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2008-04-16 第169回国会 参議院 少子高齢化・共生社会に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年四月十六日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月九日     辞任         補欠選任      林 久美子君     蓮   舫君  四月十五日     辞任         補欠選任      大河原雅子君     森田  高君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         田名部匡省君     理 事                 大石 尚子君                 岡崎トミ子君                 前川 清成君                 有村 治子君                 南野知惠子君                 鰐淵 洋子君     委 員                 相原久美子君                 岩本  司君                 植松恵美子君                 大久保潔重君                 津田弥太郎君                 藤谷 光信君                 森田  高君                 蓮   舫君                 礒崎 陽輔君                 塚田 一郎君                 古川 俊治君                 丸川 珠代君                 義家 弘介君                 山本 博司君                 紙  智子君                 福島みずほ君    事務局側        第三特別調査室        長        吉住 芳信君    参考人        青山学院大学法        学部教授     手塚 和彰君        日本福祉大学社        会福祉学部社会        福祉学科教授   石河久美子君        医療法人社団小        林国際クリニッ        ク院長理事長        特定営利活動        法人AMDA国        際医療情報セン        ター理事長    小林 米幸君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○少子高齢化共生社会に関する調査  (「コミュニティ再生」のうち外国人労働者  の社会保障)     ─────────────
  2. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) ただいまから少子高齢化共生社会に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日までに、林久美子君及び大河原雅子君が委員辞任され、その補欠として蓮舫君及び森田高君が選任されました。     ─────────────
  3. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 理事辞任についてお諮りいたします。  木俣佳丈君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事大石尚子君を指名いたします。     ─────────────
  6. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 少子高齢化共生社会に関する調査のうち、「コミュニティ再生」を議題とし、外国人労働者社会保障について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、青山学院大学法学部教授手塚和彰君、日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科教授石河久美子君及び医療法人社団小林国際クリニック院長理事長特定営利活動法人AMDA国際医療情報センター理事長小林米幸君に参考人として御出席いただいております。  この際、参考人皆様方に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。  参考人皆様方から、外国人労働者社会保障について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、まず参考人皆様方からそれぞれ二十分程度意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていきたいと存じます。  また、御意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますので、よろしくお願いいたします。  それでは、手塚参考人からお願いいたします。手塚参考人
  7. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) 手塚でございます。よろしくお願いいたします。  私の皆様に対するレポートの最初の部分を含めてお手元にコピーを差し上げておりますので、大体それに沿って二十分の範囲で御説明をまずさせていただきたいと思います。それで、恐らく先生方におかれましてはほとんど御存じのことも多いと思いますので、途中少し飛ばさせていただくかもしれません。  まず最初に、外国人在留に関して二つタイプがあるというのは御案内のとおりであります。一つは専門的な職種と、いわゆる単純労働でございます。  前者につきましては、これは今日はほとんど言及することはできないと思いますが、IT関係などを含めた優秀な外国人を受け入れることについては日本は出遅れをしておりまして、欧米各国などに対して非常に後れを取っているという、こういう問題がございます。この点での今後の問題があると思います。  二として、単純労働として日系人労働者が受け入れられてまいりました。この方たちはほとんど、九五%、九六%は、日本に二、三年出稼ぎで来て帰るつもりでいたのですが、ほとんどが入るときは定住者として入りますが、永住権を取得しております。その表につきましては表の一のところに入っておりますので、ブラジル、ペルーの方、あるいは中国も含めて永住権を取得する方が非常に多くなっております。これについての問題点につきましてはまた後ほど言及しますが、例えば最近の静岡調査では、静岡に在住している日系ブラジル人の四三・七%が永住権を取得しております。その理由等々については後ほど触れたいと思います。  それから二番目の、外国人労働者受入れの問題につきまして、私は一九七〇年代から外国人労働者としてドイツに行って働いていたものですから、そういうことがありまして、それから八〇年代からは本格的にこの問題を、欧米諸国調査をしてまいりました。それで、参考文献のところに挙げておきましたけれども、外務省から委託された四と五で、主要な欧米各国外国人受入れ在留管理等々についての調査を終わってペーパーになっております。こちらの調査会にお送りさせていただきました。  それで、まずその中に三つタイプがあるというのは御案内かもしれません。  英国フランス型、要するに英仏型につきましては、旧植民地からの独立時点以前に宗主国である英国ないしフランスに入ってきた人たちについては市民権を与えてきたわけであります。実際には彼らは、フランスやイギリスはもう既に市民権を与えてフランス人英国人になっているので、もう格別のことをしなくても多様性を持った社会であるということで、ダイバージェントソサエティーということを強調いたしました。多様性、多文化・多民族社会ということでありましたけれども、御案内のとおり、フランスで例のワールドカップのジダンの騒動から始まりまして、ロンドンテロ事件等々のことがございました。フランスはいわゆるマグレブ諸国北アフリカ諸国から来た人たちの二世、それからロンドンにつきましてはパキスタンやインド亜大陸から来た人たちの二世が大変な就職難、二世がほとんど仕事がないという状態に対する一つの不満があのような形になったわけであります。  それから、第二のB型はドイツとオランダ型でありまして、ここは要するに周辺諸国から、EUに加入したところもありますが、イタリアスペインなどもそうですが、後にユーゴスラビアやトルコマグレブ諸国から受け入れたわけであります。  重要な点で御指摘させていただきたいと思いますけど、当初外国人というのは二、三年のローテーションシステムで帰ってくれるということが前提でありました。このローテーションシステムは、実は一九七〇年代に入ってすぐに破産いたします。三年が六年になり、九年になり、十二年になりと、こういうことでありました。結局、七〇年代前半まで、オイルショックまでは景気が好況局面でしたから、使用者契約を更新するわけで、労働者の側は家族やフィアンセを呼び寄せて家族滞在をすると、こういうことになりました。結局、帰った方の数よりも滞在する方の数が多くなったわけであります。  それから、オイルショック後には、ドイツでは、これは今日のことに関係しますので申し上げますが、帰国促進策を取りました。特にトルコから来た人たちに対して、年金保険料労使双方日本年金のモデルですからドイツは、五〇%五〇%で払うわけですが、それが年金受給年齢まで至らない方たちに対してはドイツ政府トルコに帰ってもその使用者分を払うという約束で帰そうとしますが、もう帰らなくなっていたわけです。要するに、子供たちドイツ生まれで、ドイツで育って、ドイツ学校に行っているわけでして、そういうことで帰国できなくなる。在留が長期化しまして、結局、永住権国籍を認めざるを得なくなった結果が一九九八年のドイツ国籍法改正であります。そういう二世でドイツで出生した方たちには二重国籍で構わないので国籍を与えると、成年になったときに選択をしてもらうということであります。  本調査会との関連で注目していただきたいのは、外国人問題のこの国籍法の改正とかその他の施策をするのに外国人問題の調査会というのができまして、このくらい厚い立派な調査報告書ができております。これは議員研究者との共同の作業でできたものでありまして、委員長はリタ・ジュスムートさん、多分、土井たか子委員長は議長のときに行ってお会いしていますから、御一緒された方はいられると思いますが、下院議員議長を十年、それから連邦の児童家庭相を四年ぐらいやった方でありまして、かつ旧コール政権下の有力な政治家だった、元々は学者ですね、教育学ゲッティンゲン大学教授だった方であります。まあそういう報告書が出てきておりまして、その調査結果については引用させていただきます。  重要なことは子供教育義務を親に課しているわけでして、この点は日系人との関係で、日系人の親が教育についての熱心さがないという、そういう問題があります。それから、社会保険は全部加入させます。年金保険健康保険、その他。それから、健康保険カード外国人のすべての家族関係やその他のもの、国籍申告等々のアイデンティファイするデータになっておりまして、これを政府の機関はすべてお互いにデータをやり取りをしている根底になっています。こちらは住基ネットでやるとかいう意見もあったようですが、そういう問題がございます。それから、年金通算協定がありますが、これについてはまた後ほど言及しますけれども、年金通算協定は、御案内のように、ドイツとの間が第一号でございます。  そこで、三つの問題が出てまいりますが、要するに雇用上は全く平等であるということです。それから、自動車産業では、この辺の御認識が日本自動車産業はまだ欠けているようですが、平均すると五割以上が外国人でありまして、その人たち労働組合にもちゃんと入るし、全く平等の雇用条件です。ですから、言うまでもなく、外国人の、日系人の方がいわゆる短期の契約で派遣とか業務請負でやられているのとは全然違います。そこの点がはっきりしている。  それから、いわゆる向こうでは住民は税金についても本人が申告すると、納税カードがあります。それから、社会保障カードもあります。それから、住所なども的確に把握して、警察ヨーロッパ大陸は全部内務省がございまして、戦前の日本内務省と同じで警察と地方自治体と両方表裏一体になっていますから、その内務省が中心でコントロールしているということであります。  住所地での義務は、外国人登録をして在留許可を受けるあるいはビザを取るということと並んで、自動車免許証なども全部そこで登録をされます。私も古い七〇年代のドイツ免許証を持っていてなくしたものですから、住んでいる町の、まあケルン市でありますが、支所に行きましたら、その元の住所のところに電話をして、子供教育をきちんとしたか、それから在留資格をちゃんとした形で滞在したか云々のことを聞いて、それで即、今はEU免許証になりましたが、後から送ってくれました。そのくらいきちんとしているということですね、データが。  日本の場合には、日系人の方なんか含めて、ある町からある町へ移っちゃうともう分からなくなっちゃうという、こういう問題。これはまあ日本人年金問題で、あるところからあるところへ移ると分からなくなっちゃうということがざらにありまして、要するにドイツヨーロッパ大陸では、自分でもアイデンティティーカードをパスポート以外に国内で持っていなくちゃいけないということが義務付けられるくらいの状況があるということであります。  子供学校への通学義務は、これは父母に課していまして、もし出さないような親がいますと在留資格が剥奪されます。そういうことであります。  それで、日本への教訓でありますが、ドイツ外国人へのドイツ語教育連邦政府が、これはジュスムート委員会の結論から出たわけですが、親も子供も含めて教育についての対策費が二百九十八億円出ております。一昨年、一昨々年ですかね、日本外国人の子弟に対する日本語教育予算というのは幾らか調べましたら、文化庁の国語課予算を含めて六千万ぐらいしかないという、こういう状況でありまして、まあ人数違いますけれども、しかしそれにしても非常に少ない額で、一応、今年度だか来年度の予算では十億単位になったようですが、まだまだであります。  それから、スウェーデンやフィンランドはこれは北欧型という具合に呼んでもいいと思いますが、移民や難民を受け入れて、もう即いわゆる社会保障共同体の中に受け入れてしまうということであります。御案内のとおり、北欧社会保障は完全にそろっている。その代わり負担率が高くて、付加価値税も三〇%を超えていますね、今は超えている。それから、いわゆる社会保険料税金とを合わせると負担率六〇%から七〇%、これは所得によって若干違いますが、七五%というふうなこともあるということで、国が教育雇用促進などに積極的に取り組んでおります。  EUが拡大、東方へ拡大しまして、結局ポーランドやチェコなどがEUに入りましたが、英国アイルランドスウェーデンは他のEU諸国と異なって、これらの国からどんどん働きに来てくださいということで、ポーランドなどから大量の人々が、目下英国アイルランドは経済が非常に活況ですから、そこへ行って働いている、建設業などはポーランドからの労働者が行って働いているという、こういう状況であります。  さて、日本への外国人受入れでありますが、一九九〇年の入管法体制日系人労働者受入れをいたしました。これはいわゆる単純労働者というんですか、どんな仕事にも就けるということで受け入れたわけであります。その点では、せんだって、三月の末に外務省がシンポジウムをやって、そこでいみじくも、国際移住機構事務局長のマッキンレーさんが言っていましたけれども、日本外国人労働者受入れを、移民受入れ日系人でやったようなもんですねと、こういうことを言っていました。それで、実際そうでありまして、結局、日本から百年前、今年は移住百年ですけれど、ブラジルに渡った子孫の日系二世、三世が日本に一時的に、本人たちも一時的に働いて二十五倍くらいのお金を持って帰るということ、国民所得のですね、ということを考えてきましたけれど、結局永住に入りました。  そこで、本調査会一つのテーマでありますので、これは私のチームがやったデータから簡単に少子高齢化の問題あるいは人口減少社会のことをお話し申し上げます。  ここにあります論点をⅠからⅢ、そのⅠのところで、労働力人口というのは最悪の場合に、二〇三〇年には五千五百八十四万人、今六千五、六百万人ですけれども、それから二〇〇六年に比べて一千万人も減るという、そういうことで成長を阻害すると、これは厚生労働省。  高齢化率が実は二〇〇五年から二〇三〇年まで世界最高水準で推移するわけでありまして、二〇〇〇年に二千二百三十万人強でありました高齢者が二〇三〇年には三千六百四十万人弱、高齢化率は一七・六%から三二・七%であります。そういうデータが出ております。とりわけ注目すべきことは、途中はしょりますが、二〇三〇年には後期高齢者は総人口の一九・三%の二千百七十万人と、文字どおり二〇〇〇年の二倍になります。  こういう中で先進国高齢化率を取りますと、ドイツイタリアスペイン日本でありますが、何のことはない旧枢軸国であります。これらの国の特色は、実はこのことを特別に御指摘申したいんですが、女性職場進出が非常に遅れていた国です。この四つの国は、女性家庭で、それで男性だけが働けばいいということでやってきて、就業構造もそのようになってきた国であります。ところが、北欧から始まって、ほかの西欧諸国はどんどん職場進出しております。そういう中で英仏は二五%程度でとどまっていくであろうという予測であります。  結局、高齢者が増えると同時に、働き盛りの人口であります二十五から五十四歳層はマイナス二六・三%になります。そこでいろんな議論が出てまいりまして、結局、マクロの成長率をあるいは国民所得を確保するためにマンパワーが必要だという話になりますが、実は、女性就業率を増加させ高齢者の就労が増えていけば、かなりのところまでは就業はカバーできるということになっております。  前期高齢者後期高齢者と、今回の医療保険で使っていろいろ問題になっていますが、そういうことがございますけれども、しかし日本人口は減りますので、二〇三〇年までに、四ページの上、3のところですが、人口減は一二・五%減少いたします。ですから、労働力人口を維持する必要がありますかということを先生方一つ疑問として呈したいと思います。  要するに、人口要素での経済成長は二〇一〇年ごろには止まって、日本国民所得は二〇〇八年に三百九十兆円でピーク、その後、しかしながら一人当たりの国民所得はそんなに減りません。三百十四万円で減らないということを確認していただきたい。これは私の親しい友人の松谷さんという方、政策大学院大学の彼が推計しております。多分、そのとおり推移すると思います。  そのときに、例えば合理化省力化で生産性上げることは可能であります。御案内のとおり、鉄鋼、御関係の方いらっしゃると思いますが、鉄鋼などは人がほとんどいません。二千メートルのホットストリップミルの工程は、わずか六人か七人の操作員だけでコンピューター操作でできるんですね。昔は六百人、七百人、労働者が要るという、そういう状況でした。昨年は鉄鋼産業は未曾有の好況でありました。そういうこともございました。  そのときに、今後の推計を見ながら考えますと、人口急減期に対しては、(3)の1というところ、人口の超高齢化が進んで、死亡者数が増加するわけでありまして、そのピークは団塊の世代が亡くなる時点であります。ここにいらっしゃる先生方の半数以上はそうだと思いますが、そこは皆さんお亡くなりになるわけであります。そのころは高齢化ピークになって人口は徐々に減少していくと、こういうことであります。  それで、結局二〇三〇年ごろからは現時点から出生率が上がれば高齢化率は下がるんです。そこのところ誤解ないように。今子供を産めばすぐに役立つ、おぎゃあって言えばすぐ役立つように国会の先生方厚生労働省を筆頭に間違えているんですよ。おぎゃあと生まれた方たちは三十年後でないと本当に戦力にならないんです。  そこで、二〇三〇年ごろまでに現時点から出生率が上がれば高齢化率は下がる、出生率が回復すればヨーロッパ諸国並みになると。現在の一・三程度の低出生率が二〇三〇年以降も続けば、高齢化率は二〇三〇年以降も増加し続けて、二〇五〇年ごろには三八%、これは本当危機ですよね。二八%超えたら大変だって言われて、こういう村や町が皆さんの地方にはあると思いますが、そういうところは再生産ができません、社会の、そういう具合になってきます。したがって、二〇三〇年、まあ既にやらなくちゃいけないんですけど、女性子供を産みやすく、生涯働けるような雇用環境を整備する必要があります。  それで、その中で一つ御指摘申し上げたいのは、ここに書いてあることと並んで、国民年金基礎年金の第三号被保険者だけはもうおやめください。保険料専業主婦が一銭も払わないで年金保険もらえるというのはおかしいと思います。これは超党派でやっていただきたいと思います。女性の世論調査すれば、六〇%がそれに反対なんです。それで、こちらに南野先生始め御専門家はおられますけれども、要するに家庭の主婦が多かった、日本専業主婦が多かった状況国民年金を導入するときに、無年金になっちゃうその人たちを救うためにつくった制度なんですね。今後はそれはなくさなくちゃいけないということです。そういうことが申し上げたいことであります。  ですから、一番最後に書いてありましたように、少子化を防げば人口が増えるというのはこれは幻想でして、せいぜい欧米諸国の一番進んでいるところでも一・七くらいまでしか合計特殊出生率は進みません。  さて、最後に、時間がだんだん来ましたので、ここのところで、外国人労働者を受け入れる必要があるかどうかということでありますが、結局、現在の状況二つの時期がありまして、九五年までの国勢調査によりますと、そのころは割と大勢入ってきていたんです、フローで。それで、その人たちが残ってきますから、後ろの表があるので後で御覧いただきたいんですけれども、要するに、この状態でいくと千四百六十万人になって一一%になるということです。ところが、その後、いわゆるバブル崩壊後、ちょっと停滞しているものですから、そういうことになると少し減っているという、そういうことであります。年間三十八万人入れろというような国連やOECDの、現在の人口や何かを維持するためにはという、そういう御意見がありますが、それはもう無視することにいたします、御親切な忠告でありますが。  それで、結局、例えば三十年後に社会保障受給者になるんです、現在三十歳で入ってきた外国人も、日本人もですね。それで、ドイツジュスムート委員会報告ではきちんと将来予測をしております。それで、その中で、外国人労働者が三十五歳前後で入国して六十五歳まで働き続けて、社会保険料をきちんと払ったとしても、本人及びその配偶者平均余命までの生活、医療介護保障をする効果まで上げられないというのが2の頭のところに書いた予測であります。これはもう恐らく、これと違う予測はできないと思います。ですから、一家で一人だけで働いているところでは奥さんの分も無理なんです。したがって、ドイツ寡婦年金を削減していくという、そういう年金改革にいたしました。寡婦年金ですね、未亡人の年金。まあ寡婦といっても夫の場合もあるようですから、そういうことであります。  それで、その下の人口密度については省略させていただきます。  一つの例証で、日系人の問題を申し上げます。  この人々については、先ほど申し上げたように、一時的な出稼ぎのつもりを永住権を出すことに法務省入管局がしちゃったんですね。どうしてかというと、その理由はマイナスの理由でありまして、彼らはラティーノですから、ラテン系の人ですから、定住者は二年とか三年ごとに更新しなくちゃいけないんです、手続して、定住権を。ところが、それをおやりにならないんですね。そうすると、全部不法就労、不法残留になっちゃうということで、同情の余りだか、ある意味では泥縄式に永住権をどんどん認めたわけです。  しかしながら、二番目のところ、ここのところで書いてありますけれども、子供日本生まれを含んで日本に住むことの選択をせざるを得なくなっている。教育を受けまして、中途半端な教育を受けていますから、まあ後ほどあると思いますが、そういうこと。  それから社会保障、これについては、これはもう早急におやめいただくようにしなくちゃいけないと思っているんですが、皆さんに御質問申し上げますけれども、日系人の方たちを含めて外国人日本年金に入りました。それで、年金保険に入りますと、三年までは保険料の半分返すことにしているんですね、厚生労働省は。これはやめなくちゃいけないんです。どうしてかというと、日本人は全員、脱退一時金、今ありません。ところが、彼らは三年間に一回、帰りますよといってお金もらって、相当な額、向こうに行って遊んで、また帰ってきて、それでリピーターになってだんだんだんだんと永住しているんです。それで、彼らは、年金を見ますと、相当な人たち年金はもう完全にない、日本の国内で永住してもない人たちがほとんどです。その上にお父さんたちを連れてきています。お父さんたちは、一世の方たちは無年金です。  そういうようなことがありますので、内外人平等ということを貫いてもらいたいと思います。悪用されていますね、一部では。三年に一遍お金もらって帰る、旅費出るんですよ。それで、厚労省年金局にはその旨申入れをしたいという具合に思っております。そういう状態です。  それから、結局、子供だけではなくて、最後のページですけれども、親も、親の二世の方々、二世の方は日系人同士で結婚する方が多かったんですが、二世の方も日本語ほとんど駄目です、読み書きはほとんど駄目。三世は日系人じゃない方と結婚していますね、ブロンドの奥さんとかいろんな。日系人じゃない人と結婚したときに、そういう人たち日本語全然していない。結局、日本語教育を緊急にする必要があります。  子供学校の義務付け。これは、学校にやらない親は永住権出してもらっちゃ困ります、絶対に出しちゃいけない。そういう国があったら、入管局でお聞きください、ありません、ヨーロッパでもアメリカ合衆国でもその他移民受入れ国でもございません。  年金保険料の返還の取りやめをしていただきたい。年金協定をしてくれとブラジル政府は言うんですけど、ブラジルにちゃんとした年金がないんです。そうすると、年金協定しますと、その分のお金のファンドがブラジル政府に入るわけです。そうすると、ブラジル政府の役人はそれで好きに使って遊ぼうと、そこまで言ったら語弊がありますけど、そういうこともあって、年金協定してくれ、してくれと言うんですが、突っぱねているんです、今のところは。そういうことであります。  それから、もちろん雇用を違法の業務請負や派遣で受け入れるのは大問題であります。この方たちは、特に業務請負で受け入れた方は保険に入りません、一切。税金も十分に払っていません、物と同じですから、請負契約で。ですから、源泉徴収していません。それから、派遣は保険に入ったり源泉徴収することになっていますが、十分ではありません。そういうことで、その点を言いたい。  それから、技能労働者受入れで、今回は専門的技術については申し上げないということを言ったんですけれども、外国人労働者受入れ日本人とのダブルスタンダードで行われているということは非常に問題であります。結局、違法な業務下請や派遣でやっていたのが日本人に波及しているんですね。皆さんの周りの御子弟、御子息たち、大学の学生はフードサービスとかいわゆる流通産業に使われていますけれども、ほとんど違法な業務請負か派遣でアルバイトしているんですね。それでオーバータイムも払わないという、そういう状態日本人の若者に跳ね返って、それで日本人の若者はそれでもまだ製造業に入らない、自動車の下請などにはいらっしゃらない。どうしてかということでありますが……
  8. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 誠に申し訳ありませんが、時間過ぎておりますので、御意見をおまとめください。
  9. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) はい。そういうことであります。  二と三は後ほど触れさしていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  10. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) ありがとうございました。  次に、石河参考人にお願いいたします。
  11. 石河久美子

