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2008-05-27 第169回国会 参議院 農林水産委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年五月二十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         郡司  彰君     理 事                 主濱  了君                 平野 達男君                 加治屋義人君                 野村 哲郎君     委 員                 青木  愛君                 一川 保夫君                 金子 恵美君                 亀井亜紀子君                 高橋 千秋君                 藤原 良信君                 舟山 康江君                 米長 晴信君                 市川 一朗君                 岩永 浩美君                 牧野たかお君                 山田 俊男君                 澤  雄二君                 谷合 正明君                 紙  智子君    国務大臣        農林水産大臣   若林 正俊君    副大臣        農林水産大臣  岩永 浩美君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       澤  雄二君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 朝雄君    政府参考人        警察庁長官官房        審議官      小野 正博君        厚生労働省医薬        食品局食品安全        部長       藤崎 清道君        農林水産大臣官        房総括審議官   伊藤 健一君        農林水産大臣官        房総括審議官   吉村  馨君        農林水産大臣官        房技術総括審議        官        吉田 岳志君        農林水産省総合        食料局長     町田 勝弘君        農林水産省消費        ・安全局長    佐藤 正典君        農林水産省生産        局長       内藤 邦男君        農林水産省経営        局長       高橋  博君        農林水産省農村        振興局長     中條 康朗君        林野庁長官    井出 道雄君        海上保安庁交通        部長       米岡 修一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○食品製造過程管理高度化に関する臨時措  置法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○農林水産に関する調査  (ミニマムアクセス米に関する件)  (食料自給率向上に関する件)  (WTO農業交渉に関する件)  (バイオ燃料に関する件)  (輸入食品検査体制に関する件)  (林業の新生産システムに関する件)  (諫早湾干拓中長期開門調査に関する件)     ─────────────
  2. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  食品製造過程管理高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、警察庁長官官房審議官小野正博君外三名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 食品製造過程管理高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 高橋千秋

    高橋千秋君 おはようございます。  先週に引き続き、質問をさせていただきたいと思います。  今日のこの食品の問題は、古くて新しいというか、食品は安全でなきゃならないということでずっと来ている、これは当たり前のことですが、昨年から今年にかけていろんな食品にかかわる問題が出てきて、特に消費者国民にとっては関心の高いことだろうというふうに思います。  ただ、今日のこの法案、いわゆるHACCP法と言われている中身は、期間延長というのが主眼点で、中身についてはそう変わらないというか、ほとんど変わらないわけでございますので、基本的には賛成の立場で質問をさせていただきたいと思いますが、三十分しかございませんので、あとは米長さんの方にお任せをして、そして午後には一般質疑もございますので、その中でまた同じような話が出るのかも分かりませんが。  特に私は確認をしておきたいということで今日質問通告をさせていただいたのは、この委員会でも何度も中国ギョーザの問題がずっと出てまいりました。私も、二月の下旬に参議院の超党派で日中議員会議というのが全人代でございまして参加をしてまいったときに、メーンのテーマとして、この中国ギョーザを早く解決すべきではないか、中国側当局も積極的に解明に向けて努力をしてほしいということで要望をしてまいりましたし、そのときの向こう側答弁も積極的に解決をする努力をするということでございましたが、それ以降、やはり遅々として進んでいないように思われます。  先日、胡錦濤主席がこちらの方にお見えになって、その中でもどうも話題になりましたが、何かもうちょっと忘れ去られてしまったような感じがするものですから、これは忘れてはいけないし、早く解決をすべきことだと思っております。これは日中両方にとって早く解決をすべきことだろうと、どっちが得とかどっちが損とかいう問題ではなくて、やはりこれはきっちりとしておかなきゃいけないというふうに思っております。  その意味で、今日は警察の方来ていただいていると思いますので、現在の状況報告、見通しを御報告をいただきたいと思います。
  6. 小野正博

    政府参考人小野正博君) 御答弁申し上げます。  日本国内捜査はほぼ終了に近づいているところでございます。日本国内捜査におきましては、被害者関係者からの事情聴取実施流通ルート解明事件対象となったギョーザ分析、その他必要な捜査を進めてきております。  千葉事件、兵庫の事件ギョーザは、中国天津新港から出荷された後、完全に別のルートを経由しておりまして、日本国内での接点はありません。また、その中に含有されていたメタミドホスにつきましては、不純物が混在しておりまして、日本で入手できる純度の高いメタミドホスとは異なっておりますし、また日本ではメタミドホス農薬として一般には流通していないということも判明いたしました。  また、千葉事件定量検査の結果では、最高でギョーザの皮一グラムから三十一ミリグラム以上のメタミドホスが検出され、市川事件では同じく皮一グラムから三・五八ミリグラムのメタミドホスが検出されているなど、袋の外側から浸透できると中国側が主張しておりますが、その中国側の主張している量と比較いたしましても、比較にならない大量のものが入っているという状況にございまして、これらのことから、日本国内において混入された可能性は極めて低いものと認識しております。  本事案の真相の解明のためには日中捜査当局間の協力が必要不可欠でございますので、日本警察といたしましては引き続き所要の情報交換を行っていくこととしておりまして、中国側捜査を進めていく中で、必要があれば捜査共助の枠組みを利用して証拠品の提供を行うなど、日中首脳会談で合意されたところに従い捜査協力を更に強化し、事案早期解明に努めてまいりたいと考えております。
  7. 高橋千秋

    高橋千秋君 これは忘れてはいけないことですし、やはりきっちりと結論を出していただけるように努力お願いを申し上げたいというふうに思います。  それで、私は金曜日に質問通告をさせていただいたんですが、金曜日、地元へ戻る途中の夕刊を見て、急遽質問通告を昨日一つさせていただきました。直接ギョーザとは関係ないのかも分かりませんが、各紙夕刊紙に、厚生労働省農水省ずさん検査総務省改善勧告という記事が各紙トップに出ておりました。  参議院議員宿舎、麹町宿舎の裏、裏というか北口から出た真ん前に二十四時間オープンのスーパーがございます。私時々そこで議員方々にもお会いをしますので、参議院方々は多分結構そこを利用されているんではないかと思いますが、私はそういうところを歩くのが好きなもので、全商品のいろいろ裏側をひっくり返して見たりします。そうすると、あのスーパーで国産の商品を探すのは結構難しいんですよね。ほとんどが中国産だったり、何か訳の分からない国の、訳の分からないと言ったら怒られますが、聞いたこともないような国の産品があったりいたします。  そのような状況に、あのスーパーは特に、業務用ということもあってそうなのかも分かりませんけど、やはり水際でちゃんとしっかりと検査をするということは、今日のこの法案はそれぞれの製造時点での時点管理というかそういうことだろうと思いますが、やはりちゃんと検査をするということがあった上で、そういうそれぞれの製造過程時点管理をしていくということが両方がうまく合わさって食品の安全というのは確保されることだろうと思うんですが、ただ残念なことに、この夕刊に出た農水省厚労省のこの総務省からの勧告中身を見ると本当かというような中身になっております。サンプルをほとんど業者側が選出をしていたり、やらなきゃいけない規定の数もやってなかったり、それから、その検査に行く場所に、本来は公共交通機関若しくは農水省厚労省側手だてで行かなきゃいけないのを業者の車にほとんど乗せてもらったりとか、そういうような実態が明らかになっております。  私はその場にいたわけではございませんからその状況は分かりませんけれども、しかし消費者から見ると、いや、こんな検査で大丈夫かと、ここのところ食品に関するいろんな問題が出ている中で農水省厚労省、こういう状況で大丈夫なのかという心配が出てくるというのは、これはマスコミの書き方にどういうふうな意図があるのか分かりませんけれども一般的な感覚としてそういうふうに心配をするのは当然のことだろうと思います。  その意味で、農水省厚労省それぞれ、このことに対してどういうことなのか、そして何か改善点、これは改善点また半年以内には出さなきゃいけないということだそうですけれども、しかしこの週末に農水大臣からも調査をさせるというそういうインタビューも出ておりましたので、どういうことなのかそれぞれから御返答をいただけませんでしょうか。
  8. 佐藤正典

    政府参考人佐藤正典君) 御説明を申し上げます。  今般、総務省からの輸入農畜水産物の安全の確保に関する行政評価監視結果ということに基づきまして、動植物検疫に関しまして検査適正化あるいは公正性中立性確保等を内容とする勧告を受けたところでございます。植物防疫所及び動物検疫所の一部におきまして、勧告指摘されているような不適切な事例があったところでございます。  農林水産省としては、動植物検疫植物の病害虫や家畜伝染病の侵入を防止し、我が国の農畜産業における安定生産ひいては食料安定供給を図る上で重要な業務であることから、今回の勧告を真摯に受け止めまして、植物防疫所及び動物検疫所業務適正化、それから検疫体制の更なる充実に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  9. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  今般の総務省行政評価監視結果につきまして、厚生労働省に対する指摘事項でございますけれども、これにつきましては私ども年度ごとに定めて輸入食品モニタリング検査を行っておりますが、この計画について計画件数を達成できていない個別の品目項目があると、こういう御指摘でございました。そのために、それがなぜそのようなことになるのか原因を分析し、そして改善策実施をするようにというふうなものであったというふうに承知をいたしております。  今、高橋先生おっしゃられましたように、マスコミ報道等の問題というのがございまして、ずさんな輸入食品検疫というふうに言われておりまして、これは検疫所の名誉にもかかわりますので簡単に申し述べさせていただきたいと思いますけれども、今回の御指摘は、この輸入食品の各品目につきまして、例えば抗生物質ですとか添加物ですとか、いろいろな検査項目がございます。そういうものの品目ごとに、百二十ございますけれども、それぞれに割り振ってどれぐらいあるというものでございますが、これらについて部分的にその検疫所レベルで、あるいは項目ごとに達成できていないということがあったと、こういう御指摘でございますので、決してずさんなものではございません。  なぜこのようなことが起きたかということの理由でございますけれども、これは私ども計画年度初めに作りますけれども、これは年が動いていきますと、違反の食品が出たり、今回の例えばあのギョーザ事件のようなものが出ますと、加工食品検査を増やさなければいけないというふうなことで計画が変更したりいたします。中国残留農薬の場合もそうでしたが、そういうのが出ればそちらにシフトしなければいけないということで、当初予定していたものを柔軟に変更していくために元の計画と乖離するものがあると、これが一つ大きな要素でございます。  それを申し上げた上で、全体として十六年度、十七年度調査につきましては、両年とも全検査項目といいましょうか、検査件数は予定を上回っております。それがいろいろにシフトをしていきますので、個別には問題があったと、まずこういうことだというふうに御理解を願いたいと思います。みんな一生懸命やっております。  その上で、ただし私どもも問題がございまして、この計画が前々年度の実績を基にしておりますので、当該年実情と必ずしも合わない部分がある、これをどういうふうにやっていくのかという問題と、それから、必ずしも達成できていない項目について、きちんとした分析をしてどうするかということも我々本庁も含めて的確に分析をしていたわけではございませんので、この点では本当に御指摘をいただいて、我々きちんとやっていかなければいけないと、このように考えております。  また、検疫所の小さいところによりましては、貨物の搬入場所遠隔地となった場合などで人員のやりくりが困難になる場合などありますので、こういうところも改善していかなければいけないと、計画をどういうふうに組み立てるかということでございまして、我々反省すべきことは十分に反省し、きちんとした計画実施されるように頑張ってまいりたいと思いますけれども、全体としてはその実情に応じフレキシブル対応してやっておるということでございまして、決して職員がずさんにやっておるわけではございませんので、その点だけは御理解願いたいと思います。
  10. 高橋千秋

    高橋千秋君 頑張るのは当たり前の話で、頑張っていますというのはだれでも言えます。要は結果を出さなきゃいけない。  これを見ると、やらなきゃいけない件数の半分ぐらいしかできていないというのはもう事実です。それは、フレキシブルにやったかどうかというのはその現場の判断はあるかも分かりません。しかし、やはり総務省からこうやって指摘をされているわけですから、それは反省を十分していただいてやっていただかなきゃいけないというふうに思います。  BSEの問題がしょっちゅう出てきて、吉野家牛どんの肉が吉野家で発見をされたということを見ても、それは十分でなかったということはこれはやっぱり反省をしていかなきゃいけないわけですから、農水省厚労省、それぞれやっぱりきっちりと反省をした上で対応をしていただきたい。  大臣としても、何かコメントございますでしょうか。
  11. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) この結果を、勧告を真摯に受け止めまして、植物防疫所また動物検疫所業務適正化及び検査体制を更に充実しなければならないと受け止めております。  そのために、一斉に見直しをするように指示をいたしておりまして、その見直しの結果に従って的確な対応をしてまいりたいと思っております。
  12. 高橋千秋

    高橋千秋君 是非お願いをしたいと思います。このHACCPの問題と検査の方と、やっぱり両方があってこそ機能する問題だろうというふうに思いますので、是非よろしくお願いをしたいと思います。  このHACCPの問題について本論について質問をさせていただきたいと思いますが、このHACCPというのは、私も農業関連のところにずっとおりましたのでよく知っております。私の知り合いの食品会社でも、これを一生懸命取って頑張っている企業もたくさんあります。  しかし、ISOとかいう言葉は結構多くのサラリーマンも知ってます。しかしながら、このHACCPというのははっきり言って余り知らないんですよね。普通の企業で働いておられる方ならISO幾つというのは、それぞれの小さな企業でも一生懸命取りましたというのを賞状みたいのを掲げてよく見るんですが、HACCPというのはほとんど知らないということが多いんではないかなと思います。実際、農水省がアンケートを取られた中でもかなりの方が知らない、認知度が非常に低いというふうに私は感じております。  実際のところ、これ質問通告で幾つあるのかというのを質問通告しておりますけれども、大体二百五十ぐらいだというふうに聞いています、認証を受けているところが。食品会社というのが全国に大体四万五千から五万ぐらいあるというふうに聞いているんですが、そのうちの二百五十しかない。これはそれだけ厳しいのかという問題もありますが、やっぱり一方で、ほとんどそれ取らなくてもいいんじゃないかと、HACCP取っても何のメリットもないからそんなわざわざ取る必要もないというような感じがするんですけれども、これまでこの普及に対してどのような御努力をされてこられたのか。  そして、今回この法案の改正は期間延長がほとんど主眼部分ですから、中身についてはほとんど触られていないわけで、これからどうやっていきたいのかというのが見えないんですね。そのことをどういうふうにお考えなのか、答弁をいただけますでしょうか。
  13. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) お答え申し上げます。  HACCPの現在までの推進状況でございます。御指摘いただきましたように、高度化計画認定件数は二百五十件ということでございます。こうした取組によりまして、HACCP手法導入率は、本法制定前の平成九年の六・八%から平成十八年度には一四・六%に増加しておりまして、中でも販売規模五十億円以上の大手企業では約七割の導入率となっております。  今後におきましては、食品製造業の大宗を占める中小規模企業年間販売額五十億未満、この導入率が依然として低い状況にございます。今後、これらの中小規模層を中心として引き続き導入を図っていきたいと思っております。  その際に、課題となるのは私ども二つあるというふうに思っております。施設の整備の資金人材の問題、人材確保、これが課題だというふうに認識しております。これまで、本法によります長期低利融資と併せまして、中小企業内でのHACCP手法導入を推進できる責任者などの人材養成をするためのセミナー研修等の支援を行ってきたところでございます。こうした取組平成二十年度には大幅に拡充いたしますとともに、現在御審議いただいておりますこの法案に基づく適用期限五年の延長ということで、中小規模へのHACCP手法導入促進に努めてまいりたいというふうに考えております。
  14. 高橋千秋

    高橋千秋君 このHACCP、ハセップなのか、ハサップなのか、そういう論議まであるぐらいで、ハサップということに統一をされたようでありますが、やっぱりほとんど、食品に関する業界で働いておられる方は知っておられると思いますけれども、まず消費者が知らないですよね。参議院議員宿舎の裏のスーパーへ行っても、それ探すのも結構大変なぐらい余りないんですよ。  それで、今言われたように七割導入という話ですが、食品業界というのはもう小さい企業がほとんどです。ハム作ったり、そういうところでも一部大手企業もありますが、食品に関してはほとんど小さなところばっかりですから、これを導入するにはやっぱりかなりの労力も要りますし、お金も当然要るわけで、さっきこれから更に努力していくというお話でございますけれども、二十年度、その予算をどの程度考えておられるのか。  それから、その予算を増やすだけでは駄目で、やっぱりこれを国民に知っていただく。HACCPとはこういうことなんだよということを知っていただくための努力をしないといけないと思うんですけれども、何かそういうふうな新たな手だてみたいなものは考えておられるんでしょうか。
  15. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 人材育成等に向けての平成二十年度取組につきまして御説明をさせていただきます。  二十年度予算におきましては、予算額をこれまでに比べまして大幅に拡充をいたしました。十九年度九千三百万、これを一億五千万ということで拡充をしたところでございます。  具体的な中身でございますが、HACCP手法導入を具体的に検討する企業対象といたしまして、これまでもHACCP責任者養成研修、また外部から中小企業指導、助言できる指導者層確保、このための研修実施してきたところでございますが、この養成人員を大きく増やしまして拡充して実施したいというふうに思っております。  また、新たな取組といたしまして、経営トップ企業経営トップ対象といたしまして、HACCP手法導入によります従業員の意識の向上企業イメージ向上等の具体的な成功事例を紹介するトップセミナーを開催するというほか、HACCP手法導入等につきまして、指導、助言できる方をコンサルタントとして登録して導入を検討している企業に対して紹介すると、こういった新しい取組実施しようとしているところでございます。
  16. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 今局長からこのHACCP手法導入を促進するための今年度予算上の措置、方針を御説明申し上げましたが、基本的には、大事なことは消費者が、委員今御指摘のように、HACCP手法に対する理解を深めていただいて、HACCP手法によります、それで製造された食品に対する信頼度というものが評価されるという、そういう状況をつくらないと、資金を掛け、人手を掛けて、この製造工程についてこれを拡充するというインセンティブが働きにくいということがあるように私は感じております。したがいまして、消費者にどうこのことを認知してもらうかということでございます。  そういう意味では、普及啓発のためのセミナーとかシンポジウム開いてきましたが、それにこれからはできるだけ消費者団体の方もそういうのに呼び掛けて一緒に、企業者などと一緒にこのセミナーなどに参加をいただくというようなこと、あるいはまたこの普及のためのいろんなパンフレット類などについても、製造業者に向けてだけではなくて、やっぱり消費者団体を通じて製造業者がこういう手順を踏んで安心、安全な食品製造工程導入をするんですというようなことをやはり消費者にアピールしていく必要があるんではないかと、私はそのように考えております。
  17. 高橋千秋

    高橋千秋君 大臣、まさに言われたように、これが導入が進むためには、買う側がこれを認識しないと駄目だと思うんですね。今、傍聴席にたくさん来ていただきましたけれども、多分HACCPって何の話だという話だろうと思うんですよ。  多くのスーパーへ行って買われる方が、このマークを付いているものしか買わないとかいうことになれば、もう当然導入をせざるを得ない、そういうことになってくると思いますので、やはり消費者に対する対策、消費者に認知をしていただく対策という方をやっぱり重点的にしていただいた方がいいんではないかなというふうに思います。特に、この食品については最近安全の問題がよく出てまいります。冒頭に申しましたけれども、ここ一年の間、様々な食品にかかわる事件が出てまいりました。  その意味で、実は私の地元の三重県では三重県議会の中で、食品に関する安全・安心の確保に関する条例案というのを今作っている最中です。これ、今けんけんがくがく地元ではやっていまして、厳し過ぎるんではないかという、そういう意見が結構出ていまして、生産者側と議会側とそれから県当局それぞれがけんけんがくがくの論議を今やっている最中なんですが、国よりもむしろ先に行っているような状況があります。ただ、これは条例ですから自分のところの県の範囲でしか取り締まれないということがございます。やっぱりこれは国全体として考えていくべきことなんだろうと。  今回はこのHACCP法中身についてはほとんど変わっておりませんけれども、やはり中身についても更に検討を進めていく必要があるんではないかなというふうに思いますし、その普及についてもっと具体的なことを考えていただきたいなというふうに思っております。  余り時間がありませんので、もう最後の方になりますけれども、先ほど申しましたように、県ではもう既に六県ぐらいがそういう食の安全の条例というのを制定をされております。やっぱり条例だけではなかなか難しいところがあるんですね。やっぱりこのHACCP法食品衛生安全法でしたっけ、何かいろいろ法律が、この食にかかわる法律がいっぱいあって、どれを見たらいいのか分からないような状況もあります。  是非、その辺も、食品安全庁、消費者庁ですか、という検討もありますけれども、是非その辺もシンプルにしていただくということも必要ですし、このHACCP法についても分かりやすく中身についても変えていっていただきたいと思いますが、この県の条例等の動き、それからもう一つ、民主党でもこの四月十七日に食品の安全に関する法律を三つ提出をいたしております。まだ審議されておりませんが、これらの我々も動きを強めておりますし、いろいろ皆さん、どうしても評価も、評価というか見解があるかと思うんですが、この両方、県の条例、そして民主党の三つの案、このことに対する見解をお聞かせいただければと思います。
  18. 佐藤正典

    政府参考人佐藤正典君) 御説明いたします。  まず、委員の県の条例の関係、お話がございました。御指摘のように、三重県を始め、複数の自治体で食の安全確保に関します条例を検討、あるいは既に策定というところもございますけれども、そうしたことがあることは承知をしているところでございます。  食の安全を確保する観点から、食品衛生法に基づく衛生部局による食品監視に加えまして、農林水産省では科学的原則に基づいたリスク管理を推進するとともに、都道府県との連携の下、生産資材の適正使用の指導とか、あるいはGAPとかHACCP導入など、生産段階から消費段階にわたり総合的な施策を推進しているところでございます。  食品安全基本法におきましては、食品の安全性の確保は、農林水産物の生産から食品の販売に至る食品供給の各段階において適切に講じられることが求められているところでございます。自治体における条例化の動きは各自治体の状況に応じまして独自に検討を行っているものでございまして、その検討状況につきましてはしっかり見守ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  19. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  食品衛生法上の条例との関係でございますが、食品の規格基準のように法律が全国一律の規制を予定しているような場合には条例で食品衛生法よりも厳しい規制を行うことは困難であると考えておりますけれども、それ以外の場合におきましては各地方自治体が地方の特殊性に応じた規制を行うことはそれぞれの自治体の御判断にゆだねられているというふうに考えております。また、HACCPの認証制度などの高度な衛生管理のための制度を設けることは、食品の安全性確保の推進という観点から望ましいというふうに考えております。  また、三法案についての御意見でございますが、食品安全庁の設置を農水省にという御提案でございますが、これは産業の振興と規制との分離ということがBSEの事件を契機に広く言われていることですので、これに背馳をするのではないかなという危惧を持っております。  以上でございます。
  20. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 民主党が三つの法案から成ります食の安全・安心対策関連法案を御提出になられたということは承知いたしております。これから国会における審議が行われるものと思いますけれども、一方、政府におきましては、現在、消費者行政推進会議におきまして、消費者から見て分かりやすい行政を推進できるような新しい組織について議論がなされているところでございます。  国民生活の関連分野というのは、食品の安全分野だけでなくて、悪徳商法でありますとか金融商品などの広範な範囲に及んでおりますので、消費者から見て分かりやすい行政というものの機能につきまして、政府全体としてきちんと検討することが大切であるという考え方の下に消費者庁の創設が検討されているところでございますが、JAS法における表示などにつきましても、このような消費者行政の見直しの中で検討さるべきものというふうに考えているところでございます。  JAS法の民主党の改正案については、これからの審議を待つということで、今、私がその内容についてコメントをするのは差し控えたいと思います。
  21. 高橋千秋

