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参考人(
山本正君)
日本国際交流センターの
山本でございます。本日は、このような機会をちょうだいいたしましてありがとうございます。
座ったままでやらせていただきます。
財団法人日本国際交流センターというと、
イメージからいうと、ばかでかい
組織だというふうにお思いになるかもしれませんし、
日本国を代表した
政府の
組織と思われるかもしれませんけれ
ども、これは、正直、私が一九六〇年代半ばに若気の至りで勝手につくった、今風に言えば
NGOでございます。
外務省の所管の
財団法人ではございますけれ
ども、国の
補助金は絶対もらわないという趣旨で今まで
活動しておりまして、余計なことを言っちゃったと思って反省することもありますけれ
ども、私としては、やっぱりこういった
活動の中で、非
営利、非
政府の
組織の
重要性が非常に大きいと強く信じておるものでございますし、特に
米国、
欧州等もそうでございますけれ
ども、そういう非
営利、非
政府のアクター、
組織が
交流の実務に携わっている場合が多いわけでございまして、それなりに何とかその
立場を維持する努力をいたしたいと思っております。
私
どもといたしましては、せいぜい
人数二十名ぐらいのスタッフ、
米国の
法人が四名でございますけれ
ども、我々としてできることは、格好よく言えば、先導試行的な
活動をやって、それが
触媒になってより大きな流れになることを期待して
活動しているということだと思うんです。したがって、その国が
国際社会で置かれている
立場、あるいは
国際社会の
変動等に合わせて
活動の
在り方を変えていくというのが我々の
組織の
在り方だと強く信じております。
したがって、今までの
活動の中で一番最初に手掛けた大きな
活動は、皆様も時々お聞きかと思いますけれ
ども、
日米下田会議。これは一九六七年に始まったものでございますが、六八年には
日米議員交流という
活動を始めて、いまだに、なかなかアメリカの
議員が
日本に来てくれないのがしゃくの種ではございますけれ
ども、続けております。
石井会長には実は
日米議員交流の発足した当初、
活動に御参加いただいたことを覚えておるわけでございますが、その後、
日米関係の後、
欧州が大事になってきたので、
日欧会議をやると。それから、
先進国会議が発足すると、
日米欧の三
先進地域の
協力が必要ということで、トライラテラルコミッションという、
日米欧委員会という表現になっておりますが、そういったものの
活動のお手伝いをする。さらに、
日本がより
先進国としてこの
地域の中で
活動するようになると、ASEAN、韓国、さらに
中国といった近隣の
諸国、
アジア太平洋の
諸国との
関係が大事になってくる。こういうように、だんだんだんだん
相手にしなくちゃいけない国が増えてくるわけですね。
さらに、内容的にも、政治、経済についての
テーマをめぐっての議論だけではなくて、その
共通の
課題、あるいは
国際社会の
地球的課題と言われるようなものについての
活動にも参画し始める。実は、今の今、本年のサミットに向けて、あるいはTICADⅣに向けて私
どもが一番忙しいのは──
世界基金というのがございますね、
グローバルファンドという。HIV、エイズ、それから結核、マラリアに関する
世界基金、これの
世界基金支援日本委員会というのを私
どもがお預かりしておりまして、
森元総理が
会長で各党の
関係者にも関与していただいておりますけれ
ども、すなわち、我々の
活動、いわゆる
日本国際交流センターという
活動の中にそういった
共通の
国際的課題への取組が非常に大事になってくる。事ほどさように、私
どもの
活動も非常に多岐にどうしてもわたってくるわけですけれ
ども、その中で我々としては、
日本の
立場をもちろん重視しながらも、
日本が
国際社会にどうすればより積極的に絡んでいくことができるかということを常々思って仕事をしているわけであります。
レジュメにごちゃごちゃ書いておりますけれ
ども、時間的に無理ですので、多少私の思うところをかいつまんでお話し申し上げたいと思います。
大変失礼ながら、率直なところ、私、個人的には
対外発信という
言葉は余り好きじゃございませんで、これは決していけないという
