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大塚耕平君
大塚耕平でございます。
第四班の御
報告を申し上げます。お手元のレジュメに沿いまして御
報告をさせていただきます。
第四班は、二月二日から十四日まで、カメルーン、エチオピア、南アフリカ並びにアフリカ
援助の先進国である英国を
訪問し、
調査を行ってまいりました。
今年はアフリカ
援助に関して特別な年であります。
我が国は一九九三年にアフリカ開発会議、TICADを開始いたしましたが、そのTICADの第四回会議が来月、横浜で開催されます。会議にはアフリカ各国から首脳が来日する予定ですので、
我が国としても今後のアフリカ
援助に関する考え方を表明する必要があります。また、七月の
洞爺湖サミットにおいてはアフリカ開発が重要
議題の
一つとなっております。
その直前の今回の
派遣ですので、今後作成する
報告書の内容が
日本のアフリカ
援助の方向性に関して政府に対する有
意義な情報提供となるように
努力したいと思います。
こうした
状況下、具体的に以下の点に留意して
調査を行いました。第一に
我が国援助の現地での実情と問題点の把握、第二にドナー国が足並みをそろえる
援助協調という国際的時流と
我が国援助政策の
在り方、第三に中国に代表される新興ドナー国の動向です。
視察、ヒアリングの詳細につきましてはお手元の資料を御参照ください。
初めに、今回の
派遣を通じて感じました
ODA全般についての
派遣団の所見を申し述べます。
我が国は、二〇〇三年に
ODA大綱を改定しました。その中で国益との
関係に言及していますが、そもそも
援助の
目的ないし理念について
国内のコンセンサスが必ずしも十分ではない面があります。
国民の税金が原資である以上、
ODAの国家戦略上の位置付け、
国民的コンセンサスを明確にすべきと考えます。ちなみに、英国は外交政策と
援助政策の分離を明確に行い、そのことが英国に対する信頼向上の面で
効果を上げていると
説明しています。英国の真意、
援助政策の本当の姿は分からない面もありますが、こうした諸外国の枠組みを参考にすることも必要と思います。
二〇〇一年以降、先進諸国は
ODAを増額していますが、
我が国は逆に削減しています。一九七五年の国連総会決議で定められた、先進国はGDPの〇・七%を
ODAに振り向けるという目標達成にはほど遠い
状況であります。
ODAの国家戦略上の位置付け、
目的、理念に関する
国民的コンセンサスが明確になるのであれば、
ODAの
規模についても一考の余地があると考えます。
次に、アフリカ
援助についての所見を五点申し述べさせていただきます。
第一は、
我が国のアフリカ
援助の基本方針についてです。なぜアフリカに
援助を行うのか、何を
目的としているのか、そうした基本的な考えを明確にする必要があります。
英国は、先ほども申し上げましたように、外交政策と
援助政策を切り離し、一貫して
援助は
貧困削減のためであると明言しています。実際がどうであるかは別にして、対外的には首尾一貫して基本方針を明確にしています。一方、中国はビジネスの一環、資源確保の布石と割り切っております。また、中国はアフリカにおける大
規模建築
案件をタイドローンを活用して廉価で手掛け、建設作業員を本国から投入、竣工後も作業員を当該国にとどまらせ、チャイナタウンをアフリカ各国に根付かせるという展開を戦略的に採用しているようにも推察できます。最近急速にアフリカ
援助をてこ入れしている
米国は、表向きは
貧困削減による民主化
支援ということですが、資源覇権の強化をねらっていると言われています。
翻って、
日本はTICADという国際会議を催しつつ、何をアフリカ
援助の
目的、目標としているのかが他のドナー国に比べると相対的に不明確な面があるのではないかと感じました。中国もTICADと同様の会議を
日本以上の
規模でスタートさせましたので、言わば、アフリカ
援助は他国と競い合うのか、あるいは差別化して独自の道を歩むのかという基本的な立ち位置が問われている局面だという印象であります。その点が明確でないために、
援助規模に比べてアフリカでの
日本のプレゼンスが低いという現状につながっていると感じました。
基本方針を
検討する上で、現地で感じた
派遣団としての印象を申し上げます。
他のドナー国との差別化、
日本のプレゼンス向上の
観点からは、JICA、青年海外
協力隊のような人的
貢献、顔の見える
貢献が有益です。一方、他のドナー国との競合、各国政府・当局との
関係強化の面からは、
援助の
規模や内容の面で尽力する必要があります。また、
日本の外務省筋からは国連における票田としてのアフリカ、五十三票を持つ
地域としての重要性を指摘する声も聞かれます。どれか
一つに目標、
目的を絞り込む必要はありませんが、少なくとも
日本のアフリカ
援助関係者が
我が国の基本方針について認識を共有することが必要だと思います。
援助の
対象分野は、
貧困対策、
医療などの保健衛生、
教育、産業・経済
対策、社会資本
整備の五つが大きな柱だと思いますが、
日本の
援助と聞けば、アフリカ各国のみならず
世界各国が何を連想するのかという点が重要であります。その印象は、言わば
日本の国際的なアイデンティティーであり、
