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2008-04-23 第169回国会 参議院 政府開発援助等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年四月二十三日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月二十二日     辞任         補欠選任         亀井亜紀子君     亀井 郁夫君      牧山ひろえ君     森田  高君  四月二十三日     辞任         補欠選任         姫井由美子君     藤原 正司君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         溝手 顕正君     理 事                 大塚 耕平君                 富岡由紀夫君                 藤末 健三君                 谷川 秀善君                 山内 俊夫君                 谷合 正明君     委 員                 犬塚 直史君                 大石 正光君                 加藤 敏幸君                 亀井 郁夫君                 島田智哉子君                 武内 則男君                 谷岡 郁子君                 轟木 利治君                 長浜 博行君                 藤原 正司君                 森田  高君                 米長 晴信君                 田村耕太郎君                 西田 昌司君                 松村 祥史君                 浮島とも子君                 近藤 正道君    事務局側        常任委員会専門        員        堀田 光明君        常任委員会専門        員        桐山 正敏君    参考人        特定営利活動        法人TICAD        市民社会フォー        ラム代表理事   大林  稔君        G8サミットN        GOフォーラム        貧困開発ユニ        ットリーダー   石井 澄江君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府開発援助等に関する調査  (NGOから見た国際援助潮流日本のOD  Aに関する件)     ─────────────
  2. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ただいまから政府開発援助等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、亀井亜紀子君及び牧山ひろえ君が委員辞任され、その補欠として亀井郁夫君及び森田高君が選任されました。  また、本日、姫井由美子君が委員辞任され、その補欠として藤原正司君が選任されました。     ─────────────
  3. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 政府開発援助等に関する調査のうち、NGOから見た国際援助潮流日本ODAに関する件を議題といたします。  本日は、特定営利活動法人TICAD市民社会フォーラム代表理事大林稔君及びG8サミットNGOフォーラム貧困開発ユニットリーダー石井澄江君に参考人として出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会出席いただきまして、誠にありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、大林参考人石井参考人の順でお一人二十分程度意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  御発言の際は、その都度委員長の指名を受けてからお願いをいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず大林参考人からお願いをいたします。大林参考人
  4. 大林稔

    参考人大林稔君) どうも今日はお招きにあずかりまして、ありがとうございます。大林でございます。ちょっと座ってやらさせていただきますので、失礼します。  まず、冒頭にお断りしますが、大分前、事前にお配りしたパワーポイント資料と若干今日のは変わっておりますので、こちら、今日配付させていただきました大判の方を御参照ください。(資料映写)  まず、冒頭TICAD市民社会フォーラムの御紹介をさせていただきたいと思います。  この団体は、第三回のアフリカ開発会議の直後に結成されました。そのミッションとしては、アフリカの草の根の人々に届く支援を実現するという目的を掲げておりますアドボカシー団体であります。  活動は、調査研究政策提言及びネットワークキャンペーン、この三つを柱にしております。調査研究政策提言の最も重要な成果としては、アフリカ市民協力して日本ODAの評価を現地で行っております。その成果をまとめましたアフリカ政策市民白書というのを毎年発行しております。また、日本TICADⅣ・NGOネットワーク事務局を務めております。同時に、アフリカ全体をカバーするアフリカンNGO協議体でありますアフリカ市民委員会活動支援しております。さらに、アフリカ連帯の輪を広げるためにアフリカ二〇〇八年キャンペーンというキャンペーンがございますけれども、ここの実行委員会事務局も務めております。  構成員としては、日本ODAとかNGOに直接かかわる人々アフリカ研究者などフィールドを最もよく知る人々から構成されておりまして、アフリカとの協力にかかわる知見については公的機関も含めて引けを取らないものだというふうに自負しております。  続いて、TICAD市民社会フォーラム提言についてお話ししたいと思います。  私たちは、アフリカ政策については幾つかの提案をしておりますが、大きく言うと三つにまとめることができると思います。二つですね。失礼しました。  第一は、アフリカ支援の強化です。  私たちは、第四回アフリカ開発会議まで、もうじきですけれども、アフリカ向けODAを二〇〇五年比で四倍にするというふうに数年前から要求しております。その前提として、ODAの対GNI比〇・七%という国際公約がございますけれども、この達成期限を二〇一三年、つまり第五回のアフリカ開発会議が開かれる年に設定するべきだというふうに要求しております。  第二は、アフリカ支援改善であります。  改善とは、対アフリカODA民衆主体開発に振り向けること、そして貧困削減目的にしたアフリカ開発会議を実現すること、これを求めております。  それでは、引き続きまして、日本の対アフリカ支援について私たちの考えと提案を述べさせていただきたいと思います。  まず、地図を御覧ください。この地図を見ていただきますと一目瞭然でありますが、ODAというのは、その定義からして発展途上国人々の福祉と発展のために使われるというものであります。しかし、私たちは、先ほど述べましたミッションを実現する立場から、アフリカにおいてはとりわけ人道的な側面を優先することが妥当であるというふうに考えています。なぜなら、アフリカ貧困が最も深刻な大陸だからであります。  地図を見てもお分かりいただけると思いますが、開発途上国人口、LDCの最も貧しい国の人口の約六〇%がアフリカに住んでおります。アフリカでは、一日一ドル未満で生活をする人々、つまり絶対的貧困者定義付けられる人々の数が四一%、これは世界で一番高い地域であります。  さらに加えまして、アフリカは、ミレニアム開発目標、御承知のように二〇一五年までに世界貧困者を半減するという国際的な合意がございますけれども、この目標達成が唯一困難視されているところであります。他地域ではすべての指標ないしは少なくとも重要な幾つかの指標達成できると見込まれているのですが、アフリカについてはこれも難しいというふうに言われております。  長年停滞大陸と言われていたアフリカも、近年、ここ数年、比較的高い成長率を記録しております。しかし、この図から見ていただけるように依然としてアフリカでは貧困が極めて深刻であります。この図を見ていただくと、総貧困人口に占める各地域割合推移ですが、他地域では、特にアジアでは貧困者数におけるアジア人の比率が下がっております。現在、二〇〇〇年時点では大半アフリカに集中しているということがお分かりいただけると思います。つまり、発展途上国全般貧困の減少が見られるにもかかわらず、アフリカだけが残念ながら例外であります。今では貧困者大半アフリカ人であり、世界貧困問題とはアフリカ問題と非常にオーバーラップしている、重なっているということがお分かりいただけると思います。  近年のアフリカ成長は、主として資源価格の上昇によるものです。特に石油価格ですね。しかし、成長によって貧困が自動的に減少するわけではありません。減少するためのそれなりの仕組みが必要でありますが、残念ながらアフリカではこうした仕組みが確立できていません。例えば、ナイジェリアはアフリカで最も人口が多く、また産油国としても世界で有数の産油国一つでありますが、人口の三五%が絶対的貧困者であります。  さて、次のスライドですけれども、立法府の皆様憲法、しかもその前文を引用するのは誠に気が引けるのでありますけれども、どうか御辛抱いただきたいと思います。私たちミッションを説明するためのものであります。  日本国憲法はその前文、非常に短いものですが、ここの中で日本理想を掲げて、その理想達成のために、日本国民は全力を挙げてこの理想目的達成することを誓うとあります。この理想目的の中にODAの基礎は明確に述べられています。すなわち、「われらは、全世界国民がひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」というふうに書かれています。  しかし、こうした憲法精神が実際の国民に共有されているかどうかというのはまた別の問題です。その点で、幾つかの世論調査がありますけれども、最新の二〇〇七年の調査によりますと、ODAが必要な分野を複数挙げてくださいという質問の回答の場合は、ベストスリーが、保健・医療、これは五一%、緊急災害支援五〇%、貧困対策が四九・八%でした。他の調査でも、こうしたODAに対する国民期待は主として人道的なものであることが示されています。私たちは、こうした傾向憲法精神国民の心の中に生きていると解釈したいと思っております。  さて、資金面で見ると、残念ながらこれまで日本政府はその力をアフリカに十分振り向けてきたとは言えません。世界ODAの二五%がアフリカ向けられているのに対して、日本アフリカ向け支援は一〇%にすぎません。さらに、日本は、世界全体のODAを見ますと、その中で一一%ぐらいが日本拠出分であります。しかし、アフリカ向けODAの全体のうちに日本が占める割合は四・八%にすぎません。このため、日本は比較的豊かな国を重点的に支援して、貧困国に冷淡だというふうに指摘を受けることがありますが、それはこのためであります。つまり、アフリカ貧困国が集中していて、そこに対する支援が比較的軽視されてきたということが背景にあります。  この図を御覧ください。日本アフリカ貧困者支援停滞しているというふうにありますが、上の緑の図は世界全体のODA推移であります。青い線が日本ODA推移ですが、これは非常に平べったくなりますので見にくいのですけれども、二〇〇三年から増加していることが見て取れます。世界援助と同様に増加しております。しかし、実は実際の支出額停滞したままです。理由は、グレンイーグルズでのG8以来、債務救済、つまり円借款債権放棄が進んでいるため、これをカウントしているからです。債務救済関連の額は黄色い線でありますので、実際の支出額は黄色い線と青い線の間にあるというわけです。これ細かくは前のページの表を見ていただくと分かるのですが、実際の言わば真水のアフリカに対する支援額というのは、ここ数年、ここ十年ぐらい停滞をしている、余りトレンドとしては増えていないということがお分かりいただけると思います。  ちなみに、四角く囲ってあるのはアフリカ開発会議TICADが開かれた年ですが、ちょっと波が見にくいかもしれませんが、TICADプロセスアフリカ支援額には影響を及ぼしていないということがお分かりいただけると思います。  さて、日本アフリカ支援は実は弱まっています。アフリカのシェアというのは二〇〇二年から徐々に増大しつつありますけれども、その内訳を見ると、無償援助を減らして円借款を増やしているという傾向があるんですね。つまり、アジアで需要のなくなった円借款をシフトして、アフリカ援助無償部分を減らして取って代わるという傾向が顕著であります。ただ、これは一年、まだ短期の傾向ですので、これが続くかどうかはむしろ政治に懸かっているというふうに言ってもよろしいと思います。  もちろん、借金は返済を求める資金であります。経済リターンのある事業対象とするというのが条件であります。貧困対策無償で行うというのが開発協力の常識であります。ところが、二〇〇五年の日本ODAを見ると、対アフリカ支援は一〇%、しかしそのうちに無償援助が五四%しかなく円借款は四六%、ほぼ半分が円借款になっているということが分かります。これはかなり劇的な変化であります。  アフリカ貧困をなくすことは一体財政的な制約からできないんだろうかということですが、私はそうは考えません。問題は政治的な意思であります。貧困との闘いアフリカへの支援優先順位を引き上げる、それが問題であります。  アフリカ支援とはどのぐらいの規模のものなのか、ちょっと例を引いてみますと、二〇〇五年に日本イラクに支出したODA無償部分と比較します。アフリカ五十か国向け支援イラク一か国向け無償援助の六分の一以下です。さらに、今東京におりますので東京の例を引かせていただきますが、東京都の中央環状線高速道路建設費から見ますと、アフリカ向け無償の二年分では一キロできないということですね。その程度規模だということであります。  さて、次に行きたいと思います。ファントムエイド、これはちょっとこなれませんが、幻の援助と言ってもいいんですが、幻の援助というのがあります。これは、貧困削減を軽視して、かつ効率が悪く利己的である、つまり援助国に環流する、これはタイド援助ですね、あるいは援助国の利益のために行う、つまり自国の投資のために港湾を整備するとかいう場合を指します。こういったものはNGOの間では本来の援助ではないというふうな議論が強い。  この定義のいかんは別にして、日本援助はどうなのか。残念ながら、日本援助は比較的幻の援助が少なくはない。理由二つあります。一点は貧困削減を軽視する傾向が強まっていること、成長重視と言ってもいいですが。それから二点目は効率が低い。これは、効率化のために国際社会で集まって協調しております、協力している援助協調への参加率が非常に低い、消極的である。最後に、無償部分についてはタイドです。これは技術協力も含めてタイドです。ということで、比較的良くないというふうに言われております。  次に行きたいと思います。  日本ODAは近年の傾向はどうなのか。新聞報道にあるように、企業との協力による円借款が増えるとすれば、残念ながら幻の援助が増える可能性がある、おそれがあります。  円借款による大型インフラを柱にアジア成功アフリカで再現できるのだという議論は、実は現実的ではないというふうにアフリカをよく知る人々は言っています。実はアフリカアジア方式は既に一度実施されて破綻した経緯があります。六〇年代から八〇年代初頭まで日本は多くの円借款インフラを建設しました。それらの大半は有効に利用されず、借款のほとんどに関して日本債権放棄を続けざるを得なくなっています。  借款貧困者のために活用するには、現地市民社会協力して、アフリカに適合した方法を探ることが必要です。私たちは、そのために参加型調査というのを提案しております。  次ですが、日本ODAは更に貧困者の役に立てるということを申し上げたいと思います。  貧困を減らすかぎは、日本ODAの経験の中にあります。私たちは、日本援助機関NGOの職員を含む援助関係者から多くの声を聞いています。彼らは、アフリカ現場貧困闘い汗を流している人々であり、この場を借りて彼らに敬意を表したいと思います。  彼らの一致した声は、アフリカでの協力成功かぎは、住民の声を聞くこと、住民自身と一緒にやることだということです。一方的につくった青写真を持ち込めば失敗し、住民とともに考え、つくり上げれば成功するというのが彼らの一致した意見です。  例を挙げます。  十数年前にマリでたった一人の日本人女性が始めた活動が今では数百の村に広がっております。女性たちは、家事、育児、農作業をしながら、夜に識字学級に通い、休日に野菜畑を開き、学んだ裁縫技術で商いを始めています。このNGOは、日本政府あるいは各財団からあるいは寄附から集めたわずかな資金と簡単な技術によって人々の暮らしを大きく変えたと言えると思います。こうした例は無数の成功例一つにすぎません。これは、NGOの中にもODAの中にもあります。  それでは、日本ODAアフリカ民衆のために役に立つものにするにはどんなことが必要でしょうか。  まず第一に、アフリカ支援目的貧困削減民衆に力を付けるということであるということを明確に宣言することが必要です。アフリカ政策には外交上の目的あるいは経済上の目的があることは否定しませんが、これはまた別の手段で追求されるのが妥当だというふうに考えます。  第二に、硬直した制度を改めることです。必要なのは、有害で硬直的な制度や規則、手続をなくして現場人々努力創造力を解き放すことであります。特にスキーム別予算から地域別予算への移行それから真の分権化実施、最終的には貧困と闘うことを目的とする省を設立することが必要だと思います。  続いて、こうした方向性第一歩として、パートナーシップ基金提案したいというふうに思います。我々は、アフリカパートナーシップ基金というのを提案しています。この基金は、アフリカ民衆のための協力に必要な制度をどうやってつくるか、これを試みるパイロット事業であります。高い成果が上がれば日本ODAを次第にこちらの基金に移行することを提案しています。基金の運用には、アフリカ日本双方政府開発実務者立場で、また双方市民社会貧困者を代表する立場参加するということです。  最後に、アフリカ開発会議について述べたいと思います。  私たちNGOは、この会議アフリカ民衆のためになることを願って活動してきました。二〇〇七年三月に、アフリカ開発会議に関心を持つ日本市民組織TICADⅣ・NGOネットワークが結成されました。さらに、同年四月には、非常に画期的ですが、アフリカTICADに働きかけるための市民組織ネットワーク歴史上初めて結成されました。これがアフリカ市民委員会というものです。アフリカ市民組織約三百から組織されています。この二つネットワークが共同の宣言をアフリカ開発会議共催者に送って、これまで三度の準備会合にも参加しました。  個々の事業ではなく、組織的な体制そして政策能力の両面において市民社会アフリカ支援参加する用意が整ったことをこうした体制は意味すると思います。日本NGOTICAD発足以来求め続けてきた市民社会アフリカ開発会議への参加をこれまで以上に強く要求しているのはそのためであります。  続いて、市民社会TICADⅣへの提案を述べたいと思います。  第四回アフリカ会議参加に関して、我々は、日本政府努力を評価しつつも、このままでは会議アフリカ民衆の声を十分反映できないのではと危惧して緊急表明を出しました。これについては、今日配付していただいております今日付けの朝日新聞に、小さいですが記事が載っております。そこに書かれた三点は、アフリカ日本市民アフリカ開発会議への期待を要約したものであります。  一点目は、ミレニアム開発目標達成への決意を明示するということです。  二点目は、民主主義議題としてアフリカ民主化と安定への断固としたメッセージを送るということです。これは、御承知のように、特に現在ジンバブエ大統領選の第二ラウンドが実施される予定が大体TICADⅣの実施時期と重なっております。流血事態を避けるためにも是非この点を明言していただきたいと思います。  三点目は、開発における市民社会参加重要性を明記することであります。  続いて最後に、新しい日本アフリカ協力の始まりに向けて。第四回アフリカ開発会議とG8は、日本国民にとって重要な挑戦だというふうに私たちは思っています。また、新しい日本アフリカ協力第一歩となり得るものです。これまで日本は主としてアジア協力対象としてまいりました。ここでは、過去の歴史的関係あるいは現在の政治経済的な関係が非常に大きな影響を及ぼしました。  現在、日本は、アフリカといよいよ向き合おうとしています。国民アフリカとの協力拡大を支持するとすれば、それは国境を越えた人間としての共感にほかならないと思います。遠いアフリカ共感を抱くほどに日本国民は成熟して国際化しつつあると信じる幾つかの理由があります。  こうして、アフリカ開発会議は、連帯を求める国民にその機会を提供すべきだというふうに私たちは思います。そのために私たちは、開発会議ネット中継提案しております。会議場の扉を開いて、アフリカ日本の新しい関係のそして新しいODA第一歩を記すために皆様の御協力お願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  5. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ありがとうございました。  次に、石井参考人お願いいたします。石井参考人
  6. 石井澄江

