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2008-03-25 第169回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年三月二十五日(火曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  三月二十四日     辞任         補欠選任         松野 信夫君     大久保潔重君  三月二十五日     辞任         補欠選任         大久保潔重君     松野 信夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         遠山 清彦君     理 事                 千葉 景子君                 松岡  徹君                 山内 俊夫君                 木庭健太郎君     委 員                 小川 敏夫君                 今野  東君                 鈴木  寛君                 前川 清成君                 松浦 大悟君                 松野 信夫君                 青木 幹雄君                 岡田 直樹君                 丸山 和也君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    国務大臣        法務大臣     鳩山 邦夫君    副大臣        法務大臣    河井 克行君    大臣政務官        法務大臣政務官  古川 禎久君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 一夫君    政府参考人        警察庁刑事局長  米田  壯君        警察庁警備局長  池田 克彦君        法務大臣官房司        法法制部長    深山 卓也君        法務省刑事局長  大野恒太郎君        法務省矯正局長  梶木  壽君        法務省保護局長  西川 克行君        法務省人権擁護        局長       富田 善範君        法務省入国管理        局長       稲見 敏夫君        外務大臣官房審        議官       新保 雅俊君        外務大臣官房参        事官       山崎  純君        厚生労働大臣官        房審議官     森山  寛君        厚生労働省職業        能力開発局長   新島 良夫君        経済産業大臣官        房審議官     瀬戸比呂志君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件)     ─────────────
  2. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまより法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、松野信夫君が委員辞任され、その補欠として大久保潔重君が選任をされました。     ─────────────
  3. 遠山清彦

  4. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、法務行政基本方針に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 前川清成

    前川清成君 民主党の前川清成でございます。  今日は、まず大臣最初、所見の中でお述べになった犯罪のない社会の実現についてお伺いをいたしたいと思っています。  だれもが安心して暮らすことができる安全な社会をつくることは、私も政治が果たすべき最も基本的な役割一つだと思っています。くしくも、私が当選をさせていただいたのは二〇〇四年七月なんですが、その年の十一月十七日に奈良市で、富雄北小学校に通う小学一年生の女の子が性犯罪前科者によって誘拐されて殺されてしまうという大変痛ましい事件が起こってしまいました。私も子育て真っ最中なんですけれども、朝出かけていった子供たちが夕方おなかをすかして帰ってくる、時には泥んこになって帰ってくる、子の親として当たり前の幸せを守ること、これが政治役割だと私もそう信じています。  ところが、今回また大変痛ましい事件が起こってしまいました。土浦市で、殺人容疑指名手配中であった男が八人の方を傷つけ、そして一人の方がお亡くなりになってしまいました。お亡くなりになった山上高広さんの御冥福、そして、おけがをされた皆さん方の一日も早い御回復を委員皆さん方と一緒にここでお祈りをいたしたいと思うんですが。  ただ、事件現場となりましたJR荒川沖駅、ここはこの金川容疑者の自宅の最寄り駅でありますし、最初殺人事件現場にとっても最寄り駅。しかも、この容疑者は自動車の運転免許を持っていない。また加えて、早く捕まえてごらんという挑発的な一一〇番通報をした。その発信場所もこの駅の付近でございました。まさに現るべくして現れた場所で、八人の私服警官が現に待っていた。それにもかかわらず悲劇を防ぐことはできませんでした。どうしてこの悲劇を防ぐことができなかったのか、まず警察庁にお伺いをしたいと思います。
  7. 米田壯

    政府参考人米田壯君) ちょっと事案の経過と、それとそのとりました措置について御説明をさせていただきたいと思います。
  8. 前川清成

    前川清成君 事案概要は結構ですよ。
  9. 米田壯

    政府参考人米田壯君) そうですか。  この事件、そもそも三月十九日に土浦市内の男性が殺害をされたと。それで、容疑者を特定をいたしまして、その二日後に指名手配をし、そしてメディア及びホームページに掲載をして公開捜査をしているさなかに起きた事件でございます。  先ほど指摘のように、この被疑者、車を持っておりません。それから運転免許も持っていないということで、公共交通機関を利用する可能性が高いと。そして、先ほど電話発信の話がございましたけれども、確かに荒川沖駅辺りで発信されていることがあります。それからまた別の駅で発信されていることもあると。そして、後で分かったことでありますが、都内に潜伏をしておったというようなことでございまして、県警といたしましては、常磐線それからつくばエクスプレス、これらの駅、合わせて約二十の駅、そしてその列車内、ここに大量の警察官を配置をしておりまして、そして荒川沖駅には八人おったということでございます。  そういう中でこういう事件が起こったわけでございますけれども、まず一番の、これ今検証するように茨城県警に指示をしておりますけれども、この被疑者が恐らく電車を降りたと思われますが、改札口を通るところに、改札口内側警察官はおります。それから、改札口外側にも警察官はおりました。それがいずれもその被疑者と気が付かなかったということでございます。  確かに、これは後で写真を取り寄せて警察庁でも見てみましたが、一年四か月前の写真手配をしておりました、それより直近のものが手に入らなかったという事情がございまして。それから、顔つきも少し変わっておると。それから、眼鏡を掛けて丸坊主にし、それから背広、ネクタイを着用しているというようなことで、これをなぜ見逃したのかといったことも検証のポイントであろうかと思います。  そして、その改札口を出て、いったん西口の方に行きかけながら次々と人を襲って、警察官自身も襲われたと、こういうことでございます。  いずれにしても、極めてこれは重大な事件でございまして、御指摘のように、警察官八名がその改札口、あるいはその西口東口辺りにおりながらこれが防げなかったということについては、その問題点をきっちり抽出をして検証してまいりたいと考えております。
  10. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 前川先生問題意識、私も全く同感でございまして、たまたま今日、閣議の後の閣僚懇談会総理大臣発言をされまして、なぜこのような警戒態勢、かなりのことが分かっておって、八人も現地におりながらこういう事件が起きるということになるのかということを国家公安委員長に、特にその辺はきちんと調べるようにという話をされました。  そのときに、たしか総理は、私の記憶が間違いでなければ、この間の自衛隊の「あたご」の事故を思い起こさせるような部分があるんだよと。つまり、きちんとやっていれば防げたんじゃないかという、そういう問題意識総理前川先生と全く同じに持っているということを私、たまたま閣議におりましたので御報告いたします。
  11. 前川清成

    前川清成君 大臣、御丁寧にありがとうございます。  ただ、警察庁、僕の今の質問には全然答えてもらってないんですよ。事案概要説明してくれとか一言も言ってないです。防げなかったんですかという質問
  12. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 防げなかったのは、もうその結果のとおりでございます。なぜ防げなかったかという点について現在検証を進めているというところでございます。
  13. 前川清成

    前川清成君 では、注意を尽くしておれば防げたと、こういうことですか。
  14. 米田壯

    政府参考人米田壯君) この辺もなかなか様々な論点があると思います。例えば、普通、専門捜査員であればかなり、仮に変装をしておってもそれは見抜けたかもしれないという点がございます。それから、非常に見抜けにくい場合に、それは、例えば制服の警察官を立てて、そして、むしろ威嚇効果によってそういう犯罪を防ぐというやり方もあったかもしれません。そういう点を様々な角度から検証したいということでございます。
  15. 前川清成

    前川清成君 産経新聞の二十四日の朝刊によると、県警ベストを尽くしたと、こういうふうに胸を張っているらしいんですが、これは真実でしょうか。
  16. 米田壯

    政府参考人米田壯君) そのような発言があったということは事実でございます。  はっきり申し上げて、そのようにベストを尽くしたと軽々に言うべきではないと私どもは考えております。
  17. 前川清成

    前川清成君 ベストを尽くしたと発言したのはどなたなんですか。
  18. 米田壯

    政府参考人米田壯君) ちょっとお待ちください。これは、済みません、茨城県警刑事部長でございます。
  19. 前川清成

    前川清成君 茨城県警刑事部長と言われてもどなたか分からないんですけれども。
  20. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 申し訳ありません。名前は、ちょっと今、手元で持っておりません。
  21. 前川清成

    前川清成君 これは通告していなかった質問でしょうか。
  22. 米田壯

    政府参考人米田壯君) いや、若干お時間いただければすぐ、すぐ分かる話でございます。  それから、そういうベストを尽くしたという発言があったが事実かという質問の通告ももちろん受けております。ちょっと個人名について、今ちょっと手元にございませんので、そのように申し上げたわけでございます。
  23. 前川清成

    前川清成君 じゃ、委員長、今のはロスタイムでカウントしていただくようにお願いします。  それじゃ、改札口に二人の警察官がいたにもかかわらずそのわきを通り抜けてしまった、これはどこに原因があったんでしょうか。
  24. 米田壯

    政府参考人米田壯君) まさにその点をよく詰めて検証しなければならないと考えております。写真とはある程度異なった姿形でありますが、しかし、こちらはプロの警察官でありますから、なぜ見逃したかということをよく検証したいと思っております。
  25. 前川清成

    前川清成君 改札口付近に、内と外に二人の警察官がいらっしゃって、そのすぐ近くで一人の警察官、イッシキさんとお読みするんですかね、この方がおけがをされています。一色さんがけがをされたときに、なおまた七人のほかに警察官がいらっしゃるわけですけど、この残りの七人の警察官はどのように対応されたんでしょうか。
  26. 米田壯

    政府参考人米田壯君) まず、改札口の二人のうちの外側の一人が一色さんでございます。一色さんは襲われて、すぐ改札口内側にいる警察官に声を掛けたと。内側にいる警察官がその容疑者を追いかけていったということでございます。  そこで、問題は、残り東口周辺、それから西口周辺に配置しておった警察官が、これがそれをどのように知らせを受けて、そして措置をとったかという点について、その連絡態勢等も含めて検証していきたいと考えております。
  27. 前川清成

    前川清成君 報道によると、一色さんは通路にいらっしゃって、改札の二人の方以外だというふうな報道もあるんです。また、もしそれが真実でないんだったら、きっちりと訂正をお願いしたいと思います。  それで、お亡くなりになった山上さんですけれども、この方は八人目の被害者でいらっしゃいます。写真等で見る限り、最初被害者の方から移動距離にして数百メートル移動して、で、山上さんにたどり着いたのではないかと思われます。時間、これは朝日新聞によりますと、五分近くあったというふうに報道されています。  数百メートル移動して、時間的に五分あって、けがをされた一色さん以外に七人警察官がいらっしゃった。それでもこの山上さんの被害を防げなかったのはどうしてなんですか。
  28. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 先ほども申し上げましたように、その点がまさに問題になる点でございまして、まず時間的な余裕がどれぐらいあったかという点は、これはかなり詰めてみないとよく分かりません。全力疾走被疑者が走っていたという話もありますんで、その辺はよく詰めたいと思います。  それから、それぞれある程度外周に、七人といいますか、西口東口に配置してある警察官、これに対する連絡、それから連携の態勢がどうなっているかというようなこともよく検証してまいりたいと考えております。
  29. 前川清成

    前川清成君 事件直後ですので、まあそれはやむを得ないかと思いますが。  じゃ、あと、土浦周辺の住民の皆さんに対する広報、この点は十分だったというふうにお考えでしょうか。
  30. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 御質問にお答えする前に、先ほどお尋ねありました茨城県警刑事部長の氏名でございますが、石井孝でございます。  それから、広報の問題でございますが、この被疑者に対しましては、公開手配ということで三月二十一日にメディア、それから県警ホームページで公表しております。ただ、例えばビラを配るとか立て看板を立てるとか、あるいは地域の自治会に働きかけるとかといったようなところまではやっておりません。その辺が果たして適当であったかどうかという点についてもよく検討してまいりたいと思っております。
  31. 前川清成

    前川清成君 奈良市ではあの富雄北小学校事件が起こりまして、警察に登録をしておきますと、例えば不審者情報等々が携帯電話にリアルタイムでメールで発信されるようになっているんです。ですから、お母さん方は、不審者情報が入ったら、例えば可能だったら子供を迎えに行ってやるとか、そういう自衛の策が取れるようになっています。是非その辺も、一つ警察試み程度ではなくて、全国的にこういう被害を二度と繰り返さないというような視点で御検討いただけたらと、そんなふうに思っています。  この事件は、面識もない三浦さんという方が殺されてしまっている、しかも挑発的な一一〇番通報も入っている。ですから、この付近に潜伏している可能性と第二、第三の犯行が起こる可能性というのはとても大きかったと思います。その点で何らかの工夫があればよかったかなと、こんなふうに思っています。  先ほど石井さんどうこうとありましたけど、石井さんに対してここの場所であげへつらうつもりは全くありませんが、ただ国民やあるいは茨城県民皆さん方の負託を受けた警察官としてベストを尽くしたというふうに胸を張ることは私はできないのではないか。やはり安心と安全を守る警察官としてあるいは警察組織として、真摯に理性的に、この悲劇を二度と繰り返さないというような視点是非検討をお願いしたいと、そんなふうに思っています。また、この問題はいつか改めてお尋ねしたいと思います。  それで、この金川容疑者のことと関連して、大臣処遇困難者の問題についてお伺いをしたいと思います。  私たちが、平成十七年に刑事施設法審議に当たりまして、この法務委員会府中刑務所を視察してまいりました。その際に、処遇困難者といって、ほかの方と、ほかの受刑者と全く、あるいは刑務官ともコミュニケーションさえ取ることができない、したがって一日中刑務所の中の個室に閉じ込めておくしか仕方がない、そんな受刑者の方がいらっしゃることを現に見てまいりました。その人数が平成十八年の一月時点で、全国の刑務所に合わせて九百八十六名います。この九百八十六名、刑期が満了したらやっぱり刑務所の外に出すしかない。  例えば、この金川容疑者も、殺したいと思って人を殺した、あるいは処遇困難者もそうですけれども、おなかがすいたから物を取るとか、恨みつらみの果てで人を殺すというのは、規範意識があって、それを乗り越えての犯罪ですけれども、処遇困難者であるとか一種の精神異常を来しているような人たちにとってはその規範障害さえないわけですから、こんな人たちからどうやって社会を守っていくのか、これは大変真剣に考えなければならない問題ではないかと、そんなふうに思っています。  以前、この処遇困難者についてお尋ねをしましたところ、平成十八年当時、三ッ林大臣政務官を中心に法務省内で御検討が進んでいるというふうな御答弁をいただきました。ついては、その後二年もたっておりますので、作業がどのようになったのか、この機会にお尋ねしたいと思います。
  32. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 三ッ林さんから今日までのいきさつというのは、残念ながら私、詳しくは聞いておりませんが、保護観察実施上の処遇困難者としては、例えば殺人のような超凶悪重大犯罪を犯した人が満期出所、場合によっては仮釈放もあるかもしれませんが、当然、処遇困難者というか特別の配慮が必要だと、こういう扱いになるでしょう。それから、暴力的な犯罪を反復して犯す人たち、とりわけ覚せい剤依存あるいは問題飲酒等のそういう問題性を有する者、あるいは性犯罪を犯す傾向が強い者などが言わば処遇上特に配慮が必要だと、こういうことになってくるだろうというふうに思っております。  ただ、これはもう前川先生御承知のように、満期出所をした人は五割以上また犯罪を犯しますね。仮釈放というのは、若干、成績優秀というか状況がいいと思って短めにして仮釈放で出てこられた方も、やっぱり再犯率、また再び犯罪を犯す率が四割近くあると。そう考えますと、ある意味では保護観察の場合はもうすべてが処遇困難者というぐらいの気持ちで当たらないと本当の治安のいい国はできないんじゃないかなという、そういう問題意識は持っております。
  33. 前川清成

    前川清成君 平成十八年の三月三十日のこの法務委員会で、もちろん私も、自由との、要するに満期で出所して本来はそれで自由を得るわけですから、そんな人たちに対して更に保安処分的なものを課すことが非常に危険だということも認識しておるんですが、十八年三月三十日のこの委員会において杉浦正健法務大臣が保安処分的なことも含めて新しい立法を検討していると、こういうふうにおっしゃっておられましたので、今御確認をさせていただきました。  続いて、今大臣がおっしゃった満期出所の場合あるいは保護観察の場合等について、先日判決がありました氏家容疑者のことについてお尋ねをしたいと思います。二〇〇五年の二月四日にイトーヨーカドーの安城店で、生後十一か月の男の子の頭に包丁を突き刺して殺してしまうという大変痛ましいこれも事件が起こってしまいました。この容疑者は一月二十七日に刑務所を仮出所して、ですから八日後の事件でございます。  この事件について、法務省としてはその後どのように総括をなさったのか、お伺いをしたいと思います。
  34. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 氏家事件というのはぞっとするような話でございまして、先ほど仮釈放の話をいたしましたが、仮釈放にしたということは、多少は行状がいいというのか反省の色があるという判断があったんだろうと。それが、釈放後八日か九日目でしょうか、凶行に及ぶというわけでございまして、これは地方更生保護委員会判断をしているわけで、この被告人行状等から非常に危険であるという兆候を全く見出すことができなかったというのは、残念なことというか大変な大きなミスであって、これからはそういう見落としがないようにとにかくしっかりやらなければいけないということだろうと思っております。  この事件検証したときに、地方更生保護委員会において、必要に応じて精神科医協力を得られるようにするなど、仮釈放の審理の充実、これから努めていこうというふうにいたしております。  また、この教訓としては、氏家という男は、もちろん保護観察中であったわけですが、あっという間にこれ行方不明になったんですね。所在が不明になってそして凶行に及んだということでありますから、やはり仮釈放をした場合、あるいは仮釈放以外、保護観察はすべてそうかもしれませんが、所在をきちんと把握できるように頑張らなくちゃいけないし、所在不明になったらすぐ警察協力を求めるというような形に今してきております。  もちろん、就労支援とかそういうふうなこともいろいろやらなければなりませんが、そういう危険が常にあるということを考えれば、それは疑ってばかりいてはいけませんけれども、満期出所でも仮釈放でもやはり再犯の率高いですから、残念ながら高いですから、したがって、やはり所在をきちんとつかんでおくということで、それを保護司に全部お任せするというんではなくて、直接、保護観察所の方で直接処遇をするというぐらいの気持ちで努力していくべきだと思います。
  35. 前川清成

