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2008-02-25 第169回国会 参議院 行政監視委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年二月二十五日(月曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  二月十三日     辞任         補欠選任      福山 哲郎君 ツルネン マルテイ君  二月二十二日     辞任         補欠選任      家西  悟君     轟木 利治君      林 久美子君     大島九州男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         加藤 修一君     理 事                 足立 信也君                 島田智哉子君                 徳永 久志君                 岸  信夫君                 浮島とも子君     委 員                 岩本  司君                 大島九州男君                 田名部匡省君                 千葉 景子君             ツルネン マルテイ君                 轟木 利治君                 長谷川憲正君                 平山 幸司君                 松岡  徹君                 水戸 将史君                 柳田  稔君                 石井 準一君                 加治屋義人君                 坂本由紀子君                 田中 直紀君                 中山 恭子君                 古川 俊治君                 水落 敏栄君                 森 まさこ君                 山下 芳生君                 近藤 正道君    事務局側        常任委員会専門        員        西澤 利夫君    参考人        京都大学公共政        策大学院准教授  諸富  徹君        気候ネットワー        ク代表弁護士  浅岡 美恵君        ノンフィクショ        ン作家      山根 一眞君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関  する調査  (地球温暖化問題等に関する件)     ─────────────
  2. 加藤修一

    委員長加藤修一君) ただいまから行政監視委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、福山哲郎君、家西悟君及び林久美子君が委員辞任され、その補欠としてツルネンマルテイ君、轟木利治君及び大島九州男君が選任されました。     ─────────────
  3. 加藤修一

    委員長加藤修一君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関する調査のため、本日の委員会参考人として京都大学公共政策大学院准教授諸富徹君、気候ネットワーク代表弁護士浅岡美恵君及びノンフィクション作家山根一眞君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 加藤修一

    委員長加藤修一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 加藤修一

    委員長加藤修一君) 行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関する調査を議題とし、前回に引き続き、地球温暖化問題等に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人方々から意見を聴取した後、質疑を行います。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ、当委員会に御出席いただき誠にありがとうございます。参考人皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、今後の調査に生かしてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、諸富参考人浅岡参考人山根参考人の順にお一人二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人委員とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず諸富参考人にお願いいたします。諸富参考人
  6. 諸富徹

    参考人諸富徹君) 京都大学諸富です。今日はどうぞよろしくお願いいたします。  今から、排出量取引制度についてということで二十分の時間お話をさせていただきます。座ってお話をさせていただきます。  私のお話は、今から示しますパワーポイント、これを中心にお話をいたしまして、お手元には雑誌論文コピー、それから日経新聞の「経済教室」のコピーを配付いただいているかと思いますので、詳しくはそちらを御覧いただきたいというふうに思います。(資料映写)  ここしばらくの数日の報道でこの排出量取引制度というものが非常に注目を浴びるようになってきておりますが、今日のお話は、なぜ排出量取引制度というものを我々が考える必要があるのかということをまず最初に話をしまして、そして、途中で具体的に、もしこういったものを日本で導入するとすればこういった形で導入できるのではないかという一種の我々の提案です。  これは元々はWWFジャパンから私たち京都大学が受託しました研究の成果に基づくお話ですけれども、その話をしまして、そして今後、日本が低炭素社会という社会へ向かっていくにはどういうことを考えていけばよいのかというお話をさせていただいて終わりたいというふうに思います。  さて、今日、私自身の話はもう排出量取引一本に絞ってお話をさせていただくわけですけれども、その背後にある問題意識としましては、やはりなかなか日本温室効果ガス排出量が減らないということがあります。これはもちろんいろんな形で努力は既になされているわけですが、有効な仕組みが残念ながら日本にはまだないのではないかということですね。CO2排出量の約六割を占める産業エネルギー転換部門排出量というのは九〇年以降既に一〇%増加していますし、日本全体でも、ここにお示ししていますように七・八%増ですね、二〇〇五年の時点で。  それから、産業界自主行動計画というものを実施していることは先生方御存じのとおりですが、これは原発の稼働停止等によって、実は本来見込まれていた対策量に十分ではないということが判明しまして、この不足量をどうするのかということが問題になっていますが、これは、CDM含めて海外からのクレジットで購入によって賄うというようなことが現在議論されているわけです。  こちらにお示しをしているのは主要七業種、こちらに、どのような業種かというのは右の方に書いてありますが、こういった業種からの排出量を、これはいわゆる直接排出という統計ですけれども、間接排出というのは、例えば電力セクター排出を各家庭部門産業部門に割り振って実際に電気を使った人の責任であるという考え方の下にCO2排出量を計算しているんですが、これは直接排出といいまして、電力セクター排出しているものはそのまま電力セクター排出とみなし、そしてこれは全部産業セクターとしてカウントされていく、そういう基準ですけれども、これを見ましても増加している。  この中で一番責任が、一番寄与度が大きいのは電力セクターでして、御存じのように石炭火力が非常に増えているということが大きな原因になっておりまして、よく言われるように、これは炭素価格が付いていない、つまり石炭が、もし地球温暖化のことを考えれば、本来支払われるべき価格というものがきちっと支払われていない、そのために相対的に安くなっていることがこういった原因を引き起こしているということですね。  実は、問題意識二としまして、確かに産業界の主張するように、家庭や交通部門というものも増加はしています。しかし、国際比較をしてみますと、家庭や交通部門からの排出というのは実は日本はそれほど大きくはないわけですね。よく言われますように、ウサギ小屋に住んで満員の通勤電車に揺られて通勤している。日本は非常に東京も含めて公共交通機関がきちっと整備されていることがやはりこういったことに寄与しているのではないかというふうに思いますが、私自身は、直接排出の六四%を占めるやはり産業部門日本温暖化対策のかぎであるというふうに考えております。  しかし、なぜこういった産業セクターでなかなかドラスティックに対策が進んでいかないのかということは、まず第一は、やはり燃料転換がなかなか進まない。先ほど言いましたように、炭素価格付け、つまり化石燃料の燃焼が地球温暖化にどれだけ寄与しているのかという、ちゃんとそういったことを考慮して価格を付けていく必要があるんじゃないかということですね。  それから、やはりエネルギー効率性を改善していくためのインセンティブをもっと付けていく必要があるのではないかということですね。残念ながら、自主行動計画の場合には、よく言われていますキャップというものが掛けられておらずに原単位目標を設定していることが多いですから、生産量が増えれば簡単に排出量が増加してしまうという、そういう構造になっていることが一番問題です。  それに対して、なぜ排出量取引かということなんですが、一番のポイントはやはり総量をコントロールできるということです。  京都議定書のときに、EUはどちらかといえばこの排出量取引制度に対しては懐疑的であったわけですが、なぜその後転換していったかということですが、それは、やはりこれから総量をやっぱりコントロールしていく、そしてそれを減らしていくということを考えた場合に、どうしても他の手段ではそこの点が不確かになってしまう、排出量取引はやはりそこに一番の強みを持つことができるということだと思います。  しかも、総量さえきちっとコントロールできれば、実はあとはマーケットメカニズムを使えるわけですから、市場メカニズムを使って、しかし総量はコントロールできるという意味で現在の市場経済システムにも実はフィットするわけですね。こういったシステムを私なんかはなぜもっと日本は有効に使わないのかというふうに思いますけれども、現在のところは非常に反発が強い、そういった制度でございます。  あとは、各事業所排出削減目標、これは浅岡先生からもひょっとしたら詳しいお話があるかと思いますが、現在の自主行動計画の下では四種類の目標を各企業が、しかも自主的に設定できるという構造になっております。原単位と絶対量、それからCO2なのかエネルギー使用量なのかという形で、二掛ける二で四通りがあるわけですけれども、これが各企業がどれぐらい削減をしているのかという比較可能性を失わせているというふうに思います。排出量取引制度が導入されますと、これはもう完全に量タームで統一をされるということになります。  あと、三つ目は飛ばしまして、今度は費用効率性、これも非常に重要な点です。これから低炭素社会へ向かうということで、二〇五〇年に向けて日本がまだどういう目標を設定するのか自体議論の対象になっておりますけれども、世界の合意、できつつある合意としては、やはり現在よりもCO2排出温室効果ガス排出量世界規模で半減していくというようなことですから、そういうことになりますと相当な痛みを伴うことも事実です。  そうであればあるほどその痛みはできる限り小さい方がいいわけでして、そういう意味では、少しでも費用効率的にそういった削減を進めていける社会制度を入れるべきではないかというふうに考えます。  現在、自主行動計画というのは、自主自主たるゆえんですね、自主自主たるゆえんとはどこにあるのかということです。  特徴の一としましては、やはり、そもそもマクロ的に経団連全体として設定している目標自体日本における排出削減目標と整合的な形で、ブレークダウンする形で家庭部門はこれだけ、運輸部門はこれだけ、業務部門はこれだけ、だから産業部門はこれだけという形で、それらを足し合わせたときにちょうど日本で、京都議定書で達成しなければいけない目標とちょうど合致していますよねというふうにはなってないわけです。まさに自分たちはこれだけやりますという宣言があるわけですね。  特徴の二としましては、先ほど言いました指標自体目標設定自体自主性ですね。これは選べるという意味での自主性。  それから三番目、参加するかしないかですね。もちろん業種自体がまとまって経団連自主行動計画に入りますから、業種で参加を決定すれば業種としてはある種半強制になるんでしょうけれども、参加するかしないかが本来自主的になっていると。  それから、実はその自主行動計画の中で、そして更に業種の中で各企業ごと排出削減努力をどうやって割り振っているか。これ自体が非常に実は不透明でして、少なくともここのルールを透明化していく必要があるのではないかというふうに思います。そうでなければ、フリーライド問題というものが発生していく可能性があるというふうに思います。  それから最後に、やはり自主自主たるゆえんの一番重要な点は、仮に目標が達成できなかったとしても有効なペナルティーはないということですね。  現在、EUETSヨーロッパで行われている排出量取引制度の場合でいいますと、トンカーボン当たりユーロの罰金というものが不遵守の場合には科せられます。大体、現在のEUETSにおけるマーケット価格トンカーボン当たり二十ユーロ前後ですから、五倍の罰金が掛けられることになる。これでは不遵守の場合には割に合わないという、経済合理的に見て当然の判断が成り立つような水準にペナルティーが科されている。これが自主行動計画にはないという問題があります。  こういう流れはなかなか、利潤の最大化を目指して国際競争でしのぎ合っている企業温暖化対策の方へ力を振り向けてくださいと言ってもなかなか難しいというふうに思います。  諸外国では既にEUETSやオーストラリア、それからアメリカで検討が進んでおり、将来はこれらの各国で今進んでいる排出量取引制度が世界的に連結をしていきまして、グローバルなカーボンマーケットと呼ばれるものが恐らく立ち上がってくるであろう。そして、今EUとアメリカの間でその国際ルール作りというものも進んでいるということになっております。  さて、そうしますと、排出量取引制度がなぜ必要かということをお話し今までしてきたわけですが、具体的に、じゃ制度を設計する場合のポイントとしてどのような点に留意することが重要なのかというお話を今からさせていただきたいというふうに思います。  もしこの排出量取引制度を入れるとすれば一番問題になるのが、まずそのエネルギーの流れの中で上流に行くのか下流でやるのかという点です。  上流というのは石油の輸入段階精製段階ですから、ここでもしつかまえて制度設計すれば、日本の場合一〇〇%近く化石燃料を輸入しているので、ほとんど確実にコントロールできるだろうというふうに思われるわけですが、しかし実際にエネルギーを燃焼させている段階ではないわけですね。そうしますと、上流でやってしまいますと、確かに数少ない精製業者輸入業者の間で小規模に取引が散発的に恐らく行われてという姿が想定できるわけですね。そのコスト下流に転嫁されてくる、こういう形でインセンティブがわくんでしょうけれども、そうであればほとんど環境税に限りなく近いようなスタイルになっております。  私自身は、下流で実際にエネルギーを使用していて、そしてその生産技術を持っていて、どこでどういうふうにすれば実はCO2削減できるのかという情報と技術をちゃんと持っている下流企業、ここにきちっと規制ポイントをつくり排出量取引をやってもらうべきだというふうに考えております。  この一番最大のポイントキャップというものですね。これをどういうふうに設定するかということだと思います。  私たちの提案というのは、京都議定書をまずは遵守するということを想定しておりますので、まさに京都議定書日本目標というものからブレークダウンして、産業がそのうち幾らを受け持つべきかという形で上からトップダウンで物事を考えていくという考え方を取るべきだというふうに考えています。  これとは逆で、現在、経済産業省経団連が主張されているのはボトムアップ型で、積み上げという言葉が日本でよく使われていますが、実際にどれだけ可能かということをまず計算し、それを積み上げていった結果、総量で幾らになったかという考え方。このトップダウンボトムアップはかなり違うわけですね。  ですから、同じ総量目標とか絶対量という言葉が使われていても、どっちの考え方を取るのかによって全然違うということは御注意いただければというふうに思います。  私たち自身の導出というのは、こういう形で京都議定書目標をブレークダウンしていきながら産業セクターに割り振られるべき努力はどの分になるかということを割り出していくということですね。考え方は非常に単純でして、過去の平均排出量というものを参考情報にすればよいのではないかということです。  つまり、エネルギー転換部門産業部門工業プロセスとここで出てきておりますが、こちらの過去の比率というものを割り出しますと、エネルギー部門は、例えば過去二〇〇〇年から二〇〇四年の平均の比率、排出率は二九%、産業は三〇、工業プロセスは四というふうに出ているわけですね。この比率に実は応じて、これから課されるべきキャップに対しても同じ比率で排出削減努力を求めていきましょうという考え方になります。  こうした産業部門が決まれば、鉄鋼には更に同じように、鉄鋼が過去で四〇%の責任を持つのであれば四〇%の削減努力、四〇%分まで削減努力をお願いしますということになるわけです。さらに、鉄鋼が決まれば、例えば新日鉄がそのうち四割を占めているならば、やはり四割を割り当てていくというようなことになります。そうしていけば、実は事業所レベルまで下りることが理論上は可能になります。  ただ、実はEUETSということで、ヨーロッパで既に行われている排出権取引を見ますと幾つかの問題があります。今お話をしましたのはグランドファザリングと呼ばれている方式であります。これは実は非常に良いと思われている点は、つまり導入しやすさでありまして、今お話をしましたように、過去の平均排出量に基づいて無償でもう排出権を配ってしまおうという考え方です。  ただし、これをやりますと、過去にたくさん出している人が逆に言えば次の期はたくさん排出権をもらえるということになってしまいまして、企業行動は、それならば枠いっぱい排出しようじゃないかという誤ったインセンティブが働いてしまうという問題が起きます。これを克服するためには、今日は詳しくお話ができませんが、オークション方式ベンチマーク方式というものになるかというふうに思います。  日本で、こういった形で、今は排出量取引制度の本当にポイント、骨子のみをお話をいたしましたけれども、これがなぜ非常に大きな反対を浴びるかというふうに言いますと、それは産業国際競争力を失わせるというポイントです。これはヨーロッパでも数多く行われた議論ですが、私自身は実は必ずしもそうではないのではないかというふうに考えております。  まず、日本中長期目標の設定を行い、そしてそれと整合的な形で今日お話をしたキャップ・アンド・トレード型を入れることでむしろ実は、このスライドの三点目に書いておりますように、つまり長期の見通し企業の側に生まれるわけです。将来、設備更新技術開発を考えておられる企業は、スケジュールを二十年、三十年先まで示されると、それを前提として行動するようになります。こういった形で見通しを示した上で、企業はむしろそれに向けて投資計画を行っていくだろうというふうに私自身は思います。  それから、何よりもこれからはマーケットにおける公平な競争とは何か、公正競争とは何か、その概念が、やはり環境を織り込んだ形で市場の公正競争の概念というものが生まれてくると思うんですね。これまでは環境に対して悪いことをやっていても、それはコストを節約できるからいいというそういう競争概念で来たわけですけれども、これからは労働規制や衛生に関する規制と同じような水準に環境に対する規制が強まってくるというふうに思います。ですから、環境に配慮した形で利潤最大化を行ってこそフェアな競争であるという社会に入っていくと思います。  最後に、時間もなくなりましたので、こちらの点、日本にとって実は低炭素社会へ行くことがマイナスなんじゃないんだと、むしろ日本化石燃料の依存を減らしながら、そして新しい技術革新を行って、新しい産業革命というふうに言っていいかと思いますが、そういう担い手になっていくんだというふうな形で低炭素社会への移行を積極的にとらえて、むしろチャンスだというふうにとらえるべきだというふうに考えます。排出量取引はそのための非常に中核的な要素になることは間違いないというふうに思います。  以上で私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  7. 加藤修一