    参考人石井澄江君) 本日は、お呼びいただきまして、ありがとうございました。  石井澄江JOICFP事務局長、G8NGOフォーラム貧困開発ユニットリーダーでございます。座ったままで失礼させていただきます。  冒頭に、私のプレゼンテーションがお手元にございますけれども、これにちょっと一枚若干修正がございまして、それをお許しいただきたいと思うことと、それの場所に来ましたらまた詳しく御説明を申し上げますので、おわびとともに訂正させていただきます。  私、JOICFPという家族計画国際協力財団と長いところでございますが、の常任理事事務局長を務めております石井澄江と申します。本日のプレゼンテーションを始めます前に、私が所属する団体について簡単に御紹介をさせていただきます。  財団法人JOICFPは、外務省、厚生労働省認可法人として一九六八年四月二十二日に日本で設立され、昨日ちょうど創設四十周年を迎えました。JOICFP保健分野、特に母子保健、母親と子供の健康とか家族計画を含むリプロダクティブヘルスの分野での国際協力を行っております。  ここで本題に入りたいと思います。  本日、私が参りましたのはJOICFPとしてではなく、G8NGOフォーラム貧困開発ユニットリーダーとしてでございますので、これから私が申し上げることは、貧困開発ユニットリーダーとしてのプレゼンテーションでありますということを御了承いただきたいと思います。  まず、お手元資料として御覧いただきたいものが幾つかございます。一つは私のプレゼンテーションでございまして、あともう一つはこのグリーンのフォルダーに中に入ってございます。同時に、もう一つここにポジションペーパーというのがございますので、この三つがメーンに使わせていただきますので、どうぞお手元を御覧くださいませ。(資料映写)  まず、なぜNGOがG8という疑問をお持ちの先生方もおいでになるのではないかと考え、このスライドを作成いたしました。NGO活動にどっぷりつかってくださっている先生方もおいでになると思います。その先生方には重複で大変申し訳ございませんが、どうぞ御辛抱いただきたいと思います。  NGO活動は大きく分けてこの二つに分けられます。一つは、国際援助の直接の担い手として途上国において活動をしているNGOです。このようなNGOはプロジェクト実施型、英語に訳してインプリメント系とかいう言い方をすることもございますが、そういうプロジェクト実施NGOと呼ばれております。もう一つは、主に日本の国内において積極的な提言活動や啓発活動を行っているNGOで、アドボカシー系NGOと呼ばれています。もちろんこの両方の活動を行っているNGOもたくさんあります。私の所属しております財団法人のJOICFPは両方の活動実施しております。  ここで、JOICFPが二年前に行ったアンケートの結果に基づきながら、一般の方たち国際援助の担い手としてNGOをどう思っているのか、また提言活動という余り一般にはなじみのない活動をどう見ているのか、御紹介したいと思います。  このスライド、ちょうどこういう質問でございます。途上国支援のためにはどのような組織が活動実施していくのが効果的だと思いますか。途上国支援に対して一般の認識は、NGO実施するのが最も効果的、次は国連機関、そして三位が政府機関という答えになりました。少し詳しい説明を右の方に出てございますが、この傾向というのは特に女性が男性よりNGOに高く出ているということが見られると思います。  次のスライド。途上国支援をするためにNGO活動する方法として最も効果的だと思うものはどういうものでしょうか。先ほど大林先生のプレゼンテーションにもございましたが、途上国を支援するためのNGO活動として最も効果的なものを挙げてもらったところ、現地へ行き支援をするというのが約四二%と最も高いということは、一般のNGO活動のイメージが先ほど御紹介したプロジェクト実施型であるということが言えると思います。しかしその一方で、イベントなどの啓発活動による途上国への支援の支持を広げると国会議員に働きかけ政策として取り組んでもらうの二つを合わせますと約四七%ぐらいとなり、一般の方がアドボカシーの重要性を認識していることが分かります。この二枚のスライドから、一般の方のNGOに対する認識は比較的現実に近いものであるということが言えると思います。  ここで、二〇〇八年G8サミットNGOフォーラム紹介をいたします。  二〇〇八年G8サミットNGOフォーラムは二〇〇七年一月に結成されました。この規模NGOフォーラムが結成されましたのは日本NGO史上初めてのことでございます。代表は星野昌子日本国際ボランティアセンターで、その下に二人の副代表がおり、事務局は現在、国際協力NGOセンター、JANICが行っております。二〇〇八年三月末現在で参加しているNGOの数は百二十五団体を数え、現在もわずかずつではありますが、増え続けております。  二〇〇八年G8サミットNGOフォーラムへの参加資格は、G8開催に反対しないというのが最低条件となっております。運営NGOとは費用負担とマンパワーを提供し議決権を持つNGOで、サポートNGOとは費用負担もマンパワーも出さない代わりに議決権も持たないNGOを指します。現在、運営NGOが五十六、サポートNGOが六十九と、少しサポートNGOが多い程度で、ほぼ同数になっております。この百二十五のNGOがテーマ別に三つのユニットに分かれ活動しております。一つは環境、二つは人権・平和、そして三つ目が貧困開発です。NGOは複数又はすべてのユニットに参加することも可能です。  では、なぜこのようなフォーラムが形成されたのでしょうか。理由は、市民社会の一部を成すNGOが合意に基づく提言を作成することで、その提言、ひいてはNGO活動市民社会の声を反映しているという正当性を担保するためです。  G8NGOフォーラムの設立の目的は、地球規模の課題の解決のために、世界の政治及び経済に大きな影響力と責任を持つG8諸国に対し、NGOの知見と情報に基づき課題の解決に向けた合理的な提言を行うことで、市民社会として必要な責務を果たすということでございます。  それでは、本題の貧困開発ユニットに参ります。  貧困開発ユニットは、三つのユニットの中で最も多いNGO参加しています。  次に、活動を簡単に紹介をいたします。  昨年の秋には、ここに、お手元にございますこのポジションペーパーを作成いたしました。そして、このポジションペーパーを更に簡易にしたものがこのグリーンのフォルダーの中に一枚紙として入ってございます。これがそれでございます。昨年から今年にかけて、このポジションペーパーを基にメディアや国会議員、政党に向けてブリーフィング、意見交換を行ってまいりました。  また、貧困開発ユニットの下に政策チームがつくられ、そこではG8関連の閣僚会合に合わせ提言活動も行ってきております。一例として、このフォルダーの中に開発大臣会合に向けた要望書が入ってございます。さらには、必要に応じてプレスリリースを発行しております。やはりこのフォルダーの中に福田首相のダボス演説に対するプレスリリースは同封されております。このプレスリリースは、福田首相のダボス演説を聞きながら演説終了直後から作成し始め、翌日の早朝には配信しております。ここに有志と書いてございますが、最終的には全体の合意が取れましたので、有志を外して全体の統一した意見としてプレスリリースが配信されております。  また、各種のイベントも活発に行い、市民社会セッションや訪日するNGOの代表を中心にしたワークショップなど多くのイベントが実施され、現在も企画されております。  では、貧困開発ユニットは何をNGO期待しているのでしょうか。  申し訳ありません、先ほどのページとこのページが少しお手元資料とは違っておりまして、一枚余分になっておりますので、私の正面の、後ろにございますスクリーンを見ながら御説明をさせていただきたいと思います。  大きく言えば、G8に期待するのはこの三点です。一、既存の公約の完全の履行。二、日本ODAの総額の増額と質の向上、ODAGNI比〇・七%にまで引き上げるロードマップの作成。三、ミレニアム開発目標の推進。そして、最も重要なことは、議長国としての日本がこの三点において強いリーダーシップを発揮することです。これが我々の悲願ともいうべき願いです。  ここで、ショッキングな数字をお目にかけます。ちょっとこの数字は余りにも小さ過ぎますので、お手元の数字も大変小さいのですが、別に数字を見ていただく必要はございませんので、順位だけ見ていただければ結構でございます。  既に御存じだとは思いますが、四月四日に開発大臣会合に先駆けOECD、DACの二〇〇七年実績報告がありました。日本は、昨年は三位に転落し、今年は何と五位に転落しました。昨年三位で受けたショックも冷めやらないままに五位となってしまいました。この表は、OECD、DACの数字を基に国民一人当たりのODA負担額を計算したものです。日本は一人当たり六十ドルでOECD、DAC加盟二十二か国中二十番目、つまり下から数えて三番目になっています。日本より低いところは、ギリシャそしてポルトガルです。これでいいのでしょうか、GDPが世界で二位の日本。  我々貧困開発ユニットの当面の目標は、二〇一五年に期限が来るミレニアム開発目標達成です。世界貧困にあえぐ十億人以上の人々をどうやって救っていけるのか。このようなとき、よく二者択一の議論が出ます。日本の国内がこんな大変なときに途上国のことまでなぜ面倒を見なければならないのか、日本が赤字で苦しんでいるときになぜODAを増やさなければならないのか。我々にもよくこの質問が突き付けられます。しかし、日本だけ良くなることなどあり得ない時代であることを説明するのに、我々はよく、四〇%を切った日本の食料自給率や二五%しかないエネルギー自給率、そしてさらには国境を越えて押し寄せる感染症の脅威などを説明しています。  ここで私たちは、保健と教育を日本国際援助の柱にすることを提案します。一般的に保健と教育分野については、先ほど大林教授の御説明にもございましたが、ODAが必要との認識が高く、国民の理解が得られやすい。これは、伝統的な日本人の価値観に合致しているからだと思いますし、現に日本が国内で行ってきたことです。日本はこの分野に知見を有し、海外での日本活動もこの分野が最も活発だということができます。  これらの問題を提起をしながら、昨年出された当委員会の中間報告の提言を読みますと、目の前が開けた感じになります。この提言は、まさに我々貧困開発NGOの主張そのものであり、この提言実施されることこそ我々の願いであるということができます。この場をお借りして、この提言内容がG8サミットの場において十分生かされ、日本が議長国としての責任ある態度を示せることをNGOが大きな期待を持って注目していることを強調させていただきます。  読むまでもないと思いますが、私たちの願いがこもっておりますので、参議院ODA等に関する特別委員会中間報告、提言、読ませていただきます。(一)適切な援助水準に向け事業量の確保。前略、「ODA事業量の削減に歯止めを掛けるとともに、適正な援助水準に向けて純増による量的確保を行うべきである。このため、」、中略、「国際公約を誠実に履行することが不可欠である。加えて、「人間の安全保障」の観点から、貧困や感染症対策等の分野に予算を重点配分すべきである。」。これが是非とも実現されることが我々の大きな願いでございます。  そして最後は、我々NGOのチャレンジです。  G8に向けて多くのキャンペーンが開始されました。一人でも多くの日本人に賛同の輪を広げようと努力中です。ここに載っているのは、NGOフォーラム全体としてのキャンペーンと、私たちJOICFP活動の中心である保健分野NGOが推進しているキャンペーンです。このプレゼンテーションの右上にある二〇〇八G8サミットNGOフォーラムのロゴマーク、この先ほどお配りしてありますグリーンのフォルダーにも付いております。このロゴマークとキャッチは電通と博報堂、広告業界の双璧が初めて共同でしかも無料でNGOフォーラムのために作成してくれました。  一人の日本人として、本日ここにおいでの皆様にも是非このキャンペーン参加していただきたいと願っております。是非このウエブを見ていただき、一人でも多くの方たちに賛同の署名をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  地球もそしてそこに住む人間の命も守りたいと心から願っております。  御清聴ありがとうございました。
  7. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  参考人に対する質疑を行う際には、御起立の上、発言ください。  参考人方々の御答弁につきましては着席のままで結構です。  また、各委員発言時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをいたします。  それでは、順次御発言を願います。
  8. 長浜博行