    前川清成君 私は、これは先ほども申し上げましたが、弁解をしましたけれども、人権との関係大変緊張関係をはらむことを承知した上で、処遇困難者の問題でありますとか、あるいは氏家容疑者のことをお尋ねしています。  名古屋地裁の二月十八日の判決は、統合失調症にあったと、氏家容疑者が当時ですね。ですから、心神耗弱を認めて刑を減軽しています。  その統合失調症にあった氏家容疑者をどうしてその地方更生保護委員会は見抜けなかったのか。刑法の二十八条が言うところの改悛の状があると、すなわち再犯のおそれがないということで仮釈放してしまったのかと、その点のところを、心構えをお尋ねしているのではなくて、システム的に何か間違いがなかったのかどうか、ここを是非大臣にお答えいただきたいと思っているんです。
  36. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) システム的に間違いがあったかどうかということについては、まだ私、自信を持った答弁はできませんけれども、先ほど申し上げましたように、地方更生保護委員会が、再犯に及ぶと、しかも九日後に人殺しをするような凶行に及ぶなどということは全く予想できなかった、被告人生活歴犯罪歴、平素の行状等から凶行に及ぶ兆候について把握できないまま仮釈放を許可したという、私報告を受けているわけなんですね。  じゃ、先生おっしゃるとおり、なぜその兆候を見落としたのかというと、ちょっと私が報告を受けている内容は、要するに、今までの犯罪歴が比較的軽微なものであって凶悪な犯罪でなかったから大丈夫だろうという推定が働いているわけですね。何かシステム的にどうだと、こういうふうに御質問がありますと何とお答えしたらいいか分からないんですが、何か、犯した今までの罪が大したことないから再犯のときも大したことしないだろうというのは、余りにちょっとスーパーフィシャルというんですか、皮相的な物の見方だったんだなという反省はしなくてはならないでしょう。  それから、今先生御指摘のあったように、やっぱり仮釈放の審理をするわけですから、やはりその対象になる、仮釈放にするかどうかという対象になる人の精神状況のようなものは専門的な見地から検討すべきだったんではないかなと。それをきちんとやっておれば防げたという、そういう因果関係はあろうかと思います。
  37. 前川清成

    前川清成君 平成十七年の十二月二十六日に更生保護のあり方を考える有識者会議が中間報告を出しています。この中の資料で、地方更生保護委員会委員、これが全国で五十三名いらっしゃいました、当時です。この氏家事件の当時は五十三名でした。この五十三人が一年間に、平成十六年度の仮出獄申請受理人数が一万八千六百六十五人、委員一人当たり三百五十二件を担当するわけですけれども、地方更生保護委員会は三人の合議制になります。すると、一人の委員が年間千五十六人の仮釈放判断しなければならないというシステムになっています。  これは、今大臣がおっしゃっていただいたように、精神的なものも含めて慎重に検討するとしても、もはや物理的に不可能ではないかなと、私はそう思います。現にこの中間報告の中でも、この仮釈放の審査については、詳細な理由も示されていないし、勘と経験に依拠して判断が行われていると、こんなふうな記述があります。  その後、この氏家事件を受けてかどうか私は分かりませんが、法律が改正されまして、五十三名の地方更生保護委員委員数が五十三名から五十六名に増えました。これがまたちょっと法務省的だなと私は思います。五十六名になると、委員一人当たりが三百三十三件、三人の合議制ですからちょうど千件になります。一年間で千五十六件が一年間に千件になって、本当に勘と経験だけの判断から脱却できたのかどうかと。今大臣がおっしゃったような精神的な面も含めて、私たちの安心、安全に対する妨げとならないようなきっちりとした審査が行われるのかどうかと、私は大変疑問だと思っています。  ですから、この地方更生保護委員会の在り方ももう一度考え直してみる必要があると私は考えますが、大臣、いかがでしょうか。
  38. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 先生からそういう数字、具体的に挙げられますと、それはこの人が仮釈放になって大丈夫かというのを、まあ一日一人と言ってもいいし、一日三人と言うんでしょうか、ぐらい判断するなどということは、それは極めて困難であるということがよく分かるわけですね。  ですから、氏家事件の反省に立って、例えば受刑者や少年院に入っている人たちについての精神科医に特にきちんと診てもらって所見を求める、あるいは精神科医に直接会ってもらうとか、そういうような改善は行われるようになったわけですが、要するに、問題はおびただしい数にどう対応するかということであり、それは人権を守る立場にもある私も軽々には言えませんけれども、これは再犯を防ぐことが治安のいい国家をつくる最大のかぎ、この再犯の率が異常に高いということを考えれば、人を見たら泥棒と思えと言ってはいけないんだけれども、でも再犯の確率がここまで高いんだから、したがってそれを、そのことを考えて仮釈放のことも真剣に慎重に考えなくちゃいけないし、満期釈放も、これは保護観察は付かないけれども、満期釈放の方がよりまた再犯率が高いわけですから、これは治安ということを考えた場合は根本問題ですから、先生方のお知恵も拝借をしていろいろ考えていきたいと思います。
  39. 前川清成

    前川清成君 今大臣がおっしゃったおびただしい数にどのように対処するかというのが私も大変重要な問題ではないかと思っています。そういうふうなコンテクストでお聞きしたいんですが、この御所見の中で、再犯の防止のために保護観察の充実強化に努めてまいりますと、こういうふうにお述べいただいております。この保護観察の充実強化に努めるというのが具体的にはどのような政策を指すのか、お尋ねをいたします。
  40. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) ですから、先ほどから前川先生とやり取りをしておりますように、それは所信表明でございますので、当然のことながら保護観察の充実強化ということを私はうたい上げるわけでありますが、言うはやすく行うは大変に労力も知恵も、場合によってはお金も要ることだということは御理解をいただきたいというふうに思います。ですから、保護司の方々にもそれはいろんなお願いをしているわけでございますし、保護観察官についても、その使命と能力を高めるようにこれは懸命に指導していかなくちゃならぬというふうに思っております。  とりわけ、処遇困難者というんでしょうか、前川先生指摘の特別に配慮をするべき人間に対しては保護観察官自らが当たるというようなことも考えなければいけませんし、性犯罪等、特定の犯罪傾向が強い場合には専門処遇プログラムを作って対象者に受けさせる、あるいは特別遵守義務を義務付けるというようなこと、そんなことをいろいろ考えております。  また、とりわけ就労の支援、これは就労している場合、つまり仕事に就ける場合と就けてない場合は満期出所であれ仮釈放であれ犯罪を犯す率がうんと変わってまいりますから、当然就労の支援ということでは中小企業の団体等にもいろいろお願いをしなければならないということで、甘利経産大臣にも既にお話はしておるわけでございます。また、保護観察中に先ほど申し上げたように所在不明になったら、とにかくこれを警察にも話をして所在を明らかにするように努力すると。  いろいろ並べ立てることはできるんですが、実際にその努力によって犯罪の数を減らすと。保護観察の充実強化によって犯罪の数を減らす、再犯率を減らす、凶悪犯罪を減らすと。非常に困難な道でございますので、更に施策を充実させていかなければいかぬだろうと思います。場合によっては予算も必要だろうと思います。
  41. 前川清成

    前川清成君 保護観察は、言うまでもありませんが、保護司さんというボランティアと保護観察官という専門職とによって担われています。この保護観察官が全国で実働がわずか六百三十人しかいません。これは平成十八年の三月三十日、この法務委員会における谷川秀善委員質問に対する麻生保護局長答弁でございます。実数、実働は六百三十人というふうにお答えになっています。  この六百三十人でどれだけの仕事をされるかといいますと、先ほどの中間報告ですが、まず、仮出獄の受理件数が先ほど申し上げました一万八千六百六十五人、保護観察事件が六万八千百九十四人、環境調整事件が五万二千九百二十七人、合計いたしますと十三万九千七百八十六人になります。一人の保護観察官が年間に二百二十一・八件の事件を担うことになっています。  大臣から今いろいろ心構えとか工夫とかそんなお話は出たんですが、私は、一人の保護観察官が二百二十一・八件の事件を担っていると、もうそれは現場の努力もあるいは工夫もこれはもう限界ではないか。大臣が本当に再犯防止のために保護観察の充実強化と、こうおっしゃるのであれば、この保護観察を一体どうするおつもりなのか。ですから、私は先ほど、政策の中身をお尋ねしたいと、こういうふうに申し上げました。六百三十人で十三万九千七百八十六件、担うことが可能なんでしょうか。
  42. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 可能ではないと思いますね、正直言って。  ですから、保護観察の充実強化と言葉で言うのは簡単ですが、また今行政改革あるいは財政健全化の時代ではありますが、治安あるいは安全ということを最優先で考えるならば、それこそ保護観察官が十倍いてもいいような事態だというふうに考えますので、これはこうした点も先生のお知恵も拝借して根本から考え直しをしていかないと再犯率が全く減らないだろうと正直思いますので、よく考えさせていただきたいと思います。
  43. 前川清成

    前川清成君 時間の都合もあります。もう少しこの安全な社会について大臣といろいろお話をさせていただきたいんですが、最後に一点、性犯罪処遇プログラムというのが始まりました。二〇〇四年の十一月に富雄北小学校事件が起こりまして、私たち民主党の衆参の法務委員会に所属する国会議員が手分けをして、全国に七十四か所でしたっけ、七十四か所ある刑務所を、六十四か所でしたっけ、手分けをしてそれぞれ塀の中まで行ってまいりました。その結果、専門家でさえ、繰り返すことが多い、そう指摘している性犯罪者に対して、何らかの意味の反省会程度でも教育を実施しているのはわずか十三の刑務所しかありませんでした。残りの大半の刑務所は、ただ裁判所が定めた期間、塀の中に閉じ込めておいて、一日八時間の強制労働を課す、刑期が満了したならば、その矯正できたかできてないかはともかくまた私たちが暮らす社会に戻してしまう。これが性犯罪処遇プログラムが実施されるまでの日本の刑事司法の現状だったように思います。  この処遇プログラムが実施されました。大変専門的で、私も説明を受けましたけれども、十分腹に落ちる点も落ちない点もあります。この点も大変私は大事ではないかと思っておりますので、今日は具体的な内容についてはお尋ねはいたしませんけれども、是非この点も大臣の方でお力添えをいただければと思います。  時間の都合でありますので、ちょっと司法改革について一、二点だけお尋ねをしてみたいと思います。  司法試験の合格者数を検討する組織を立ち上げたと、こういうふうに所見の中でもお読みになられました。これまでに二回、大臣も交えて、副大臣、政務官も交えて勉強会をされた。その中で、質の高い法曹を年間何人程度なら確保できるというふうに説明を受けられたんでしょうか。
  44. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) この問題は副大臣が大変熱心で、いろんな法科大学院の視察等とか、あるいは司法試験の考査委員の方からのヒアリングとかいろいろやっていただいているわけで、我々の勉強会、これはもちろん公式の勉強会というよりは私的な勉強会かもしれませんが、できれば一定の結論を出したいと思っておりますが、人数を今想定して申し上げているわけではありません。  ただ、三千人に平成二十二年に持っていくということは閣議決定なので、私もそこまでは認めなくちゃならないだろうとは思っておりますが、今日の閣議の決定によりまして、前倒しすることはしない、あるいはその後増やすという検討もしないということは今日の閣議決定の中身なんで、毎年三千人、三千人、三千人とずっと続いていくことは基本的には多過ぎるのではないかという観点で、質の確保を図っていきたいと思っております。
  45. 前川清成

    前川清成君 昨日、法務省の司法法制部からいただいた資料によりますと、三月七日の勉強会において質の高い法曹を今後どの程度確保することができるのかについて勉強を行ったというふうな資料が届いているんですが、具体的に何人だったら可能だとか、千五百人にしたから二回試験の成績がどうなったとか、あるいは合格者が増えて司法試験の合格水準点がどうなったとか、そのような報告大臣の下にはなかったんでしょうか。
  46. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) まだ結論を急ぐような段階ではなくて、まだまだいろんな調査報告を受けているような状況、あるいは今申し上げましたように副大臣自らが調査に歩かれている、そういう報告を受けている段階でございまして、ただ二回試験に合格できない人の割合が増えていますよね。異常に増えたと言ってもいいかもしれません。  これが一時的な現象であるかどうか、それはまだ分からないと思いますが、しかし三千という枠を広げればそれは昔の五百人に比べれば、三千という枠を広げればそれは昔の五百人のような高い質を求めるのは、それは門が広ければそれだけどだい無理な話で、そういった意味では、三千人に広げていこうというプロセスの中で二回試験の不合格者が増えてくるというのはある意味では理の当然なのかもしれない。そういうふうに思っておりますが、まだ具体的な数、どれくらいなら大丈夫だろうというような、そういう議論はいたしておりません、それは法曹の需要の問題とも絡んでまいりますから。
  47. 前川清成

    前川清成君 それでしたらもう構いませんが、ちょっとこのメモが正確でないように思いますので、また大臣の方から御指導をいただければと思います。  それで、そのメモと同時にいただいた平成十八年度新司法試験考査委員に対するヒアリングという文書の中で考査委員が試験の採点をした感想を述べておられます。この中で、四百二十通を採点した憲法の考査委員が、核心的問題をきっちりと論じている答案が一通もなかったと、こういうふうに書いておられるんです。  ちょっと、この考査委員がだれなのか、名前が出ていないんですが、これは、平均的な、共通的な認識なのか、特に厳しい人がこう言っているのか、まああのカンニングの植村教授ではないとは思うんですけれども、ちょっと、どういう立場の方がおっしゃっているのかをお尋ねしたいと思うんです。
  48. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 実は私、細かいことを知っているわけではありませんが、今前川先生がおっしゃるような話が報告としてありました。つまり、憲法の論文問題で問うている最も核心的な問題をきちんととらえている、要するに本質をとらえている答案が一つもないという話を聞いて私はびっくりしまして、これは一つもないというのは、何か、問題がどういう問題だったかも分かりませんし、本質をとらえている数が大幅に減ったというんだったら分かるんですけど、一つもないなどという話も聞かされました。  それから、同時に、何というんでしょうか、珍答案みたいな、こんなことも理解しないで、こんなことまで理解しないで二回試験まで、まあ年限が来ちゃったという人もいるんですよというような話も幾つか例を聞きました。
  49. 前川清成

    前川清成君 時間がなくなったのでこれで終わらせていただきますけれども、司法試験の問題に関しては、委員長、植村教授の参考人招致をお願いしていますので、これも引き続きこの委員会で御検討是非是非お願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  50. 松岡徹

    ○松岡徹君 民主党の松岡でございます。  前川先生の二番手で質問させていただきたいと思います。前川先生のように理路整然と質問になるかどうか分かりませんが、鳩山大臣の所信表明に対する幾つか質問をさせていただきたいと思います。  日ごろ鳩山大臣は率直に自らの意見を述べていただいておりまして、ところどころその発言が物議を醸すといいますか、がありますが、私は逆に言えば、鳩山大臣の人間性といいますか、個性が非常に見えて私自身は非常に好感に感じているところであります。  ただ、言葉が足らなかったりとか、説明が不足しているとかいうので誤解を招いたり、あるいは間違った表現になっていくというようなこともあるんではないかと思っておりまして、そういうところで、例えば大臣所信のところで幾つか御質問をさせていただきたいと思います。  まず、大臣の所信演説のところで、入国といいますか、入国審査にかかわるところでございます。  それで、その前に国際テロの関係でございました。国際テロにつきましては、過去にアルカイダ関係者が我が国への不法入国を繰り返していたことがというようなことを大臣おっしゃっていました。  そこで、アルカイダとアルカイダ関係者というのがあります。このアルカイダ関係者というのは、どのような定義といいますか、お考えでしょうか、まずお聞かせいただきたい。
  51. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 正直申し上げて、アルカイダという組織の全容が明らかになっているわけではないでしょうから、すべてはアルカイダ関係者という言い方しかできないのかもしれませんが、私が所信で述べておりますのは、フランス国籍のリオネル・デュモンという人でございまして、この者は一九九九年六月以降六回にわたり我が国への出入国を繰り返していた。たしか私が公安から報告受けたときに、群馬県、新潟県に数多く行っておると。少なくとも最低六回は入国しておって、一年四か月、トータルでは滞在をしているということですね。  これは、デュモンというのは、国連安保理制裁委員会でアルカイダ関係者として指定されているというんですが、結局これが捕まって初めて分かるわけですから。捕まって初めて、持っていたパスポートのようなものが、何種類か持っておって、ああ、これだったらこのパスポートで、デュモンという名前じゃないんだと思いますが、日本に入ってきておったよというんで、調べたら六回いたということが分かったと。非常に怖い事件だと思いますし。  私は日本は安全な国だと思いたいけれども、やはりテロリストにねらわれるおそれは正直言ってゼロではないし、そういうテロリストというのかイスラム過激派が、そんな彼らのアジトになり得るような場所が何か所かあるということも公安では把握しているようでございます。
  52. 松岡徹