    高橋千秋君 終わります。
  22. 米長晴信

    米長晴信君 民主党の米長晴信です。高橋委員に引き続きまして、関連の質問をさせていただきます。  HACCP法案は過去にも審議しまして、衆議院でもやったので、冒頭、食の安全ということで、二十三日に総務省から出された改善勧告、これについて質問しようと思っていたところ、これもまた高橋委員の方からありましたので、大臣にお伺いする農水省部分ははしょりまして、恐らく先ほどの局長答弁とそう変わらないと思いますので。  しかし、藤崎部長についてはちょっと一言申し上げたいんですけれども。やはり答弁で、ずさんなものではないと、ちゃんとやっていますと、そう言いたくなるのは分かるんですけれども、やはり、でも、高橋委員指摘したように、総務省のちゃんとした調査によって、個別の事情があったにせよミスは指摘されているわけですから、そこは、ずさんなものじゃないというような答弁でなくて、もっと真摯に受け止めて答弁していただきたいと思うんですよ。  というのは、私は実は昨日行ってきたんです、東京検疫所、東京港にですね。現場を見てきました。本当に過酷な現場です。  まず、倉庫がありまして、そこはマイナス二十五度です。そこを防寒具着て入ったんですけれども検査員の若い女性二人が、わあっともう物すごい積み上げられている、ロット単位で入っているサンプルをランダムに抽出して、検査する場所、隣の部屋までそれを運んでもらうわけですね。その検査する場所に、マイナス二十五度ですからね、隣入ったら暖かいって思ったんですけれども、そこはもう既にマイナス二度なんですよ。その中でずっとサンプル、ロットの中から箱をやっぱりランダムに選んで開いてと、ちゃんとその現場を見てきました。現場はしっかりちゃんとやっているというのはもう部長のお言葉どおりだったと、私、感じました。  でも、そういう中で、そういう今までの指摘というのは、サンプルの抽出率がやっぱり緩い部分があったとか、あるいは交通手段で業者に頼っていた例があったとか、どちらかというと人海戦術といいますか、人手が足りないことによる結果、そうなったと推測できる部分もあるわけです。ですので、一人一人の検査員がちゃんとやっているという部分は、それは否定できないんですけれども。  そういう過酷な中で、毎日毎日、品目も年々増えてくる、いろんな条件が変わってくる、部長も先ほど説明あったように、ある基準からまた違う量が入ってきてといろいろ変化もする。迅速に対応してかつ安定的に対応するために、もしかしたら人手が足りないというような理由もあるのかもしれないんですよね。むしろ、今きちんと必要に応じた適正な調査がどういうものであるかということをリアルタイムで更新していって、それに対して必要な人員が今足りているのかどうかということを含めて検証していただいて、それをもって、今これじゃ実は現状足りないんだと、そういうような答弁だったら納得できるんですけれども、言い訳のようなことばかり言って答弁していただきたくないと思うんですよ。その辺について、ちょっと御所見いただきたい。
  23. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  私の舌足らずといいましょうか、説明が不十分で、大変に誤解を与えてしまいまして申し訳ございません。  私が申し上げたかったのは、総務省指摘を我々が真摯に受け止めないということではなくて、報道のされ方の中でずさんという表現が使われていたので、こういうことが皆さんに、そうなのかと、検疫所輸入食品検査はそんなにずさんなのかと、職員はいいかげんにやっているのかというふうに思われては名誉にかかわるという意味で私は申し上げたものでございます。  そして、先ほどの答弁の中でも、私ども反省すべき点があるということも実は申し上げさせていただきました。そういう意味で、今先生の御指摘になったことは私は全く同意見でございますし、検疫所の今後のモニタリングを十二分にやっていくために人員の増ということも図っていかなければいけないと思いますし、また、各検疫所ごとに計画を全部割り振りますので、すべての窓口ですと、人数も少ないところもありましたり、それから輸入件数の少ないところもございますので、そういうところでの効果的な運用というものが十分でないなどの問題もございます。そして、現実になぜ達成できなかったのかと、検疫所ごとにですね、そういうことの分析がなされていなかったことも事実でございますので、まさにこういうことをきちんと反省をして、私ども、ちゃんとしたモニタリングができるようにやってまいりたいと。  ただ、一つだけ申し上げておきたかったのは、全体の計画を立てて、絶対数というのが決まります、検査件数がですね。それにつきましては、今先生も御指摘いただきましたように、やはり年度途中にいろいろな事件が起きますとそちらにシフトさせていく、で、違反が発見されればモニタリングの強化を行う、したがって件数が増えていくと、こういう中でのやりくりをしながらそういう事象が起きるということも御理解願えればと思っておりますが、もし私が、発言が傲慢なように先生方に受け止められて、反省をしていないというふうに取られますと、本当に私の真意と異なることでございますので、そのような答弁の仕方が不十分であったことをおわびいたしまして、私の真意をお酌み取りいただきたいと、そのようにお願い申し上げます。
  24. 米長晴信

    米長晴信君 現場が大変ということ自体は、私申し上げたように、皆さんも分かっていると思いますので、とにかく今後、業者等のなれ合いとか、あるいは業務実態が過酷であるという理由で検査がおざなりになるといいますか、ということだけは今後留意していただきまして、食の安全の問題、いや、もう答弁結構です、食の安全の問題ですから、水際の、我々の命の、水際の阻止でございますから留意していただきたいと、このように思います。
  25. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) ちょっと事実関係だけ。  お答え申し上げます。  業者云々の御指摘は、私ども一切いただいておりません。件数の問題だけが指摘があったことでございますので、その点だけは正しく御理解願いたいと思います。
  26. 米長晴信

    米長晴信君 なれ合いというのは、事前にロットを用意されているとか、業者に交通手段、輸送されていた例があったということは事実でございますから、そういうことをなれ合いと取るかどうかは別として、そういうことがないようにという御指摘ですから。  続けたいと思います。  HACCP法案に移りたいと思いますけれども、先ほどこの問題点として、資金が掛かる問題、それと人材確保の問題という点が御指摘ありましたけれども、あとは議論の中で、消費者への認知、これが足りないという部分が依然問題というふうに思うんですけれども、これ、普及をどのように今後していくのかというある程度目標みたいなものを設定すべきだというふうに思うんですけれども、例えば衆議院の方では、議事録を見ますと、中小企業もう五〇%になっていくと、この法案が通ればというような部分を読んだ記憶があるんですけれども、これは同一根拠で、そういう方向性で進んでいるんでしょうか。
  27. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) HACCP手法導入状況でございますが、年間販売額五十億円以上の大手企業につきましては七〇%まで進展しておりますが、食品製造業の大宗を占めます販売額五十億円未満、この中小規模層導入率が依然低いと、こういう状況にあるわけでございます。これらの中小規模層の中でも、地場食品中心と考えられます小規模の食品企業は別といたしまして、販売額一億円から五十億円の規模層における導入促進が特に重要だというふうに考えております。  私ども平成十八年度調査によりますと、この規模層の食品企業の三四%が今後導入を検討するというふうに回答しております。こうした導入をすると回答した企業におきまして、今後五年間に導入率が実現した場合には、この規模層のHACCP導入率、現在一六%でございますので、これに三四%の企業導入するということになりますと五〇%になるということでございます。私ども、この五〇%を目標として計画的な導入に努めてまいりたいというふうに考えております。
  28. 米長晴信

    米長晴信君 話を続けますけれども、資料の一番、これを御覧いただきたいと思うんですけれども、いろいろマークがあって、それぞれHACCPというのが一部入っているんですね。で、左上の二つ、これがいわゆるマルソウというのと対米輸出のやつですけれども、それ以外は、自治体等各地でそれぞれ取り組んでおられるHACCPとそれのロゴマークの一覧です。これ以外にもあります。全部で二十七つあるということなんですけれども。  ただ、国がやっている、いわゆる今審議しているHACCP法案で取り上げる認定の対象と地域で取り組んでいるもの、同じHACCPというものが付いて、一般消費者にとっては恐らく国のものも一般のものも見た目変わらないという印象は受けると思うんですけれども、実際、認定基準等について国のものとこういう地方のものとどういった違いがあるのか、一般論で結構ですので、お答えいただければと思います。
  29. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  私ども食品衛生法で規定をしておりますHACCPにつきましては、七原則十二手法ということで一定のルールに従って認定をいたしておりますけれども、各地方自治体におかれます様々な認証制度というのはかなり幅広く、対象分野も方法もいろいろ異なっているというふうに考えております。  そういう意味で、一概にどのように違うのかということを申し上げるのはなかなか難しゅうございますけれども、私どもが、国が、私ども食品衛生法で行っている認証制度というものと地方自治体で行っておりますものが両方存在している、そして様々なものが行われているということは、基本的にHACCPという高度な管理手法を用いて、より安全な食品の製造に寄与していこうという観点からはそれなりに望ましいものではないかなというふうに考えておりまして、自治体からいろいろな問い合わせですとかあるいは助言などあったときにはそこにお答えしながら一緒にやっていくと、こういう考え方で現在やっております。
  30. 米長晴信

    米長晴信君 ここで若林大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほど御答弁あったように、企業向けには中小企業五〇%というような一定の目標を持ってこの国のHACCPをやっていくと。一方で、地方の方ではいろいろその五原則というのを中心に、国の基準とは必ずしも違うけれどもHACCPの仕組みにのっとった形で、そんなに国のハードルよりはやや低く、よりお金掛からない方法で広まっていると。  これ、方向性としては、大臣、国の仕組みで最終的には統一して将来は義務化をするという方向で考えておられるのか、そうではなくて、食の安全をより幅広く広めるためにこういった地方のHACCPを推奨してすそ野を広げるという方向性なのか、方向性を是非お伺いしたい。
  31. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 実は、このHACCP法によります、そのHACCPを認定して施設整備をするわけですが、これ導入法でございまして、それによってできた施設がその後、点検、管理がちゃんと行われていくかどうかというようなのは食品衛生法の十三条に基づいて、そこで総合衛生管理製造過程承認制度というのがございます。これ、委員の言われた左の二つ目などがそうですけれども、これは実は食品衛生法上そういうことを点検、管理をしておりますという継続的な要件が満たされるということで食品衛生法で認証しているわけなんです。  私の方は、そういうそこに至る前にこれはちゃんとした施設ですよという施設の基準を示しながらその導入を推進すると、まあ金融でありますとか、そういう手法を持って導入をしていく。ですから、ここに表示されているそれぞれは、その施設の運営が間違いなく運営、管理されていくかということなどを定める意味での認証になりますから、食品衛生法上の認証でございます。  そこで、食品業界は、地場産業でありますとか、あるいは伝統食品でありますとか、それぞれ地域におきますとかなり零細なものも業態がありますので、そういう、いわゆるこの認証制度を取る取らないというのは、食品衛生法上の基準に合って運営するかどうかというのは、業者の判断で厚生省の指導を受けるわけでありますが、私は、今年の三月ですけれども食品業界の信頼性向上自主行動計画というものを策定をする、それぞれが自主的に策定してもらうための手引を作りました。そして、コンプライアンスの徹底と併せてHACCP導入を含めた適正な衛生管理、品質管理といったようなことで五つの基本原則を示して、まずはこれらの基本原則に沿った取組業界が行われるようにという、そういう任意の指導をしております。その指導に従ってやったときに、食品衛生法の十三条の規定に基づく認証を受けてこういう表示をしていくということになれば、それは更に、消費者との関係でいえば、信頼度が高まっていくということになると考えております。その前段の、言わば指導、お手伝いをしているというつもりでございます。
  32. 米長晴信

    米長晴信君 前段での大臣答弁で、たしか、まあこれインセンティブを持たせることが大切だというような御答弁もあったかと思うんですけれども、そのインセンティブの部分で、例えば企業が国のこの法案、更新して融資が受けれるというようなことであっても、自分のいる地方でもっとよりお金の掛からない地元のHACCPを、これならできると、このマークが付けば国のやつをもらわなくてもいいかというような方向に動くと、やはり企業が国の、まあ我々が本来必要である食の高度な管理の基準というのが、我々が今目指している、というのが必ずしも得られないまま、地域の方のHACCPでこれで良しとするというような方向に動いてしまう懸念もあるんですけれども、そういうことをお伺いしたかったんですけれども、それについてはいかがですか。
  33. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 先ほども申し上げましたように、このHACCP手法導入というのは導入計画の認定でございまして、その施設が適切に実施して運営されているかどうかということを認証する制度でございません。そういう意味では、ある水準のHACCP手法というものを進めているわけでございますが、先ほど厚生省の部長の方からお話がありました、地域様々なものをそれなりに地域の判断でやっておられる、それを食品衛生法十三条の認証の、衛生管理製造過程承認というのを受けていくようにするか、そのままにしておくのかという問題だと思いますけれども、これは厚生省の方の食品衛生法の運営の問題だと私は認識しております。その意味では、その後もそれを継続してやっているかどうかということは私の方が管理するという立場にないんです。そういう制度になっていないということで、厚生省の方でしっかり答弁していただきたいと思います。
  34. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  HACCP手法導入に際しての基本的な考え方でございますが、これは食品衛生法上の観点でございますけれども、国際的に食品衛生の管理手法として推奨されているというようなことからその普及を推進するという観点と、それからもう一つ、多様な食品に対して画一的な基準を適用するのではなくて、その食品の製造方法に応じた衛生管理導入することを可能にすると、こういう観点から平成七年に導入をいたしたものでございます。  そういうことですので、一律にこれを取らなければいけないというものではございませんけれども、やはり広い意味での高度な管理手法を用いることによって全体としての安全管理、衛生管理というものが進んでいくと、望ましいものというふうに我々は考えておりまして、そういう意味で、認証を取ったものについてはそういうことを表明できるという形にしております。  一点だけ、今のお話との関係で、義務化の問題が当然どうなのかというお話になろうかと思うんですけれども、私どもは、義務化というのは、やはり実態として食品製造施設等がこれにどれぐらい取り組んでおられるのかと、どのような規模で、どのような対象についてそれを義務として、本当に、義務ということですから大変にいろいろな規制が掛かるわけでございますけれども、可能なのかということについて検討いたしておりますけれども、そういう意味では、やはり第一に食品製造施設においてこれ取り組んでいただいているというすそ野が広がることが大変大事だと思っておりまして、そういう意味で、先ほど申し上げましたような自治体での自主的な取組ども進めていただいて、まず理解が広がっていくことが大変重要なのではないかと、現時点ではこのように考えております。
  35. 米長晴信

    米長晴信君 これ目標とか義務化とかいうことじゃなくて管理の基準だというようなことですけれども、これわざわざ法律で延長しているし、枠、五年間確保したりとか、それだけじゃなくて促進のために一億五千万円予算を取ってやっているわけでございますから、やはり国として目標を持って、HACCPというのはこういうもので、これだけのことをこういうふうに普及させれば日本国民の食の安全がこういうふうに確保できるという、何か本当に目標設定をやっぱりやらないと、国のものと地方のものとそれぞれが独り歩きして、消費者が混乱すると思うんですよ。国のHACCP、地方のHACCPHACCPというのは一体どういうものだというのが、ただでさえ認知がされていない中で、これが独り歩きしてしまうんじゃないかと。だから、もっと明確に目標設定とか基準とか、あるいは地方のものとはいえ何らかの形で国が関与して最低限の基準を統一するとか、そういうことを是非していただきたいというふうに思うんです。  予算を取ってやっているということで、関連で質問させていただきますけれども、これの関連では、財団法人食品産業センターというのがこれの関連の業務をやっているということですけれども、これ具体的にどんなことをやって、予算幾らぐらい使って何をやっているかというのをちょっとお伺いしたいと思いますけれども
  36. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 当省におきましては、HACCP手法導入促進を図るということで、今御指摘のありました財団法人食品産業センター、また社団法人の日本食品衛生協会、こういった民間団体が行う各種取組に対して支援を行ってきているところでございます。  このうち財団法人食品産業センターでございますが、このセンターに対しましては、HACCP関連情報のデータベースの構築とホームページでの公表、ISO22000のシンポジウム等、こういった取組に対して補助をしてきております。平成十八年度は五千四百万円、平成十九年度は二千八百万円、平成二十年度は二千六百万円というふうな補助金を交付しております。なお、十九年度以降、これらの補助金の採択に当たりましては公募制を採用しているところでございます。  このうちデータベースの構築事業でございますが、この中身につきましては、HACCPの用語の解説などの基礎的な情報、また業界HACCPマニュアルなどの導入・実践の手引、さらにはHACCP関連の専門書などの情報検索システム、こういったものを網羅したものでございまして、HACCP導入推進にかかわります業界団体あるいは学者等から、我が国で最も充実したHACCPに関するデータベースといった御評価もいただいているところでございます。
  37. 米長晴信

    米長晴信君 そういったデータベース作ったり普及活動が必ずしも功を奏していない部分もあると、今の認知度とかからすると。やっぱり本当にこれが、この財団が効率よく作業を予算を使ってやっているのかどうかということはきちんと今後調べていかなきゃいけないと思うんですけれども、この団体もやっぱりいわゆる天下り団体で、役員が五人、職員が七人、OBの方がいるというふうに聞いておりますけれども、これを無駄と言うわけではないんですけれども、より効率よくこういう財団が仕事をしているのかどうか、こういうのをきっちり調べていかなきゃいけないと思うんですけれども。  私、予算委員会でずっと国土交通省にその手の質問をしていたものですから、大臣にも一言お伺いしたいんですけれども、国交省のように無駄遣いしているところばかりというわけではないんですけれども農水省の関連の団体が、とはいえ、今こういった公益法人に対して国土交通大臣は半減するというような物すごい目標を答弁されましたけれども、これについては大臣は今後どのような形で整理されていくのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  38. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) まず一つは食品産業センターについてでございますけれども、これは国からの補助金、委託費といったような公的資金で事業運営をするのが主体というよりも、むしろ民間が主体になっている実は食品産業センターでございます。その食品産業センターの状況に対して、ある専門的な部分について委託をしたり助成をしたりするというようなことであるということをちょっと念頭に置いていただけたらと思うんです。  いろんな公益法人がございます。農林水産省としましては、この公益法人の運営がその設立目的に従って適切に行われますように、公益法人の設立の許可及び指導監督基準などによる指導をしているわけでございますが、既に役割を終えた法人についての統合とか解散を進めるとか、公益法人の整理合理化を今なお進めているところでございますが、このような中で、委員が御指摘のように、道路予算による不適切な支出を受けて、政府による無駄が多いんではないかということがございまして、そういうものを徹底的に排除しなきゃなりません。  その意味で、行政と密接な関係のある公益法人につきまして、今集中点検をいたしております。各府省において問題点を徹底的に洗い出して、六月中に改善結果の最終報告を取りまとめたい。これは政府全体として官房長官からそのような指示を受けているところでございまして、農林水産省といたしましても、民間参入などの事務事業の見直しなどの基本的な方針に即しまして徹底的に点検をしていくことにいたしているところでございます。
  39. 米長晴信

    米長晴信君 ありがとうございます。  最後に、あと三分ほどありますので、資料の二枚目、三枚目、実はちょっと使わないまま進んでしまいまして、二枚目は静岡のミニHACCPの認証された例、三枚目が、こんなにいろいろな基準があるという例でございまして、これは使うまでもなく質問を終わりましたけれども、四枚目、私、最後の時間を使いまして、HACCP、今後この法案成立させて、より一般の人にも広めなきゃいけないというところで、どうしてもHACCPという聞き慣れない言葉がネックになっている、これは何とかしなきゃいけない。  ハサップって、HACCP、これをハサップと無理やり読ませているような節があるんですね、もう定着、一部ではしていますけれども。これ、ハサップ、CとPの間に母音がないと、これ日本語的にはちょっとなかなか発音しにくいんでハサップということなんですけれども、これ、ハシップ、ハセップといろんな言い方があるというのは先ほど高橋さんも言いましたけれども、私もこの前、地元の家の近くのスーパーでやっぱり大手の食肉業者のものにHACCP付いていまして、店員に聞いたんですね。そうすると、店員がまじめで、奥へ行ってだれか分かる人に聞いてきて、これはハセップと言うんですといって、堂々とハセップと言っていたんですね。だから、ハシップとかハセップとか、まだ用語も混乱している。  しかし、これ、Aを入れた場合、Eを入れた場合、Iを入れた場合、これ下二つはハセップって読めるんです、ハシップって読めるんですけれども、これAを入れた場合に、これはハサップって読まないんですよ。ハキャップですね、英語の、言語学的に見て。  私、ずっとテレビ局にいまして、もうテレビは瞬間瞬間で終わっちゃいますから、文字を入れるときに、見て、それを聞いて一発で分かるものをやれと言って、いろいろ御指摘を受けたんですよ、そちらにおられる澤さんに。  こういう目で見たものと聞いたもの、読んだもの、これ一致していないこのHACCPという名称含めて、この見直しも含めて普及活動についてどのようにお考えか、澤さんにお伺いしたいと思います。
  40. 澤雄二

    大臣政務官(澤雄二君) 委員指摘のように、確かに分かりづらいというふうに思います。私も、これがなぜハサップと読むのかというのを最初にお聞きしたときになかなか理解できませんでした。でも、世の中にはそういうことたくさんあるんだろうと。  これはハザード・アナリシス・アンド・クリティカル・コントロール・ポイントの要するに頭を取ってHACCPですよね。これ日本語に直すと危害分析・重要管理点というんですけれども、ますます分からなくなって、この意味を即座に答えられるということ、理解する日本人の方というのは多分少ないんだろうというふうに思います。ですから、委員指摘のとおり、このHACCPという言葉についてはもっと分かりやすくする工夫、努力が必要なんだろうというふうに思っております。  ただ、公式には国際的にもこのHACCPというのが使われているんですね。広辞苑にもこのHACCPという言葉がこの頭文字で出ているんですね。ですから、世界ではこれが通用しています。ギョーザ事件のときに中国大使館といろんな話をしましたが、HACCPという言葉だけは共通の言葉で理解できているわけですね。だから、このHACCPというのは確かに難しくて分かりにくいし、こういう読み方するのかというのはあるかもしれませんが、だったら、公式的にはこのHACCPを使わないと通用しませんので、国際的にも。何かニックネーム、分かりやすい、親しみやすい、そういうものを考えることが必要なのかなと。委員で何か知恵があればまた教えていただきたいというふうに思います。  ただ、もう一つ、難しい言葉でも繰り返し告知すれば社会に浸透するということは我々ジャーナリストの業界でそのことも学んできておりますので、例えばメタボリックシンドロームというのも、あれは代謝症候群、すごく難しかったと思うんです。でも、繰り返し国民に告知することによってメタボというニックネームまでできて知られるようになってまいりました。  ですから、農水省としては、もっと分かりやすい告知をするということと同時に、何か親しみやすいニックネームを考えようかなと、その両面でこれから努力をさせていただきたいというふうに思っております。
  41. 米長晴信