    ○長浜博行君 民主党の長浜博行でございます。大林さん、石井さん、今日はお忙しい中どうもありがとうございます。  第一番目のバッターですが、もう委員部からも御説明があったかと思いますけれども、この委員会において、今日はNGOから見た国際援助潮流日本ODAということでございますが、前回は学者の方といったらいいんでしょうか、今日は大林先生も学者に分類されるのかもしれませんが、アカデミックな分野でのお話を拝聴しましたし、その前は国際機関から見た国際援助ということでUNDPとUNHCRからの意見も拝聴しています。その後、在京の大使からヒアリングをした後、対政府質疑というようなことも予定をされているわけであります。ですから、一連のストーリーの中において、今日はこの日本ODAに関してNGOの視点から、ある意味では問題点の指摘などをいただくことが一番効果的ではないかなというふうにも思っております。  石井さんの御説明の中であえて最後のページのところでお読みにならなかったのかもしれませんが、ODAは本当に票につながらないのかと、ここお読みになるかなと思ったですけれども、お読みにならなかったですね。ODAの減額は本当に民意なのかというような御指摘もあったわけでございます。そしてまた、お読みになったこの参議院のODA等に関する特別委員会の中間報告と提言は、ある意味において私たちに大変なプレッシャーを与えていただいたというふうに認識をしているところでございます。  まず最初に私自身お尋ねをしなければいけないことは、石井さんのコメントの中にはございましたけれども、やはりこのODA特別委員会の中でも与野党ともにといったらいいんでしょうか、気になっている点というのは御指摘があったところのODA金額、〇・七%、GNI比といいますけれども、おっしゃられたようにOECDのDAC加盟国二十二の中での二十位というこの状況ですね。この問題はなかなか言うはやすし行うは難しという部分があると思います。外務大臣の答弁の中においても、直接的な表現は忘れましたが、要するにお金がなくてねと、皆さんのおっしゃることはよく分かりますがお金がなくてねというような表現のされ方をする場合があります。  後期高齢者の問題でも大きな今争点になっておりますが、高齢者を前期と後期に分けなきゃならないというようなある意味においては事態になっているわけでもありますし、道路特定財源、今話題になっている道路特定財源は暫定分だけでの二・六──億じゃないです、二・六兆円、一年間二・六兆円のものを大変今問題となって議論をしているところであります。暫定分だけですから、本則税率を合わせると五兆六千から七千という金額が一年間の道路の特定財源でありますので、先ほど大林先生は一千億の道路のお話をされましたけれども、日本国の道路の問題はこういう状況で議論をしている部分もあります。また、年金における税金の投入部分も、三分の一から二分の一に税金投入部分引き上げる。こういうことがすべて津波のように押し寄せながらの、このODA特別委員会の中での、ある意味では与野党コンセンサスが成り立って何とかODA額を増やさなければいけないだろう、こういう議論が続いているところでございます。  そういった状況の中において、このODA世界の基準から見ると下がっているという御指摘をどなたからもいただくわけでありますが、この点に関して大林さんはいかがお考えになっておられるのか、ちょっと御意見をちょうだいできればと思っております。
  9. 大林稔