    ○松岡徹君 私も事前に聞きましたら、タリバンとかアルカイダという関係者についての定義はどうしているんだと。まさに捕まって初めて分かるというのはありますが、例えば国連安保理決議の一二六七とかあるいは一三三三及び一三九〇で、タリバンあるいはアルカイダ関係者というふうに規定している国連の安保理決議があります。  それによりますと、このリストで載っている、タリバン、アルカイダの関係者としての制裁リストとして載っているのが大体合計五百三、個人、団体、そのうちアルカイダ関係者、個人は二百二十八人というふうに聞いているんです。これはまあ日々変わってくるというふうに、人数はね、思いますが。  そこで、前の大臣発言でなんですが、大臣は、私の友人の友人はアルカイダというふうにおっしゃいました。友人の友人はここで言うアルカイダというふうに規定、定義されるわけでしょうか。
  53. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) あの私の発言は舌足らずな部分があったんですが、実は、物事の本質を世の中が完全に取り違えて報道するものですから、私は、参議院の法務委員会委員長以下の先生方には、松岡先生にも、正しく御理解をいただきたいと思うのでございます。  アルカイダであるかどうかというのは、アルカイダ関係、つまり、ジェマー・イスラミアとアルカイダが非常に一体裏に行動しておった時代、時期ではないかと。なぜなら、ジェマーなのかもしれませんし、又は別の組織かもしれない。  ただ、アントンという大変有名なチョウの標本商がいた。私はもちろん今日まで会ったことがありませんが、そのアンボン島にアントンという人がいて、日本や、あるいは欧米も相手にしたでしょうか、とりわけ、パプアニューギニア、ニューギニア島の昆虫を売りさばいておった。ところが、アンボン島ではイスラム教徒とクリスチャンが非常に激しい抗争を行って、共に数千人の死者が出たという説さえある。自分の身内をクリスチャンに殺されてしまう中から、アントンという男はどんどんどんどんイスラム過激派、原理主義の方に走っていったということは、いろんな虫の世界のニュースで私はもう数年前から、というか、今から見ればもう十年以上前からそういう話は聞いておったと。  で、その男が要するに行方不明になる。いよいよ、昆虫の標本の売買よりも、対米攻撃というんでしょうか、そういう形で行方不明になってしまう。しかし、あの九・一一の翌年だと思いますが、バリ島の中心部をいつかやるから近づかないでくれということを何人かの人たちに話している。まさに私の友人なんですね、友人たちに話をしている。だから、ある意味でいえば友人の友人という言い方は何の間違いもない。ただ、アントンというのと私を置くと、その間にいる人たちは五十人ぐらいが両方を知っていますから、友人の友人の最初の友人というのは五十人ぐらいいるのかもしれません。  問題は、私、これを理解してほしいんですよ、あと、やめますから。問題は、私はバリ島でそのことを知って、日本に帰ってきて、防衛省なんかもう幹部に何度も言いましたよ、こういうことがあったんだから調べろと。ある議連で行ったから外務省も知っている、警察も知っている。マスコミにも、親しいマスコミの人たちに、あなたたち、外信使ってでもいろいろ調べてくれと随分頼んだ。だれも何の反応もしなかった。私、そこが平和ぼけという恐ろしさではないかと。それを、鳩山は友人の友人にアルカイダ関係者がいたと言ったということばっかり騒ぎますが、その私の情報は全く無視して、私が調べろと言ったのに全く調べようとしなかった防衛省あるいは警察、外務省、一体何やっているんだと。私は今でも怒りを禁じ得ません。
  54. 松岡徹

    ○松岡徹君 私は、アルカイダ関係者と言ったとき、アルカイダというのは国連の安保理決議等々である程度把握はできるんですが、関係者というのは非常に幅広い定義なんですね、分かりにくい。今大臣がおっしゃったように、かつてはチョウの収集家だったのが変わっていく、どんなきっかけでというのは分かりませんから。友人の友人がアルカイダという関係者ということになれば、その友人はアルカイダ関係者になるのではないかという、すなわち鳩山大臣の友人はアルカイダ関係者というふうに疑われてしまうということもあり得るわけですね。ですから、非常に定義があいまいでありますけれども、逆に言えばそれほど変わりやすいといいますか、把握しにくいという状況でございます。是非とも、この関係者を定義をするときには慎重な定義を是非ともお願いを申し上げておきたいというふうに思っております。  それと、もう一つは、大臣が所信の中で述べました入国管理行政のところでありました。昨年の十一月の二十日から我が国は個人識別情報の提供による入国審査が実施されてまいりました。そのときに、大臣もこの入国審査により我が国へのテロリストの入国阻止はもちろん、すなわち水際阻止ですね、入国を阻止をするということであります。  これも私はよく分からないんですが、だれがテロリストなのかというのは分からないのに、指紋と顔写真の入国審査で水際で阻止することができるのかどうか。すなわち、事前にこの人はテロリストだということが分かっておれば、そんなもの、指紋とか顔写真というよりも、変装したりとか偽造というのは当然あり得ることかもしれませんが、このテロリストをどういうふうに阻止できるのか、事前の情報というものを持っているのかどうか。  すなわち、まず最初に聞きたいのはテロリストの定義といいますか、だれをテロリストとして我が国は判断しておられるのか、大臣、お聞かせいただきたい。
  55. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) さっきちょっと興奮して言い忘れてしまったのは、そのアントンが、今まさに今の先生のお話だと、アントンが日本に入ってきて、うろついておって、人によっては二回か三回入ってきたというんですね。私、そのことを伝えてもだれも何にも動かなかったということなんですよ。  つまり、今先生がおっしゃったことで、結局アントンで入国しているかというと、ないわけですよ。だから、まさにこれが偽変造旅券ですね。また、偽変造旅券ならまだしも、正当な旅券で真正のテロリストであっても初めて入ってきて、アメリカもヨーロッパもチェックしたかというのは、これは分からないわけですね、一回目は。一回目に何かいろいろあれば二回目からはということなんで、そういった意味では本当にきちんとやらないといけないし、この間、シーファー大使としばらくお話をしたときに、少なくとも、もうじきアメリカは十本指になるんだと思います。もうしたのかな。アメリカは十本指か、日本はまだ二本指と顔写真で個人識別情報を取っているわけですけれども、ありとあらゆる、ブラックリストみたいなものですね、情報をくださいと、そうしないと、よっぽどこちらの方でもその情報をストックしておかないと、正当な旅券で本名で入ってきてもチェックできないということが起きますよということでございます。  ですが、日本がそういう厳しい個人識別情報を使うようになったということで、これを内外に宣伝することによって抑制効果はあるだろうと、こういうふうに考えておりますが、結局テロリストは偽変造旅券を使う場合が多いわけですよね。友人の友人というのも、何回も入ってきたのは全部偽変造旅券のはずですよ。だから、そういう意味で、偽変造旅券を見付ける、何というんですか、能力のある機械を使い始めたということが意外と大きな効果を発揮するのではないかと、こう思います。
  56. 松岡徹

    ○松岡徹君 いろんなパターンがあると思いますが、テロリストというのはだれのことを言うのか。最初、今鳩山大臣もおっしゃっていました、全く情報がないのに正規のパスポート、正規のビザで来れば、それがテロリストかどうかも分からない。そうすると、この最大の問題は、そういう基礎情報がないんですね、基礎データというものが。すなわち、テロリストはだれなのかということの区別といいますか、そういうのができていないんですね。そういうような情報は日本は持っているのか、持っていないのか。これはテロリストの定義にかかわるわけですが、日本の場合の例えばテロリストというのはどういう根拠で決められているわけですか。
  57. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 先生は本質をついた質問をされているわけですよ。それは、我々がテロリストというふうに考えている一定の概念はありますけれども、しかし、国際的な対立とか紛争があれば、お互いをテロリストと呼び合うということだってそれはあり得ることだろうと思うわけです。  一般的に言えば、公衆や政府等を脅迫する目的を持って行われる殺傷行為、ハイジャック等の行為及びそのための準備行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者及び国連決議等により指定されたテロリストを指すというふうにお答えをするしかないわけですね。  ですが、何をテロリストと言うかというと、今みたいなことしか言えませんが、実際にいろんな種類の方々が場合によってはテロリスト的な危険人物として存在をしているということは十二分に考えられるわけです。
  58. 松岡徹

    ○松岡徹君 大変答えにくい質問を申し上げまして申し訳ないんですが、やっぱりテロリストの入国阻止と言う以上は、テロリストとは何なのか、どういう者たちをテロリストとして定義付けるのか、これはしっかりとしたものを持つべきだというふうに私は思います。入国審査のときに我が国が去年実施した指紋と顔写真というものは、反面、テロリストの者たちからすれば、日本に入る場合はこういう審査をやっているから日本は入りにくいといって日本に入ってこないテロリストを増やすという効果があったんではないかというふうに言われていますけれども、そんな効果の測定なんかできないですよね。  ただ、はっきりしているのは、この審査で気持ちよく日本観光、日本でのビジネスで来られる多くの海外の人たちが非常に不愉快な思いをして、しかも、その情報が七十年近くも保管されるということについて非常に不愉快な思いをして帰っているという、この逆効果もあるということは、大臣、しっかりと胸にしまっておく必要があると思うんですね。ですから、私は、テロリストの定義というものをやっぱりきちっと把握をしていくということが大事だと思っておりますので、その辺は今後の課題として是非とも追求をしていただきたいというふうに思っています。  次に、時間の関係で移らせていただきますが、人権擁護行政についてお伺いをいたしたいというふうに思っています。  これも基本的な議論になろうかと思いますが、法務省が進めている人権擁護行政、そして今も問題になっていますが、人権擁護法、仮称でありますが、の制定の問題について大臣の所見をお伺いしたいというふうに思っています。  所信でも、あるいは大臣就任のときにも、鳩山大臣は、こういった法律が我が国にないというのは非常に情けないというお気持ちを聞かせていただきました。私も全く同感だと思っています。どのような法律がふさわしいのかというのはしっかりと議論をする必要があると思いますが、そういう意味で、改めてお聞かせいただきたいと思いますが、そもそも人権擁護行政というものはどういうものなのかという考え方について大臣の所見をお伺いいたしたいというふうに思います。
  59. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 人権が尊重され、人権侵害が生じない社会を築く必要があると、このことは国の最重要課題の一つであると考えております。  しかし、現実には、同和問題を始めとする差別、あるいは児童、高齢者に対する虐待、学校におけるいじめ、あるいは身障者に対する人権侵害もあろうかと思いまして、様々な形態の人権侵害が実際に存在をしているわけでございまして、そうした方々を救う、そしてまた人権啓発に関する施策の推進に引き続き努めていく、とりわけ人権侵犯事件調査、救済活動をより一層強化していきたいと、こういう思いで人権擁護行政をやっているわけでございますが、それはいろんな、ドメスティック・バイオレンスじゃありませんが、個別法があればいいじゃないかとか、いろんな意見があるのは分かりますけれども、あるいは何でも裁判でやればいいじゃないかと、すべて裁判よ、裁判よと、私はそういう訴訟社会が日本に到来することは決していいことだと思っておりません。  したがって、裁判でなくて、人権擁護に対する基本法があって、そうした形で救われる方が出てくるというのが正しい形なんだろうと。だから、日本の国に、人権を守り、侵害された場合にこれを救うという考え方を持った基本法がないというのは先進国として寂しい限りだという考えを表明しているわけでございます。
  60. 松岡徹

    ○松岡徹君 ありがとうございます。  私も、そもそも人権擁護行政とは何かといった場合、そもそも人権とは何なのかというところから始まるべきだと思っているんですね。  人権とは、差別を受けている人たちだけのものではなくて、すべての人間にひとしく生まれながらにして命、自由、平等というものが保障されているもの、これが私は人権だと思っています。それが侵害される。すなわち、命あるいは自由、平等というものがそれぞれの理由によって奪われていく。例えば障害を持つ人たち、あるいは女性、あるいは被差別部落、様々な理由によって自由や平等、そして命が脅かされるということがあってはならないというふうに思います。  擁護とはどういうことか。すなわち、そういった侵略や、あるいは命を奪おうとしているところからかばって守るということが擁護ですね。そういう侵害をされようとしている、されていることからかばって守る、人権を擁護するというのはまさに私はそういうことだというふうに思っています。それを進めるのが人権擁護行政だというふうに思っています。  そういうことからすると、人権擁護行政のための根拠となる基本的な法律というのは私も全くそのとおりで、その人権の定義というのは、私は日本国憲法に書いてある基本的人権の理念といいますか、あれが一つ人権の物差しといいますか、我が国が守るべき憲法に保障された人権が私は人権の基本としてベースになるべきだと。あえて付け加えるならば、人権にかかわる国連の諸条約、人権諸条約ですね、例えば女性差別撤廃条約とか、あるいは子どもの権利条約であるとか、あるいは人種差別撤廃条約であるとか、そこに我が国が批准した、賛成をした条約の中に書かれてある人権規定というものが一つの物差し、基準の物差しになるんではないかというふうに思いますけれども、大臣人権に関する基準といいますか、とらえ方というのはいかがでしょうか。
  61. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 松岡先生は世の人権を守るために大変な活躍をされてこられた方でありますから、私など松岡先生に比べれば物の数ではないわけです。ですが、そういう先生の今のお話を心を無にして聞きほれておったわけでございまして、要は、同じ人間でありながら全くいわれのない差別というものがある、これを何とかなくしたいという気持ちの強さでは私もそうそう人に負けないようなものを持っていると思います。  問題を特化させてはいけないとは思いますけれども、「橋のない川」とか「夜明けの旗」とか、私は見ると必ず涙が出ます。何度見ても涙が出ます。それは、そういういわれのない理不尽なものが世の中に存在しているということ、それに勇敢に闘ってこられている方がいるということ。それ以外にも様々な人権侵害があるわけですから、とにかく人権侵害とは何だと言われても、それこそこの定義はまたいずれきちんとしなければならないと思いますが、思想として、哲学として、人権侵害、いわれのない差別許すまじという気持ちをいつも心の中心に持っていようと、こう考えております。
  62. 松岡徹

    ○松岡徹君 私も、是非とも人権擁護にかかわる基本となる法律が我が国に整備されていくというのは本来だというふうに思っています。  すべての人間がひとしく持っている平等の権利でありますから、個別具体の個別法ではなくて、基本となる法律ができて当たり前だと。それを守るために、個別具体に現れる人権侵害に対する対処は個別法でもいいかもしれません。しかし、基本となるものはやっぱり要るべきだというふうに思っています。  私は、今回も議論になっていますが、人権擁護法、すなわち人権侵害を受けた人たちを救済しようという法律です。問題は、人権侵害というものがどういうものなのかということを見ていく必要があるというふうに思うんですね。  そこで、公人とか私人間とかいうのはありますが、例えば前も、以前の法務委員会でも私議論させていただきましたが、例えば部落問題でいえば、一昨年に、七月の一日に東京地裁で判決が出た事件があります。連続差別はがき事件であります。一人の男が五百通を超えるはがきを六人の人間に対して送り付けた。しかも、その人だけではなくて、その人の住んでいる周りに、こいつは部落民だというふうなはがきを周辺にまくと。あるいはもっと、殺してやるとか、そういったはがきが、五百通を超えるはがきが出ている。そのときに、当然その被害者人たち法務局にも相談にも行きました。残念ながら、法務局の擁護行政は被害者を守ろうという手だてとすれば非常に大変な問題があったというふうに思いますが、いずれにしましても、その実行者が逮捕されまして、判決は懲役二年の実刑になりました。彼は去年、その実刑を終えて出所してきました。私たちは半年以上も彼と接触をしまして、私も今年の一月に彼と直接話をしました。この判決で有罪の根拠は名誉毀損と脅迫罪でありました。それが認定されました。こういうことは非常にまれであります。  これは明らかな人権侵害だというふうに思うんですけれども、大臣も当然そのように思われますよね。しかし、この事件被害者はだれだとお思いですか。この五百通を超えるはがき事件で有罪になった事件被害者はだれだと思います。お願いします。
  63. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 差別はがきの事件についてはもちろん聞いているんですけれども、受取人だけではないような気がしますね。つまり、もちろん、そのはがきを送り付けられた、はがきの受取人なんていうくだらないメモが入っていますけど、私は受取人だけではないと思いますね。やはり、そのはがきを何のためでそういうことをするかといえば、個人を一人だけやっつけるとかいうんじゃなくて、やはり同和問題あるいは部落とか、そういうふうな形で大勢の方を一どきに傷つけていると私は思います。
  64. 松岡徹