    米長晴信君 昔のように厳しいリーダーシップを発揮していただきまして普及活動頑張っていただきたいとお願い申し上げまして、質問を終わります。
  42. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 自由民主党の野村哲郎でございます。  私も、冒頭に輸入食品のずさんな検査というのを取り上げようと思いましたけれども、もう高橋委員も、それから米長委員もおっしゃいましたので、もうそれ以上は申し上げませんが、ただ本当に、私は地元に帰って土曜日の朝の日本農業新聞を見て本当にびっくりしたんですね。こういうことがまかり通っていたのかという思いがございました。それは、前の輸入牛肉のときにも申し上げましたけれども、やっぱり水際でどう食い止めていくのかと。そして、それは官だけではなくて、業者の皆さん、民の力も借りて消費者の皆さん方に安心、安全なものを届けるという、そこがシステムであったのではないか。その一番システムの入口をつかさどる言わば法の番人がこういったような不適正なやり方をやってきたということに対しては、もう大変怒りを覚えるし、やはりこれは消費者だけじゃなくて国内の生産者に対する私は裏切りにも等しいと、こういうふうに思います。  ですから、大臣の方からもいろいろ調査をしろという指示もされているやに聞いております。是非とも厳格な調査の上、適正化を是非ともこれは図っていただきたい、これはもう要望だけにとどめさせていただきたいと思います。  それでは、本題でございますHACCP手法のことについてでございますが、先ほど来両委員からもいろいろ御質問の中で触れておられました。このHACCP手法導入を法律で、税制面とそれから資金面、こういうところで支援措置を講じる、これによって普及をしていこうと、こういう趣旨だというふうに思っております。  ただ、平成十年の法制定がありました。そして、十五年に延長措置を講じられまして、今回二度目の延長といいますか、五年間の延長ということでこの法律が出されておるわけでありますが、いずれもこれは国民の関心の高い食の安心、安全、この確保と、さらには食品製造業界の信頼性の確保の上で欠くことのできない手法なんだろうと、こういうふうに思っているわけであります。  そこで、この十年間振り返っていただきまして、導入実績は先ほど町田局長の方から御答弁をいただいたとおりでありますが、私は、順調とはなかなか言い難いなと、こういうふうに思うわけでございますが、別な角度から、このHACCP手法国民生活なりあるいはまた食品業界に果たしてきた役割というのをどのように評価されているのかという視点でお伺いをいたしたいと思います。
  43. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 御指摘いただきましたように、平成十年にこの法律が制定をされたわけでございます。その背景といたしましては、O157による食中毒の大量発生、そういったことで食品の安全性の向上と品質管理の徹底を求める、こういう社会的、消費者の方、国民の皆さんの要請が大きかったと、こういったことを踏まえて制定したものでございますが、前回五年前におきましても、その時々の情勢を踏まえてよく検討するということでございまして、ノロウイルスによる食中毒患者数の増加、また食品企業のいろいろな問題もあったということで延長をさせていただいているということでございます。こうした中で、やはりこの手法、今御指摘いただきましたように、食品の安全性また信頼性を高めるという上で大変大きな役割を果たしてきたというふうに考えております。  ただ、委員指摘のとおり、特に中小規模層企業での導入状況、いまだ低い、十分でないという認識は有しているところでございます。
  44. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 今局長の方から御答弁いただきましたように、そもそもこの法律は十年前のO157の大規模な感染に端を発しているというふうに思っておりますが、まず、本家でありますところのアメリカはこれはアポロ計画の中の宇宙食の安全性を高度に保証するシステムということでこのHACCP手法が取り入れられたというふうに認識をいたしておるわけでありますが、それだけにこの手法によりまして、先ほど来御答弁いただいておりますように、国民の食の安心、安全をより一層確保するためにもこの法律によって導入を私は促進する必要があると、こういうふうに思うわけであります。  そこで、今回延長する五年間で、先ほども質問もございましたけれども、どのような姿を描いているのか、どういうような絵姿でこの五年間を進めようと思っておられるのか、そして、その先にある到達目標といいますか、どういうことをお考えになっているのか、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  45. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 先ほど局長から御説明を申し上げましたけれども、販売額五十億円未満の中小規模導入率というのは、委員御承知のとおり、依然低い状況にあるわけでございます。そこで、今後におきましては、ごくごく小さい地場の企業はともかくとして、一応販売額が年間一億円から五十億円といった中小規模企業について積極的に導入の推進を図っていくこととしているわけでございます。  また、食品分野ごとの取組状況を見ますと、これまで食肉加工品とか水産加工品など二十一の業種においてこの法律によりますHACCP手法導入のための取組が行われておりますが、実はこの二十一業種で食品製造業の出荷額、事業所を含めて、出荷額においても事業所におきましても六、七割をカバーできるという状況になっております。  さらに、近年、単身世帯の増加を背景といたしまして、中食と言われる部門の市場規模が広がっています。中食というと、代表的なものはお弁当屋さんでございます。コンビニエンスストアなどで売っているお弁当などを扱っております。ここが社団法人を立ち上げまして、日本べんとう振興協会というのを立ち上げたわけでございます。この振興協会も、信頼度を高めるというために、そのお弁当製造業者の会員に呼びかけまして、この法律が延長されましたら、なるべく早い期間に認定機関になりたいと、そして認定機関になって会員企業HACCP手法計画的な導入を勧めたいと、こういう意向でございます。  ですから、そういう新しい、非常に消費者との接点の多い業種などは、最近の食品の安全に対する関心が高まっているということもございますし、従業員に対するコンプライアンスの意識の徹底というようなことを図る上にも有効だと、そういう効果も既に導入した企業の側から出ておりますから、これらを周知しながら、今申し上げたような形で、導入希望のある中小企業の皆さん方がすべてその希望が達せられるように、そしてこれが達成された暁においては、一億以上五十億の業者についていうと五〇%の達成率になると、その辺を目標にして進めてまいりたいと、このように考えております。
  46. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 私は、法律を制定するあるいは延長をする、そういうことになりますれば、最終的にどういった形に持っていこうというのがやっぱり見えてこないとなかなか進んでいかない、促進できないと、こういう問題があろうと思うんですね。厳しい言い方をするならば、今回の法案は言わば現行法を一部変えて単純延長されているのではないのかなということも思わないでもないんです、思わないでもない。  ただ、今大臣の御答弁を聞いて、新たな動きが出てきている、これは中食を中心にというお話がありましたので、そういう意味では前進しているんだろうというふうに思うんですが、ただ、やっぱり今までのこの法律の延長を考えてみますと、当初は確かにO157が背景にあったというふうに思います。五年前は、御承知のようにBSEが発生した。今回の延長の背景には、要は中国ギョーザ問題だったり、あるいは吉兆の問題であったり、いろんなそういう消費者の食に対する、不安に対する私は問題があったもんですから、今回こういった再延長になったんだろうと、言わば社会的な背景を基にしてこういう延長延長で来ているのではないのかなという思いをしているわけです。  そうじゃなくて、やはりこの法律を、先ほど申し上げましたように、作る以上、あるいは延長するからにはここまでやるんだというものがないと私はこの促進はできないと、できにくいと、こういうふうに思っておりました。しかし、先ほどの大臣答弁である程度、私のこういった疑念もある程度払拭はされつつあるんですけれど、ただ、じゃ今後本当にどんどん進んでいくかとなると、いろいろ難しい面が多いのではないのかなというふうに思うわけです。  先ほど、五十億以上の企業によってはもう七〇%のHACCP手法導入しているというお話がありました。この五年間には一億から五十億、この中小企業対象にして導入を促進していきたいと、こういうお話があったわけですが、ただ金額的な、中小企業だとか大企業とかという私はそういう分類ではなくして、要は業種によって非常に、先ほど大臣答弁にもありましたように進んでいる業種もあるわけですね。だったならば、そこの業界はきっちりと一〇〇に行くまで業種ごとのやはりこの目標みたいなのもあって私はしかるべきであって、金額的なその資本金で枠をはめるのでなくして、業種別に、やっぱりこの業種は非常に難しい状況があると、中小企業が多くてなかなかこれは資金的な面もあるので難しいよと、あるいはまた人手が足りないよと、こういったようなことで難しい業種も私はあると思うんですね。  それともう一つは、消費者の皆さん方がやっぱり関心のある食品、業種、こういうものに対しては、私はきっちりとそういうものもセレクトしながら導入を促進した方がいいのではないかと。だから、金額的なそういう導入の促進の仕方と、業種別のといいますか、そういうターゲットを絞り込んだ進め方というのが両方あると思うんですけれども、その辺についてどうお考えですか。
  47. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 確かに今私ども中小企業の規模で五〇%、五十億から一億、この規模を今当面の目標ということで掲げているわけでございます。その最終的な目標というお尋ねもありましたが、まずはこの五〇%達成に向けて努力をしたいということでございます。  それと、あとは業種別の取組状況、こういったことをきちっと把握して導入を推進していくべきではないかという御指摘はもっともだというふうに思っています。  私ども、これまでHACCP導入の進捗状況につきましては、おおむね四、五年ごとに調査してきたわけでございますが、本年度からは毎年この調査をしたいというふうに思っております。その結果を見まして、当然のことながら、製造事業所別にどのぐらいの進捗があるかといったことについてもはっきりしてくると思いますので、そういった調査に基づきまして、施策の有効性も検証しながら、御指摘のような点もどこまでできるか踏まえまして、効果的な施策の推進に努めてまいりたいというふうに考えております。
  48. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 なかなかこのHACCP手法については、先ほど来御質問の中にもありましたように、国民の皆さん方が、消費者の皆さんがどれだけ認知しているのかと、あるいはまた導入する側もどれだけのメリットがあるのかという、やっぱりその思いはあると思うんですね。ですから、町田局長が最初の高橋委員質問にお答えいただいたように、やはりこのHACCP手法導入するにはやっぱり金が掛かる、設備投資が掛かる。  私の地元の鹿児島の食肉会社が今改築をしておりますが、今回HACCP導入したいということでやっております。で、後ほどちょっと申し上げたいと思っているんですが、要は金も相当、普通の施設の投資額よりもやはり二割ぐらいは確実に金が掛かってしまうというのが一つあるんですね。それが中小の皆さん方になるとやっぱり相当のコスト高になるというふうに思うわけでありますが、人手も掛かるし、投資もやっぱり大きくなってくる。そうしますと、企業というのはやっぱり収益を生み出さなきゃなりませんから、コストが掛かった分だけ収益が出てくれば、これはどこの企業とて、中小企業であろうと大企業であろうと必ず私は導入されてくると思うんですね。しかしながら、残念ながらそのコストに見合う収益が私は確保されないところにやっぱり問題があるというふうに思うわけでございます。  何を言いたいかというと、いわゆるHACCP手法によって製造された食品や、あるいは導入した企業が市場において私は適切に評価されていないのではないのかなと。認知度が低いという先ほどの話もありました。だから、そういう意味で、認知度が低いものですから適切に評価されていない。その結果、他の同類の例えば食品と差別化が図られない、価格の優位性を確保できない。やってもやらなくても価格が一緒では、それはなかなか企業としてはコストを掛けにくくなってくるのではないかなというふうに思うわけでありまして、ある業者の皆さん方から聞きますと、単なる会社のステータスが上がるのみで何のメリットもないよという話も実は聞いたことがございます。  ですから、そういうような意識がある中でこの導入を、今回延長してまた促進されていくわけでありますが、やはり、先ほど来ありますように、HACCP手法による安全性というのを国民にどのように知らしめて導入企業の価格の優位性を確保するか、あるいは、社会的な地位は当然だとしても、やはり価格の面で何か優位性がないと私はなかなか難しいのではないのかなと、こういうふうに思うわけであります。  それからもう一つは、これはもう大臣もインセンティブを働かさなきゃいかぬというようなお話がございました。インセンティブを働かせるのに今あるのは、税法と、先ほども申し上げましたように融資の面での支援措置でありますけれども、本当に中小企業の皆さん方がこれだけでインセンティブが働くのかなという実は思いがございます。また何か、やはりこれだけ、先ほど一億から五十億を五〇%ぐらいには全体を持ち上げたいと、こういうお話もあるわけですが、何らかやっぱり政策的に集中していかないと、金融と税制だけで本当にインセンティブが働くのか。大臣は先ほど消費者団体の皆さん方にもきっちりこのことを、いろんな団体の皆さん方にもその啓蒙をしていきたいというお話もありましたけれども、本当にソフト的な面だけでインセンティブが働くのかな、中小企業の皆さん方が入れていただけるのかな、こういう思いがあるんですけれども、その辺についてはどのようにお考えですか。
  49. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 私ども、十八年度HACCP手法導入、この効果について調査をいたしました。効果として挙げられているのは、品質・安全性の向上従業員の意識の向上企業の信用度やイメージの向上といった、いわゆるソフト面とおっしゃいましたが、定性的な効果とともに、事故対策コストの削減、製品ロスの削減、取引の増加、言わば数字に反映するような定量的な効果も挙げられているということでございます。  課題としてなかなか踏み切れない、そこのインセンティブはなかなかないんじゃないかということで、まさにそのインセンティブを高めていくということにおきましては、先ほど大臣も御答弁をいたしましたが、消費者理解が深まっていくということはこれ大変やっぱり重要だというふうに私ども考えております。この消費者認知度を高めるための具体的な対応、これをよく検討してまいりたいというふうに考えております。
  50. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 今御答弁いただきましたように、やっぱり作る側、製造業者の皆さん方も、しっかりと消費者の皆さん方から評価されないとやっぱりコストを掛ける、人手を掛ける、そしてさっきから言いますように、価格の優位性も確保できない。何らかの、見返りとは言いませんよ、何らかのやっぱりそういう効果がないと、作る側だってなかなか燃えてこないというふうに思いますので、今局長答弁されましたように、やっぱりいろんな形でこの政策を集中しながら、このことの認知度を是非とも高めていただきたいというふうに思います。  そこで、先ほど業種別というお話をしましたけれども、この計画認定を見ていきますと、認定機関別に見ますと、大変認定度の高いところと全くないところというのが見受けられるんですね。  具体的に申し上げますと、日本炊飯協会は五十九の認定になっておりますよね、二百五十の中の五十九。一方、逆に、日本ソース工業会とか、これはもうゼロであります。それから、漬物協同組合連合会なりあるいは食品分析センター、これは一。日本乳業技術協会なり乾麺協同組合連合会あるいはパン工業会、これは二つしかないと。非常に業種別のばらつきがあるんですね。  ですから、この業種別のばらつきというのをどのように是正するおつもりなんですかね。でないと、これは満遍なく、さっきから僕が申し上げておりますように、一億から五十億とかというふうなそういう金額的なターゲットの絞り方じゃなくて、こういう認定機関になっているにもかかわらず、ここがやっぱり扇のかなめだと思うんです。こういう認定機関がそこの業界に対する働きかけというのが非常に団体ごとに私は濃淡があるんじゃないかと、こういうふうに思うものですから。今後の認定機関に対する御指導、どのようにお考えですか。
  51. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 大変重要な御指摘をいただきました。  この法律のスキームでは、まさに事業者団体が指定認定機関となりまして高度化基準を作ると。その認定を受けて、実際に高度化計画を事業者が策定するということでございます。これまでに二百五十件の実績があるわけでございますが、製造業種、食品分野によって様々な数値となっているということでございます。これは、私どもが積極的なそういう認定を受けていただいてこれを広めていただくということを働きかけてきておりますので、それぞれやはり製造工程等違いますので、HACCPの手法がより必要なところ、またさほどではないというようなところもそれは実態としてあろうかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、このHACCP手法導入し推進するためには、指定認定機関となっている今二十一、この各業界団体によります傘下の会員企業に対する働きかけ、こういった積極的な取組が重要であると私ども考えているところでございます。  これをどう進めていくかということでございますが、経営者を対象といたしましたHACCP手法導入のためのトップセミナーを開催する、これはもう業界団体にやっていただくということ、また、導入した企業に対する指導、これをきちっとやって実績を出している、そういった業界あります。そういった業界につきましては支援を行うということにしております。これから取り組むお弁当のようなところも支援していこうというふうに思っております。  こういういい事例がよりほかの団体にも広がるような、そういったことでより実績といいましょうか普及が進むような、そういう取組を進めてまいりたいというふうに考えております。
  52. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 先ほど米長委員質問の中で、このHACCPに対する義務化というお話がございました。大変これは、いろんな業界というか業種によっても違うわけでありますが、なかなかこの導入を、これだけまだ順調にいっていないということも申し上げましたけれども、その中で義務化というのは大変これは厳しい話だというふうにも理解はしております。  ただ、ただ私は、本家本元であるところのアメリカでさえも、これはもう御承知のとおり、水産であったり、食肉であったり、あるいはジュースであったりとかいう産業しかこれは義務化されてない。私は、すべて食品加工業界に義務化をやれという意味じゃなくて、やれるところからやる必要があるのではないのかという視点で御質問を申し上げる次第であります。  といいますのは、現在、我が国がアメリカに牛肉を輸出しております。牛肉を輸出しているけれども、これだけたくさんある、五百幾らあるんですかね、食肉の処理場、加工場というのは。その中でわずか四つしかないんですよね。これは、私の鹿児島の南九州畜産興業と、それからサンキョーミート、そして宮崎のミヤチク、群馬の食肉卸市場ですね、この四つしかないんです。  何で四つしかないのかと。これは、アメリカのHACCPの認定工場じゃない、ほかのがないから、認定された四工場しか入れてないんです。食肉処理場は幾らでもありますけれども、輸出ができない。アメリカが、アメリカのHACCPの水準に達してないところは入れてくれないんです。ですから、いろいろ輸出をしよう、しようといっても、なかなかそういうのを、HACCP手法を、アメリカと同水準を持ってないとできないと。そして、ちゃんと査察にも来るわけであります。  だから、そういう厳しいHACCP手法をアメリカは義務化しているわけですから、そうすると、日本も同じように義務化したところは、日本と同水準のHACCP手法でやってないと輸入はできません、これは貿易の障壁にはならないわけでありますから。  だから、絶対にこういうことも、すべてとは、先ほど言いましたように、できるところから私はやっぱり義務化もやっていかないと、何でもかんでも食品加工が入ってくる、食品の輸入が来る、これではなかなかやっぱり国民の皆さん方も安心して食べられないという思いがあるのではないかというふうに思うわけでございます。  ですから、先ほどの検疫所の話じゃないですけれども、生産者の皆さん方は、十八年の五月にポジティブリストを入れましたね。これは厚労省の法律によってやったわけでありますけれども、大変いろいろ現場では混乱がありました。でも、やはり未登録の農薬は使わない、失効した農薬は使わないということで、今現場では一生懸命努力して定着してきましたよ。だから、消費者の皆さん方も、日本の食べ物は、生産者の作るものは安心、安全だという認識を非常に持っていただいていると思うんです。にもかかわらず、そういう問題が輸入食品検査で出てくるから、私はやっぱり憤慨に堪えないわけでありますが。  そういう国内の農家に使っちゃいけない農薬、その代わり外国のものも入れませんよということで検疫所があるはずなんです。だから、それと同じように国内の生産者が一生懸命努力する、そして同水準のものでないと輸入はできませんよということで、いろんな輸入野菜等々を残留農薬をチェックしていただいているわけですから、私は、このHACCP手法もそこまで高めていく必要があるのではないかというふうに思うわけです。  ただ、これは業界の皆さん方のいろんな、先ほど来申し上げますように、本当にこの食品業界というのは九割方が中小企業ですから、無理な負担をお掛けするわけにはいきませんが、しかし、できるところからやっぱり私は目指すべきじゃないのかということを申し上げて終わりたいと思いますけれども、その辺についてどのようにお考えですか。
  53. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、米国などにおきましても、施設の規模に応じて、またいろいろな分野ごとに段階的にHACCPの適用を義務付けているということは私ども承知いたしております。そういう意味で、国民の食の安全を守るという観点から、どこまでの義務付けが必要なのか。  基本的には、食品衛生法が公衆衛生の向上の見地から様々な規制を設けておりますので、私どもとしては、基本的にまずその法体系の中で基本的な安全というのは確保されているという認識はいたしておりますけれども、より高度な安全管理の体制を取っていくためにやはりHACCPというのは望ましいのではないかということで、食品衛生法上位置付けております。  そういう意味で、今先生おっしゃられましたように、どこまで義務付けができるのかということにつきましては、今後とも国際的な動向、米国などの今例をお引きになられましたが、EUの状況ども勘案しつつ、また我が国の食品製造施設等におけるHACCP取組状況、こういうことを勘案しながら、慎重に検討してまいりたいと、このように考えております。
  54. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 あと二分になりましたので、若林大臣お願いを申し上げたいというふうに思います。  この法案とは直接的に関連はないわけでありますが、大臣は国会の許しがあれば六月三日からFAOのハイレベル会合に行かれるし、そして六月四、五ではOECDの閣僚理事会、五日にはWTOの非公式閣僚会議があると。出席かなえばという話でありますけれども、そのように伺っております。  そこで、五月二十日に出ましたファルコナーの第二次改訂案でありますけれども、私は、これはもう改訂案じゃないと。一次案に対する本当にもう手直しがちょこっとあるぐらいで、二次改訂案と言われるようなものじゃないと思うんですね。ということは、いわゆる日本が主張しております上限関税の問題だったり、あるいは重要品目の数であったり枠であったりという、全くここは、重要事項というのは一歩も前進していない。一歩もというのはおかしいんですけれども、数がちょっとすべての品目になりましたからいいんですが。  ただ、私は、これは憶測なのかもしれませんけれども、非常に交渉が行き詰まってきているのではないのかと、交渉団による交渉が行き詰まってきたと。そうして、非公式とはいえ、だんだんこうした閣僚会議等々でWTOの議論をしてもらおうと。つまり、交渉が行き詰まって、あとは言わば政治にゆだねるという形になるのが一番実は怖いんで、これは決して日本のために私はならないと思うんですね。  ですから、まだまだ粘り強く交渉団で交渉しろと、こういうふうに是非、今回もし行かれることがあれば大臣の方からその辺を発言していただきたいなと、こういう思いでございますので、時間が来ました。何か一言ございましたら、あと三十秒ぐらいありますので、よろしくお願いいたします。
  55. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員がいろいろ御心配をいただいておりますこともしっかりと受け止めながら、国会のお許しがいただければ今委員がおっしゃられましたような国際会議の場に出させていただいて、国際会議の場においては、世界で一番の食料の輸入大国でございます。そういう我が国の立場からこのWTOの進め方について、今まで主張してきた重要事項、関心事項、これらについてしっかりと話し込んできたいと、こう思っております。
  56. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 よろしくお願いします。終わります。
  57. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合です。  本法案は、食品製造事業者HACCP手法導入するため一定の施設整備を行う際の金融・税制上の措置を講じて支援をすることを目的としたものでありまして、それ自体は結構なことであります。  しかしながら、これまでHACCP手法導入している普及率、導入率が目標に達していないということで、とりわけ中小規模の、先ほど販売額五十億円未満ということでありましたが、中小規模企業導入率が低いわけでありますが、そこで、中小規模での普及率五〇%という目標を掲げておりますが、果たして今後うまくいくのか、この普及率五〇%を目指してどのように対策を考えているのか、まずその点について確認をさせてください。
  58. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 中小規模企業HACCP手法導入に当たりましては、施設整備の資金人材確保、この二つが大きな課題であると認識しております。本法による長期低利資金と併せまして、人材育成のための研修等の支援を行ってきたところでございますが、平成二十年度におきましてはこれを大幅に拡充したところでございます。  また、HACCP手法導入にかかわります施設整備投資や人材育成経費につきましては、中小企業投資促進税制や人材投資促進税制などの税制特例の適用も可能であります。これらの特例の活用もしながら推進をしてまいりたいというふうに考えております。
  59. 谷合正明

    ○谷合正明君 アンケート調査を取りますと、やはり今おっしゃっていただいたような人材育成の話と低利の融資制度、これについて、大変役に立つ制度であるのでここを充実してほしいという話だと思います。とりわけHACCP手法を広めていく上での人材育成あるいは指導者の話でありますが、これまで具体的にこの人材育成というのはどういったことをされてきて実績を積んできたのか、また今後の取組の強化についてもう少し具体的に踏み込んでお話をしていただければというふうに思います。
  60. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 農林水産省におきましては、HACCP手法導入に必要な人材の育成を図りますため、中小企業の中で、社内でHACCP手法導入を推進できる責任者、また企業の外部から中小企業指導、助言できる者を養成するためのセミナー研修等に対して支援を行ってきたところでございます。  これまでの実績でございますが、社内におけるHACCP責任者養成につきましては、平成十五年度から十九年度までの五年間に約一千四百名を養成をしております。また、社外におけますHACCP指導者でございますが、同じく五年間に二百七十名を養成したところでございます。  これらの人材につきましては、その多くが、受講後、それぞれの企業におきまして、HACCPプランの作成に携わるなど研修の経験を生かした活動を行いまして、製造現場の衛生・品質管理向上に役立っているというふうに伺っているところでございます。  平成二十年度におきましては、これらのHACCP責任者指導者層確保するための研修につきまして、予定人数をこれまでに比べて倍増させるなどの拡充実施したいというふうに思っております。また、併せまして、企業経営トップ対象といたしましたHACCP手法導入による従業員の意識の向上企業イメージ向上などの具体的な成功事例を紹介するトップセミナーを開催するほか、HACCP手法導入につきまして指導、助言できる者、こういった方をコンサルタントとして登録して、導入を検討している企業に対して紹介する、こういった取組も支援してまいりたいというふうに考えております。  今後とも、HACCP手法導入に必要な人材育成に努めてまいりたいというふうに考えております。
  61. 谷合正明

    ○谷合正明君 人材育成の問題と並んで、施設の整備、ここに多額の資金、金額が、投資が必要であるということがネックになっているわけであります。こうした点について、まず確認ですけれどもHACCP導入に必要な施設整備というのは通常よりどれくらい割高になっているのかという数字の確認と、もう一つは、なぜそういう割高になるのか、その理由についてどのように把握されているのか、この点について確認させてください。
  62. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) これまでの導入実績等から見ますと、通常の施設と比較しまして、HACCP手法導入施設につきましては約三割程度割高となっているところでございます。この点につきましては、HACCP手法導入するためには、建物、施設は交差汚染を防止できるという構造となっている必要があるということ、また、重要管理点での温度、時間の監視や記録、こういったことが必要とされるわけでございますが、そのためには一定の機械・装置が必要であること、こういった理由によるというふうに承知しております。
  63. 谷合正明

    ○谷合正明君 今、交差汚染防止のための施設の基準の話もありました。高度化基準の一つに、まさに施設の整備の基準というのが設けられております。今言われたような交差汚染の防止であるとか空調設備であるとか監視制御装置でありますとかでありますが、このHACCP法では施設整備の基準というのは、まずこれどのようになってどのように決められているのか、具体的に教えていただければと思います。
  64. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) お答え申し上げます。  本法におけます施設整備の基準でございますが、農林水産大臣及び厚生労働大臣が策定いたします基本方針で定めているところでございます。  具体的な内容でございますが、一点目、建物・構造に関する基準といたしましては、交差汚染防止の観点から、一つとして、清浄区域と汚染区域が隔壁で仕切られているということ。二つ目として、原材料の搬入から製品の保管、出荷までの過程が交差せずに配置される十分な広さを有するということ。また、清浄区域は原則として清浄な空気を保つための設備、細菌等の混入を防止できるようなそういった空気清浄機、こういったことが備わっていること。こういったことを定めているところでございます。  また、二つ目の機械・装置の基準でございますが、先ほども若干申し上げましたが、重要管理点となります工程での温度や時間を常時監視し、記録できるモニターなどの機械・装置を適切に配置すること、こういったことを定めているところでございます。
  65. 谷合正明

    ○谷合正明君 今お話がありました、この基準の話であります。これは実際コストに反映されてくる点にはなろうかと思っておりますが、まず全体的なお話として、中小企業における導入促進のためにできるだけコストを抑えていくという点があろうかと思いますが、融資のメニューは充実させることはあったとしましても、コストをまず下げていくという努力もあろうかと思いますが、まずこの点について、どういったことが可能なのか、どういった対策があるのか、現在の検討状況を教えてください。
  66. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 御指摘をいただきましたように、中小企業におけますHACCP手法導入を促進するためには、施設整備が過度の負担につながることがないように配慮すべきというふうに考えているところでございます。  このため、本法に基づく基本方針におきまして負担の軽減への配慮、こういった項目を設けておりまして、事業者団体、指定認定機関でございますが、これに対しましてHACCP手法導入の際の施設整備が過度の製造コストの負担につながらないよう留意することを定めているところでございます。  また、先ほど申し上げましたが、平成二十年度HACCP手法導入促進のための予算を大幅に拡充したと申し上げましたが、この中で新たに施設整備にできるだけコストを掛けないよう工夫したモデル的な導入事例につきましても調査分析をいたしまして、その内容を紹介するなどの取組を推進することとしております。  今後とも、こうした取組を通じまして、中小食品企業の実態を踏まえながら、できるだけコストの掛からないHACCP手法導入促進に努めてまいりたいというふうに考えております。
  67. 谷合正明

    ○谷合正明君 安価で簡易なHACCP手法、どういう導入の仕方があるのか、そういった情報の共有であるとか、そもそものHACCP手法導入コスト低減策の研究というのを十分していただきたいというふうに考えております。  更に言えば、特別な施設や設備が本当にどこまで必要であるのか、この点についても改めて検証する必要もあろうかと思っております。  まず、中小企業での更なる円滑な導入を促進していくために、例えば基準、先ほど言った基準という問題もあると思うんですが、この基準の見直しを含めてコストを削減していく努力というのが必要だと思いますが、改めて確認させていただきますが、可能なのかどうか、この辺、御答弁をいただければと思います。
  68. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 先ほど申しました施設といった構造基準、また機械・装置の基準、これはまさに交差汚染を防止するという観点からやっているものでございます。HACCP手法を適切に導入するため実施するというのが前提条件となっているわけでございますが、製造現場の実態も踏まえまして、また専門家の意見もよく聞きながら、厚生労働省とも連携して、御指摘の点についてはよく勉強してまいりたいというふうに考えております。
  69. 谷合正明