    参考人大林稔君) まず、二つありますね。一つは、日本援助大国だったのに小国になったというふうな何となく、うちの学生に聞いてもそういうことを、私、本職というか給料をもらっているのは大学なんですけれども、そういう意見が多いんですね。ところが、先ほど石井さんから御紹介のあったように、実は日本はずっと小国なんですね。一人当たりで見ますと常にDAC、先進国諸国の中で非常に低位、むしろ最下位グループに常に入っている。一人当たりこんなに減ったのは別に今が初めてじゃなくて、一人当たりの負担額というのは一貫して小さい国であります。それがまた一段と小さくなっているというのが現状でありまして、日本はそういう意味では援助小国から、国じゃないですね、個人でいうと、援助小人から援助マイクロ小人になったというのが現状であります、世界水準でいうと。そこは一種のやはり誤解が国民の中にあるんだろうというふうに思います。この点はもっと訴えていくべきだろうというふうに思います。  それから、ただいまの財政の問題ですけれども、私個人としては、財政の中で合理的な金額があるかというのは、合理的な基準は何かといえば、これは国民の合意ですから国民の合意がどの辺にあるのか、政治が何を優先順位として決めるのかというのが一番問題だと思います。その点でODAは、ここ数年間ほかの予算と比べて大幅に高い減少率を誇っているわけですね、残念ながら。一般財政の中で断トツに速いスピードで落下していて、既に最盛期の半分以下になっているわけですね。  これはなぜかというと、簡単に言うと、かつてのODAというのは政官財の鉄のトライアングルに支えられてきたわけです。これはアジア援助がそうですね。ところが、円借款をアンタイドにしたことそれからアジアに対する援助ニーズが減ってきたこともあって財界のバックアップが非常に少なくなってきた。そうすると、要するにバックアップがないお金というのはどんどん減っちゃうわけですね。  普通の国ですとこれはNGOとか世論が支えるんですけれども、不幸なことに、日本はやはり市民が何となく政官財に任せときゃいいんじゃないかというのがずっと長くあったと思うんですね。そういう意味では今はちょうどその転換期にある。つまり、市民が、いやどうもそうじゃなくて政官市民でやっていかないといけないんだ、元々政官財でやるもんじゃないんだと、ODAというのはね。そういうふうに意識を転換していかないといけない時期だと思います。  それは、実は私たちが取り組んでいるアフリカの問題と非常にオーバーラップするわけですね。アフリカは、これは日本の企業の利益とかそういうことであおってもほんの一部の企業しか付いてきません。幾ら伸びても日本アフリカの投資額、貿易額がそんなに急速に増えるわけはないわけです。先ほど申しましたように、そういう意味で日本人々が、いや、ODAというのはそうじゃなくて、実は私たちが持っている税金というのは、実は半分しか税金はないんですが、残りは財投債なんですけれども。これは我々が考えて、私たちの、貧困者世界の貧しい人々、恵まれない人々とどういうふうに連帯していくかというためのお金なんだと。これはどのぐらい要るんだろうかというふうにもう一回自問することは必要だと思います。  そういう時期にTICADとG8が開かれるというのは、非常に意義が高いというふうに思います。そういう意味では、政府は是非そのTICADとG8を国民に対してそういう問いを投げかけていく場にしてほしいと思います。私は、先ほど申しましたように、国民の中にそれにこたえる機運というのは既にかなり盛り上がってきているというふうに思います。
  10. 長浜博行

    ○長浜博行君 今おっしゃられた部分は、先生書かれたこれは国際開発ジャーナルの「「アフリカ政策市民白書二〇〇七」発行」というところの記事でも読ませていただいておりますが、要するにODAの概念をあるいは理念、哲学をどう考えるかということで、まあ国益というよりは、貧困や紛争に苦しむ人に手を差し伸べなければならないという、人間の根源的な感情の表れだろうというふうに先生はおっしゃられておって、またアフリカに対しては先生は民衆という言葉をよく使われますね、アフリカ民衆、それで日本に対しては市民という言葉を使われておられますが。  二〇〇七年に発表された自民党や経団連の外交関連提言ではODAは国益実現のための戦略的ツールとの認識が前面に出ており、アフリカ貧困者への連帯や思いがほとんど感じられない。このように断じられているということから、ODAに対しての、これは別に私自身の反省も含めてでありますけれども、前回の委員会でも議論にあったところの中国のアフリカ支援の問題に関して日本の国益をどう感ずるか、アフリカの中で確保するかという議論が、今御指摘をされた部分を無視しながらやることの危険性は私は感じなければいけないなというふうには思ったところでございます。  ところで、このミレニアム開発目標を共通の目標として今世界ODA方々が動いていると思いますが、二〇〇〇年につくられて、ちょうど二〇一五年が目標年次だとすると折り返しの年を迎えたわけでありますが、特にサブサハラの状況というのは大変よろしくない。十八の指標の進捗図表などを拝見をしておりますと、乳幼児死亡率の削減、これははしかワクチンの予防接種で一歳児の最低年間一回の予防接種という部分でありますが、ここはまあオーケーかなと。しかし、ほかの九つの指標、例えばHIV、エイズ、マラリアその他の疾病の蔓延の防止などを含めた部分においては、基準年次よりも更に悪くなってしまっている。  このアフリカの状況を変えていくためには、今日の議題になっておりますTICADⅣとそれからG8でありますけれども、どのように考えていかれたらいいのか、一言ずつお二人にちょっと伺えればと思っております。
  11. 大林稔

    参考人大林稔君) ありがとうございます。  ミレニアム・ディベロップメント・ゴールをアフリカでどうやってやるか。これ二つの大きな問題があって、一つは、経済成長があるにもかかわらずその利益が貧困対策に回らないというのが非常に大きな問題です。もう一つは、そうした利益と関係ないところで入ってくるはずの援助が必ずしも効率的に使われていないと。この二つが大きな問題だと思います。いずれも、いわゆる政府の統治、社会の統治にかかわる問題が大きいというふうに思います。  経済成長の利益に関しては、資源の呪いという言葉がありますけれども、石油が出るとほかの産業が衰退したり紛争が起こるという傾向アフリカでは見られると言われております。これを防ぐにはやはり政府を強化するだけでは駄目なんだと。政府の役人に研修をしてもなかなか良くならない。要するに、政府を監視し、政府とともに社会を変えていく市民社会とかメディアがしっかりしないといけないということがあります。  それから、援助に関しても、アフリカに関する援助がなぜうまくいかないかという問題は、援助の一番大きな、ほとんど唯一と言われているチャネルの政府がうまく動かないということですね。民意を十分反映していない、あるいは市民、民に何が必要かよく分かっていない、あるいはやろうと思っても動かす力がない。  そういう意味では、政府だけではなくて現地住民組織とかメディアとか様々なNGOとかと一緒に議論しながらやっていかないといけないということで、我々としては、いずれの問題もミレニアム・ディベロップメント・ゴール達成向けては単に資金を増やすだけではなくてお金の使い道を民と相談する、一緒にやるというやり方に変えない限りなかなか難しいのではないかというふうに思います。
  12. 石井澄江

    参考人石井澄江君) 私どもが中心として行っております保健の状況を中心としながら、今のお答えにしたいと思います。  保健分野ミレニアム開発目標というのは、先ほど御指摘いただきました四、五、六というのがメーンでございます。五歳以下の子供の死亡率の削減ですとかそれから妊産婦の健康の改善ですとかそれから感染症の蔓延を防ぐといったようなことでございますが、こういうことをほかとも関連しながら考えますと、幾つか挙げられることがございます。  先ほども少し出ておりましたけれども、一つはドナー協調というものが多分大きな役割を果たすことと思います。我々はよく言いますのは、一つの計画、一つの予算そして一つのシステム。その国が持っている予算それから計画、システムを国が自分の力でつくれるような、そしてそれが実施できるような形での援助の協調があってしかるべきだというふうに一つ思います。  ただ、これを行うにはドナー間が協調しなければならないということがありますし、それからアフリカ側から言われることももう一つありますのは、ドナーがただ協調するだけでは意味がない、それは長期的に継続したコミットメントがなければ我々が幾ら着手してもそれは時間の掛かることである、その時間の経過を注意深く見守りながら忍耐力を持ってコミットメントを持ち続ける、これをドナーに求めたいということが言われています。これが一つ大きな問題ではないかと思います。  保健については、特に今保健のシステムの強化ということをよく言われておりますが、圧倒的に足りないのが保健の人材でございます。そして、その人材というのはただ養成するだけでいいものではありません。教育をしたから、それから研修をしたから、じゃその場所にとどまるかというと、残念ながらそうではありません。  卑近な例を一例挙げますと、ガーナで働いている医師の数は、ニューヨークで働いているガーナ人の医者の数よりも少ない。特定の例えば地域においては、一つのドナー国が徹底的に援助をしながら養成した保健のスタッフは全部そのドナー国の地域で働くようになっているという、非常にこういった移住の問題というんでしょうか移動の問題ということが一つ大きな問題ですので、保健の従事者を養成すると、その後にどうしたら確保ができるのかということが必要になってまいります。  確保は、別に給料だけの問題ではもうありません。多くの場合はコミュニティーで、例えば卑近な例を挙げます。お母さんたちのお産を助けるために助産婦さんをコミュニティーに派遣したいと思う、ところがそのコミュニティーが十分安全でなかった場合、それは幾らそこに場所を造ろうとも人は居着きません。ですから、安全というものを保障してもらわなければいけない。そうすると、ただ単に給料といったようなことでリカレントコストを何とかすればいいというような問題ではなく、もう少し大局的な立場から安全も含めて保障し、コミュニティーの人たちがその一人又は複数の保健スタッフを守っていくといったようなコミュニティー全体のエンパワーメントと、そして受け入れる素地をつくっていく。ですから、上のシステムと下からのコミュニティーの活動というものをうまくつなぎ合わせるということが大変重要になってくると思います。  もう一つは、ガバナンスの問題を先ほど大林先生はもうおっしゃいましたので特に申し上げることはないんですが、ただ私もここで強調したいのは、市民社会の育成というものをやはりもう一方で考えていかなければいけないというふうに思います。民意それから住民の本当のニーズというものをなるべく市民社会の人たち住民のそばにいてそれを上に上げていく、そして我々が一緒になってそれを民意として上げていくという形の横のつながり、連携を重要視したいというふうに思っております。
  13. 長浜博行

    ○長浜博行君 TICAD外務省それからNGOの定期協議会ですか、こういうのももう六回ぐらい開催をされているようでありますが、やはりNGOサイドから世界潮流の中で日本がどう見られているという部分をしっかり指摘をしないと、先ほど新聞記事の話がありましたが、ガボン・ショックの記事を拝見しながら、相変わらずだなと思っている部分もありますので、ひとつこの点も御指導のほどをよろしくお願いをしたいと思います。  ODAの理念のことをお話しした中において、一番これがベースですから、私も南アフリカのヨハネスブルクの郊外で、これはエイズのホスピスですが、先日亡くなられた根本神父から随分御指導を現地でいただいたときがあります。何をもって、ODAも含めてでありますが、発展途上国におけるサポートができるのかと。  欧米諸国においてはキリスト教の宗教的な影響が何かあるのかもしれません。そういった状況の中において、先ほど来おっしゃっておられる日本国民、こういった中におけるODAとか援助とか奉仕、こういった概念を根付かせていくためにはどうしたらいいのかという部分において、最後に一言ずつ伺って、質問を終わらせていただきます。
  14. 大林稔