    参考人石河久美子君) 日本福祉大学の石河久美子です。  本日は、このような報告の機会をいただきましたことを誠に光栄に思っております。  それでは、多文化共生社会における社会福祉支援の必要性ということで、今、日本におります外国人家族、国際結婚家族の中でどういう問題が起きていて、どういう支援が必要になってきているかということを、愛知県の取組であります多文化ソーシャルワーカー育成のお話を交えて御報告をさせていただきたいと思っております。  まず、日本に在住する外国人の実態ということで、これは外国人の増加は一途をたどっているわけで、特にアジア系のニューカマーの増加、移住労働者として日本に長期滞在する日系ブラジル・ペルー人、日本人と結婚して定住するフィリピン・中国人女性など、短期滞在から長期滞在、定住化、地域の生活者としての外国人が増えてきております。特に移住労働者人たちの多くが二十代、三十代ということで、この年齢は結婚、出産、家族形成期にも当たる人たちであるということで、国際結婚家族外国人家族が増加している中で、これらの家族の中で多様化、複雑化した生活問題、家族問題が増えてきています。  国際結婚の現状ですけれども、御覧の数字のように国際結婚は急増しております。特に妻が外国人のケース、アジア系の妻と日本人夫、この結婚が急増しているわけです。  それでは、国際結婚の家族がどういう問題を抱えているかということですが、これは外国人妻の場合を中心に幾つか挙げてあります。  母親の日本語能力が限られている、子供日本学校に通い日本語しかしゃべらないといった状況の中で、母親が育児不安を起こしたり親子のコミュニケーションギャップが起きています。また、夫婦間では、言葉、文化、価値、習慣の違いからやはりコミュニケーションギャップが起きる。拡大家族との関係ということでは、これは農村に嫁いだアジア系の女性などがしゅうと、しゅうとめとの関係でストレスを感じるケースなどがあります。それから、国際結婚が増加するに伴ってドメスティック・バイオレンス、国際離婚、こういったケースも増えてきております。しかし、言葉の障壁、日本社会の仕組みや法制度の知識不足、サポートネットワークの不足、それから在留資格の問題、国際離婚の複雑さなどから、かなり深刻な状況にあっても具体的行動を起こせない外国人妻はかなり潜在しているというふうに考えられます。また、ドメスティック・バイオレンスの起きている家庭で児童虐待が起きる、こういったこともあります。  次に、外国人家族、これは移住労働者家族を中心に少し挙げてありますが、実情としては長期滞在、定住になっているわけですが、親の意識としては行く行く母国へ帰る、子供教育は全体的にとらえ積極的でない、親の日本語力が不足していて学校とコミュニケーションできない、長時間労働で生活に追われ余裕がないといった状況の中で、学校への不適応、不登校、不就学、ダブルリミテッドの児童の増加が起きております。また、子供日本語力が優れ日本の事情が分かる一方、親の方は単純労働で最低限の日本語で自分のコミュニティーにこもっているという状況の中で、子供が非行化しても親がコントロールできない状況があります。そして、さらに新しい問題としましては、このような状況学校をドロップアウトして不安定な生活をしている青少年が既に親になるという状況が生じております。十代未婚の妊娠、出産、そして出産した子供が無国籍のままになっているとか養育状況が懸念される、こういった事態が発生しております。  近年、生活情報提供の多言語化というのは各自治体で取組がかなり工夫されて少し充実化してきているわけですが、このような複雑多様化した生活問題というのは単に生活情報を提供するだけではとどまらない、収まらない、もっと専門的な継続的な支援が必要な事態が発生しているわけです。  私自身は、一九八〇年代後半にハワイでインドシナ難民の支援をするソーシャルワーカーをしていたことがあるんですね。その難民の人たちが入ってきて、まず当初は住居をあっせんするとか、英語学校につなげていくとか、医療機関を紹介するということをして、最低限のニーズが満たされて一通り生活は落ち着くわけですが、それで問題が解決するかというとそうではなくて、長期滞在になることによってより複雑な家族問題や生活問題が起きてくる。  例えば、夫婦間では、母国では経済力を持たなかった妻が経済力を持ち始め、そしてアメリカナイズされて自己主張をする、その中で夫婦関係が変わってドメスティック・バイオレンスが生じるとか、親子関係では、子供は英語を覚えてアメリカの学校に通ってアメリカナイズされていく。親の方は、単純労働で最低限の英語で自分のコミュニティーにこもっている、その中で子供が非行化しても親はコントロールできない。これは今、日本移住労働者家族で起きている問題と非常に似た共通の問題が起きているわけです。  こうなってくると、アメリカでもソーシャルワーカーが介入をして対処していくということになっていました。ですので、生活情報提供や日本語教育支援、雇用体制の整備というのはもちろん重要でありますが、それだけではなくて、やはりより専門的な知識や技術を導入したサービス、そしてそのサービスを担っていく人材の育成というものが今後必要と考えられます。  しかし、日本では従来、社会福祉において日本人を援助の対象とするということが一般的であったわけですが、今後は制度、政策、直接的支援においても多文化の視点が必要と考えられます。  ソーシャルワークといっても少しなじみにくい概念であり支援の方法であるかと思いますので、少し簡単に説明をさせていただきます。  ソーシャルワークというのは、人が問題を抱えている場合に、問題解決に向けて人へ働きかけるだけではなく、環境にも働きかけていく支援の方法と言えます。例えば、ブラジル人児童が不登校になっているという状況の場合、家庭に非常に問題が同時に起きているケースが多いので、お父さん、お母さんに会って、家庭訪問してその家族関係を調整していく。それから、やはり学校にも働きかけて、その子供学校に適応しやすいように、例えば先生とソーシャルワーカーと家族が三者で集まって、環境調整のためのミーティングをするとかそういった形の支援をする。環境といっても自然環境という意味ではなく、家庭環境、学校環境、職場環境、近隣、コミュニティー、そういった環境に働きかけるという意味合いで使用しております。そして、対象としては、個人、家族、グループ、コミュニティーなどが対象になります。  多文化ソーシャルワークとか異文化間ソーシャルワークというのは、こういった今申し上げたようなソーシャルワークの手法を多様な文化的背景を持つクライアント、クライアントというのは問題を抱えている人ですね、支援を求めている人ですが、クライアントに対するソーシャルワークということです。これは社会福祉の中でも非常にまだ新しい分野ですので、多文化ソーシャルワークと言ったり異文化間ソーシャルワークと言ったり少々紛らわしいのですが、内容としては同じものであります。  それでは、多文化ソーシャルワーカーとはどういう人かということですが、多様な文化的背景を持った外国人の生活問題に、ソーシャルワークの専門性を持って問題解決に向けて継続的に支援を行っていくということになります。  先ほど述べたような複雑な多様な問題、特にドメスティック・バイオレンスとか児童虐待とか非行、こういうものはやはり専門的な知識とか技術がないと効果的な介入はできないということで、やはり専門性が必要である。つまり、外国人を支援する者イコール多文化ソーシャルワーカーではないというふうに私は考えております。  多文化ソーシャルワーカーについてのより詳しい御説明は、このパワーポイントの下に幾つか紙媒体のみの資料があるのですが、パワーポイントの資料、十九の次のページを繰っていただきますと、多文化ソーシャルワーカーの育成に向けての提言というものがございます。これは、二〇〇三年から二〇〇六年にかけて、豊田市国際交流協会主催で三年にわたって多文化ソーシャルワーカーのセミナーを開催し、その成果として事務局と私で取りまとめたものです。こういうことがきっかけになって、愛知県の多文化ソーシャルワーカー養成が始まったわけです。  じゃ、多文化ソーシャルワーカーはということで、一応二つタイプが想定されるわけです。  一つ目は、当事者の言語、文化に属し、日本の文化や日本語にも精通するワーカーということで、つまり、ブラジル人で日本に長年住んで、両言語、両文化に詳しく、かつ自分のブラジルコミュニティーからも信頼されている、そういった人材がワーカーになる。  それからもう一つは、日本人であるけれども多様な文化的背景を持つ外国人に対応できる、必ずしもほかの言語に精通していなくても外国人コミュニティーや支援組織と連携して文化的に適切な対応ができる、こういった二つタイプのワーカーが必要と考えております。  多文化ソーシャルワーカーの役割、幾つかそちらに示してあります。社会適応と自立を支援するとか、外国人日本社会システムをつなぐ、必要とあれば代弁者となっていくということです。  最後の、外国人当事者の役割モデルになるということですが、実際問題として、ブラジル人児童、青少年が日本にいても行く先が定まらない、日本社会に住んでいても夢が持てないという状況が今あるわけですが、例えばこの多文化ソーシャルワーカーのような仕事、両言語・文化を使って社会貢献もでき、自分のコミュニティーにも貢献できて、きちんとした仕事をしている、そういう人がいれば、次に続く子供たちの役割モデルとしての多文化ソーシャルワーカーの役割というものも期待できるのではないかというふうに考えております。  次に、多文化ソーシャルワーカーに求められる資質ということですが、さきに述べましたような様々な家族問題に対応するためには、知識としては、社会保障制度や医療保険システム、社会サービスについての基本的な知識であるとか、どういう社会資源があるかといった知識、それから技術としては、基本的コミュニケーションスキルであるとか面接技法、ネットワーキング能力、そして自分の価値観を押し付けない支援の方法、それから、多様な文化的背景を持つ外国人に対応できる力という意味では、相手の文化を尊重する力であるとか、外国人問題固有の知識、在留資格や入管法、外国人労働者の労働環境といった、こういった知識や力も必要となってきます。  しかし、じゃ今、日本にこういう人材がいるのかというと、まだほとんど存在しないという状況です。そういった背景もあって、愛知県で平成十八年度より都道府県レベルでは初めて多文化ソーシャルワーカー養成講座というものが実施されたわけです。  講座の目的は、在住外国人に支援をしていく上で最低限必要な知識や技術を取りあえず体系的に習得していただこうということを目的といたしました。  具体的な目標としましては二つありまして、一つは、既に外国人支援をしている人たち、これは国際交流協会とか市町村に外国人相談員という人たちがいるんですね。それから語学相談員の人たち、それから外国人支援NPOや団体のスタッフ、こういう方たちが今、さきに述べたような非常に深刻な問題をソーシャルワークの専門的な訓練も受けていないまま四苦八苦しながらやっているという状況でありますので、今まで実践知を基盤としていた業務をより専門的なソーシャルワークの枠組みでとらえ直して、より効果的な支援をしていただこうということが一つの目的です。もう一つは、その養成修了者の中から実際に愛知県の多文化ソーシャルワーカーになってもらおうということで、これは平成十八年度修了者のうち二名が現在愛知県の多文化ソーシャルワーカーとして勤務しております。  対象者と内容ですが、何らかの外国人相談業務かソーシャルワークをやった人ということで、全くの素人の人は一応排除して、とにかく少数精鋭でやろうということで、募集人員も十五名、実質的にかなり応募者が多かったので十八名まで枠を広げましたが、かなり絞り込んで、実践的な仕事をしている人を絞って、七週間四十二時間ということで行いました。  実際のプログラムの内容につきましては、先ほどの提言の次のページに、平成十九年度多文化ソーシャルワーカー養成講座時間割というものにお示ししてあります。七週間四十二時間で基本的な知識、技術・方法、価値、フィールドワークなどを時系列で知識や技術を積み上げて、最終的に基本的な最低限の力を付けることを到達点として組んであります。  今後の課題でございますが、これは今愛知県の課題でもあり、それから今後、他の都道府県でもしこういったソーシャルワーカー養成が実施される場合も共通の課題になっていくのではないかというものを幾つか挙げました。  まず一つ目は、専門性を持つ多文化ソーシャルワーカーの育成ということで、講座修了者への継続研修ということです。この研修は最低限の基本知識と技術をパッケージにしたものですので、この研修だけではとても独り立ちしてずっとやっていくことは不可能なんですね。ですので、愛知県では、取りあえず一年に一回とにかくフォーローアップ研修というのをやりまして、その後、講座修了者が自主的にネットワークを形成して、自主的な勉強会をしていくような側面的支援というのをしております。  それから、多文化ソーシャルワーカーへのスーパービジョンということですが、これは今愛知県にいる二名に関してですけれども、とにかく初めての試みであり、ふたを開けてみないとどのようなケースが一体幾つぐらい入ってくるか、それも全く予測が付かない状況で踏み切りまして、しかも外国人の長期化によってまた新たな複雑な問題が生じているという状況で、ケース自体も非常に複雑である。それから、今雇用されているワーカーも日本人でありますが、自身が外国に住んだことがある、そして多言語を使って仕事ができる、外国人支援をしていたという経験はありますが、ソーシャルワーカーとして働いたこともないという状況で、この二人に関しては私の方で個別にケースの指導というかアドバイスなどをしております。  雇用形態の改善ですが、これは多文化ソーシャルワーカーのみならず、語学相談員とか外国人相談員共通なんですが、大体もう嘱託任期付きということで非常に身分が不安定です。しかし、今後、外国人に対する支援というのはよりニーズが高まりますし、専門性というものも期待されるわけです。そして、外国人当事者の役割モデルとなるような当事者多文化ソーシャルワーカーを期待するのであれば、これはやはり身分を保障していく必要があるというふうに考えております。  それから、雇用先の拡大です。これは、愛知県の場合は、あの広い愛知県にたった二人しかいないという状況でとても手が回らない。ですので、市町村レベルでもこういった多文化ソーシャルワーカーが雇用されるとか、現在相談員として働いている人が、相談員というのは電話相談を単発的に行うことしかできない業務が一般的なんですが、そうではなくて、継続的に実際に外に出ていって働くような、そういった業務を拡大するなどの何らかの取組が必要というふうに考えております。  それから、組織レベルの職員の理解と連携ということですが、これは多文化ソーシャルワーカーを一人、二人雇って問題が解決するというわけではございませんで、その組織や部署全体で外国人の問題に関心を示していく必要性があります。  それから次の、これは非常に重要だというふうに私は考えているのですが、行政職員や保健・医療・福祉専門職者に対する研修ということです。  こういった外国人支援のソーシャルワークというのは、ソーシャルワーカーと外国人間だけで問題は解決しないんですね。市役所であるとか児童相談所とか福祉事務所とか病院とか学校とか、様々な機関と連携をしないと問題は改善していかないわけです。しかし、こういった行政職員や保健・医療・福祉専門職の方たちは、自分たちのサービス提供者は日本人であるという発想がまだ非常に根強くて、ケースが回らないということが私自身も現場にいたときに痛感しましたし、まだ事態は余り変わっておりません。  ですので、こういった方たちに対する研修で意識啓発をして、日本人だけではなく外国人もサービス対象者であるという意識啓発であるとか、外国人特有の社会背景であるとか、文化的背景であるとか、ややこしい在留資格の問題であるとか、そういう知識も提供していくような研修、これが非常に重要であるというふうに考えます。  それから、地域の状況に即した多文化ソーシャルワーカー育成ということですが、愛知県の場合は圧倒的にブラジル人が多いという特徴がございますが、これは地域によって例えばインドシナ難民が多いとか中国帰国者が多いとか、いろんなタイプ外国人が共生しているという、地域によって問題とエスニックコミュニティーが違いますので、やっぱりその地域に即した養成が必要というふうに考えております。  最後に、ソーシャルワークというのは人と環境の両方に働きかけるというお話をさせていただきましたが、外国人の抱える問題というのは、まあ外国人の問題というより日本社会との相関関係で生じている問題であります。ですので、日本社会という環境そのものが変わっていく必要性があるというふうに考えております。  それでは、これで報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  12. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) ありがとうございました。  次に、小林参考人にお願いいたします。
  13. 小林米幸