    ○松岡徹君 ありがとうございます。  ただ、私たちは、この一月の末にその人と、彼が服役中も我々は面会に行ったりして人間関係つくってきたんです。そして一月に、六人の実名ではがき書かれた本人と私たちとで彼と話合いをしました。彼も率直に自らの過ちを我々の前で謝ってくれました。そして、これからもこういった間違いを犯さないようにしたいということでありました。彼のこういった行為をした動機は、彼自身がリストラに遭って就職できないとかいろんなその背景があって、そしてそういう差別行為に思い付いていく。それは、おまえら部落民のくせに何でこんなことしているんだと。すなわち、自分よりも弱い者といいますか、そういうふうに見てしまうことがありました。そのことを率直に語っていただきました。  私は、この場合の事件人権侵害に対して、だれがどうやってだれを救済するのか、この被害者はだれかということを特定しなくてはなりません。当然この六人も、実名ですから、なりますけれども、今大臣おっしゃったように、この六人に類する人たちも当然被害の一端を担っているんですね。どうして救済するのか。  もう一つ事件は、これも愛知県で起きた、インターネット上にありました。インターネットにその愛知の被差別部落の所在を住所、名前、そして挙げ句の果てには動画まで載せて、ここには近づくなと、殺されるぞとか、そういったことを書き込んだホームページがインターネット上で出ました。彼も逮捕されまして、有罪になりまして、名誉毀損になったわけであります。  様々形を変えていきます。そして、今もまだ十分未解決でありますが、行政書士の方が他人の戸籍謄抄本を取得して一通三千円から一万円で売っていた。それを依頼したのが興信所、探偵社でありました。これは今もありまして、去年の暮れに見付かったんですが、三重の行政書士が一つの会社に契約しまして、その会社がその契約者である行政書士に依頼するんです。これはプライベートリサーチという会社なんですね。これ横浜にある会社なんですが、この横浜にあるプライベートリサーチが幾つかの行政書士に契約するんです。そして、行政書士が自分たちの職務上請求用紙を使ってプライベートリサーチから来た依頼の個人の戸籍謄抄本を取って、それを一通三千円から一万円で売っていた。このプライベートリサーチ社というのはもう今閉めて、事務所もないんですね。我々、会いにも行きましたけれども、もう事務所はもぬけの殻でございました。  この調査依頼の調査依頼内容についてその三重の行政書士からいろいろ協力をいただいて、見ました。そうすると、調査の目的は結婚とかあるいは就職にかかわる調査がほとんどでございました。我々の知らないところで職務上の権限を不正利用して、他人を結婚や就職から除外していくというようなことが我々の分からないところで起きている。  実はこれは三年前にも兵庫や大阪、あるいは東京、名古屋、福岡でそういった行政書士による他人の戸籍謄抄本の不正入手事件が相次ぎました。それで、戸籍法の一部を改正をいたしまして、それに依頼をした興信所、探偵社まで罰せられるという刑罰化になったんですが、残念ながらこの事件が起きたときはまだそれが施行前でありまして、今もそうですけれどもね、施行前ですからこの刑罰に当たらない、すなわちやり得、逃げ得になってしまっていると。  実は五年ほど前に大臣に申し上げたわけですが、こういったことは人権侵害に当たるのかどうか、他人の戸籍謄抄本でそういった就職や結婚の自由を阻害するような行為は人権侵害に当たると思われますか、思われないですか。
  65. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 人権侵害に当たりますけれども、結局、現在のその人権擁護行政では説示、勧告というぐらいしかないわけですね。これが刑事事件になるかというと、なかなかこれ、巧みにやると微妙な形でなかなか刑事事件にならないという部分もあるかもしれない。だから、今の人権擁護行政で説示とか勧告というのは残念ながら弱い、弱いものしか持っていない。じゃ、何でも裁判で決着付ければいいじゃないかというのはまた非常に著しく困難ですから、その間を埋める人権を守る基本法が必要だというのはまさにそういうところから申し上げているわけです。
  66. 松岡徹

    ○松岡徹君 私は是非大臣にお願いしたいのは、人権侵害というものが具体的にどういう形で起きているのかというのを是非ともつかんでいただきたいと思うんですね。法務省人権擁護局の方に相談に来た件数とかいうことだけではなくて、こういったことは残念ながら法務省はつかんでいないんですね。それで、被害者を救済するんですから、その結果、そういった人権侵害事案に対してどんな被害が起きているのかということをしっかりと認定することが大事です。私はこんな被害を受けましたと言われたら、言われるままではなくて、実際それが本当に被害なのかどうかも含めてやっぱり調べる必要があるのではないか。是非ともこの法を制定すべきだというふうに私は思いますけれども、是非ともそういった人権侵害の実態を法務省としてつかんでいただきたい、実態把握をしていただきたいというように思いますけれども、大臣、いかがですか。
  67. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) それは、今松岡先生のおっしゃるような方向で努力をさせます。
  68. 松岡徹

    ○松岡徹君 それで、問題は、次は救済なんですね。どうしたら救済できるか。  例えば、大臣、ハンセン病元患者の人たちが求めている基本法あるいは障害者団体が求めている障害者差別禁止法、これ御存じだというふうに思っています。そこにも、ハンセン病元回復者の人たちが求めている、基本法を求める請願とか今署名活動されています。その中にもハンセン病元患者あるいはそういった病気に対する世間の偏見とか差別というものがあるというふうに具体的に言っていますね。それらをなくしてほしいということが基本法制定要求の中に彼らの要求として出ています。私は、しっかりとその辺の部分も実態、まさに人権侵害の事実としてつかんでいただきたい、実態把握していただきたいというふうに思うんですね。  すなわち、例えば黒川温泉の宿泊拒否という問題ありましたですね。菊池恵楓園というハンセン病療養所の、熊本にあります菊池恵楓園という、入所者といいますかハンセン病元患者の人たちが黒川温泉に宿泊を申し込みました。しかし、その黒川温泉のある施設は宿泊を拒否しました。それは、ハンセン病元患者ということで拒否されたんですね。彼らの理由は、この間の日教組のプリンスホテルのあれではないですけれども、ほかのお客さんに迷惑を掛ける、だから断ったと。これは人権侵害に当たるかどうかなんですよ、ハンセン病元患者に対する。これ当たると思いますか。私は人権侵害に当たるんではないかというふうに思いますよ。ただ、なぜそんなようなことを起こすのかというのは、黒川温泉のあの宿泊の施設の人たちがハンセン病問題についての認識が非常に弱かったということが背景にあろうかと思いますが、救済の仕方、こういった人たちをどういうふうに救済するのかということになります。  ちなみに、もう申し上げますが、時間もございませんので、こういう私人間の救済の仕方をどうすればいいのかというのと、もう一つは、今日も出ていましたけれども、鹿児島の志布志事件で新聞記事ありました、送っていただきましたけれども、接見内容の聴取は違法だというふうに判決が出ました。すなわち、弁護士と接見している内容を調書にしてしまう、聞き取って、ということは違法だと。個人の権利を、憲法に書かれている権利を侵害していると。これ公権力が行っているものなんですが、これも人権侵害に当たるかどうか、大臣、見解をお聞かせいただきたい。
  69. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 後者の方は、いわゆる国賠訴訟という形で一人一千百万請求したところ五十万支払という形で、あれは国と県と両方でしょうか、接見交通を妨害したようなものですね、接見交通した内容を聞き出して調書にしたわけですから、それは被疑者被告人には接見交通の権利があるわけですから、それを不当に侵したということで国家賠償でそういう結果が出たというわけで、これは人権侵害というか裁判でそういうもう結論が出た事案だと思います。  ハンセン病の方々が、元の患者の方々が言わばハンセン病問題の基本法の制定をしてくれと、あるいは障害者団体の方々も障害者差別禁止法の制定をという運動をされておられます。これらの方々に対する差別は、疾病あるいは元の疾病かもしれませんね、あるいは障害に基づく差別ですから、重大な人権侵害だと法務省ではとらえるわけでございまして、先ほどの黒川温泉ホテルは完全な人権侵害を行ったという認識でございます。
  70. 松岡徹

    ○松岡徹君 時間が来てしまいました。大臣の率直な答弁に感謝申し上げたいと思います。  日本における人権侵害、後で徳島の刑務所問題も若干大臣の見解も聞こうと思ったんですが、また是非、次の機会にさせていただきたいと思っています。私は、これもある種の人権侵害ではないかというふうに思ったりしています。  最後に、人権擁護法といいますか、名称はどうなるか知りませんが、こういった法律が一日も早く制定されるべきだと、そのためのしっかりと議論をした方がいいと思いますが、その制定へ向けた最後に大臣の決意といいますか考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  71. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 人権擁護法は、議員立法でなくて閣法という形で法務省が用意をした、それがけんけんがくがくの議論の中で、特に与党内の議論がまとまらない、場合によっては相当激しい感情的な対立まで生んで廃案になった、再び提出しようかという機運が盛り上がったときも同様であったと、こういうことでございまして、私は、だから同じことを繰り返してはいけないし、今、太田誠一さんの調査会で自民党でもまさにかんかんがくがくの議論が続いていることは知っておりますので、私はその会の最初のときに行きまして、前に出した人権擁護法、閣法の人権擁護法案を基にすればまた同じような議論になるから、みんなで知恵を出し合って、人権擁護法のときに賛成した方も反対した方もみんなで一緒に知恵を出し合って、これならいいというものを白紙から作り上げていいものを作ってくださいよと、こういうふうにお話をしたので、その気持ちは今も変わりません。
  72. 松岡徹

    ○松岡徹君 終わります。
  73. 丸山和也

    ○丸山和也君 自民党の丸山和也です。  大臣に、三十分の時間内で厳しいんですけれども、数点、大臣並びに関係者の御見解をお聞きしたいと思います。  まず第一に、刑事犯罪の刑期の件なんですけれども、日本には御承知のように終身刑というのがございません。そして、よく世上では、無期懲役あるいは無期禁錮、いわゆる無期懲役となった場合、一般の国民というのは、ああ一生出れないんだなと、こういう、やや誤っているんですけれども、かなり常識的というか、そういうふうにとらえるんですけれども、実際は、十年以上たつと仮出獄といいますか、そうやって社会に出てくると、こういうことを目の当たりにするわけでございます。中にはそういう人がまた犯罪を犯す場合もあるんですけれども。  ここで、何といいますか、いわゆる無期刑の仮出獄、仮釈放、これの十年という期間の、これは法律でそうなっているんですけれども、十年ということが少し短過ぎないかと。あるいは、死刑か無期かと争われる事件がたくさんございます。そして、いろんな弁護士の努力もあって、あるいは裁判官のいろんな事情のしんしゃくの結果、情状も酌量して無期という結果になる場合が往々にして多いんですけれども、それと、死刑と十年あるいは十年ちょっとで出てくるというのは余りにも差が大きいと。ここら辺がどうも庶民感覚からするとちょっとずれているんじゃないかとよく私も耳にするんでありますけれども。こういう十年という、最低十年ですね、これの見直しに向けて検討する必要もあるんじゃないかと私は思うんですが、大臣にお聞きもしたいと。  とりわけ、私も外国人の犯罪事件もいろいろやったこともあるんですけれども、外国人の犯罪が現在非常に増えております。二〇〇六年の統計で見ますと、総検挙数で四万百二十八件、これは十年前と比べますとやっぱり一・五倍になっているんですね。それで、統計上ですけれども、中国人とかブラジル人、韓国人がそれ順に多いんですけれども、かなり強盗とか、中には殺人とか凶悪な事件が含まれていると。こういう場合なんかも、外国人の犯罪も考えますと、本国によっては、あるいは例えば、例えばの話ですけれども、中国で無期なり死刑になる、日本だとそうもならないと。あるいは十年ちょっとたったら出てこれるんだというような、そういう犯罪の国際間の不平等といいますか、不均衡ということにも若干影響するんじゃないかと思いますので、こういう無期刑の仮出獄の条件の見直しということについて法務大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  74. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 丸山先生おっしゃるとおり、死刑と無期の間が余りに大きいと私も思います。今日も午前中の衆議院の法案審議で出ておりましたけれども、それは終身刑の話でございました。  これ、終身刑の話というのは、しばしば死刑廃止論者が終身刑を設けて死刑をなくせとか、死刑を執行しなければ終身刑になるとかというようなことでしばしば議論をされますが、逆に無期が甘過ぎるという観点から死刑は死刑でやる、無期が甘過ぎるから、無期だと大体出てきちゃうんじゃないかと、甘過ぎるから終身刑だと、両方の立場から終身刑が唱えられることが多いので、私も勉強していこうと思っておりますけれども、今の先生の御指摘は私どもの感覚と非常に近いと思います。  現実に、平成十五年から十九年までに仮釈放を許された無期懲役受刑者二十八人のうち、在所期間が二十年以内で仮釈放された者は一人もいないというので、実質十年という法律の規定を二十年に読み替えて実施しているのではないかなというふうに私なりに考えておりますので、ただいまの先生の御提案は真剣に受け止めたいと思います。
  75. 丸山和也

    ○丸山和也君 是非、更に検討を進めていただきたいと思います。  それから、次に進めますけど、やはり鳩山大臣といえば死刑の問題を大々的に取り上げた大臣ということで、再度御質問させていただきたいと思うんですけど、第百六十八国会で当法務委員会大臣の所信のあいさつという中で、死刑の執行の在り方については、刑事訴訟法の規定の趣旨を踏まえつつ、その現状の問題点を強く意識して勉強してまいりたいと考えておりますと、こういうふうに果敢におっしゃっていまして、その後、見ておりますと、現在までに六名でしたかね、六名かと伺っているんですけれども、死刑が執行されて、それにつきまして、執行された本人の氏名、犯罪事実、執行場所を公表されたと。これは今までなかったことでありまして、非常に勇気のある、果敢に進めて、強く意識して勉強してまいりますということを早速実践されていると思って、私はやはり、単にユニークな発言をされるだけじゃなくて、実行力ある大臣だなと思って感心をしているところでありますけれども、これは是非今後も継続していただきたいと。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  それから、もう一つ、前回私も発言しまして、大臣の方からはやや衝撃的だとかおっしゃっていただいている、まあそういう考えもあるのかななんておっしゃっていただいている点なんでありますけれども、やはり死刑の執行の日時の事前告知の問題なんでありますけれども、前にも言いましたように、国連の拷問禁止委員会からの勧告でも、やはり、死刑が執行される数時間前に日本では本人に執行が通知されて、されると。そういうことで、七年半ぐらい、死刑宣告されてから執行まで平均的には掛かっているようなんでありますけれども、だんだん時期がたってくるに従って、いつかいつかと思いながら、本人も不安な日、あるいは家族も心の整理を十分できないまま突然ある朝、今日やるよと、こういうことになるわけですね。  これはやはり、法務省なりの見解では、早く知らせると不安になると、あるいは本人、家族が不安になると、情緒の安定を害するからということを理由にされているようですけれども、私は、そろそろその考え方は改めるべきじゃないかと思うんですね。この国連の委員会も言っているように、逆に、いつされるのか分からないということの長期間の、これがまた別の刑を生んでいるんじゃないかと私は思うんですね。  それで、やはり人間の死というのは、どんな罪を犯した人間であれ、やっぱり尊厳が与えらるべきだと私は思うんですよ。家畜じゃないと。したがって、やはり自分の死を意識し、それに従って自分も覚悟を決め、それを受け入れるという、これが最後の人間の姿だと私は思うんですね。  そういう意味では、この告知というのを、前回は三か月程度、期間は事前に告知させて、その中で本人が選べる日を選択して、それに従ってやっていただくと、こういう制度がいいんじゃないかと考えたんでありますけれども、その考えは今も変わっていないんでありますけれども、更に進んで、更に衝撃的なことかもしれませんけれども、申し訳ないんですが、やはり今の死刑の執行を見ていますと、法務大臣が署名しなきゃできないんですけれども、実際の署名した後、執行のボタンは三つあって、だれが押したのが通じているか分からないということで床が抜けるという形式になっているんですね。これもそろそろ改めるべきだと私は思うんですね。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  私が考えるのは、要するに、三か月間、例えば三か月程度の猶予を与えて、その中で本人の希望する日を選択させる。そして、最終はもう三か月末ですね、本人が選ばなければ最終期限とする。それと、その当日、死刑執行が確定した当日は、本人がその死刑執行のボタンを押せる。例えばリモコンとかありますね。(発言する者あり)いやいや、お笑いじゃないんですよ。本人がボタンを押すと。それで、その時間は例えば五分とか猶予を与えますよ。それで、その五分の間に自分でやると。  これは、やはり究極の、本人が自分の死を確定し、自分でそれに関与するという意味ですね。その程度は難しいことじゃないと思うんですね。もちろん、それを押さなかった場合はその三人が時間の最終に押すと、こういうことも考えられるんじゃないかと思います、例えばの話ですけれども。  とにかく私が一番言いたいのは、死刑が確定されて、裁判官も大変なんです、死刑判決出すということは。その後、ずっと七年も明日か明日かという日を送りながら明日の日を迎えなきゃならない。その中で、その当日になっていきなり今日やるよということで連れていかれて執行されると。これはいかにも、私のあれとして、最後のやっぱり人間としての尊厳を踏みにじっているんじゃないかと強く思うんであります。だからこそ国連の人権委員会辺りも非難しているんですね。でも、これは日本の方で余り重視していないんですよ、これ、事前告知ということについて。ここがかなり感覚がずれているんじゃないかなと。  そういう点で、更に死刑の執行の方法につきましては、事前告知、それから執行の在り方についても検討していただきたいと思うんでありますけれども、法務大臣のお考えはいかがでしょうか。
  76. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 丸山先生のお話はいつも衝撃的で、これは常に持ち帰る形になってしまうんですけれども、先生のお話の中で、それは死刑の判決をする裁判官も極めて神妙な面持ちであろうと思いますし、こんな私ではありますが、一応斎戒沐浴するような思いでサインをさせていただいているということがあります。  先生おっしゃるとおり、死刑執行される人であれ人間としての尊厳はあるんだと、これもまた、犯した罪と別に人間の尊厳という面は否定できないだろうと思うわけであります。  したがって、日にちを選ぶとか、三か月先を告げるとか、ボタンを本人が押すとか、いろいろと先生の御提案は非常に鋭く胸に刺さってまいりますけれども、ただ、死刑を粛々と執行しなければいけないと思っているときに、やはり先の日にちを言うとか、あるいは死刑囚が日にちを選ぶということになりますと、結局、事前に情報が回って、あしたの死刑反対とかなんとか、執行反対とかというようなことになりがちだということを考えますと、なかなかそう簡単に踏み切れないというふうに思っておりまして、そのために事前に知らせないで朝知らせるという方法を取っているわけです。  テレビドラマですが、「私は貝になりたい」、フランキー堺さんが主演で、後にできたのは所ジョージさんだったっけ、もう一回できましたよね。たしか、教誨師さんが出てきてあと何時間ですよと言って、チーズかクラッカーか食べて、ワインをがぶ飲みして執行されていくシーンというのは、極東国際軍事裁判のあのシーンというのは私は忘れもしないわけですから、その辺を考えると、丸山先生のお話になるほどと引かれる部分もございます。ですが、現在のところは、事前に告知するような形になると、反対運動のようなものが大騒ぎになるんではないかという不安を禁じ得ないというのが今の私の気持ちでございます。
  77. 丸山和也