意味ではなくて、私の持つ
イメージは、何か柱の、台の上に登ってこちらの言いたいことをラウドスピーカーでどなって
相手に伝えるというのがその
発信という、違うのかもしれませんけれ
ども、そういう
イメージがどうしてもある。
私は、もちろんこの
発信というものが、この
テーマにありますとおり、
日本の
国際社会における
役割と
リーダーシップの
発揮ということにつながると非常に分かりやすくなりますので、その
言葉自体を排除するわけでは全くないんですけれ
ども、要するに、一方的にこちらから
相手に伝えるということではなくて、
相手との
やり取り、
対話がある、まあ
英語で言うとエンゲージメントがあるというものが今は必要になってきているんじゃないかということを思っておるわけでございます。
したがって、
相手との
やり取りを前提とした
発信というものは今後ますます促進すべきだと思うわけでございますし、これだけ複雑な
国際関係の中で意思の疎通を持つために
日本側の
立場を明確に
相手に伝える、しかも、実は多様な考えがあるということも明確に
相手に伝えることが大事になってきているように思うわけでございます。
そこで、時間的に限りがございますので、本当に数点、特に大事だと思う点を申し上げたいと思うんですが。
そういった努力の中でとりわけ強調しなくちゃいけないのは、知的な側面、ディメンション。それは、
対話とかコミュニケーションの努力の中で知的な内容がないものは極めて、まあ
意味、意義がないとは言い切れませんけれ
ども、今日の社会におけるインパクトというものは限られてくるんじゃないかと。したがって、
日本の
国際社会への影響力が増大するにつれて、
日本が果たすべきことは何であるかということを論じるに当たって、その知的な内容が伴わなければ
意味がなくなってきているということでございます。
もちろん、
日本の
文化を紹介することも大事でありますけれ
ども、それの中にはそれなりの知的なエレメントがありますけれ
ども、あくまでもやっぱり一番大きなのは
日本の
役割、いろんな
課題についての
日本の
役割を知的な中身をもって
相手に伝えていく、それを基に
相手との
やり取り、
対話を持つ、エンゲージメントを持つということが非常に大事なんではないかというふうに思います。
もう
一つ強調したいことは、対外的な
発信というと、申し上げたとおり、繰り返しますけれ
ども、
日本の
立場は一定の
立場を
相手に知らしめるというニュアンスがどうも感じられますけれ
ども、これだけの経済大国になって国内的な多様性が増大しているのであれば、対外的なコミュニケーションの中でも
日本が多様な
立場を取ってもおかしくはない。したがって、このお席にもいろんな党の
方々がいらっしゃいますけれ
ども、
日本の対外的な
発信あるいは
日本の対外的なコミュニケーションの努力の中には、いろんな
立場で物を言って初めて実は
相手の胸に落ちることになるんではなかろうかというふうに思っているわけでございます。
その対外的な知的対応の中で
相手国の人
たちに特に評判が良いのは、違った
意見を持つ
日本人のパネルを持つことでありまして、三人、五人の
日本人がみんな同じことを言ったらまず居眠りするに違いない。むしろ、より自然なのは、これだけの多様な
世界でありますから違った
意見を述べるというのが大事であって、対外的な
発信の中でそういう側面を今後重要視する必要があるんじゃないかというふうに思います。
あと、これはレジュメに出ていることを目で追っていただければ、あと六分でございますので、その三ポチのところでございますけれ
ども、
国際的
役割。今後、
日本が対外的な
発信をしていく上において絶対的に必要なのは、何かをやるべしと、
日本はやるといったときに、それを実行する能力あるいは実行する政治的な意思、意図がない限り余り言ってもしようがない話ではなかろうかと思うわけでございます。そういった
意味では、
国際的
役割の実践を伴った
発信あるいは
対話の努力ということは、当たり前のことですけれ
ども、非常に今後重視すべきことじゃなかろうかと思います。
それから、もう
一つは
政府主導。画一的なアプローチの限界ということでありまして、これは言うまでもないんですけれ
ども、
日本の社会の中でも