    ○谷合正明君 当然、本来の目的を守るための基準であるんでありますが、その基準が余りに実態とどうなのかと、中小企業経営状況と比べたときにどうなのかという、その辺の検証も必要であろうと思って、そういうことで要望させていただきました。  その上で、大臣質問させていただきますが、HACCP導入促進のために中小、いわゆる食品産業ですね、このHACCP導入策もそうなんですが、そもそもこの食品産業というのは我が国の製造業全体の出荷額の約一割を占める大きな規模でもありますし、また地域の基幹産業でもあるわけであります。地域の農林水産物を原材料として利用してきたという歴史があるがゆえに、逆に言うと、中小零細の産業構造にもなっているわけでありますが、この辺り、食品産業の足腰を強化していく、農水省としてどのようにこの食品産業の競争力の強化に向けた取組がなされるのか、この点について大臣からの御答弁お願いしたいと思います。
  70. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 我が国の食品産業、大きく言いますと、輸入の原材料を使って加工をして国内に供給するという、例えば油、油脂産業とか、あるいは製粉の企業とか、あるいは配合飼料なんかもそうですね、これは食品の前の産業になるわけですけれども、そういうようなものと、国内の農産物を原材料として加工している食品産業と、大きく分けられると思います。  私は、やはり重要なのは、国内の農産物を原材料としていく食品産業というものが力強く活性化していくということがまた国内の農業の地域の発展にもつながっていく、そういう意味で重要な役割を果たしていると認識いたしておりますが、食品産業を取り巻く状況は、もう委員も御承知のとおり、大変厳しい状況になっております。かてて加えて、そういう中で食品の安全の問題というのが、近年非常に不祥事が起こったりしまして信頼を失うようなことがございました。そういう中で、食品企業、産業は大変努力しているのに努力がなかなか報いられないという状況になっているというふうに承知いたしております。  そこで、本法によりますHACCP手法導入を促進する、あるいはまたもう既に指導指針を出しておりますコンプライアンスを徹底するための体制の整備、こういうことを支援をしていくわけでございますが、そのほかに、今委員がおっしゃられました足腰の強い食品産業にしていくためにという観点で、五月の十六日に成立をさせていただきました農商工連携の促進法の枠組みを活用した食品産業と農林水産業との連携によりまして、どんどんと変わっていきます食品需要の拡大に対して対応できるようなそういう経営体質に改善していく、そういうことも促進したいということが一つでございます。  それから二つ目は、やはり消費者ニーズに対応しまして、産学官連携によります新食品、新素材などの技術開発というものを支援をしていく。例えば、米粉のめん類だとかパンだとかとなりますと、小麦粉よりも微粒子の、小さい粉をひいていくというようなことになってきます。そういうような食品加工業、さらに、それをパンなりめんに切り替えていくというようなそういう新商品への対応というようなことも支援をしていく必要があるんじゃないかと思っています。  それから、輸出でございます。実は、東アジア食品産業活性化戦略というものを立てまして、特にアジア地域におきます食品産業、所得が上がってきますと加工度の高いものを望んでくるようになっております。そういう意味でアジア地域で、まあセミナーも開催いたしましたけれども、そういう海外展開を支援をしていきたい、こんな思いでございます。  海外展開をしていくときにはやはり安全性ということに対する要請というのが当然あるわけでございますから、そこでまた元に戻って、このHACCP手法導入を始めとした製造過程信頼度確保というようなことを業界にも訴えていきたい、こんなふうに考えているところでございます。
  71. 谷合正明

    ○谷合正明君 ありがとうございます。  私は、ある若手の経営者の方にお話しして、日本の農業をどうするかという話をしたときに、これからメード・イン・ジャパンとチェックド・バイ・ジャパンということも大事であると。つまり、日本国産品というのは今非常にブランド化になってきて非常に世界中からも高く評価されてきたし、もう一つは、進むべき道としてはチェックド・バイ・ジャパン、いわゆる安全性の信頼性の部分、ここは我が国特有の技術を持っているという話でありました。ですので、今の大臣のお話を伺っても、やはりその辺のことを、やっぱり我々の強みというのをしっかり生かさなきゃいけないなというふうに認識した次第なんですが。  いずれにしましても、我が国の食品産業の競争力、足腰の強化と、一方で国産農林水産物の利用拡大というのも併せて図っていけるような施策をしっかり展開していただきたいということを要望させていただきまして、私の質問を終わりにします。
  72. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  HACCP法による高度化計画の認定数ですけれども、これ十年でわずか二百五十件ということで、遅々として進んでいないという状況になっているわけですけれども、その原因について、何だとお考えでしょうか。まずお願いします。
  73. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員が御指摘のように、この高度化計画の認定は二百五十件でございます。しかも、これらの多くが大企業に偏っているということであるわけでございます。  業種別に見ますと、食肉加工品とか水産加工品など、これ二十一業種についてHACCP手法導入のための取組が行われてきているわけでございますけれども、やはり規模別に見ますと、年間の販売規模五十億円以下の中小企業、まあ一億円以上というふうに限定いたしますと、その導入率は非常に低いわけでございます。  じゃ、なぜ低いのかと。その意向調査などをいたしますと、やはり投資をする資金の負担が大きいと。そしてまた、そういう近代的な施設管理のための人の確保、それだけの技術者の確保が必要になってくるけれども、それがなかなか難しいというような意向が問題点として言われているわけでございます。ですから、企業規模が小さくなるほどこうした資金面とかあるいは人材確保ということが大きな課題になっており、そこのところを支援をするということが必要になっていると考えております。
  74. 紙智子

    ○紙智子君 今年の「食品衛生研究」という雑誌の五月号に、HACCPシステムの導入現場における課題という論文があります。  そこで指摘されているのは、一つはHACCPシステムは複雑で難しいということが一つ。それから、導入には費用が掛かり大企業しか対応できないと。今、大臣言われたことでもあります。それから、我が国の社会システムになじまないという声があると。  その中で費用が掛かるという問題についてお聞きしたいわけですけれどもHACCPというのはシステムですよね。システムであって設備ではないと。ですから、費用が掛かるということは本来はあり得ないことではないかと。  そこで、厚生労働省にお聞きしたいんですけれども、現状で食品を製造している企業は、保健所が製造を認めている施設であれば、一定の衛生基準をクリアしているはずですよね。で、その施設にHACCPシステムを導入するのであれば、新たな設備投資というのはそんな必要ないんじゃないのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  75. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  HACCP手法のその基本となりますのが、いわゆる七原則と十二手順というふうに申し上げておりますけれども、全体として、ソフトのシステムとしてどのように非常に危害をもたらすおそれのあるところを特定して、そのための管理を徹底するかということでございます。そういう意味では、私ども食品衛生法に基づきましてこの規定がなされて、それにつきまして省令において具体的にどのような要件を満たすべきかということを規定しているところでございます。  そういう意味では、私どもの承認、HACCP制度の承認という、食品衛生法に基づきます認証につきましては特段の施設の整備というものを義務付けているわけではございませんけれども、広い意味HACCPの重要管理点を設定して、そこの管理を行っていく際に、ある程度衛生管理を容易にするためにそういうふうな施設整備を行うことが望ましいとか、よりスムーズな形で行われるということはあり得るのではないかというふうに考えているところでございます。
  76. 紙智子

    ○紙智子君 望ましいという形で言われていて、特段、だからそのためにということではないという理解だと思うんですけれども、そこにどうして導入には費用が掛かるという意識になるのかというと、やっぱり一つにはゼネコンなどがHACCPシステムの導入の売り込みをしているわけですよね。だから、導入する際に、エアシャワーを付けましょうかとか、それから新たな温度管理設備を導入しましょうかとか、場合によっては工場そのものを建て替えましょうかとかいうことも含めて、そういうやり方で売り込みを掛けているというのがあって、そうなると中小企業はとても手が出ないということになってしまうんだと思うんです。  それで、本来、HACCPシステムは微生物の汚染がされやすい点をモニタリングをしてやっていくシステムだから、設備投資ということではないと。その点では、そういうものなんだということのアピールがまだまだ不足をしているんじゃないかということで、厚生労働省さん、どうでしょうか。
  77. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  HACCP法に基づきます基本方針におきましては、「負担の軽減への配慮」という項目を設けておりまして、事業者団体、指定認定機関に対しまして、HACCP手法導入の際の施設、設備が過度の製造コストの増大につながることのないように留意するように定めているというところでございます。  いずれにいたしましても、そのような法の運用の問題と、それから食品衛生法に基づきます厚生労働省の所管の部分でございますけれども、このHACCPの制度と申しましょうか、その意義、またその構成要素、そしてそれを行っていくために必須な条件と申しましょうか、こういうことを明確にしながら、その点誤解のないように情報提供をしてまいりたいと思いますし、また、そのことによって、本来であればHACCPの承認取得ができる施設がそれを差し控えるということのないような対応を取ってまいりたいと、このように考えております。
  78. 紙智子

    ○紙智子君 農水大臣に最後お聞きしたいんですけれども、最初このHACCP導入するときに、これは一九九五年の食品衛生法の改正で持ち込まれました。それで、そのときは導入企業食品衛生法の規制を緩和されるというメリット措置があったわけです、実施されたわけです。要するに、規制緩和の一環で行われていたということがあるわけですね。しかし、その後、HACCP導入企業であった雪印乳業が戦後最大の食中毒事件を起こして、それでなぜこうなったのかということで議論される中で、やっぱり規制緩和そのものの措置については改めようということで、二〇〇三年の食品衛生法の改正でなくなったわけです。そして、更新制度もこのとき導入されたと思うんですね。  ですから、今は、自らの食品製造の衛生管理を強めようと考えている企業が自主的に取り組む、そういうものになっていると思うんです。その際に、新たな設備投資をしなければならないということでやると、これはまたハードルが高くなってしまうと。そういうことではないんだということを、農林水産大臣農林水産省としてもきちんとアピールすることが大事だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  79. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員が先ほど来御指摘をされておられますHACCP手法導入するために、既存の企業がその既存の企業の施設を生かしながらこれを導入することが負担の軽減になるわけでございまして、そのことについて真剣に取り組んでいかなきゃいけないと、私もそのような考え方でございます。そして、それぞれの食品業種により、規模により対応が皆違ってしかるべきだと思っております。  これから私どもは、いろんな規模の、そういう中小規模で工夫を凝らしてやっているような優良な事例をモデルとして、そういうようなのを調査をした上で、そういう事例をできるだけ紹介をして、このようなやり方であればこんな経費はそんなに掛けないでもできるんですというような形の普及指導といいますか、そういうことに努めていくことが大事なんではないかということを感じているところでございまして、今の御指摘を念頭に置きまして、できるだけの施設の負担を軽減をして、既存企業が既存の施設を利用しながらHACCP手法導入ができるような道についても進めてまいりたい、このように思います。
  80. 紙智子

    ○紙智子君 雪印の事件が起こったときに私は、北海道で乳業メーカーの入っている組合ですとかそれから酪農協会ですとか訪問して意見交換したんですよね。そのときに、これ雪印ばかりの問題じゃないと。森永も明治もよつ葉もやっぱりそういう、HACCPって雪印は一番最初に乳業メーカーでは取り入れたところなんですけど、そういうところが起こしたというのは結局、HACCPを認定したということで安全なんだというのを売りにして、それでそれにあぐらをかいちゃうと、やっぱりきちっと常時安全体制を確保するということが抜けてしまって、そうなると元も子もないということで、やっぱりそこはHACCPが何かやれば万能だということではなくて、あくまでもシステムなわけだから、そこを常にやっぱり点検しながらやっていくというのが必要なんだということを言われていたんですよね。  ですから、やっぱりそういう実質をきちっと取っていくというところの趣旨を本当に徹底していくということが大事だということを改めて私も思うわけですけれども、その点是非よろしく徹底をしていただきたいということを述べまして、質問を終わります。
  81. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  食品製造過程管理高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  82. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  84. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省医薬食品局食品安全部長藤崎清道君外十名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  86. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 農林水産に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  87. 青木愛

    ○青木愛君 民主党の青木愛でございます。よろしくお願いいたします。  先週は、世界の気候変動と食料問題について質問をさせていただきました。本日もそれに関連をして質問をさせていただきます。  御承知のとおり、ここ二、三年の間に米、麦、トウモロコシ、大豆などの主要穀物の価格が軒並み二倍から三倍に高騰しております。その原因として、御指摘ありましたとおり、中国、インド、ブラジルなどの新興国の経済発展に伴って食料需要が増大したこと、また地球温暖化による気候変動の激化で凶作の可能性が増加したこと、また三点目として、アメリカなどが石油代替エネルギーとして穀物を原料とするバイオエタノールの大量生産に力を入れたことなどのため、需要と供給のバランスが逼迫してきたと言われております。さらに加えて、国際投機資金が穀物市場へ流入をしたこと、また、インド、ベトナム、アルゼンチンなどの穀物輸出国が自国の食料の安定確保のために米や小麦の輸出に制限を掛け始めたことなどが価格高騰に拍車を掛けています。  そこでまず、若林農水大臣にお伺いをさせていただきます。  今挙げた要因が複雑に絡まって穀物の需給バランスが崩れ、穀物価格が上昇していると思いますし、これまでの御答弁からそうした御認識でいらっしゃると思いますが、このような現在の食料危機と言われているこの状況は一時的な現象と見ていらっしゃるか、それとも今後、十年、二十年、三十年の間、食料危機の可能性がますます高まっていくと見ておられるか、御見解をお聞かせください。
  88. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 今委員が御指摘になりました要因が様々相関連しながら発生をいたしました穀物価格の高騰だと、そういう認識を共有いたしておりますが、しかし、これは穀物のそれぞれの種類によってまたお互い及ぼす影響の仕方というのは違ってくるという事情もあると思います。ですから、そういう差異はあるけれども、どうもこれが全く一時的なものというふうに考えるのではなくて、中長期に継続する構造的なもののようだな、そういう認識を持っております。
  89. 青木愛

    ○青木愛君 ありがとうございます。私も全く同じように感じております。  さきに挙げた要因のほかにも、これから世界の人口の増加、また途上国の工業化による農地面積の減少などを考えますと、食料の需要に対して十分に供給できない状況はもっともっと深刻になるのではないかと私も心配をしております。  こういう事態になったときに一番被害を被るのは、貧しい国々であると思います。今でもおよそ十億人もの人々が栄養失調や飢餓の脅威にさらされています。そこまで深刻でない国々であっても食料を求めて暴動が発生をし、死者も出ている現状にあります。  食料をめぐって世界は大変厳しい状況になっていることを考えますと、これまでの委員会でも御指摘ありましたように、我が国のミニマムアクセス米の取扱いについては、私も率直に疑問を抱かざるを得ません。日本は一九九三年のガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉の結果、米を輸入することになりました。現在は年間七十六・七万玄米トンを輸入することになっておりますが、そこで三点お伺いをさせていただきたいと思います。  世界は米不足で価格が高騰し、輸入を必要とする国が困っております。このようなときでも、減反政策で、今日の新聞ですと方針も多少変わっていくのかなというふうにも思いますけれども、減反政策で米の収穫を抑えている日本は世界から米を輸入しなければならないのでしょうか。  二点目として、世界で米不足の折に日本ミニマムアクセス米の輸入を断行しますと、米の市場価格をますます上昇させて、米不足で輸入を求めている国々を困らせることになるかと思いますが、その点についていかがでしょうか。  三点目として、そもそも七十六・七万玄米トンの輸入先の主な国はどこでしょうか。昨年実績で輸入総額はいかほどになるか、よろしくお願いいたします。
  90. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 今委員が御質問になられましたまず第一点でございます。国際的な米価格が高騰して米不足の状態があっても、日本ミニマムアクセス米を輸入しなければならない、そういう義務があるのかどうかということでございます。  これは、平成六年の五月の政府統一見解というのがございまして、このときには、このことを衆議院の予算委員会で政府見解というものを答弁をいたしております。それによりますと、我が国が負う国際約束、法的義務の内容は、ミニマムアクセス数量について輸入機会を提供すればいいんだと、提供することが義務なんだというふうにまず理解をしていることでございます。  ただ、我が国の米につきましては、他の諸国と違いまして国家貿易品目、国が独占的にこれを輸入するという国家貿易品目ということにしているわけでございます。そういうことからしますと、このミニマムアクセス機会を設定するのは国でございまして、国がそのように機会を設定しますと、通常は、民間のベースと違いまして、それだけの数量を輸入を行うべきものだというふうに国際的には見られているわけでございます。  しかし、昨今のように、輸出国が凶作で輸出余力がないなど客観的に輸入が困難な例外的ケースにおきましては、現実に輸入される数量がミニマムアクセス機会として設定をいたしました数量に満たなかったとしても、そのことによって直ちに法的義務違反が生ずるものではないというふうに考えております。  二つ目の御質問でございます。そういう需給が逼迫した状況の中で日本ミニマムアクセス米の輸入を継続をするということになりますと、米の国際価格が上昇をして、途上国であります米輸入国が困難な状況に陥るのではないかということでございます。  ミニマムアクセス米の輸入につきましては、そのような国際約束を誠実に履行をするという観点はあるわけでございます。そのような観点を踏まえて輸入機会の提供ということをしていく必要があるわけでございますけれども、その際に、米の国際価格の高騰でありますとか、あるいは国際的な米需給というものに悪影響を与えないように留意しながらその履行をしていくように心掛けていかなければならない、そのことが重要だと考えております。  そして、このミニマムアクセス米の我が国が輸入をしています輸入先でございますが、まず、昨年の実績で、四月から今年の三月までの一年間でございますが、その契約額は五百二十七億円でございます。そして、この主な輸入先は米国、タイ、中国の順になっております。
  91. 青木愛

    ○青木愛君 ありがとうございます。  今、五百二十七億円という御答弁がございました。日本は年間それだけの大きな支出をして、日本の農家には結局喜ばれず、また米不足で困っている国々に対しては結果的に嫌がらせというか、そういうことをしているということになるのではないかというふうに思います。強いて言えば、喜ぶのは輸出をしているアメリカ、タイ、中国、そうした国々の農民ということになるのではないかと思います。  今御答弁にもありましたけれども、MA米の輸入に関して、政府見解では、通常の場合は当該数量の輸入をしなければならないということで、つまりは輸入は義務であるという解釈だと思います。また、しかし、輸出国が凶作等により輸出余力が十分でない場合は、例外的なケースとして輸入しなくても義務違反ではないという解釈のようですけれども大臣が先ほど最初の質問に御答弁いただいたように、食料不足、食料危機が起こる可能性というのはやはり一時的ではないというふうに私も思うわけでありまして、そうしますと、穀物を取り巻く環境は十五年前に合意に調印したときの事情とは全く異なった状況にあるというふうに考えます。当時でいう例外というのはもはや例外ではなく、例外とか通常とかという概念は今の時代には当てはまらないのではないかというふうに思います。  また、もう一つ、当時は穀物の輸出国が輸入を拒否していた国に対しての圧力を掛けて輸入の関税障壁を下げる、撤廃するということを目的にした内容でありましたが、現在は穀物不足で輸入を切望する国にとって、生産輸出国が輸出規制を掛ける、このことは命取りになるだろうと思われます。  WTOの取決めには輸入に関して細かく示されていますが、輸出に関しては明確なルールが示されていないように思います。輸出する方の立場に立って考えられているようにも感じられるのでありますけれども、こうした穀物生産をめぐる状況が一変をしたこと、それからこのWTOの取決めのルールが不十分であるということについて、若林大臣はどのように思われますでしょうか。よろしくお願いします。
  92. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 食料の自給をめぐります環境が大変変化してきております。そういう中にありまして、今委員が御指摘になりましたように、ガット・ウルグアイ・ラウンドで国際約束をしたわけでございます。  この約束をせざるを得なかったのは何かと、こういうふうに申し上げますと、日本の米の価格水準と国際的な価格水準との間に大きな開きがあるわけでございます。そういう大きな開きがある中で、日本の国内生産を守っていくためにはどうしても、関税でありますとか、あるいは一定量の輸入をする場合にありましても、輸入の割当て制度でありますとか、そういうような国境調整措置を講じなければならないわけであります。しかし、世界で先進国はこの国境調整措置をできるだけ少なくして自由貿易の領域を拡大をするんだということで、実はガット時代からそのような自由貿易の拡大が世界経済全体の発展に通じていくんだという、そういう理念の下にガットが進められてまいりました。  そして、WTOの協定も百五十か国に及ぶ多くの国々が、基本的にはそのような世界の経済の成長、発展のためには自由な貿易をできるだけ広げていくことが筋なんだという、そういう中に我が国も加入をしてきたわけでございます。  しかし、我が国の特殊事情を主張いたしました。特殊事情を主張して、当初、ミニマムアクセスを入れないで自由化しないという選択をしましたが、ペナルティーが掛かってくることになります。そういう中で、そのミニマムアクセスを受け入れないと関税で守ることができないという、そういう国際環境の中で苦渋の選択をしたわけでございます。  そのような中で今日を迎えているわけでありますが、なお今、このWTOの次の段階の交渉が八年前にスタートをいたしておりまして、もう八年間にわたって国際協議が今日まで続けられてきているわけであります。いろんな段階を踏んで今日まで来ておりますが、その段階段階で我が国もスイスなど食料の主要輸出国とグループを組みまして、やはりそれぞれの国の農業の持っている多面的な機能ということを主張しまして、障壁をなくしていくなんということはできないということで交渉を続けてきているわけでございます。  しかし、全くできないということは認められないとする多数の意見の中で、段階を踏みながら、今いよいよ大詰めを迎えているというのが今の状況でございまして、我が国は、米などセンシティブな品目については重要品目ということにして例外的扱いをすべきであるということを主張いたしております。その重要品目の数をどうするか。重要品目についての指定をしますと、一定の輸入をすることが求められます。その割当てについては弾力的な取扱いをすべきであるといったような主張をし続けて、この八年間、今日に及んできているわけでありまして、我々としては、そのようなことが認められるということを念じながら、繰り返し我が国の事情を説明をしてきたというのが今日の姿であります。  そして、八年前にこの新しいWTO交渉が始まる際に、輸出国と輸入国との間、委員が御指摘のように、アンバランスであると。輸出国の側は輸入国に対して関税障壁を下げると、アクセスを改善するということを強く主張して、そのような流れができているわけですが、輸出国自身は、それでは何かありましたときに輸出税を掛けるとか輸出に制限を掛けるとか、そういうような形で非常に公平を欠いているではないかということで、我が日本日本提案というのを当時いたしました。  その日本提案の中に、輸出、輸入国の両サイドのバランスが確保されなければならない、そういう意味ではルールを定めなきゃいけないということを主張をしておりまして、実は議長の改訂案ではそのような我が国の主張も一部取り入れまして、ルールを決めていこうということに今なってきているわけでありますが、議長提案のその内容ではなお我々は不十分だというふうに思っておりまして、四月の三十日の農業交渉の全体会合の中で、スイスと共同で更に強化をする修正提案をしているわけでございます。  その修正提案を、これから最終場面に当たって、さらにこれをモダリティーの中に取り入れるように今交渉を続けているところでございまして、そういう意味で、やはり輸出国側が勝手に何か自由にできるようなことがないようにしなきゃいかぬというふうに考えております。
  93. 青木愛

    ○青木愛君 ありがとうございます。  これまでの経過、よく分かりました。その時代時代の状況と対策があったのだろうというふうに思います。是非、このWTOの取決めについても積極的に、本当にリーダーシップを発揮していただきたいと思いますし、またMA米の見直しについても、これは途上国にとっても、また日本の農家にとっても、両方にとってメリットがあると思うんです。今こそ見直しの本当にそのチャンスであるとも思うので、いずれ、時代に合った対応を今後とも是非お願いをしたいというふうに思います。  次の質問に移ります。  現在、大変厳しい状況の途上国でございますけれども、途上国は途上国で、これまで輸入食料は今後もずっと安く手に入るという、そうした甘い見通しに立って農業投資を後回しにしてきたというふうにもとらえることができるかとも思います。日本は、この途上国に対して農業部門でも資金援助や食料支援、また技術指導など、様々な支援活動を展開してきたと思います。アフリカで育つネリカ米の改良ですとか、かんがい施設の整備、また農業用水の確保、農業者の育成などについて、これまでの成果、そして今後の取組について、課題についてお聞かせをください。
  94. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) おっしゃるとおり、各途上国における食料不安というのは、政治的な局面、政治的な混乱の要素にもなりつつあるわけでございますが、とりわけアフリカにつきましては最貧国が非常に多いわけでございます。そのアフリカは、だんだんと米の需要が増えてきているということがございます。いろんな事情によると思うんですけれども、米の需要が増えてきた結果、東南アジアからの輸入に頼るというような状況が生まれてきているわけでございます。  その意味では、アフリカ諸国の成長を図っていくためには、社会的な基盤であります農業、農村というものがしっかりしていかなければならないということで、この農林水産業の振興を図るということが重要な課題と考えております。このために、外務省それからJICAなど関係機関と連携しまして、我が国が持っております稲作技術でありますとか農民組織化のノウハウなどを生かした支援を行ってきたところでございます。  具体的には、高収益の和製品種であるネリカ米につきましては研究者の派遣による品種開発や普及の支援を行ってきておりまして、ギニアとかウガンダなどでは二十万ヘクタール以上で栽培するというふうに至っておりますし、農業用水の確保や効率的な利用につきましては、多くの途上国におけるかんがい施設の整備に加えまして、アジアの方について言えば、インドネシア、タイなどでは我が国の土地改良区をモデルとする農民参加型の水管理技術などを入れております。アフリカにつきましても、水利施設、水の確保ということが大きな課題になってきており、こちらの分野についても更に力を入れていかなければならないと思います。  そして、人材の育成というのが大事でございます。人材の育成については、マラウイ、エチオピアなどの農業者の受入れ研修もやっておりまして、日本の農協のノウハウを移転をするということも行ってきておりまして、今後とも、これらの支援を通じて途上国の農業振興に貢献していきたいと思っておりますが、今まさにアフリカのTICADⅣが開催されるところでございます。明日は、総理もここに出かけます。私も、明後日はこの中で、アフリカの成長という中で農業の分科会がございます。その農業の分科会に私も呼ばれておりまして、ここで、アフリカ諸国の農業関係者との間で、アフリカの農業をどのような形で生産力を上げていくかということについて協議をするというような状況でありまして、我が国はやはりアフリカの成長、発展のために農業が大事だという、基盤になるという視点に立ってアフリカの努力に支援をしてまいりたいと、このように考えております。
  95. 青木愛