    参考人小林米幸君) 今日お呼びいただきました小林国際クリニック、AMDA国際医療情報センター理事長小林でございます。  座ったままで失礼させていただきます。  私は昭和四十九年に医学部を卒業しまして、大学病院及び大学の関連病院で外科医として臨床を行っておりましたが、昭和六十年より、当時勤務しておりました大和市立病院の近くにありましたアジア福祉教育財団難民事業本部傘下のインドシナ難民大和定住促進センターでカンボジア人、ラオス人の医療を見ることになりました。  そのとき気が付いたことは、日本語ができない方が医療を受けるのがこんなに大変だろうかということに気が付きまして、当時、病院では通訳を雇ったりいろんなことがありましたが、そういうことを考えますと、私自身、外科医をやるよりもむしろ自分のクリニックをつくってその中に通訳を置いて、外国人の方はただ来ていただければいいと、そうやって日本人外国人を共に診る医療機関をつくろうと思いまして、平成二年の一月に開業いたしました。これが私のクリニックです。  現在の私のクリニックでは、日本語のほかに英語、ベトナム語、韓国語、スペイン語、タイ語、タガログ語で対応をしております。患者さんの大体八〇%から八五%が日本人、一五%から一〇%ぐらいが外国人と思います。医師は二名、看護師が三名。私ども医師二人で幾つかの言葉を話しますが、そのほかにタガログ語の通訳、それからベトナム語の通訳を雇用しております。  これが、開業以来私のクリニックに先月の末までにやってきた患者さんですが、国別に見ますと、これは日本人はもちろん除外してありますが、タイ人が最も多く、以下ずっと続いています。このスライド一枚見ていただきますと、およそ外国人の方を診療する上での難しさというのが全部このスライド一枚で分かります。  まず一つは、国籍を見ていただけば分かりますけれども、非常に多国籍であるということ、要するに日本の第一外国語である英語だけではもうとても足りないということですね。  それから二番目に、次の公的保険加入、未加入とありますが、これは次の新規の患者さん総数、例えばタイ人を見ますと、千三百十三人の患者さんが来ています。これは一人が何度も来ることもありまして、それは延べの患者さんの方に四千七百五人と書いてありますけれども、これで見ますと、タイ人の中で保険に入っている方はわずか九十六人、たった七・三%ぐらいですね。国によっては非常に公的保険に入っている人が少ない。  ただ、その下の方のUSAと書いてあるアメリカ人の方を見ますと、百九十七人のうち八十人が入っていません。彼らの場合は、入っていないといっても、日本在留資格がないとかあるいは入れない資格で日本にいるのではなくて、彼らは自分の国で民間保険に入っているので、わざわざ日本にやってきて日本の公的保険に入らない。本当は入らなければいけないんですけれども、義務のある方は。ただし、この義務というのが罰則がない義務なもんですから、結局入らないでいてしまうということですね。  ただ、保険に入っている方が多い例えばベトナム人、カンボジア人はおよそ九三%ぐらいが入っていますが、彼らにしても生活の元々の基盤が日本になかったわけでして、保険に入っているといってもどうしても財政的な問題が出てしまうということで、外国人の患者さんを診ることは医療費の問題が必ず出る。  その次に、もう一度国籍に戻っていただきますと、これだけの国があるということは、たくさんの文化を抱える人を診るということになります。医療というのはやはり文化に裏打ちされたものですので、お互いの文化が分かりませんとお互いに理解できません。ですから、それだけたくさんの文化のことをある程度知っていなければ、患者さんとお互いに意思の疎通ができないということですね。  それから最後に、インフォームド・コンセントと人権という問題があります。  特に、今まで日本で行われていた医療と欧米の医療は、全く人権やインフォームド・コンセントに対する考え方が違います。ということで、現場の医師や看護師と外国人の患者さんとの間にトラブルが起こり得るということです。  先ほど地域医療のお話をさせていただきましたけれども、私のところにやってくる患者さんを見ますと、同じ大和市内の患者さんが非常に多い。大体、車で三、四十分程度の方がほとんどでして、要は、遠くからやってくるわけじゃなくて、地域にこれだけの患者さんがいるということですから、やはり私は、外国人医療は地域の中の地域医療の一環としてとらえるべきだというふうに思っております。  突然こういう写真が出てきてしまいましたけれども、私が開業した次の日に、NHKの夜のニュースで私のクリニックの開業のニュースが流れましたところ、次の日から外国人の方から物すごく電話がたくさん来まして、とても診療できるような状態ではなくなってしまいました。多くの方は、私に診てくださいというよりも、自分の窮状とか置かれた状態とかいろんなことを訴える方なんです。  それだけ相談があるならば、いっそ外国人医療相談、医事相談を受ける専門組織をつくってしまおうと思って、当時私が所属しておりましたAMDAという団体のメンバー六人で、一人百万ずつ寄附してつくり上げたのがこの組織です。現在、東京と大阪にオフィスがあります。これは東京のオフィスの写真ですけれども、こうやって日中、外国人の方からたくさん電話が掛かってきます。現在、月曜から金曜まで、英語、スペイン語、北京語、韓国語、タイ語で九時から五時まで対応しております。そのほかに、東京都の外郭団体から委託事業をいただきまして、東京都に住んでいる外国人の方に関して三百六十五日、同じ言語で対応をしております。  これは関西にあるセンターですけれども、関西の方がちょっと規模は少ないですけど、このような規模で行っております。  これは、ある日の私どものセンターに寄せられる件数のまとめです。今日何でこんなデータ出したかといいますと、私が自分のクリニックで受ける印象あるいは経験したことというのは、もしかしたら私のクリニックの特異的なことかもしれません。ただし、全国から相談が来るこういう私どものセンターの相談を三百六十五日見ていますと、私のクリニックで起こっていることが決して私のクリニックの特異的なことでなくて、全国の病院で同じようなことが起こっているということが分かるというわけです。  この中には、幾つも患者さんが来るので言葉の通訳をしてくださいというような相談が結構あります。当初は外国人の方自身からの電話を受けていたんですけれども、実際に病院に行ってしまうと、そこでそれを受け付けた、患者さんも困る、それから医療をする方の医師も困る、看護師も困る、受付の事務の方も困るということで、現在は医療機関あるいは医師等医療従事者からの相談もすべて受けております。大体、年間にセンター東京で三千六百から四千件、関西では約八百から千件、トータルしますと年間四千件以上の相談を受けております。  どういう相談が多いかといいますと、言葉が通じる医療機関を紹介してくださいというのが最も多くて、その他が二番目に来てしまいましたが、例えばタイ語とか中国語で毎日相談している機関というのはありません、多分スペイン語もないと思いますので、例えば銀行とか幼稚園から、今来ているお母さんに通訳してくれとか、今目の前にいる銀行でお金何とかする人に通訳してくれとか、本来医療じゃない相談もあるんです。ただ、これ何で受けているかといいますと、私どもが断ってしまうと、その外国人の方も困る、窓口の方も困るということで、やむを得なくそのときに限って受けているということでございます。  現在、外国人登録者数は、昨年末かな、一昨年末現在で日本人口の一・六%を占めております。さらに、オーバーステイの方が約十七万、最近のデータで十五万近くになったという話ですが、外国人登録をしている中にもオーバーステイの方は含まれます。ただし、実際に外国人の方が、じゃ今日、今現在どれぐらいいるかといいますと、商用で来ているあるいは観光で来ているという人が含まれておりません、このデータには。ですから、この更に何倍かの人数の外国人の方がこの日本に今現在いると考えていいと思います。  さらに、これはちょっと前のデータになりますけれども、外国人の入国者数、日本人の出国者数ですが、こんなに多くの人数が日本にやってき、日本から出ていくわけですね。そうしますと、病気というのは国境ありませんので、いろんな病気の方が日本に入ってくる、あるいは日本から病気を持って出ていくということで、海外から感染症を持ち込むというようなことが十分に考えられまして、私どももそういうことを考えながら医療を行わなければなりません。  さらに、先ほどもちょっと先生から出ましたが、看護師あるいは介護福祉士を日本に、外国人の人を入れようと、具体的には今フィリピンとインドネシアですか。そのように、外国人労働者がどんどん入ってくることになりますと、どんどんどんどん今よりもこういう問題が起こるのではないかというふうに私どもは思っております。  ちょっとまとめてみますと、一、言葉の問題。二、医療費の問題。三、宗教・風俗習慣と医療習慣。先ほどちょっと忘れましたが、四番目に疾患の違い。これは決して人種差別をするわけじゃなくて、やっぱり民族とあるいはそこの置かれた環境、気候等から病気が違うということがありまして、やっぱり外国人の患者さんを診るときにそういうことを考えませんと、日本にある病気だけ考えていますと大きな病気を見逃すということがあり得ます。それから、インフォームド・コンセントと人権の違いというのがあります。  言葉の問題を見ていきますと、これは私のクリニックですけれども、右側に英語、右の下が中国語になっていますね。こうやって書きませんと、外国人の方には、一体私のクリニックが何をしていて、診察時間が何かということが分かりません。残念なことに、都内の大きい大学病院でもこういう掲示が余りなされていない。ということは、外国人の方は来てもらっては困ると初めから言っているようなものではないかなと私から思うと思えてしまうんですね。  こういうふうに看板もちゃんと書いてあります。もちろん、スペースがあればもっと幾つかの言葉で書きたいですけれども。こういうものがありませんと、一体ここがクリニックなのかどうか、あるいは何科なのかどうかということが分かりません。  私の院内のお知らせです。このインフルエンザのお知らせもタガログ語とかいろんな言葉で書いてあります。やはり一つ一つこういうことをしていきませんと、外国人の方から見ると不当に差別している社会であるというふうに言われかねないというふうに私は思っています。  これは、昨年まで行われていた基本健診という健診ですけれども、ちょっとこれ名前消してありますが、上はたしかフィリピンの方です。下は中国の方です。この方々は日本語ができるからこういうことを書けるんです。しかし、日本語ができない、読めない方は、実際に住んでいてこういう健康診断が受けられる権利を持っていたとしても、それを行使できないということがあります。  これは私のクリニックの様子ですけれども、予防接種に来た方、とても日本語の予防接種の問診票が分かりません。ところが、実際には問診票を書きませんと予防接種してはいけないことになっていますので、フィリピン人の通訳が一生懸命こうやって自分の国の言葉に訳して、マル・バツを付けて、私どもが予防接種をするというシステムになっております。  私どもは常にマイノリティーの存在に気をめぐらせなければいけないと思います。日本人であり、なおかつ健康である私たちは、日本社会ではマジョリティーです。しかし、日本語が分からない、あるいは日本人ではなくても体力が私よりもない子供たち、それから私どものように歩いたり活発に活動ができない高齢の方、そういう方がいるんだ、一緒に住んでいるんだということを常に考えながらプロジェクトを立てませんと、そういう方々を切り捨てたプロジェクトになってしまいます。  私どもが地域において基本的人権にのっとって生活していくためには、行政からの様々な情報が不可欠です。ところが、その情報をどうやって外国人の方に周知するかということが問題です。日本語以外のパンフレットを作成をするというのがありますが、英語で書けば国際化という時代はとっくに終わっています。もちろん、英語が重要じゃないと言うつもりはありませんけれども、英語だけではとても足りないという状態になっているということであります。  外国人に向けてのそういう広報を困難にしているものが幾つかあります。例えば、予防接種のお知らせ、母子手帳、これは市町村によって全部違います。もし、これが全国統一版があれば、全国統一版を一つ翻訳するだけですべてが終わります。ところが、神奈川でも大和市と横浜では違う。それこそ、全国にある市町村だけ母子手帳の種類があり、予防接種の問診票の種類があるわけです。こんなものを一つ一つ翻訳していく作業を考えたら、とてもじゃないができません。ですから、私が常に思うのは、どうしてこういうものに全国の統一規模のものが一つできないんだろうというふうに思うことです。  それから、子供の予防接種については、今無料の子供の予防接種というのが行われていますけれども、市町村自治体によって具体的な施行方法が違います。ゆえに、現況では、市町村の県境、町境がその境になっているわけですね。例えば、横浜市に住んでいるベトナム人の方が、ベトナム語の通訳が私のところにいるから私のところで予防接種をしましょうということはできません、無料では。こういうことの無駄を何とか省いて、こういう県境、町境というものをなくせないだろうかということも、私自身、いつも悩んでいることです。  通訳がいてくだされば一番いいんですけれども、医療通訳をめぐる幾つかの問題点がありまして、一つは、通訳の完成度が各々違います。もう一つは、医療用語ってとても難しくて、これを習得するチャンスがなかなか多くはない。それから、医療通訳の派遣に掛かる費用を一体だれが負担するんだろう。それからその責任。それから、どこまでが医療通訳の守備範囲なのか。これが常に問題になります。  先ほども言いましたように、通訳のおぜん立て、通訳のための費用負担を一体だれが行うのか、これがいつも大変な問題です。私どものセンターにはいつも、通訳を派遣してくれという病院からの問い合わせがあります。ところが、一体、じゃこの通訳の費用をだれが払うんですかということになりますと、結局、じゃ結構ですという話になってしまいます。医療機関は負担したくありません。通訳自身が負担するのは何かおかしい。しかし、患者さんには金銭的余裕がないという、すべてが駄目というのが今の状態だと思います。  特に受入れ医療機関が抱える問題といいますのは、診療報酬切下げによって経営が悪化しています。医師の数が少なくなっていまして、経営が悪化している。看護師の確保ができずに経営が悪化している。さらに、患者さんが来たからといって、外国人の患者さんのために自分たちが費用を出すのが一体適切なんだろうかということを、私どもは常に医療機関の経営者の方から言われます。このとおりですね。医療機関が外国人を受け入れるためには、行政、NPO、個人などからの協力が必要と考えているようです。  通訳派遣の問題点は、先ほど何度も言いましたが、だれが負担するのか。それから、事業が広く知られてきたら、いろんな医療機関から同時に、通訳派遣してくれと言われたら一体どうやって調整するんだろう。それから、患者さんや医療機関側が指定した、この先生の診察日は何曜日の何時と。じゃ、その時間にぴったり派遣できるだろうか。それから、患者さんの都合で突然、今日行きたかったけどあしたに変えますと言われたら対応できるだろうかというふうに思います。  そうしますと、むしろ私は、今私どものセンターが行っているように電話通訳をして、センターが流すと全国どこからでもアクセスできるということが便利じゃないかと思うんですね。ただし、電話代が掛かってしまう。それから、顔や表情が見えないと相手の緊張感が分からないということが一つの問題ではあります。  残る手段は何かというと、インターネットを使ったハイビジョンの、お互いの顔を見ながら行う通訳方法ですね。これは、通訳が全国一か所にいても、現在、全国どこからでもインターネットのハイスピードネットはもう無料、使い放題が多いですので、金額的にはさほど大きくはない。日本全国からアクセスが可能です。ただし、医療機関にとってはその設備投資が結構大きなものになるんじゃないかと思っています。  これは私のクリニックで、私どものセンターとつないで試験的に行ったものです。私が診察をしています、タイ人の患者さんの。私どものセンターにタイ語の通訳がいて、こうやって、今日はどうして来たの、何があったのということを説明しているわけです。  お金の問題ですけれども、外国人にも利用できる日本医療福祉制度。現在、日本医療福祉制度で、外国人ですという理由で適用されないという制度はありません。ただし、外国人全員がすべての医療制度、福祉制度を利用できるというわけではありません。ポイントは、在留資格を持っているのか、あるいはどういう在留資格かということと、外国人登録を行っているかですね。  外国人登録があってもなくても受けることができたというのは、去年までの結核予防法、現在は感染予防法、ちょっと名前変わっています。それから、健康保険も、雇っているところがオーケーと言えば、現実に今でも不法滞在している人でも入れる状況にあります。実際に入っている人もいます。それから、外国人登録は必須条件ですよというのが幾つかありまして、外国人登録をするということは、日本人でいえば住民票がある、要は地方自治体の構成員になるということですので、地方自治体が行うもの、例えば子供の予防接種、それから昨年までの基本健診、がん検診、こういうものは受けることができます。  どうして医療費の未納が発生するのかといいますと、当然ですけれども、請求額が患者さんの申請した所持金を上回ることから発生します。決して医療費が高いというだけではありません。例えば、医療費が千円で終わっても、今日は五百円しかありませんと言えば当然未納は発生します。  医療費の未納を発生させないために我々が、医療者側が努力することというのは、外国人の方に適用できる日本医療福祉制度を学び、利用すること。それから、インフォームド・コンセントに基づいた医療、何でもかんでもすべて検査をするというのではなくて、例えば患者さんが来て、今この人に一番大事なことは何なのか、この人が持っているお金の範囲で今ベストのことはどうやってやるのかということを常に考えながら行うことです。  先ほども言いましたように、どんなに安く医療費を収めても未納が発生することはあります。どうして発生するかといいますと、出稼ぎの外国人が多いという現状ですね。出稼ぎということは、すなわち稼いだお金をほとんどすべて自分の国に送ってしまうわけです。三十万稼いでも二十五万送ってしまえば五万で暮らさなければなりません。そういうことが問題なんです。国民健康保険に加入する資格があるのに、毎月の掛金がもったいないから入らない、結局病気になってしまう、病院に行く、だからお金がないという悪循環になります。その対策としては、こういう啓蒙活動を行って、国民健康保険に入ることは大事ですよということを促すしかありません。  それから、よくあるのは、日本に嫁いだ家族を訪ねて短期来日した患者さんの人たちが脳卒中になったりということがあります、心臓病になったり。こういう対策も、日本にやってくるときに海外旅行保険に入るようというふうに説得するしかありません。  この方はアメリカ人の方ですけれども、民間の保険に入っていらっしゃった方ですね。日本の保険は入っていません。こういう方が、病院の窓口でこういう保険証を出して、これ使えますかと言うと、日本医療機関のほとんどは使えないと言ってしまいます。なぜかというと、私たちにとって一番なじみのある保険というのはあの保険証なんですね。国民健康保険健康保険、いわゆる社会保険の保険証なんです。ところが、欧米の方はこういう民間の保険に入っていらっしゃる。この保険は、患者さんが窓口で全額現金で払って、私どもが右に書いてあるような書類書きますと、後で患者さんの銀行口座にお金が振り込まれると、ある意味、医療機関にとっては絶対お金の取りはぐれのない保険なんです。ところが、知らないためにこれを断ってしまうということが非常に多いです。  それから三番目、宗教、風俗と医療習慣。  これは結構大きいことでして、目には見えないといいますか、例えば頭にむやみに触られたくない、診察に際して起こることですね。タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーなど、いわゆる小乗仏教の国々では頭には仏様が宿っていると思われていますので、簡単に触られますと、これは怒るということになります。それから、宗教上、女性が男性医師の診察を受けることができない。イスラム教の女性はそうですね。ですから、産婦人科なんかですと、一生懸命女性の先生を探すようになります。それから、素肌に触られたり見られたりするのが恥ずかしいというのは、一般的に東南アジアの女性はそうです。ですから、私は、インドの女性なんかでも、聴診器を使う場合には、一番最初、服の中に入れるようにしています。もし、日本人にやるように、看護師さんが後ろに行って、はいと言って全部服を上げたりしますと、間違いなくセクハラと考えられます。そういうことで、診療中に患者さんと言い合いになったりけんかになったりするケースがとても多いんです。  それから、宗教による制限、食事ですね。宗教による制限、イスラム教は豚肉食べません。ヒンズー教は牛肉を食べません。インド、スリランカなどの宗教的菜食主義者はもちろん菜食です。こういうのが入院しますと、病院の食事しか出ませんので、これで必ず問題になります。それから、中国系の人々の間では冷たい食事は妊婦や胎児の体に悪いと考えられていまして、これが入院してサラダなんか出ますと、これだけでもやはり不愉快、けんかになることもあります。それから、健康に関する考え方の違いもあります。中南米やアジアでも、太っている子供の方が健康という考え方がありまして、これは病気ですよということをはっきり言いませんと、親御さんはいつまでたっても、今日はお子さん大きいわねと言いますと、ああ、先生に褒められたといってもっと食べさせるようになります。  手術に際してですけれども、麻酔に関して、特にアメリカ人の方は、お医者さんがきちんと麻酔をしますと無痛で手術ができると思っていますので、少しでも痛みを感じますと、まず訴訟をするということになります。それから、入院中、まあ入浴はいいですけれども、入院中の期間ですね。これは、日本医療機関は入院期間が長いと。欧米の方は、日本人のお医者さんはお金が大好きで長いんでしょうというふうに言いますけれども、実は確かに長いです。ただ、欧米が短いというのも、実は保険会社との契約で、例えば胃潰瘍ですと、これだけの期間で幾らで治しなさいと言われますと、医療機関はなるべく早い時間にお金をもらって退院させようとしますので、実際そうじゃないんですけれども、そういうことは余り日本人のお医者さん御存じないので、それで問題になります。  それから、薬の使用方法。私はアメリカ人で体が大きいので、あなた方の二倍使わなければ効きませんとかですね。ところが、日本では国民健康保険を使っていますと、毎日使うお薬には全部、このお薬は一日これまでと決まっていますので、こういうことで出せないということでまたけんかになります。  これはカンボジアの方ですけれども、こんなに入れ墨がありますが、決してやくざではありません。これは宗教上の問題でして、この方は内戦で弾に当たらないようにとお母様が彫り師を呼んで家でやったんですけれども、こういう方が病院に入院してベッドで隣にいますと、日本人の方は、色の浅黒い何かやくざが隣にいるんじゃないかと、怖くて寝られないとなります。こういうことも、実はそうじゃないんですよということを私たち日本人の患者さんの側に話をしないと、外国人の方を差別するようなことが起こりかねません。  これはカンボジアによくある、コインでこするんですけれども、熱が出たり体が痛いですと、こうやってコインで体をこするんですね。こういうものが体にありますと、子供の場合は特に幼児虐待と間違えることがあります。  これは、日本には余りありませんけれども、腕の柔らかいところにこういう棒を入れて、中に避妊のお薬が入っているんですね。こういうものを埋め込んで避妊をしているわけですけれども、日本にやってきて、そろそろ妊娠したいからこれを取ってくださいというのがあるんですけれども、日本ではこれが認可されていないものですから、こういうのは取れませんといって、私のところへ静岡県や山梨県から、神奈川の私のところまで高速道路を使って車で走って取りに来る患者さんがいます。  病気の違いですが、ブラジルにはシャーガス病というおなかが張ってしまう病気があります。タイやラオスではタイ肝吸虫、顎口虫という寄生虫疾患があります。発展途上国全体では結核が多いです。それから、エイズ、HIV感染症では、日本における患者、感染者の約二〇%、女性では約六〇%が外国人です。ですから、そういう外国人の方たちを診る場合には、免疫抵抗力が落ちている場合は、私どもはすべて、いつもHIVの可能性も考えながら治療、診療しなければなりません。ただし、そういうことを考えることが、国籍や民族による差別を引き起こさないように常に十分に注意をすることが大事です。  これはフィリピン人の方ですけれども、こうやってぱっと見れば結核と分かりますけれども、自分がオーバーステイでいるものですから、こういう状態で病院に行かない。やっと、もうどうしようもなくてやってきたわけですね。一回やってくるとしばらく来なくなっちゃったんです。どうして来ないかといいますと、自分の国からこうやって結核のお薬を送ってもらって、自分で勝手に飲んでしまうんです。結局、この方はある程度は良くなったんですが、また後で悪くなる。このように、日本の統計に出ない、自分で勝手にお薬を持ってきて飲んでいるという結核の患者さんが結構いるんじゃないかと私はにらんでいます。  実際、私どもが結核とかエイズを見付けますと、保健所に届け出なければなりません。保健所はそれによって統計を作るわけですけれども、その統計から漏れ落ちる人が非常に多いということです。  これは、平成十九年十二月までの我が国におけるエイズ患者、感染者情報ですが、御覧のように、感染者では全体の二三・四%が外国人、特に女性を見ますと、六七・一%が外国人です。同じくエイズ患者は全体の二一・六%が外国人です。しかし、女性だけを見ますと、五六・四%が外国人ということになります。  ですから、日本においてHIVを撲滅するためのいろんな活動が行われていますけれども、こういう活動をするに当たっては必ず外国人に対する対応が必要です、宣伝とかですね。ところが、私どもが見ていますと、日本人に対する啓蒙活動は行われていますけれども、外国人に対する啓蒙活動というのは何か余り行われていないという印象があります。  インフォームド・コンセントと人権。人権に関しては、何をもって人権がある、人権がないと言っているのかよく分かりません、慣れるまでは。インフォームド・コンセントについても非常に厳しい考え方なので、インフォームド・コンセントが徹底できるように説明すべきですけれども、国においては、医療、健康に関する基礎教育、基礎知識がとても足りない人がいまして、こういう方に納得していただくのは難しいです。例えば、体温計、水銀体温計が読めないという人もいます。それから、国によっては非識字者、要するに字が読めないという人がいまして、こういう方に自分の国の文字で書いたものを見せてあげても分かりません。  外国人医療の難しさですが、先進国からやってきた方は日本医療を信じようとしない傾向にあります。すべてとは言いません。それは自分の国の文化の方が上だと思っているからです。逆に、発展途上国から来た方は、日本に行けば何でも治ると思っている方がいまして、これは私どもにとって悩みの種です。私も通訳を付けて広東人の方を一生懸命往診していましたが、あるとき非常に怒っていまして、何だと思ったら、私が行って一年たっても麻痺が治らないと言われたことがあります。そうじゃなくて、これはあなたの次の発作が起こらないために治療しているんですよということを納得していただくまでに時間が掛かりました。  国際化の社会での外国人医療の理想というのは、特別扱いするんじゃなくて、やはり同じ地域の中の住民として日本人外国人をどうやって診ていくのかということになると思います。  最後ですが、これは私が自分の地域、大和市に住んでいるフィリピン人の方々を集めて私どもの医師会で行っていることですね。夜になったらどうやって、病気になっちゃったらどこに行ったらいいのか、救急センターはどこにあるのか、なかなか行政の方からはお知らせが行きません。ですから、このようにフィリピン人の方だけ集まっていただいて、こうやって、日本医療制度はこうなっていますよ、大和市の医療制度はこうですよ、予防接種はこうですよということをやっているわけです。  これは、次の月にスペイン語を母国語とする方だけを集めてやはり同じようなことをやっています。それから、ベトナム人の方だけ集まっていただいて、このようにベトナム語の通訳をして行っているわけですね。  外国人患者を地域の医療機関で診ていくためにはいろんなことが必要です。医療機関が対応できない言語についてのバックアップ体制、諸外国の医療習慣について常日ごろバックアップしてくれる体制、外国人にも利用できる医療福祉制度についてバックアップしてくれる体制。この辺までは私どものセンターで何とかできると思っていますが、一番問題は、熱帯病とか輸入感染症などについて相談、バックアップしてくれる体制ですが、これは専門機関でないとできません。  外国人の診療に当たっての最大の問題点は、医学部の学生のカリキュラムあるいは看護学生のカリキュラム、研修医時代の研修カリキュラムの中に外国人の診療に関する講義が一切ないことですね。このために、外国人を迎える医師、医療機関の一人一人が、同じ人が常に迎えるとは限りません。迎える方がいつもトラブルに遭ってしまう、それがみんなでその知識を共有できない、これが一番大きな問題であるというふうに思っております。  以上です。どうもありがとうございました。
  14. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わります。  これより参考人に対する質疑を行います。質疑はおおむね午後四時をめどに終了させていただきます。  質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。  また、一回の質問時間は答弁及び追加質問を含めまして最大十分とし、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、質疑、答弁とも簡潔に行っていただくよう御協力をお願いします。  なお、質疑の際は、最初にどなたに対する質問であるかをお述べください。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  岡崎トミ子君。
  15. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 まず、三人の参考人先生方、ありがとうございました。大変厳しい、解決がなかなか見通しも難しい中で、各分野で御活躍をされていることに敬意を表したいと思います。  まず、手塚参考人にお伺いしたいと思いますが、私どもも共生社会というふうに言っておりますけれども、共生という言葉についてスローガン的に扱うことについて疑問を呈しておられました。やっぱり中身が大切なので、具体的にいろんなことをやっていかなければいけないということを感じましたが、先生が前にくださった資料の中でも、客人ではなく隣人としてみなしていくという考え方にも共感を得たところでございます。  以前この調査会でもコミュニティーについて、外国人コミュニティーの一員として受け入れていくという、そのことが日本の中でのコミュニティーの復活にも大変大事であるということについて学びまして、それ以後は考え方の基本の中に私も入れているところでございます。  子供たち教育の問題についてもずっと取組を続けているわけなんですけれども、この調査会でも議論をしてまいりましたけれども、外国人労働者にとって子供の問題はどういう意味を持っているのか、どういうことを親たちは考えていることが多いのか。それから、子供学校に通ったり、地域の活動に参加するということが契機となってコミュニティーの一員として参加するようになったいい例とかありましたら、まずお教えいただきたいと思います。
  16. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) 高齢社会高齢化率が二八%過ぎますと、その地域が三〇%以下でも二八%くらいになりますと、若い人たち高齢者、特に後期高齢者のケアができない、そういう問題がございます。こういう中に、外国人の方が実際に一緒に参画して隣人としてやっていくことができるかということになりますと、一番重要な根底は、岡崎先生御指摘がありましたように、子供の世界が本当にオープン・ザ・マインドで、心が開けてお互い同士の交流があれば親あるいは年寄りの世界も一つになるという、そういうコミュニティーづくり、三世代のコミュニティーづくりを、外国人を隣人として受け入れてつくっていくことが必要だろうということであります。  その点で、北欧型のスウェーデンやフィンランドでは、移民や難民が来ても三か月後にはもう国籍取ってもいいよ、それでそのコミュニティーで一緒に住んでやっていってくださいと、それで子供もどんどん保育園に受け入れる、保育園なり学校で受け入れられれば一緒にできるという、そういう世界が今のところ実は実現されていないんです。その点が問題だと思います。  よく言われることですけれども、日本人でもよその地域に御主人の配置転換などがあっていらした場合に、奥様方や子供たち、何が起点で地域に溶け込んでいくかというと、PTAとか地域の子供を媒介にしたそういう連携ですね。私なんかもドイツで、子供がそういう友達ができると、その地域の友達の親と本当に接することができるという、そういうところへ是非進めていくように地域の運動をしていっていただきたいなという具合に思っています。  それで、そういう方が将来地域を担っていく、いわゆる過疎、限界集落とか言われているところでも、若い人がいないところで、そういう方たちが二人でも三人でも入っていってくれるようなことがあればいいがなという具合に願っています。その点で、国際結婚を人為的に進めた地域がございますね、東北とか何かで。そういうところの今後のコミュニティーの形成ということで、今の御意見というのは大変参考になることではないかと思いますし、私も同感いたします。  よろしゅうございますでしょうか。
  17. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 ありがとうございました。  石河参考人にお伺いしたいと思います。  ソーシャルワーカーの仕事は人に働きかけ、環境に働きかけるという大変にきめの細かい、愛知県の中での人材育成などございましたけれども、これは地域的なことなんですけれども、本当は全国的に広げていくためには大学教育の中にこういうものがある、自治体だけではなくそういうことも重要なのかなというふうに思いますけれども、そういう可能性についてはいかがでしょうか。
  18. 石河久美子

