○公述人(澤井勝君) はい。
お手元にA4の縦の横書きの三枚物が配付されていると思いますが、それに従って発言したいと思います。
最初の
三つについては、これは
財政の
状況について今回の
法案について評価する基本的な視点みたいなことの土台として、現状について簡単に触れておきたいと思います。
まず一番目に触れていますのは、三位一体改革で
交付税と補助金と税制を三位一体で改革するということでやってきましたけれ
ども、その結果は、具体的には
自治体のレベルでは
地方交付税が五兆円以上減少するという中で、それと同時に補助金の一般財源化が進みまして、ただし全額一般財源化されませんでしたので、そのすき間は相当あります。その点もありまして、例えば保育所の
運営についても、従来の補助金がなくなって一般財源でやれということになっておりますが、それで十分にできているかというといろいろ問題はあると思います。そういうような形で一般
財源不足感というのは非常に強く
自治体にあるということですね。
それから二番目なんですが、それもありまして
総務省の方からも集中改革プランが出されまして、それに従う、あるいはそれ以前から
自治体独自に行
財政改革してまいりまして、特に職員数の削減が非常に厳しくなる。こういう職員数の削減というのはある
意味で競争
関係になってまいりましたからね。
例えば、私がそこに書いた寝屋川市、大阪の寝屋川市ですが、ここでは行
財政改革市民懇談会というのを設けまして二年半ほど議論してまいりましたが、
平成十三年レベルで二千二百あった職員定数が
平成十八年で千六百、さらに
平成二十二
年度には千四百にすると、大体三分の二に職員数を削減するというのが進行しておりまして、具体的に前倒しで実現しておりますね。
そのことについては、市民懇談会では、市民の中には大体、そうですね、大企業の総務畑をやってきた方も含めましてそういう企業のOBの方もいらっしゃるわけですが、その方々から、これでもつのかと、行政サービス水準はもつのかと。特に、現場を言わばアウトソーシングする中で行政の質が保てるかという厳しい、何というか、危惧が出ております。これはもちろん、ですから、職員数の削減は結構だけれ
ども、一体どこまで行くのというような危惧も出ている。そういう点では、既に相当数削減してきておりまして、臨職、嘱託の数も増えていますので、そういう点での行政の劣化というものが心配される
段階まで来ているというふうに私は思います。
それから三番目ですけれ
ども、そのひずみというのは、例えば、一週間ぐらい前ですかね、「クローズアップ現代」でやっておりましたけれ
ども、官製ワーキングプアという問題が出ております。これがアウトソーシングの先で丸投げ状態になっていまして、それがその委託先の労働者の労働
条件を非常に悪化させている。そのことに
自治体が無自覚と言ってはなんですけれ
ども、そういう点で、その点での
自治体としての僕は
責任というかな、地域の労働
条件を守る
責任についてもう少しきちんと議論しないといけない。
それをただし推進しているのは、一般
財源不足という
状況の中での
財政の、あるいは
自治体行政の縮小のための圧力が掛かり続けているということだと思います。その点は、既に六年、七年にわたって改革が進んでおりますので、その点を、改めて一体どういう行政水準、行政サービスが今行われているのかというのをきちんと評価しながら行
財政改革について議論する必要があると思っています。
それから、つまり
自治体の存立そのものが問われるような
状況になっている。
自治体というのは住民の福祉を確立するのが
自治体の存立目的ですが、それ自身が、
自治体自身がそういった地域の労働
条件、働く人の生活
条件を切り下げるようなことをするのでは困ると思いますね。その辺については
自治体の側にも僕は自覚を持ってもらいたいというふうに思っています。
それからもう一つは、三の二番目になりますが、一方でこれまでの
地方債依存の
財政運営のツケが回っていまして、公債比率が非常に高くなっているということで、
財政の硬直化という点では、特に借金というのはやっぱり大きいですから、これの負担が非常に大きく、なかなか縮小してまいりません。単独
事業を削減してまいりまして大体半分ぐらいになっておりますけれ
ども、しかし、それでも従来発行した