    ○青木愛君 ありがとうございます。  日本には優れた農業のノウハウやまた技術力、また、まじめで優秀な農業のマンパワーがございます。環境問題に対する技術力も世界一を誇っております。世界が困っている問題に対して、この農業部門だからこそ日本が先頭に立って、平和的な手段で世界に積極的にもっともっと貢献をしていくべきだというふうに思いますので、是非とも会議大臣に積極的な働きかけをお願いしたいというふうに思います。  最後の質問になります。国内問題について一点質問をさせていただきます。  我が国は、皆様御承知のとおり、カロリーベースで三九%、先進国では自給率最低の食料輸入国となっております。小麦や大豆、トウモロコシの価格が上昇しまして、今年に入って食料価格は大幅に値上がりをしました。給料が上がらない中での物価の上昇は家計を直撃しているのみならず、農業者、製造者、小売業者を困らせております。世界の食料の需給バランスがどんどん悪化していることを考えますと、食料の安定的確保の重要性は更に重みを増してまいります。そのため、まず考えなくてはならないことはやはり自給率の向上であると思います。  そこで、自給率を上げる手段として政府が進めています水田・畑作経営所得安定対策、いわゆる品目横断的経営安定対策についてでございますけれども、これははっきり言って農村ではやはり人気が良くないというふうに感じております。我が民主党は、原則すべての販売農家を対象にした戸別所得補償制度を提案をしています。昨年の参議院選挙では大多数の農家の方々から御支持をいただきまして躍進をすることができました。おかげさまで私も当選することができ、今日ここで質問する機会を与えていただいております。政府の対策がたとえ人気が悪くても自給率向上に資するのであればまだしも、効果を上げるには大変難しいというふうに、私はそう思います。  農業は、ほかの産業とは異なって気候や地形の影響をじかに受けます。逆に言えば、その地域の気候や地形に合った形で農業が営まれ、地域社会が形成されてきたと言えます。そういう農業が農産物の生産や酪農の営みと同時に、自然の景観を守り、国土を守り、文化、伝統をはぐくんできました。そのことを軽視あるいは無視をして、アメリカやオーストラリアなどの農業大国の大規模農業と規模や効率だけで対抗するのは間違っている、無理があると私は思います。  国民の食生活の安全、安心及び農業が持つ多面的な機能を国民全体で支える、維持するという発想の下で徹底した戸別所得補償制度を実施して、農家の方々が安心をして農業ができる、生活ができる、若者もその地で希望ある将来を切り開くことができる、こういうことを国として保障することが何よりも重要であると考えます。  このような見解に対して大臣はどのような感想を持たれるか、最後に御質問させていただきます。
  96. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 大変、日本の農業、とりわけ土地利用型の農業が苦しい状況にあるということについては十分認識をいたしているわけでございますが、しかし、にもかかわらず各地でいろいろと地域的な工夫を凝らし、そして力強く農業経営を営んでいる、そして経営規模の拡大を図っている、そういう人たちも多数生まれてきているという認識を持っております。  そこで、中長期的に考えますれば、効率的かつ安定的な農業経営というものが農業生産の相当部分を担うような形の農業構造をつくっていかなければ、結局この日本の農業生産力というのは拡大、向上しないというふうに考えているわけであります。   しかし、規模拡大といいましても、アメリカなどの国土条件が著しく違う国と経営規模などで対抗するということを念頭に置くものではありません。したがいまして、国内農業の体質の強化を進めると同時に、そうした海外との間にあります埋め難い生産性の格差につきましては、一定の国境措置経営所得安定対策などの政策を組み合わせることによってこれを補正して我が国の農業の持続的な発展を図っていくことが大事だ、このように考えているわけでございます。  そういう角度で、意欲と能力のある担い手、これは個人の場合もありますし集団の場合もあるわけでございますが、土地利用型農業につきましては、やはり規模拡大を志向していく、そういう農業構造の確立が大事であり、そういう経営を育成をしていかなければならない、このように考えているところでございます。
  97. 青木愛

    ○青木愛君 ありがとうございます。  民主党が以前から唱えておりますこの共生の思想でございます。人と人との共生、また人間と自然の共生、都市と農村の共生、農業輸出国と輸入国の共生、また現役世代と高齢者の共生などなど、極めて大切なことだと考えます。この農業の分野におきましても、是非、未来から今日を見るという観点から、間違いのない日本の農政を実行していただきますことを念願をしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  98. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 民主党・新緑風会・国民新・日本亀井亜紀子でございます。今日は私、質問時間が六十分ございまして、長丁場なんですけれども、よろしくお願いいたします。  まず、今日何度か話題にも上っておりますけれども食料自給率についてお伺いをいたします。以前この委員会においてたしか牧野委員質問されていらっしゃいましたけれども、カロリーベースで自給率を出すということの意味についてまずお伺いいたします。  最近、一般市民の間でもカロリーベースで日本食料自給率が三九%ということはよく数字としては知られてきております。自給率が低いということについて国民心配も高まっていると思いますけれども、ただ、この三九%という意味が実際どういうことなのか、国民がよく理解していないのではないかと思うんです。  この三九%、カロリーベースでの自給率というのは、以前、牧野委員が御指摘されたように、平時における、つまり輸入が全く滞りなく行われている状態において日々日本人が必要とするエネルギーのうちどのぐらいの割合が国産の産物で賄われていますかということですから、この数値がイコール食料安全保障、最悪の場合は輸入が途絶えた場合ですけれども、その場合どうすべきかという、そこと直結しないような気がいたします。  私は、多くの一般市民が理解していることというのは、例えば食料自給率が約四割ですと言われたときに、日本の総人口を十として、そのうち四割の人口部分しか国内で自給ができないんですね、六割は飢えてしまうのかと、そういうようなイメージを持っているんじゃないかと思うんですが、このカロリーベースの自給率という考え方が国民に伝わっているかどうか、正しく理解されているかということについて大臣の御見解を伺いたいと思います。
  99. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) このカロリーベースで表示をしているということは、二つあると思います。  一つは、例えば畜産、卵だとかあるいはブロイラー、豚なども分かりやすいんですけれども、ほとんど国内で生産されますが、しかし、そのえさはもうほとんどが輸入の穀物類に依存しているんですね。その場合に、その豚や鶏さんを国内の供給というふうに見ていくのか、そのうち本当に食べているえさというものが輸入されていますから、その割合をどういうふうに見ていくのかという問題が畜産を例に取りますとあるんですね。  そういう意味で、物、分かりやすい、見える形のものでお示しをするというと、非常に正確にお伝えすることが難しい。そこで、それじゃ金額でどうだと、こういうふうになっても、金額も同じような問題が出てまいります。  そこで、どうしても、生きていくための必要な熱量ということに着目をして決めていくということが正しく状況を示すことができることになるんじゃないかという判断が一つと。それからもう一つは、実は国際的に比較をすることによって国民の皆さんも日本の置かれている状況理解していただけると、こういうことになるわけですね。国際比較をするときに、ますます一つの同じ基準というものが必要になってまいります。そういう同じ基準を取るために、カロリー換算をして国際比較をするというようなことが必要になってきたということだと思います。  ですけれども、本来言えば、自給力というものをどのぐらいあるのかというのをしっかり示しておく必要があるわけでありまして、その意味では、金額ベースでありますとか、穀類に限って物ベースでありますとか、部分でありますけれども、その部分をやはり分解しながら、一つの指標だけじゃなくていろいろな形で国民の皆さんにお示しをしていくという努力はやはりしないと、国民の皆さんに分かりにくいのかなというふうに思います。  しかし、カロリーベースが比較の場合の基準としては一番正確に表示できるということでございます。
  100. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 カロリーベースの自給率というのは日本独自のものであって、欧米の場合、自給率というのは穀物自給率でよく計算をされると、そのように聞いております。日本の場合、穀物自給率にしてしまうと今度は二七%ですね。ですから、もっと低くなるわけです。  ただ、私は、いずれにしても、カロリーベースで三九%であっても、やはり先ほど申しましたとおり、食料安全保障の対策とは切り離して考えた方がよいと思うんです。つまり、ふだんの生活において輸入が滞りなく行われているときに三九%であっても、いざ輸入がストップしたときに、こうこうこういう対策で限りなく一〇〇%に近く持っていきますよというその政策がしっかりしていれば、ふだん三九%でも心配ないと思うんですね。  ただ、ふだんの食生活、平時において三九%であるとなかなかそれを一〇〇%には持っていかれませんよということで、ふだんから食料の自給率を高めることが重要であるというそういうことでしょうから、やはり三九%がすなわちすぐ食料安全保障の対策と結び付くかというと違うような気がするんですね。  それで、私、今日、参考資料提出いたしましたけれども、まず一枚目は、細る自給率、日本の自給率がどういう状況か。二枚目が、これ、読売の記者が自給食を体験した、その体験記が書かれております。輸入が途絶えてしまったときに、一日のカロリーを二千二十キロカロリーと国は計算しているわけですけれども、このカロリーに従ってメニューを作って、四日間試したときにこの記者がどういう状態になったかということが書かれております。かなり貧しい、栄養的にも問題のある状態だと思います。こういう記事が出ましたから、一般的に今一般市民の食料自給率に対する関心というのは高まっていると思います。  今度、農水省の方に伺いまして、食料安全保障マニュアルですか、本当に輸入が全く途絶えてしまったときにどういう対策を取り得るのかという、そのレポートをいただきましたけれども、私これを見て愕然としました。  国内生産のみで二千二十キロカロリー供給する場合のメニュー、三ページ目でございますが、朝食、茶わん一杯、ふかし芋二個、ぬか漬け一皿。昼食、焼き芋二本、ふかし芋一個、果物。夕食が茶わん一杯、焼き芋一本、焼き魚一切れ。これに二日に一杯うどんですとか、二日に一杯みそ汁ですとか、三日に二パック納豆、牛乳は六日にやっとコップ一杯、卵は七日に一個、食肉九日に一食。こういう状態だということを知りまして、私本当に愕然といたしました。  これはやはり一般市民は本当に知らないだろうと思います、ここまで深刻な状況になってしまうということ。実際にはなかなか全く輸入が止まってしまうということは考えにくいにしても、今もしそれが起きた場合に、この記者が体験したメニューどころではなくて、もっとひどくなるんですね。  それで、私、どうしてこんなに芋が増えてしまうのかしらと。恐らく一般の人は、私も含めてですが、米は自給できると聞いているわけですから、品目が少なくなっても米ぐらいは食べられるだろうと思っているわけです。ところが、農水省に伺いましたら、単位面積当たりの収量が米よりも芋の方が高いと、カロリーが。ですから、全員が二千二十キロカロリーの食事をしようと思うとこういうメニューになってしまうと。つまり、米は食べられると思っているのに、いざとなったら水田は芋畑に変わってしまうんですかというふうに考えまして、非常にショックだったんですけれども。  これはやはり、戦後六十年以上たって、経済大国と言われながら、輸入がストップしたらたちまちこの状態というのは国家として非常に問題があると思うんですけれども、こういった実態を大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  101. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 深刻だと受け止めております。これが国民の皆さんにまだ知られていないというお話でございます。それは我々のこういう事情を説明する広報活動がまだ弱いということでありましょう。  ただ、このメニューというのはいろんな組合せが考えられますから、そういう意味では一つのパターンであります。場合によってはほかの幾つかのパターンをまた組み合わせながら、国民の皆さんに、こういう危機的な状況が起こったときは大変なんですということで、実はフィードバックして日ごろの食生活の在り方をやはり見直して、日本型の食生活と言われているような、たんぱく質と脂肪と炭水化物のバランスの取れる、そういう食生活、かつてそういう食生活だったわけですけれども、そういうようなことにみんなで努力をしていく、そういうようなことのきっかけにしていきたいなと、こう思っております。  未来を開く食料戦略ということを有識者の皆さん方にお集まりいただいて先般まとめました。そして、そのまとめたものを国民の皆さん方に分かりやすく説明しなきゃいかぬというのが有識者の皆さんの御意見でございましたので、分かりやすい形でまとめていただいたものでございます。  国民への提言ということで、食料の未来を確かなものにするためにと、こういう形のパンフレットを作りまして、今の現状がこのような形になっており、これをどのようにして改善をした上で安定を図っていくかということを皆さん方にお知らせをするというつもりでおります。まだ大量に印刷物できておりませんけれども、近々にこれを印刷に掛けて、できれば国民の皆さんの参加の下に食生活の見直しについての国民運動というような動きになってもらえば有り難いなと、こう思うんですけれども、その中の一つにお米を食べましょうという、そういうことで、それは御飯という形だけでなくても、米粉あるいは米粉パンあるいは米粉のめん類というような形もあり得るわけですね。そういうことをこれからアピールをしていきたい、このように考えております。
  102. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 今の食料自給率のこの危機的な状況というのはやはり政府がもっと一生懸命国民にPRをしていくべきだと思います。やはり食生活を改善しましょう、米をもっと食べましょうとただ言うことと、いざとなったら芋ですよと言うことと、全然その伝わり方が違うわけですから、やはり今の正確な状況国民に対してどんどん伝えていくことが大事なのではないかと思います。  その上で、では、その食料自給率をどのようにして上げていくかということについてお尋ねをいたします。  国民新党の方で先日、先週、五月の二十一日に大臣に対して申入れをいたしました。食料自給率を上げるために講ずるべき対策として十一項目ほど申入れをいたしました。これは米に焦点を当てた対策でございます。  先ほど大臣も米の消費を拡大ということをおっしゃいましたけれども、やはり私たち党の方で随分何回も勉強会を重ねたんですが、転作奨励金が結局うまくいかなかったと。転作を奨励しても米の代わりに作りたいものがないので耕作放棄地が増えてしまって、最終的に意図したようにはいかなかったと。ですから、日本食料自給率を上げていくためには、やはり米をもっと生産できる、やはり米を作りたい人が多いわけですから、米を作れる体制にしていかなくてはいけない。ただ、その米のところを補助して供給過多になっては仕方がないので、その出口の部分、いかにして消費を拡大するかということとセットで考えないと対策にはならないだろうと、そういうふうに考えまして、先日大臣に申し入れた内容を一部紹介させていただきます。  米粉の消費の拡大、今政府も取り組んでいらっしゃいますけれども、今遊休農地が、耕作放棄地が七十万ヘクタールありますけれども、これを米粉用の米、それから飼料用米の作付けをするという申入れをいたしております。そして、非主食用米の作付けに取り組む者が不利にならないように所得措置を講ずること、そして、これ飼料米というふうに私たちが考えましたのは、今トウモロコシの価格も上昇しておりますし、やはり畜産農家が非常に飼料の値が上がって困っているということがありますから、えさ米を作ることによっていわゆる飼料の自給率を国内で上げていくということ、そうすればカロリーベース自給率も畜産の部分少しは上がるんでしょうし、それから、えさ米を作っておけばいざというときに、本当の食料危機のときに、まあそれが人間が食べるという備蓄という意味もありますし、やはり米を作っていくべきだろうと考えました。  そして、以前私、給食に関しての質問もさせていただきましたけれども、週五回あるうちの四回以上を米飯の給食とし、パンを出す場合でも米粉のパンを一〇〇%に公立の学校はできないだろうかと、そういう申入れもいたしております。  それから、食料援助についても考えたんです。今、国際的にいろいろな自然災害が多いですし、ミャンマーのサイクロンですとか四川大地震などございますけれども、そういうときに備蓄米をどんどん出していったらいいじゃないかと、そういう話に党内でなりまして、ただ、きれいな水がないところで米を投下しても役に立たないので、じゃ、米粉でビスケットですとか乾パンを作ってそれを備蓄してはどうかと、そういう考えも出てまいりまして、そういったこともすべて盛り込みました。  また、リサイクルの方ですね、食べ残しですとかそういう食品廃棄物が日本は年間で千九百万トンあります。これは、同時期の食料援助、世界の食料援助をした総量、七百六十万トンですから、その約三倍の量が日本で一年に捨てられているわけですから、これを何とか有効活用できないか、飼料に加工したり、そういったことも必要だと考えております。  以上のようなことを簡単に先日申入れをいたしましたけれども、政府としてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。大臣お願いいたします。
  103. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 確かに、亀井委員を始めとして国民新党の皆さん方の検討の結果の御提案をいただきました。  基本的には、この中でございますけれども食料の自給率につきましては五〇%に達するように早急に対策を講ずるということでございまして、方向性については私どももそのような方向で努力をしていかなければいけないと、このように考えているわけでございます。  先ほど、数字のことにわたって恐縮ですけれども、耕作放棄地というのは四十万ヘクタールなんですよね。不作付けというものの概念がなかなか難しいんですけれども、それを入れて七十万ヘクタールと、こうおっしゃっておられるんだと思います。  この耕作放棄地あるいは不作付け地が有効に農業的に利用されるというようなために、耕作放棄地については、まず一筆一筆、もう既に調査に入っておりますけれども、今年中にしっかりと全筆調査をいたしまして、そしてそれを農業上に利用するためにはどのような利用形態があるかということを、その土地の状況、地域の実情に即して一つ一つ積み上げていかなきゃいけないと、こう思っております。これは二十三年までに、これはもう逐次積み上げていくわけですが、全体の積み上げを終えたいと、こう思っております。  そのほか十項目にわたっていろいろ御提案がございます。一つ一つここでみんな申し上げるのも時間のこともございますし、我々もまた御提案を真摯に受け止めて、検討をした上で、むしろ意見交換の場をいただければというふうに考えているところでございます。  それにしましても、一方でカロリーベースで半分の国内生産を確保して、あと残り半分はどうしても輸入に依存せざるを得ないだろうと思っております、具体的な実現可能性からいいますと。それには、やはり安定的な輸入をしっかり確保すること、そして変化が起こったときに対応できるような適正な備蓄をして、それらとの組合せで食料の安定的な供給を図っていかなきゃならないと、こう思っておりますが、キーワードはやはり米の食料消費の拡大だと思うんですね。これは米粉の場合もあるでしょう。あるいは、これをえさを通じて畜産物にして口に入るようにするという意味で、飼料用に多収の米を開発をして、それが確実に家畜と結び付いて有効に利用されるようなシステムをつくり上げていかなきゃいかぬというふうに考えているところでございます。  今後、御提案につきましては、食料安全保障という観点からまた御意見をいただきながら、お互い検討をさせていただきたいと思います。
  104. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 ありがとうございます。  七十万ヘクタールというのは、確かに不作付け地も含めての数字でした。失礼いたしました。  自給率の話がもうしばらく続きますけれども、先ほどは米に集中して食料自給率を上げるお話をいたしましたが、私は、これ個人的に思ったことなんですけれど、政府の資料などを拝見していて、カロリーベース自給率を上げるために品目ごとの消費と生産の積み上げによる実現可能な目標を立てると、そういうような文言がございました。これは、いわゆる例えば環境問題でCO2排出であればセクター別アプローチを思い出してしまうような考え方だと思うんですけれども、やはり農作物ですから、私は、カロリーベースで出ている項目がありますけれど、すべてにおいて自給率を上げていきましょうというその積み上げ方式が果たして食料安全保障等考えたときに有効なのかどうかということに少し疑問を感じます。  つまり、日本の伝統的な食というのは海の幸、山の幸ですから、輸入が滞った場合にやはり伝統的な食事に返っていくと思うんです。カロリーベースの自給率を見ても、例えば平成の十八年度で米は九四%、野菜が七六%、魚介が五九%、やはりこういうところが高いわけですから、国家の食料安全保障を考えたときに、米をいかに百数十%に短期間で近づけるか、最初は備蓄を取り崩していくんでしょうけれども、また野菜七六%のカロリー自給率、これをいかにして数字を上げるか、魚介をいかにして数字を上げるかと。私は、その項目をある程度特化して選んで、それを限りなく広げていく、自給率を上げていく方法の方が現実的なのではないかと感じたんですけれども、これは参考人の方でも構いませんけれども、そういった発想はおありでしょうか。よろしくお願いいたします。
  105. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 日本の風土に合った食生活、そしてその風土に合った生産というものに重点を置いてそれを広げるというのは、まさにそういうことが必要だと思っております。  しかし、水田だけじゃありませんのでね。水田についてでも、非常に湿田で例えば二毛作なんかができないところもありますし、二毛作ができるところもある。そういうきめ細かな積み上げをしないと、いざというときにそれをどう使うかということと重ねていくとすれば、それはかなりきめ細かな積み上げが必要になってくるのではないかというふうに思っております。  前に平野委員の意見にお答えをしたんですけど、何とかそういう積み上げをしながらある種の目標達成に至る工程、作業工程というか行政工程というようなものを詰めなきゃいけないなと、抽象的に言っていたんでは生産者にもアピールしないし、また消費者の不安にこたえることにならないと。しかし、これは言うべくしてなかなか容易ではないんですけれども、しかし容易でないからといって避けて通ってはならないと私は思い、今農林省の中で担当を決めまして、そこでまず作業に入るということを指示したところでございます。いつごろまでにこれが仕上がってくるかということまではまだ決められておりませんけれども、できるだけ早くこれを積み上げていきたいと、こう思っております。
  106. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 よろしくお願いいたします。  それでは、WTOの話に移りたいと思います。  先ほどほかの委員からも御指摘ありましたけれども、WTO交渉がやはり行き詰まっているのではないかと私も思いますし、また、八年前にWTO交渉の方式が始まったときから比べると、もう世界の食料事情がこの二年ぐらいで大分変わってきていると思います。  このWTOの今までの話の流れですけれども、これはどう考えてもやはり輸出国の論理だと思います。そして、その輸出国というのは、では生産力が元々高いのかといえばそうではなくて、手厚い農業保護の結果なわけです。  ですから、例えば乳製品を例に取りますと、乳製品に関してはオーストラリア、ニュージーランド、オセアニアの国際競争力が突出して高いそうです。ですから、EUですとかアメリカはオセアニアからの乳製品に高関税を掛けて、国内消費量の五%程度のミニマムアクセスに輸入を抑え込んでしまっています。その上で、余剰乳製品を政府が買い入れて、さらに輸出補助金によって輸出をしたり、援助で海外で処分をしているんですね。  ですから、言い換えれば、海外からの輸入を締め出して価格を支えることで生じた余剰を補助金を投入してダンピング輸出することによって、本来なら輸入国になるはずの国が輸出国になり得ているという、これが実態なんだろうと思います。そして、国際交渉の場では関税を下げなさい、限りなくゼロにしなさいと言いながら、国内においては、安く入ってきたものと、あと国内産の生産の価格を補てんするという形で、ですから、関税という名前じゃないですけれども、補助をして実質的には差が生じないようにしているわけですよね。  ですから、そういうことを考えたときに、やはり日本はもう最大の食料輸入国ですから、その輸入国の論理というのをもう少し国際交渉の場でそろそろ打ち出していくべきではないかと私は考えております。今、人口も爆発的に特に中国ですとかインドで増える中で、また中国ももう食料輸入国に転じていますから、お金さえ出せば食料が買えるという時代はもう終わってきているのだろうと思います。そこで、幾らWTOで輸出規制を行わないようにというそういう約束事ができたとしても、自分の国の国民が飢えているのに海外に輸出をするという国はまずないだろうと思うんですね。  ですから、今度例えばサミットで、洞爺湖サミットで、環境のサミットですし、環境と食料は結び付いていますから食料のことも議題に上るというふうに聞いておりますけれども、そういった場で、今、食料バイオ燃料で燃料の方に取られたり、今までと需給の関係が違ってきている、その中でのWTO交渉、輸出国主導の国際的な取決めに関して日本が流れを変えるべく主導権を取って発言をしていただきたいと思うのですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  107. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) いつも申し上げているんですけれども、このWTO交渉がスタートの時点から我が国は日本提案というのを全加盟国に出しているんですね。もちろん英文に訳した上ですべての国に配り、そして全体会合あるいは部分的な会合の際にもこの日本提案というものを常に主張をしてきているわけでございます。  これは、この基礎というのはやはり食料安全保障にあるわけでございます。それぞれの国はそれぞれの国民に対して食料を安定的に供給する責任を負っているんだと、そういう意味で、それぞれの国が多様な農業をすることを認め合った上で共存していくというのが貿易の面においても尊重され、それが基本理念とすべきであるということを主張をいたしまして、それで輸出国と輸入国とのバランスの取れた貿易ルールでなければならないということを言い続けて八年になっているわけでございますが、食料の輸入国というのは実は百五十か国余の加盟国の中で十か国ということなんですね、お隣の韓国とかあるいはスイスとかノルウェーとか。それで、十か国でG10というグループつくりまして、日本がその代表格になりまして、ジュネーブですからスイスにも加わっていただいて、常に食料輸入国の立場で各種の農業委員会あるいはガット事務局の責任者との会合などでもそのことを繰り返し繰り返し主張をしながら、しかし、全体がまとまっていかなきゃならないという大筋はこれを否定できないものですから、これ農業だけじゃありませんのでね。そういう流れの中で、節目節目でいろいろなお互い妥協をしながら、ルールを固めながら今日まで来ていると。  そこで残ってきた問題は、それぞれの国が重要だと思う作物があるはずだ、それが言わばセンシティブな重要品目であると。センシティブな重要品目については別の扱いをするべきだということを主張をしているわけでございますが、同時に、輸出国に対しましても、自分勝手の輸出規制をするんではなくて、そういう輸出規制をしなければならない事情があるときにはガットの方に通告をする、それから輸入国の方にも通告をする。そして、通告に対して輸入国側が意見を言ったときには、その意見の調整の場をWTOのシステムの中でつくっていく、そういうことが必要じゃないかということを具体的な形で提案をさせていただいて、今議長の下でそれも課題になっていると、こういうことでございます。  委員がおっしゃられましたそのお気持ちは、全く我々もそういう気持ちで取り組みながら、あらゆる機会を通じて主張をしていることでございます。是非とも、そのような形で御理解をいただきたいと思います。
  108. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 粘り強く日本の輸入国としての事情をアピールしていただきますように、よろしくお願いをいたします。  それから、先日、中国胡錦濤主席日本に来日をされて、その後、合意事項についての発表がございました。その中で、対中米輸出全面解禁という、そういう新聞の報道見出しを拝見したんですが、これについて、農水省の担当者の方に問い合わせましたら、全面解禁という書き方をされたけれども、実際には検疫のルールが、害虫などについて検疫のルールが確立されたということで、すぐに米がどんどん輸出されるという、そういうことではありませんというお答えをいただきました。  私は、二月の下旬に週末を使って上海に視察に行ってまいりました。ちょうどあれ中国ギョーザの中毒事件が起きたときで、また今年、築地の市場で初競りの魚を、マグロ、香港の寿司チェーンを経営している人が競り落としたというニュースですとか、あるいは中国においても、中国の食材が安心できないので富裕層が日本の食べ物をどんどん買っていると。また、これからそういう動きが強まるんじゃないかという報道もされていたので、実際にどういうことが起きているのかと思いまして、私自身がちょっと上海に飛んでスーパーなどを視察してまいりました。そのときに、日本から輸出されたJA米がスーパーの棚に並んでいたのでその写真を撮ってまいりました。  一枚目の写真が、その対中輸出されたJA米ですね。これを拡大した写真が左下です。日本産コシヒカリ、価格が二キロ当たり百九十八元ですから、これを一キロ当たりの円で換算すると約千四百七十四円なんです。右の方、中国産コシヒカリ、これはすなわち種はもう随分前に、十年ぐらい前には向こうに行っているそうです。ですから、コシヒカリを中国で栽培して販売しているものが右側で、三キロ当たり四十五・八〇元です。これを今のレートで一キロに換算いたしますと、二百二十七円です。ですから、一キロ当たり二百二十七円対千四百七十四円というのは約七倍近く価格差が今あるわけです。  ですから、幾ら富裕層が購入しているとはいえ、そうすぐに広まるということではないでしょうし、地元の和食のお店でも、例えばすしを出しているお店でも、使っているのは中国産のコシヒカリであって、その流れは変わらないだろうと思うんですけれども、それでも検疫の条件がある程度合意がまとまって輸出の道が開いたということは、日本にとって大きな進歩なんでしょうか。その辺りを政府はどのようにとらえていらっしゃるのでしょうか、お伺いをいたします。
  109. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 中国十三億余のマーケットがあるわけですね。大変な胃袋でございます。ですから、中国のマーケットも、需要に応じて日本の農産物が中国に輸出されるということは、我が国の農業生産の立場からいいますと、輸出分は自給率の計算上は供給量に入ってきますから、自給率も高まるわけでございます。  そういう意味で、中国に対してかつてお米の輸出もわずかながらですがしていたんですけれども、二〇〇三年に中国植物検疫制度を改正しまして、日本のお米には中国にない有害な虫があるということで、これを病害虫のリスクをちゃんと分析しなきゃいけないということで、禁止をするといいますか、日本から輸出できなくなったわけでございます。  以来、日本は、いや、そういうような虫、確かにいるんです、カツオブシムシという虫がいましてね、この虫が中国に入ると中国側は大変な被害を受けるということなので、日本はこういう形でこの害虫を輸出の前に全部チェックしますよということを言いながら、以来、輸出の解禁を求めまして折衝をしてきたわけでございます。大変難航をいたしました。私は昨年、このことだけで中国責任者とも相対でひざ詰めでいろいろなお話をしたことでございますけれども、初めは試験的に百五十トンを五十トンずつ分けて入れてみましょうと、それはこういう検疫をしますよという約束事でそれを入れたんですね。それが多分その上海の市場の方にあるんだと思うんです。  ただ、それは非常に限られた量ですから、聞くところによれば、主として贈答品などに使われておりまして、なかなか一般に広く食べられるという状況ではない。それはやはり価格が高いからだと思うんです。これが民民ベースで取引されるようになりますと、需要に応じた供給というお互いの価格交渉も行われるようになりますから、それは向こうの需要を見ながらこちらも価格を決めていくということで、それは確かに品質もいいし、おいしいという評価があるわけですから、それなりの評価が得られて、輸出は徐々にではありますが伸びていくだろうということを期待をいたしております。  これは安倍総理のときにも首脳間の話としてこちらから持ち出しましたし、福田総理のときもこちらから持ち出して検討を要請をしてきたわけでございます。やっと決着をこの間付いたわけですが、技術的な問題として言えば、精米工場は一年間、あるルールに従ってカツオブシムシがいないということを中国側がチェックして、この工場を指定をすると。この工場でできた精米であればいいですよという形にして、その工場を決めますよと。それから、いよいよ輸出のときには倉庫に入れるわけですね、持ち出して。それで、倉庫の中も幾つかのルールがありまして、そういう虫がいないということをチェックをする、そのチェックをしたものについては受け入れますよと、こういう約束事なんです。  ですから、今輸出しているものは、そういう指定された工場が一つあるんですね。それで、この間試験的に百五十トン出すときも倉庫の方もチェックをしたわけですが、これから大量に出ていくとすれば、そういう指定を、どの工場が指定を受けることになるのか、生産者、生産者団体、これが輸出をしようという人たちと精米企業との間で話をして、今から指定を受けますと、一年たたないと指定になりませんから、実際始まるのは一年有余先ということになるでありましょう。  しかし、膨大なマーケットですから、可能性としては富裕層を中心に徐々に伸びていくだろう。委員もお話しになりましたけれども、やっぱり日本食には日本のお米は合うという評価があるんですね。そういう意味で、日本食の普及などとセットになりまして、これから徐々に輸出の拡大が期待できるのではないかというふうに考えております。
  110. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 対中国との取引ということで、中国ギョーザの中毒事件に関しても触れたいと思います。  先ほどもほかの委員の方も御質問されていたので、その真相についてはまだこれから解明を進めていかれるのでしょうし、そのこと自体について伺うわけじゃないんですが、このギョーザ事件をきっかけとして、日本スーパーに出回っている加工品、それの食材がどういうところから来ているのかということが大分また知られるようになりました。  今日、資料にも付けてございますけれども、後ろから二ページ目、春巻の材料が二十七か国原産だと、すべての原産地をたどると二十七か国まで行き着いてしまうというそういう現実があって、その中でどうやって食の安全を守っていくのかということが、今これから大きな課題になっていくと思います。  先日、これは今年の二月五日の新聞ですけれども、「食品表示、新法制定へ」という記事拝見いたしまして、今政府が食品表示法、これ仮の名前ですけれども、検討されているというふうに書かれております。この中で、賞味期限と消費期限に分かれている期限表示の統一ですとか、原産地表示の厳格化、それから虚偽の表示をした業者からの不当利益没収などを盛り込みたいと、こういう記事が出たりしているのですけれども、今、産地表示をめぐって、加工食品の原材料について原産地を明記することを検討するとありますが、実際には二十七か国になってしまうわけですし、どういった議論に今のところなっているのか、現状についてお伺いしたいと思います。
  111. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) まず、食品表示法を検討しているというのは、まだ検討の段階に至っておりません。政府は消費者のサイドに立って、消費者の便宜が図られるように消費者行政の一元化を図ろうということで、消費者庁というものをつくろうとしているわけでございます。私は、そのこと自身の基本的な理念とか考え方には賛成でございます。その中で、食品消費者行政の大事な要素ですから、食品はどういうふうにかかわっていくのかということで、大詰めの今関係者間協議をしているところでございます。  しかし、このJAS法は、表示の制度とJASの規格の制度というのがありまして、これは規格に基づいて表示というのが決まり、表示は表示できちっと守るように仕組みをつくっているわけですね。どこまでを消費者庁の方がこれを担当したら本当に消費者のためになるんだろうかというようなことをめぐって、今議論が白熱しているところでございます。  ですから、おっしゃるようなところまでは行っていないんですが、今のJAS法の中におきましても、原産地表示をすべきであるという意見が各方面からございます。それに対して私は、今委員がおっしゃられましたように、ギョーザもそうです、春巻もそうです、シューマイもそうですが、そういう具体的に加工食品を挙げてみますと、それぞれの、十か国あるいは二十か国という多くの原産地に依存をするという実態があるわけでございます。ですから、これを法律上規制をして表示ができるかというその問題があると同時に、諸外国の方からは、輸入品ですからね、これは障壁の一つだというクレームも受けるおそれもあるわけですね。  だから、その意味で、国内でまずそれを義務付けないことには輸入のものは入れられない。国内の加工食品についてそれをみんな義務付けることができるのかというような国際的な基準上の問題もあるんですね。  そこで私は、さはさりながら、消費者側が大変不安に思っていることも事実ですから、先般、関係食品業界、もう数多くあるんですが、食品業界に対して手引書、マニュアルを作って、このマニュアルに従ってやれるところはひとつ努力してください、その場合は上から主要な品目について、例えば四つまでとか、まあ全部は大変ですから、そういうような形について、やれるところはひとつ任意にトライをしてみてくださいと。いっぱいになってくると書けませんからね、何も書く必要はないんですと、問い合わせがあればすぐ説明できる、あるいはインターネットに出しておくとか、そういう方法もあり得ますと。そういうことからアプローチして、製造業者消費者の不安とか疑問に答えられるような体制整備を図りたいというので指導に入ったところでございます。現実はそんなところから行かないと難しいと思っております。
  112. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 ありがとうございます。  それでは、がらっと最後、話題が変わりますけれども、私の地元の事情、中海の干拓地なんですけれども、そのことについてお伺いをいたします。  先日、地元である陳情がございまして、干拓農地についてなんですけれども、その方は営農をされたんですけれども、うまくいかなかったと。野菜を栽培したけれども、うまくいきませんでしたと。うまくいかなかったこと自体は別にだれのせいでもなく、御本人はとにかく自分がやり方がまずいのかもしれない。  ただ、とにかく土地をほかの農業をやってくださる方に売りたいのだけれども、そこでネックになっていることがありますと。それは、干拓農地に、その農地の一角に、やはり農業用地ですから住居を建てたいと思っても建てることができないと。ただ、実際に野菜の栽培をするときに、いわゆる普通の農家であれば裏に畑があって、風が強いだとか日が強いだとか、しょっちゅう様子を見に行かれるわけですけれども、干拓農地の場合はそれができないと言うんですね。ガソリン代も今どんどん上がっていますし、片道何十分か掛けて通勤するように畑に行って様子を見て行ったり来たりということがネックになって、自分だけではなく、やはり営農者がなかなか居着かないと言うんです。  それで、この人は、安来市なんですけれども、安来の市役所の農業委員会の人のところに行って、何とかなりませんかと、農作に使う機具を入れる小屋は構わないと言うんですけれども、住居は建てることができないと。けれども、これをもうちょっと緩和してもらえればそこに住んで農業ができるし、もっと新規の担い手が定着するのだけれどもというふうに言いましたらば、まず市役所の農業委員会は、国営事業の土地なので自由に用途変更できるものではないと、都市計画法と農業振興法の制約があるので転用はできませんと、またその中海の干拓事業というのは大規模農場を想定していたので、そんな個人の農業のために住宅を建ててと、そういうことは想定しておりませんというようなことを言われたそうです。また、住居を新築するとなると、農地ですから、ライフラインですとか、駐車場ですとか、トイレですとか、そういう生活用水などの整備の問題も生じるのでできませんと言われたそうです。  県の方に行きましたら、県も同じような説明でして、そしてプラス、中海の干拓地は農業地域整備計画対象地域で農用区域なのでどうしても住居を建てるのは無理だと言われたそうです。国費投入事業なので、やはりこの農用地指定を外した場合には大変なことになりますよといって駄目だったと。  今度、国の方に、農水省に先日伺いましたらば、それはもう干拓地は完成してしまって市に引き渡してしまっているので、市の問題ですというような感じで、どの段階で伺っても難しいですという答えだったんですね。  ただ、現実問題、例えば昨年も、この研修センターに新規営農者が行って、一年はここで研修受けることができるんです。ただ、住居のことがネックになって、みんな居着かないで残ったのは一人だけだそうです。近くの安来市営住宅というのがあるんですが、なかなか入居はできないと。ですから、どうしても家を近くに持てないということがネックになっているようなんですけれども、これはどのようにしたら解決するものかと私も悩んでおります。  今この干拓地ですけれども、農協のJAの研修用農地ですとか、一般に開放されていない農地が全体の三分の一ほどあってかなりを占めておりますし、一部はヘドロの処理ですか、一部県営の運動場のようなことにもなっておりまして、端的に言うなら利用がされていないんですけれども、これを担い手が安心して営農できる状態にするためにはどういった解決策が可能なのでしょうか。担当の方にお願いいたします。
  113. 中條康朗