    参考人石河久美子君) 全くそのとおりだと思います。  例えば、学校教育の中でということで社会福祉の教育ということを考えてみますと、やはり障害者福祉、高齢者・児童福祉という日本人を対象とした福祉ということがどうしても中心になってしまっていて、なかなか多文化の視点というものが社会福祉の教育の中でも盛り込まれるということが困難な状況で、私はこういった分野を専門にしていますので、私自身は社会福祉方法論というどの分野にも共通する方法論の教員をしているんですが、そういう中に意図的に外国人の問題を入れると学生は非常に関心を持って、初めてそこで、ああ、外国人も自分たちのサービスの対象となる人たちなんだということを知るという状況なんですが、たまたまそういうちょっと変わったことをやっている教員に巡り合わない限り、まだその実態として、学生たちは自分たちのサービス対象者は日本人だというふうに思って卒業をしてしまうという実情がございます。  ソーシャルインクルージョンという考え方が最近新しいソーシャルワークの概念として社会福祉教育の中で使われるようになって、その中でホームレス、障害者、そして外国人などということで、一応外国人などということでそこには入ったんですが、それ以後というのが余り進展がなくて、例えば社会福祉士という国家資格があるわけですが、その中にそういうソーシャルインクルージョンという言葉だけではなくて、やっぱり外国人の問題も一つ重要な点として盛り込まれるようになっていけば少し変わるのではないかというふうに思っております。
  19. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 これまでの御経験の中で、子供が言わば触媒になって社会関係がうまくいった、そういうような例、可能性があればお教えいただきたいと思いますけれども、なかなか教育の問題や何かでも、少なからぬ子供たちがうまく学校社会の中に適応していないというのが問題になっておりますけれども、うまくいった例というのはあるだろうというふうに思うんですけれども、そういう良い例というのは、これまでに挙げられるものがありましたらお願いしたいと思います。
  20. 石河久美子

