揚げてきちんとしたところを紹介するという、こういう保護努力をしなければこの制度はうまくいかないと思います。
  78. 仁比聡平

    仁比聡平君 厚生労働省の職業能力開発局長にもおいでいただいておるんですが、今大臣の御答弁もありましたし、私からも、この具体化に当たって今の大臣のようなお考えを是非徹底していただきたいということを要望だけ今日はしておきたいと思います。  それで、お手元に資料を、福島民報の去年十二月二十八日付けの記事をお配りいたしました。今問題にしているような場面、つまり、ベトナム人の実習生十六人が働いていた福島県田村市の縫製加工会社、ここファッション緑という企業ですが、ここが〇六年の十二月に倒産したわけですね。これ、多額の賃金が未払になっていると。この記事の冒頭にあるとおりでございます。  記事の中身に入っていただきますと、この十六人の、これ女性たちですけれども、ベトナム人は、研修期間であるはずの一年目から残業が始まって、残業時間は最大で月百六十時間に及んでいた。残業手当はわずか時給四百円。これ、最賃法に基づく最賃は福島は六百二十九円だそうで、これを大きく下回るというわけですね。そして、大臣、よろしいですか、下から二段目の段のところにありますが、給与からは「ちょきん」、ひらがなで書くわけですね、ちょきんという名目で強制的に毎月二万円、三万円が天引きされていたが、倒産後も返還はされなかったと。私、このちょきんというひらがなで書かれた給与明細書、コピーが写りが悪いと思いますけれども、これ、本当に見て切ないし、悔しいし、絶対に許せないというふうに思うわけですよ。  この件については、郡山労基署が書類送検をされたと私伺っておりますけれども、事実でしょうか、確認をさせてください。
  79. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 本件につきましては、賃金不払、労働基準法第二十四条、最低賃金法等の違反で法人及び代表者を書類送検しているところでございます。
  80. 仁比聡平

    仁比聡平君 そこで、この未払の強制貯金だけで一人九十一万円もあるんですよ。実習生たちは本国で日本円で九十三万円、この保証金を田畑を担保にして借金して払って来日しているわけですね。この未払になっているお金がどれほど大切かと、本当によくお分かりいただけると思うんです。  住み込みの部屋はすし詰め状態だというこの記事がございます。会社の倒産後は水道、電気、ガスも止められて、衣装ケースにためていた水を飲んだり、この記事にあるように冬山で木を切ってたき火をしてしのいだというわけです。  この記事の冒頭に出てきます福島大学の坂本准教授、この方はこのことが起こって直後にベトナム人の労働者たちと面談をされ、その後、ベトナムまでわざわざ出向かれて調査を続けて、あるいは支援を続けてこられているわけです、本当に貴いことだと思うんですけれども。その先生のお話では、この彼女たちが山でこんなにして頑張ったのはどうしてもお金を取り返したかったからだというふうに言っているそうなんですよね。  この御紹介でもお分かりいただけますように、この研修生や実習生には何の責めに帰すべき理由もないわけです。ほかの受入れ機関の開拓をして頑張るというのは私、もっともだと思います。あわせて、こうした実習生たちがせめて未払になっている賃金あるいは強制貯金、これを取り戻すことができるように、受け入れた私たち日本の政府も、できる限りの、それはもちろんできることとできないことあるでしょうけれども、できることはできる限りの手だてを打つと、そしてこういうことはあってはならないという意思をはっきりさせるというのは当然だと思うんですが、大臣、いかがですか。
  81. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 基本的におっしゃるとおりだと思います。  ですから、先ほど申し上げましたように、立派な目的がある研修・技能実習制度を食い物にする、商売にするという感覚で送り出し機関が、これも日本人が絡んでいる可能性もあるわけですね、そこで保証金を取るとか、そういうことはやめさせなくちゃならないし、あるいは今、「ちょきん」と書いてありますね。ちょきんという名目で天引きされるというのは、パスポートとか財布や預金通帳というものは奪ってはいけないと、置いとけとは、こっちで保管するからとは言ってはいけないということに全く反するケースにもなるわけだし、そういう意味で、何というんでしょうか、確かに安い労働力を得たいがためにこの制度を悪用するということをとにかくやめさせなければならないと私は思います。  そのためには、いろんな議論があるけれども、研修・技能実習制度がどうあるべきかというのでいろんな案がありますけれども、これもある程度先に確定をしなければいけない時期が来ているなとつくづく思います。
  82. 仁比聡平