    政府参考人(中條康朗君) 中海干拓事業で造成された農地についてのお尋ねでございます。  委員指摘の中海干拓安来工区の農地だろうと思いますが、この農地につきましては、御指摘のとおり、農振農用地区域として指定されておりまして、原則この転用は難しいものというふうに承知をしております。  この農振農用地区域内の農地を転用するためには農用地区域から除外する必要があるわけでございまして、これはまさに委員が御指摘のとおり、まず農振の除外をするためには、これ、市町村の方で農振計画の変更をすることが必要になってまいりまして、これは市町村が作って、しかもこれ県に同意を求めるというようなことで、県と市町村との権限ということになります。  それから、その後で農地転用となりますと、四ヘクタール以下の転用につきましては、これ知事が許可するということになりまして、国はこれに対しては権限ないわけでありますが、一般的な話として申し上げさせていただきたいと思いますけれども、農振農用地区域からの除外につきましては、農用地区域外に代替する農地がないということ、それから農地の集団化等を行うときに支障がないだろうなということ、それから中海の場合これに当たると思いますけれども、農業生産基盤整備事業の対象となった土地については、事業の完了後八年を経過していること、八年以上であるということ、こういう要件を満たす必要があるということでございまして、この安来工区につきましては、まだ国営の中海土地改良事業が実施中でございまして、工事完了後八年を経過してないということもございまして除外の要件を満たさないということから、農用地区域から除外することができない、したがって宅地用地として転用することができないということだろうというふうに考えております。  これ、県にこの話をちょっと確認いたしましたところ、島根県の方では、これは島根県に存するわけですね、鳥取県に比較的近いわけでありますが、県の方では、これまで島根県内から入植される方あるいは耕作に入られる方を募集されていたようでございますけれども、ここ一、二年ぐらい、県外からも募集しようということで、今は鳥取県の方にも募集を掛けておられるようでございまして、私どもとしましては、せっかく造った農地でございますので、できれば農地として使っていただきたいということで、こういった県の御努力に対しましてできる限りのことをしてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  114. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 では、時間ですので終わらせていただきますが、せっかく造った干拓農地ですから、是非利用できるような方策をよろしくお願いをいたします。  以上で終わらせていただきます。ありがとうございます。
  115. 市川一朗

    市川一朗君 自民党の市川一朗でございます。  今日は、青木委員とそして島根県代表の亀井委員からなかなか傾聴に値する議論がありまして、私もいろいろあらかじめ用意しておったんですが、ほとんど同じ問題を、ちょっと角度は違いますけれども、触れられました。やはり農業問題、今、我が国の農業問題を考えると、自民党も民主党もないなと、こうして一緒心配してくる人は大体考えていることは同じだなというような感じがちょっとありまして、私の味は出せるかどうかちょっと分からないんですが、私もせっかく質問の機会を与えられましたので大臣といろいろやり取りをしてみたいと思うんですが。  まず、先日のこの委員会で、今日ちょっとおりませんが、高橋委員と大変傾聴に値するやり取りがあったと思いますが、そのときに、日本バイオ燃料生産拡大対策という言葉を大臣出されまして、寡聞にして私は余り聞いていなかったので、この表現は若林大臣オリジナルじゃないかなと思うんですが、その中で、食料と競合しない形のセルロース系原料を活用していきたいという御答弁がございました。  高橋委員もそういう問題意識を持って質問に立たれましたので、それなりに貴重なやり取りがございまして、大臣食料と競合しない形を強調した理由もそれなりにお聞きいたしまして、一つの表現で言えば、理解はできたと、しかし必ずしも納得はできなかったので、その点についてちょっと質問してみたいなと。  世界の食料事情とか私も今取り組んでおります日本の森林の状況等を考えますと、大臣おっしゃるように、セルロース系原料を活用したバイオ燃料の促進というのはこれは是非進めなきゃいけないというふうに思っておりますが、最近の我が国の農業政策としていろいろ議論しているところとの兼ね合いも含めまして、少し突っ込んだ質問をしてみたいと思います。余り個別な質問はちょっとやめて、私も少し論陣を張ってみたいと思うんですが。  実は、私は前に質問に立ったときも申し上げておりますが、地元宮城県でございまして、東北の稲作単作地帯の出身でございます。子供のころの印象でございますが、冬は麦踏みというのがありまして、これは農村の一つの風物詩でございました。そして、昭和四十年代に米の生産調整が始まったころは、最初は休耕から始まったように思っておりますが、転作作物として麦、大豆、その中で牧草も代表的な転作作物の一つであったように思います。  あれから約四十年たったわけですが、今風景は大きく変わったと思います。元々あった裏作は本当に少なくなりました。そして、転作作物の麦や大豆もなかなかうまくいかないんですね。特に私らの稲作地帯ではなかなかうまくいかないと。牧草も何かここへ来てほとんど、はやらなくなりまして、どうも結果として年々やっぱり休耕田が増え続けているわけです。  これも先日の大臣答弁にもございましたが、全国合計で耕作放棄地が約四十万ヘクタールに達すると。耕作農地、幾らと見るか分かりませんが、少なくとも一割は耕作放棄地になっているということになるわけでございまして、こういった状況の中で昨年、米の価格が下落いたしまして大きな問題になりました。それを受けまして、こういう状況であるにもかかわらず、農村がそういう状況になりつつあるにもかかわらず、あるいはなっているにもかかわらず、やっぱり米政策としては生産調整を進めなきゃならないということになりました。  それで、いろいろ知恵を絞りまして、我々も政府側ともいろいろ議論をして、飼料米とかバイオ燃料米といったものを新規需要米として位置付けまして、そして主食用米と加工用米に使われないことを確認した上で生産調整にカウントするということになったわけですね。これは私なんかも強く主張しておったので、それはよかったなと思っておるんですが、地元に帰ってみましても、田んぼを田んぼのままでそのまま維持しながら、そして米作りを続けながら生産調整にもなるということで、各地で今取組が始まっているんです。それは御存じだと思います。  私は、飼料米につきましては、ぎりぎりのところ、コストと収入のバランスがまだ取れておりませんので、難しい問題いっぱいあるとは思いますけれども、やっぱり飼料用穀物の世界的な価格の高騰という深刻な現実があるわけでございますから、この問題はまた後で触れたいと思いますが、これはやっぱり大いに推進すべきであると。そして、これを進めれば、先ほど亀井委員が取り上げられた我が国の食料自給率、これも高めることになると。  前回、私、質問に立って確認したところでは、そう簡単には自給率の数字は上がらないということは確認したわけでございますが、ちょっと残念なんですけれども、やっぱりそういう計算になるんですな、どうしても。しかし、それにしても一応高まることは高まると。この点は大体大方の賛同を得られるんじゃないかなと思うんです。  問題はバイオ燃料米でございますが、これも自給率の向上には直結しないかもしれませんが、先ほどやはり取り上げられた自給力の向上にはつながると思うんですね。田んぼは田んぼのままで維持できますから、米作りは進めるわけですから自給力の向上にはつながると。  したがって、ぎりぎりの食料の安全保障ということを考えますと、全く同じなんですが、私は、目の前の自給率の問題よりは自給力が高いかどうかということが問題ではないかと。いい質問ですねと言ったのは、そういう意味も含めて、私と全く同じお考えなので、本当に私もそう思うのでございます。  そして、水田の保全というのは、もうよく言われるように、農地、水、そういった問題も含めて環境の保全にもなるということを考えますと非常に重要な問題なんですね。そもそも燃料の自給ということを考えますと、石油なんて出ない日本ですから、これもそういうことでは非常に大事な分野ではないかと。燃料の自給の一環として位置付けることもできるテーマではないかと。  こんなふうに整理してきたわけでございますが、先ほどといいますか、先日の若林大臣食料と競合しないセルロース系活用をやっていきたいということを特に強調されていることと、今私がるる述べてきたこととの問題については、担当大臣としてはきちっとした説明が必要なのではないかと私は思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  116. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員が、昔の麦踏みの話から、地域の水田単作地帯になっている今の状況で抱えている諸問題から発しまして、いろいろと御意見がございました。基本的な認識については共有しております、私も。これは、水田というものが持っているその機能というのは大変優れた機能でありまして、長い間掛かってでき上がってきたこの土地と水との結び付きの一つのシステムの装置であると思いますね。そういう意味では、地域社会の社会資本ともいうべきものだと思うんです。しかも、優れているのは、稲作について言えば連作障害がないと、これは珍しい作物だというふうに認識していいんだろうと思うんです。そういう意味で、この大事な水田というものの保全を図りながらその機能を生かしていくというような努力というのは、やはり大事なことだというふうに認識いたしております。  ただ一方で、米自身、特に御飯米については、こんな需給関係ですから、これをそちらの食用の米の方に回っていきますと、これも考え方なんですけれども、どのぐらいまでの価格の低下に米農家というのは耐えられるのかということはあると思うんですよね。だけど、今の経営規模で、今の経営状況の中からすれば、この米価の低落というのは経営を維持することが困難に陥っていくと。だとするならば、その需給関係を緩めるわけにいきませんから、どうしても直接的には御飯としての米需要の拡大分に見合ったものしか生産を増やすことができないということになるわけですね。  それで、拡大分として言わば一つの新規需要というふうにとらえれば、米粉をパンで利用するとか、あるいは米粉をめん類として活用するとか、そういうような分野というのはあると思います。これはまだまだ技術開発しなきゃいけないこともありますから、そして需要開発のための努力も必要ですから、それに見合って生産拡大をしていくことになるので、私は、かなりこれは進めていくだけの未来はあるというふうに、私はそう感じているわけであります。  しかし、そういう人間の口に入るもの以外のものとすれば、まずはやはり家畜の飼料でありましょう。これだけの穀物輸入をしているわけですから、これに代わるべきものとしていろいろ、ホールクロップサイレージとかいろいろなことをやります。それはみんな稲作、水田を活用してできるわけですからね。あるいは、畜産で、わらに主体を置いた飼料作物というのも、飼料作物稲というのもあると思うんですね。そういうことの中の一つとして、実取りの米につきましても、これは付加価値を高めて、畜産物のそういう特徴を生かしながら付加価値を高めるようなえさの給餌の方法とか、そういうこともなおなお余地はあると思うんですね。  そういう意味では、畜産経営と結び付いた形でこれを進めていく。しかし、特別の配合飼料の原料に使いながら、この配合飼料を有効な家畜の飼料としてどのくらいまでなら給餌できるのかといったような研究開発もする必要はあるでしょう。私は、そういうような意味での新規の米の需要については、委員が御努力いただきました、私もその考え方を取り入れさせていただいて、転作作物の一つの類型としまして新規需要米という位置付けをして生産調整の中でカウントできるようにしたわけでございます。  さて、そのエタノールの原料としての米ですが、エタノールの原料としての米もそういう意味では新規需要米ではあるんです。ところが、これはどうしてもこのエタノール装置と結び付かなければ使えないわけですね。エタノールの製造については、理想としては、最終の姿としては、私はやはりセルロース系のものを進めていくべきだというふうに思っているんです。それは、やっぱり七〇%も森林のある日本ですから、森林の整備ということと併せながら、しかも、地方に立地しながら地方資源を使ってエタノールを生産していくというようなことは、将来のビジョンとしてはそういうふうに描くべきであるというふうに考えております。  しかし、まだ実証段階なんですね。試験場の段階からやっと現場に下りて実証段階に入っていると。これがシステムとしてうまく動くかどうかということになりますと、やはり実証の生産というものを重ねていかなきゃいけません。その場合には、こういう糖質のもの、つまりお米もそうですけれども、糖分のあるものは非常にもう実証しやすいわけですね。そういう実証を重ねていく中で次なる段階のセルロースのものにつながっていくと。初めからセルロースで実証やってみようといってもなかなか困難ですね。  私は、大阪の堺で廃木材からエタノールを造っている、環境大臣のときにそれを実証としてやって、テープカットもやりましたけれども、これはなかなかコストの面でいけるという見通しが難しいんですね。そういう意味で、そこにつないでいくプロセスとしていけば、エタノール生産のシステムを確立していくためには、今北海道と新潟では米を原料としたエタノール生産も実証事業として助成対象にしようとしているわけですね。だから、それを全く否定するというものではありません。  そういう意味で、そういうものを実証的にやるということに手を着けていくということを否定するものではありませんし、その成果というのは必ず将来はセルロース系のものにつながっていくと、その成果というのは、技術的な成果物というのはそういうふうにつながっていくだろうという見通しの下にこれを進めているわけでございます。
  117. 市川一朗