    参考人石河久美子君) 子供が例えば不登校で、学校に適応するようになったというような事例ということでしょうか。  そうですね、先ほど申し上げましたように、ソーシャルワーカーが介入することによって家庭状況などを学校側に代弁をする、母親が外国人であったりすると状況が伝わらないこともありますので、そういったときに母親の状況を代弁して学校により理解を示してもらって少し適応が可能になったというような事例はございます。
  21. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 ありがとうございます。  小林参考人にお伺いしたいと思います。  外国人を診療するということは地域医療の一環であるというお考え、大変共感をいたしました。本当に御苦労をして、一つ一つ問題点についてそこから新たな診療の方法を考え出されてこられたAMDAの活動にも敬意を表したいと思います。本当に社会サービスが届けられなければならないところに届いていっていないという現状がたくさんあるんだなというふうに思いました。  それで、先ほど石河参考人の方から言われた問題の中に、なかなかその場所場所だけでは解決できていかないんだというようなことがありまして、AMDAは、また医療は自分たちの中でやっていかなければならないというふうなお考えはございますけれども、それでもやはり自治体に向けての行政の在り方ですとか、保健とか医療とか福祉専門者に対するそういうことに関しての何か御意見ございますでしょうか。もう少し連携をしていきたいとか、そういう点に関して。
  22. 小林米幸

    参考人小林米幸君) やはり一番の問題は、先ほどスライドの中で申し上げましたように、何を行うにしても、この地域の中に日本語を理解できない人たちがいるんだということを常に頭に置いていただきたいですね。これは常にこのことが問題になりまして、例えば今非常に問題になっている後期高齢者医療もそうですけれども、診察券が変わりましたですね。あれももうベトナム人やカンボジア人の方ですと、日本にいらっしゃって七十五歳以上の方がたくさんいます。そういう方々が、日本人も分かりませんけれども、彼らに対する説明も何もできていないと。そうすると、それに限りませんけれども、すべてのことがやはり一つ一つ、こういう場合はどうしたんですかと聞かないと役所が対応してくれないということが一番の問題ですね。
  23. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 ありがとうございました。
  24. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 次に、礒崎陽輔君
  25. 礒崎陽輔

    ○礒崎陽輔君 自由民主党の礒崎陽輔でございます。今日は参考人皆様、お疲れさまでございます。  私は一括してお聞きいたしますので、後ほどまとめて回答をお願いしたいと思います。  まず、手塚参考人にお伺いをいたします。  年金制度につきましては、もう返金をするのはけしからぬという話はさっきよく分かりましたけれども、ただちょっとまだ、時間がなかったので、年金制度をどうするかという全体像は余り伺っていなかったような気もするんですが、外国人を対象とした場合の年金制度の在り方、例えば今、日本の場合は満期が二十五年というのが非常に長過ぎる、これを例えば十年にしろと、そういう意見もありますし、先ほどの返金問題、もう御主張は分からないでもないんですが、これもしないと全く加入しない人がまた増えるんではないかという懸念もあるんですが、そういうことも含めまして、外国人を対象とした我が国の年金制度、今後どうあるべきかと、ちょっともう一度全体像をお伺いさしていただきたいと思います。今のが手塚参考人。  次に、石河参考人にお伺いいたします。  多文化ソーシャルワーカーの動き、これは大変すばらしい活動だと私も思います。是非これは、今後拡大していくことが私必要だと思うんですけれど、聞いてみますと、何か職業というよりも資格のような話ですね。したがって、私、全く違う分野なんですけど、救急救命の分野の研修のボランティア団体の昔は役員をやっていたことがあるんですけど、これはまさにボランティアで行っておりまして、かつ資格なものですから経費はみんなからいただいておるんですね、負担金を。これは、ちょっとまず負担金いただいているのかということも少し聞いてみたいと思いますけれど。  今回はこれ愛知県の主催のようでございますけれど、今後こういう活動をやっていくためにはやっぱりきちんとした団体といいますか、こういう資格、最終的に国家資格になればもっといいのかもしれませんけど、それまでの間のやはり民間資格を推進する法人であるとかあるいはNPOのようなもの、そういう活動に持っていく必要もあるんではないかと思うんですね。それはもちろん民間主導でやるのがいいのか、もっと公的主体が主体になるのかという二つの考え方、私あろうかと思いますけれど、そういうような将来の発展の、先ほどの質問と少し重なりますけれど、そういったような方式と発展の方向についてどのような御意見があるか、少しお伺いをいたしたいと思います。  最後に、小林参考人にお伺いをいたします。  本当にこの活動、大変だと思います。だけど、これだけ外国人が増えた以上、我が国も何とかしてそれを乗り越えて外国人に対してもきちんとした医療が提供できるようにしていかなければならない、そのための御尽力いただいていることには本当に敬意を表したいと思います。  特に私がお伺いしたいのは、やはり健康保険の未加入問題についてお伺いしたいと思います。  先ほどの最後の方のまとめでは、これはもう啓発するしかないというのが一つの御結論だったように承っております。啓発も、今、後期高齢者医療問題がお騒がせをいたしておりますけれど、日本人に対する啓発もきちんとできないんだから、もう外国人に対するのもなかなか難しいとは思うんですけれど、やはり啓発もやり方があると思うんですね。どういうところにポイントを置いて外国人皆さん健康保険にきちんと加入していただくようにお話をしたらいいか、もしそういう点について御示唆いただけることがあればお伺いをしてみたいと思います。  以上でございます。
  26. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) 礒崎先生がおっしゃられた二十五年の年金保険料を掛けないと年金もらえないという日本の制度というのは非常に長いと思います。  それで、結局、年金通算協定というのは、自分の国で年金に加入していた分について、そのファンドを、日本なら日本永住するということならば移し替えるというそういう協定なんですね、実質的には。そういうことですから、やはり相手国、受入れの国、外国人日本に入ってこられるその母国がきちんと年金制度がしているところですと、どんどん年金通算協定をこれから増やしていくということは日本の場合に必要だろうと思う。現にアジア諸国等々から大量の移民を受け入れておりますカナダでは、多分もう三十か国以上年金通算協定をしていて、それで、例えば台湾なら台湾から来る方、香港なら香港からという方たち年金通算協定によってファンドを持ってきて、その年限も重なると、こういうことであります。  問題は、発展途上国の場合に年金制度が整備されておりませんから、結局、日本に入ってきたときにほとんど年金を持っていないと。日系ブラジル人の場合に、恐らく調査をしてみますと、農業関係から入ってこられる方、年金がございません、そもそも母国で。そういうことになっていますから、年金通算協定でも何でもないんです。もう何にもうまくないと。そのときに、やはり三十五歳で入ってきたときに二十五年いれば六十年ですけれども、現在、一九八九年の入管法改正以来入ってきた方の一番長く在留しておられる方は十五年から十九年ぐらいに、その前後から入ってきておりますから、なっています。この方たちがきちんと年金日本の中で積んでいてくれればよかった、あるいは雇主さんがちゃんと厚生年金に入っていればよかったんですが、ほとんど入っていないという、こういう問題を今もって抱えているわけでして、それは雇用制度にかかわる問題である。  それで、出入国管理の点で申し上げますと、例えばドイツは、外国人が入ってきたときに、例えば日本から行った場合でも、これは州によって違うんですけれども、こちらの参考人でこの前出られた方も、ミュンヘンに行ったときに、バイエルン州は一番その点のコントロールがきつくて、日本の共済組合に入っていたけれども、向こうではそれを信用しないから、結局向こうに行ってから旅行者保険に家族四人分入ったと、入らせられたという、そのくらいきついコントロールをしております。  したがいまして、日本に来られる方たちというのはますますそうなんですが、三年ぐらいの出稼ぎのつもりでほとんど来られますから、そういう方たちについては、日系人なんかの場合には、恐らく年金はもう将来日本でもらうつもりがないという具合に思っているんですけれども、現実はもう十数年間日本にいて、それで二十八万人ぐらいいるわけですが、その方たちが無年金になる可能性が、永住権を取って日本にいて、その点の将来予測を考えておく必要があるだろうと。  もちろん、そう言われれば、日本の若者、国民年金掛けないで無年金状態になる可能性あるよと言われれば、それは日本も大変だなということになりますけれども、しかしやはりその点は、出入国管理やあるいは日本に受け入れるとき、さっき申し上げましたけど、子供教育することや社会保障年金の問題それから医療保険の問題、これらを永住権をきちんと取っていただく場合にはやはり確認する必要があるんではないかという具合に考えております。  それからもう一つ、先ほど申し上げましたように、移民を大量に受け入れた場合に、ドイツ報告では、御主人が働いて奥さんがいわゆる年金を掛けていない場合は二人分はカバーできないと、三十年間働いても、という話をいたしました。  その点で、もう一つの観点でよく言われるのは、移民の方たち子供をたくさん産んでくれるから少子化に対して歯止めが掛かるだろうということでしたけれども、ドイツ移民調査会報告では、移民の第一世代はたくさん子供を産みますけれども、第二世代については全くドイツ人の家庭と同じ出生率になる、少子化は同じように進むという、そういう調査報告、これはもう大量の外国人の方を調査をした報告ですが、そういうこともございます。御参考までに。  よろしゅうございますでしょうか。
  27. 石河久美子

    参考人石河久美子君) 多文化ソーシャルワーカー、職業か資格かという御質問でしたけれども、例えばこの愛知県の養成講座に関しましては、修了者、これは全員外国人支援に携わった経験をある程度持っていた人たちなんですが、修了証は出していますが、資格は出していないんですね。それをこの講座をつくるときに検討委員会というのでいろいろ協議をしまして、資格という言葉もちょっと出たんですが、最終的に修了証ということに落ち着きました。  その背景としましては、報告でもお伝えいたしましたけど、これは最低限の四十二時間で、これだけでは専門性が不十分であるということで、ちょっと専門的な資格にはならないのではないかということと、それから身分が不安定な仕事であるということ、あとは、もうそういう多文化ソーシャルワーカーというポストそのものがほとんどないということで、愛知県が初めて二人、しかしたった二人しかいないということで、これは資格ということで先行してつくってしまっても、資格を取ったけど実際にそういうポストがないというのでは問題ではないかということが考えられました。  例えば、アメリカの場合ですと、こういった多文化ソーシャルワーカーというのは、移民や難民のソーシャルワークの支援の中で非常に活躍をしていて、バイリンガル・バイカルチュラル・ソーシャルワーカーというふうに言われて、先ほど申し上げた当事者の多文化ソーシャルワーカーというのが非常に活躍しているんですね。日本に比べて外国人人たち移民として定住をしていくので、その人たちが大学院に行ったりして資格を取るということでやっているんですが、これ非常に日本に比べると圧倒的に数も活躍しているんですが、特に資格というものは持ってなくて、むしろやっぱりこの領域にはそういうソーシャルワーカー、特に当事者が必要だという社会的認知の下に雇用されているという状況なんですね。  ですから、最終的には、こういう多文化ソーシャルワーカーの資格というのは必要になってくるかと思うんですが、もう少し実際に多文化ソーシャルワーカーのポストが増えて、そして身分も安定して、少し専門的にやっぱりこういう仕事が必要だという状況になったところで資格とした方がいいのではないか。民間資格にせよ公的資格にせよ最終的にはそういう資格になっていけばいいと思うんですが、どの時点でそういうことに踏み切るかというのはまだちょっと分からないというふうに私は考えています。
  28. 小林米幸