    委員長加藤修一君) ありがとうございました。  次に、浅岡参考人にお願いいたします。浅岡参考人
  8. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 浅岡でございます。環境NGO気候ネットワーク代表をしておりますが、本業は弁護士でございます。(資料映写)  気候ネットワークと申しますのは、十年前、九七年の京都議定書が採択されました国連の会議の成功のために日本の市民が気候フォーラムというものを立ち上げまして、私もそこに関与いたしまして、京都議定書は採択されましたけれども、その後のこれを発効、また高めていく、実施をしていくという課題が大きいと思いまして、気候ネットワークという名前にしまして、市民の活動を継続しております。私は、今その代表という立場にございます。  こうした活動に加えまして、今私どもは気候ネットワーク情報公開請求主体になりまして、省エネ法定期報告に基づきます排出量経済産業省への報告情報開示請求をいたしまして、非開示が相当ありましたので、そこにつきまして訴訟を提起しております。決して国に敵対するという趣旨ではございませんで、私も中央環境審議会などの委員に加えていただきました審議の基礎となる情報が十分ではないと痛感いたしましたので、私ども自身開示請求をしているところでございます。現在、最高裁と東京高裁に係属しております。その整理いたしました一部が、皆様に配付いたしました昨年十月二十三日のエコノミストの資料でございます。  先ほど諸富先生から排出量取引につきましての背景の御説明がございましたが、私は国際交渉ないし国内の政策づくりの観点から背景を申し上げたいと思います。  御案内のとおり、昨年十二月、バリでCOP13の会議がございまして、京都議定書の発効後三回目、COPMOP3の会議も併せてございました。そこで二〇一三年以降の国際的な排出削減の枠組みの交渉を開始するという議論合意を見たわけでありますが、そこで合意をされたことは、この間、十三日の議論でもよく審議されておりますけれども、気候変動枠組条約の下での中国など途上国責任また先進国の中のアメリカも加わった仕組み議論をする場として、COPの中にAWG、アドホック・ワーキング・グループを設ける、そこでバリ行動計画というものが採択されましたが、もう一つ、京都議定書三条九項の下に、二〇一三年以降、第二約束期間先進国の約束の内容を検討することが既に二〇〇五年から始まっておりまして、そこでの合意ができております。さらに、京都議定書の見直しをどうしていくかということについての検討項目も合意をされております。  こうしたことでありますが、よくツートラックと鴨下大臣がおっしゃっておられますが、上の二つのトラックで二〇〇九年の合意を目指して行われます。これがコペンハーゲンでございます。既に始まっております。  日本に関しますバリで合意された重要な数字というものを改めて確認させていただきたいと思いますが、最も低いレベルで温室効果ガスの濃度を安定させる、気候を安定させるために世界の排出量を今後十年から十五年にピークを迎える。世界で二〇五〇年までに二〇〇〇年比で半減するよりもはるかに低いレベルに削減をする。先進国につきましては、全体で二〇二〇年までに九〇年比で二五%から四〇%削減する。これが日本に関連する大きな数字であります。  こういうことを盛り込むかどうか、最後の最後まで大変議論になりまして、最終日の午後六時、これをもって終わったわけでありますけれども、合意をされまして日本政府から反対の声はございませんでしたし、オーストラリア、カナダ、ロシアも賛成の意を表しました。こうした中で、日本に関しましてこのAWGの最後の数字につきまして政府からしっかりした答弁がいまだないということは残念でございます。  問題は、この最も低いレベルで安定化させても、工業化の前から二度から二・八度ぐらい上昇してしまうというレベルであるということであります。そうしたレベルに向かっていくために先ほどの数字を図示いたしましたところ、大体こういう流れで、青いのが世界全体のライン、赤いのが日本のライン。少々上下がありましても、大きくこうした右下下がりの傾向の中で日本や世界の経済あるいは低炭素社会をより良いものにしていくにはどうしたらいいのかと、そうした知恵が今世界全体に問われているわけであります。  先ほど申しましたIPCCの勧告をレコグナイズするという、意見をレコグナイズするという、町村長官もおっしゃっている部分につきましての表がこれでありますが、IPCCはカテゴリーⅠからⅥまでの表を示していますが、最も低いレベルといいますとⅠでありますけれども、Ⅰよりも少し高いレベルになるという数字になります。  といいますのは、世界の総量を十年から十五年、福田首相は二十年と言っておりますが、そうしますととても二度から二・四度ではとどまらない、もっと三度に近づいてしまうと、こういうラインを行っております。  先ほども世界の流れについてお話ございましたが、ちょっとフォローいたしますと、この年末から今年にかけまして大変大きな温暖化に関する政治的な動きがございました。昨年一年、十二月までは本当に動きませんでしたけれども、国内におきましては、大きな国内的にも変化があったと思います。  まず、国連、G8サミットに向けまして、MEMと申しますアメリカが主導する主要経済国の会議に関連しまして、十二月のCOP会議、一月三十一日、MEMの第二回会合がございまして、この三月には、日が抜けておりますが、二年前のG8グレンイーグルス対話の最終合意がございます。こうしてG8を迎えてまいります。  アメリカにつきましては、ブッシュ政権の下でございますけれども、昨年十二月四日、リーバーマン・ウォーナー法案、排出量取引を中核といたします大きな包括的な法案が上院の委員会を通過しております。大統領選挙のその後の温暖化政策もかなり見えてまいったと思いますし、州レベルでは排出量取引が既に具体化され、EUとのリンケージが進んでおります。  EUにおきましては、第二約束期間といいますか、第二フェーズが今年一月一日から排出量取引につきまして入っておりますけれども、この一月二十四日に二〇一三年以降の大きな政策パッケージを発表しております。一三年以降は非常に大きな削減の方向を示しますとともに、二〇年までに九〇年比で二〇%、世界が一緒に協力するのであれば三〇%と、再生可能エネルギーも一次エネルギーに対して二〇%増やすということでありまして、既に排出量取引につきましての二〇〇三年のEU指令の改定案が出されております。着々と動き、しかもオークションを原則としていくという方針が出されております。  オーストラリアにつきまして、ブッシュ政権と同じ態度を取っておりましたが、昨年の首相の交代をもちまして、十二月、京都議定書に参加いたしまして、この二月六日、包括的な温暖化政策を発表いたしまして、国内排出量取引の法案も策定したということでございます。これは二〇〇九年採択、二〇一〇年施行を目指すということで国内協議が進んでおります。  これに対しまして、日本はバリの会議では御案内のとおり大変国際社会から批判を受けたわけでありますけれども、これを回復すべく、ダボスの会議で福田首相は、総量削減目標も含めまして一応は提案をされました。  しかしながら、そのように国別総量目標を掲げて取り組みますとはおっしゃられたのでありますが、公平さを確保するよう提案をいたしまして、そのためにセクター別に割り出し、今後活用される技術を基盤として削減可能性を積み上げることを提案いたしまして、さらに一九九〇年というこれまでの基準年を見直すべきだという提案もしております。  このことは、これは経済産業省日本経団連がかねて主張しておられたことをそのままおっしゃられたように受け取れまして、大変これは今後早く修正いただく必要があろうかと思っております。  二月八日には、昨年一年掛けました環境省と経済産業省の合同審議会の最終報告がございましたが、ここは、こうした世界のCOP及びMOP、そしてダボスの会議、G8を控えているという大きな動きにかかわりませず、昨年一年の停滞した合同会議の報告書そのままの最終報告となりました。大変意見は対立いたしましたが、結果的には何も動いておりません。私も三十回の委員会のほとんど出席いたしましたが、大変残念な会合でございました。  ところがその後、二月二十日になりまして、経済産業省から国内排出量取引を検討するということが表せられました。しかし、二〇一三年以降であると。ここが今問題でありますし、セクター別であると。  このセクター別の効率目標を積み上げるということと国の総量目標とがどうかかわるのかということでありますが、このように甘利大臣も二月二十二日、産業・分野別の最も省エネが進んでいる企業の省エネ水準を目指すベンチマーク方式がいいというふうな発言あったと報道で私は拝見をいたしました。しかし、これには大変問題があると思っております。  効率目標と国別総量目標がどうして一致するのか。これは、自主行動計画がどうして最後、総量につながるのか分からないという不透明さをそのまま国際社会に持ち込むものでありますし、先ほどお話ありましたように、業種の中では石炭を大変多用してきた業種、その中でのトップランナーを選びましても全然産業構造の転換は起こりません。  また、ベンチマークというものの指標が極めて不透明で、まだ情報も十分ではありません。これが使えないというわけではありませんが、これをもってすべて判断するということができる情報ではありません。しかも、これにかかわる情報経済産業省だけが独占をしているということについて、これまでの問題を引きずると思います。  また、基準年を一九九〇年から引き下げ、後ろに遅らせようという提案をいたしました。日本は、アメリカ排出量が増えておりますから、そこを基準にいたしますと日本アメリカにとっては都合がいいというふうにだれから見ても見えます。この九〇年からといいますものは、IPCCの第一次報告以来ずっとこれを基準にして条約も作られ、これまでの取組がありました。少なくとも先進国削減につきましてこうしたことをするということは、極めて日本は手前勝手であるというふうに見えると思います。このことはG8の議長国として信頼を失うのではないかと思います。  町村長官は、拡大EUになってEUはとても楽になったんだと、こういうふうにおっしゃられたように、拝見をいたしましたが、EUの京都議定書における共同達成は十五か国で元のところで作られておりまして、これを変えようと思いますとまた大きな議論をしなければなりません。  それからもう一点は、すべての主要排出国全員の参加が必要であると、すべてが重なってしまいましたけれども。  確かに、中国やBRICsの国々、インドなども含めまして途上国もこれから十分な努力をしていただかなければいけませんが、それが先進国と同じである、参加の仕方が同じであるということはないわけでありまして、常識で考えてもそうだと思いますが、これらを含めて、同じものだと誤解をされるような議論が進んでいるという点は大変問題だと思っております。  ちょっと時間がありませんので、進めてまいります。  こうした議論を含めまして、福田首相の提案でもそうでありますが、ダボスの会議でもポスト京都の枠組みのためにと首相はおっしゃっておられます。これは、京都議定書はもうなくてよいというもし御主張であるとすれば、日本は大変大きな外交的な失策をすることになる、失うものは大変大きいと思います。  