    市川一朗君 今ここで結論を出すべきではないかなと思いながら答弁をお聞きしておりましたが、大臣の一つの考え方は前よりも少し分かりましたけれども、今バイオ燃料米に取り組もうとしている人たちが今の大臣答弁を聞きますと、ちょっとやるせない気持ちになるかもしれませんね。  ですから、国の政策として、新規需要米にバイオ燃料米を位置付けたというところまではしようがないからやったんだと、試験的にやるならやってみなさいというような位置付けにするのか、いや、やはり日本の長い将来を考えた場合には、燃料の需給問題もあるので、それから水田を守るということもあるから、飼料米はどうやら大体意見は一致しつつあるんでしょうが、バイオ燃料米についてももっと積極的に取り組んでいこうという政府の姿勢があってもいいのではないかと私は思うんですが、今日はその点について大臣に再答弁はあえて求めません。そういうことを指摘しておきながら、この問題、こういう問題点をもっと整理して政府としては取り組んでいただきたいと、そうでないと現場はちょっと混乱しますよということをちょっと口幅ったいんですが申し上げておきたいと思います。  それで次に、ミニマムアクセス米のことについてちょっと触れたいと思いますが、最近日本ミニマムアクセス米につきましてアメリカがこれまでの主張を変えまして、世界の食料需給の逼迫に対応するために、日本の国内で消費しないで第三国への売却を検討すべきであると主張しているという、そういうニュースが複数のメディアにありました。具体的にどんな表現使っているか等は私も分かりません。ただ、少なくともアメリカはミニマムアクセス米について日本の国内で消費すべきであると、それが望ましいということを繰り返し主張してきたそのアメリカがこういうことを言ったということは、取りあえず言ったのかもしれませんが、一つの大きなニュースだと思いますが、その事実関係と、それに対して行政府としてはどういう対応をしておられるのか、するつもりでおられるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  118. 町田勝弘

    政府参考人町田勝弘君) 私の方から事実関係を御説明をさせていただきます。  まず、MA米の食料援助への利用でございますが、我が国はこれまでも食料援助の一環といたしましてミニマムアクセス米を含む政府米を用いた支援を行ってきております。こうした支援の実施に当たりまして、アメリカを含む輸出国の同意が必要であるというふうには、特段の同意が必要であるというふうには考えておりません。  今御指摘のあった点でございますが、事実関係といたしまして、アメリカは従来ミニマムアクセス米につきまして日本国内で消費されるべきであるという見解を表明してきたところでございますが、最近、米国の通商代表部、USTR及び在京米国シーファー大使が、今年の米の国際市場の特殊状況の下では、日本ミニマムアクセス米について、米の国際市場を鎮静化させるための特別な措置を検討することも正当化されるとの考え方を表明したところでございます。  なお、今御指摘がありましたミニマムアクセス米について、米国が第三国への売却を検討すべきであると、こういった具体的に主張しているものではございません。
  119. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 背景は、これ推測なんですけど、フィリピンが大変困っているということがあるんですね。米国とフィリピンとは政治的にも歴史的にも非常にかかわり合いがございました。そういう意味で、かつてフィリピンは一時期輸出国にもなったんですけれども、その後、農業生産が思わしくなくて、輸入国になっております。そういう意味で、特に貧困層、下層の人たちは米に食生活は大きく依存していますから、米が不安であると、特に国内生産が雨季を迎えて生産が、新しい米穀、米が出回るまでの間不安だということが流れまして、フィリピンの政府は非常に慌てたわけでございます。そういう中で、私の方にフィリピンの農務大臣の方から、まあ援助というふうに言っているわけではないんですけれども日本のMA米を二十万トン分けてくれないかと、売ってくれないかというようなオファーがございました。  そういうことをアメリカ側は承知しておりましてね。従来、アメリカが反対していると。我々はアメリカの同意を必要と思っていませんから、援助に関して言えば今までも実績もありますし、いろいろあるんですけれども、援助以外で第三国に売却するということについては、控えていたといいますか、今まで事例がないんですね。アメリカが反対しているんじゃないかという、まあこれは分かりませんけど、そういうのがアメリカの要所要所に入ったんではなかろうかというふうに思います。  アメリカは、いや、我々は通常ベースでいえば日本は国内で消費すべきであると言ってきているんだと。しかし、今回のような状況は人道的な問題でありまして、そういう異常な状況のときには、それは日本がそういうことを、提供するというようなことは歓迎すると、こういうことを発表したんですね。我々とは別に協議があったわけではないのです。  そういう事実関係から今のようなフィリピンとの間の協議ということになっていくわけですけれども、我々は、これは直ちに普遍化して一般化できるかどうかというのは大変デリケートな問題はあると思いますけれども、基本は、こういう異常な状況が出てきたときには日本もこれに国際貢献という形でお役に立つというようなことはやはり必要なんではないかというふうに考えているところでございます。  なお、援助という形でいえば、アフリカも最近米への依存を強めていまして、輸入国が多いんですね。そういう意味で、アジアからの輸入が止まるというような事態に大変不安を感じているということもございまして、場合によってはアフリカにも支援の米を出さなきゃいけなくなるということがあるかもしれません。  そんな事情でございます。
  120. 市川一朗

    市川一朗君 大体の事情は分かりましたけど、日本は大体、若干主食用にも回していますけれども、あとは加工用、それから援助ですよね。ですから、第三国に売るとなるとまた話は大きくなってくると思いますが。  私の地元なんかでミニマムアクセス米の話をしますと、もう非常に単純なんで、みんな、生産調整をしろと言っておいて、ミニマムアクセス米か何か知らぬが輸入するというのはおかしいじゃないかと。しかも、そういうお米があるんだったら、もっとアフリカとかそういうところへ援助に回せばいいじゃないかというのは、プロの世界でもそうですが、茶飲み話でもよく出てくるわけですから、そういった政治的には大きな流れといいますか、感覚の中でこの問題を処理していかなきゃいけない問題だなと思いますが。  さて、今日のアメリカの発言自体が多分一過性だと私は思いますけど、しかし、世界の食料需給の変化というのは、今日も何回も取り上げられましたように、やっぱり一過性のものではなくて長期的なものではないかと思うんですね。  私、まだ政治家になる前に見た論文なんですが、これは今や有名な論文ですけど、平成六年九月にアメリカで一つの論文が発表されまして、論文の題名は、今コピー持っていますが、フー・ウイル・フィード・チャイナ、直訳しますと、だれが中国に食べ物を与えるかとか、だれが中国を養うのかというような論文なんですが、レスター・ブラウンの論文です。  これはすごいことを言っているなと思ったんですが、どうもこれが今当たりつつあるんじゃないかなと思うんですよね。十四年たちますよね。すぐその後、日本語の論文が出たんですね。そのタイトルは高度成長を続ける中国の胃袋の脅威となっているんですね。フー・ウイル・フィード・チャイナを高度成長を続ける中国の胃袋の脅威と訳したわけですね。つまり、内容は大体そういう内容なんです。  まあ御存じの方がほとんどだと思いますが、ちょっと出だしだけ読んでみますと、日本では経済発展による穀物の需要増と、今世紀半ば以来の工業化による耕地の急激な減少が相まって、一九九三年には輸入穀物への依存度を穀物総消費量の七七%まで押し上げた。この同じ力が現在の中国にも作用している。一億二千万の日本国民が、穀物の大部分を賄うため世界市場に目を向けるのも問題だが、約十二億もの中国国民が同じことをすれば、至る所で食料価格がつり上がり、アメリカを始めとする輸出国の輸出能力はすぐに需要に圧倒されてしまうはずだと。  これは平成六年の論文でございます。この一種の予言的な問題が何か現実になってきたんじゃないかなと。今、世界で起きている現象というのは、アメリカがトウモロコシをバイオ燃料原料として大量に使い出したことが大きな要因ではあると思いますけれども、もう一つ根底にある問題が中国の高度成長だと思います。正確に言えば、中国を中心とする新興国と言った方がいいかと思いますが、現在の状況はまさに中国そのものだと思うわけでございまして、これが現実になってきたと。  このことを踏まえて議論すべきことというのは私自身でももうたくさんありまして、今日はとてもそれを一々取り上げる余裕はないわけでございますので、一点だけ絞って、WTOの問題だけ御質問してみたいと思うんですが。  今、WTO農業交渉はまさに大詰めを迎えているわけでございます。これも先ほど御指摘がありましたように、今のWTO交渉というのは、ウルグアイ・ラウンドで決着した貿易自由化は十分ではなかった、特に農産物の自由化は中途半端であった、もっと関税の引下げなどを行い、農産物の自由化を進めたいという輸出国の強い意思によって開始されたと思います。  二〇〇一年の十一月のドーハ閣僚会議でドーハ・ラウンドが立ち上がりましたが、その際に最重要課題として貿易を通じた途上国の開発というのも入りましたから、輸出国の思惑だと言い切ってしまう私の説明には、あるいは政府としては正式にはそうだとは言えない立場があろうかと思いませんけれども、とにかくドーハ・ラウンド開始の前提として余剰農産物の輸出促進といった側面があったことはもう間違いない事実だと思います。この点は、今日も盛んに議論されたところでございます。  ところが、ここへ来て、もう国際社会では輸出規制の動きがあちこちで始まりまして、それが加速されつつあるわけです。まさにドーハ・ラウンドの前提条件に大変化が起きつつあるのではないかというふうに思うわけです。  しかしながら、二〇〇一年に始まったドーハ・ラウンドは、現在なお交渉中ではありますが、二〇〇四年に基本的な枠組みについては合意されたわけですね。その基本的な枠組み、モダリティー、合意されたモダリティーの中に、ウルグアイ・ラウンドで決められていることに上乗せする形で、重要品目については関税の大幅な削減は免除する分だけ一定量の輸入を義務付けると。つまり、お米でいえばミニマムアクセス米を更に上乗せするという基本的合意については合意されて、そして今議論されているのは、じゃ何を重要品目にするのか、重要品目の割合はどれぐらいにするのか、重要品目の関税率はどうするのか、一般品目についてはどうするのか、そういう議論がなされているわけでございます。  しかし、今日いろいろ御議論を聞いてみても、何となくミニマムアクセス米についても変化があっていいのではないかという御議論があります。しかし、このドーハ・ラウンドの交渉の流れからすると、積み重ねてまいりましたからそうはいかないんですよね、外交交渉ですから。  さて、どうするかなんです。前提条件に大きな変化が生じている、しかもそれは一過性の変化ではないと、そういう認識に立ちましたら、WTO農業交渉にも大きな変化が起こっていいのではないかというふうに思いますが、なかなか難しい。しかし、ここは正念場ですよね。政府としてどう取り組むか。これは政府だけじゃありません、我々政治家も一緒に考えなきゃいけない問題だと思います。  しかし、問題の提起だけで終わってしまうのももったいないので、この際、現時点において政府としてどんな考えでおられるのか、臨むつもりでおられるのか、答えにくいと思いますが、お答えいただきたいと思います。
  121. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 今、市川委員が経過を振り返りながらお話をいただきました。おっしゃるとおりの経過で今日を迎えているわけであります。  一方、世界の穀物需給につきましては、どうもこれは一過性のものではないのではないかという意見が世界の中でも言われ始めておりますし、私自身も、物によってちょっと違いがあるんですけれども、どこまで見るかで、長期的に見ますと、やはり人口が九十億ということになって、今六十億から九十億に人口は増えていく、しかもそれは途上国が中心なんだと。途上国の方は経済成長を高めていくわけですから、当然食料需要の変化が起こってくると。そういうことを考えると、生産の方が追い付くのかね、そういう課題があると思います。  議論としては、実は今までも何回かありました。例の「成長の限界」というのをローマ・クラブが出しましたね。そのときから、私、農林省に当時いたんですけど、こうなるよと、したがって生産は追い付かなくなるという話をしきりとしたものでございました。ところが、生産が上がったんですね。それは御承知のように外延的な広がりもさることながら、単収が大変な上昇をいたしました。そのたびに新しく起こってきた需要にこたえるだけの供給をしてこれたんですね。  今後どうだということにつきましては、なお遺伝子組換えの技術だとか主要な食料供給力のある、供給力としてのアメリカを中心にまだまだ生産力を上げられるんだという主張もあるんですね。ですから、そこはまさに認識のバッティングを起こしているということがございまして、今まで積み重ねてきたドーハ・ラウンドの動きをそうだなといって切り替えていくほど世界的にみんなが合意している状況ではないわけでございます。  そういう中にありましても、日本の関心、重要品目としての、具体的にお米という形では余り、非公式にはやっていますけど、お米を取り上げての議論というのは今はしていないんですね。していないんですけれども、みんな暗黙のうちにそれは分かり合った上で議論をしているんですけれども、重要品目の指定をすると同時に、その重要品目についての関税割当て、つまり輸入量は削減率に応じて輸入の量を決めるような仕掛けになって合意して進んできているわけですね。  そういう中にあって、我々は米について国内の生産力、生産性というのを考えて、どの辺まで下げられるのかということを一方腹の中に置きながら、輸入量については今議長提案がございますけれども、我々はそれ自身をのんでいるわけじゃないんです。ですから、全く入れないということは言えない環境の中で進んできておりますけれども、できるだけ輸入量はもう極小になるようになお交渉しなきゃいけないというふうに思っているんですね。今議長が出している幅よりも更に我々はもっと日本の特殊性を主張をしながら低くできないかということが一つのポイントになっているというふうに御理解いただきたいと思うのです。  FAOとWTOは見方が違うんですね。元から、昔から違っているんですよ。この間、FAOのディウフ事務局長が来られていろいろ話をいたしました。ディウフはアフリカの出身ですけれども、これはもう必ず穀物需給のタイトな状況、価格の高騰というのは続くという認識なんですね。FAOは大体そういうような認識があります。したがって、アメリカは余りFAOを好まないんですね。WTOの方はどちらかというと今までは供給過剰が続くというふうに見ていました。今のここのところに来て意見が割れてきているようではありますけれども、そこのところは一つの方向に収れんできるという状況ではないというふうに思っております。
  122. 市川一朗

    市川一朗君 宮城県のような稲作単作地帯というか米どころでは、これだけ生産調整されていて、今輸入している約七十七万トンのミニマムアクセス米を減らすことは考えられるけれども、増やすなんて考えられないというのが一般的なあれなんで、私は先ほど来申し上げた、また大臣もそれを裏打ちするような御答弁でしたが、今行われておるWTO交渉というのはかなり結果が出たときは大騒ぎになるんじゃないかなと思います。非常に難しい問題を抱えていると思います。  レスター・ブラウンが平成六年、一九九四年になるのかな、出したときから十四年になります。アメリカはどうしたかなというのをそれなりに調べたりそれなりに質問したりして、今私が持っている蓄積は、さっきの大臣答弁にもちらりとありましたが、やっぱり多収穫ということに戦略を変えましたね。その代表は遺伝子組換えだと思うんですよね。だからもうアメリカから輸入するものはほとんど遺伝子組換えしかないという時代に今入りつつある。ところが一方、日本では、うちの女房もそうですが、遺伝子組換えではないというものを選んで買っていますよ、日本消費者は。  そういった問題をこれからどうするかなということも含めて、しかしアメリカというのはやっぱりここまで読んでやっているんだなと思いますと、我々日本も、あえて政府だけ責める気はありません、政治全体で戦略的にやらなきゃ駄目だなと。やっぱり遺伝子組換えといったらもう我々も迎合してそんなものはやめた方がいい、やめた方がいいと、ところが一方で、もうそれに組み換えて生産量をばんばん拡大しているという国があるという辺りを今痛感しているところでございます。  若干時間余すところになりますが、理事の御理解をいただいて、私の質問はこれで終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  123. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合です。  まず、今日の午前中にも質疑がありましたが、先週総務省から改善勧告が出されました輸入食品検査についてでございます。  まず、総務省によるこの指摘事項について、それは総務省指摘事項というのはどういったものだったのか、それは全面的に正しいものなのかどうか。また、そういった問題が起きた原因についてはこれからも原因究明されていくんだと思いますが、現時点についてどのように原因を把握されているのか、農水省厚生労働省それぞれにお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  124. 佐藤正典

    政府参考人佐藤正典君) 御説明を申し上げます。  今般、総務省から輸入農畜水産物の安全性の確保に関する行政評価監視結果に基づく勧告を受けたところでございます。そのうち当省関連の内容といたしましては、輸入検査適正化として検査を法令、通達に則して適正に行うよう指導すること、抽出数量の記録を徹底し、確認、点検、監査を実施すること。それから、検査公正性及び中立性確保といたしましては、検査の抽出に際して家畜防疫官が自ら抽出を行うこと、検査現場への移動に際しまして公共交通機関や防疫官自らが確保した移動手段の利用を徹底すること。さらには、業務実施体制の見直しといたしまして植物防疫所の出張所の統廃合を行うこと等を指摘されているところでございます。
  125. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  今般の総務省行政評価監視結果における指摘事項は、検疫所の輸入検査時の一つであります年度ごとに定める輸入食品モニタリング検査計画について、検査の総件数計画件数を上回っているものの、計画件数を達成できていない個別の品目項目があることから、その原因分析及び改善策実施を求めているものでございます。  その原因といたしまして、どうしてそのような個別の項目品目の乖離が出るかということでございますが、モニタリング検査を行う中で違反が発見された場合などには検査率を引き上げて検査強化を図るということでありますとか、あるいはモニタリング検査計画そのものが前年度、前々年度実績を踏まえて策定しておりますけれども、市場動向の変化に伴って実態に沿った検査が行われることから実施年度の輸入実態と適合しなくなることがあると、こういうようなことで、当該年度におきまして実際の輸入実態や問題の発生状況に応じた柔軟な対応が必要となっていくために、そこで実施内容が変更になりまして、そのために乖離が生じるということが一点ございます。  さらには、品目によりましては、貨物の搬入場所遠隔地となった場合に人員のやりくりが困難となってしまう場合などがあると。さらには、これ私ども本庁の方の反省点でもございますが、検査計画が未達成の場合の原因の精査というものを毎年行って、その対応を次年度どうするかというような取組がなされていなかったこと等が理由であるというふうに考えております。  なお、総務省からの輸入食品検査についての指摘につきましては今申し上げたようなことでございまして、いわゆる業者との関係についての指摘につきましては一切受けておりませんので、併せて申し添えさせていただきます。
  126. 谷合正明

    ○谷合正明君 動物検疫所植物検疫所指摘されたことについての、これは原因についてはただいまどのように承知されているんですか。
  127. 佐藤正典

    政府参考人佐藤正典君) 補足して御説明を申し上げます。  幾つかの点について御指摘いただいておりますけれども、例えばバルクで穀類が来ます場合に、その検査につきまして、パイプで吸い取るような形でやっておりますけれども、その吸い取る初めのとき、それから最後のとき、二回やれというふうに規則はなっております。これにつきましては、過去の経験則上、酸素といいますか空気に触れている上部に通常害虫がいるということで、その上部だけ検査をいたしましてやっているもの等がございまして、むしろこれは通達の方を改正する必要があるだろうというふうに思っております。  それからもう一つは、監査の仕組み、輸入検査についての監査の仕組みを検討すべきではないのかという御指摘を受けておりまして、これにつきましてはその検討を開始するというところでございます。  それからもう一つ、検査の抽出につきまして、業者方々協力を願っていて、そこに、場所に持ってきていただくというようなことが行われていたようでございます。それで、検査の効率性ということでやったようでございますけれども、これにつきましては、きちんとした形で抽出をさせていくということで、またその合理的あるいは効率的な方法についてはしっかりとした調査をやりまして、更に科学的なといいますか、その方法についても検討しなければならないというふうに思っているところでございます。  また、交通機関の利用の問題につきまして、港湾地帯でございますのでなかなか公共の交通機関がないようなところが多いわけでございますけれども、これにつきましても、輸入業者の自動車に同乗していた者があるということで、これにつきまして精査をいたしまして、適切であったかどうか、やむを得ない場合であったかどうか等々につきまして詳細に精査をいたすこととしているところでございます。  以上、しっかりとした対応をやっていくつもりでおるところでございます。以上であります。
  128. 谷合正明

    ○谷合正明君 今回の指摘を受けてどういうふうに改善していくかという話なんですが、今おっしゃっていただいた回答の中には、通達そのものを改正すべきじゃないかという話もあれば、不適切だったのかやむを得なかったのか、この辺を調査していきたいという話もあるんですが、今言える段階で結構なんですが、まず農水省の方から確認しますが、指摘事項を受けてどのように今後改善していくべきと考えていらっしゃるのか。動物検疫所あるいは植物検疫所の体制、もし総務省指摘されるとおりにやらなきゃいけないんであればもう少し人員を増やさなきゃいけないとか、あるいは効率化しなきゃいけないとかいう問題があろうかと思いますが、この点について今言える範囲でお答えください。
  129. 佐藤正典

    政府参考人佐藤正典君) 御説明いたします。  今般、総務省から動植物検疫につきまして、輸入検査適正化あるいは検査の公正化、中立性確保等につきまして勧告を受けたところでございます。これらを真摯に受け止めまして、植物防疫所及び動物検疫所検査業務適正化に努めるとともに、防疫官の増員あるいは配置の見直し等を含め、検査体制の更なる充実強化を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  130. 谷合正明

    ○谷合正明君 質問しますが、厚生労働省におきましてもどのように今後していくかという問いなんでありますが、昨年の十二月にも食品の安全について私、藤崎部長質問させていただきました。そのときは、人員の問題以外に、検査の機能を検査項目拡充したりだとか、必要な最新の検査機械を導入するとか、あるいは緊急的に多くの検査が必要になった際に外部に委託できるようにするとか、いろいろな工夫をして重点的、効率的な監視体制が取れるようにしていきたいという話だったんですが、まずどういったところから改善するのか。  そして、私が思うに、やはり結局人員の問題なんだと思うんですね。特に食品衛生監視員については、過去、輸入食品数の増大に比例する形で監視員も増員しておりますが、一人当たり監視員が検査する数量というのが余りにも大きいと思いますので、この点についてはやはり抜本的に強化しなきゃいけないというふうに私は考えておるんですが、この点についての御見解をお伺いします。
  131. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  まず、今般の総務省よりの勧告を受けてどういう対応をするかということでございますが、まず、総務省からの勧告が公表されました昨週の金曜日、五月二十三日付けで、検疫所に対しまして、モニタリング検査計画実施に際し計画実施に支障がある場合には速やかに報告を行うよう通知をいたしたところでございます。  そして、今後どうしていくのかということでございますが、まずは、先ほど申し上げましたように、年度途中での計画の変更というものが余儀なくされますので、この点につきまして、実施年度の輸入実態を踏まえた定期的な見直しが可能となるように計画を弾力化するということを行っていきますとともに、年度終了時には必要な検査が行われていない原因を究明して改善策を講ずるということをきちんとやっていきたいというふうに考えておりまして、モニタリング計画と実績が整合するように正しく努めていきたいというふうに考えております。  さらに、今先生から御指摘いただきました人員の増が必要なのではないかということでございますけれども、私ども、これまで様々な努力をして、人員の増を確保しつつ様々な機器の導入等々をやってまいりまして、輸入検査が万全に行えるようにやってまいりましたが、やはりきめの細かい対応を、モニタリング検査を行っていくということに関しましては、どうしても食品衛生監視員の増と、確保というものが必要でございますので、平成二十一年度予算要求に当たりましては、今般の様々な事案等々を勘案しながら、一層の人員確保に努めて輸入食品の安全性確保に取り組んでまいりたいと、このように考えております。
  132. 谷合正明