地方債の公債費の削減分が重くのしかかっておりまして、それが人件費削減の圧力にもなっているというふうに思います。
それから、新
財政再建法が四月から施行されておりますけれ
ども、これもまた四つの指標で
財政、これから健全化、再建を進めることになっておりますけれ
ども、これについてもその指標によって
財政運営についての先の見通しの心配から、やはりなお行
財政に関する改革圧力というのは掛かり続けると思います。これが一つの
財政の今の現状だと思いますね。
一方で、四番目に書いてありますが、府県や市町村に対する仕事は増えております。
私は大学の方で福祉の方を教えておりますが、その領域で言いましても、二〇〇〇年以降に、児童虐待防止法それからDV法さらに高齢者虐待防止法、いわゆる虐待
関係ですけれ
ども、これらはすべて市町村の
責任になっております。
ところが、市町村の
責任になっても、職員を配置しなきゃならないわけですが、そのための
財政措置がされておりませんので、現場では兼務ですね、取りあえず兼務でやっている。児童虐待防止までまだ専門職がいるわけですよ、県の方に。ところが、高齢者虐待の方にはだれも専門家はいないんです。児童よりもっと難しい、高齢者の場合は。それについての言わばスタッフの保障というのは何もないので、非常に厳しいというか、難しい
状況だと思います。
そういう
状況が、例えば地域就労支援
事業、また就労
事業にちょっと地域の就労、
東京なんかを除けば厳しさが進んでいますが、地域就労支援
事業なんかも求められますし、さらに地球環境
対策ということも、今度新しい
法律ができるようですけれ
ども、これも府県や市町村に
計画作って地球環境
対策を進めるということになっていますが、そのための専門職がいるでしょうかね、そのための
財政措置がされているでしょうか。それはもちろん基本的には一般財源保障ですので、
地方交付税の中で見なきゃいけないわけですが、僕は、それはちょっとどうでしょうか、ちゃんと検討していただきたいというふうに思います。全く僕はその点は不十分だというふうに思います。
それからもう一つは、五番目ですが、一時鎮静していた
東京一極集中の傾向が加速しています。これは、
東京の世界の金融市場の中心、センターとしてビルドアップしていくという面では多分今後も投資が進むでしょうし、その点でこの
東京一極集中というのは、それに賛成反対は別にして、なお進むと思いますね。その結果、やっぱり地域格差は開いていくでしょう。それに対する適切な格差を是正するための政策が取られているかどうかと。今回はそのためにイシューされたわけですが、それで十分かという問題があるわけですね。本格的に考えなきゃいけないということです。
その点で、六に書きましたけれ
ども、基本は
地方交付税の増額あるいは復元というのはやはり
自治体の側からすれば基本的なニーズだというふうに思っています。
そういった今までの
お話ししたことを
前提にちょっと今回の三
法案について
意見を述べたいと思います。
ちょっとはぐっていただきまして、二ページになりますが、まず
交付税の総額と
地方財政計画の総額が若干上向いたという点について言うと、これは七、八年ぶりのことですので、
自治体の現場からいえば明るい材料だというのは言えますね。その点で、
総務省とか
財務省の方の議論も相当いろいろあったと思うんですが、一応下げ止まったというのかな、という
状況については一応歓迎はしたいと思います。
ただし、九番に書きましたように、この
交付税の増額というのは二千億程度ですけれ
ども、これは
地方再生
対策費の四千億円でもって二千億円増えているんですね。この
対策費なかったら二千億円減なんですね。だから、そういう点では、
交付税増という
地方団体側の要求というのは
部分的というのかな、少し変形されているんじゃないかなというふうに思います。
それから、この
地方再生
対策費について言いますと、
交付税として配られますので、特に人口基準ですので、これは小規模町村にとっては、今まで小規模町村というのはある
意味でかなりいじめられてきた面があるわけですが、
段階補正の見直しとかいう形で小規模町村、特に一万人未満規模の町村にとってはかなり厳しい
状況でしたが、これがちょっと、具体的にはやっぱり数千万円の