日本外交そのものと言えます。
対象国の絞り込みも重要なポイントと感じました。国によって多少は
援助分野のニーズも異なるでしょう。しかし、相手のニーズに合わせるのか、
日本の
ODAの特性に合致したニーズを表明した先を
対象にするのか。つまり、受動的な
ODAを行うのか、能動的な
ODAを行うのか。今回視察で得たわずかな知見に基づけば、
教育や保健衛生分野での顔の見える
援助というものが
日本の
援助の特性に合致し、かつ
援助規模の割に効率的にプレゼンスを高めるのではないかという印象を持ちました。
第二は、アフリカ
援助をめぐる国際的な動向と
我が国の
対応です。
アフリカ諸国では、ドナー国が
協力して
援助を行う
援助協調というスキームが広がりつつあります。積極的に主張しているのは欧州諸国であり、特に英国が目立ちます。
貧困削減
プロジェクトに
日本も参加してはどうかと問われれば、拒否し難い面があり、
援助協調は時流としては不可避の流れと言えます。
そうした中で、
我が国自身が
援助協調を積極的に推進し、他のドナー国を引き込むということを念頭に置くべきではないでしょうか。そのためにも、第一点で御
報告しましたような基本方針を明確にし、その中で重点分野及び方向性を確立する必要があると感じました。また、それを被
援助国及びドナー諸国に明確に示していくために
ODAの担当組織を対外的に分かりやすく
整備し、オールジャパンで取り組むことのできる組織的、人的配慮が必要だと思います。
援助協調が更に進化したスキームは一般財政
支援、つまり被
援助国の予算に直接資金
援助をすることです。一般財政
支援は、他国や被
援助国の自前の資金との相乗
効果によって実際の
援助以上のインパクトを与えることも可能になるものの、その逆、すなわち
日本の
援助の埋没という事態もありますことから、
対応の適否については十分な
検討が必要だと感じました。
第三は、第一点でも触れましたが、人的
貢献の重要性です。
訪問国においてJICAの
専門家、青年海外
協力隊、シニア
ボランティアの活動を視察し、人的
貢献の重要性を改めて再認識しました。顔の見える
援助として、またアフリカにおける過去の植民地支配と無縁である
日本の人的
貢献は現地で快く受け入れられています。
もっとも、人的
貢献を拡大していくためには人材確保が必要です。そして、人材確保のためには、そうした
方々の帰国後の処遇などを含めた言わばアフターケアの配慮も考えなくてはなりません。
また、シニア
ボランティア対応として、
プロジェクト単位での人材募集というスキームの導入が有益だと思います。例えば、エチオピアでは大手
自動車メーカーのある技術者が早期退職制度で退職の後、現地で技術指導を行っていました。同様の意欲をお持ちの方は少なくないと思われるものの、一人でアフリカに行くことはなかなか決断できないとの声も聞きます。したがって、例えば
自動車整備の技術指導チームを編成し、一定
規模の
プロジェクトとして
派遣するということならば是非参加したいというリタイア世代も多いのではないでしょうか。
我が国で団塊世代が退職時期を迎えている中、
プロジェクト単位での
援助を
検討するなど、人的
貢献の拡大に向けた工夫が必要と考えます。
第四は、以上のような諸点を踏まえた上での今年のTICAD及び
サミットへの
対応です。
TICADでは、アフリカ
援助についていかに
日本の基本方針を示すか、各国との個別
対応においていかに有益な合意と方向性を見出すか、そして
サミットにおいては
援助協調の問題も含めいかに
日本がリーダーシップを発揮し、アフリカ諸国から見た
日本のプレゼンスを高めるかということが重要と考えます。
TICAD、
サミットでは、単に数値目標を示すということではなく、ここで申し述べましたような基本方針を明確に打ち出すことがより重要と感じました。
第五に、アフリカ諸国が部族社会であるということに関連した留意点を申し上げます。
現地での懇談や視察の中で、アフリカ諸国が過去の植民地支配の影響によって国家としてのアイデンティティーがやや希薄であること、多くの部族によって社会が形成されているために国家としての制御機能がやや不十分であることなどを感じました。
そのため、その時々の
援助が特定の集団や
地域に集中する傾向があるのではないか、
国民全体として諸外国の
援助を有効活用して国全体を
発展させたいという意識がやや希薄ではないかという心証を抱きました。アフリカの自立、
発展のためには、そうした懸念に
対応する
教育や価値観形成が必要ではないかと感じた次第です。また、そのことは、AUによるNEPAD、すなわちアフリカ開発のための新パートナーシップ構想など、アフリカ諸国自らの自助
努力の成否と表裏一体の問題と考えます。単なるドナー国依存からの脱却をサポートできるような
援助でなければならないと思います。
以上、アフリカ
援助について
派遣団の所見を申し述べました。アフリカ
援助をめぐる国際
環境は激変しており、
我が国もその動向を的確に把握し、誤りなき
援助政策を推進していく必要があります。
最後に、
派遣に
当たり、
参議院事務局、外務省、在外公館、JICAを始め多くの
関係者にお世話になりましたことを
感謝申し上げまして、御
報告を終わらせていただきます。