    ○谷合正明君 いずれにしましても、輸入食品の安全性の確保、また農業生産の安全の確保、これも両省においてはしっかりやっていただきたいというふうに思います。  次の質問に移ります。  林業の話なんですが、林業再生のための新生産システムについてなんですが、これは私、新生産システムは非常に大事であるということで、そんなふうに思っております。  この林業について国会で何度か質問をさせていただいて、その上でまた現場に戻って製材所等で話を聞いてみました。  そこで、この新生産システムが、これは平成十八年度ですかね、からスタートして、五か年計画で全国十一か所のモデルでやっているわけでありますが、御承知のとおり、日本の林業の全体構造として、零細な製材所であるとか、非常に流通経路も効率性に欠けていたりとか、そういった問題もあるので、例えば新生産システムということで、大ロットで安定的な木材供給体制の確立を通じるためのシステムをまずはモデル的に十一か所でやるということであります。川上、川下一体となって大規模な加工施設と直結した木材の安定供給体制を確立するわけですが、これは行く行く恐らく全国展開されていくという想定だとは思います。  そこで、現場で話を聞いていると、この新生産システム、例えば製材所、大体年間で五万立米、流域で五万立米ないと対象になってこないということで、私が行った鳥取の若桜町というところの製材所は、かつて町で八つ、五つあった製材所が合併、統合して造られた製材所ですが、年間でかつて三万立米、今は一万五千立米ということでございます。しかし、それではなかなかそれは新生産システムに入ってこれない中小製材所にランクされるわけでありますが、この新生産システムを進めると、負の側面としてそういった中小の製材所に木材の安定供給が図られないのではないかと。山元の木材がどんどん例えば十万立米以上出すような製材所にどんどん集中してしまうのではないかという懸念を持たれておりますが、この点について木材の安定供給にどう対応していくのか、確認をさせてください。
  133. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 今委員からお話がありましたように、林野庁におきましては、平成十八年度からこの新生産システムを全国十一か所でモデル的に実施してきております。  しかしながら、さらに、平成十九年度からはこの新生産システム関係の大規模な加工工場だけではなく、全国各地におきます原木のユーザーの需要動向に対応するためということで、各都道府県ごとに、森林組合系統でありますとか、素材生産業者団体でありますとか、大規模林家等の原木供給者や都道府県、国有林を構成員とします国産材の安定供給協議会を設立をいたしました。この協議会の体制の下で、間伐等を施業を集約化、低コスト化することによりまして、効率的な原木生産を促進するとともに、民有林、国有林を併せた原木供給可能量を各都道府県の協議会ごとに取りまとめ公開するというような事業をやってきております。  こういった取組によりまして、国有林とも十分に連携をした上で、中小の製材工場を含む地域の需要者のニーズにこたえて安定的に原木供給がされる体制を全国的に構築をしてきているところでございます。
  134. 谷合正明

    ○谷合正明君 現場に行くと、製材所が全国でどのくらいあるか私分かりませんが、半減ぐらいするんじゃないかというぐらいの危機感を持っておると。もちろん意欲あるところは生き残りを懸けていろいろな意味で効率化を図っていくということで、今まさに必死になって頑張っているわけでありますが、この新生産システムになかなか流域として入ってこないような地域、これどうするのかと。中小の製材所等は現実に町村の、私が行った若桜町なんかは一か所あるわけですが、そこに大きな地場産業になっているわけでして、この意欲ある中小の経営体について、これどういうふうに配慮をしていくのか、もちろん新生産システムということで国を挙げてやっていくということは必要であると考えていますが、一方でどうしてもモデル地域に入ってこないような地域、こういった地域への配慮をどうしていくのか、この点について確認をさせてください。
  135. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 林野庁といたしましては、中小製材工場を含む木材産業に対する政策の基本といたしましては、需要者のニーズに対応した品質、性能の確かな製品を安定的に供給できる競争力の高い加工体制を構築していくことが必要だと考えております。  このため、この新生産システムによりまして、モデル的に大規模な加工体制の整備を進めている中におきましても、中小の製材工場につきましては、例えばですが、乾燥、仕上げ等を行う中核工場に対しまして、一次加工を行った製材品を安定的に供給する等によりまして、中核工場と連携する重要な役割を果たすことが期待されております。  具体的には、この新生産システム取組として、岡山県におきましては、地元製材業者十三社が中核となる工場に原料となる間柱、ラミナ等を供給している事例がございますし、この新生産システムに当たっておりません栃木県では、十五程度の中小の製材工場が一次加工としての粗びきを行った上で、連携する三つの拠点工場におきまして製品の乾燥、仕上げを行うという役割分担をすることによりまして、品質、性能の確保安定供給を実現している事例もございます。  このように、林野庁としては、乾燥、仕上げ加工等を行う中核工場と、連携をします意欲ある中小工場に対しましては、品質管理技術の向上に向けた専門家による技術指導でありますとか、加工施設の整備に必要な資金の借入れに対する利子助成やリース料の助成等を実施しております。  また、これとは別の観点で、中小の製材工場と森林所有者、工務店との連携によります、顔の見える木材での家造りといった特色のある取組も推進することも重要でございまして、このような家造りの普及に対しましても支援をいたしているところであります。  今後とも、こうした施策の展開を通じまして競争力の高い加工体制を構築する中で、意欲ある中小の製材工場の取組についても支援していきたいと考えております。
  136. 谷合正明

    ○谷合正明君 是非きめ細かい対応をしていただきたいというふうに思っております。  もう一つ、路網の整備なんですけれども、やはりこれは一番大事なポイントなんですが、林道の開設延長に比べると、我が国の場合、作業道、作業路の開設延長が少ないという、現実問題としてありました。ここ数年では、林道に比べて作業道、作業路の開設延長を三倍から四倍に増やしていったということなんでありますが、先日、鳥取の傾斜地のきついところに行きましたけれども、国道とか県道、市町村道、走っているわけですね。例えば国道から直接作業道とかを入れたいんだけれども、規制で、例えば国道のわきに四メートル水平の場所確保しなければ作業道とかを入れられないとかいろいろな規制があって、作業道、作業路をもっときめ細かく増やすために、何か規制がもしかしたらあるのではないかというふうに私思い至りました。  林道がなければ作業道ができないのかという問題もありますし、今実際に、国道、県道、市町村道という実際にネットワークがあるわけでありますから、その辺りを具体的に、その地域地域の実情も踏まえての路網整備というのを是非やっていかなければならないと思いますが、この点について林野庁としてどう考えていらっしゃるのか。
  137. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 間伐等の森林施業を着実に実施していくためにはやっぱり高性能の林業機械を入れていかなきゃなりませんので、そういった効率的な作業システムに対応し得るよう、既設の公道等の整備状況も踏まえながら、林道と作業道の適切な組合せによりまして路網整備を進めることが必要であると考えております。  このため、従来から林道整備に当たりましては、計画段階におきまして公道、農道との効率的な連絡のために必要な調整を図るとともに、国道や県道等との作業道を直接つなげる場合も含めまして森林整備事業等の補助対象として路網の整備を進めてきているところでございます。しかしながら、作業路、作業道の場合には傾斜がきついとかそういった問題がございまして、国県道と直接につなげる場合には安全上の問題もあるということで、それは若干の構造上の規制があるということは事実でございます。これはやはり安全確保という面もございますので、そういった点からもやはり慎重に検討する必要があると考えております。  いずれにしましても、作業道、作業路を今後かなりの勢いで増やしていかなければなりませんので、今般、可決成立させていただきました森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法に基づく市町村交付金も作業路網の整備等にも活用できるということにいたしたところでございますし、こういった施策を通じてこの路網整備を更にしっかりとやっていきたいと思っております。
  138. 谷合正明

    ○谷合正明君 是非、慎重に検討する中で、知恵を出して路網整備を推進していただきたいと思います。また、これ自治体によって規制の概念がまた違ったりしますので、この辺も林野庁としても実態を把握していただきたいというふうに思います。  最後になりますが、また今度は漁業の話なんですが、先日、広島のカキ養殖業の方とお話しする機会がございました。まず一点、細かい話の要望を受けたんではありますが、細かいとはいえ、これは国のマターだということでお話しさせていただきますが、それはカキ養殖業のカキいかだを海面に浮かべるわけでありますが、このカキいかだを、成長段階のカキの場合、えさとなるプランクトンの多い身入り漁場と呼ばれる海域へ運ぶために移動することが結構、いかだごと移動することがあります。また、台風が近づくと、比較的波の影響を受けない避難場所へいかだを移動したりします。その都度、実は漁業の方はいかだ運行許可申請書というのを、ここでは広島港長に毎回申請しなきゃいけないんですね。移動するたびに申請しなきゃいけないということで、しかも瀬戸内海でありますから、離島の方が結構多いわけです。わざわざこの申請書を持って、判こをもらうために本土まで行って、毎回これを申請して、チェックは判こだけ普通に押されるだけだと。  ここら辺をもっと簡素化できないかという要望があるんですが、是非今日、前向きな回答をお願いします。
  139. 米岡修一

    政府参考人(米岡修一君) お答え申し上げます。  カキいかだの運行につきましては、港則法第三十四条におきまして、いわゆる「特定港内において竹木材を船舶から水上に卸そうとする者及び特定港内においていかだをけい留し、又は運行しようとする者は、港長の許可を受けなければならない。」という規定がございます。  先生から御指摘ございましたように、今、広島港におきましては平成十九年、カキいかだの係留、運行の許可件数が四千二百三十九件ございます。この実情もよく把握した上で、今後、手続の簡素化につきまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  140. 谷合正明

    ○谷合正明君 そんなに四千件もあったとは知らなかったんですが、これは本当に困っているんですよ。このために行くんですよ。こんなのファクスでいいじゃないかという話もあるし、申請期間をもう少し延ばしてくれという話があって、この話は現場ではなかなか進まないんです、これは国の話だということで。漁師の方が国の事務所へ行って話をしても、国の事務所では本当に新入社員というか新入職員の人が対応するだけで全くらちが明かないということなので、是非これ現実を踏まえて対応してください。よろしくお願いします。
  141. 米岡修一

    政府参考人(米岡修一君) 手続等につきましては、もちろん最近では電子システムによる申請手続というか、オンラインシステム等もございます。もちろんコンピューター関係というのは年齢によって使える方といいますか、それはいろいろございます。先生御指摘の点につきましては、ちょっと部内で検討させていただきたいというふうに考えております。
  142. 谷合正明

    ○谷合正明君 以上です。終わります。
  143. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  今日は、有明海の再生への開門の問題で質問をしたいと思います。  それで、五月十二日の決算委員会のときに、我が党の仁比聡平議員大臣に対して、二〇〇二年、平成十四年の諫早湾の短期開門調査が行われて、そのときに漁民の実感としてタイラギが立った、向こうの現地の人の、タイラギが捕れた、立った、アサリが捕れたと、こういうふうに証言をしていることに対して大臣の認識を問いました。  私は、この質問を実はビデオライブラリーで見たんです。それで、そのときに、やっぱり大臣答弁が、仁比議員質問に対して、まともにちゃんと質問したことに答えられていないなと、納得できる答弁ではないというふうに思ったものですから、再度そのことについて今日質問したいと思います。  最初にまず確認をしておきたいんですけれども大臣農林水産大臣、水産業にも責任を持っている大臣だと、そういう立場でこの有明海を再生させていこうということについての御意思について、最初に確認をしたいと思います。
  144. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 有明海の再生の問題については、委員御承知のとおり有明海・八代海再生特別措置法がございます。それに基づきまして有明海・八代海の総合調査委員会ができておりまして、そういう委員会を中心に有明海の調査を進め、そして漁業の再生については関係漁業協同組合などの皆さん方と協働をいたしまして、この有明海の漁業の再生に真剣に取り組んでいくということになっております。
  145. 紙智子

    ○紙智子君 それで、今日お配りしている資料をちょっと見ていただきたいと思います。二枚あるんですけれども、このうちの長崎県におけるアサリの漁業量のところを見ていただきたいと思います。それで、大臣は開門できない理由として、短期開門調査に向けて農水省が行ったシミュレーションの結果のみを根拠にして、二枚貝のアサリのへい死が増加しているということが報告されているんだと、この答弁を繰り返しされていたわけです。  それで、この資料を見ますと、長崎県海面漁業・養殖業生産累年統計書ということなんですけれども、これで見ますと、アサリ漁の拠点になっている小長井漁協、ここでは短期開門調査の二〇〇二年以降、翌年の二〇〇三年とアサリの漁獲量は倍以上に増えていることが分かるわけです。それで、長崎県全体で見ますと、この一番上のところに合計出ていますけれども平成十三年、四百三十三トンから、十四年、四百三十六トン、十五年、六百四十一トンというふうに増えているわけですよ。  これは小長井漁協の漁民の皆さんの証言を裏付けるものだと、短期開門調査によってアサリが増えたということを示すものだと思うんですけれども、これについて、大臣、どのように思われますか。
  146. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 長崎県の海面漁業・養殖業の生産累年統計書、今委員がおっしゃられましたとおりでございまして、長崎県におけるアサリの漁獲量は、平成十三年が四百三十三、平成十四年は四百三十六トン、平成十五年は六百四十一トンとなっておりまして、短期開門調査の前後だけを見れば漁獲量は増加しているというのは数字の上で明らかであります。  しかしながら、これを更にさかのぼった平成十一年、十二年を見てみますと、四百九十九トン、七百三十七トンという実績でございまして、平成十五年と同等程度の漁獲量となっているなど、短期開門調査によってアサリの漁獲量が増加しているというふうに判断することはできないのではないかというふうに考えているわけでございます。  また、諫早湾内の小長井、土黒、神代及び瑞穂、四漁業地域のアサリの漁獲量を比較いたしますと、小長井の漁業地域では、平成十三年は二百二十トン、平成十四年は四百四トン、平成十五年は五百五十二トンと増加しているわけでありますけれども、土黒、神代及び瑞穂の漁業地域の漁獲量は、合計をいたしまして、十三年が百七十一トン、十四年は二十四トン、十五年は五十三トンというふうに減少しているわけでございます。  このようなことからも、諫早湾内のアサリの漁獲量が短期開門調査によって増加しているとは言えないのではないかというふうに考えているところでございます。
  147. 紙智子

    ○紙智子君 今そういうふうにおっしゃるだろうなと思いましたよ。この表で見ると、確かに他の地域のところでは数字的には減っているところもあるんですよ。  だけど、やっぱりアサリということで見ますと、拠点になっているのが小長井なんですね。やっぱり、元々はアサリじゃなくてほかの魚だとかタイラギだとかほかのものを捕っていたけれども、それがあの諫早湾の堤防を落とされた後捕れなくなったという中で、どうしようかということの中でアサリに力を入れてきたということがあるんですけれども、そういうことでいうと、拠点となっている小長井でこうやって短期開門調査をやった後増えているということや長崎県全体で見れば増えているという事実は、これは間違いのないことだと思うんですよ。  それで、そのことをもって、今言われたように、これが短期開門の後の結果だというふうには思えないとおっしゃるんですけど、結局なかなか開門できないことの理由に、いろいろな理由付けするんですけれども、実際にはこうやって増えたんじゃないかという漁業者の皆さんのそういう感覚がある中で、これをあくまでも開けないという理由にするのはおかしいというふうに思うんですよ。  それから、もう一つの資料を見ていただきたいんですけれども、こちらの方は、佐賀県の有明水産振興センターの出したタイラギの生息状況ですよね。これも前回、仁比議員が示したわけですけれども、これについても、潮受け堤防の閉め切り水門を下ろした九七年、平成九年ですね、この翌年からタイラギが消滅をしています。そして、短期開門調査を行った翌年の平成十五年には、タイラギの生息がはっきり見て取れるわけですよね。平成十四年、これ二〇〇二年ですけれども、このときに短期開門ということで開いたわけですよね、わずかですけれども。その後、一年後に、二〇〇三年、平成十五年にこうやって黒い点が増えているのが見受けられると。短期開門ですから、本当にわずかの期間だけ開いてまた閉じたわけだけれども、その影響が次の平成十六年も残った形になって表れていると。だけど、その後また全く皆無というような形で消えてしまっているわけですよ。  ですから、こういうことに対して、実際には、これやっぱり漁業者の感覚としては、ちょっとでも開けて海流を入れて移動したと、そういう中でこうした変化が出てきているという実感を持っているということだと思うんですけれども、これについて大臣はどのように思われますか。
  148. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 佐賀県の有明水産振興センターというところがございます。このセンターによるタイラギ生息状況調査というものがございまして、平成十五年、十六年度に有明海の湾奥の北東部、福岡県海域でございますが、その一部地点において成貝の生息密度が高いという結果が確かに示されております。  しかしながら、一方において、有明海におけるタイラギの漁獲高は諫早湾干拓地の堤防の閉め切り以前の一九八〇年代から大きく増減を繰り返しております。長期的にそれが減少の傾向にあるわけでございます。このようなことから、平成九年の閉め切り以降、平成十五年度の生息密度が高くなっていることだけをもって短期開門調査の影響があったと判断することは難しいと考えているわけでございます。  また、先ほど申し上げました有明海・八代海の再生特別措置法に基づき、平成十八年十二月に有明海・八代海総合調査評価委員会報告書を出しております。その報告書によりますと、有明海北部海域のタイラギ資源量の減少は、長期的要因としては中西部漁場での底質環境の悪化があると。つまり、泥化、有機物・硫化物の増加、貧酸素化といった海の底の環境の悪化による着底期以降の生息場の縮小、短期的要因としては北東部漁場での大量へい死とナルトビエイによる食害が考えられると。長崎県海域におけるタイラギの減少の要因、タイラギの幼生ですね、それの輸送状況に及ぼす潮流変化の影響、大量へい死の発生メカニズムについては明らかにされておらず、今後解明していくべきと考えているということで、この専門家の集まりであります調査評価委員会報告ではこのように言っているところでございます。我々はこのような委員会報告書を多として、この認識に立っているわけでございます。
  149. 紙智子

    ○紙智子君 そうやって準備していろいろ書かれたものを大臣読まれて答弁されるんですけど、実際に長い間そこで漁業をやってきて、それで潜水の専門の方もいるんですよ、漁業者の中には。で、潜って海の状況がどうなっているかということを逐一見ているわけですよ。そうしたら、この短期開門調査をやったときに潜った、潜水した方は、海の状況がどうなっているかということをやっぱり変わっているというふうに実感するわけですよね。今までは一年間超えてタイラギも生き残れなかった、それがやっぱり今回は生き残っているんだと。そういう今までと違う状況を実感して、海の状況はやっぱり変わると、だから、やっぱり少しでも開けるとその影響が違うんだということを実感を込めて言っていらっしゃるわけですよ。  そういう漁業者の訴えについて、大臣はどういうふうに思われるんですか。その事務的に書いたものじゃなくて、少しでもそういうことによって有明海が回復するという見通しというか見込みがあるんだったら、それを本当に受け止めてやってみようというふうに思わないのかというふうに私は思うんですけど、いかがでしょうか。
  150. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) それは、漁業者の実感ということも、それはその漁業者がある海域の調査感じておられることだと思いますから、それはそれとしてそういう声がある、そういう認識があるということはあるでしょうけど、一方、この今申し上げました委員会というのが、全海域に、広い海域にわたって専門的な立場で調査をした報告書に基づいて言いますと、その実感と違う認識を示しているわけでございまして、我々はそういう実感も、実感としてあることは承知しながらも、しかしやはりこの法律に基づいて設置された委員会調査報告書の考え方に依拠しているということでございます。
  151. 紙智子

    ○紙智子君 調査報告書の中身に依拠するということで、ずっと同じことを言い続けてきているんですよ。  それで、先日も仁比議員質問に対して、諫早湾の潮受け堤防の開門をできない理由についても、平成十六年の元亀井農水大臣のときですね、このときの答弁を同じように繰り返されているんですよね。そのときに、私も実は当時の亀井農水大臣質問しているんですけれども、その時点の要するに農水省がやった調査結果で判断していて、改めて調査はやる気はないというわけですよね。  私、その亀井元農水大臣質問したときに、大臣はやっぱり同じことを言われたんですけれども、同時に言っていたのは、今後も漁業者の声を聴きながら進めていきたいんだと、様々な声があるのは分かっていると、そういうのを聴きながら進めていきたいということを言っておられたわけですよ。  農水省が、干拓が終われば漁業が継続できるんだということを説明しながら進めてきて、現実には海がどうなったかというと、回復してないじゃないですか。回復してないし、漁業の継続もできない、そして漁業だけじゃもう生計が立てられないということで、漁業者の皆さんが苦しんでおられるわけですよ。そういう漁民の皆さんの声に大臣は一体どうこたえるおつもりなのか、御答弁願います。
  152. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 諫早湾の干拓事業の実施に伴い、いろいろな漁業に対する影響が予測されたわけでございます。そういう事業実施に伴って発生します漁業への影響につきましては、環境影響評価結果などを踏まえながら、関係漁協との合意に基づきまして、昭和六十一年度から昭和六十三年度にかけまして、漁業権などの消滅あるいは漁業への影響に対する補償を実施してきたところでございます。  また、有明海における二枚貝類や魚類の漁獲量は、諫早湾干拓事業開始前の一九八〇年代から長期的な減少傾向にありまして、公害等調整委員会の裁定でありますとか、あるいは工事の差止め、仮処分の裁判、いずれにおきましても、諫早湾干拓事業と漁業被害との因果関係は認めることができないという判断を示されているのでございます。  農林水産省といたしましては、この平成十六年五月の亀井農林水産大臣委員が御指摘になりました大臣の判断といたしまして、中長期開門調査に代えて、有明海再生に向けた調査、現地実証などを実施するということをお約束をしているわけでございまして、そういう意味では、今後とも漁業者方々とともにこの有明海再生に向けて取り組んでいくつもりでございます。
  153. 紙智子

    ○紙智子君 裁判にまで立ち上がらなければならなかった漁業者の思いをどういうふうに農水大臣は受け止めておられるのかというふうに思うんですよ。漁業者の皆さんは、有明海のとにかく豊かだった宝の海を取り戻したいと、その一心なんですよね。本当に干拓地ができてしまっているわけですから、それをまた海に戻すなんということはできないわけですけれども、しかしながら海の環境を少しでもとにかく取り戻すためにあらゆる努力を行っていくというのが、私は農林水産大臣の役割だというふうに思うんですよ。  それで、いろいろ再生のための調査をするんだと言うんですけど、この間やってきた対策としても、やっぱり効果が上がって明らかに海の状況が良くなったんであれば漁業者は言わないですよ。だけど、やっぱり変わってないんだから、実際に回復されていないという状況がある中で、こういう声が引き続き上がってきているわけですよ。  本当に漁業者の皆さんは、そういう、いろいろ国としても振興策でその対策やっているんだと言うけれども状況がなかなか変わっていかない中で、やっぱり開門しかないと。そして、その開門の仕方も、その気になれば、いろいろと大きな影響を与えない形で開門することはできるという、やり方は幾らでも工夫できるんだと。  ですから、そういう意味では、そういう多くの漁業者の皆さんの本当につらい胸の内をしっかり受け止めて開門する道を検討すべきじゃないんですか。いかがですか。
  154. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 潮受け堤防の水門を開門するということにつきましては、これは中長期開門調査実施について、十分な対策を講じたとしても予期しない被害が生ずる可能性があるということ、そして、その調査には長い年月を必要として、その成果は明らかでないということなどから、亀井大臣が、先ほど申し上げましたような判断に至ったわけでございまして、この判断自身は私も変わることはないというふうに申し上げざるを得ないわけであります。  また、平成年度から学識経験者の指導の下に実施しています環境モニタリング調査などの結果によりますと、諫早湾内の水質、海の底の底質、そしてその底の底生生物の状況につきましては、潮受け堤防の閉め切り後悪化する傾向は見られていないということから、調整池からの排水による有明海の漁業環境への直接的な影響はないものと考えているわけでございます。  なお、農林水産省としては、今後とも、その関係業者方々とともに有明海再生に向けた調査そして現地実証には取り組んでまいりたいと、そういう考えでおります。
  155. 紙智子

    ○紙智子君 予期せぬ被害が起きるかもしれないからってやらないと言うんですけど、もう既に、大きな予期しない、大きな被害が出ているわけですよ。年間で一千五百万から二千万円の、そういう水揚げがタイラギでもあったわけですよね。それが一切できなくなってしまったから、漁業者の人たちは漁業ができないで廃業せざるを得ないとか、中には、借金をして返せない状況のまま、本当にこの見通しを失って自ら命を絶つ人も出ているわけですよね。有明海の沿岸漁業でとりわけ諫早湾に近い長崎県の小長井の沖、それから、佐賀県の大浦の沖、この漁業というのは壊滅的な打撃を受けたわけですよ。  これ以上大きい、予期せぬ被害と言うんですけど、あるかということを、私は逆に聞きたいし、やっぱり大臣の肉声で話してほしいんですよ。その準備した書いたものを読むんじゃなくて、本当に今苦境に立たされている、そういう漁業者の皆さんの立場に立って、借金返せないで、県はとにかく利子補給についてはやったようですけれども、一体どうするのかと。やっぱり、その状況を打開するには、海が回復されて、また漁ができるようになったら返せるめど出てくるんですから。その海の状況を回復するために、やっぱり大臣として、本当に心の通った温かい決断をしていただきたいと、私は開門をしていただきたいということを強く申し上げたいと思います。  最後に一言お願いします。
  156. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 今申し上げたとおりでございまして、その漁業者のお気持ちというのは委員がるるお話しございましたので、そういうお気持ちであることは承知しながらも、しかしながら、この開門によって生ずる予測し難い他の漁業者も含めまして、関係者も含めて大きな被害が出るおそれがあるなどのことを種々考えまして、開門するつもりはございません。
  157. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会