    参考人小林米幸君) 健康保険の未加入をどのようにしたら少なくできるかということですけれども、健康保険には大きく国民健康保険健康保険、いわゆる社会保険がありまして、各々入れる資格というのは違いますけれども、おおよそ考えてみますと、まず入っていない人の一つはオーバーステイの方ですね。このオーバーステイの問題は、結局、私どもがどうこうして分かるというものじゃありませんので、これは国としてオーバーステイの人にどう対していくかというその大本がなければ、私どもでどうにかなる問題ではありません。  それから二番目に、入れる資格があるのに入らないという人がいます。その中にも二つありまして、先ほどお話ししたように、自分の国で民間保険に入ってきたから、ここでは入れる資格はあるけれども、でも入らないという人。もう一つは、現地の、自分の母国でも保険に入っていないし、ここでも、日本でも入る資格があるけど入っていないという人たちですね。  彼らに入ってもらうには、やはり日本健康保険や国民健康保険に入るメリットが一体何だということを説明するしかないと思います。特に欧米人の方は、自分の国で入ってきたからいいよという方が多いんですけれども、それは彼らが入っている保険によって全部内容が違いますので一概には言えませんけれども、例えばお産のときにその保険使えない、あるいはこれぐらいの金額までしか使えないという制限がある。ところが、日本の国民健康保険健康保険というのは、例えば心臓の手術しても何しても、高額医療費助成制度というのがありますから金額が少なくて終わる。要するに、小さいけがならいいんだけれども、大きい病気をしちゃうと、あなたはこういうちゃんと入っていないと大変ですよということをやはりきちんと分かってもらうしかないんです。  その次に、先ほど議員が場所とおっしゃったので、僕は場所ってどこの場所かなとかばかなことを考えたんですけど、実際そうでして、こういうパンフレットとかいろんなものを行政が作っても、なぜか役所に置いてあるんですね。役所に人なんて来ないんです。どうして銀行とかスーパーとか、彼らが立ち回るところに張ってくれないのかと思うんですね。  これは銀行にしても行政にしても、私もNPOを運営していますけれども、NPOがそういうチラシを作って張ってくださいと持っていったら、私も持っていったことがあります、ある大手の銀行に、断られました。それはなぜかというと、それは私が銀行員って考えれば分かります。あなたのところの組織のを張ったら、ほかから持ってきてこれも張ってくれと言われたらどうするのということなんですね。だから、内容によって差別してくれとは言われませんから。逆に言えば、行政が言えば必ず置いてくれるんですよ。何度も私は行政の方にそれをお話ししています。でも、どうして置かないんだろう。結局、作っても何か役所に山積みにしてある、たまに行く人しか取ってこない、それでは何の意味もないです。  ですから、作ったものを実際に彼らに届くような、もうちょっと知恵を働かせたら分かるかなということをやっていただきたいと思うんですね。  以上です。
  29. 礒崎陽輔

    ○礒崎陽輔君 ありがとうございました。
  30. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 次に、山本博司君。
  31. 山本博司

    ○山本博司君 公明党の山本博司でございます。  今日は三人の参考人皆様、大変に貴重な御意見を聞かせていただきまして本当にありがとうございました。  それぞれお聞きをしたいと思います。時間によっては二人になるかも分かりませんですけれども。  まず、小林参考人にお聞きをしたいと思います。  外国人に対する医療の様々な現状と問題点ということで、特に行政が、市町村を含めて国が様々なことをやらないといけないということを大変強く感じました。AMDAに関しましては、私どもの参議院議員の谷合さんがずっと活動されていらっしゃいまして、大変私も身近に感じております。  その中で、国が予算と人を投入すればいいんだということの中の一つに、インターネットを使った通訳ということの部分でちょっとお聞きをしたいんですけれども、私も離島等を回りますと、映像・画像システムをインターネットで活用していけばもっともっと良くなるというようなことも感じておるんですけれども、具体的に、医療機関にとってこれを開発するとしたらお金が高いという、もっと具体的にどういう形で国等が援助していただければいいか、この辺りを少しちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
  32. 小林米幸

    参考人小林米幸君) まず、このインターネットの通訳がとても今私は便利だと思っているのは、例えば、先ほど医療通訳の養成がとても大変だというお話をしました。レベルが大変なんですね。本当に、例えばタイ語の通訳とか特殊な言葉の通訳、英語はともかくとして、スペイン語にしても、そういう方が一つの市町村あるいは県にたくさんいるわけがないんです、それだけできる人が。ということは、まあ東京じゃなくても構いませんけど、全国に一個どこかにあれば、それを電話あるいはインターネットで結べば全国で共有できる。ところが、市町村、自治体は、都道府県もそうですけれども、例えば私の住んでいる神奈川県ですと、神奈川県民の納めた税金は神奈川県にある団体じゃないと使えないということで、じゃ神奈川県、埼玉県、千葉県、同じような組織たくさんつくるんですかという話になって、まるで無駄が多いんですね。ですから、こうやってインターネットで中央に一つあればやっていけるんじゃないかと僕は思っています。  先ほど質問いただいた件ですけれども、結局、ハイビジョンになりますと一つ二百万ぐらい掛かりますか、それからサーバーの維持費とか相当な金額が掛かります。ハイビジョンではないにしても、今大手の会社ですと、ハイビジョンではない、インターネットで持ち歩ける大分小さいのができていますけれども、それにしても金額的に一組四十万ぐらい掛かります。  ただ、そういうものをある程度援助していただくことによって、たくさんの地域の医療機関で外国人の患者さんが普通に診ていただくというシステムをつくることが可能ではないかというふうに本当に思っています。そのトータルの金額は僕は分かりませんけれども、これはハイビジョンを見ますと、実際にレントゲン写真とかを見ますと、はっきり見えます。インターネットですので一緒にレントゲンも載せることができますので、ですから患者さんの顔も、例えばこういうのは子供の、今小児科医が少なくなっていますけれども、小児科のへき地医療にも使えると思うんですね。例えば、お子さんの顔を見て顔色が悪いとか手を見せてくださいという、そういう細かいところまで実際に見えます。  ですから、こういうシステムを何とか、決してすべてを国にお金出してもらおうと私は思っていませんけれども、やはりそういう援助をしていただける方向に進めばもう少し良くなるんじゃないかなというふうに思います。
  33. 山本博司

    ○山本博司君 ありがとうございました。  次に、手塚参考人にお聞きをしたいと思います。  外国人受入れ社会保障ということで、外国人永住を前提とした統合策ということで様々なお話をお聞きしましたけれども、外国人の住宅の確保ということに関して、特に海外の、EU諸国を始めとした事例で、日本が現実的に生かせる事例、一体どういったものがあるのか、この辺をちょっとお聞かせいただければと思いますけれども。
  34. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) 私どもも海外にしばらく住む場合に住宅が一番苦労するわけでありまして、ただ、日本の今までのところ日系人の方なんかに対する処遇で、いわゆる県営住宅、都営住宅、市営住宅などについては地方自治体がとても一生懸命やっていて、外国人の入居率が五〇%を超えるような地域が、そういう団地もあることは先生御案内のとおりだと思います。  ヨーロッパやアメリカの方がむしろ住宅問題は厳しくて、例えば私が家族で行ったときは高い住宅しかないものですから、市営住宅や何かに相当するゾチアールヴォーヌングという社会住宅というのがあるんですが、それに入れないかといって市に相談に行きましたら、いや、とてもあなたのあれじゃ駄目ですよという具合に一蹴されたことがございます。  そのように、住宅については、ヨーロッパ諸国は自国民と同じように、所得階層や何かによって社会的な住宅というものを一緒にそこに入れるようにしていると。それから、住宅のあっせんもやっている自治体もございます。ですから、それらの問題と同時に、一番大きな問題は、雇主がきちんとした住宅を確保してくれることがやはり今後の外国人を受け入れるときの大事な問題になるのではないかという具合に考えております。よろしゅうございますか。
  35. 山本博司

    ○山本博司君 最後に、じゃ石河参考人に、大変多文化ソーシャルワーカーの必要性というのはよく十分理解できたんですけれども、その中で、まだ愛知に二人といいますか、日本にはまだまだこれからだということで、身分保障等の問題で、海外でどういう形でもってこういった身分保障をされながらいい事例という形で広げていらっしゃるのか、その辺りのところの部分で、今後日本でこういったものを、身分保障も含めた形で進めていく上でのそういう海外での事例をちょっともし教えていただければと思いますけれども。
  36. 石河久美子

    参考人石河久美子君) そうですね、私の場合はアメリカでソーシャルワーカーをしていたので、アメリカの事例が一番私にとってなじみがあるんですけれども、アメリカの場合ですと、やっぱり移民の人が圧倒的に多いので、そういう移民を専門とした社会福祉機関ですね、そういったところがあるので、そういったところで専門的なソーシャルワーカーとして雇われるという、そういう事例が多いんですね。  ですから、日本の場合はまだそういった、例えばインドシナ難民の定住とかそういったときはちょっと別だったと思うんですが、例えば、幾らブラジル人の人たちが多くなったといっても、ブラジル人の人たちを専門とする相談機関をつくる、特に公的につくるというのはちょっと現実として非常に難しいと思うんですね。あとは、ただ、アメリカの場合は、NPOが非常に活発に動いているので、そのNPOの中で草の根的な外国人支援をしていた団体がどんどん発展していって、そしてそういう多文化ソーシャルワーカーのような人たちを十人ぐらい大規模に雇ってやっていくとか、そういった形になっているというのが圧倒的です。  ですから、大体は外国人のそういう移民人たちの支援というのは、どちらかというとアメリカの場合はそういうNPO的な活動とか草の根的な活動から発展していって、相談機関が発展していって、専門的なソーシャルワーカーが安定した雇用になっているというケースが多くて、愛知のように、こういう公的な機関がトップダウン的にソーシャルワーカーを雇用してやったというのは、ちょっと日本の場合はかなり逆だなというふうに私は思っています。
  37. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 次に、紙智子君。
  38. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  ちょっと今の質問の関連になる形なんですけど、最初に石河参考人にお聞きしたいんですけど、今の話の中で、要するにNPOから出発してということなんですけど、行政の位置付けというか、それがどういうふうになっているのか。  それで、身分保障ということでは、安定的な雇用に結び付いているとおっしゃったんですけど、その身分保障のところも含めて、どんなふうに行政とのかかわりというのはなっているんでしょうか、その辺お分かりでしょうか。
  39. 石河久美子

    参考人石河久美子君) アメリカでですか。
  40. 紙智子

    ○紙智子君 はい。
  41. 石河久美子

    参考人石河久美子君) アメリカの場合は、行政との兼ね合いでの身分保障というのは余り関係がないのではないかと思うんです。民間の団体の中で雇用されているという形です。
  42. 紙智子

    ○紙智子君 はい、分かりました。  それじゃですね……
  43. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) ちょっと待ってください。速記を取っていますので、質問者も答弁者もちゃんとやってもらわないと、速記ですから。よろしくお願いします。
  44. 紙智子

    ○紙智子君 それでは、今度、三人に同じ質問をいたします。  それで、社会保障制度から国籍条項がなくなったとはいっても、実際に間接雇用者とか研修生とか興行ビザの入国者とかそれからオーバーステイとか、多くの外国人が制度の網の目からこぼれてしまっているというのがあるわけです。そのために、子供たちも含めて高額な医療費の自己負担ができないために病院に行けないで命を落とすという事態も生まれていると。  それで、未熟児とか障害児の場合は人道的配慮ということで、在留資格があるないにかかわらずこれは日本人と同じ制度を利用できるんだけれども、そのほかの人については、在留資格がない子供たちは親が健康保険に未加入だという場合は受けられない、受ける権利が保障されないということがあるんですよね。  それで、移住労働者を支援する団体ですとかあるいは関係者から出されているんですけれども、せめて緊急に医療が必要な場合、在留資格のあるなしにかかわらず生活保護を適用し、急迫保護としての医療の扶助を適用をできるようにできないものだろうかと、こういう声が出されているんですけれども、これについての御意見をお三方からお願いしたいと思います。
  45. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) まず、御質問の点で、日本に入国して在住している外国人の場合に限定をさせていただきます。  一般的に、世界的にどの国でも、入国をして、不法入国でもそこの国に行けば治療ができるという国は世界中ございません、無料で治療ができる。かつては、面白い話ですけれども、英国のナショナル・ヘルス・サービスは、御案内のとおり、めがねとか歯とかそういうものも治してくれたというので、ヨーロッパに行った留学生がイギリスの方にドーバー海峡を渡って治してもらうというようなことはありましたけれども、そういうことも今は厳しくなっているようであります。  したがって、言いましたように、日本に入国した旅行者も含む外国人について、これは経緯がありまして、御案内とは思いますが、外国人が非常に医療費の不払が多いということが問題になりました、一九九〇年代でありますが。そのときに、いろいろ考えた末、例えば東京都は行路病人を助けるという、いわゆる行き倒れのですね、それを適用して在留資格のあるなしにかかわらず助けるということをいたしました。それから、神奈川県を筆頭に幾つかの県では、いわゆる重篤、命に差し障りのあるような者については県が最高百万円から二百万円ぐらいまでの負担をするということで予算を作りました。  しかしながら、ある時期を経まして、余りに、特に在住している外国人の方が医療保険に入っていないために不払が多くて、緊急医療の場合にはある程度カバーすることできたんですけれども、その在住している方が医療保険に入っていなくて重篤な病気になる。若い方が働きに来ていますから、自分は病気にならないと思っているわけですね。ですから、重篤な病気になったときに、例えば腫瘍なんかの場合には急速に進行しますから、若い方はそういう場合にどうかというときに、今のような財政状況ではそれはすべて財政がパンクしてしまうという、そういうことがございまして、その点が今後の私ども日本外国人に国を開いてやっていく場合にどのような予算措置があり得るのかということであります。  したがいまして、日本に入ってきて、働くところがないから生活保護というのは当面はちょっと御無理な、もしそういう御趣旨だとすればですね。
  46. 紙智子

    ○紙智子君 子供の場合もですか。
  47. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) 子供についてはそれはできると思います。児童福祉法等々で措置をとっていくことが大事なのではないかと思います、子供についてはですね。よろしゅうございますか。
  48. 石河久美子

    参考人石河久美子君) そうですね、私などはソーシャルワーカーとして個別の事例を見ておりますので、やはり緊急の状況に関しましてはそういった特別な措置が行われる財源というものが確保されるといいというふうに考えます。  あと、先ほどの紙先生の質問に関しまして補足してもよろしいでしょうか。
  49. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) はい、どうぞ。
  50. 石河久美子

    参考人石河久美子君) 先ほどの行政との兼ね合い、ソーシャルワーカーの身分に関する兼ね合いということですけれども、日本の場合はアメリカと非常に状況が異なって、愛知の場合ですと、嘱託ですけれども行政の職員として多文化ソーシャルワーカーが雇用されたという違う状況なんですが、やはりこういう専門職として行政の中で雇用されていって今後必要な仕事を担っていくと思いますので、嘱託とか任期付きではなくて、やはりきちんとした長期の正職員のような仕事として就ける、そういった体制が必要で、そういったものがないとやっぱり資格をつくってもうまくいかないんではないかというふうに考えます。
  51. 小林米幸

    参考人小林米幸君) 今の生活保護の適用に関しては、手塚参考人と私も同じように考えております。都道府県によっては行路法があるところもありますし、それから児童福祉法があるところもあります。  今、子供についてに限定のお話でしたけれども、大人についても言いますと、例えば不法滞在の方が病気になってしまってお金が払えないケースというのは山ほどあります。私が今知っているだけでも、入院している方は結構あります。ただ、いろいろ例を見ていきますと、結局私どもも、お金のないところで、なおかつ生活基盤がなくて、なおかつ言葉が分からないところで医療を行うということが、医療を行う現場の我々にしてもとても怖いんですね。  そういうことを考えますと、私はいつも患者さんとお話しするのは、これはいったん自分の国へ帰るべきなのかどうかということをやっぱり考えます。ですから、強制的に帰すなんということは私はそういう権限がありませんので、患者さんとよくその状況をお話をして、そして、極端に言えば飛行機にちゃんと乗れる人はまだいいんですけれども、ぐずぐずしていると乗れなくなってしまって、もういつまでも入院せざるを得ない方がいます。そうなりますと、もう医療費を垂れ流すことになりますので、そういうふうに乗れるうちにそういうことをお話をして、納得して自分の国へ帰った方は結構たくさんいらっしゃいますですね。  それから、外国人でも、不法滞在の人も含めて、命の公平さを考えてすべての制度を公平に受け入れるというのは理念としては間違っているとは思いません。ただし、現状をいろいろ見ますと、例えば今問題になっておりますのが、日本人でもありますけれども、国民健康保険の保険証には顔写真がないものですから、それを十何人で使うとか、ですから、どこかで入院しているはずの人がこっちに来ているとか、私どももそういうセンターから相談を受けて、これは大ごとになっちゃって怖いけどどうしようという相談を受けたことがありますし、それから、生活保護の方の医療券というもの、これは医療券を持っていきませんと医療機関では受けてくれませんけれども、その医療券を仲間の人に、不法滞在でない人にお金で、現金で売ってしまうという人も、結局あれも顔写真が付いていないからなんですね。  ですから、ちょっと話がずれましたけれども、国民健康保険健康保険のお金が非常にないという中で、そういうところの取締りというか、枠を掛けられないものだろうかということも常にやっぱり頭の中にはあります。  以上でございます。
  52. 紙智子