    仁比聡平君 一般論として、青木労働基準局長、賃金確保法の立替払についてちょっと御確認をさせていただきたいんですけれども、外国人労働者であっても日本の労働者と同様に適用されて八割が支給をされる、それは本国に帰国をしていても変わりはないと。それから、強制貯金の分は不払賃金として立替払の対象になると。そして、賃金が最低賃金以下の場合は当然最低賃金まで引き上げて支払うことになると。これは手続や証拠の問題はありますけれども、制度としてはそういうことで御確認いただけますか。
  83. 青木豊

    政府参考人青木豊君) 未払賃金立替払制度、これは企業倒産によって賃金未払のまま退職した労働者に対しましてその未払賃金の一部を立替払する制度でございますが、この制度におきましては、原則として、委員がお話しになりましたように、未払賃金総額の八割を立替払するというものでございます。技能実習生が強制送還をされた場合でありましても、その未払賃金の八割が立替払されるものでございます。その額が変更されるというものではございません。  また、積立貯金についてでありますけれども、この立替払制度におきましては未払の賃金の立替払を定めたものでございますので、貯蓄金はこの立替払の対象とはなりません。ただ、個別の事案についてどのような範囲で賃金未払になるのか、それが貯蓄金に行っているのかということもございますので、個別の事案につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいというふうに思っております。賃金の全額が支払われていないのであれば、その部分につきましては賃金不払となる可能性があるというふうに思っております。  また、最低賃金額に満たない賃金であったということである場合においてどうかということでございますが、これは、最低賃金額を基礎といたしまして立替払額を算定して未払賃金立替払制度を適用することといたしておるところでございます。
  84. 仁比聡平

    仁比聡平君 結局、強制貯金が不払だと、これは預かっているんじゃないという実態というようなことなんかのある場合などは、先ほどのお話でもこれは賃確法の対象になるという趣旨かなと思うんです。勉強またさせていただきたいと思いますけれども、この坂本先生などの調査によりますと、最賃との差額を含めると、これ十人全体で三千五百万から四千万というような金額に上ってしまうんですよね、未払が。この件でもどのように立替払がされたのかもよく調べていただいて、善処をいただければと思っております。  そこで、先ほど大臣からも送り出し機関がどんなところなのかという趣旨の御発言もありましたけれども、実はこの福島の事件も、前回取り上げさせていただいたコクヤンという送り出し機関でございます。しかも、それだけの未払で苦しんでいる、そして彼女たちは在留期間が迫っていたんですよ。それを、そこに乗じて、ベトナム青年を、名前がありますが、甲とし、コクヤンを、日本支店を乙とするという債権譲渡契約書というのを、私手元に今これ持っております。これは、九十一万円という貯金と言われて取り上げられたものの返還請求権ですね。これを、つまり甲が所有する下記の債権を乙に対し無償で譲渡し、乙は甲よりこれを譲り受けた。ちなみに第二条も読みますけれども、甲は、本契約成立後、遅滞なく丙に対し前条の債権譲渡に基づく通知をなし、又は丙の承諾を受けなければならない、通知又は承諾は確定日付ある証書をもってしなければならないと。  委員弁護士の先生は意味分かったと思いますけれども、これ日本語ですよね。ベトナムの青年が、こんな目に遭って縛り付けられてきた青年たちが、これ読んで意味分かりますか。こういうものにサインをさせて、そして送り返しているわけですよ。こんなひどいやり方があるかと。法的には、もちろん法律論的には詐欺や錯誤あるいは公序良俗違反ではないのかというような問題がありますけれども、そんなことをおいても、こんなことをやるやり方が許せない。  入管は、私は前回からの質疑で恐らく徹底した調査を取り組んでいただけるものというふうに思っておりますが、大臣、ちょっと時間がないので端的に、是非、その徹底した調査を指示をいただきたいと思いますが。
  85. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 前回も議論に出ていたと思いますが、フォローアップですね、非常にまだ数が少ない、八百程度でございまして、これでは全貌を把握するには全く数が少ないので、徹底したフォローアップを命じたいと思っております。
  86. 仁比聡平

