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市川一朗君 大体の事情は分かりましたけど、
日本は大体、若干主食用にも回していますけれ
ども、あとは加工用、それから援助ですよね。ですから、第三国に売るとなるとまた話は大きくなってくると思いますが。
私の地元なんかで
ミニマムアクセス米の話をしますと、もう非常に単純なんで、みんな、生産調整をしろと言っておいて、
ミニマムアクセス米か何か知らぬが輸入するというのはおかしいじゃないかと。しかも、そういうお米があるんだったら、もっとアフリカとかそういうところへ援助に回せばいいじゃないかというのは、プロの世界でもそうですが、茶飲み話でもよく出てくるわけですから、そういった政治的には大きな流れといいますか、感覚の中でこの問題を処理していかなきゃいけない問題だなと思いますが。
さて、今日のアメリカの発言自体が多分一過性だと私は思いますけど、しかし、世界の
食料需給の変化というのは、今日も何回も取り上げられましたように、やっぱり一過性のものではなくて長期的なものではないかと思うんですね。
私、まだ政治家になる前に見た論文なんですが、これは今や有名な論文ですけど、
平成六年九月にアメリカで一つの論文が発表されまして、論文の題名は、今コピー持っていますが、フー・ウイル・フィード・チャイナ、直訳しますと、だれが
中国に食べ物を与えるかとか、だれが
中国を養うのかというような論文なんですが、レスター・ブラウンの論文です。
これはすごいことを言っているなと思ったんですが、どうもこれが今当たりつつあるんじゃないかなと思うんですよね。十四年たちますよね。すぐその後、
日本語の論文が出たんですね。そのタイトルは高度成長を続ける
中国の胃袋の脅威となっているんですね。フー・ウイル・フィード・チャイナを高度成長を続ける
中国の胃袋の脅威と訳したわけですね。つまり、内容は大体そういう内容なんです。
まあ御存じの方がほとんどだと思いますが、ちょっと出だしだけ読んでみますと、
日本では経済発展による穀物の需要増と、今世紀半ば以来の工業化による耕地の急激な減少が相まって、一九九三年には輸入穀物への依存度を穀物総消費量の七七%まで押し上げた。この同じ力が現在の
中国にも作用している。一億二千万の
日本国民が、穀物の大
部分を賄うため世界市場に目を向けるのも問題だが、約十二億もの
中国国民が同じことをすれば、至る所で
食料価格がつり上がり、アメリカを始めとする輸出国の輸出能力はすぐに需要に圧倒されてしまうはずだと。
これは
平成六年の論文でございます。この一種の予言的な問題が何か現実になってきたんじゃないかなと。今、世界で起きている現象というのは、アメリカがトウモロコシを
バイオ燃料原料として大量に使い出したことが大きな要因ではあると思いますけれ
ども、もう一つ根底にある問題が
中国の高度成長だと思います。正確に言えば、
中国を中心とする新興国と言った方がいいかと思いますが、現在の
状況はまさに
中国そのものだと思うわけでございまして、これが現実になってきたと。
このことを踏まえて議論すべきことというのは私自身でももうたくさんありまして、今日はとてもそれを一々取り上げる余裕はないわけでございますので、一点だけ絞って、WTOの問題だけ御
質問してみたいと思うんですが。
今、
WTO農業交渉はまさに大詰めを迎えているわけでございます。これも先ほど御
指摘がありましたように、今のWTO交渉というのは、ウルグアイ・ラウンドで決着した貿易自由化は十分ではなかった、特に農産物の自由化は中途半端であった、もっと関税の引下げなどを行い、農産物の自由化を進めたいという輸出国の強い意思によって開始されたと思います。
二〇〇一年の十一月のドーハ閣僚
会議でドーハ・ラウンドが立ち上がりましたが、その際に最重要
課題として貿易を通じた途上国の開発というのも入りましたから、輸出国の思惑だと言い切ってしまう私の
説明には、あるいは政府としては正式にはそうだとは言えない立場があろうかと思いませんけれ
ども、とにかくドーハ・ラウンド開始の前提として余剰農産物の輸出促進といった側面があったことはもう間違いない事実だと思います。この点は、今日も盛んに議論されたところでございます。
ところが、ここへ来て、もう国際社会では輸出規制の動きがあちこちで始まりまして、それが加速されつつあるわけです。まさにドーハ・ラウンドの前提条件に大変化が起きつつあるのではないかというふうに思うわけです。
しかしながら、二〇〇一年に始まったドーハ・ラウンドは、現在なお交渉中ではありますが、二〇〇四年に基本的な枠組みについては合意されたわけですね。その基本的な枠組み、モダリティー、合意されたモダリティーの中に、ウルグアイ・ラウンドで決められていることに上乗せする形で、重要
品目については関税の大幅な削減は免除する分だけ一定量の輸入を義務付けると。つまり、お米でいえば
ミニマムアクセス米を更に上乗せするという基本的合意については合意されて、そして今議論されているのは、じゃ何を重要
品目にするのか、重要
品目の割合はどれぐらいにするのか、重要
品目の関税率はどうするのか、
一般品目についてはどうするのか、そういう議論がなされているわけでございます。
しかし、今日いろいろ御議論を聞いてみても、何となく
ミニマムアクセス米についても変化があっていいのではないかという御議論があります。しかし、このドーハ・ラウンドの交渉の流れからすると、積み重ねてまいりましたからそうはいかないんですよね、外交交渉ですから。
さて、どうするかなんです。前提条件に大きな変化が生じている、しかもそれは一過性の変化ではないと、そういう認識に立ちましたら、
WTO農業交渉にも大きな変化が起こっていいのではないかというふうに思いますが、なかなか難しい。しかし、ここは正念場ですよね。政府としてどう取り組むか。これは政府だけじゃありません、我々政治家も
一緒に考えなきゃいけない問題だと思います。
しかし、問題の提起だけで終わってしまうのももったいないので、この際、現
時点において政府としてどんな考えでおられるのか、臨むつもりでおられるのか、答えにくいと思いますが、お答えいただきたいと思います。