    ○丸山和也君 特殊な事件は、それはそもそもそういう運動があるかも分かりませんが、一般の死刑の確定した事件で、まあ死刑反対の立場からの反対は、これはもう一般としてあり得ると思いますけれども、粛々として行われることと、それから一般の通常の死刑事件に、すべていわゆる個別に反対運動が事前に告知することによって起こるというのは、ちょっとやっぱり、余り因果関係がないんじゃないかと私は思っております。私の意見でありますけれども、そう申し述べさせていただきます。  それから、時間の関係で次に移りますが、いわゆる、再び世間的に非常に話題になっていますロス疑惑事件というのがございますね。これで、今、三浦かつて被告が日本で無罪判決を受けたのに再度サイパンで逮捕されて、アメリカの司法当局によって裁かれようとしていると、こういう件でありますけれども、これに対する日本政府といいますか、の対応について御所見をお聞きしたいと思うんですけれども。  私は、ちょうどこの一九八一年まで、事件があった年までアメリカにおりましたので、ロサンゼルスにおりましたものですから、この事件は非常に個人的に印象が深く、事件の発生した現場もよく通りましたから個人的にも印象の深い事件なんでありますけれども、本来ならアメリカで裁かれていたんじゃないかと思うんですけれども、本人が帰国したというようなことで、日本で裁判をすることになったと理解しておりますけれども。  現在、先週ですか、ロサンゼルスの方から検察官とか捜査官が何名か来られて、日本の法務省当局とも捜査協力ですか、に関して協議をされたというふうに伺っておりますので、捜査のことですから詳しい内容は言えないと思うんですけれども、基本的にどういうスタンスといいますか、姿勢で対応されているのか、お聞きしたいと思います。
  78. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 日米刑事共助条約というんでしょうか、条約によれば、あるいはまた日本に国内法がありますけれども、日本からアメリカに捜査協力の要請をする、アメリカから日本に捜査協力の要請をするという場合には、その要請があった事実あるいはその中身についてはお互いに秘密にしましょう、公開しないようにしましょうという規定があるわけでございますから、現在、ジミー佐古田さん始め六人の方々が日本にお見えになっているのは、ロス疑惑関連、三浦和義さんの捜査協力をお願いする場合の下調べみたいな、その段階なんだろうと、こう思うわけでございます。したがって、連邦司法省から私の方に捜査共助の要請が来る形になるのかとは思いますが、それはそういう事実があったとしても、その内容も私はここでおしゃべりできないというつらい立場に置かれるわけでございます。  ただ、丸山先生、重要なことは、真相が解明されて正しい裁きがあること、これは国境を越えた要請だろうと、こう思うわけでありまして、したがいまして、あくまでも一般論、ロス疑惑ということでなくて一般論として申し上げれば、日本とアメリカの間には刑事共助条約がある、その同一事件について我が国で無罪判決が確定しているからといって、条約や国際捜査共助等に関する法律という国内法もあるわけですから、したがって、我が国において無罪判決が確定していることは共助の拒否理由にはならないと。これが一般論としてそういうスタンスを申し上げることができます。
  79. 丸山和也

    ○丸山和也君 私もそのとおりだと思うんですね。いろんなこういうマスコミをにぎわす事件になりますと、法務省協力すべきでないとか、けしからぬとか、あるいは一事不再理だからそもそもそういうことを受け入れて協議することすらけしからぬというような意見も一部では出ているようでありますけれども、これは非常に難しい法律問題がありまして、一事不再理も外国の判決に及ぶのかとか、あるいはカリフォルニア州の州法の改正もあったり、そこら辺の遡及できるのかどうかということとか、いろんな問題がありまして、基本的には一事不再理の問題も含め、あるいは日本にない共謀罪の適用の可否、それも含めて、そういうことをアメリカが、司法当局が調べるということであれば、そこで堂々と一事不再理を主張するなら主張し、それで決着が付けばそれまでのことですし、そういう形で日本としても、これは日本からも捜査協力する場合もいろいろあるわけですから、基本的なやっぱり姿勢を法務省はきちっと取って、しかるべき捜査協力はし、しかるべき適正な法の運用、執行といいますか、司法によって裁かれることを強くメッセージを出され、今後もこの事件はいろいろなもうマスコミを取り巻いたにぎやかな事件になると思いますので、是非原則を、何といいますか、原則にのっとってびしっとやっていただきたいと、そう思っております。  それからもう一つ、裁判の問題についてお聞きしたいと思うんですけれども、いわゆる十年、二十年前と比べると、いわゆる民事事件も刑事事件もそうですけれども、控訴審の役割は大事なんですけれども、審議時間といいますか審理時間が非常に短縮されているんじゃないかと。あるいは裁判の迅速化という名の下に裁判全体に費やされる審理の時間が非常に短くなっているような気がします。  これは、ある程度もう裁判官が抱えている事件数の多さ等からやむを得ない面もあるんですが、私が若いころに証人尋問をいろいろ申請して結構認められていたんですけれども、最近は証人申請をしても、民事も刑事もそうですけれども、なかなかこれが認められないと。非常に証人採用、厳格になっていると。特に控訴審辺りになると、よっぽどのことがないと、新たな証人、追加証人の申請は認められないというのがもう慣行のようになっているように思うんでありますけれども。  これはどなたからでもいいんですけれども、いわゆる十年前ぐらいと比べて審理に掛ける時間というのはどういうふうに変化しているのかと、地裁あるいは高裁レベルで、概要で結構ですけれども、分かりましたら教えていただきたいと思います。
  80. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) まず、控訴審について御説明申し上げます。  民事の控訴審における平均審理期間につきましては、平成十年、十年前ですけれども、平成十年が九・八か月であったのに対して、平成十五年は七・一か月、昨年、平成十九年は五・九か月と、短縮化する方向で推移しているものと承知しております。  次に、刑事の控訴審について御説明しますが、刑事控訴審における平均審理期間につきましても、十年前の平成十年が四・一か月であったのに対し、平成十五年が三・六か月、昨年、平成十九年は三・三か月と、やはり同様に短縮化する方向で推移しているものと承知しております。  一審のことも申し上げた方がよければ、引き続き一審についても付言いたしますが。  民事の一審の平均審理期間ですけれども、これも同じ、平成十年は九・三か月、平成十五年は八・二か月、平成十九年は六・八か月と、民事については一審事件もこのように短縮化の傾向をたどっております。  これに対しまして刑事の一審事件の平均審理期間ですけれども、平成十年が三・一か月、平成十五年が三・二か月、平成十九年が三・〇か月と、これはほぼ横ばいといいますか、そういう状況で推移しております。  以上でございます。
  81. 丸山和也

    ○丸山和也君 一審の刑事を除いて相対的にかなり、高裁民事辺りだと半分ぐらいになっていますけど、これはひとえに裁判の迅速化が望ましいという考えからこういうふうになっていると考えるべきなんでしょうか、それとも事件数が増えて裁判官が足りないから処理できないからということなんでしょうか。あるいはそこら辺について原因分析されているんであればお答えいただきたいと思いますけど。
  82. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) まず、一審、控訴審共に平均審理期間が短縮化の傾向をたどっている民事事件について申し上げますと、民事の第一審につきましては、訴訟運営改善の積み重ねと平成十年に施行されました現行民事訴訟法の施行によりまして、充実した争点審理を行った上で争点の判断に必要不可欠な人証を取り調べると、こういった審理の在り方が実務に浸透してきているものと承知しております。このことによって一審の審理期間が徐々に短縮化しているのだと考えております。  民事の控訴審における平均取調べの証人数も減少傾向にあって、このことが控訴審の審理期間の減少につながっていると思いますけれども、これも、この一審の審理の在り方がこういう形で新たに変わってきて、その変わってきた審理の在り方が浸透してきているものですから、控訴審において改めて争点について人証調べを実施する必要があると判断されている事件が少なくなってきているためではないかと思います。  また、刑事についてですけれども、刑事は、第一審は先ほど言ったように余り変化がないわけですが、刑事の控訴審につきましても短縮化の傾向がありますけれども、元々、御案内のとおり、刑事の控訴審は事後審制が採用されていることに加えまして、この十年間の平均取調べ証人数にはほとんど変化がございません。ということを考えますと、審理が何か形骸化しているというふうなことでこの刑事についての控訴審の審理期間が短くなっているということではないと思っております。  したがって、民事、刑事のいずれにつきましても裁判所における審理は基本的には適正迅速な形で推移して、しかし結果としては、訴訟迅速化についての様々な運用改善や法的な手当て、あるいは当事者の意識なんということもあるかもしれませんが、といったことがこの迅速化の背景にある事情だろうと考えております。
  83. 丸山和也

    ○丸山和也君 もちろん迅速化によっていろいろなメリットもあるわけですけれども、平たく言えば行き過ぎて十分な審理がなされないといいますか、そういうことで、いわゆる急ぐ余りに粗雑な結論を出してしまう、あるいは当事者に不満足が残らないように、是非ともそこら辺の運用状況については十分配慮しながらやっていただきたいとお願いしておきます。  最後に、もうほとんど時間ないんですが、一点だけ。  先ほども松岡委員の方からも質問が詳しいのがありましたけど、人権擁護法案の扱いの問題でありますけれども、基本的には、人権擁護に関する基本法があっていいと、そういうのがないのがおかしいと、そういうのを作っていこう、これはもう私も反対じゃないんでありますけれども、やはり問題になっています人権の定義とか人権委員会の権限の範囲とか、それから言論の自由との関係とかいろんなところでやはり反対論が出ておりまして、これは非常に大事な法律であるだけに、慎重であるとともに、各界からいろんな意見を聴きながら時間を掛けて推進していただきたい。法務大臣も所信の中で、これはそういう答申も出ているから提出するんだとおっしゃっていますけれども、仮に基本はそうであっても、内容は、先ほどおっしゃったように、かつてのをそのまま、あるいは踏襲する、小手先を直すというんじゃなくて、抜本的にその中身についてじっくり時間を掛けて、練って、もう各界いろんな方からやっぱりおおむねの賛成を得られるような内容の法案にして、是非進めるという方向でお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  84. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 先ほど松岡先生にお答えを申しましたように、これは与党の、とりわけ自民党内の事情の問題であろうかとも思っておりまして、したがって、私は党の調査会へ参りまして、人権擁護法案を再提出はいたしませんと言ったんです。そうではなくて、人権を守る基本法はこの国になくてはいけないから、今丸山先生からお話があったような、人権の定義は何だ、侵害とは何だ、いろんな大議論があったでしょうから、私は白紙で皆さんにお願いをするから、人権を守り救済する一番いい形のものを、今までの人権擁護法案に賛成だった人も反対だった人も、それこそ心を無にして一番いいものを作り上げて渡していただければ、私はそれを閣法として出しますと、こういう言い方をしたんで、そういう考えでこれからも臨んでいきたいと思っております。
  85. 丸山和也

    ○丸山和也君 大臣、いろいろありがとうございました。  そして、大臣の所信の中で、もう最初も今回もですけれども、和の文明、最初は和の文明、今回は和をなす文明となっているんですが、ここが違いがあるのかどうか、一緒なのか分かりませんけれども、それと美と慈悲の文明ですね、これを非常に再度強調されているということは、法務行政の根幹においても目指すところはここにあるというふうに御理解されているんじゃないかと思うんですね。  ですから、今、最後に出ました人権擁護法案におきましても、大臣度々おっしゃっていますように、すべてが法律、裁判で解決するものじゃない、そういう社会を私は望まないと。そこがまさに大臣の目指す和をなす文明、それから美と慈悲の文明ですか、そこにおっしゃりたいところがあると思うんですね。  ですから、人権を擁護する、人権の満ち満ちた社会をつくるということも、根幹はやっぱりこういうところが仮に法律なりがどんどんできて人間が滅んでしまう、逆に人間らしさがなくなってしまわないように、是非法務行政全般について鳩山大臣らしい気配りをやっていただきたいとお願いして、私の質問を終わらせていただきます。     ─────────────
  86. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、大久保潔重君が委員辞任され、その補欠として松野信夫君が選任をされました。     ─────────────
  87. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本日は、我が国における難民保護の現状と課題について、まずお伺いをしてみたいと思います。  難民認定法では、申請してから最終的に認定、不認定の決定が出るまで期間に関する規定が法律にはございません。その結果かどうか分かりませんが、ともかくこれが非常に長期化している傾向があるとの指摘があっております。  平成十九年に異議申立てに対する結果が出た件数と、難民認定申請を行ってから異議申立ての結果が出るまでの平均期間をまず教えていただきたいと思います。
  88. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) お答えいたします。  平成十九年中に異議の申立てに対する決定がなされた件数、これは百八十七件でございます。  この百八十七件につきまして、難民認定の申請を行ってから異議の申立てに対する決定がなされるまでに要した平均審査期間、これは六百二日になっております。
  89. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちなみに、今言っていただきました平均期間なんですけれども、この中で、いわゆる認定者と不認定者、それぞれ平均審査期間、教えていただきたいと思います。
  90. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) お答えいたします。  百八十七件のうち難民と認定された者の数は四件でございまして、その平均審査期間は六百八十九日でございます。  一方、難民と認定されなかった者、これが百八十三件でございまして、その平均審査期間は六百日となっております。
  91. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちょっと長いという感じが、ちょっとじゃない、かなり長いんですよ。  なぜこのように、申請から認定、不認定の決定ができるまで、六百日ですから、一年を優に超えた日数になるのかと。こういうことがあるものですから、議論の中では常にこの審査期間の上限をきちんと法律で規定した方がいいんじゃないかという議論がいつも起きてくることも事実でございます。こういった点も含めて、法務省から見解をお伺いしておきたいと思います。
  92. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) まず、審査期間が長期化している原因でございますが、難民認定手続につきましては、委員御案内のとおり、平成十七年の五月十六日、この日に難民認定制度を大幅に見直しました改正入管法、これが施行されたところでございます。  この平成十七年に一年間の難民認定申請の件数は三百八十四件、前年までとそれほど大きな変動ございません。ところが、翌年の平成十八年、この一年間の申請件数が平成十七年の二・五倍、九百五十四件。その翌年、昨年でございますが、平成十九年の申請総数が八百十六件ということで、大幅な申請件数の増がございまして、やっぱり処理体制がそれに間に合わず、大幅な審査時間を要しているという現状でございます。  委員から御指摘のございました審査期間の上限でございますが、ただいま申し上げましたとおり、現在の審査状況というのは、はっきり言いまして通常の状況ではございません。申請件数に見合った処理体制ができていないということでございますので、当局といたしましては、申請件数に見合いました処理体制を一日も早く整えまして、審査期間の短縮に努めたいと考えているところでございます。
  93. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 外務省の方にちょっとお伺いをしたいんですけれども、この申請から認定、不認定の決定までの期間で、政府が生活支援メニューというのを幾つかやっていると思うんですが、具体的にどんなものがあるか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  94. 新保雅俊

    政府参考人新保雅俊君) 御説明いたします。  難民認定申請者のうち生活に困窮しておられる方に対する生活支援メニューには、生活保護費、住宅手当及び医療費の支給といった現金の支給のほかに、緊急宿泊施設の提供、これで合わせて四種類ございます。  生活保護費につきましては、十二歳以上が日額千五百円、十二歳未満が七百五十円となっております。住宅手当につきましては、家族構成により異なりますけれども、例えば、単身者の場合は四万円、一家四名以上は六万円というふうになっております。医療費につきましては、原則として後日申請者に対して実費精算を行っていますが、ただし、緊急な場合とかあるいは高額の場合には医療機関に直接後払いをするといった取扱いを取ることもございます。難民認定申請者緊急宿泊施設は、日本入国後間もないため自力で居宅を見付けることができない難民認定申請者に対して一時宿泊施設を提供するものであります。  期間のお尋ねが……
  95. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今からちょっと。まあ、どうぞ。
  96. 新保雅俊