    仁比聡平君 今私が申し上げたのは、このコクヤンという送り出し機関がこれだけの悪らつなことをやっている。これに対して徹底して調査をして、せんだって入管局長がおっしゃったような厳しい措置をとるということは当然ではないかと思うんですね。局長の決意をちょっと伺いたいと思います。
  87. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) 御指摘のケースにつきましては、徹底した調査をいたしまして、所要の対応を取らせていただきたいと思います。
  88. 仁比聡平

    仁比聡平君 そこで、こういったやからに縛り付けられてきた青年たちが、先ほどのその立替払も含めて、民事上あるいは労働法上の権利の実現の手だてを取ると。これ、どれだけ大変なことかというのは大臣もお分かりだと思うんですよ。言葉も文化も違うわけですね。外国で本当に心細い。だけれども、自分の当たり前の権利、働いたんだから、それを取り返したいというこの思いが実現をされるというのは本当に大事なことであって、公的機関に相談すれば送り出し機関から保証や罰金というような話になるのではないかという、その彼らの心理状態ということもよく考えなければならないと思うわけです。  そういった中で、在留期間が迫ってくるということがあります。この福島の件でもすぐに在留期間が迫ってくるということで、協同組合が、早く帰らないと警察に逮捕されると。警察が逮捕するわけないと思うんですけれども、こんなことを言って脅して彼女たちをベトナムに送り返したというふうに言うわけですね。  不正行為や倒産について研修生や実習生に責めに帰すべき理由はないと。なのに、在留期限が迫っているというだけで本人の意思に反して帰国をさせられるということになったら、原則としてほかの研修先、実習先を開拓するという先ほどの閣議決定の方向性さえできなくなるじゃありませんか。こうした場合に、私は相応の期間、在留期間の更新、その申請を認めるべきだというふうに思います。  そして、コクヤンの、せんだって指摘をした愛知や岐阜の件でも、これ千五百人、これ中に送られているというわけですよね。そうすると、入管局長が先ほど決意を示されたように、調査が進んでいった場合に、受入れ企業や協同組合が次々にという話になりかねないでしょう、送り返すということに。こうしたことにならないように是非手だてを打つべきだと思いますが、入管局長、いかがですか。
  89. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) 委員指摘のケースは、これから調査いたしますと、御懸念のとおり、相当大勢の研修生、実習生の方の新しい研修先を見付ける、あっせんをしなきゃいけないというような事態が生じることも考えられます。その場合、その数の多少が多い少ないに関係なく、関係機関と連携を取りまして、本人たちの意に反して帰国しなくて済むよう対応していく所存でございます。
  90. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 仁比聡平君、質疑時間終局しております。
  91. 仁比聡平