    参考人大林稔君) 難しい質問ですね。  実は、このTICAD市民社会フォーラムというのは純粋なアドボカシー団体で、比較的日本では少ない団体です。先ほど石井さんから市民の方はアドボカシーに理解があるというデータをお示しいただきましたが、これがなかなか寄附に反映されないんですね。寄附というのは、一般市民の寄附もそうですし、それから一般の財団等あるいは公的な助成金も含めて、こういったアドボカシー活動をしていくというのは非常に厳しい状況にあります。  そういう意味では、これからやっていく上で非常に大きな、先ほどおっしゃったような新しいODAの在り方を市民の間に浸透させていくために必要なのは、官の努力よりやはり我々NGOの民の努力だというふうに思います。  その意味で今のNGOの力というのは非常に弱い。というか、今のNGOというのは、市民の中で非常に一部のグループなんですね。本当の市民というのはもっとたくさんいる。私、大学人ですので大学にも勤めておりますが、大学ではそれなりにアフリカとの交流を広くやっております。それから、医療機関の中ではアフリカとかアジアの医療機関と様々な協力関係があります。メディアの方もそうです。国会議員の方々もそうだというふうに思います。  こうした様々なアクターというんでしょうか、アフリカとあるいは発展途上国貧困者と結び付こうとしている人たち努力が今まで必ずしも一つになってこなかったと。これからはこういうものは一つにまとめる必要があるし、それから非常に大きいのは自治体だと思うんですね。今回もアフリカとの関連で非常にたくさんの小グループが立ち上がってきて何かしたいというふうに言っております。しかし、彼らがなかなか遠いアフリカのところと結び付くのは非常に難しいんですね。  そういう意味で今回、TICADが横浜でやられるというのは非常に意義がある。横浜市さんが非常に活発になってくる。そうすると、自治体というのは、こういった様々なイニシアチブのハブとなるということができると思います。そういう意味では、制度的には、官の方にお願いしたいのは、ODA分権化ですね、自治体にやはりもっと大きな役割を持ってもらうということが重要だと思います。  それから、我々民の方としては、先ほど言ったようないろんな人たちが集まって、もう一回そのODAを考え直すという試みが要るかというふうに思います。アフリカに関しては、そういう立場から、小さいですけれども、官民のこれからのアフリカODAを考える会というのを近々小さいですが試みてみますので、そこにそういう旅行代理店とかそういう人も入ってもらってやろうと思っておりますので、そういう試みをこれからいろいろなところで発展させていかないと、なかなか先進的な考えが一般の人の共感に結び付いて力になるというところまで行かないんじゃないかというふうに思います。  ありがとうございます。
  15. 石井澄江

    参考人石井澄江君) 先ほど長浜先生が一番最初の質問の冒頭に、私が意識して読んだのか、読まないのかという御質問があったところに戻りますけれども、そこで出ているキャンペーンというのがまさにその一つの私たち努力だというふうにお考えいただきたいと思います。  私たちが今考えておりますのは、この二〇〇八年というのは非常に特別な年だと思います。TICADというのは五年に一度しか開催をされず、G8の議長国は、今のところまだ八か国ですから八年に一回しか来ない。両方掛けますと、四十年に一回しか日本TICADとG8が一遍に開かれることはない。おまけに今年は、先ほどから出ておりますように、MDGs、ミレニアム開発目標の折り返し地点ということで、中期のレビューの年になっております。そういった非常にこういったモメンタムのときに、是非とも広く一人でも多くの方たちにこの大切なことを分かっていただきたい、理解をしていただきたい、それが私たちの始めたキャンペーン一つの願いでございます。  先ほど来JOICFPがやりましたこの調査を申し上げているんですが、一番最初にJOICFP調査をしたときに、メディアへのアクセス状況というのを聞いています。そのときに、少しずつですが新聞離れというのが見られます。それに代わって何があるかというと、インターネットでございます。新聞ですと一時間未満に大体八九%、九〇%ぐらいの方が新聞は一時間未満だな、読むのはということですが、インターネットに至りますと、三五%ぐらいの方が三時間以上インターネットを見ているという形のお答えが返ってきています。そして、当然のことながら、ある程度の若い層に行けば行くほどインターネットへの依存率、情報アクセス、収集するためのインターネットの依存率が増えております。  そういったこともありまして、私どものここで二つ今回例として挙げましたキャンペーンというのは、基本的にインターネットを通じて広く署名、賛同を呼びかけていくという形を取っております。かなりこの状況が今は発達してきておりまして、余りメールで、メールというか郵便で郵送するというよりはウエブを充実させる、そしてメールマガジンを作る。そういったことでの流し方によって、なるべく一般の方たちに一歩でもいいので前に出ていただきたい、気を付けていただきたい、世界で何が起こっているかということにこの機会に目を向けていただきたいという願いから今キャンペーンを行っております。  これはもう一つの伏線がございまして、先ほど二者択一とよく言われましたけれども、TICADをやってそれからG8をやっていますと、アフリカ援助増額ということを必ず我々も言います。そうすると、最後に外務省も含めて、でも、ないそでは振れない、お金は決まっている、アフリカに増やすということは、それはほかの国、ほかの地域が減るということですけれども皆様はそれでもいいんですかと必ず最後に聞かれます。そのときの我々の答えもここです。我々はもうあるパイのことを言いません、あるパイでどちらにより多く出すとか、どちらに少なくしてもいいというようなことの議論には入りたくない、だからこそ我々はキャンペーンをして、少しでもODAを増やすことが民意なのだということを分かっていただくためのこれはキャンペーンですというふうにお答えをしております。
  16. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 参考人に申し上げます。  もう少し答弁をひとつ簡潔にして、質問者に御協力ください。
  17. 米長晴信

    ○米長晴信君 民主党の米長晴信です。  大林石井参考人、本当にお忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。  対GNI比の底上げですとかあるいはODAの対アフリカ支援分をパーセンテージを上げるとか、いずれにせよ対アフリカODA額をめぐってどのような方向性で今後は対アフリカ支援というのを考えていかなければいけないのかということをお伺いしたいと思います。  来月行われるTICAD、これ四回目でございますけれども、これいろいろ資料を取り寄せたんですけれども、それぞれのときに発表している政策演説といいますか、例えば一回目のときは三年間で二・五から三億ドルの無償資金協力を行う、サハラ以南のアフリカ対象に地下水開発等を行う、Ⅱにおいては五年間で九百億円程度の初等教育の普及等に無償資金協力を行う等々、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、それぞれそれなりの額の支援というものが打ち出されているわけですけれども、いろいろ請求しているんですけれども、それぞれの成果物ですとか、じゃどの国で何校学校ができたのかとか、どういう地域で何人の人が水にアクセスできたのかとか、そういった成果物が全く今のところ形になってないというふうに思われるんですけれども、その点について両参考人の御意見をいただきたいと思います。
  18. 大林稔

    参考人大林稔君) まず、額のプレッジですけれども、実は先ほどグラフを御覧いただいたようにTICADで額が増えたという事実はありません。要するに、並べ方、見せ方を変えたということで、この辺は皆さんもよく御存じだと思います。  第二点目ですが、モニターですね、これについては、実質的に行われていないと言ってもいいと思います。この点は、NGOもあるいはアフリカ政府の方からも、長い間、久しい間、何とかまず常設のモニターをする機関をつくるべきだという意見が出ております。ようやくこれにこたえて今、次のTICADでは、実はTICADⅢで常設化、インスティテューショナライズするというふうに小泉さんは言いましたが、ほとんど実態はなかったと。  今回のTICAD第四回では、漏れ聞くところでは、外務省さんは常設の事務局をつくるという案を出すというふうに聞いております。しかし、我々の情報では、これはまたその外務省の中の一部課が同じようにやるということになるのかなという危惧を抱いております。その点できちっとしたモニター体制をつくってくれということを再度申し入れたいというふうに思っておりますので、御支援いただきたいと思います。  さらに、私たちが言っているのは、これは単に役所が何をやったという紙を書くのではなくて、受益者が、現地アフリカの人が入って、一体それは役に立っているのか、お金の執行率だけではなくて一体それは役に立って、どうやって使われて自分たちに届いているのかというのをモニターするという意味で、独立したモニタリングができるような仕組みをつくるべきだというふうに要求しております。  ありがとうございます。
  19. 石井澄江

    参考人石井澄江君) 今、大林先生がほとんどお答えは言ってくださいましたので、私が付け加えることは一点だけでございます。  こういった援助のところというのは、どうしてもなかなか、よく言い方をしますと真水とかいう言い方をしますが、真水で出てくるところがほとんどないということが一つの問題だと思います。数字合わせということで最終的にここまで行ったという報告になることが大変多うございますので、そういう点では、達成したと言いながらも、じゃ本当にその内部的なところは、そこだけにフォーカスして達成していたのかといいますと、先ほどの真水の部分がかなり少ないということが往々にしてあります。  それをどういうふうにこれから変えていくかというところというのは、恐らく今後、ODAの場合の数量設定のみだけではなくて成果をどう求めていくかということとも関連してくるのではないかと思いますので、やはり成果主義というものは、全部ということはもちろん申し上げませんが、ある程度導入した方がいいのではないかというふうに思います。
  20. 米長晴信

    ○米長晴信君 ありがとうございました。成果をきっちりチェックする、プロセスをチェックするモニタリングの機関のようなものが必要だという御提案でございました。  私もアフリカに数回行ったことありまして、二〇〇二年のヨハネスブルクの環境サミットですね、あれに私当時テレビ局の記者をやっていたものですから、それに行きまして、会議そのものはやっぱりサミットあるいはTICADの例に漏れずどちらかというと抽象的な議論が続いて、こういうふうに持続可能な世界にするような数値目標みたいなものがいろいろ出てきたんですけれども。  私その中でも時間を見て、現地のあれNGOだったかNPOだったか、たしかNGOだったと思うんですけれども、ワーキング・フォー・ウオーターという団体を取材しまして、これは、アフリカの南部を中心に世界的に十一億人の人が安全な水にアクセスできていないと。いろんな原因があるんですけれども、私が取材したその団体は、アフリカの川の源流ですね、これが森林伐採によって、かつ外国の人がもう形だけ植林をして、外国品種の木が植わっていて、それが必要以上に水を搾取して末端の村まで、支流まで水が行かなくなってしまった、そんなことを解消するために外国品種の林をどんどん伐採して自然林に戻すと、そんな活動をしている団体で、それが十年掛けてようやく昔のようにちょっと水がちょろちょろ流れてきたという村なんかも取材をいたしました。  水というのは一つアフリカ支援にとって必要な要素だと思うんですけれども、先ほど石井参考人の方からは、今後アフリカ支援の重点分野保健と教育ということがございましたけれども、大林参考人の方に今後重点分野アフリカ支援何なのかということをお伺いするのと、もう一つは、石井参考人には保健と教育の分野で今後重点的に支援を行う上で具体的に何か提案がございましたら、教えていただきたいと思います。
  21. 大林稔