    政府参考人新保雅俊君) はい。申し訳ございません。  期間でございますが、生活保護費、住宅手当、医療の給付は原則四か月間、難民認定申請者緊急宿泊施設の貸与は原則三か月となっております。とはなっておりますが、必要に応じて延長する等の柔軟な対応を取っておりますので、その結果、平成十八年度につきましては、給付の保護措置期間は平均九・三か月となっております。  以上でございます。
  97. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今おっしゃった期間とか制度ですけれども、実際それを受けられた方は、例えば平成十八年度の実績でいうと、申請がどれくらいあってどれくらいの方がこれを支給されているのかということを教えてください。
  98. 新保雅俊

    政府参考人新保雅俊君) 平成十八年度中においては申請が百四十五件ございまして、百四十三件につきまして生活支援を実施したところでございます。
  99. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 結局、こういう制度があるというのは、経済的に余裕がある難民申請者というのはもちろん余りいないわけであって、したがってこういう仕組みができ上がっているところもあるわけですね。  ただ、さっきお話があっておりましたが、法務省から、平成十八年で難民認定申請件数は九百五十四件ですよね。で、今おっしゃる難民事業本部でやっているその生活支援の申請数を見ると今度はどうなるかというと百四十五件で、支給件数は百四十三件。実際に難民認定申請を行っている方との数でいくとかなりのギャップがあるというか、この生活支援を申し出る方が少ない。  なぜ、生活的には厳しいこういう難民申請者の方がなぜこの支援にこれだけしか申出がないのか。なぜこんなに申請が少ないのかという理由、外務省としてどうとらえているかとお尋ねしたいし、これは法務省の方にもなぜこんなふうになるのか、申請の基準というか、受けるときの何か資格が厳しいとか何かそれぞれあるのか、実態に対して申請が少ないというこのギャップについて、それぞれ外務省、法務省、御説明をいただきたいと思います。
  100. 新保雅俊

    政府参考人新保雅俊君) まず、なぜ難民認定申請者の多くが保護措置申請を行っていないかといった背景を、すべてを把握しているわけではございません。ただ、私ども、難民認定申請者の支援につきましては、支援案内パンフレットを作成するなどして、難民認定業務を所管している法務省や民間の難民支援団体の御協力によりまして、保護措置が必要と思われる難民認定申請者に対する本件制度の説明及びパンフレットの配布、これは当然のことながら日本語だけではなくて外国語に翻訳したものも含みますが、そういう配布につきまして協力をお願いしております。  審査基準が厳しいのではないかという御質問でございますが、難民認定申請者に対する保護措置は、難民認定申請者、これには異議申立ての方も入っておりますが、のうちで生活に困窮し、衣食住の面で支援を要すると思われる方々に対して支援の必要性を判断する、当然のことながら予算の適正な執行という観点から支援の必要性を判断した上で必要な援助を行っているという仕組みのものでございます。  したがいまして、これら申請者の在留形態をすべて私どもが外務省として把握しているわけではありませんが、様々であろうと思われますし、中には、あるいは一定期間滞在した上で難民認定申請を行うなど自立生活を営むことが可能な方もおられるかもしれません。ということで、必ずしも難民認定申請者全員が保護措置を必要としているわけではないのではないかというふうには思っておりますが、先ほど申しましたように背景をすべてつまびらかに掌握しているわけではありません。  いずれにしましても、今後とも法務省、あるいは難民支援団体と連携を密にいたしまして、難民認定申請者の方々に対する支援案内の周知を図るということで、さらに支援の充実にも努めていきたいというふうに考えているところであります。
  101. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) 私どもの方に難民認定の申請があったときに、今御紹介ございました生活支援等をどのように紹介しているかという現状でございますが、まず現状を申し上げますと、難民申請においでになったすべての人にひとしく生活支援につきまして御紹介しているわけではございません。生活支援について相談があった、そういう場合に限って御紹介しているというのが現状でございます。  その理由でございますが、これは最近の難民認定申請の一つの特徴でございますが、最近の難民認定者、その半数は実は正規在留者、就労可能な正規在留者の方でございます。また、不法滞在者の方につきましても、その中には本邦で生活支援を行う人物が存在しているというようなケースも少なくないと。こういう事情から、全員が難民事業本部の支援対象者ではないということでございますので、絞って御紹介をしてきたという現状でございますが、本日委員の御指摘踏まえまして、外務省さんとも調整させていただきまして、より効果的な紹介の仕方につきまして検討していきたいと考えているところでございます。  以上でございます。
  102. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一点、この難民申請、いわゆる審査期間がおっしゃるように長くなっている中で、例えばこれはアメリカのケース、米国のケースなんですけれども、ここでは審査期間が百八十日を超えても最終審査結果が出ないという場合はどうするかというと、難民申請者の就労を許可するというような措置、仕組みを一つ持っております。  我が国におきましては、申請中になりますと、これ、在留資格がない限りは就労許可は一切できない。待つしかないわけですね。なぜこれ就労許可というのが出すことができないのか、御説明をしておいていただきたいと思います。
  103. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) お答えいたします。  現在、難民認定申請があり、これを不認定という決定をした対象者の方の中には、自分は本邦での在留を画策するために、図るために難民認定申請をしたんだと自認される方も実は少なくない。このような難民認定制度の悪用者の存在が、先ほど委員から御指摘ございました難民審査の長期化の一つの要因にもなっているところでございます。  このような状況の中で、今御指摘がありましたように、申請後百八十日を超えても結論が出ない、そのような場合に就労許可を与えるというような制度をもし仮に導入したとした場合には、更に一層その制度の悪用、濫用というようなものが心配されるところでございまして、その導入につきましては相当慎重に検討させていただかなければいけないと考えている次第でございます。
  104. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 悪く取ればそうなるわけですよね。ここの辺の難しさなんですよ。  結局、何が問題かというと、やっぱり決定までの平均期間が六百二日間、約二十か月という問題が一番大きいんですよ。政府、支援する、原則四か月ですよ、支援するの。じゃ、残り十六か月、ある意味じゃ就労もしちゃいかぬ、何しちゃいかぬという環境の中で、どうやってこの人たちが生活をしていくのか。ある意味じゃ生活できない、こういうことになってくれば、生活のために、不法就労の問題も含めてですよ、リスクを冒してでも働かなければ生きていけないわけですから。そういう問題を抱えているという問題が、私はこの問題あると思うんです。  実は大臣、私この問題を、私も記憶していなかったんですけれども、改めて見ましたら、二〇〇四年の四月でございます、二〇〇四年の四月に同じような質問をしておるんですね、実は。長かった、やっぱりこのときも。少し短くこれはできないのかという質問をしているんです、二〇〇四年、四年前。そうしたら、このとき入管局長が何と御答弁最後なさっているかというと、これ、読みましょうか。「原則として申請から異議申立ての処理まで六か月以内、つまり少なくとも」、その当時一年ぐらい掛かっているんですよ、「つまり少なくとも半年は短縮するということに努めていきたいと考えております。」と御答弁なさっているんです。  四年たったわけでございます。確かに法改正の中で、さっき入管局長が言ったように、件数が増えてきて大変厳しい環境もある。それはそれとして理解しても、やはりこの期間が長過ぎる問題、もう本当に、その意味では今の現状を踏まえて何か方法としてやらなくちゃいけない問題があるんじゃないかと。つまり、短縮なかなかできないというんであれば、じゃ、就労という問題はどう考えるのか、生活支援という問題はどう考えるのかと、ある意味ではそういったことをきちんと点検、チェックをしていただきたいと思うのですが、大臣から御答弁をいただいておきたいと思います。
  105. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 二〇〇四年四月というと、四年前に同様の質問をされて、答弁を今聞かせていただいたんです。  実は、尊敬する福岡の先輩の木庭健太郎先生のこの質問に対してどう答えるんであるかと、今日早起きをして入管局長に尋ねましたら、就労許可は難しいと、原則四か月しか政府の支援はないそうだよと、それが木庭先生の質問の趣旨だよと言ったら、要するに六か月以内に結論を出すと答弁してくださいと、四年前と同じことを私に言わせようとしたわけですな。だから、先に木庭先生に言われてしまうと、私、これ答えようがないんですよ。四年前のコピーがここにあるわけですね、結局。  だから、これ、確かにえせ難民というのもあるかと思うんですよね。それは実際問題としてあると思うんです。だから、それは非常に難しい問題ですけれども、実際六か月以内に、難民申請からこれは異議申立ての結論が出るまででしょう。この六か月という四年前と同じ答弁を私がするとすれば、現実にそうなるようにどういう体制を整えればいいか私が考える責任を負ったと、こういうふうに思います。
  106. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 率直な大臣答弁をいただき、是非今度は、前回は入管局長答弁でございました、今回は大臣答弁でございます。その意味では非常に重い答弁をしていただいたと私は思っております。  是非、体制的にもなかなか大変な状況もあるようでございます。そういう状況を整えて、この六か月ということを是非とも実現の方向へ、一日でも早く実現していただくことが、ある意味じゃ、この難民の方たちも自分がどう位置付けられるのかというのがいつまでたっても分からないというのが一番これも不安な問題ですので、是非御努力をいただきたいと、このように思っております。  もう一点、今日お伺いしておきたかったのは、警察庁も来ていただいているものですから、取調べの適正化という問題を一、二点お聞きしておきたいと思うんです。  私たち公明党も、公明党の中にこれからの捜査の在り方検討会というのをつくらせていただきまして、先日でございますが、あるべき取調べの適正化についての提言というのをまとめさせていただいて、警察庁の方にも、また法務省の方にも、大臣の方にも申入れをさせていただいた次第でございます。  その提言の一つの柱は何かというと、警察庁に対しまして、裁判員裁判対象事件につき検察庁の試行状況を参考に、被疑者取調べの録音、録画を平成二十年度可及的速やかに試行し、二年以内にその実施状況を検証した上で、その本格実施を検討していただきたいという提言を、要望を行ったところでございます。  この取調べの録音、録画の問題、もちろん今ここに声が出ているように、民主党さんからは法案もこれは出ておるのもそのとおりでございますし、ただ、この取調べの録音、録画という問題は、任意性、真実性の証明とか、取調べの適正化は本当に大事な視点一つなんですけれども、これを取調べを担当する警察と検察、やはりそれぞれ立場の違いもあり、一次的捜査機関、二次的捜査機関、言わば治安維持を担当しているところ、公判を担当するところ、ある意味じゃそれぞれ役割や重要性も違いがあったりする。これは、つまり検察と警察というのはそれぞれこの担当する部分も違うと思うんです。  ただ、まずは私どもとして見れば、検察庁がこの可視化という問題です、試行を踏み込んできた、今は警察庁もこれについて踏み込むべきところまで来ていると思いますし、この点について警察庁もお話を記者会見でされたようなところもありますが、改めて私たちが提言したこの内容について、見解を警察庁の方から伺っておきたいと思います。
  107. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 公明党からの御提言、特に警察による録音、録画の試行という点につきまして、私ども大変重く受け止めておりまして、現在真剣に検討をしております。なるべく早く結論を出したいと思っておりますが、いずれにいたしましても、提言を踏まえまして来るべき裁判員裁判に適切に対応してまいりたいと考えております。
  108. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、検察庁の側にも、これ二十一日だったと思いますけれども、これ最高検察庁から「取調べの録音・録画の試行の検証について」と題する最終的な取りまとめが公表されておりまして、そこで取調べ、録音、録画の本格試行指針が示されております。  この辺、検察庁というか、法務省の方から少し御説明もいただきながらこの取りまとめの概要をお伺いするとともに、今後どう取り組んでいかれるおつもりか、検察庁の方からお尋ねをしておきたいと思います。
  109. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 法務省ですね。
  110. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 法務省から伺っておきたいと思います。
  111. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) ただいま先生からお話のありましたように、最高検察庁は、去る三月二十一日、検察庁における取調べの録音、録画の試行についての検証結果、それから今後の本格的な試行の指針を発表いたしました。  検証結果の概要についてポイントだけ紹介させていただきます。  検証の対象になりましたのは、平成十八年八月から十九年十二月までに試行された百七十件の録音、録画であります。検察庁の試行は、御案内のとおり、被疑者が自白した事件において取調べの機能を損なわない範囲内で検察官による被疑者取調べの相当と認められる部分を録音、録画すると、こういうものでありましたけれども、こうしたやり方による録音、録画は、来るべき裁判員裁判において自白の任意性を効果的、効率的に立証する上で有効な手段になり得るという評価をしております。  かねて、そうした取調べの録音、録画を行いますと取調べの機能に支障を生ずるのではないかという懸念もあったわけでありますけれども、今回の試行のようなやり方であればそうした支障を防止することもおおむね可能であるという意見でございますけれども、しかし、中には録音、録画をするということを告げると、被疑者が供述態度や供述内容を変化させる例もあったということでありまして、この辺りは今後更に試行を重ねて具体的に分析していく必要があると考えております。  これに対しまして、取調べの全面的な録音、録画でありますけれども、これは試行に当たりました検察官の意見といたしましても、それを行いますと被疑者真実の供述を得ることが困難になって真相解明が難しくなるという蓋然性があるのではないかという意見でございます。  なお、取調べの適正確保との関係につきましても一言させていただきたいというふうに思うんでありますが、確かに取調べの録音、録画を行うのは自白後のことでありますけれども、そうした録音、録画に先行して適正でない取調べが行われた場合には、それはおのずと録音、録画時における被疑者の供述内容や態度等に反映されることから、捜査機関はおのずと取調べの適正確保に一層の意を用いることになって、取調べの一部の録音、録画も、取調べ全体の適正確保に資するというような検証結果になっているわけでございます。  今後の本格的な試行の方針について申し上げますと、取調べの真相解明機能が害されたり関係者の保護、協力確保に支障を生ずるおそれがある場合等を除きまして、原則として裁判員対象事件の全件について、自白事件ですね、の全件につきまして取調べの録音、録画を試行していくということでございます。  以上です。
  112. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に、大臣に、今法務省として試行してきたことに対するいろいろな見解もありました。しかし、私どもも申し上げたいのは、この可視化という問題については、将来的には様々な検証をした上でやはり全過程の録音、録画という問題へ進んでいかなければならないのではないかと私どもは思っております。まずは、一定事件につきましては、まず二十年度当初から裁判員裁判の問題もございました。こういったところにまず踏み込みながら、そして、ちょっとお話もありましたが、ガイドラインを作る必要性があるのかとか、様々な問題も含めてこの可視化の問題への取組について大臣のお考えを聞いて、質問を終わりたいと思います。
  113. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) この間、公明党の諸先生方、木庭健太郎先生を含めて大臣室にお越しをいただいて、これからの捜査の在り方検討会という形でおまとめになったものを十分に説明をしていただいた。これは実は、これからの捜査の在り方検討会というのは大変重要なことでございまして、日本の刑事司法制度全体を大きく変えていくべきということにいずれなっていくかもしれない。つまり、今の日本のやり方、例えば、これは取調べというのが、あるいは供述があるいは自白が決定的な重みを持っているわけですが、そうでない捜査方法もどんどん取り入れていったらどうかということも公明党案には若干書いてあるわけです。供述のみに依存しない捜査、これはほとんど今できないわけですが、それを認めていくべきではないかというお考えなんだろうと。  可視化の問題については、とりあえず裁判員対象事件、重要な部分を録音、録画しなさいと。しかし、いずれ最初から最後までの全面可視化というのも検討すべき課題だと考えると。あるいは裁判員裁判対象事件以外もやったらどうかと。今日午前中もその質問があったんです、衆議院で。というのは、志布志の事件は裁判員裁判の対象事件ではありませんから、これは全部に広げなくちゃ意味がないんだよというふうな質問に対して、それは未来永劫裁判員裁判対象事件に限るということではないと思いますと私、お答えをしました。  また、公明党さんからの御提案のときに、録音、録画をしたら一部、もちろんそれからコピーは取るけれども、一部原本はとにかく、つまり何かあったときにこれが原本だというものを封印してしまっておけとか、大変参考になることがいっぱい書いてありましたので、大いに参考にして取り入れられるものは取り入れていくということで考えてまいりたいと思います。
  114. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  115. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  ただいま議論がありました取調べ全過程の可視化の問題については、私も速やかにこの委員会での民主党案の審議に入ることを改めて求めておきたいというふうに思っております。  今日は、残酷な人権侵害が各地で問題となっております外国人研修生、技能実習生問題についてお尋ねしたいと思っております。  まず、入管局に。  政府が外国人単純労働力は受け入れないという方針だと言いながら、九〇年の入管法の改定で研修という在留資格をつくり、九三年に技能実習へ枠を拡大をされました。九七年には、一年だった技能実習を二年に延ばし、当初十七種類だった技能認定職種を六十二職種まで広げ、しかも非実務型研修、いわゆる座学ですね、これが三分の一以上と決められていたものを実質上五分の一にまで緩和をされています。さらに、研修生の受入れは、従業員二十人に対し一人だったものを五十人以下で三人というふうに変えて、結局、三人の従業員のうち一人、そういう割合で研修生の受入れを可能にしたわけでございます。  このような一連の施策、受入れの規制緩和と言ってもいいのかと思いますが、このような施策の基本的な考え方を入管局長に簡潔にお尋ねします。
  116. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) お答えいたします。  確かに委員指摘のとおり、研修制度は、技能実習制度、その後の期間の延長等、一貫して拡充の方向でこれまで進んでまいりました。この原因は、一つの原因というわけには、理由というわけにはいきませんが、一貫して流れておりますのは、途上国へより実践的、実効的な技術技能の移転を図るためにどうすればいいかという観点からそういう拡充が図られてきた、これが一つの理由と考えております。  先ほど指摘ございました、平成元年に研修という名目の在留資格をつくり、受入れの基準を省令等で明定したわけでございますが、これにより中小企業の外国人研修生の受入れが本格的に開始した、この際に出されました要望も、途上国が必要としている技術技能は大企業の技術技能であるよりも中小企業の持っている技術技能であるんだという要望があったことが一つの理由でございます。  また、技能実習につきましても、またその後の技能実習の拡充につきましても、既存の研修制度では技能の熟練度を高めるという点では不十分、実効ある技能の移転という見地から見ると改善するべき点が多いというような御意見を踏まえましてその拡充が図られたという事実がございます。  以上でございます。
  117. 仁比聡平