    仁比聡平君 はい。  この在留期間の申請をどうするのかという点も含めて私よく検討いただいて、一人一人の外国人研修生、実習生が了解ができるように、母国語でその一人一人に説明する文書を作って関係機関から対象になる青年たちに渡すというようなことも是非前向きに検討をしていただきたいと思うんです。局長、うなずいていらっしゃいますから、期待をしております。  いずれにしても、いろんな制度の検討はもちろん必要でございます。ただ、目の前で現実に起こっているこの人権侵害と、これを生み出しているようなこのビジネスモデルですね、あくどいやり方、ここにきっぱりメスを入れるということをやることが私たちの今の本当に大きな責任だということを最後に申し上げまして、質問時間参りましたので、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  92. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。  大臣、所信の中で人権擁護行政の推進ということを高くうたっておられますので、最初にそのことについてお尋ねをしたいというふうに思っています。  人権、中でも言論、表現の自由、あるいは集会の自由に対する危機ともいうべき状況が今この国に広がりつつあるのではないかと、そういう問題意識を持っております。  一月の二十日に茨城県つくばみらい市で予定されておりました市主催の男女共同参画事業の一環としてのDV、ドメスティック・バイオレンス防止のための講演会が、これに反対する皆さん、主権回復を目指す会というふうに名乗っておるらしいんですが、このドメスティック・バイオレンスの防止に反対する団体の抗議によって中止に追い込まれたと。これは連日、市役所の前に拡声機、街宣車で中止を連続して訴えていく、そういう中で、市がこれはもう中止せざるを得ないという形で中止ということになったんですが、一月の二十七日、私の地元であります新潟県の長岡市でも同様のことがございました。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  しかし、長岡市は毅然としてこれをはねのけて、ドメスティック・バイオレンスの防止のための講習会をやったと、こういう事態でございまして、つくばみらい市との対比が問題になるわけでありますが、いずれにいたしましても、つくばみらい市でドメスティック・バイオレンスの防止の講演会、市の主催のこういうものが拡声機による暴力の連続の中で中止に追い込まれた。この事態を人権擁護行政をつかさどる大臣としてどのように思っておられるのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  93. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 御指摘事件というんでしょうか、事実関係については私なりに把握しているわけでございますが、言わばDV防止法、ドメスティック・バイオレンス防止法に関する集会をやろうとする、これはまさに表現の自由の非常に重要な発現形態の一つ。片やそれを、DV防止法は家庭を崩壊させるんだと、被害者をシェルターで保護するなどというのは家庭の崩壊だといって激しくやる、これも表現の自由。  表現の自由と表現の自由のぶつかり合いではありますが、表現の自由といっても、これは公共の福祉の理論を持ち出すまでもなく、行き過ぎればこれは暴力ですね。表現の暴力、言葉の暴力ということになりますから、非常に難しい問題ではありますけれども、表現の自由として尊重されるような行動、つまり拡声機でばんばんやることが、であったかどうかというと、大いに疑問だと思います。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕
  94. 近藤正道

    ○近藤正道君 二月二日には、東京地裁、東京高裁で三度にわたって使用させるべきだ、こういう司法判断が出ているにもかかわらず、プリンスホテルが日教組が予約していた会場使用を拒否をしたと、こういう事件がございました。これも大きな議論になりまして、衆議院でもいろいろ議論になっておりますが、これについて、このプリンスホテルの持ち株会社である西武ホールディングの後藤高志社長がその後、記者会見等をやっておりまして、使用拒否への批判に反論をされております。  ここに私、そのインタビュー記事を持っているわけでありますが、この中で後藤高志社長がこう言っています。司法判断の内容を一言で言えば、警備をしっかり行えば混乱は避けられるはずだと、こういうことなんだと。しかし、いかに厳重に警備をしても、右翼の街宣車の騒音は妨げることができない、防ぐことができないと、こういうふうに反論しておりまして、また、文科省の事務次官、厚労省の厚労大臣等が司法判断に従わないのは法治国家にあるまじき行為だと、こういうふうにプリンスホテルを批判したことに対して、それは十分な情報を基に判断していないんではないかと、こういうふうに反論をしているわけでございます。要約すれば、警察と主催団体に責任転嫁する、こういう発言をしているわけでありますが、大臣にお聞きする前に、まず、今日警察庁来ておられますかね。  警察庁はこの後藤社長の反論をどうとらまえられているのか。警備はしっかり行えないのか。後藤社長が言うように、まさに右翼団体の街宣はやり得なのか。まあ警察は随分右翼に甘いのではないかと、こういう意見もあるわけでありますが、この後藤社長の、警備をやったって騒音なんかきちっと守られないと、こういう意見、警察の警備なんていうのは不十分だと、こういう意見について御意見ございますか。
  95. 池田克彦