しかしながら、新聞報道でも二〇一二年で京都議定書は終わるのだと、政府もしばしば京都議定書以降の枠組みと、こういうふうな表現をされます。安易に使われているところもありますが、よく考えてお使いの方もいらっしゃいます。京都議定書は二〇一二年で終わりにしたいのだということがあるからであります。  しかし、京都議定書先進国の国別目標を割り振りまして、それを法的拘束力のある目標としてしっかり守っていく仕組み、それを京都メカニズムなどでカバーしていく仕組み、その他CDMも使いまして途上国もサポートしていこうと、こうした京都議定書の枠組みは今後も大きく変わることはないと私は思います。  そのことは京都議定書の中に予定をされておりまして、二〇一二年の七年前には、遅くとも次の、二〇一三年以降の第二約束期間目標交渉を開始しなければならないということがありまして、その条項に基づきまして京都議定書のAWGは既にモントリオールで開始をしております。その合意がバリであったわけであります。これが大きく変わることは私はないと思います。  しかし、日本がこのように不平等条約であると言ったり、日本にとって不利であるとか、欠陥であると声を大きくして言っておりますと、二〇〇九年合意をしなければなりません、しなければ地球に対して、本当に温暖化を、将来世代に対してもう守っていくことはできないわけですけれども、それは途上国にとっても深刻な課題でありますが、そこででき上がる仕組みの中に京都議定書という名がなくなってしまいます。すべてが包括コペンハーゲン議定書となってしまう。それで日本は本当にいいんでしょうかということを申し上げたいと思います。  議員の先生方には、決してポスト京都議定書とは言わない、ヨーロッパの国々も、ポスト二〇一二と申します、ビヨンド二〇一二とは申します。しかし、これは京都議定書の第二約束期間であります。ですから、強くそのことをお願いしたいと思います。  バリでこうした化石賞をもらったということをよくお聞きいただいたと思いますが、なぜ化石賞かといいますと、日本の取組のどこが悪いと言っているわけではないんです。こうした次の交渉事に対して、京都議定書の精神を生かせないと、後ろ向きのことばかり発言するということであります。  バリの会議の第一日目に、本日の化石賞、NGOでやっております化石賞の一位、二位、三位を日本が独占いたしました。一位というのは、先進国総量削減目標を、日本はそういう考え方を取るというふうに明言しなかったと、効率目標という声が国内から強いということであったと、これに対して送られました。これはダボスで言葉だけは変わりました。中身が分かりません。しかし、第二位というのは、京都議定書の生誕の地である日本京都議定書にさようならを言っていると、こういうふうな発言だと、こう取られたことであります。  議員の先生方には、これから強くそのことを福田首相に、あってはならないということをお伝えいただきたいと思うわけであります。  京都議定書目標達成計画におきましては、政府は何とかできると言っております。し得るという表現であります。しかし、私どもの見通しでは一二%をこのままでは超過すると見ております。  どこに足りないのかという点では、一億五千万トン、我々は足りなくなるだろうと見ております。そのうちのエネルギー転換部門が緑の部分で、こんなに大きいというのが左の図であります。産業は主に鉄鋼で足りない分であります。それから、右の方は、自主行動計画で足りない分、日本全体の足りない分、不足分ということになっております。これらはちょっと今日はスキップいたしますが。  一億五千万トンの試算の内訳、私どもの内訳はこの部分であります。一番上の七千六百万トン不足量としている部分につきましては、政府の合同会議の報告書の中からは表に出てまいりません。これは、発電部門におきまして電力会社が必ず達成するはずであるから、はずの、予定でありますということになっている隠れた不足量であります。電力会社は、海外からクレジットを買ってきて達成すると、こう言っておりますが、将来も大きく削減しなければいけないものをいつまでも買い続けてやるのですかという点を考えなければいけないと思います。  それから、産業部門目標を強化いたしましたと、甘利大臣もそのようにおっしゃっておられました。しかしながら、今回の合同会議お話の中で、目標を強化した業界というのは一一%であります、不足量に対して。そのほか、この肌色の部分といいますのは、強化したと言いますが、指標をいじくっておりまして、本当に強化なのかどうかが分からないという不透明な部分であります。それから、目標を強化したという部分も、四分の一は確かに現在の水準よりは下がっております。しかし、四分の三は既に二〇〇六年に達成した水準、これをこのまま維持するという目標であります。  このようなことでありまして、こういうことが行われる自主行動計画といいます基であります、甘利大臣がしばしばおっしゃっております削減四千二百万トンというのは、これは一体何なのかはいまだに明らかでございません。私ども、審議会におきましても、なぜ四千二百万トンがどういう根拠で出てきているのか分かりません。これは経済産業省の推定ケースから計算したんですというんですが、推定ケースがどのようなものか全く知らされないわけであります。  先ほどもお話ございましたように、経団連目標は二〇一〇年で九〇年レベルのゼロという目標であります。政府の目標達成計画におきます産業部門目標はマイナス八・六であります。この間どうするのかの説明はいまだありません。  それから、業界ごとに達成しやすい目標指標を選びます。目標数値を選びます。その内訳をお配りいたしておりますので御覧いただいたらいいと思いますが、総量目標原単位目標、それも生産量エネルギーの、エネルギーの使用量とCO2の使用量で組み合わせておりまして、都合のいい目標の仕方であります。  さらに、省エネ法で年一%効率改善をするという目標がございますけれども、それを達成できているところ、できていないところ、このようになっております。後で御覧いただければと思います。  日本は、このような自主行動計画に依存して二〇一二年までこのままやりたいというのが経済産業省の今日の排出量取引についての発言の基本であります。  世界はどう動いているのか。先ほど申し上げましたように、ヨーロッパの諸国、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダを含めまして既に制度化が運用の段階にもう入っていたり、それが直前にあるということであります。我が国においては検討を開始するかどうかの議論をしていると。なぜこんなに遅れてしまったのかということについてお考えいただきたいと思います。  私どもは、情報公開請求をいたしまして、そこでこの排出量取引というものが非常に有用だということを改めて数量的に確認をいたしました。  一つは、第一種の事業所、約五千の事業所開示請求をいたしました。それでおよそ日本CO2の六四%を占めますけれども、内の百八十ほどの事業所企業数におきますと八十二社ほどで日本CO2の半分を占めます。その大半が電力と高炉の製鉄所、大規模化学工場であります。こうしたところにしっかりした削減目標削減インセンティブを与えていくと、努力するところが報われる仕組みをつくらなければやる気も起こらないだろうと思います。  それから、燃料別使用量の実態を知ることがかなりできました。本日配付いただきました別の資料は、省エネ法に基づきます経済産業省に報告をしなければいけないデータであります。どのような燃料を使っているのか、どのような効率であるのか、どんな設備を新たに入れたのか、その成果はどうであるのか、そこまで報告することになっております。  そこで、石炭やセメント、コークスのような排出係数の高いもの、天然ガスの一・八倍もあるような石炭をたくさん使っている業種はどこか、同じ業種の中でも、どの事業所がそれを使っているのか。同じ会社の中でも、使っている石炭の多い工場と少ない工場があるわけです。これは削減のポテンシャルを示すものであります。  これだけ日本は乾いたぞうきんではないんだと。今日の日経新聞の社説にも載っておりましたが、これは、乾いたぞうきんと言われる部分の多くが家庭や運輸の少ない排出量の成果であるという側面とともに、事業者の中にもこうしたばらつきがあるということです。  そして、このエネルギー効率のばらつき度というものも私どもは電力とかセメントなどで作りまして、これはセメントのグラフでありますけれども、国内の工場でもこれだけばらつきがございます、失礼しました、発電所の大きなばらつきでありますけれども、こんなに違いがあります。この中で石炭火力発電所、天然ガスの発電所、石油の発電所等を区分をした表も作っております。それはエコノミストで御覧ください。  公平性が難しいと、キャップを掛けるのに公正性の確保が難しいと言われますが、省エネ法情報は、先ほど申し上げましたように詳細な情報がございまして、削減ポテンシャルを示すとともに、これまでの過去の取組もよく分かります。どんな設備投資したのかも分かりますし、現在の効率も分かります。これを配慮に加えていくということは十分できることであります。それは公平性を確保することに十分こたえるものではないかと思っております。  しかし、この情報経済産業省だけが今後とも把握し続けるといいましょうか独占するということの中では、我々は検証していくことができません。この透明性をどうして確保するのかということは、今後の排出量取引あるいはベンチマークというものを考える上でも不可欠の条件だと考えております。  百八十の事業所日本排出量の半分を占めるという詳細グラフはこのとおりでございます。鉄鋼は十七の高炉で一三%を占めております。ここが最も強く反対をしております。発電所も石炭火力発電所が最も大きな地位を占めているということはお分かりいただけると思います。  このように、私の今日の意見としましては、一つは、ポスト京都という言葉は決して日本から、政府の関係者、国会から発出しないようにしていただきたい。京都議定書の第二約束期間を必ずちゃんと目標を作っていくのだ、これを生き長らえさせるのだと。百年、世界の温暖化政策を日本はしっかり責任社会に位置付けて認識していただくのだという国際的な位置付けというものに先生方によろしく取組をいただきたいと思いますとともに、そういたしますためには、日本はこの遅れた政策のラストランナーともいうべきものをトップランナーに急いで変えなければいけません。  幸いなことに、日本には詳細な省エネ法のデータがあります。EUやアメリカが今苦労していることを我々は既に短期間で追い付くことができます。しっかりした仕組みさえあればできるわけであります。これは政治の力でやると言っていただくしか今はございません。  二〇一二年までに何が必要なのかという点では、今日、自然エネルギーのことを申し上げるのを忘れましたが、抜けておりますけれども、そのことも含めまして、特に燃料転換を進め、自然エネルギーをたくさん入れられ、そして努力する企業努力する事業所が十分に投資に見合い、報われると、そうしたこと、それが炭素価格を付けて、かつ世界全体で削減に寄与し、日本の中も削減すると、こうした仕組みをつくっていく政治の決断に期待したいと思っております。  少し時間延びまして、失礼いたしました。
  9. 加藤修一