    仁比聡平君 あくまで技能移転だというその建前を今もおっしゃるわけですよ。入管局長、もう困ったなという顔を今していらっしゃいますけれども、そういう建前がうまくいっていたなんていうのは言えないでしょう、ここで。  実際には、その下で外国人単純労働者が急速に増大して、特に団体管理型で、逃走防止だといってパスポートを取り上げる、給料の天引きで強制貯金をさせる、物を言えば強制帰国だといって脅す。もしそうなると本国で巨額の保証金や罰金を強要されるために、月に百六十時間とか二百時間とかですよ、こんな想像を絶する無法な長時間労働を強いられる、そんな奴隷労働と言われる実態が広がっているわけです。研修ならあり得ないはずの残業を強いられながら、その残業代が支払われないと、そういう訴えまでございます。  日本の物づくりの現場で偽装請負という働かせ方が大問題になってきましたけれども、これはもう研修ではなくて偽装研修なんじゃないのかという声が出るのは私は当然だと思いますし、その結果、労災、中でも死亡事故が多発し、この過酷な状況に耐えられなくて失踪するという労働者が増加をしているということ、ここから見ても許されない人権侵害であることは間違いないわけですよね。  今も技能移転というお話がありました。そこで伺いたいんですが、技能移転、つまり研修、技能実習を経た外国人労働者が本国に帰ってどのようにその成果を生かしているのかということについて調査検証をしたことが、法務省、ありますか。
  118. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) お答えいたします。  入国管理局が直接調査したという例、平成十八年にございます。平成十八年に実は八百七十六人の研修生、技能実習生からお帰りになった方、これを対象にアンケート調査をさせていただきまして、お帰りになってどこで御活躍になっているかというようなことを調べさせていただきました。  その結果、簡単に申し上げますと、七割の方が派遣前の企業にお戻りになって御活躍になっている。それから、一割の方は派遣前の企業とは異なるところに行かれたんですが、同じ職種、会社は変わりましたけど、多分日本で習得した技術というのを生かして御活躍なんだろうと思います。また、数%の方ではございますが、更に上級の大学、大学院等に御進学になった方もいらっしゃるというような結果になっております。
  119. 仁比聡平

    仁比聡平君 何言っているんですか。一年間に入国するその数というのは六万人をはるかに超えているんでしょう。八百七十六人ですか。そんな調査をやったからといって、どうして技能移転の検証をやったなんてことを言えるわけ。昨日、レクのときには、厚生労働省、経済産業省それぞれ伺いましたが、そのような検証はやっていないということでございました。  外務省が対象のごく限られたアンケート調査をやっておられると思いますけれども、これは例えば中国で四十一人、わずかそのような人たちのものを調べたと、そういう中身ですね。その数だけで結構です。
  120. 山崎純

    政府参考人山崎純君) お答え申し上げます。  外務省は、平成十年度以降、毎年、帰国技能実習生フォローアップ調査を送り出し国において実施しております。帰国生本人及び送り出し企業、送り出し機関の責任者との面談によるヒアリング調査、アンケート実施を通じて、制度の評価、同制度により取得した技術技能の活用状況等を調査しております。  これ、一番最近でございますれば、ベトナム、平成十八年、また十九年、中国に実施しております。
  121. 仁比聡平

    仁比聡平君 中国の対象者の数は。
  122. 山崎純

    政府参考人山崎純君) お答え申し上げます。  一番最近の数字で、今手元に持っておりますのはベトナムでございますが、企業四十社、帰国生九十四名からの回答を得ております。
  123. 仁比聡平

    仁比聡平君 本当にごくわずかの例を尋ねただけで、まともな検証をしていないんですよね。  政府は、この研修は労基法の適用外だというふうに言ってきました。しかし、実際に日本で働いている、つまり受入れ企業の指揮命令によって労務を提供して、残業代、そういった対価を得ているという実態があるんだったら、給与はもちろんのことですけれども、労基法の適用を始めとして、労働者として保護されるのは当然なんじゃないですか。労働基準行政について伺います。
  124. 森山寛

    政府参考人森山寛君) お答え申し上げます。  これ、もう委員今まさに御案内のとおりでございますけれども、外国人研修生の実務研修、これは在留資格上の研修という非就労資格での在留している者が行う活動でございまして、労働基準法上の労働ではないというふうに認識をしているものでございます。  ただし、出入国管理機関におきまして、外国人研修生が実務研修の範囲を超えた就労を行ったと認める場合において労働基準関係法令上の問題があると認められる場合には、監督機関における監督指導等を行い、適正な労働条件の確保を図ることにしているところでございます。
  125. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、もう一回分かりにくいから聞きますけど、在留資格は確かに研修でしょう。だけれども、実際に例えば労基署が立入調査をした、そうしたら、技能実習生は労働者ですからね、技能実習生と一緒に研修生が全く同じ仕事をしている。あるいは、技能実習生は二年目からそうなんであって、最初は研修生として入国しているわけでしょう。最初からずっと同じ働かされ方をしてきましたという話が出てきた、そのときに労基署は見て見ぬふりするんですか。
  126. 森山寛

    政府参考人森山寛君) 繰り返しになりますけれども、この研修というのは非就労資格での在留資格でございまして、例えば、研修と労働と区別するためには、例えば研修の目的で行われているのかどうか、あるいは全体的なスケジュール等がどうなっているのか、あるいはそういうものの最初の計画等の文書等を把握する必要がございますし、そういう実態を踏まえた上での判断をしなきゃいけない問題でございます。それで、私ども、出入国管理機関と連携を図ってこういう問題について対応していきたいというふうに考えているところでございます。
  127. 仁比聡平

    仁比聡平君 現行制度になってからでもほぼ十年なんですよ。九〇年からすればもう十八年もたつんですよね。現実に無権利状態に置かれている実態を直視して労働者としての保護を検討するというのが、私は政府全体の少なくとも責任だったと思う。だけれども、それをずっとしてこなかったことはもう今の答弁で明らかでしょう。  技能移転だという建前で、労働者ではないというふうに言って労働者保護の外に置き続けてきたことが、私は残酷な人権侵害を生んできたんだと思います。そして、その実態が日本の労働条件全体を押し下げることになっている。事実上、安上がりの単純労働力の受入れ政策を国が進めてきたと私は言うほかないと思うんですよね。こうした制度の下で、あくどい研修生ビジネスとでも呼ぶべきそういう構造を生んでいるのではないかと私は考えております。  お手元に資料をお配りをいたしました。一枚目の新聞記事にございますように、昨日、三月の二十四日、名古屋の入国管理局に愛知県労働組合総連合が大臣あての要請書を出したということなんですね。中を御覧いただければ分かりますように、去年の五月からこれまでに二十件もの外国人研修生からの相談を受けて、その解決のために駆け込み寺になって事態の打開に必死で取り組んでこられた上での要請なんです。私は大変重いものだと思うわけですけれども、この要請書の続きに、最後に三枚付いておりますが、この相談の実例の要約が表になっております。  この右端の方の組合名、これは受入れ組合ですね。それから、一番右の送り出し機関というところを見ますと、同じ名前がたくさん出てくるわけですよ。特に、受入れ組合がアケボノというところ、それで送り出し機関はコクヤンというこの組合せ、幾つも出てくるんですが、例えばこれについて、この相談例一、二のケースについては入管が不正裁定をされたというふうにこの表にございます。  不正裁定をされたというのが事実か、そしてその事案概要と、ここに出てくるアケボノ、コクヤンというこのものの実態についてつかんでいることをここで紹介していただきたいと思います。
  128. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) 個々の企業の個別の案件の中身についてのコメントはちょっと差し控えさせていただきますが、不正行為の認定をしている、あるいはそういう調査をしているということにつきましては、仁比委員指摘のとおり、もう既にしかるべく対応をさせていただいているところでございます。
  129. 仁比聡平

    仁比聡平君 何で答えられないのかと私はやっぱり思うんですけれども、この申入れ書も見ていただきながら私の方で少し紹介をいたしますと、この二十件のそういった相談にほとんどに共通をしているのは、最低賃金違反、強制貯金、そしてパスポートの取り上げなわけです。  愛労連によりますと、このコクヤンから、名古屋、岐阜、三重を中心に千五百人ほどのベトナム人労働者が派遣されてきているということなんですね。この研修生たちは、出国の前に、残業代が時給三百円や六百円という契約書類にサインをさせられたというふうに言っております。私、この契約書というのを入手して、ここでお見せするわけにいきませんけれども、読んで大変びっくりいたしました。研修手当は一年目四万五千円、二年目、三年目は五万五千円、残業手当は時給三百円というふうに書いて、それにサインさせているんですよ。つまり、送り出しのときから日本の最低賃金法には満たない時給三百円というのを残業代として定めている。そして、その中には、研修期間内に失踪したり強制送還されたりした場合にはコクヤンに日本円で二百五十万円の賠償を行うという約定が定められていて、その担保のために保証金を事前に支払わされるわけです。多くは米ドルで一万ドル。この金額はベトナムの農家の平均年収から考えたら二十六年分に当たると、そういう調査もあるわけです。  多くのベトナムの青年が家や田畑を担保にしてこの送り出し機関によって日本に送られてくる。そういうベトナム人たちにとって、ベトナムに返すぞと、強制送還、送り返すぞという言葉がどれほど恐ろしいことか、これは大臣も想像がお付きになると思うんですよね。  さらに、この送り出される青年たちが研修のための自己負担金とは別にそのような保証金を支払わされていて、そして罰金まで取られることになっている。さらに、中間ブローカーというのが介在していて、日本で受け入れる企業は、送り出し機関の、つまりこの場合でいえばコクヤンという派遣局、受入れの機関である協同組合、そしてそのブローカーに合わせて一人月五万円以上を支払っていたと、そういう証言もあるわけですね。  この要望書に補足資料というものが三ページ目に付いておりますけれども、ここではさらに直接コクヤンに受入れ企業が管理費を支払っていたとか、研修生、実習生は帰国をしたら二か月分の給料をコクヤンに渡すことになっているとか、あるいは、受入れ企業と研修生を同時に話を聞いてみたら、日本に来るための旅費、これは両方が自分は支払ったというふうに言っていて、二重払いをさせている、二重取りをしているのではないかという強い疑いも生まれているわけです。  もう少しお聞きいただきたいと思うんですけれども、このような送り出し機関が日本側の受入れ組合あるいは受入れ側、ここが主導して設立されたのではないかという重要な指摘がこの申入れの中でなされています。それはエイラインという名前の、株式会社エイラインディベロップメントというところのようですけれども、ここは先ほど不正裁定を受けたところに関与しているアケボノというこの協同組合も含めて十の協同組合から成るグループをつくって、そのうち岐阜県中部繊維技術統合協同組合、Gネット協同組合、岐阜繊維システム開発協同組合、岐阜ソーイングテクニカル協同組合という、この四つの協同組合はいずれも同じ住所、そして人的なつながりも極めて濃いという、そういう実態であることがこの労働組合の調査で明らかになっているわけです。  このエイラインの受入れマニュアルというのがある。つまり、ベトナムから日本に来たその研修生たち最初の研修をする入国時研修のマニュアルが内部告発で私もここに持っております。  ここの冒頭には、組合が研修生を呼んだのではない、会社、つまり受入れ会社ということだと思いますけれども、受入れ会社は直接ベトナム人を呼び寄せることができないので組合を通して呼んだのだと説明をした上で、大事な話として、契約内容の確認をするようにマニュアルはなっているんですね。  研修生の皆さんが日本に来た目的は何ですか。それは、在留資格は研修生ということになっている。これは先ほど入管局長も言われたように、本来の目的は日本の優れた技術を勉強する、学ぶということになっている。しかし、実際は仕事をする、働くんですということがまず研修の第一項目なんですよね。  研修生は、残業や休日出勤など本来してはいけない、していることが入管にばれてしまうとベトナムに送り返される、大変なことになるとこの研修生にまず研修をして、だから、どんなことがあったって自分たちのその苦しみ、これからどんなことになるか、その研修を受ける時点では知らないんだと思いますけれども、そこに耐えさせるような、縛り付けるような、そんな研修をこのエイラインというところは行っているわけです。  こんな実態が許されるのかと。どうなんですか。入管局長、そして大臣伺います。
  130. 稲見敏夫

    政府参考人稲見敏夫君) 今委員から御指摘いただきましたようなケース、もちろん私ども事実を調査をいたしますが、事実を確認できれば、今のお話の中で、まず受入れ機関につきましては、事実が確認できた場合には当然に不正行為に当たるということになります。  それから、これは送り出し機関もかなり問題だと思いますので、送り出し機関につきまして御指摘のような事実が確認できた場合には、当該送り出し機関からの受入れは認めないという措置をとって対応することになろうかと思います。
  131. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) ちょっと前段の方の話になるかもしれませんが、昨日、私、参議院の予算委員会答弁をいたしておりまして、それは読売新聞に出ておりますが、研修一年、技能実習二年という分け方でやっているし、本来の目的が技術の移転、国際貢献であることはもう御承知のとおりでございますが、実際に一年目の研修のときにも仕事をしているケースが非常に多いので、研修と技能実習を最低賃金法とかあるいは他の労働法上仕分をする必要はないのではないかと、働かせている以上は最低賃金法等を適用したらどうだということを答弁したことが書かれてありますので。  今先生のお話をいろいろ聞いておりますと、いろんなブローカーが入ってくる、送り出し機関が保証金を取る。その送り出し機関というものも場合によっては日本から金出してつくらせているという可能性があって、そこでまた搾取をして、より太っていくという。大体、研修、技能実習などという、本来は技術移転という立派な目的を持ったものを食い物にする、何でも商売にする人間は出てくるんだろうと思いますが、これはよほど厳しく見ていかないと、こういうものをはびこらせれば、もう研修も技能実習でもなくなる、安易な労働力を売るという、大変なことになると思いますね。  私はたまたま「サンダカン八番娼館」の山崎朋子さんの小説というか女性研究史、あるいはその続編等を最近ちょうど古本屋で手に入ったものですから今読んでおりますが、女衒という妙なやつらが非常に貧しい天草島の女性をシンガポールに、ペナンに、そしてサンダカンに売り飛ばしていく、何かそういうことに近いようなことがこの立派な目的を持った研修・技能実習制度の中で行われることがもしあるとするならば、これはもう絶対許されてはならないので、入管局を厳しく指導してまいります。
  132. 仁比聡平

    仁比聡平君 私はこれ、今日はもう時間なくなりましたから、引き続き取り上げていきたいと思いますけれども、何とおっしゃいましたか、つまり、建前といいますかね、これがいい制度があって、その中でたまたま起こっているというような、そんな話ではないという、もはやなくなっているということを大臣是非認識をしていただきたいと思うんですよね。  といいますのは、このマニュアルの中見ますと、金属系の職場では研修生も実習生も残業代は一律六百円ということがあって、繊維関係の産業は残業代一律三百円、強制貯金は三万円というようなことまであっているわけですよ。そうすると、グループ組合が受入れ企業にそういった営業ですね、大臣もブローカーというふうにおっしゃいました、そういうことをやっているんじゃないか、だからこれほど同じ構造の問題が中部でも、そして全国各地でも起こっているんじゃないのかということなんですよね。  これはもう本当にあくどい、研修生を食い物にする、外国人の労働者を食い物にして使い捨てにする、ぼろぼろにしてしまうという、そういう汚いやり方ではないですか。そこへの認識を私は経産省にも外務省にもお尋ねをしたかったですけれども、時間がありません。大臣、一言だけいただいて、今日の質問を終わりたいと思います。
  133. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 将来的にこの研修・技能実習制度をどう見ていくかということは、長勢私案があったり厚労省案があったり経産省案があったり、いろいろありますよね。  そもそも日本の雇用というものをどう考えるか。例えば、三Kみたいに日本人がやりたくないものは外国人に単純労働させればいいんだという考え方もあるでしょうし、日本にもニートとかフリーターとかいっぱいいるんだから、それはなるべく外国人を労働力としては入れないで、日本人で全部労働の需要は賄っていくべきだとか、いろんな議論があるから大議論が必要だと思いますが、少なくとも、少なくとも研修・技能実習制度というものを安価な外国人労働力の購入方法と考えて、そこにまたブローカーが群がっていろんなところにもうけが発生するような在り方だけはとにかく直さなければいかぬと、こう思います。
  134. 仁比聡平