    政府参考人池田克彦君) 右翼の騒音あるいは接近行動につきましては、警察といたしましても看過できない問題ととらえておりまして、法令に違反する場合には厳正な取締りを行っているところでございます。  本件のように右翼の蝟集が考えられる場合には、必要な態勢を取って、大会の安全、円滑な実施と近隣の平穏確保に努めているところでございます。今後とも、その的確な対応に努めてまいりたいというふうに思っております。  また、騒音につきまして、これを発生する以前にこれを取り締まるということはもちろんできないわけでございますけれども、右翼等の騒音車両を接近させないように進入規制の措置を講ずるなど、できるだけ関係者あるいは周辺の住民の方に迷惑を及ぼさないように配慮しているところでございます。
  96. 近藤正道

    ○近藤正道君 大臣にお尋ねをしたいと思いますが、この問題につきましては、衆議院でもあるいは参議院でも大臣御発言をされておるようでありますが、大臣の発言の後、後藤社長が、事情がよく分かってないんではないかと、こういう言わば反論をされているわけでありますが、改めて法務大臣としてこの司法判断を無視するようなこの後藤さんの発言についてどうお考えなのか、所見をお伺いしたいと思います。
  97. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 事情を私が知っているか知らないかなどということは、とやかく、社長さんかホールディングか知りませんが、言われる筋合いではないと思いますね。  私が申し上げているのは、個別の事件について申し上げているんじゃないんですよ。それは右翼が押しかけてくるだとか、受験生がいっぱい泊まるだとか何だいろいろあるでしょう。しかし、日教組と予約の契約があって、大本にあって、教研集会なさるということがあって、だけどそういう契約を解除しようとしたんでしょうが、そのことが総合的に判断して裁判所が保全命令を出したんでしょう。つまり、本裁判に持ち込んでおったんでは間に合わないというか遅過ぎるから仮処分というような仕組みがある、保全命令という仕組みがあるわけですね。それに当事者が、一般論ですよ、従わないとすれば、それは法治国家ではなくなってしまうんですよ。  だから、私は正直言って、警察がどう警備するとか右翼が来るとか、私は法務大臣という立場ではあずかり知る立場ではない。私は、法治国家とはかくあるべしと、裁判所の保全命令には従うべしと。従わないことは、それは法治国家ではないということを申し上げているんで、例えば法務大臣事情を知らないんじゃないかと、こう言われたとしたら、全くいわれのない批判、憤りを禁じ得ませんね。
  98. 近藤正道

    ○近藤正道君 暴力の前に言論だとかあるいは表現の自由が無視をされる。まれに司法がそれらの意義を尊重する、つまり、集会やあるいは結社の自由を尊重する、こういう司法判断を出すと、そういう司法判断含めて軽視をする、こういう風潮に対して本当に憤りを覚えてなりません。  今日は厚労省の方は来ておられますか。厚労省にお聞きしたいと思っておるんですが、こういった開き直りとも言える対応には、私は政府としても毅然とした意思を表示すべきだと、こういうふうに思っております。  今回の事件では、プリンスホテルは集会の予約を言わばキャンセルしただけではなくて、集会参加者の宿泊予約も取り消しているわけであります。厚生労働省によりますと、港区は宿泊拒否事件について旅館業法違反と考えておって、今週中に改めてプリンスホテルを呼んで、その後の対応を見て、四月以降、処分の内容を決めると、こういうふうに話しております。〇三年、熊本県でのハンセン病の元患者さんの宿泊拒否事件がございました。このときには、行政の指導を拒否したとして旅館事業者に営業停止の処分が下されております。  一連の後藤社長の発言でありますけれども、これは必ずしも宿泊拒否についてのものではございませんけれども、論理としては共通するものがございます。これで港区からホテル側への指導が仮に受け入れられたといったとしても、社長さんがこういう気持ちを持っている、こういう意識の下で全く納得がいかない、上辺だけの取り繕いとしか私には思えないわけでございます。  一連の後藤社長の居直り的なこの発言、警察とその主催者側に問題があるんだと、こういう発言は、今後の処分決定に当たってどのような考慮がなされるのか、どのようにこれは配慮されるのか、厚労省に見解をお尋ねしたいと、こういうふうに思います。
  99. 中尾昭弘