交付税増になるわけですけれ
ども、それなりの評価はできるかもしれません、小規模町村にとってはですね。
ただ、この
地方再生
対策費の原資というのは
地方法人
事業税を国税とした
地方法人特別税の一部なので、そういう点では
地方税でもって
地方交付税を増やすという
地方間の移転になっているんですね。その点は十分な議論ができたのかなというのはちょっと心配であります。
十一番になりますけれ
ども、都道府県の法人
事業税の一部、二兆六千億円を国税とする
地方法人特別税の創設によって、それを原資に都道府県に、翌
年度ですかね、
地方法人特別譲与税を配分するわけですが、これは水平的
財政調整と言っていいわけですね、
地方間の
財政調整という。ところが、
交付税というのは垂直的
財政調整を原則としているわけです。その点で、その原則にちょっと違反するんじゃないかなというふうに思っています。
十二番で、国税とする
地方法人特別税については、税収面からの
財政力の格差を是正するという一つの工夫であるという評価はできます。特に、
東京に集中した財源を他の
団体に水平的に再配分するという
意味では評価はできるんですけど、ただし問題点があるということです。二つあります。
一つは、一番大きい点は、この決定過程に
自治体が参加できなかったということです、あるいは、させなかったということです。
地方税を国税にするということについて
地方団体の
意見をほとんど聞かれなかったと。その仕組みがなかったということですね。それが僕は最大の問題だと思います。その点は、
地方の
意見をこういった
協議の場に、あるいはそういう
協議の場をつくってきちんと反映させる必要があるというふうに思います。
特に、二〇〇九
年度に抜本的税制改革が予定されておりますので、それに合わせて、今回の税制改革も多分変わるでしょうから、改めてこの
地方税の在り方について
協議する場を、
地方六
団体、総務、財務両省を中心にした
委員会で議論していただきたいと。それをどういう形にするかについてはいろいろ御議論があると思いますけれ
ども。これについては、そういった
地方財政委員会みたいな形は、
地方財政平衡交付金
制度というのが前ありまして、昭和二十四年から二十八年まであったわけですが、こういった仕組みを
参考にされたらいいんじゃないかというふうに思っています。
それからもう一つの問題点は、
地方法人特別税が今
年度はほとんど収入されませんので、都道府県の方は臨時
財政対策債でその分を賄うことになっている。そうしますと、これは本来、税で来るべきところが
地方債に振り替わっていますので、それはまた
地方財源の先取りになっているんですね。そういう問題点もあると思います。
それで、
あと、三ページになりますけれ
ども、特に一番強調しておきたいのは、水平的
財政調整というのは、これはいろいろな議論あるんですけれ
ども、現在の経済構造とかあるいは税制の在り方ですと、そういったかなり極端な税の偏りが出ますので、そういう
意味での、それを是正するための水平的
財政調整はあってもいいと思うんですが、
前提上は、先ほ
ども申しましたように、
自治体が
責任を持って議論に参加して決定する、そういう仕組み、それを国と一緒に決定する、そういう仕組みがないと、結局、特に今回の場合は
地方税を言わば召し上げる形になっている、それに参加できていませんので、分権改革に背馳する決定だったと思います。
具体的には、
自治体が決定過程に参加できなかったことを含めまして、言わばあきらめというのかな、あるいは、やはり国に従っていればいいというような、分権改革の趣旨からするとそれに背馳する意識が
自治体現場に生まれているという点が一番の問題点だと思います。
それで、そういう点では、十七番に書きましたけれ
ども、
地方財政・税制
協議会ですか、仮称で、そこでは
地方税の在り方全体を議論していただきたい。特に、法人
関係税をどうするかですね。これについては、
地方における
地方法人
関係税を
地方消費税と入れ替えるという議論もありますので、より安定した財源として、あるいは格差の少ない税としてございますので、その点も含めて議論するような場がほしいなというふうに思っております。
時間が参りましたので、この辺にします。
どうもありがとうございました。