    仁比聡平君 終わります。
  135. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  私は、前にも質問をいたしました徳島の刑務所における言わば虐待事件について質問をさせていただきたいと思っています。  二月の十九日の日に、十八名の受刑者らが徳島刑務所の医師、M医師をいわゆる肛門虐待、これは肛門に指を入れてかき回すということのようでありますが、これについて特別公務員暴行陵虐罪等で刑事告訴、告発をいたしました。また、当委員会の要求によりまして、二月の二十二日の日に約八十通余りの受刑者のカルテが開示をされまして、私も拝見をいたしました。大変膨大なものでありますので、いろいろ分かっている人にちょっと見てもらったということでございます。  本当にこれを見ますと、パソコンで打ち直してみますと大変なことが書かれておりますが、私は、この受刑者の中で一人、自殺をした人がいると。私はこのM医師の暴行が原因ではないかという、そういう見方をしているわけでありますが、最初に、この自殺をした、Tさんというふうに申し上げておきましょう、T受刑者についてお聞きをしたいというふうに思っています。  このカルテの中にやっぱりTさんのカルテもございました。そういたしますと、このTさんも何度かこのM医師から直腸指診をやられていると、肛門に指を数本入れられてかき回されると、こういうことをやられておりまして、このTさん、自分の義理のお母さんに医療に対する不満を手紙で訴えておりましたし、この義理のお母さんも徳島刑務所の職員に対して適切な医療を求めていたと、こういう経過がございます。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  このTさんでありますが、自殺する一年前に徳島刑務所の当局に要請願、これを出している。刑務所というよりも自分の担当のM医師に要請願というものを出しております。亡くなる一年前です。ここにはこういうことが書いてあります。  貴殿は、貴殿というのはこのお医者さんのことでありますが、貴殿は病気を真剣に診る能力がなく、また受刑者ということでいいかげんな診断、診察及び治療しかせず、治療の放置、拒否が多く、日本国憲法十三条及び二十五条、国家公務員法にも違反しており、どれを取っても違法であり、受刑者及び処遇者、これは刑務所の職員のことでありますが、処遇部も大変迷惑していると、医務課長という職より辞任していただきたく要請いたしますと、こういう要請願をその医師に対して出しておるわけでございます。  これは私は開示されたカルテの中でこれを見付けて現認しておりますが、これは間違いないと思いますが、矯正局長、ちょっと確認をしてくれませんか。
  136. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 今委員がおっしゃいました、書面上、要請願という名前になっております紙、カルテの中にあったことはそのとおりでございます。
  137. 近藤正道

    ○近藤正道君 これがM医師のカルテの中に一緒にとじられて今回開示されたわけであります。  つまり、自殺の一年前にそういうものを出していたわけでありますが、平成十七年の十月の十七日、この日は、このTさん、四十度近い高熱、しかも激しい嘔吐、こういう中で直腸指診をM医師からやられていると、これがカルテからもうかがえるところであります。さらに、十月の十九日、二日後でありますが、この日もかなりの高熱、そして激しい嘔吐、しかもレントゲン撮影等で肺にうみとか肝臓にうみやあるいは水がたまっていると、こういうことが診断の結果明らかなようでありますが、こういう中であるにもかかわらず抗生物質を経口投与されたまま放置されていた、こういう事実がございまして、その四日後に自殺をしているわけでございます。  自殺をする際に遺書が残っていたようでありますが、衆議院における質疑の中で、法務省は、遺書は内縁の妻に交付したというふうに答えているようでありますが、この遺書の写しとかあるいは遺書とは別に最後の手紙、こういうものがあったんではないかというふうに思われておりますが、もし持っているんなら、あるんなら、これを当委員会の方に出していただきたいと、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  138. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 今委員が遺書というふうにおっしゃいましたのは、恐らくノートの紙に御本人がお書きになったものが確かにございました。表側と裏側に別々の記載がございまして、一枚の紙でございますのでこれを分離をするというわけにいきませんで、亡くなった後、遺族でありました内縁の妻の方にこの表裏一体となったものを差し上げたということでございまして、それ以外に別の何か手紙のようなものが残っていたかということでございますが、それについて、そういうものが残っていたという報告は受けておりません。
  139. 近藤正道

    ○近藤正道君 私どもの調査では、遺書あるいはそれに準ずるようなものが当時刑務所当局によって押さえられていたというふうな話を聞いておるんですが、この点については、あるかないか、ちょっと今のところ食い違っておりますけれども、是非委員長の方からこの辺の調査、あったら出していただくように要請をしていただきたい、後で協議をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  140. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまの近藤委員の申入れにつきましては、後刻理事会で協議をいたします。
  141. 近藤正道

    ○近藤正道君 今のTさんについてのカルテはいろんなことが書いてあります。非常に詳細に書いてありますが、それ以外にも、八十通というかなり膨大なものでございまして、これをいろいろ検討いたしますと、受刑者に対してこのM医師、直腸指診を何度もやっておりますし、あるいは食事を与えない、つまり絶食とかあるいは投薬の打切り、こういうものを頻繁にやっております。あるいは検査と称する暴行、つまり肛門関連だけではなくて、痛覚検査、つまり痛いかどうかを調べるというふうに称して、足の内股部分を集中的に執拗につねり上げる、こういうふうな記載がカルテの中に出てくるわけでございます。私は、これらを見まして、あるいは専門家にもちょっと意見を聞いてみましたけれども、医療行為の外形を取っているものではあるけれども、必要性だとかあるいは相当性を逸脱していると、明らかに医療ではなくて虐待あるいはこれに近いんではないかと、こういうふうな思いが非常に強くしておりますが。  大臣は、このカルテは見ておられませんですよね。もし見ておられないんなら、是非見ていただきたい。とりわけ、少なくとも自殺をしたTさんのものについては見ていただきたいと思いますが、どうでしょう。
  142. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私、聞いた話だと、そのカルテの写しというのがこれくらい、三十センチか四十センチぐらいあると。私、一部を見ましたけれども、すごい字でなぐり書きで非常に読みにくいので、ちょっと、相当力を入れなくちゃ読めないようなものだし、私自身がこんなに全部読める時間は全くありませんけれども、どういうカルテかということは見ております。
  143. 近藤正道

    ○近藤正道君 私もとても自分では読めなかったんですけれども、そういうものに詳しい市民運動の皆さんにちょっとパソコンで全部打ち直していただいて、少なくとも自殺をしたTさんのカルテは一応全部読みやすくして、読んだんです。是非、もしよろしければいつでもお貸しいたしますので、是非大臣にもこのカルテを見ていただきたい。現物と対照させながら正確に活字化してありますんで、見ていただきたいと、これ要望申し上げておきたいというふうに思っています。  この徳島の刑務所でございますけれども、LB刑務所、つまりロング、長期、それで、かつ初犯の人ではなくて再犯の人が非常に多い、こういう刑務所でありまして、LB刑事施設というふうに言っておるんですが、これ全国で五か所、徳島、旭川、宮城、岐阜、熊本、こういうふうに五つあるわけでありますが、このLB刑事施設の中で徳島刑務所の医療関連の不服が非常に多いんですよ。  今日、皆さんのお手元に配付をいたしました配付資料の下の方を見ていただきたいというふうに思いますが、徳島刑務所については刑務所当局に対する受刑者の不服申立てが多いんですけれども、宮城と規模としては大体同じらしいんですけれども、宮城と比較しても、あるいは他のLB受刑施設と比べても、受刑者の不服申立ての数が非常に多い。それも医療関連が多い。肛門関連の不服申立ては非常に、断トツに多いと。ほかのところなんてほとんどない。その他医療課の暴行関係で言わば不服申立てをする。ここだけなんですよ、多いのは。この数字を見ていただくと、断トツに多いと。これは私、法務省に資料を出していただいて、私が分かりやすいようにまとめたんですが、なぜ徳島刑務所にこんなに医療関連の不服申立てが多いのか。大臣、御覧になってどう思われますか。
  144. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 徳島刑務所の問題は、もう昨年から委員会でも何度となく質問を受けてまいりましたし、様々なマスコミの報道もありましたが、今近藤先生から配られた、元々法務省開示資料のようではありますが、この数字を見ると、やはり突出して異常な姿であると認めざるを得ません。
  145. 近藤正道

    ○近藤正道君 さらに、医療関連の不服申立てが非常に多いというこれとも関連するんですけれども、徳島刑務所は、同じLB型刑事施設の中で年間受刑者一人当たりの薬剤費が非常に低い。これは配付資料の上の表を見ていただきたい。これも私が法務省から資料を出していただいてまとめたものなんですが、これを見てお分かりのように、他のLB施設の大体四分の一から五分の一。何でこんなに低く抑えているのかよく分からないんですが、断トツに低い。これ、どう思われますか。
  146. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) いや、私もこれ見ると、今度は突出じゃなくて、一つだけべこっとへこんでいる数字ですよね。しかも、これは総額じゃなくて一人当たりの薬剤費ですから明確に比較できるわけで、例えば平成十八年度で旭川が三万五千九円、徳島五千百三十七円だったら、七倍の違いですよね。これ常識的には考えにくいので、徳島刑務所の下の欄の医療関連の不服申立てが多いということと一人当たりの薬剤費が断トツで少ないことと、どうしても結んでしまいますね。
  147. 近藤正道

    ○近藤正道君 私もこれを作ってもらってまとめていながら、もうとにかく驚いているんですけれども、告訴・告発事件を見ましても、この医療関係の不服申立てが行われますと、とにかく薬に金掛けないんだという話をやっぱりM医師等がばんばん言うわけですよね。そういう中でいろんなことが起こっていると。  そして、前回も申し上げましたけれども、改革の結果生み出された刑務所視察委員会、徳島刑務所の視察委員会、これが何度も徳島の刑務所の中の受刑者処遇に問題ありと。とりわけ医療関係に、医療に関連をして不服が多いと。何とかしなさいと、してもらいたい、調べてもらいたい、こういう要請をしたにもかかわらず、これは全部無視をされてきました。  そして、昨年、いわゆる暴動といいましょうか、それが起きまして、今皆さん調査をされているわけでありますが、こういう、今日お示しをした医療が非常に劣悪に抑えられている、そして医療関係の不服が多い、これが私はまさにこの暴動の、受刑者のいわゆる暴動の背景あるいは要因になっているとしか思えないんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  148. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 今日も何度か答弁があったかと思いますけれども、法務省矯正局の調査検討チーム、吉田官房審議官をキャップとしているわけでございまして、これ懸命に調査をしてまいりました。先ほど先生から御指摘があったカルテ等については外部の医師に分析をして意見をいただいておりまして、意見書も踏まえて調査報告の取りまとめを行いますので、近日中に私のところに上がってくるであろうと、こういうふうに思っておりますから、その結論をいましばらく待ちたい、あるいは先生に待っていただきたいとは思いますが、こういう数字を見ますと、暴動と関係が全くないというのは考えづらい情勢だと思います。
  149. 近藤正道

    ○近藤正道君 私はこの配付資料を見ながら、やっぱりその矯正管区、矯正の管区ですね、それと矯正局、法務省の、ここの責任は免れることはできないんではないかと思えてしようがありません。やっぱりこのM医師の責任も厳しく問うべきだろう、まさに異常としか思えない、こういうふうに思っておりまして、今まで法務当局はこのM医師の行為、問題全くありませんと、こういうふうに言っていました。今捜査中でありますので余り踏み込んだことは言えないんではないかというふうに思いますが、少なくとも当不当の認識ぐらいはしっかりと今の段階で示しても私は構わないんではないかと。これだけ事実が明らかになってきた以上は、少なくともある程度の方向性ぐらいはこの委員会で示してもおかしくないんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  150. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 委員の先生方にもコピーをすべてお渡しをしておりますけれども、この百八十件程度のカルテ、これを外部の医師に一つ一つ見ていただいております。C型肝炎のものが百事例ぐらいあるわけでございますから、大体八十事例ぐらいが直腸指診にかかわるものであったり、あるいは投薬にかかわるものであったりしております。その一つ一つの記載を外部医師に見ていただいて意見書をいただいておりますので、その意見書の中身を今調査検討チーム、読んで勉強しているところと聞いております。  したがいまして、その結果を待って、我々としての意見も申し上げたいというふうに今思っておる次第でございます。
  151. 近藤正道

    ○近藤正道君 遅過ぎるんじゃないですか。去年の夏から議論ですよ。しかも、私が昨年の暮れに聞いたとき、皆さんは全く問題がないと、いろいろ調べたけれども問題ないといったん答弁しているわけですよ。そのときの報告書を私は是非見たい。一体何を調べて、一体どういう脈絡ある、論理的な流れの中で、事実認定の下で問題ないというふうに言ったのか。まあ、これから出てくる調査結果は期待をして見ておりますが、同時に、以前全く問題ないというふうに認定をしてこの問題にふたをしようとしたこの報告書も私は是非明らかにしていただきたいと、これ強く申し上げておきたいというふうに思っています。  当時の福田さんという矯正の医療企画官、この皆さんの後ろの席にも以前おられましたけれども、この方は、当時の私の議員会館におけるヒアリング等の際には、専門的な判断だからM医師の直腸指診が多過ぎるとか少な過ぎるんではないかと、そういう判断は軽々にはできないと、一般的に直腸指診というのは推奨されているそういう医療方法だと、こういうふうに言っていたんですよ。私素人だったから、ああそうなのかなと思っていたら、何、今日お示ししたこの配付資料を見たら、肛門関連の医療行為をやっているのはLBの刑事施設の中で徳島刑務所だけじゃないですか。ほかのところなんか全くやっていないですよ。私が素人だと思って、いや、腸は胃が悪くなったらみんな肛門に指入れるんですよと、こんなの一般的にやっていますよと彼は平気な顔をして言ったんだけれども、こんなのどこでもやっていないじゃないですか。是非、私はこの福田矯正医療企画官の話が聞きたい。  ですから、本件の関係者、つまり前の浅井さんという徳島刑務所の所長さん、そして今の荒島さんという刑務所の所長さん、この二人に是非参考人として出てきていただきたいし、私に対して直腸指診というのはもうどこでもやっているんだと、一般的な医療方法なんだと、こういうふうに言った福田という矯正医療企画官、この三人に是非この委員会に参考人として出てきていただきたい。  これ委員長是非検討していただきたい、要望申し上げます。
  152. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまの近藤委員の申入れにつきましては、後刻理事会で協議いたします。
  153. 近藤正道

    ○近藤正道君 それで、こういう問題の背景には、やっぱり刑務所の医師の不足の問題があるんではないかというふうに思っています。それにしても、徳島刑務所は異常ですよ。異常だけれども、しかし今の刑務所の中における、まあ世間一般医師不足だけれども、さらに刑務所の中の医師不足というのはかなり深刻なものがあると。  日本弁護士連合会、あるいは国連でありますけれども、刑務所の医療を法務省から厚生労働省へ移換して、一般病院の支所を刑務所内に置く方法がいいんではないかと、こういう提言を以前からやっております。それは受刑者も、一般、我々塀の外にいる者も同じやっぱり医療を受ける、そういう権利があるという点からいけば、私は保安の担当者と医療担当者がイコールというのはやっぱり問題があると。むしろ、医療担当者という意味では厚生省が所管をして、厚生省が刑務所の中にも乗り込むと、こういう方が私はベターではないかというふうに思っておるんですが。  しかし、すぐこの間からPFI刑務所ということで美祢の社会復帰支援センターがこういうことをやっています。美祢の市立病院が医療も担当していると、こういうことでもう既に一部始まっておりますが、美祢で何か支障があるのかどうかお尋ねをしたいと。支障がないんなら、是非私は刑務所の医療部門はむしろ厚生省が担当するということを是非鳩山大臣の下で内部でやっぱり検討する、こういう方向で議論を起こすことはできないだろうか、こういうふうに思えてしようがございませんが、御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  154. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 確かに、美祢の社会復帰促進センター、美祢刑務所でございますけれども、国が診療所を開設し、その管理を山口県美祢市に委託するというやり方、そして美祢市職員である医師、美祢市立病院勤務の方が美祢社会復帰促進センターの管理者となると。そして、美祢市立病院勤務の職員が非常勤医師及び看護師等として美祢社会復帰促進センター診療所に勤務していると。それから、婦人科の診療所の場合は内側からも、つまり塀の内側からも一般市民も両方が診療を受けられるという、これは私も現場に行って見てきましたけど、残念ながら産科、婦人科、医師不足で医師が確保できないのでオープンしていませんけど。  いろんなやり方があるので、先生が先ほどからお話があっているような事柄についてもこれは配慮しなければならないと思いますが、ただ、やはり刑務所というところは、危険業務の叙勲を受けることができますね、刑務官の方たち等。非常に難しい職場だろうと。その職場の特殊性というのを考えた場合に、厚労省に医療を任せることができるかどうかというのはそう簡単に結論は出せないかなと、職場の特殊性ゆえに、そんなふうに思います。
  155. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 近藤正道君、質疑時間が終局しております。
  156. 近藤正道

    ○近藤正道君 はい。  しかし、いずれにしても、特区で一つの風穴を空けたわけでありまして、制度が非常に良ければこれはやっぱり全国展開するということは、特区の制度でありますので、是非検討していただきたいと思いますし、いずれにいたしましても、告訴、告発がM医師に対してはやっぱり出ておりますので、これからもこのM医師の責任の問題等については私どもも関心を持っておりますので、是非しっかりとした透明の状況の中で早期に一つの結論、方向を出していただきたいと強く要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  157. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時二十七分散会