    政府参考人中尾昭弘君) 旅館業法の関係でございます。  旅館業法の第五条におきましては、営業者は、宿泊施設に余裕がないなど一定な場合を除き宿泊を拒むことができないとされておりまして、本件につきましては旅館業法違反の疑いがあると考えております。  旅館業法による個別の営業の許可、指導監督は都道府県知事が行うこととされておりまして、本件の管轄は港区でございます。  それで、港区の対応でございますけれども、事実関係を調査するため、プリンスホテル側から二月に二回、それから日教組側から三月にそれぞれ事情を聴いたところでございます。今後の対応でございますけれども、港区は明日、三月二十八日にプリンスホテルに対して事実関係の最終確認を行った上で、港区としての旅館業法第五条に関する判断を伝える予定であるというふうに聞いております。  厚生労働省といたしましても、この間の経緯を踏まえて、引き続き港区に対して必要な助言等を行ってまいりたいと考えております。
  100. 近藤正道

    ○近藤正道君 厚労省として港区に助言をする際に、もう一回繰り返しますが、その拒否の後、まさにプリンスホテルの最高責任者が全く悔い改めていないと、まさに居直りとも言える発言を行っていると。このことは是非やっぱり重視をしていただいて、処分に当たって考慮していただきたい、このことを強く申し上げておきたいというふうに思っています。  再び大臣にお尋ねをいたしますが、今ほどお気持ちの表明がございました。私は、大臣一つのメッセージとしてこれは非常に重いものだというふうに思っておりますが、ちょっと僣越でございますけれども、大臣のいろいろ日程なども調べさせていただきましたけれども、二月の二日以降、報道に出てくる大臣の日程等を見ますと、プリンスホテルもいろいろ利用されているようでありますけれども、あるいは出入りされているようでございますけれども、ここは、これだけまさに法治国家の根幹を否定するようなところでありますので、場合によっては大臣も使わないという形でより明確に大臣のメッセージを全国にやっぱり発信すると、これもやっぱり一つ方法ではないかというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。
  101. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) それはこれからいろいろ考え、注意していこうと思いますが。  ただ、先生からいただいた資料ですか、この後藤社長インタビューですね。これ、ずっと後ろの方見ていきますと、社民党党首、連合会長、文科省次官、厚労相。皆、司法判断に従わないのは法治国家にあるまじき行為だと批判したがと書いてあるんですが、社民党党首はおたくの党首の立派な方ですね。連合会長、民間人ですね。文部省次官、厚労相。司法判断に従わないのは一般論ですが、法治国家にあるまじき行為だと言ったのは私であって、この私が一番重要なんですよ、この場合は。これ、だから、私の発言が一番立場上重いということを是非よろしく。
  102. 近藤正道