    参考人大林稔君) 私たち団体は、実は政策を分析し訴える団体なんですが、どの分野という要求を全然出していないんですね。  なぜかといいますと、基本的にこれはアフリカ現地の人に決めてもらうのが筋だろうと。こちらからやるのはおかしいと。私もアフリカ研究者の一員としていろいろなミッションにも、経協のミッションにも加わることがありますが、そこで分かるのは、我々が持っている知見というのは極めて限られているということですね、アフリカに対する知見それからアフリカ現地人々の知見はよく分からないと。にもかかわらず、日本側で何かをつくるのは余り良くないというふうに考えています。  そういう意味では、日本が、アフリカの人たちが、村々にあるいは国々によって異なるニーズをどのようにプライオリティーを決めるのか、そういう決め方をなるべく現地の人に返していくということが一番重要だというふうに思っております。  そういう意味では、私たち団体としては、特定分野優先順位に挙げるというよりは、そういう仕組みづくりということに力点を置いて活動しております。
  22. 石井澄江

    参考人石井澄江君) 保健、教育でいきますと、まず教育は、みんな、今ちょうど会議中ですけれども、まだこの世の中に七千二百万人の子供たちが就学ができていないという事実があります。一人でも多くの子供たちが就学する。特にこのうちの三分の二は女の子でございます。女性が、女の子が教育を受けず非識字者のままで一生過ごすということは、本人ならず家族にとっても大きなマイナスになります。一人でも多くの女性が教育ができるということがまずお願いしたいことだと思います。  保健については、やはり保健のMDGsを達成するために必要とされる資金、それを経済力に応じて日本が是非ともそこに対して資金供与をしていただきたいというふうに思っております。  既にミレニアム開発目標ではターゲット設定ができ上がっていますし、先ほど来出ていますように、アフリカではほとんどの保健指標というのが悪くなりこそすれ良くなってはいません。私たちが中心にやっている妊産婦の死亡に至っては、二十年間数字が全く変わっていませんし、かえって悪くなっているというところさえございます。  やはりそういうところが一番大きな問題で、その中でも特に保健の従事者、先ほど申し上げましたが、これが足りないということが一つの大きなネックになっていると思います。
  23. 米長晴信

    ○米長晴信君 あと最後に、NGOないしNPOが、例えばTICADのような会議参加する方法あるいは参加すべきというようなことを提言されておられます。  先ほど申し上げた私の取材した南アフリカのこの団体ですけれども、ヨハネスブルク・サミットで、サミットと直接は関係ないんですけれども、NPOブースみたいなのがありまして、そこに参加していないんですよね。そこに参加するだけのお金もないし、オフィシャルな行事もないということで、やっぱり完全にサミット本体と切り離されて、そういった活動をしている場所でサミットをやっているのに何ら日の目を見ないという状況、非常にもったいないなというふうに思ったのが当時の率直な感想でございました。  このTICADⅣにおいて、やはりNGOが直接的にかかわりを持たないということですけれども、今後具体的にどのような形でNGOがこういった会議参加して一体的な取組をすべきかというのを御提案最後にいただきまして、終わりたいと思います。
  24. 大林稔

    参考人大林稔君) 二つ申し上げます。  まず、TICADの現状については、参加は前進しているが限定的だということだと思います。例えば、宣言とか行動計画について意見は聞かれるけれども、最終的に決めるときの発言権はないと。会議市民社会の分科会は設けていただいたけれども、本会議のフルメンバーではないということですね。そういう意味でもっと参加してくれというふうに我々は言っているということが一点です。  それから二点目は、TICADの本質的な問題にかかわります。これは別に政策に関する外交の協議の場ではありません。いわゆるフォーラムですね。いろいろなことを自由に議論する場でありますが、実際には密室であります。そういう意味で、我々はビデオ会議にしてくれというふうに言っているんですが、もっと根本的には、やはりアフリカ開発を論じるときに開発の当事者がみんな来ていないということですね。つまり、政府の代表者しか来ていないわけです。日本でもそうですが、日本を動かしているのは別に政府だけじゃないです。企業もありますし、市民社会もいるし、国会議員の皆さん方もいる。そういう社会を動かしている本当に力のある人が集まってみんなで自由な意見を交換しないと、本当の道は開けてこない。  そういう意味では、次のTICADはそういう形で最初から構えを変えて広く公開して、力のある人が、アイデアのある人が来て議論をして議論を深め、新しい次の五年間の道筋を考えるという形にしていくように変えると。それを今度のTICADの中でも、そういう次のTICADに関する在り方を議論してほしいというふうに提起しています。
  25. 石井澄江

    参考人石井澄江君) ちょっと違った観点からお話を申し上げます。  NGOのネットワーキングは今急速に拡大をしています。それは単純で、IT革新、技術革新によるものが大きいです。インターネットの普及そしてコンピューターの普及によって、英語がある程度使える人たちであればかなりの急速なスピードで今ネットワーキングが広がっています。  今回のG8のプロセスを通じて我々が感じていますのは、やはりいろんなところでNGO参加の場というのが求められたときにどこに相談をするかというと、やはりそういう対外的に活動している各国のネットワークNGOに対しての問いかけというのを行いますが、それがほとんど瞬時で行われるということも含めて、なかなか小さなところまでは行かないかもしれませんけれども、そこがまたその国の中でネットワークを張ってくれるということを期待しておりますけれども、なるべくそういうネットワーク型のNGOとの連携ということを進めながら、お互いの意見交換それから情報交換を綿密にしていこうというふうに思っております。  現実的に電話会議もかなり今開かれておりまして、そういう意味でNGOが大分寝不足になっておりますのは、朝早い時間か夜中にしか電話会議ができないからということも一つございます。
  26. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 今日は本当に貴重な御意見ありがとうございます。  私の方は質問というよりちょっと提言がありますので、この提言、皆さんが御理解いただけるかどうか分かりませんけれども、また皆さんに、こちらの皆様、そちらの皆さんもより良いODAの在り方というのを考える委員会ですから、ひとつ提言を聞いていただければと思います。  それは、皆さんがもう今まで問題意識として主張されています、例のODAの金額が減っている中でどう日本として存在感を出していくかということなんですけれども、僕は、ODAというのは今までローンとグラントとテクニカルアシスタント、これを主にやってきたんですけれども、エクイティーといいますか投資の部分、これ投資型のODAというのをこれから増やしていけばいいと思うんですね。  投資というのは、皆さんもう御案内のとおり息の長いお金です。そしてレバレッジ、つまりてこを利かせることができる。そして、あげっ放しじゃなくて、行ってこいのお金じゃなくて、もしその案件が成功したらリターンを日本に生むわけですね。これはもう日本国民にも説明しやすいですし、今はやりのウイン・ウインの関係を築きやすいと思うんですよ。  いい例が、ODAじゃないんですけれども、海外援助資金としてODAに並んであるのがOOFというお金がありますよね。OOFというお金がこれから、今年第一回になったんですけれども、財務省の方が、これ、しぶしぶか気前がいいというか微妙な金額なんですけれども、五年間で一千億をJBIC、国際協力開発銀行の方に投資資金として貸し出して、JBICの方は毎年二百億円ずつ投資案件として使えるようになりました。これは厳密にはODAのお金じゃないんですけれども、広いくくりでは日本が海外援助に使うお金です。  これでどういうことをやるかというと、中東の政府系ファンドと組んでJBICが二百億円ずつ出資して新たに大きな投資組合をつくりまして、そのお金を新興国、インドとか中国とかの新興国の中でこれから環境技術開発しようというような中小企業、新興企業に投資していくというような案件を始めるそうです。ただ、スキームは決まったんですけれども、まだ目利きの能力がないのでなかなか投資がうまくいっていないんですが。僕はこれからこういうような投資型のスキームというのが、小さいお金で息が長くそしてリスクをヘッジ、リスクをコントロールしながら収益を日本に生むような形で、日本国民にも説明しやすいような案件をつくり上げるスキームは十分できると思うんですね。  いい例が日本の環境技術なんです。総理も、僕はもう少し現場の認識を更に持っていただきたいと思うんですけど、日本の環境技術は、技術力はこれは確かに世界、競争力はナンバーワンに近いものがあると思うんです。ところが、全然世界で買われないんですね。というのは、価格競争力が全くないんですね。はっきり言って高過ぎるわけです。途上国から見たら、日本技術いいけど高過ぎて買えない。日本の環境技術を持っている企業から見たら、これは売りたいんだけど、とてもじゃないけどそんな価格では入札で勝てないと言うんですね。  ですから、まずはヨーロッパの国はどういうことをやっているかというと、一つは入札のときに補助金として出しているんですよ。今、日本じゃなくて世界で買われている技術というのは、日本の環境技術の十分の一ぐらいなんですけど、その技術力が、しかし価格が三十分の一、四十分の一というような技術が結構途上国で買われているんですね。これはヨーロッパやアメリカの企業が持っている技術なんですけど、入札のときに安いのと入札のときに補助金を出している。これ補助金を出すというのも一つの手だと思うんですよ。  もう一つは、日本企業で環境ビジネスに投資しているところに日本ODAのお金を開発支援資金として投資するというのも一つの手なんですね。コスト削減に努めてもらって、そういう環境ビジネスで技術を持った企業がその後アジアアフリカの環境技術支援に投資をしていく。こういう国内で投資をして、その会社がコスト競争力を付けて世界に出ていくというやり方も二つ目のスキームとしてあると思うんですよ。  三つ目が、さっき言ったような投資をもうリスクをヘッジする形で海外の大きなお金と一緒に共同出資の形で大きな投資組合を組んでいって、目利き能力のある民間も入れて世界中の環境技術に投資していくということ、これはもう今までの援助受入れ国である途上国も含めて、途上国の環境技術とかプラントとか、いわゆるインフラ整備、こういうものに投資をしていくというやり方ですね、共同出資をしていって。これも僕は一つのやり方だと思うんですよ。  その中で日本の環境技術を持った会社が、もう人件費の安い新興国に下請企業として今度は出ていって、下請させながら、現地技術力を上げながら、安い値段で日本技術現地でまず使ってもらう、そういう企業に対して日本ODAのお金を投資として使ってもらう、こういうやり方も僕はあると思うんですね。まだまだ絵にかいたもちみたいなところがありますが、これからちゃんとスキームを絵にして、具体的に数字も出して、もしこの場で発表さしていただけましたら、そういうものも含めて提言をしてみたいと思うんですよ。  この投資型のODAを更に増やしていく、ODA円借款や有償、無償技術支援から投資型に変えていく、こういう考え方、両参考人いかが思われますか。
  27. 大林稔

    参考人大林稔君) 大変面白い考え方だと、興味深い考え方だと思います。  二つ申し上げます。一つは、大歓迎です。第二は、ただし貧困者に投資していただきたいということですね。そうでないと単なる企業振興融資になっちゃいますから、そこのところの仕組みをどうするかということが一番問題だと思います。  実はアフリカでもあるいは発展途上国でも、貧困者を生産者とみなしてビジネスの力を付けさせるというのは最近は主流になってきております。これはグラミン銀行のマイクロファイナンスから始まって、現在はアフリカの田舎にスタンドを置いて携帯電話を渡しておばさんが村内の電話屋をやるとか、そういうビジネスもかなり広く行われております。  それから、先ほど言いましたように、アフリカ貧困者というのは実は社会の周辺化された人じゃなくて普通の人ですから、貧困者大半は農民です、つまり生産者です。ですから、貧困者というよりアフリカの生産者のことを言っているんですね、アフリカ貧困対策というのは。アフリカの生産者、つまりインフォーマル企業の社長とか普通のお百姓さんがどうやって商売をやるか、もっと売上げを伸ばすかという話ですから、そのためのお金がない、投資する金がない、肥料買う金がないあるいは買掛金がないとか、そういう問題ですから、そこにつながるような仕組みをつくればすばらしい考え方だと思います。  現に我々のところにも民間の銀行の方から、アフリカ日本の環境技術現地の中小企業と結び付けて小規模浄化槽をアフリカに普及させる、その金は我々の金でやるから、リスクヘッジを何とかODAでやってくれないかという話が来ています。今いろいろ探っているところです。そういう機運が非常に高まっておりますので、是非アフリカ貧困者、生産者に力と技術を与えるということをやっていただきたいというふうに思います。
  28. 石井澄江