NGO、NPO、これが非常に増えておりますし、いろんな
立場の
方々がいろんな
活動をしている。したがって、多様なアクターがダイナミックに参画するようなことが期待されるわけです。
それから、
対外発信における
国際的
対話と
国際的エンゲージメントの要素の
強化というのは、申し上げましたので繰り返しません。
最後に、
現状、
体制、戦略というところでありますけれ
ども、残念ながら、このごろ
国際会議あるいは
国際的なプロジェクトの中で多くの
海外の
方々が指摘されることは、
日本の影が薄くなったということであります。参加者の数が少ないのみならず、参加していてもしゃべんない人が多い。それに比べて活発なのは
中国であり韓国であるということでありまして、これは本当に、私
どもこの四十年近く仕事をしております人間としては、このことが最も残念なことでありまして、この
現状をまずしっかりと我々として認識する必要があるんじゃなかろうかと思います。
それから、まあ世代交代の急務というと、おまえ何しているんだと言われてもしようがないんですけれ
ども、一般的に思いますのは、大体同じような
方々が
国際会議で頑張ってくださっていると。若い
方々がなかなか出てこない。世代交代が進んでいないというところに力点があるわけで、頑張っている年を取った人間を辞めさせろということでは全くございません。なぜか若い学者、若い実務者が
国際交流の場に出てこないんですよ。これは、もうからないからかもしれません。そんなことをやらなくても忙しいことが十分あるということかもしれませんけれ
ども、このことが大きな問題だと思います。
それから、
小倉さんもお話しされましたけれ
ども、多くの
国際的なシンクタンク、あるいは大学等もそうですけれ
ども、
国際交流とか
国際的な政策研究を行う
組織が非常に弱体化してしまっているということでありまして、それに対してアメリカのシンクタンクは、今お金がざくざく入ってきて、つい最近ニューヨーク・タイムズに大きな特集が出ましたけれ
ども、大変なお金が集まっちゃっている。それに対して
日本のシンクタンクというのは、もう大変惨めな状況。したがって、優秀なスタッフを抱えることができないということでありまして、そのような状況でありますから、いろんな
国際的な
会議、
国際的な場で
日本の存在感がますます薄くなりつつあるということでございます。
そこで、ちょっとどぎついですけれ
ども、
日本政府の
国際交流、コミュニケーションなどの
活動への
資金協力が削減されているということを書いておりますが、これは余り具体的過ぎると多少差し障るかもしれませんけれ
ども、私
ども実はいろいろワイズマングループ的なものを日米に始まってやらせていただいておりまして、日独とか日英とか日韓とか、これは外務省からの御依頼、要請でやってきておりますが、その予算がこのごろどんどん切られている。
これは外務省のせいにするわけじゃございません。外務省の後ろにもっとお金を持っている
組織があるわけでしょうけれ
ども、そういった非常にワイズマン的なグループに、
在り方もいろいろ
課題もありますけれ
ども、対外的にまさに
発信、コミュニケーションの大きな場面でありますワイズマングループ的なものに対する
政府の
資金が減らされてきている。この十年ぐらいの間に、私の感覚で言うと半分ぐらいに減っているんじゃないんでしょうか。そういう中で、お涙ちょうだいで言っているんじゃ全くありませんけれ
ども、私
どもの
組織辺りは赤字を自分らで抱えて
政府から依頼されていることをやっているというのが実態でございます。
こういうことが行われている限り、
日本の対外的
発信能力がどうのということは大変迂遠な
テーマでありまして、私としては、本当にここで政治的な
リーダーシップを是非
発揮していただきまして、
日本が対外的にかかわり合う、あるいは
国際社会に貢献し得るような力を持つようにもう一度大きな努力をしていただけないかと思うわけでございまして、本日は皆様にお願いに伺ったような感じもないわけではないんですけれ
ども、私としては、こういった仕事に関与している多くの人
たちが日ごろ思っていることを代弁させていただいているつもりでございますので、是非議論の中でも更にこの点についていろいろ御審議いただければと思います。
どうもありがとうございました。