    ○紙智子君 あと、そうしたら、もう一つだけ手塚参考人にお聞きしますけれども、外国人労働者受入れの国としての日本西欧諸国の中で、例えばスウェーデン、オランダの話もありましたけど、統合に向けての諸方策の担い手が多数存在しているということで、政府や自治体や住民や市民の支援と並んで、受益者としての産業界や企業の貢献ということを最初にいただいた資料の中で挙げておられます。日本においても、外国人の就労において利益を得ている産業界の受益者負担、企業貢献が最大の課題ということを指摘されているわけですよね。  スウェーデンとかオランダでは、具体的には産業界とか企業がどういう役割を果たしているのか。そして、日本での産業界の受益者負担の在り方ということについてどうあるべきだとお考えでしょうか。
  53. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) スウェーデンとオランダからは専門家が参りまして、三月の末に静岡で国際シンポジウム、これは外務省が主催してやっていたものですが、地方で初めて行いました。そのときにスウェーデンとの話合いで一つの違いが出てまいりました。  一つは、スウェーデンの場合には国民の公的な負担率が七五%とか、そういう負担率ですから、国や自治体がそういうことをカバーするというのが通例であって、産業界ももちろん税金を納税しているのでそれでやるというのが一つの考え方。それで日本の場合には、私どもはこの十数年間、受益者負担ということを産業界は考えてほしいということで、私も日本経団連に参りましてそういうことを申し上げました。それで、外国人に関して、参考人に日経連の専務がいらっしゃいましたからお話あったと思いますが、一回目のときにはそういう観点がなかったんですが、最近の外国人のあれにつきましては、経済界はきちんとNPOなどを支援するような、そういう経済的な支援をするようにしたいという方向を打ち出しております。  事実、外国人の方を、特に日系人などを受け入れて利益を上げているのは自動車産業や電機産業にほかならないわけですから、その利益を上げている中で起きている問題を国や自治体に全部カバーしろということは成り立たない論理でありまして、そのことは私どもも十数年間言い続けてきたことであります。  それからもう一つ、ちょっと補足的にボランティアとの関係で申し上げますと、高齢化社会になります。それで、後期高齢者も含めて働ける方たちには働いていただくという、そういうことを先ほど申し上げましたけれども、やはりヨーロッパなどでは部分就労というんですか、ジョブシェアリングというんですか、一つの八時間の仕事をするのに四時間プラス四時間で働いて、それで年金もある程度補充してやるという、そういうことで高齢者がどんどん仕事をするように持っていこうということになっています。  日本の場合も一つの生き方としては、多くの元気な高齢者がボランティアとして参画することは可能だと思うんです。ヨーロッパなどでは、特にドイツやオランダではそうですが、例えば退職した教員が自分の学校区、小学校の先生ですと、そこにいる、例えばドイツなんかはアウスジードラーといいまして、日本のいわゆる残留中国人と同じようにドイツ系の旧ソ連にいた人たちは、ソ連時代には御案内のとおりドイツ語は一切話してはならない、宗教の自由もないという方たちが引き揚げてきた。そういう子供たちの面倒をボランティアで見ているというようなことを自治体が一生懸命オーガナイズして、NPOの方たちを組織しているという実情がございます。  日本の場合も、それだけの人材はたくさんいると思います。私どもの年代が六十五を過ぎますと、年金生活に入りますと、楽しいことは何でもありで、毎日楽しいことやって、ゲートボールやって旅行をして楽しくやっています。だけれども、心の中は非常に不満だそうです。やっぱりある一定のNPOなり、一定のボランティア活動、特に外国人なんかに対する、外国の経験のある方は非常に増えていますから、そういう方たちの力を借りるように持っていくというのは可能だと思います。大体の市町村では、特に都市型のところでは、いろんな国に経済界から出ていった人たちが戻ってきていますから、そういう人たちが対応できるようなネットワークづくりができると思います。現に、最初に千葉県ではそれを提案してやったことがありまして、二十八か国くらいの対応が可能だということがございました。  以上でございます。
  54. 田名部匡省

  55. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 民主党の津田弥太郎です。今日はありがとうございます。  今日のテーマは外国人受入れ社会保障ということですが、この調査会で議論している大本の外国人労働者受入れそのものについてどう考えるかということについて少しお聞きをしたいと思います。  手塚先生のお考えというのは、受け入れる以上はきちんとやらなきゃ受け入れるな、中途半端なことはやるなというような御意見のように受け止められるんですが、我が国の場合に、外国人労働者受入れ、特に、専門的な職種についてはいいんですが、いわゆる単純労働、出稼ぎという部分では、御案内のように、日系ブラジル、ペルーの方々、これが一つの類型、もう一つがいわゆる技能研修という形での受入れ、この大きく分かれて二つあるわけですけれども、御案内のように全然性格、内容が違うわけであります。日系ブラジル、ペルーの方々は期限がない、一方で技能研修の方々は三年という期限があるわけでありまして、このことをめぐって国会の中でもあるいは経済界の中でも様々な議論が今繰り返されているわけでありますが、率直に言って、今我が国の非常に多い外国人労働者の実態の中で、この日系ブラジル、ペルーの方々の対応、特に四世の問題がいろいろ議論になっておりますが、そのことについて手塚先生はどうお考えか。  一方で、三年という期限を付けて、一応EUの中のローテーションシステム的な形に少し似ている部分もあるかもしれませんが、この技能研修の部分についてどうお考えになっていらっしゃるか、御意見をお聞きしたいと思います。
  56. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) 私は外国人労働者を受け入れるなということは一遍も言ったことございません。むしろ、大胆な提言をするとするならば、日本はある意味での移民受入れ国家にならないと駄目だということであります。  それで、先ほどちらっと申し上げたんですが、日系ブラジル人は結局百年を経て、二世、三世が来た方は、日本に来た戦後最初に受け入れられた移民なんですね、日本永住権を持ち。それで、この方たちが遭遇している困難というのは、彼らのお父さんやお母さんがブラジルに行って、あのジャングルの中で土地を切り開いて、子供のいわゆる寺子屋をつくって日本語の教育をして、高等学校に行くようになるとポルトガル語の勉強をしなくちゃいけない、それで受験をしなくちゃいけないという大変なことを経ながら二世、三世がやってきたことを、またこちらに来てやらざるを得ないという状況なんです。それに対して日本政府はきちんとその手だてができているんですかということであります。  例えば、技能実習制度について私は時間がなくて先ほど申し上げませんでしたけれども、企業が受け入れた技能実習制度の技能研修の方は、例えばトヨタは、GMと一緒にやるときにはGMから大量のアメリカ人の労働者を連れてきてトヨタの工場でトヨタ式の生産方式を学ばせて、向こうに行って向こうのNUMMIという合同の工場をつくりました。  それと同じように、どんどんどんどん企業でも自治体でもそういう方たちを受け入れて、それである以上は責任を持って、受け入れた以上は三つのこと、家族で必ず来ることになりますよ、それからその次には雇用条件は平等にして社会保障にも全部きちんと入っていただいて、その上で住宅等々、あるいは子供教育それから親の教育も語学教育もした上で、日本に定住してくださる分には構わないという具合に私は思っています。  ただし、日本の場合の理想と現実は非常に食い違っていまして、例えばパートタイマーで同じ仕事をしている、日本人同士ですよ、日本人同士で隣のラインで同じ仕事を八時間していても、今は同一労働同一賃金の法則が日本の場合には法律上認められておりません。ですからせいぜい、そういう判例もございますが、最低七〇%でやりなさいと、パートタイマーの方と正社員は。それじゃ、日本人外国人の場合にどうなんですかというときに、自動車のいわゆる二次、三次下請、それから相当な精密な機械工業などでも、これは名前は申し上げませんけれども、本当に熟練を得ているような、十年も勤めているような、何でも全部できるようになったそういう機械工の方でも、日系ブラジル人については相変わらず派遣なんです。期限付の正社員にもまだなってないという条件で、一体これはどうなんでしょうかと。  それで、日本の将来を見たときに暗いと思うのは、日本人の若者たちは、これはもうはっきりしているんですが、製造業のラインの前で仕事をしていますと八時間ぴったり仕事しなくちゃいけないんです、機械に向かって、自動車の下請工場へいらっしゃるとお分かりだと思いますが。それで、トヨタの本体、アセンブリーライン、組立てラインでは外国人はいませんよという具合におっしゃるけれども、たくさんいるわけですね。  ですから、そういうことで、その八時間労働を、こちらでも参考人の方おっしゃっていますけれども、中学や高校を出た日本人の若者はそこに就こうとしない。就こうとしないのはなぜかというと、八時間ぴったり働くよりも、フードサービスへ行って、例えばの話が牛丼屋さんにいますね、そうすると、六時間なら六時間働いてもある一定の時間は手待ち時間というのがあって暇なんですよ。だから、製造業よりも彼らにとってはそちらの方がはるかにいいという、そういう発想法で日本の若者たちが第三次産業、サービス産業へどんどん流れているという現状があって、その人たちは五年、十年やっても何も身に付かない状態になっているのが現在の日本の若者に対する雇用だと思うんです。年金医療保険にも入らない。そういう状況になっているということでありまして、それを同じように外国人でも日本の若者でも競争しながらやっていけるようにしないといけないのではないか。  それから、そういうことは実態調査の結果分かったんですが、群馬県などにある時期はバングラデシュなんかのもう最高学府を出た人が来ました。この人たちがある工場に行って、NC旋盤のIT操業の機械でプログラムを組める、そういう能力のある人、そういう人たちに対して社長さんが、能力高いからというんで課長級の給料を付けたら、周りの日本人が足を引っ張って元の待遇に下げたという、こういうケースすらございます。一体、それを改めないで日本に、いわゆる技能労働者や研究開発の人たちではなくて、いわゆる熟練をする技能労働者を受け入れたときに、今の状態は非常に困りますよということを私は産業界に申し上げてきたことであります。  しかし、日本の場合にはその点で、もうオープン・ザ・ドアでグローバリゼーションの時代ですから、共生という言葉を使うのは僕は非常に嫌いなんです。共生って英語にならないんですよ、ある意味ではコイグジステンスですかね。だけど、それは結論、到達点、ゴールであって、その間にいっぱい解決しなくちゃいけない問題があるにもかかわらず、一時はやったのは国際化というタームがはやりました。全国の自治体が国際化、国際化といってやりました。それで、国際化というのは実際ふた開けてみたらグローバリゼーションです。  だから、今日は、日本の企業で優秀な企業というのはどんどんどんどん外国資本が買収に入っています。買収に入れば、日本人労働者であれ何であれ、対等にぼんぼんぼんぼん能力のないやつは解雇するかもしれません。そういう時代でありまして、ある意味ではそういう中に日本は二〇二〇年、十年、二十年の中に当然行かざるを得ないことが目の前に来ているわけですから、先ほど来申し上げました内外人平等という原則、それを社会保障の面でもきちんと構築をしていただきたいと思うんです。  さっき御質問にありましたように、年金の年限が足りないというような、そういうものについては財政的にカバーするとか、何か別の手段を取らないといけないという具合に思います。  よろしゅうございますか。
  57. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 特に単独企業型の場合には、トヨタの例をおっしゃったように比較的技能研修というのもしっかりやれるんですが、そうじゃない、いわゆるブローカーが介在をして出稼ぎ外国人労働者を入れる場合には、いわゆる安く、日本人よりも安く使えるということが最大のメリットとして受け入れているわけですよ。そこにおっしゃるように内外平等という問題を入れようとすると、実は実際の本音のところでのニーズとそれから外国人の出稼ぎ労働者の方々のニーズがうまく合わないという点があって、そして様々な問題が発生をしてくる、そんなことになっているのかなというふうに私認識しているものですから申し上げたわけであります。  もう一点だけお願いします。  小林参考人にお伺いしたいんですが、AMDAの代表として活躍されているわけですが、お医者さんとして、今先生のようなこういう形で営業的に考えるとかなり大変だと思うんです。つまり、普通の健康保険医としては採算的には相当厳しいことになるんだろうなと。したがって、何らかの形で財政的な支援がないと続けていくことがなかなか難しいんではないのかなという点があって、先生の活動を広く広げていくというのは大変なことだなというふうに思うことについての見解を一ついただきたい。  もう一つ、先ほどから言っております我が国におけるいわゆる出稼ぎ外国人労働者受入れについて、先生のところではそういう形でそういう方々とのかかわりがあるわけですが、我が国の政策について御意見がありましたらお聞きをしたいと思います。
  58. 小林米幸

    参考人小林米幸君) まず、最初の財政の問題ですけれども、お金の問題ですね、私は自分自身がやっていることを、足りないからだれかに補助してくれというのはとても恥ずかしくて言えないですね。いや、悔しいです、やっぱり。  私自身は、私自身のクリニックを始めたときには、外国人の方はプラスアルファとして考えていました。要するに、日本人の患者さんだけで経営がやっていけるように。外国人の患者さんに関しては、まあ薄利多売じゃありませんけれども、要は損をしなければいいというような考えで来ましたけれども、当初と違いまして、今現在、例えば土曜日、私四時間診療しますと、多い日ですと四十四人ぐらい外国人の患者さんが来ます。  結局、彼らが来てくれて、その中で通訳雇っていますね。僕、計算したことあるんですけれども、通訳のために払っているお金と、私が外国人の患者さんを診てクリニックで得ているお金を考えますと、はるかに得ているお金の方が多いんです。ということは、通訳を雇っても、これはさっき僕がスライドでやっていたのとちょっと言っていること違うぞとお思いになるかもしれませんが、たくさん外国人の患者さんが集まってくるところでは通訳を雇っても経営的にはやっていけると。ただし、時々やってくる人のために雇うというのはやっていけないと。  ですから、よく私のところに、外国人の患者さんのために病院を建てたいとか、外国人の患者さんだけ診たいから病院やりたいとかクリニックつくりたいという方が相談に見えるんですけれども、全部おやめなさいというお話をしています。彼らだけを対象にしてやろうと思ったら、経営が成り立つわけはありません。  それから、さっきのNPOの方ですけれども、NPOもやっぱり大変ですね。これは決して、私どもが世の中にいいことをやっているからお金を集めてほしいとか言うつもりはありませんけれども、やはり私どもが今やっていることは、私が医療の畑で生きているものですから、やはり外国人の患者さん、日本に住んでいる方も困らないように、なおかつ医療従事者が実際に患者さんを診るときに言葉が分からなければインフォームド・コンセントもくそもないわけですから、それを何とか手助けしたいという気持ちであの組織を十七年私は運営してきました。  ですから、それは現在、東京都の外郭団体の委託事業費もありますので何とかやっていけますけれども、ただしこれは非常に厳しい、毎年毎年とても厳しいのは事実です。  それから、先ほどの出稼ぎの受入れの問題については、出稼ぎそのものは別に、今現在、僕のところで一番問題になっていますのは、やはり本来日本にいないはずの人がいるという、要するに不法滞在の人がいるということが一番大きな問題でして、やはり今までお話がたくさんありましたように、外国人が入ることによって、例えば私のところも日系のペルー、アルゼンチン、ブラジル、それからドミニカの労働者の方もすごく多いです。やはり教育の問題、それから今度は子供さんが日本語できて親の言葉が分からなくなっちゃって逆の親子の断絶の問題とか、いや様々な問題がありますけれども、やはり正式に受け入れていくということは私は正しい方向だとは思います。  ただし、受け入れるに当たっては、受ける受皿をちゃんとつくらなきゃいけない。それは、一つはシステムというハードの問題です。もう一つは、これが一番見逃されやすいんですけれども、やはり考え方が違う、そういうソフトの部分ですね。なかなか言葉にうまくできない部分ですけれども、そういうことをお互いに理解し合うようなシステムを考えませんと、なかなか同じ日本という中で対等に生きていくのが難しい。ただ、そこまでをきちんとやって受け入れるべきだとは考えております。
  59. 津田弥太郎

    津田弥太郎君 ありがとうございました。
  60. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 次に、古川俊治君。
  61. 古川俊治

    ○古川俊治君 私から、では小林参考人を中心にちょっと伺わせていただきます。  小林先生、私、実は先生の十三年後輩でございまして、同じ外科教室で、かつ胃の研究班の後輩ということで直系でございます。先生のお話を九〇年に、実は前阿部教授のときに医局に来ていただいて伺ったという経験がございまして、先生御記憶かどうか分かりませんが。  そのときから、実は僕、イメージとして大変面白いことをやっていらっしゃる先生だと、素敵なことだろうというふうに思ったんですが、それが、じゃ果たしてどのように自分の今具体的な医療の中で問題になってくるか、これが非常につかみにくかったんですね。今、津田委員がおっしゃいましたように、経営的にも実は余りプラスじゃないだろうというのはそのときにもすぐ分かった。先生もちょっとお感じになったかもしれませんけれども、そのときに聞いていた多くの医師が同様の反応だったというのをちょっと記憶しているんですね。  医学部の研修システムにそれを入れていくとか、あるいは研修医のシステムにどう取り入れていくか、例えばいろんな国の疾患というのを系統講義でやるということを意味されているのか。ただ、短い研修で、外国人こう診るんですよとかということで、座って二、三回研修受けただけでしたら、やはり外国人のためにやっていこうという医師は結局は増えていかないと思うんですね。  そういう意味で、具体的に先生として、この研修カリキュラム、あるいは医学部の教育の中でどういうことを、もし御提言されるとすれば、是非入れていただきたいということがあればお聞きしたいというふうに思っております。
  62. 小林米幸