    委員長加藤修一君) ありがとうございました。  次に、山根参考人にお願いいたします。山根参考人
  10. 山根一眞

    参考人山根一眞君) 温暖化問題というのは実は非常に分かりにくい、ほとんどの国民の方たちも理解をしていないんではないかなと思います。私自身も、今お二人の先生方のお話伺って理解できてないところがたくさんあります。これは地球科学、化学、物理学、気候学あるいは最近は経済学、生物学、あらゆる学問、分野の問題がここに入っていまして、その一つ一つが理解できないと分からなくなるという問題ですが、つまるところは何かといえば、僕は、地球のあらゆる生命が死滅する、つまり人類も含めてあらゆる生物が死に絶えるという問題だというふうに考えているんですね。(資料映写)  そういう視点から、私はジャーナリストですので、この温暖化問題を少し基本的なところからもう一度見直して考えて、皆さんと考えていきたいというふうに思っています。  時間がありませんので本当に簡単にいきますけれども、まず、この地球という概念考え方はやはり宇宙から地球を見るということから始まりまして、今私たちが描いている地球像というのはこういうものだと思いますけれども、じゃ、この地球がどうして温暖化になっていったんだろうかと考えますと、大気中に二酸化炭素が増えたということなんです。  大気というのはどれぐらいの量があるんだろうか。これもほとんど知られていないか理解されていないことですが、これは地球のへりを非常に大きくアップにした写真なんですけれども、ここに見えているのがスペースシャトルです。大体これぐらいの高さのところを飛んでいます。三百五十キロぐらい上空ですね。  私たち排出した二酸化炭素というものはどの辺りにどれぐらいたまっているかというと、大体標高八千から一万メートルぐらい、まあヒマラヤの頂上ぐらいです。それぐらいまでしか空気がありませんから、重立った。その中に約二百年にわたってたまってきた。  どれぐらいたまっているんだろうか、あるいは元々どれぐらい二酸化炭素というのはあるんだろうかと。  二酸化炭素は大気中にありますと、地球に当たった光が熱となり赤外線となって宇宙に放射されるのを反射する鏡か布団のような役割をしていますけれども、これは二リットルのウーロン茶の中でどれぐらいが二酸化炭素かというと、大体一滴ぐらいですね。元々、二酸化炭素というのは極めて大気中に少ないんですね。極めて少ないために、私たち排出している二酸化炭素が極めて大きな影響を持ってしまう。わずか一滴の二酸化炭素で私たちの地球を平均気温十四度から十五度に保ってくれているというのが二酸化炭素の役割ですね。  ここに私たちがどんどん出してしまったということが非常に大きな問題です。扱いにくいものだと思います。  これは宇宙から地球を見たところですけれども、夜の地球ですけれども、さん然と輝いているのがアメリカヨーロッパ日本。そして今、中国とインドがどんどん明るくなっていきます。これは何を示しているか。ここから二酸化炭素、たくさん出ているということが言えるわけです。  では、どうしてこういうことになったのか。必ず言われるのが、皆さんも御存じのように、産業革命以来ということです。ところが、産業革命以来といって、産業革命で何があったんだろうかということに関して、またこれがほとんどメディアでも語られることがありません。  私は、これもいろいろ考えたんですけれども、結論は火です。人類が言語と道具と火というもの、この三つを手にしたことによって私たちの文明を築きました。今日のこの豊かな文明はこの三つによるわけですね。そのうちの火というものを私たちが使うことによって、これはもう二酸化炭素が大気中に出ていくということは宿命です。  これはネアンデルタール人の世界ですけれども、この火によって暖を取り、そして食べ物を調理をし、そして照明を得ると、そういう私たちの身体の安全や健康や寿命というものが実現できたわけですね。  こういう火の証拠を持っている人を探したいと思って見つけたのが、私は、アイスマンという、五千三百年前の人、これは一九九一年にイタリアのアルプスの氷河で発見されたミイラですけれども、彼がその火種というものを持ち歩いていました。彼は製錬を専門とする人だったんですけれども、金属をやはり火で溶かすことによって道具を作ることもやっていた。そういう歴史に残る、歴史的な最初の人なんですね。そういう時代から、もう私たちは火というものによってこの文明をつくってきた。  それが産業革命で何が起きたかというと、これが世界で最初のイギリスのコールブルックデールというところにあります製鉄所、世界最古の製鉄所です。そこの製鉄所で初めて、それまでは木炭、木を使っていましたけれども石炭を使って、それをコークスという燃料にして、そして効率的に鉄を造る方法を見出して、そして世界最初の鉄の橋、アイアンブリッジというのが造られました。  これが言わば産業革命の原点、ここから産業革命が始まったと言われています。  こうしてできた鉄によって今度は蒸気機関が造られます。蒸気機関が更に何をするか。更に石炭を掘り出す。これはその炭鉱の様子です。化石燃料と機械というものが、化石燃料によって鉄を造り、鉄がまた新しい機械を造りということで、これがスパイラル状に私たちの大きな文明をつくっていくことになります。  これは更に進化した蒸気機関ですけれども、それが何を造ったか。今度は繊維機械を造りました。この繊維機械によって何が産業革命に起こったか。  まず、衣食住の衣から始まりましたけれども、これは紡績機ですけれども、更に大きなこういう蒸気機関ができるようになる。そうしますと、三千人ぐらいの労働者に匹敵する仕事をするようになります。そして、この蒸気機関による繊維産業を支えたのがアメリカからの綿花の輸出です。  アメリカという国は、当時はまだ農業国ですから大変な量の綿花を、言わば農産物をイギリス、ヨーロッパに輸出をして、ヨーロッパはそれをもとにして製品を作るという形で富を得ていくわけですが、じゃ、アメリカの繊維産業はどういうふうにして支えられたか。綿花工業はすべてアフリカから連れてきた、これ奴隷船ですけれども、奴隷の労働力によって賄ってきたわけですね。  ですから、今アメリカが抱えている、あるいは世界が抱えている人種問題というものも、これは言ってみれば産業革命にやはり原点があると。私たち化石燃料を使い始めたのと同じ意味で、同じときにこの問題が起きてきたんだということも考えなければいけません。  そして、この産業革命によってもたらされた富、これはマンチェスターの綿花の取引所ですけれども、この部屋は世界最大の部屋と当時言われまして、ここで言わば市場経済あるいは資本主義の基本というものが生まれて、富の蓄積が行われるようになるわけですね。  これが産業革命の最初の象徴的な絵と言えますが、この赤く燃えている、これは何かよく分からなかったんですけれども、専門家に聞きましたら、これは石炭を蒸し焼きにしてコークスにしている様子なんですね。ですから、私たち産業革命というものの、これはまさしく今の温暖化の始まりだったんだということが言えると思います。  では、こういう温暖化というものは一体いつからそういうことが言われるようになったのか。  実は驚いたことに一八二七年に既にこの温室効果ということが科学者によって語られ、そしてその原因が二酸化炭素にあるという、人間が出す二酸化炭素にあるということは明治二十九年にもう語られているわけですね。そして、アメリカの学者が昭和三十三年にはそれが増加をしているということを伝え、そして昭和五十四年にはアメリカの科学アカデミーがそのことに対する警告を発し、そして六十三年にIPCC、気候変動に関する政府間パネルが発足します。これは世界の科学者の英知を結集したものと考えていいと思いますけれども、九〇年、平成二年に今日の温暖化に関するスタートが切ったと、関心がですね。そして、ブラジルのリオデジャネイロで地球サミットが開催されました。  これは画期的な会議で、実に世界の百十八か国の大統領、首相、元首、総理大臣、あらゆるトップが集まりました。残念ながら、そこに一か国だけ出席しなかったのが日本、宮澤さんです。  どうして行かなかったのか。このとき国会ではPKO法案でもめていました。わずか三日か四日、休みを取って国会を、行かせてあげてほしかったと私は思うんですけれども、これで日本に対する、実は基本的な日本のこの問題に対する熱意のなさということが世界に強く印象付けられました。このとき宮澤さんを行かせなかった野党の皆さんには深く私は反省を求めます。  九七年、この同じ年ですけれども、その後、私は環境による産業革命という意味で環業革命を提唱しました。その年の暮れに京都会議が開催をされまして、今日の言わば温暖化への取組が始まりますけれども、二〇〇〇年には、過去千年間で最も暑い十年間であったという報告が出ます。  事もあろうに、そしてブッシュ大統領は二〇〇一年に京都議定書を離脱します。このとき、CO2排出削減すべきでないということをはっきりと明言しているわけですね。なかなか各国が批准しないために遅れた京都議定書発効をやっと二〇〇五年二月の十六日、私も京都へ行きましたけれども、この日が最初です。残念ながら、京都でありながら小泉さんはここに参加してくれませんでした。  そして、二〇〇七年、去年ですね、非常に大きな意味を持って私たちに突き付けられたものがIPCCの第四次報告書ですね。  これは非常に怖いことが書いてありまして、よく読んでみますと、この部分なんですけれども、気温が一度から二度、三度、四度上がった場合に何が起こるか、生態系で何が起こるか書いてあります。そこで、わずか一度上がっただけで、ここで最大三〇%の種が絶滅リスクと書いてあります。つまり、地球上の三割の生命が滅びてしまう危険が一度温度が上がるだけで起こるぞということを述べているわけですね。  もちろん、IPCCの報告書では、気候は二一〇〇年に六度上がるとかそういうことが言われていますけれども、幾つものシナリオがあって、懸命にやればそんなに上がらないわけで、私たちが、マスメディアが報じるときは最も極端な例で約六度以上上がるという言い方をしているわけです。でも、これを見て分かりますとおり、一度から二度で既に三〇%の生物が絶滅するというのは、このシナリオの中で一、二、三、四、すべてに当てはまっているんですね。  そういう中で、昨年、ゴア副大統領とIPCCがノーベル平和賞を受賞しました。これは十月の十二日のことでありまして、私は十数年間この問題を訴えてきたんですけれども、この日、実は私の誕生日だったんですね。その日にこの知らせがニュースとして入って、まるで何か自分のことのようにこの日をうれしく受け止めました。  先ほどお話にありました化石賞ですけれども、これはバリ島の会議、非常にたくさん引用されているこの写真ですが、日本はやるべきことはやっているにもかかわらず理解されない、そういう面があるんだと思うんですね。この化石賞についても、実はこの期間中毎日、化石賞が発表されるんですが、ここを見ていただくと分かるように、日本が受賞したのはこの赤いところなんです。そのほか、カナダもEUもそれぞれなりに受賞はしているということは忘れちゃいけないと思います。  しかしながら、こんなポスターまで作られて世界中に配布されて、今もインターネット上にこれが掲示されてアップされたままというのは、非常に私としても不愉快な思いをしています。何が不愉快といえば、そういうことを出されてしまった日本、あるいはそういうことをいつまでも出し続ける人たちというところに対して非常に不愉快な思いをしているんですね。  今年は京都議定書約束年に入りまして、洞爺湖サミット。さて、その先何があるんだろうかと考えますと、今年はどういう年なんだろうかと考えますと、この温暖化の問題の根本は何かというと、ただ単に産業が伸びてきた、あるいは化石燃料の消費が増えてきたということだけではなくて、つまるところは人口が増えたんですね。  今三十八歳の方が、一九七〇年生まれの方が生まれたときの世界の人口は約三十九億人だったんです。京都会議COP3のときの人口はまだ五十八億六千万人ぐらいだったんです。それが今六十七億人、やがて六十八億人になろうとしています。既に京都会議から九億人も人口が増えているんです。更にこのままいくとどうなるだろうか。私のこのワールド・ポピュレーション・カウンターによれば、二〇三四年に百億人を突破します。私はもう生きていないかなと思ったんですけど、一九四七年生まれですから八十七歳です。委員長も同じ年ですので、多分百億の日を迎えるんではないかなと思っております。今三十八歳の方はまだ六十四歳です。  こういう時代に何が来るか。世界の人口の増加あるいは物の消費あるいは化石燃料の消費量を考えると、インド人と中国人が圧倒的な世界を占めているだろうという感じがいたします。昨年、インドと中国へ行ってきましたけれども、そのすさまじいエネルギーは、もう私、言葉も出ないほどでした。両方ともそうです。そして、この問題について私たちが真剣に考えたり論議している間にも、彼らは私たちが手の届かない方向に向かっているんではないかという、恐れに近いものも持っています。  先ほどの、地球上の生物種が三〇%、確実にあるいは危機に瀕する、絶滅に瀕するというお話ですけれども、これはどんなことが起こるかといえば、これにはサンゴ礁が滅びることも書いています。  これは、私が一九九八年にモルディブへ行きましたとき、世界で最も美しいと言われたサンゴ礁、この年、やはり海水温の急上昇がありまして、こんな形でほとんどのサンゴが死んでいました。唖然としました。  IPCCの報告書によれば、全世界のサンゴがわずか一度の気温上昇で、平均気温の上昇でこうなると書かれているわけですね。サンゴ礁は大気中の二酸化炭素を吸収するということがはっきり分かってきていますので、その吸収源がまたこの温暖化によって失われるということにもなります。このサンゴ礁が失われれば、それによって私たちの漁業資源というものも得られなくなり、食べるものも魚も得られなくなります。  こういう私たちの、先ほどもお話ありましたが、文明の在り方を変えなくちゃいけないということになります。私たちは、今まで無尽蔵に地球の資源があると思って、自由に取りたいだけ取って、今もそうですけれども、それを文明の構築に使ってきました。  これは、私が一九八〇年代の半ばに行きましたアマゾンの金山の様子です。八万人がこのようにして金を夢中になって掘っていました。私も夢中になってここに金の権利を有り金はたいて買ったという、欲望に負けました。そういうものなんです、人間というのは。  なぜこんなに金が必要か。今、IT関係のデジタル機器にはあらゆる分野で金が必要です。あるいは触媒、二酸化炭素、自動車の排気ガスを除去するための触媒、あらゆるところにまたこういう希少金属が必要ですね。  これはカラジャスという世界最大の鉄の鉱山です。これもアマゾンにあります。この鉱山、私が行きました九〇年代の後半、一トン当たり二十ドルで鉄が売買されていましたけれども、今七十ドルから八十ドルになっています。中国が中心になってこれを買いあさっているわけですね。  同じような形で私たちは地下資源、化石燃料というものを、これから特にインド、中国がとてつもないパワーでこれを消費し始める時代が到来しているということであります。  そういうことを考えて、私は、ともかく環境による産業革命、かつての産業革命に匹敵するだけのものを、これは人間が起こしたんですから次は環境ということを考えた産業革命を起こすべきだということで、環業革命ということを一九九七年に提唱しました。  その仕組みについては配付した資料に入っておりますけれども、言わば無尽蔵の資源を使って好きなだけな仕事あるいは豊かさを享受する時代を早くやめなければいけないということであります。  さて、今年サミットが来て、じゃ日本世界に対して何をすべきなのかということ、ここでもう少し思い切ったことを原点に返って考えなければいけないんじゃないかと思うんですね。これは、先進国として日本世界の手本にならなければいけないというふうに考えています。  このためには決意が必要です。皆さんの決意が必要です。国というものを引っ張っていく政治家の皆さんの決意と行動が必要です。それは、地球生命絶滅の危機を回避するのだという、言わばリーダーシップを持つということ。そして、今までとは違う新しい地球のマネジメント、そのリーダーになるんだという決意です。そして、それが本当だと世界が納得するだけの行動が必要です。  細かなことは言っても仕方ないです。思い切って、資源やエネルギーの消費量を五分の一にする文明の新しい構築し直しということを考える。  今、二酸化炭素削減をどれだけにするかということが一番大きな話題ではありますけれども幾ら削減しようとも、既に出してしまったものは戻らないわけです。そして、削減しようとも、出すことは出し続けるんですね。ですから、確実に温暖化はこれからも百年続くんです。  そういうことを前にしたときに、何%削減するかという一つの攻防とは別に、もっと大胆な新しい文明を構築していくビジョンを持たなければいけない。それにこたえるだけの企業や科学者の力、日本には確実にあります。あるんです。  私は、約十七年にわたって、メタルカラーの時代という、日本の物づくりの技術たち約八百人にインタビューをしました。彼らは大変な力を持っています。しかしながら、そのチャンスやあるいは場が十分に与えられていないという感じがします。国というものがもっとそこに彼らの勇気と力が出る方策を考えてあげてほしい。思いも掛けない大変な世界を引っ張っていくことができるはずです。  もう一つ忘れていただきたくないのは、温暖化による、温暖化は確実に進みますから、それによって大変な被害がこれから増えていきます。それは、人が命を失っていくという問題であります。そのための対策を今から最も重点的な課題として進めていただきたいということです。  そして同時に、日本がこの分野で世界にイニシアチブを持っていくためにやるべきことが幾らでもある。今年、GOSATという二酸化炭素の観測衛星が上がります。これによって全世界約六万か所ぐらいのポイントがどれだけ二酸化炭素を出しているかの濃度が刻々ともう分かるようになるという、そういう手段を日本は手にしているわけです。これによって世界が、各国が本当に削減すべき値もはじき出されてくるんですね。  そういう意味での科学者たちの今取り組んでいるものは、本当に私たちのこれからの温暖化対策に役立つものが物すごく多いんです。もっとそれに目を開いて、日本は自信を持って、あるいは日本の研究者や技術たちとともにこの問題を進めるための方策を行っていただきたい。  そのためには、口先では駄目です。多分、もう洞爺湖サミットで世界をあっと言わせることは間に合わないと思いますね、今からでは。一体今まで何をしてきたのかという思いが私はしますが、できないことはありません。  例えば、今この温暖化対策に取組をされている省庁は、環境省、経産省あるいは国交省、農水省、文科省、あらゆる省庁がそれぞればらばらに行っていまして、決して有機的とは言えないと思うんです。しかしながら、これは一つの文明を、新しい文明をつくっていくために必要な最も重要な仕事です。そうであるならば、地球環境省というようなものに統合して独立し、そのマネジメントを、半分を民間人とともにこういう機関を動かして、世界のお手本となる政策を次々に実行していってほしいと思います。  サミット間に合いませんけれども、例えば、世界最大規模の日本が誇るたくさんの企業が是非世界に知ってほしいと思っているエコプロダクツの展覧会をプレスセンターの近くで行う。あるいは、すべての自動車をハイブリッドカー・プリウスにする。  これならできると思います。車が足りないということがあるかもしれませんが、私もプリウスを乗っていますけれども、今日は残念ながらプリウスで来ようと思ったら、うちのスタッフが朝早く乗っていってしまいました。奪い合いなんです。ガソリン車に乗るなんというのは、もう乗っているだけで恥ずかしい時代ですね。  日本はプリウスという世界に誇る新しいエコカーを造り上げた国です。であれば、サミットはすべてプリウスを始めとするハイブリッドカーだけでマネジメントをする。私も、車が足らなければそれを言わば供出してもいいと考えるんですね。そういうことによって国民の関心を高めることも大事だと思います。  もう一つ、生物多様性条約というもの、もう一つ忘れてはいけない条約があります。これは、リオのサミットで地球温暖化条約と一緒に新しい道ができた大事な条約です。日本もこれに対する取組をようやく始めましたけれども、忘れ去られて、まだまだ関心が低いですね。ただ、地球温暖化の問題は、生物がすべて滅びるというそういう危機の問題なんですね。であれば、この洞爺湖サミットで是非生物多様性条約に対する大胆な提案をしていただきたいなというふうに思います。  最後に、先日、昨年ですけれども、IPCCがノーベル賞を取る前なんですけれども、八月の末にパチャウリ議長に私会ってきました。そしてこれは、日経BP社が行っている環境賢人会議というものに出席をお願いをしたわけなんですけれども、ちょうどIPCCの総会があるということで、ではビデオでのメッセージをいただくということになりました。大分話し合ってきました。インドまで行ってまいりました。そのメッセージ、実は今日出てくる前にもう一度、三分ほどなんですけれども、見直してみましたらば、日本の政治家の皆さんに是非考えていただきたいという言葉最後にあったんですね。そのために、是非皆さんにもこれを聞いていただきたいと思って、これをもって終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  11. 加藤修一