    ○近藤正道君 今御指摘の文書は私が作成したものではなくて、おっしゃるとおりでありまして、大臣が一番原則的で厳しい御意見を発しておるということを承知の上で、更に踏み込んでいただければというふうに思っています。  最後の質問でありますが、ちょっと最後にきつい発言になるかも分かりませんけれども、例の冤罪ではない発言にかかわってお尋ねをいたしたいと思っています。  大臣が今年の二月の十三日の検察長官会同の中で、例の志布志事件、これは冤罪とは言わない、こういうふうに発言をされていろいろ物議を醸しておりまして、以後、大臣志布志事件を冤罪とは呼ばないというふうなことはやめますというふうな発言をされておりました。これはまさに冤罪の中の冤罪だというふうに思っておりますので、それはそれでいいんですが。  私、今日申し上げたいのは、この同じ日の発言のその後にやっぱりちょっと看過できない部分があります。それは、冤罪と呼ぶべきではないという話をした後、居並ぶ検察官に対してこういうことをおっしゃっていますね。しかし、やはり全国の検察の皆様には極めて元気を出してやっていただかなければなりませんと、角を矯めて牛を殺すようなことがあってはなりませんので云々かんぬんと、こういうふうにおっしゃっております。  この場合の角というのは何だ、牛とは何だという議論でありまして、つまりいろいろ間違いはある、つまり時々捜査のミスはあって、冤罪を生むかもしらぬけれども、しかしこんなことにひるまないでやっぱりがんがんやれと、こういうふうに私は全体の脈絡の中で読めてしようがない。そういう意味では、志布志事件は冤罪でない、これはひどい発言であると思いますが、それに勝るとも劣らない。私は、この角を矯めて牛を殺すという発言は、これはやっぱり取り消すべきではないかというふうに思っています。  今日も取調べの小票の問題もありましたし、接見妨害国賠の話もありましたし、あるいはこの間の踏み字事件有罪判決もございました。志布志事件のでたらめ、まさにその権力犯罪性というのはますます明らかになってきている。これと氷見事件を対比させて、だからといってひるむなと、角を矯めて牛を殺すようなことがあってはならないと。これは脈絡としてはやっぱり問題ではないか。これだけやっぱり人権侵害、冤罪事件が続く、そういう中で踏みにじられた人たちの人権、あるいはもう二度と返ってこない人生に一大汚点を残した警察あるいは検察のでたらめを考えれば、私はこの発言はやっぱり取り消すべきだと、行き過ぎではないかと、こういうふうに思いますが、大臣の所見をお伺いしたいと、こういうふうに思います。
  103. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 表現の適切さがどうであるかというのはあるかと思いますが、要するに、とんでもない取調べあるいは捜査をやって、それは厳しく反省しなければならないと。  冤罪の件については、もう前にも御説明しておりますので、繰り返しになるかもしれませんが、私は、有斐閣の用語辞典にもあったものですから、要するに人違いで有罪になった場合を冤罪と呼ぶという頭があったわけですが、しかし、考えてみると、その志布志事件はひどい捜査があって、そこでまあ結果としてでっち上げに近いような形で起訴されたとするならば、そうした方々が失われた時間もおありでありましょうし、我々の冤罪が晴れた、我々は冤罪だったんだと、こういうふうに言われれば、私はこれは素直に受け止めなければならない。つまり、有斐閣の用語辞典のような形の使い方に狭めていたのではいけないんだなというふうに反省をし、結果、その志布志関係の皆様方に不愉快な思いをさせてしまったとするならば心からおわびを申し上げますということを一度、二度と発言をしてきたわけでございます。  私は、気になったのは、そういうとんでもない氷見事件とか志布志事件とかということがあって、これはもう厳しく反省しなくちゃならないけれども、そのことで検察全体が元気がなくなって、言わば人間でいえばびびるというんでしょうか、びびることによって、いろんな凶悪事件が起きてもその真相究明に何か二の足を踏むようなことがあってはならぬと、こういうつもりで申し上げたわけでございます。
  104. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 近藤正道君、質疑時間終局しております。おまとめください。
  105. 近藤正道

    ○近藤正道君 分かりました。  時間がありませんので、今の脈絡については私としてはちょっと納得し難いと。今日はこれだけ発言がありまして、結果として無罪ということではなくて、これはもうかなりの早い段階でやっぱりおかしいことは分かっていながら、なおかつ、ここはもう突き進む以外にないと、こういう形で邁進したということはそれは間違いないというふうに思っておりまして、そういうふうに考えますとこれはもう紛れもない冤罪であるし、こういう事件を例に挙げながら角を矯めて牛を殺すという表現は極めて不適切だというふうに私は思っているということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  106. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 以上をもちまして、平成二十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時八分散会