    参考人小林米幸君) まず、先生、現在私も、余り名前を出しちゃいけないと思いますけれども、関西の大学と、同じ慶応義塾の看護医療学部の方で学生を教えています。  先ほど、多くの医師が私がボランティアでやっているんじゃないかというお話でしたけれども、私が何であそこでお話をさせていただきたいかと思ったかといいますと、結局私、日本全国からAMDAのセンターで医療相談を受けていますけれども、やはり医療機関がとても困っている、外国人の患者さんが来てこんなことで困っているという医師の声、それから看護師の声、事務の声、いろんな声を聞いています。  そういうところで、最初にお話ししましたように、現在今この時点を見ますと、全人口の約多分二%か三%は外国人だと思います。ということは、百人私たちが患者さんを診たら、二人か三人は外国人がいるというのが今のこの社会なんですね。ということは、若い先生方が当然臨床のために患者さんを御覧になるでしょうけれども、外来で百人診たら三人は外国人がいる、そういう社会に私たちは暮らしている。そこで、もしうまくさばけなければ、お金の問題、それはもうクリニックやっていれば個人の問題ですが、それから病院の経営の問題になります。  それからもう一つは、実際に医療をやろうと思っても、相手に今日何の検査やるんだか、手術もどうやって説明していいか分からない。お互いにあやふやな医療になった、挙げ句に医療事故や、結果として医療訴訟を大変たくさん抱え込む可能性があります。  ですから、私は、そういう若い先生方に将来御自分たちが必ず出会うであろうそういうトラブルから身を避けてほしいことと、実際に外国人の患者さんをよく診ていただきたいという気持ちのために、今の研修制度あるいは学生の授業の中に、高齢者を診るというような授業と同じように外国人の患者さんを診るということについての講義をやはり入れていかなければいけないというふうに思っている次第です。
  63. 古川俊治

    ○古川俊治君 次に、先生のおっしゃったことで、健診システムのこととそれから今のいわゆる診療のことが二つあったと思うんですね。  健診システム、ある意味で予防的なものについては、ある期間日本にいらっしゃる外国人の方には非常に重要な問題だろうというふうに思うんですけれども、一方で、緊急的な診療というのは期間に限らず必要になってくるわけでありまして、先生が実際その現場で外国人の方を診療されていて、国がもし国策としてやっていくんであればどちらがより今のシステムにおいて重要なのか、欠落しているのかという点についてお知恵をいただければと思います。
  64. 小林米幸

    参考人小林米幸君) それは、予防医学と実際の診療の救急とどっちに力を入れるべきかというような御質問ですか。
  65. 古川俊治

    ○古川俊治君 そうでございます。
  66. 小林米幸

    参考人小林米幸君) それは両方やはり力を入れていかなくてはと思います。なぜかといいますと、一つは、先ほどから手塚参考人がおっしゃっているように、今の外国人の方というのはもう定住傾向にあるわけですね。ですから、緊急ではなく、例えば今回のメタボリックシンドロームの話でも、何で先ほど僕ちょっとお話ししたかといいますと、皆さんもお考えになれば分かると思いますけれども、日本人に比較してはるかに体型がいい人たちが多いですね。ということは、はるかにメタボな人たちです。ああいう人たちにメタボの予防医学を行わないで一体だれに行うかというぐらいの人たちですね。ですから、彼らに対する予防医学はもう必ず大切です。それは、先ほども何度も言いましたが、定住傾向もあります。  しかし、それとは別に、常にやっぱりやってくる人たちはいるわけです。同じ人がずっといるわけじゃなくて、この人はずっといるけれども、でも今日やってきて明日帰る人もいます。ということは、緊急医療は緊急医療で別に考えなければいけないということです。ですから、二つ、両方大切だというふうにお話し申し上げたわけです。
  67. 古川俊治

    ○古川俊治君 ありがとうございます。  先ほど先生が待機的なものについて、待てるような医療についてはやはりできるだけ本国で受けていただいた方がいいだろうと。私も、これは日本でできるできないということではなくて、やっぱり文化的な背景等が違うんで、そこで医療を受けた方がより御本人のためにはなるんではないかという気がしておりまして、それはやはりできるだけ待機的に待てるものは帰っていただくという前提でよろしいでしょうか。
  68. 小林米幸

    参考人小林米幸君) 先生のお受けになった医学教育の中で、私たちは、目の前にいる患者さんにはベストを尽くしなさいと常に教えられています。ベストを尽くすということは、緊急ではなくて、日本のお医者さんの一番良きところであり悪いところは、自分で完結してしまおうと思うところですね、日本の中で。ところが、外国人の方、特に短期的に日本に来た方が病気になった場合に、その方をずっと日本で治療していくということはやはり不可能です。  ですから、いろんなことを考えた場合、先ほども言いました言葉の問題もあり、いろんなこともある。ですから、いろいろ話し合った上で、やはり僕は医療というのは、できればちゃんと言葉が通じるところで受けるべきであろうと。  例えば、私のところはタイ人の患者さんが多いですけれども、よく電話を受けるのは、タイに帰ったらこういう医療を受けないから日本に置いておかなきゃいけないでしょうかと、よく私の同僚の質問があります。ただし、現在、タイでは一日三十バーツの医療というのがありまして、公立病院ですと一日三十バーツ、日本円でいえば百円ぐらいですね、払えば手術も薬もすべて入った医療を受けることができます。ですから、そういうことを考えますと、発展途上国へ帰しちゃったからもう死んじゃうかもしれないよという状況でもないんですね。  ですから、私は、そういうことをいろいろ話をして、彼らが飛行機に乗れるうちに帰したいというふうに思っている次第です。
  69. 古川俊治

    ○古川俊治君 ありがとうございます。  私も、実にそれは説得力のあるお話だなというふうにも感じております。  それで、その前提で手塚参考人と石河参考人にもちょっと伺いたいんですが、結局、そうすると、待機的なものは是非本国にお帰りいただいてということになってくると、じゃ、当座の緊急医療でかかってくるものを取りあえずどう処理していこうかということが、あと医療に関して問題になってくるわけですね。  そうしたときに、実際の外国人の今の生活状況を考えて、公費を使ってやらなきゃいけないことはたくさんあります。例えば、就労環境の改善ですとか、もうその生活問題も一連そうですし、教育問題がありますし、そういう中で、実際のところこの医療という問題は、外国人の今の全般にとって優先順位としてどの程度のところにあるのかということをちょっとお知恵をいただきたいと思います。
  70. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) 医療の問題というのは一番大きな問題の一つであると思います。皆様も逆に、海外に旅行されるときに旅行者保険に入られるんでしょうけど、向こうで病気になられた御経験のある方いらっしゃると思いますが、まずどこへ行ったらいいのか。旅行者保険では日本語で答えるセンターがありますから、そこであれするんでしょうけれども、あるいは日本人のお医者さんが向こうにいるわけです。そういうネットワークがあって日本語で話ができるような、そのお医者さんにやってもらえるわけですね。  そこで、ちょっとさっきのボランティアとの関係一つの経験で、先ほどすべて話さなかったんですが、千葉県では、日本人だけじゃないんですが、外国人の妻の会という会があります。それで、そこに二十何か国の、元はね、そういう方がいらっしゃる。その方たちが物すごい強力なNGOで、例えば刑事事件を外国人が起こした場合には法廷通訳するとか、お医者さんに連れていくときには一緒に連れていく。  それで、皆さん、私どももそうですけれども、日本社会というのは、海外に出られてロンドンならロンドンにいますと、日本の診療所もあります。いざとなったときには、それじゃだれかが連れていってくれるという、そういうシステムなんです。  そういうことを考えますと、日本の中で、これは大胆に言わしていただきますと、日本のお医者さんについては、いわゆる入管法上は日本で受け入れていいということになっているんですよ。なぜかというと、もう一つ、今度は業法がありまして、医師法によって日本医療行為に携わるお医者さんは日本の医師免許証を持ってなくちゃいけない、看護婦さんもそうですね、そういうことになっているんです。  しかしながら、今後、それは相互に二つの国が医療状況とか何かを比較しながら相互認証をしていくということをして、日本の中にその国のお医者さんが来ているということになって、しかもそうでないと困るんです。私が前任校の、大学病院がありましたけれども、結局、外国からお医者さんが留学してきます。手術できないんですよ、要するに。医療行為できないわけです、日本免許証持ってないから。ところが、日本のお医者さんがドイツに行きます。ドイツ日本医療の母国だというんでたくさん行くんですね。そうすると、向こうではもうじゃんじゃんさせてくれるというんです、日本の医師免許証を持っていれば。だから、それと同じような状況にしていかなくちゃいけない。  それから、外国人の患者さんが、特に先ほどの御質問……
  71. 古川俊治

    ○古川俊治君 私の質問時間が過ぎておりますので、どうぞ手短に。
  72. 手塚和彰

    参考人手塚和彰君) はい。そういうことがありますんで。  それから、医療については、もうお金がないからかかれないという外国人がいないようにしないといけないと思うんですね、理想としては。  以上です。
  73. 石河久美子

    参考人石河久美子君) 教育の問題、福祉の問題、医療の問題、どれも重要で優先順位をと言っても非常に難しいと考えます。  しかし、医療に関しましては人命にかかわることですので、やはり緊急の支援のための財源というものが必要ですし、あと、やはり文化的に適切な医療を提供するということもとても重要だというふうに考えます。例えば、愛知のソーシャルワーカーのケースでも、母国と日本のお医者さんの態度が違うとかそれから治療の方法が違うということでなかなか治療に行きたがらない患者さんがいて、ソーシャルワーカーが中間に入って苦慮しているというケースもあります。  それから、あと、精神科の分野ですと、文化的な問題というのがまた非常に重要だと思いまして、例えばアメリカで私シアトルというところにいたんですけれども、そのシアトルでNPOが外国人の問題を立ち上げていったときに根拠となったことが、アジア系の人たちが、異文化適応の問題もあったんですけれども、精神病院に入院させられていて、その行動というのが本当に精神的な病なのか文化的に違う行動なのか、それが分からないままずっと病院に収容されていて、その状況をやっぱり改善したいということでNPOが立ち上がったというようなこともあって、そういう文化的な差異をどういうふうに診断するかとか、あと、最近は地域で外国人の障害児の問題が出てきていまして、それが言語的な問題なのか、それとも社会適応の問題なのか、家庭環境の問題なのか、本当に知的障害があるのか、非常に判断が付かなくて苦慮しているという状況もございます。
  74. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 次、相原久美子君。
  75. 相原久美子

    相原久美子君 参考人皆様、ありがとうございます。民主党の相原でございます。  まず、石河参考人にお伺いしたいと思うんですが、この調査会でいろんな方たちにお話を伺いましたときに、やはり対応するのに様々な形でのいわゆるソーシャルワーカー的な形が必要だと。私は以前に、この調査会医療通訳の部分を課題にしまして全国調査をちょっとさせていただいたんですが、法廷通訳はいてもなかなか医療通訳がいないとかということがあって、そうすると、医療通訳までいかなくても、いわゆる日常の相談ですとかそういう形で、ソーシャルワーカーと先ほどおっしゃっておりましたけれども、多文化に対するソーシャルワーカーがというふうに私も思ったんです。  そこで、この日本の中で、先ほどからお話しされているんですが、学校教育制度の中でこういうような人材を育てていくというような形が今後起こり得るのか、今そういう芽が幾つか出てきているのか、ちょっとお伺いしたいなと思います。
  76. 石河久美子

    参考人石河久美子君) 具体的には学校の中で、そういう多文化スクールソーシャルワーカーみたいなものが実際に雇用されるという動きはまだ出てきておりません。しかし、私個人としましては、そういうソーシャルワーカーが非常に必要ではないかというふうに考えております。  例えば、私も愛知県の今ソーシャルワーカーのスーパービジョンの指導をしている中で、やっぱり外国人が長期滞在をすることによって、私が例えば十年前にソーシャルワーカーをしていたときにはなかったような事例が出てきていまして、例えば語学相談員のような人がソーシャルワーカーを肩代わりしているんですね。先ほど申し上げましたように、移住労働者の、学校をドロップアウトしたダブルリミテッドの、十代の人たちがもう子供を産んでいて、そしてその子供が無国籍になっていたり、それから養育状況が非常に悪いわけですね。  例えば、二十代前半のお母さんで子供がもう六人ぐらいいて、そしてお父さんは三人ぐらい違って、そういう子供が四、五人地域の学校に通っていて、非常に心ある語学相談員が、やっぱりこの家はちょっとおかしいんじゃないかということで、児童相談所に連携をしたりして多文化ソーシャルワーカー的な仕事をしているんですね。  しかし、その人たちがやる仕事というのは、子供たちの語学支援が本業であって、ちょっとネグレクトになっているんじゃないかとか、そういう状況を見て学校に話をしたり、児童相談所につなげたりという仕事は本来の仕事ではないんですが、やらざるを得ない。しかし、そういう現場にソーシャルワーカーが入っていくともっと状況は変わっていくのではないかというふうに思います。  こういうケースは非常に潜在的なケースで、実はもっとあるはずなのになかなか見えてきていない。日本の児童相談所はまだこういう問題について恐らく認識してなくて、このままほっておくと本当に外国人児童のネグレクトとかいろんな問題がもう出てきて、これは何とかしなきゃというふうに思う状況になってからでは遅いと思うので、そういった意味では、そういうケースにアウトリーチしていくためにもスクールソーシャルワーカー的な多文化ソーシャルワーカーは必要だというふうに考えています。  ただ、学校に急にそういう人を設置しろといってもなかなか難しいと思うので、例えば先ほど、身分保障がされてきちんとした仕事になって、そしてその中で何人か雇用されるようになれば、例えばフィリピン系のケースですと、ドメスティック・バイオレンスとか夫婦関係の問題が多いんですけれども、ブラジル系のケースですと、そういう教育問題とか学校に来ていて家でかなり問題があるとか、だからそういう子供家族のスクールソーシャルワーカー的なことをするソーシャルワーカーと、夫婦関係とかDVとか女性問題をやるソーシャルワーカーとか、そういう細分化というものが必要になってくるのではないかと思いますけれども、まずはやはりお金が付いて身分保障がされるということが必要だと思います。  愛知ではたまたまお金が付いてこういう研修ができて、ほかの都道府県からもいろいろ問い合わせが来ているようなんですが、やはりとてもこんなに愛知のようなお金は付けられないというふうに言ってできないところが非常に多いようなんですが、こういう人材育成をきちんとしないと、本当に予防的に今取りかかれば何とかなるような問題がもうどんどん大きくなってしまうなという危機感は感じていて、是非そういう人材育成にも財源を付けていただきたいというふうに考えております。
  77. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございます。  小林参考人にお伺いしたいのですが、先ほど言っていましたように、私もこの辺を歩いていてもそうですけれども、外国人がいることに違和感がないというぐらい本当にもう国際化してきている。この中で、医療機関のみというのはなかなか難しいだろうとは思うんですが、医療通訳者というのを育成するようなそういう機関というのは今あるのでしょうか。
  78. 小林米幸

    参考人小林米幸君) 多分、公的な機関はないと思います。過去に私どもの団体で、何年か前に何回か医療機関の先生方に集まっていただいて各専門科目のお話をしていただいたことはあります。  ただ、ちょっとお答えにならないかもしれませんが、これ難しいお話は、医療用語ってやればやるほどもう限りがないんですね。例えば、皆さんも病院にいらっしゃってお医者さんからおうちの方の病状をお聞きしたときに難しい言葉使われると分からないと思うんです。通訳も分からないんですよ。  ですから、私がいつも医療機関の先生方にこうやって通訳するというときにお願いするのは、いかに分かりやすい言葉で話してくださるかなんですね。分かりやすい、難しい単語を使わなくても、例えば胆のうと言わなくても、肝臓の下に袋があって、肝臓から出た液が入っていますとか言うと、これは簡単に通訳できるわけです。しかし、胆のうと言ってしまうと、胆のうという単語を知らない人は通訳できないんです。ですから、そういうノウハウを僕はいつも教えてさしあげるようにしていますけれども、そういうことの方が大事だなと思うときがあります。
  79. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございます。  まさに、多分、原点なんだろうと思うんですね、通訳以前の、やはり我々が本当に分かるというのと。  それから、もう一つ最後になります、感想でございますけれども、先ほど小林参考人がおっしゃっておりましたように、やはり行政が考えなきゃならないのは、利用する側に立った、ですから、先ほど来私もあちこちの地方自治体参りますけれども、ああ、いろんな言語でいろんなものが最近置いてあるなと思うんですが、なかなかそれが御本人たち当事者の目に付いていないという場だなというふうなのは非常に感じまして、参考にさせていただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  80. 田名部匡省

    会長田名部匡省君) 質疑も尽きないようでございますが、予定の時間も参りましたので、以上で参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人皆様方には、長時間にわたり貴重で有意義な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  誠にありがとうございました。(拍手)  次回は来る四月二十三日午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会