    委員長加藤修一君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見の聴取は終わりました。  これより、まず各会派一巡で十五分ずつ質疑を行い、その後、十五分、自由質疑を行います。  なお、参考人方々にお願いを申し上げます。御答弁の際は、委員長の指名を受けてから御発言いただくようお願い申し上げます。  また、質疑の時間が限られておりますので、簡潔な御答弁をお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 島田智哉子

    島田智哉子君 民主党・新緑風会・国民新・日本の島田智哉子でございます。  本日は、諸富先生浅岡先生山根先生におかれましては、大変お忙しい中を、また急なお願いにもかかわりませず本委員会に御出席いただきましたことを心から感謝を申し上げる次第でございます。  先生方におかれましては、既に御案内のとおり、本院には、環境委員会を始め本院独自の機関といたしまして長期的に総合的な調査を行う調査会が設置されておりまして、現在、その一つに国際・地球温暖化問題に関する調査会がございます。そして、本日御出席いただきました行政監視委員会につきましては、まさに立法府として行政監視行政評価という役割を担っているわけですけれども、この地球温暖化問題につきましては、今月の十三日に本委員会開催されまして、政府に対する質疑を行いました。  私どもの会派からは水戸委員、そして民主党の地球温暖化対策本部の事務総長でもございます福山議員が質問いたしまして、水戸委員からはバイオ燃料について、また福山議員からは主に我が国自身総量削減目標について、それから排出権取引市場について政府側との議論がなされました。  そこで、最初に諸富参考人にお伺いをいたします。  国の総量目標設定についてでございますが、十三日の委員会福山議員からは、国が総量目標設定することによって政策的にいろんなプログラムが積み上がり、企業も国が総量削減目標を掲げることによって企業の将来設計、経営指針についてCO2排出というファクターが確実に入る形の中で総量削減目標が必要ではないかと、そのような趣旨の発言がございました。  それに対して町村官房長官は、私ども日本目標を言わないと言っているわけではないと、いずれ必要なタイミングにはきっちりと日本として数字は申し上げる時期がある。その必要性はお認めになりつつも時期についての具体的な答弁はなかったわけですけれども、この我が国の総量削減目標設定について我が国としてどのような対応策をとるべきであるのか、この点につきまして諸富参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 諸富徹

    参考人諸富徹君) 島田先生の今の御質問にお答えしたいと思います。  私自身は、福山先生がおっしゃった考え方は極めて妥当な考え方だと思います。  まず最初に、企業行動を考えた場合に、環境というものが伝統的にどういうふうにとらえられてきたかというと、やはり企業の経済計算といいますかコスト計算の外に置かれてきたわけで、環境に対して何かをやるということは常に企業経営にとってはおもしであるというふうに考えられてきたわけですね。  しかし、かつての公害国会以来、公害問題に関してはきちっと法規制、法整備が行われ、基準もはっきりしていまして、こういったものをクリアしなければ企業経営として存続しないですよというルールが言わば形成されてきたわけです。しかし、残念ながらまだCO2が当時は汚染物質だとは考えられていなかったわけで、そういう意味で、CO2に関しては出しても何の規制もないという状態がずっとここまで来たわけですね。  企業というのは、労働法制もそうですし、安全だとか消費者保護、すべての領域そうですが、やはり環境問題は非常に同じような性質を持っていると私は思います。つまり、利潤を追求していく中でどうしてもそういう企業は問題を引き起こしてしまうわけですけれども、やはり社会がそれを問題だと言うときにはきちっとルールを整備し法整備をし、それを守った上で利潤を追求するならしてもいいですよという、そういうルールを守っていくための法整備をきちっとやっていく取組をしなければいけない。  残念ながら、CO2に関してはそういう取組という点で非常に遅れている対象領域であり、これから最も重要になる領域だというふうに思います。  その中で、企業利潤を追求していく中で自らコストを掛けるということは競争相手に負けるということを同時に意味してしまいますので、やはり企業に何らかの形で技術を促進し開発し進めてもらうためには、これをやることが公正競争なんですよというルールを設けることが極めて重要になります。  さて、それの目標設定ということに関しては、私自身は、二〇〇九年末ですか、目標に向けてどうなるかということが当然かかわってくるわけですが、やはりトップダウン考え方を入れるべきだというふうに考えます。  これは二〇〇九年にならないと世界全体の目標設定がどうなるかはまだ不明なんですが、御存じのとおり、ヨーロッパ諸国は既に二〇五〇年に向けて、あるいは中間でどういう目標にするかを既に打ち出しております。日本としてどういう目標を決めるのかはこれから国会やその他で議論していただくことですが、そうしたときに順番に目標をブレークダウンしていく、つまり日本全体が長期でどういう目標を持つのか、そこから日本はどうするのか、産業界や運輸は、家庭はどうするのか、そして各企業はどうするのかというふうな形で下りてくるべきだというふうに考えます。
  14. 島田智哉子

    島田智哉子君 ありがとうございます。  それから、排出権取引市場についても御議論がございました。その際の甘利経済産業大臣の御答弁では、キャップ・アンド・トレードも一つの手法だと思うけれども、公正なキャップが前提だと、このような御発言がございました。それに対して福山議員からは、日本省エネ法で各企業がどの程度省エネについて努力してきたか、全部経産省が資料を持っていると、日本ほど公平性を担保できるインフラが整っている国はないと。  そういった議論が展開されたわけですけれども、この公平なキャップの実現に向けての方策の在り方について、恐れ入ります、もう一度諸富参考人にお願いしたいと思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  15. 諸富徹