    参考人石井澄江君) 残念ながら、私は投資型ODAについてコメントができるほどここの部分に知見を持っておりませんので、大林先生のおっしゃるとおりという形でしか申し上げられませんが、一つお願いしたいのは、先ほど大林先生がおっしゃったとおりに、やはり貧困者、特に女性にどうやって直接利益が行くのかということを考えていただけると有り難いと思っております。  実際にインドなんかでは、インドの銀行に既にクオータ制ができていまして、貸付けの三〇%は女性を対象に行う、マイクロクレジットを使うというふうなことが法制化されているというようなことも聞いたことがございます。そういったことも含めて投資型ということであれば大変面白いと思いますし、先ほど来繰り返していますように、貧困層、特に女性が自立できるような、力を付けられるような形でのそういった考え方があると大変いいのではないかというふうに思います。
  29. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 ありがとうございました。  もう一つだけ質問させていただいて終わろうと思うんですが、もう一つはこれまた提言になっちゃいますので、思い込みみたいな提言ですので、それと経済にかかわってきますので大林参考人だけにお聞きすることにします。本当だったら、このテーマだったら大塚先生にお聞きした方がいいかもしれませんけど。  これは何かといいますと、僕は、ODAの話ともう一つ、今日はアフリカということもありまして環境をテーマにいろいろ考えているんですけど、ODAの話も、さっき投資という話で開発援助と金融をいかに結び付けるかというのを常に考えていまして、もう一つ環境と金融をいかに結び付けるかというのから、今僕が個人的に、つたない勉強ですけどしているのがカーボン通貨というやつですね。炭素を通貨にするというやつで、排出量取引から一歩進んでカーボンカレンシーという理論が今イギリスで非常に広められていまして、ブラウンさんが大蔵大臣のときにこれを広めて、今総理になったのでEUの中のイニシアチブを取ろうとしているんですけど。これ、僕は日本がサミットで世界を驚かせるようなことをやるんだったら、TICADでもいいんですけど、やっぱり炭素を通貨に使うようなことをやったらいいと思うんですね。  なぜかというと、通貨というのは皆さんも御案内のとおり、また変なマニアックな議論になって申し訳ないんですけど、例えば何か基本になるものが要るわけですね。ちょっと前だったら何を本位にするかということがあったんですけど、金本位でしたね。ちょっと前がドルとか言われていますけど。本位にするものというのは世界中に広く認識されていて、今の時代だったらデジタル化できるものがいいと思うんですよ。といいますと、そのカーボンというのは非常に向いていると思うんですね。  今排出権取引というのはどういうところでやっているかというと、産業界を基本にやっていますけど、それをもっとブレークダウンしていって、地球全体の排出量から産業界が使うものを抜いて、それが計算すれば家計部門の排出量ということになるわけですね。家計部門の排出量をもっと細かく見ていって、例えば映画館で映画を見たらこれだけ排出権買わなきゃ見れない、何かレストランでイタリア料理を食べたら、あなたが食べたものにはこれだけの炭素が掛かっているのでこれだけの炭素を払わなきゃいけないというような細かい掛け方をしまして、これはそこをコントロールする機関も必要なんですけど、それで発生する炭素による取引を炭素を通貨としてやっていく。そして、炭素を全く使わない生活をしている人はそこで取引して得た炭素を現金化して、円でもドルでもいいです、そういうふうに使っていく。  これ何がいいかというと、今サブプライムローンとかの問題で非常に経済がおかしくなっているのは、お金が増え過ぎたわけですね。お金が増え過ぎて過剰流動性という問題が起きているんだということが今の世界のコンセンサスになりつつあるんですが、炭素取引をしていけば、これはもう逆の力が掛かってくるわけですね、逆のインセンティブ。つまり、炭素通貨は常に減るようなインセンティブが掛かっていますから、世界に安定的な通貨として、そして広まる通貨として利用できる。それと同時に、常に供給量が減るようにインセンティブが掛かっていますから、それを通じて地球環境を守ることもできるわけですね。二つ経済効果、一粒で二度おいしいと思うんですけど、こういうものを今イギリスは本気で研究して、全然今や世界に役に立っていない世界銀行とかIMFとかを国際カーボン銀行とかに変えようというような動きがあるんですけど。  これは、僕は日本が早く研究して、日本世界を驚かす提案としてサミットでやったらいいと思うんですけど、僕それを一生懸命やっていまして、何とか福田さんに提案をしようと考えていますので、別に僕がやらなくてもいいのでこの委員会でもいいんですから、皆さんの御指導をいただいて、そんなのばかだとか駄目だとか何でも結構ですので、また違う機会でも結構ですし、今日は参考人の中で経済を専門にされている大林先生に、まあこんな変な意見、急に聞かれても困ると思いますけど、ちょっと感想でもあればと思いまして、コーヒーブレーク感覚でよろしくお願いします。
  30. 大林稔

    参考人大林稔君) ありがとうございます。  ちょっとまだ仕組みがもう一つよく分からなかったのですが、簡単に言うとアフリカ人は大金持ちになれるということですか。──そうでもないんですか。  あるいは所得税のような累進性があるのかとかちょっといろいろ疑問があるんですが、まあ大金持ちにはなれなくても小金持ちぐらいにはなれるのかなという、少なくとも我々よりは金持ちだということになると思います。アフリカ人は、今のところは吸収源、排出していないのに気候変動の被害だけ受けているという現状ですから、それを炭素税というのはある程度カバーできるというので非常に面白い、研究の余地があるというふうに思います。  それから、コメントとしては、アフリカで特に気になるのは、逆にアフリカには、そういうふうに大金持ちになるのはすごくいいんですが、それ以外は、一つ現在の排出権取引で落ちている点で、既に森林問題では議論されているところですけれども、吸収源を守っている人たちは要するに報われないのかということですね。  実はもう熱帯林というのはほぼアジアとブラジルでは滅びつつありますので、最後に余り手が付いていないのはアフリカしかないんですね。アフリカは現在、特にコンゴ盆地は世界の左肺なんですけれども、これは幸い、我々からすれば幸い、現地の人としては不幸にも、経済成長がないために比較的減っていないんですけれども、これから経済成長が起こったときにこれを守ってもらう。それをどうやって、守れば損をするという今はシステムですから、つまり吸収源を減らさないということに関する経済的なインセンティブをどう付けるかというのは非常に大きな問題です。これについても今非常に議論は高まっていますけれども、今のカーボン税なんかの問題などもこれに絡ませていくと、特にアフリカでは現実性があるのかなというふうに思います。  ありがとうございます。
  31. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 以上で終わります。  ありがとうございました。
  32. 浮島とも子

    浮島とも子君 公明党の浮島とも子です。  本日は、大林参考人そして石井参考人におかれましては、本当にお忙しい中お越しくださり、また貴重な御意見を賜り、心から感謝申し上げます。ありがとうございます。  私の方からは、まずTICADそしてG8プロセスへのNGO市民社会への関与と評価についてお伺いをさせていただきたいと思います。  近年、G8サミットのプロセスで市民社会と各国のシェルパや首脳との間の対話が行われるようになってきております。一昨年のサンクトペテルブルク・サミットでも、G8として三回にわたり世界各国のNGOが招聘されて、シェルパや大統領と直接意見交換を行ったと伺っているところでございます。また、昨年もハイリゲンダムでもG8の対話が行われておるところでございます。また、本年の洞爺湖サミットに向け我が国でも、G8サミットNGOフォーラムと外務省そして環境省とで対話集会を開いているほか、ちょうど今日と明日でしょうか、二日間、京都の方においてNGO市民社会と各国のシェルパとの対話を行っていると伺っているところでございます。  また、TICADについても、TICAD外務省・NGO定期協議会等を開催しているほか、アフリカで三回行われたTICAD準備会合においてもTICAD市民社会フォーラムがオブザーバーで参加するとともに、会議に合わせて我が国、アフリカ双方NGO参加した市民社会準備会合を開催したと聞いているところでございます。  このように政府市民社会が対話を進めることはとても重要であり大切だと思いますけれども、対話をした上で対話をいかに生かしていくかがすごく重要で大切であると考えます。  この点、例えばG8サミットNGOフォーラムはG8開発大臣会合に向けた要望書を出し、またTICAD市民社会フォーラムTICADⅣで採択予定の横浜宣言の案についてアピールを出されているところでございますけれども、そこで両参考人に今後の政府市民社会の対話の在り方そして今回のG8、TICADⅣに市民社会として何を求めるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
  33. 大林稔

    参考人大林稔君) 難しい質問ですね。  五年間、対話についてずっと政府と交渉してきたわけで、ある意味で非常に前進してきたと思っているんですが、やはり先ほど申しましたように、政府にとっては依然として市民社会との対話、これは市民社会だけではないですが、ほかの人との対話というのは、何か話を聞いて、悪い言い方をすれば、自分が使えるというところは活用するけれどもあとは聞かないと。最終的にどうするかということは自分で決めちゃうということになるわけですね。  我々が求めているのは決定への参加ですから、あるいは議論の出発点のどういう話合いの議題を作るのかというところへの参加ですから。そういう意味では、これから新しい日本あるいはアフリカ政策を作っていく上で、特にアフリカ政策のように、今までのやり方を抜本的に変えなければ支持も得られないというところでは、やはり基本的な話の骨格を作ったり重要なところを決めたりするところも含めて何らかの形で少なくとも、一〇〇%参加するのが重要だとは言いませんけれども、何らかの形で目に見える形の参加が必要だろうと。  もう一つあるのは、今までの参加というのは日本市民社会参加しかないんですね。しかし、ODAというのは非常に極めて不思議な公共事業でありまして、受益者が国内にいないんですね。だから、何をやっても、変なことをやっても、納税者でも国民でもないですから、こっちに届いてこない。国会議員の皆さんのところにも話が来ないということで、メディアがたまたま取り上げてくれないと駄目なんですね。あるいはNGOが一生懸命国会議員の方々にアドボカシーしないと届かない。そういう意味では、対話とか参加というのは、アフリカ政策に関して、特にODAに関していえば、発展途上国の受益者の人々、それを代表する市民社会との対話というのを日本市民社会と同じぐらいの比重を持って考慮しないと、実は日本国内だけで勝手にやっているという話に終わってしまうということで、この点は、我々も、今回アフリカ市民委員会協力してくれたので非常に前進したと思っていますし、先ほど言った新しい協議の枠組みの中に、現地とのそれから日本だけじゃなくて現地での対話というのをやっていく必要があるというふうに思っています。
  34. 石井澄江