    参考人諸富徹君) キャップと言った場合に、やはり国内でのキャップをどうするかという問題、これを少し議論を整理すると、日本全体に対してどういうキャップをかぶせるのか、そのうち産業界に対してどれだけのキャップをかぶせるのか、さらに個別企業に対してどういうキャップをかぶせるのか、こういった幾つかの次元がありまして、それをどういうふうな考え方設定していくのかという問題があると思います。  その中で議論になりますのは、やはり日本京都議定書を超えてどういうふうな約束を国際社会でするのかということと極めて密接な関係を、どうしても国内問題と絡んでくると思いますね。その中で、やはり日本の場合には、これはいろんな見込みがあるかと思いますが、私自身は何らかの形での数値目標設定されてくるであろうというふうに思いますので、それを見越した上でキャップというものがどうしても必要になってくるというふうに思います。  キャップ考え方というのはやはり幾つかあって、その中でどれが公正かというのはなかなか実は難しい問題がございます。つまり、私が日経新聞に書いた記事をコピーしてございますのでそちらを詳しくはというふうには思いますが、非常に単純に言いまして、過去の排出量平均でいくのか、あるいはオークションをいきなり掛けてしまうのか、あるいはベンチマーク方式といいまして、一種のエネルギー効率性基準というものでいくのか、キャップが決まった場合にそれをどういうふうにそのキャップの中で配分をするのかに関しては幾つかの公平性の考え方があります。  ただ、私自身が強調したいのは、これまで行われてきた自主行動計画については、浅岡先生からも説明がありましたように、四種類の指標を各自が、各企業が選べるという形になっていまして、そもそも何をもって公平性かという基準自体がはっきりしておりません。ばらばらです。  ですから、この企業は非常によくやったからよく頑張ったねというような意味での公平性基準が全く統一的なものを議論する土俵がない状態です。オークションでいくべきかグランドファザリングでいくべきかベンチマークでいくべきか、ここで詳しい説明をする時間はありませんが、少なくともこういった基準の明示をすることができる、そして議論の土俵に上せることができる。これは非常に排出量取引制度の重要な点でして、まさにその公平性の議論を俎上にのせてみんなで議論しましょうということが私の強調したい点です。
  16. 島田智哉子

    島田智哉子君 ありがとうございました。  次に、浅岡参考人にお伺いいたしたいと思います。  浅岡参考人には、まさに行政監視という観点から御質問をさせていただきたいと思います。  参考人代表をされていらっしゃいます気候ネットワークのホームページを拝見いたしますと、「私たちは目指します」として、一つには「抜本的な国内政策で京都議定書の六%削減を」、二つ目に「環境重視の社会経済システムを」、三つ目として「市民・地域主導で温暖化防止の促進を」、四つ目には「政策決定プロセスに市民の参加と情報公開を」、そして五つ目に「南北の公平をめざし、南の人々と連携を」と、五つの項目を掲げていらっしゃいます。  是非私が参考人に御意見をお聞かせいただきたいのは、市民・地域主導という部分と、政策決定に市民の参加をという部分でございまして、改めて申し上げるまでもございませんけれども温暖化対策を進めていく上で、多くの市民や自治体などが地域での対策を積極的に推進していくこと、これが不可欠であると思います。  参考人環境審議委員をお務めになっていらっしゃる京都市においては二〇〇五年に全国で初めて温暖化対策に特化した条例が制定されて、その後、その影響を受けて大阪府、京都府など条例を制定する動きが広まったと、そのようにお聞きをいたしております。  しかし、その一方では、例えば地球温暖化対策推進法二十一条において自治体に策定が義務付けられている地球温暖化対策実行計画あるいは地域推進計画の策定が、都道府県レベルでは策定されているものの、市町村ではなかなか進まないという状況にございます。環境省によりますと、直近の策定状況を今月中にも公表するとしています。しかし、お聞きをする話では、やはりそれほど進んでいる状況にはないということなんですね。  まさに行政監視という観点から、こうした自治体による実行計画あるいは推進計画の策定を促進するための方策、条件整備として不十分な点、またその中で国の施策として今後必要とされる具体策についてもお考えがございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  17. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 私は、この十年間、環境省の中央環境審議会委員に入れていただきまして、あわせまして京都市の環境審議会、京都府の審議会の委員にもさせていただきまして、誠に審議会に出ている機会は多いのでありますけれども、そうした機会が与えられるようになりましたといいますのは、この十年、日本社会が一歩進んだと思います。そして、資料等あるいは会議も公開されるというのは地方におきましても普通になってまいりましたので、会議公開に対する地域のなじみというものも広がってきておると思います。  ただ、十年やってまいりまして、国の方針におきましては我々が参加していった成果がどこにあるのだろうかと思うのが実態であります。政策的には、基本的にほとんど軸は動いていないと思います。  そういう日本の政府として、国としての問題につきましては今日時間がありませんので大変はしょりましたけれども、今回の合同会議の最終報告に対する私どもの評価もホームページにございますので御覧いただきたいと思いますし、先ほど最後のスライドを私申し上げるのを忘れたのですけれども、これを、合同会議の報告書を閣議決定いたしますについて、今のこの一年間の停滞した結論、十年の停滞した結論をそのまま継続したようなものを今後五年間そのまま続けると読めるような、見直しに関する条項がございます。これをこのまま閣議決定をされていくことがないように、これは是非とも先生方にお願いしたいと思います。  とりわけ、排出量取引あるいは炭素税、環境税の条項でありますが、排出量取引につきましては、自主行動計画で相当な削減が見込まれるものであると肯定的に書きまして、その効果を検証した上でそのもろもろを加えまして検討するかどうかも考えるというような記載になってございますが、そんなことをやっている猶予はございませんので、私が下線を引きましたところは消していただきたいと思うわけです。  基本的に、前置きが長くなりましたのは、こういう国の政策の下で地方自治体でできることは極めて限られております。地域の活動は大変重要でありますけれども、大規模排出事業所はそれぞれの地域にございます。兵庫県などは非常に、関西で見ましても兵庫県はもうそうした工場からの排出が八割近い。京都などはそれが三割ぐらいであると。これは地域の特性があります。しかし、そうした大きな工場に関する部分は省エネ法であり、自主行動計画でカバーをされると。  残る部分につきまして民生の対策は重要だとおっしゃられますが、民生、家庭や業務が増えていると言われましても、増加している部分の約三分の一は発電所の排出係数が増えたことによる家庭事業所におけるCO2が増えたように見えている部分であります。これは自主行動計画約束が守れていないということによります。  家庭などの三分の一は、世帯数が増えており、そして床面積が、少し国民の家が豊かになってきたというようなことを反映しております。個人が家庭の中で努力する部分が増えているというのは約三分の一ぐらいのところ。これも機器が大型化していることとか、テレビなどが大型化いたしまして、自動車も大型化いたしまして、あるいは便座でウォシュレット等新たなものが家庭の中にどんどん入ってくる、エアコンも台数も増えていくというようなことによりまして、家庭削減できる、自治体が何か、どこで何ができるのかということを具体的に考えましたときには、大きな国の全体としての削減の方針が目標も数値も決まり、明確な方針が出され、その目的に向かって国としてできる政策をしっかり大どころでやっていただいて、そういうものを地域にしっかり浸透させていくという取組をするということであれば我々は非常に効果的なことができると思うのですけれども、なかなかそれがないまま、自治体レベルで、しかし京都の場合は京都議定書の京都でありますから、何をしているんだというふうに言われるのはやはり困ると市長さんも知事もお考えでございます。  京都という言葉は京都市ということではなくて、今は京都議定書の京都として国際社会でこれほど広く理解されている地名はないと思います。そういう名に恥じないようにしたいという意味での努力をしようということで、私どもも参加しまして、そこで条例を作ろうではないかというふうにはいたしましたけれども、本当にできることは限られたという思いがいたします。  その中で、一つは、各地でやっておられるような大規模事業所についての詳細情報を自治体としてもしっかり把握しようということであり、それの計画作りをして、計画の指導という形で少しでも地域でやれるようにしようという間接的な方法。  また、消費者等がより省エネ型の機器を選択していただけるように表示を分かりやすくしていこう、そしてそれをできるだけ義務化していく、あるいは自動車や電気製品などの販売を担当する人たちにマイスターというふうな制度を設けて、消費者にいい情報を指導的に与えていけるような仕組みを入れようとか、いろいろやってはおりますけれども、それほどのめり張りの利いた仕組みにはならないというのが自治体の実情であろうと思います。  しかしながら、そうした取組が進むことは、消費者や市民……
  18. 加藤修一

    委員長加藤修一君) 参考人に申し上げます。  質疑者の時間が超過しておりますので、発言をおまとめ願います。
  19. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) はい、分かりました。失礼いたしました。  そういう都道府県、大きな自治体の取組に加えまして、さらに小さな市町村におきましては情報も十分でなく、人も十分でなく、計画を作りましても、ただ作ったということ以上を超えないようなことになりかねない。計画ができた数は数えられても、それが成果だと言えないのが実情ではないかと思います。
  20. 島田智哉子

    島田智哉子君 ありがとうございました。
  21. 古川俊治

    ○古川俊治君 それでは、続きまして、自由民主党・無所属の会の古川俊治の方から質問をさせていただきます。  最初に諸富准教授に伺いたいんですけれども排出取引制度については、下流における直接規制というのが、先生の御主張もございますし、日本における大体の大枠のコンセンサスを得つつあるというふうに把握しているんですけれども、その場合に、まず先生も御提案のようにオークション方式をどこか一部でこれも取り入れていく。これは費用効率性の面から見ても一番、恐らく妥当であろう。  ただ、すぐにこれを普及させるには今準備が足りないというふうに理解しているんですけれども、先生は、今論文の中で基本的にはグランドファザリング方式を御主張のように伺っております。どこかで本当に排出権取引制度としてやるということになったら、一つのルールを作らなければいけない。これ決められない限りは制度がスタートできないという御事情、これはちょっとお分かりいただきたいんですが。  そして、もしグランドファザリングにいく場合に、先生が五年間の指標を取った場合には比較的公平性が保たれるのではないかという御意見がございましたが、二〇〇〇年から二〇〇四年を取った場合に、各部門間で余り私は変化が少ないんではないかと。こういうふうにちょっとデータを見ているんですが、その以前の九〇年ごろからと二〇〇〇年の間の変化、これと二〇〇〇年から二〇〇四年の変化、この後者の五年間で産業界努力が一応反映されるだろうと、公平性が保たれると、そのまずちょっと根拠を教えていただきたい。  それとともに、ベンチマーク方式を用いた場合、これは恐らく単位生産高当たりの排出量とそして過去の生産高、平均生産高を割り振ればベンチマーク方式でもキャップは恐らく作れるというふうに考えているんですが、その場合によく言われるのが、各工程におけるベンチマークを非常に設定するのが難しいんではないかと。  ただ、最終的に我々が本当に効率性という意味から細かくしっかりその業界をとらえようと思った場合には、理想的にはベンチマーク制の方が合理的なのではないかというふうに考えるんですが、その何か一つのやっぱり方法を設定しなきゃいけない。そういう前提に立って先生の御意見を伺いたいと思います。
  22. 諸富徹

    参考人諸富徹君) 大変詳細な質問をありがとうございます。先生のおっしゃる点は非常によく分かります。まさにクリティカルな問題点だというふうに思います。  グランドファザリングは、私たち提案、二〇〇〇年から二〇〇四年、これは正直言いまして、非常に考え抜いて提案したというわけでは実はないんですね。仮に二〇〇〇年から二〇〇四年としてみよう、そうするとこういう計算ができるということを示したいがためだったんです。実は、そういう意味では提案のベース、出発点であったということでして、これがもういろんなことを考慮した上で最も公平な基準であるということを主張しようとしたわけでは実はございません。  古川先生が御指摘のように、例えば九〇年からずっと取った場合どうなのかといいますと、やっぱり長くなればなるほど過去の排出削減努力を反映できるという利点がございます。直近になればなるほど過去のことは問わないわけですから、そういう意味でやはり過去にやった人をどう取り扱うかという問題ですね。これはやはり問題が出てくるというふうに思います。  そういう意味では、先生の御指摘のとおり、直近で五年間で取る場合には、じゃ過去の努力を、それ以前の過去の努力あるいは少なくとも九〇年以降から二〇〇〇年までの十年間の何らかの努力をした人にはどうするのかということを別途考慮しなければいけないという問題点はあるというふうに思います。  それから、ベンチマーク方式についてですが、これも先生のおっしゃるとおりでして、非常に難しいというふうに思います。ただ、不可能ではございません。ただ、私は非常に時間が掛かると思います。  まず、どういう工程で仕分をして基準を設定するのか、その工程の区分をまず決定しないといけないと思います。鉄鋼だけで大くくりで一つ設けられるかというとこれは難しくて、鉄鋼の中でもいろんな生産方法があって、そのどれ、工程ごとにやるのか、生産方法が異なれば別のベンチマークを作るのか、これ自体をまず決定しなければいけないですし、最高の技術のところに基準を設定するのか平均的なところに基準を設定するのか、こういったことも含めまして、まず基準をどうするかで非常に議論が発生するであろう。  それから、やはり情報収集ですね。ベンチマークの平均にせよトップにせよ、トップの技術とは何か、平均がどこにあるのかを決めるための情報収集が必要であろうということで、いきなりベンチマークで入るのは難しいんじゃないかという私の判断がありまして、グランドファザリングで先やっておいて時間稼ぎをして、それでベンチマークへ移行すればいいのではないか。ただ、もし条件が整うのであればベンチマークでいきなりいくというのも一つかもしれません。  以上です。
  23. 古川俊治

    ○古川俊治君 ありがとうございます。  それでは、オークション方式についてちょっと若干伺いたいんですけれども、イギリスにおいては、電力会社においては消費者に価格転嫁しやすいということから排出枠をキャップ・アンド・トレードにおいて少し抑えると、あとはオークションで買ってくださいというような制度を取るようなんですけれども日本においてそのオークションを取り入れていく場合に、消費者への転嫁のしやすさという点からその排出枠を制限してオークションを入れていく度合いを変えると、部門ごとにですね、そういった制度については先生はどうお考えでしょうか。
  24. 諸富徹

    参考人諸富徹君) 今なるほどと思いました。そういう制度もあり得るのかなと。  私自身は、その排出量取引制度を入れる場合は、全産業に関して、仮にオークションを入れるとしても同じ比率で入れていく、五%なら五%、全部オークションするならもうどの産業も全部オークションというふうに考えておりましたが、先生の御指摘のとおり、実情を考えてセクターごとにある程度変えるというのもあり得るのかなというふうに思いました。  ただ、そういうことをやることでぱっと思い付く問題は、まず産業ごとに争いが起きる可能性が、なぜうちだけそうなのかと。  例えば、電力はまあ確かに一つ特殊かもしれません、一種の独占であって国際競争力にさらされていないという問題、それから比較的、電力料金を通じて価格転嫁を消費者にしやすいという問題、最後は消費者がそのコストをかぶってしまうわけですけれども。そういう中で、電力だけをある種そのオークション比率を高めてやるというような考え方、まあ一つは確かにあるのかなというふうに思いました。  ただ、その場合に、公平性とそれからコストの負担が多分産業セクターごとに違ってくることから生じる何らかのゆがみがあるわけですから、いろんなことを考え、国際競争力だとか価格転嫁の可能性とか、いろんなことを考えないといけないなというふうにちょっと思いました。  以上です。
  25. 古川俊治

    ○古川俊治君 ありがとうございます。  それから、先生のちょっとこれは今日のお話にはなかったんですが、重要な問題として、環境税とのポリシーミックスの問題があると思うんですが、六四%のキャップ・アンド・トレードでカバーして、残りの家庭部門や中小企業を、環境税設定して両方からのインセンティブを合計して使っていくという考えだと思うんですが、例えば家庭や中小企業を考えた場合に、電気一つ取っても、化石燃料にはもうある意味でライフサポートと、その製造上の、もう中小企業にとっては事業の存続を懸けている部分でありまして、家庭にとっても必要な本当にライフサポートであって、最後に切り詰めていく。  そういう意味では、この限界排出曲線が、先ほどのカーブの下方のその弾力性が非常に高いとなかなか減っていかない、幾ら環境税を高く上げても。そうすると、結局、適正なレベルというか、ある程度掛けたところで、非常に逆進的、すなわち低所得層につらい税になるだけではないか。高所得層はもうやはり使いたいだけ使って、これは一律の税ですからなかなかそう区別できるわけがないので、低所得層にその逆進性が強い問題が生じてしまうんではないかと、ちょっといろいろそういう懸念があるんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  26. 諸富徹

    参考人諸富徹君) なかなか大規模排出源に比べて、中小企業それから家庭削減をどうやって進めていくかというのは各国とも頭を悩ませているところです。私自身も、税さえ掛ければ自動的に進んでいくというふうには思っておりません。そういう意味では、まず掛けたことによって、一種のアナウンスメント効果といいますか、そういうものを考えてはいるんですが、もちろん価格効果も考えています。  ただ、先生が御指摘になった、なかなか実際には、掛けたとしてもそれ自体が、化石燃料自体が非常に決定的な重要な生産要素である場合に削減できないよという問題があります。この場合には、恐らく、例えば税収をそういった中小企業対策のために還元をしていく、それからないしは、いったん税を掛けるけれども、そういった削減対策を取ったところには税の控除を認めていく、いろんな仕組みをやはり考えていくことができるかと思います。  それから、やはり低所得者対策というのも必要になってくると思います。もちろん、増減税を一致させるような中立的な税制改革ができれば別ですが、そうでない場合にも、例えば現在、排出量取引世界でもオークションをやってその収入を、まあアメリカなんかそういう話ですけれども、低所得者対策のために用いるというようなことが考えられているようですけれども、そういったことを併せて考えていくことが私は必要だというふうに思います。そういう問題があるからそもそも税をやめた方がいいのではないかという議論は私は間違っているんではないかなというふうに考えております。  以上です。
  27. 古川俊治

    ○古川俊治君 国内の排出権取引キャップ・アンド・トレーディングにしろ、国際間で考えた場合にでもこのCDMの制度がありますと、これは経団連の方も一千億この前使って、それを国内の技術開発に使えばよっぽどできたというようなことを言っていたんですね。  その場合に、やはり二〇五〇年までに半減させる、クールアース50のこと、提言を考えましても、これは技術革新の、本当にそこまでできるかというとなかなか難しい問題もあろうと思うんです。そうすると、できるだけの費用は技術革新に回すと、CDMをある程度一定限度に制限していく、そういった費用の使い方というのはどうしても考えなきゃいけないという気がするんですが、その点について御意見を伺いたいと思います。
  28. 諸富徹

    参考人諸富徹君) 大変鋭い御指摘だというふうに思います。  私自身も、やはり今の時点から将来の技術革新、五十年後の世界はどうなっているかというのは予測不可能なわけですが、いずれにせよ低炭素社会へ行かなければいけないというのは不可避だとすれば、そういう技術を促進することの競争にこれから各国ともなっていくというふうに思います。  何らかの形で規制排出権を入れること自体技術革新インセンティブだというふうには考えておりますが、やはりそういった、山根先生からもプレゼンテーションありましたが、非常に技術革新をこれから促進していくためのスキームとそのための財源調達メカニズムをどうするのかということも別途考えていかなければいけないことで、私自身はちょっと非常に驚いている。  最近の欧州委員会による第三期といいますか、二〇一三年以降のEUETSでかなりの比率でオークション比率を高めていって、それで一種の売却益をもって、そして相当程度技術開発に突っ込んでいくと、お金をですね。あるいはアメリカも同じですよね。リーバーマン・ウォーナー法案ですね、同じような形のスキームを考えている。  これから恐らく、まあもちろんCCSのような移行技術、すべて地中に埋まればそれで問題解決とは私はとても思いませんが、途中の段階でそういう移行技術が必要かもしれない。そういうものに対するやはり投資をどうやってやるかというのは非常に大きな課題だと思います。  以上です。
  29. 古川俊治

    ○古川俊治君 ありがとうございます。  これは、じゃ山根参考人に続いて浅岡先生にお聞きしたいと思っているんですけれども、ダボス会議産業別、分野別に温暖化ガスを排出量を積み上げて国別総量目標というような非常に分かりにくい説明に終わってしまったと。日本は大きなリーダーシップを取りたいということはあるんですね。  ただ、これは現実問題として国内の諸事情もございますので、これ是非とも洞爺湖サミットにおきましては主要排出国が全部参加する枠組み、数値目標を持った枠組みというのをつくり上げることが非常に重要だと考えているんですけれども、この場合に外交的な日本のリードの在り方、基準が厳しいとどうしても参加できない国が出てくるんではないかというような意見が出てきてしまうものですから、その点に関して両先生から、山根先生、それから浅岡先生の順に御意見を伺いたいと思います。どうやって主要国を全部入れるかということですね。
  30. 山根一眞

    参考人山根一眞君) それぞれ各論に入ってくるだろうと思うんですけれども、基本的に私は、先ほどからいろいろなデータを見せていただいていても、家庭部門あるいは産業部門あるいは発電部門これだけだという一律な排出源としての、何といいますか、ランク付けがされているというのは少し違うんではないかという気がすごくしているわけです。  これは、取りあえず今どれだけ排出しているかということだけで、言ってみれば優劣を付けていると思うんですけれども、私は産業界、現場をずっと見てきて、例えばこういうことがあります。  お役に立てる話かどうか分かりませんけれども、例えば製鉄所というのは非常に大きな排出源ですね。ところが、では日本の製鉄業界が何をしているかといえば、非常に高度な、世界で造れないような鉄を造っている、特にすばらしい鋼を造っています。例えばどんな鋼を造っているかというと、原子力発電所や火力発電所のタービンの軸を造っているんですね。これを造れる、本当に精度の高い軸を造れる企業というのは世界でも一、二社しかないと。そういう会社が日本にあります。  この極めて精度の高い、不純物の少ない鋼で、鍛造して造った鋼の軸というのは、極めて高温の蒸気に例えば二十年間ぐらいさらされても問題がないということがあるわけですね。一方で、余り技術力がない、例えば中国が造るようなタービンの軸というのは、発電所の蒸気の温度を上げられないわけです。  そうしますと、当然ながら発電所で高温でタービンを回すことができれば極めて発電の効率がいい、つまり、言ってみれば、もし化石燃料を使うのであれば化石燃料の使用量が減るわけですよね。この発電所のタービンの軸というのは二十年から二十五年ぐらい使いますから、回しっ放しにしますから、それを積算すると、その優れた鉄、鋼で造ったタービンの軸を採用した場合は極めて二酸化炭素排出が少なくなるということになるわけです。  ですから、それを造るためにある程度の二酸化炭素排出があるということを差し引き考えると、日本の例えば製鉄会社が非常に大きなCO2排出している、これはけしからぬ、何とかしなければ、もちろんそれはもう真剣にやっていますけれども、あるいは排出権取引で何とかしようとしていますけれども、実はそういう、この問題というのは今だけを見るのではなくてトータルで、十年、二十年、三十年の中で何がどう貢献しているかということも見ていかなければいけないのではないかと思うわけですね。  自動車についても、例えばハイブリッドカーを造るときに当然ながらCO2は出ますけれども、その排出よりもはるかに、それを乗って運用していったときのランニングコストじゃなくて、ランニング何というんですか、乗っている期間のCO2排出を考えれば、はるかにそれは大きな貢献をしていることになります。  私、最近プリウスを買い換えたばかりなんですけれども、前の車は七万キロ乗りました。七万キロ乗ってどれぐらい油の使用量が違ったかといいましたら、大型の、町を走っている一万リットルのタンクローリー三分の一しか使わなかったんですね。でも実際、多分皆さんが乗っていらっしゃるような車ですと、タンクローリー一台分の油を使っていることになりますね。  こういう物づくりによってどれだけの貢献をしているかということを一つ一つ細かく見ていただくことによって、日本産業界というものをもうちょっと見直していただきたいなというふうに思います。
  31. 古川俊治

    ○古川俊治君 じゃ、時間ですので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  32. 浮島とも子

    浮島とも子君 公明党の浮島とも子です。  本日は、参考人皆様におかれましては、大変お忙しい中お越しくださり、また貴重な御意見を賜り、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。  私の方から、まず山根参考人の方にお伺いをさせていただきたいんでございますけれども、温暖化が深刻化すれば、単に海面が上昇するだけではなくて、地球環境全体に影響が生じて生態系に深刻な影響を及ぼすのではないかと考えているところでございますけれども、そこで、長年アマゾンの方で取材活動をされてこられた参考人にお伺いをさせていただきたいんですけれども、アマゾンの熱帯雨林を始め地球温暖化世界全体の生態系にどのような影響を及ぼすのかということと、あと、また、温室効果ガスを吸収する熱帯雨林は温暖化の視点からすれば貴重な対策資源であると思うんですけれども、熱帯雨林の伐採等でこれが壊されているような状況になっているのではないかと思います。  世界的には多くの森林資源が存在しておりますけれども、国境を越えてこのような森林を保護していくには我が国にはどのような活動を行うことができるのか、まず御意見をお伺いさせていただければと思います。
  33. 山根一眞