    参考人石井澄江君) G8のプロセスにおいて、今回福田総理がダボスでも演説なさったときに、二十一世紀型の新しい参加型にしていくというお話をなさっていましたけれども、確かに参加型ということでは大きな前進があったというふうに思っています。いろんなところでのコンサルテーションというものができるようになりましたし、先ほど来出ている受益者である途上国のNGOの代表が来て直接話をするという機会も大分増えてまいりました。  ただ、問題点は、先ほど大林先生からも挙げられているとおり、こちらからの提案はできても、その提案がどういう結果になったのかというフィードバックが残念ながらこちらにはまだ返ってきません。そこのところが今後のところの一つの課題になるのではないかと思いますが、ただ私どもが期待しますのは、この参加型はせっかく始めた以上は、なかなか広げると後どうやって収れんさせるかが大変だということがあるかもしれませんが、是非ともその参加型のプロセスは今後も継続していっていただきたいというふうに思いますし、もう一つ先ほど決定の段階にも入るということもおっしゃっていますが、やはりフィードバックというものが折に触れてあるということが必要だというふうに思います。これが担保できるようになると、さらにもう一つ先に関係性が良くなるのではないか又は効果的に進むのではないかというふうに希望しております。
  35. 浮島とも子

    浮島とも子君 ありがとうございました。  次に、世界的な穀物や燃料価格の高騰に伴う追加支援についてお伺いをさせていただきたいと思います。  最近の世界的な穀物や燃料価格の高騰に伴って、現場援助ですごく混乱が生じているというお話を伺っております。例えば、学校給食あるいは難民キャンプへの食料支援を行っているWFPは、先月の二十日に追加的資金の拠出を求める緊急アピールというのを出されたところでございますけれども、しかし我が国のWFP等の国連機関への拠出は減少しつつありまして、ODA予算が極めて厳しい状況にある中でどのようにしてこのようなアピールにこたえていくのかが課題となっております。  そこで両参考人世界的な穀物価格等の上昇が及ぼす影響について、それぞれのお立場から御意見をお伺いさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
  36. 大林稔

    参考人大林稔君) 確かに御指摘のように食料価格の高騰はアフリカ貧困者を直撃しております。特に都市においては貧困層が直撃されております。農村も実は、食料を作っているといいますが、貧困層の場合は端境期はほとんど食料を購入しているんですね。したがって、彼らも消費者でもあるわけで非常に厳しい状況で、社会不安にも結び付きかねない状況だというふうに思います。そういう意味では、政府国際社会からの、農民の方がしかし過小評価されがちなんですね、なかなか暴動を起こしても、村で暴動を起こしても余りしようがないですから、どうしても都市の方に焦点が行ってしまうということはあります。その点で、これに対する支援に対しては特に農村の貧困者に注目する必要があると思います。  しかし、今緊急にお金をという声が高まっていて、いろいろ会議も開かれているようですが、往々にしてこういう会議は、新しいお金をプレッジして国際機関に渡して終わって、事態が解決したようになってしまうということが多いんですね。実は、大金のプレッジと国家への資金とか食料の提供は、北朝鮮の例を見ても貧困層に届くかどうか必ずしも保証されているわけではありません。とりわけ、やはり現地市民社会協力を得て、実際に貧困者にそういったものが届いているのかどうかというモニターがお金を届けるプレッジと同じぐらい重要だというふうに思います。  それから、もう一つだけ申し上げますが、長期的には、ある意味でアフリカ貧困者、農民にとってはチャンスである面もあります、つまり食料価格が高騰するわけですから。日本援助でお米のプロジェクトはほとんどがうまくいきません、長期的には。なぜかというと、お米の国際価格が安くて競争力がないんですね。だから、日本のプロジェクトが終わってしまうと衰退してしまうケースがあるんですが、食料価格が高騰すると持続性が出てくるということになります。  しかし、現状では、こうした食料価格の高騰はアフリカに恐らく食料生産増をもたらすでしょうが、長期的には、それは恐らく外国企業とか大企業が大農園をやるという形になってしまう。結局、それは貧困者の土地を奪うという可能性が非常に高いんですね。そういう意味で、長期的には、こうした食料価格の高騰に短期的に支援をするだけではなくて、これが小農民がそのチャンスと転化するようにマイクロクレジットとか農村の道路整備とか、そういったことが非常に重要になるというふうに思います。
  37. 石井澄江

    参考人石井澄江君) 具体的な例を保健を使いながら御説明をいたします。  ミレニアム開発目標の四番に五歳以下の子供の死亡率を削減するという目標がありますけれども、現在五歳以下の子供は年間九百七十万人が命を落としています。そのうちの三七%に当たる約四百万人ぐらいの子供は、生後二十八日以内に亡くなっています。こういった状況というのが、この後ろにある隠された原因の大きな原因が栄養不良によるものです。三分の一ぐらいの死亡の隠された原因が栄養不良によるものであるというふうに推測されています。  それが更に、今おっしゃっているような問題が進みますと、これが更に爆発的に増えてしまうという可能性があります。我々が幾ら予防接種を打って子供の生存を高めようとしても、そしてマラリアのベッドネットを配って子供の生存を高めようとしても、そこの食料危機ということだけで簡単にその努力が元のもくあみ又はもっとひどい状態になってしまうということが十分考えられます。  素人なのでここから先はどうか分からないんですけれども、我々がよく言っているのは、G8でああいう投機ファンドというか投資ファンドに対して何らかの規制はできないのだろうかというようなことも素人仲間では言っております。それができるといいなというふうに期待をしております。
  38. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  アフリカの厳しい現状をお二人の参考人から提起をいただきました。そういう中でアフリカ向けODAの現状に大変改めて危機感を持ちながら、ODAの量と質の向上を痛感をしているわけでございます。いろいろ話ありましたけれども、この国の財政状況が厳しい中で、ODAの減額は本当に民意なのかという話がありましたけれども、ODAをやっぱり増やしたいというそういう民意を大きくしていく以外にはないんだろうと、こういうふうに思っています。  その際に、私も選挙民にODAの話をするときになかなか話が前に進んでいかなくて苦労をしているわけでございますが、先ほど来の憲法前文の話だとかあるいは日本の国一国だけがこのグローバルの世界で繁栄できないんだという、こういうことをこれからもやっぱり声を大にしていきたいと思っておるんですが。  一つ言えることは、ODAのやっぱり実態が、まあ私もそうでありますけれども、選挙民には更に分からないということの中で、本当にODAの理念が守られているのか、生かされているのか、具体化、実現されているのか、この辺に対する不安といいましょうか、何か安心できないなという気持ちはやっぱり国民の中には相当ある。そういう意味では、その理念をどうやって守っていくのか、具体化させていくのか、実現していくのか、その辺のところを厳しく第三者的にやっぱりチェックする、そういう制度がこの国には極めて欠けていると、こういうふうに思いますし、前回の参考人もそういうことをおっしゃる方がおられました。  私は、是非国民の中にODA大事だという民意を大きくつくるためにも、この第三者的なチェック機関をきちっとやっぱり位置付けていく必要があるんだろうというふうに思いますが、そのためにどうしたらいいか、そしてその中でNGOがどういう役割を果たしていったらいいのか、お二人の参考人からお答えいただきたいと、こういうふうに思います。
  39. 大林稔

    参考人大林稔君) お手元アフリカ政策市民白書というのがあると思います。それは、今号はTICADへの提言ですが、平時は、通常はアフリカ現地の人たちと一緒にODAのプロジェクトを監査というか評価するということを続けております。そういう意味では、我々が理想としている評価の仕方、つまり現地の受益者から見るODAの評価というのを小さいながらも続けているつもりであります。そういう意味では、こういう試みが散発的な小さなNGOの試みではなくて、もっと資金と人とを投入して安定的にできるということが一つ大きいのかなというふうに思います。  それからもう一つ、分かりにくいというのがあるんですね。公開性が前提だ、日本ODAに公開性が非常に欠けている、これは確かなんですが、じゃ何を公開したらばみんな分かるのかというと、実は何を公開しても分かりにくいんですね。どうして分かりにくいのかというと、常識と違うやり方をしているんですね。  例えば、マラウイにどういう援助をしているかというと、これはこうこうだから、こういう国にはこういう問題があるから、こういうふうにお金を配分してこうやっているんですという説明にならない。そう言うけれども、実際はお金は全部、じゃデータ出してくださいと言うと、スキーム別というのは出てくるんですね。これは我々プロが見てもよく分からないわけですね、結局、はっきり言うと。そういう意味では、現場の人もお役所の人も実は余りよく分からないんです。マラウイに対して何をやっているかというのは、結果的に二年ぐらいして予算の集計が出てくるとこうやったんだというのは分かるんだけれども、それまでは日本はどういうふうに体系的に動いているのかというのは実はよく分からないんですね。  ですから、そういう意味では、先ほどスキーム別というのは援助の硬直性の問題だというふうに言いましたが、それだけではなくて、国民に対する公開性という意味でも一種の煙幕になってしまっていると思います。そういう意味で、やはり普通の人の、つまりこの国にどういうふうに援助をしたらいいのかというのに沿った形で国別のお金の使い方というのをつくらないと、もちろん日本の人には分からないし、現地市民と相談しようにもよく分からないわけですね。そこはすごくモニター上の大きな問題だと思います。
  40. 石井澄江

    参考人石井澄江君) 最近、外務省が一生懸命やっている制度一つODAモニター制度というのがございまして、一般の方から募集して、現地ODAの実態を見ていただきながら、そこで帰ってきてからフィードバックをしてもらうということをかなりやっていらっしゃいますが、先ほどの話に重なりますが、部分的にはいいことをしているということでお帰りになっても、じゃ全体に、一体この国にとって必要とされているものが何で、日本としてできることが何で、そしてこの部分がどう位置付けられているから今これをやっていますというところまで来ると、なかなかそこまでのお話にならないということに問題が一つあると思います。  もう一つの問題は、ODAという名前とか文字自身に対する非常にネガティブなイメージができ上がってしまっていることが挙げられるのではないかと思います。ですから、私たちもいろんなアンケートを取るときにODAという言葉をこれからは使わないでいこうねという話を今していますけれども、いったん非常にネガティブな影響を持つというかネガティブな印象付けられてしまった言葉をこれからどういうふうにして変えていくかということがもう一つの問題だと思います。  それから三番目は、これは私たちの言っていることと少しちょっと離れますが、開発教育というか日本の国内において学校で教える教育の中に地球市民とかそれから地球益といったようなことを基本的に教えていくことが全然されていないのではないかというふうに思いますし、これがないと、日本人はいつまでたっても島国の中で自分の国だけを見ているタコつぼ的な国民のままで終わってしまうというような危惧感をNGOは持っています。やはりもっと広く地球全体の地球益ということが考えられるような教育というものの在り方というのを是非国会議員のここにおいでの皆様にお考えいただき、それを反映して実行していただけるといいと願っております。
  41. 近藤正道

    ○近藤正道君 ありがとうございました。  終わります。
  42. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 以上で参考人に対する質疑を終了いたします。  参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり大変有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後二時五十六分散会