    参考人山根一眞君) まず生物に関してですけれども、私、まず非常に大事なことは、私たちの生命はどうやって維持しているかといえば、生命を食べている、生物を食べてしか生きていくことはできないということを忘れてはいけないと思うんですね。ですから、先ほど、一度から二度の上昇で三〇%から四〇%生物が絶滅する危険があるということは、つまり我々の食べるものが失われていくことを意味していると思います。これは極めて危機的なもので、この食料の偏りということが大きな争いや民族間の紛争などにもつながっていく、大きな戦争につながっていく可能性もあるということを危惧しています。  もう一つ、忘れてはならないのは漁業資源でありまして、今世界じゅうの海で魚が減っていると言われている。これを何とかしなければ、もちろん温暖化の影響もありますけれども、温暖化だけではなくて人口の増加、それから途上国の生活水準の向上などによって私たちが食べる天然の産物というものがどんどん減っているということも忘れてはいけないと思います。  アマゾンの森林についてですけれども、極めて憂慮する事態だと私は思っていますが、一つ、IPCCの報告あるいは地球シミュレータがはじき出した驚くべき将来のアマゾンの在り方があります。  二〇五〇年ぐらいにアマゾンがほとんどサバンナ化して砂漠化するという、こういうシミュレーション結果が出ていますね。これはその後どういう研究になっているか分かりませんけれども、これは、アマゾンの森林をどう守るかではなくて、地球全体の温暖化によって雨の降る場所が変わり、そして気温の上昇によってアマゾンそのものが言わばサバンナから砂漠になってしまうという驚くべきシミュレーションの結果です。  こういうことをどう防ぐかというのは、アマゾンそのものを何とかしろという問題ではなくて、もう地球規模で解決しなければいけない問題だというふうに考えています。  それから、今日は話題には余り出ませんでしたけれども、バイオエタノールのような今エネルギー源が非常に環境に良いという意味で、世界じゅうが競ってこれに対して開発を始めている、あるいは栽培を始めていますけれども、ごく最近アメリカの科学雑誌に出たものによりますと、バイオエタノールのための農地を作って、それによって得られる、あるいは二酸化炭素排出がマイナスになるかというと、実はプラスになるということが近々発表論文に出るそうですね。ブラジルの例でいくと、すさまじい量の面積が今このバイオエタノールのために伐採をされていく。我々がエネルギーを得ることはできるかもしれないけれども、そこで実は多大な生物を失うことになるということも忘れてはいけないと思います。  そして同時に、貧しい人たちの食料も得られなくなっているということもあるわけで、何か私は食べ物を車に食わせるのか、ために必死になって食べ物を作っているという感じがするんですね。  このバイオエタノールについては、望ましい、日本の宮古島でやっているようなサトウキビの廃みつを使って、それを資源に使う、エネルギー源に使うことは大変いい方法だと思いますけれども、今の一律バイオエタノール万歳というのは考え方を変えるべきだというふうに思っています。
  34. 浮島とも子

    浮島とも子君 ありがとうございました。  続きまして、浅岡参考人にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、私も浅岡参考人が書かれたものを読ましていただいたり、いろんな御意見をお伺いして、地球温暖化の問題にとても重要性そして緊急性があるということをすごく参考人が伝えてくださっているということを思うんでございますけれども、この一人一人が共有をしていかなければならないということがとても今大切なことであると感じているところでございます。  先日も、コクヨの社長様にお会いして地球温暖化のことについていろいろお話をさせていただいて、会社を挙げて一人一人が共有をしていくというお話を伺ってとても感銘を受けたところでございますけれども、まだまだ我が国では一人一人が実感を持って共有していくということがまだ難しいんではないかと今感じているところでございますけれども、先ほども島田委員の方から地域の力というお話がございました。  少し重なる部分もあるかと思うんですけれども、まだまだ我が国は欧米に比べて市民の力を結集するというのがとても弱いと思っているところでございますけれども、この市民の力を結集していくためにどのようなことを強化していかなければならないかということで御意見をお聞かせいただければと思います。
  35. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 緊急性を意識として共有するということは日本に本当に重要なことだと思いますが、そのために何よりも大事なことは、国として明確な削減の方針を示すことです。国の目標が示されれば、そのことは国民にちゃんと伝わります。事業者にも伝わります。しかし、事業者の方々が、今言わば拒否権を持っているような発言をしておられますから、そこが決まらない。ヨーロッパの国々と日本との違いはそこにあります。  地域におきまして、自治体でそうした目標を掲げてやっていくところ、先ほど条例などでやってまいっておりますが、市民の力を活用するという点は地域だけではありません。国の政策を変えるためにどうして市民の力を活用するのか、それは私どもの大きな課題だと思っております。そのためにいろいろな情報が必要だと、あるいは政策の提言が必要だということで、ホームページに出し、委員会等でも審議会等でも発言をしているところです。  ただ、国が目標を出し、国だけが抽象的政策を掲げるだけでは地域は動かないのはそのとおりでありまして、私どもNGOは、地域の志ある市民の人たちと、この地域にふさわしい仕組み、それを、仕組みを動かすためにどういう国の政策が必要かということを議論をする、そういう仲介役になっております。  少しずつ動いておりまして、京都地球温暖化防止活動推進センターの全国の一村一品のグランプリ競争をいたしましたところ、京都府の京北町の高校生の取組がグランプリを受賞いたしました、今年度。これは本当に京都府、自治体の人々、そして高校生の人たちと我々NGOやセンターとが非常に力を合わせてきたところです。これには、地元におきまして自治体は市民の声を聞くと、それを取り入れるという、仕組みを取り入れる流れが京都におきましては非常に大きく動いたと思います。これは京都会議の成果であったと思います。  しかし、国の政策におきまして、私は委員として入れていただいておりますが、NGOからはただ一人でありまして、ただ発言をしてそれが最終に反映されることはない。この点は国の大きな政策の仕方として変えていただきたいと思うところでありますし、またNGOが活動しようとするときに非常に仲介役として重要でありますが、大変資金に困っております。人手不足でもあります。  人がなぜいないかというと、お金がないからです。本当にない中で、私どもは乏しい予算の中でささやかな有給のスタッフの中で、多くのボランティアとともにやっておりますが、それではやっていけない。私は、職業としてやっていける、NGO活動がやっていけるような財政の、社会的な仕組みをNPO法も含めまして早く改正していただきたい、税制も変えていっていただきたい、市民の寄附を集められるような仕組みをつくっていただきたいと思っております。
  36. 浮島とも子

    浮島とも子君 ありがとうございました。  最後に、諸富参考人にお伺いさせていただきたいと思いますけれども排出権取引についてですけれどもCO2削減目標を達成させるためにはとても効果的だと思うんですけれども市場に提供される排出権量の減少などにより、排出権の値上がりやまた排出権取引が投機の対象になるということなどが危惧されておりますけれども、このことについてお考えをお伺いさせていただきたいと思います。
  37. 諸富徹

    参考人諸富徹君) 浮島先生のおっしゃるとおりです。ある程度、排出量取引制度というのを始めますと、これはまさに人工的ではあれマーケットを立ち上げたことになります。そういった場合に、これは投機的だからこういったお金は入ってきてはいけないとかいうことができなくなります。そういう意味では、投機マネーがある程度流入することはもう必然になります。  ただ、じゃ株式市場に投機マネーが入るから株式市場はやめた方がいいということにはならないのと一緒で、投機マネーというのは、ある程度利ざやを取るということはあるんですが、逆に市場を円滑化する場合もあります。あるいは、変動をより増幅させてしまう場合もあります。これはなかなか難しい問題です。ただ、投機マネーを理由に排出量取引制度の意義を否定することはできないのではないかと私自身は考えております。
  38. 浮島とも子

    浮島とも子君 ありがとうございました。
  39. 山下芳生

    ○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。  初めに、山根参考人に伺いたいと思います。  私、昨日、「アース」という映画を見てまいりました。美しい地球の上ですばらしい仲間たち、映像ではアフリカゾウですとかホッキョクグマですとかザトウクジラが地球全体を回遊しながら動いている状況が紹介されましたけれども、彼らといつまでも共存するために私たちは今すぐ行動しなければならないんだというメッセージを感じました。人類にその能力があるのかが、四十六億歳の地球から問われているんだなと感じました。  山根参考人は、同時に、温暖化問題は大変難しい、分からない面も多いとおっしゃられましたけれども、その点で、メディアとかジャーナリストの役割は大変大事だと思いますが、この温暖化対策を人類挙げて推進していく上でのメディア、ジャーナリストの役割についてお感じのことがあればお聞かせください。
  40. 山根一眞

    参考人山根一眞君) 実は、間違いも結構この問題については多く報道されることがあります。特に一番大きな議論になったのが、ゴア元アメリカ副大統領の「不都合な真実」の映画の中で、非常に海水面が六メーターぐらい上昇してたくさんの地域が水没するという部分、あるいは南極、北極の氷が解けて海水面が上昇するという部分、そういうことが、ちょっとそれはよく分かりませんけれども、非常に誇張されて、あれは正しくないということによって映画そのものの評価は非常に疑問が投げ付けられたということがありました。  昨年十月十二日のノーベル平和賞受賞決定という発表の日の特にアメリカのテレビメディア、どんなふうに報じていたかというと、この受賞はおかしいという、そういう論調で延々と報道して、皆さん、これはおかしいと思いますが御意見をと、こういう言い方をしている人たちがすごく多かったですね。でも、この問題に関して非常に神経質なまでにその温暖化を語る人たちを攻撃する人たちがまたいるということも忘れてはいけないことで、足をすくわれることはかなりあります。  例えば、先ほどの海水面が上昇するという問題、それから氷が解けるという問題、これは研究によってそういうものもある、あるいは以前の研究ではそういうことが言われていたけれども、今は否定されたという時間の経緯ということも考えなければいけないわけですね。今はインターネットで皆さん情報を得る時代になりましたから、ある検索語を入れて出たものがそのまま真実だと思うわけですけれども、実はそれにはいつの情報かというものがいつも落ちているわけですね。実は、温暖化に関しては極めて膨大なデータが検索で出てきます。皆さんがそれを見ます。ところが、それがなかなか分かりやすいページだったりすると、それをうのみにします。ところが、それは実は極めて古い情報であったりするわけです。  私たちの役割というのは、私も、今、日経BP社のECOマネジメントという温暖化のポータルサイトで実は原稿を書くようになりました。紙ではなくてインターネットの時代なんですね。そこに主力が移ってきました。やはり、だれが書いたのか、いつ書いたのかということを、実はこれはこの問題に限らずその情報を受け取るたくさんの人たちが、ほとんどの読者と言われる人たちがその基礎的な目を持たなければいけないと思うわけなんですね。私も、本を書くために当然ながらインターネットで検索し調べますけれども、本当にそういう意味での古い情報の間違いがいかに多いかということを思っています。  私たちの役割は、そこできちんとした、言ってみればだれがどういう形で出しているかということを明示したホームページで、日付がちゃんとある形で、責任を持ってこの問題について語るということが極めて今重要になっているだろうと思うんですね。どうぞ、そういうページだけを御覧になっていただきたいというふうに思います。
  41. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。  続いて、浅岡参考人にお聞きします。  先ほどの陳述の中で、百八十の事業所日本CO2の半分以上を排出しているという気候ネットワーク調査報告がありました。このような調査をされていることに対して心から敬意を表するとともに、大変この結果について私驚きました。いろいろ調べていますと、例えば石炭火力発電所の排出するCO2の増加分がもし仮になかったとすれば、九〇年から日本CO2排出量は減っていたという結果が出るほど大変大きなウエートを占めているということも分かりました。  そういう点を踏まえて、私は、経団連自主行動計画に任せる従来のやり方を改めて、産業界と政府の間で排出量削減協定を結んで実効ある政策にしていくことがもう不可欠だと考えているんですが、浅岡さんの御意見を伺いたいと思います。
  42. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 先ほど先生が御紹介いただきましたデータにつきまして、私は十三日の議事録を拝見いたしまして、経済産業省が承知をしていないと言われたことには驚きを覚えております。これは、経済産業省定期報告のデータと、それから省エネセンターが行っております優秀者表彰のデータから作っておりまして、私どもが独自に作成したものではございません。一年間にわたって審議会でも申し上げてまいりました。  私が申し上げたいことは、多いから悪いと言っているのではありません。製鉄所が多いから悪いと言っているのでもありません。しかし、実態を見て対策を立てるのは当然ではないでしょうか。科学的手法ではないでしょうか。そのための情報を一年間に三十回も審議会をしましていまだ開示をされないという中でどうして議論ができるでしょうか。そのことであります。  それから、鉄につきまして、私は、日本世界に造れない鉄を造る工場を持つと、しかし、どこでも造れることまでしなくてもよろしいのではないかと。国内において必要な鉄は国内のあるものを再利用していくということで十分賄えるのではないか、そういうことを申し上げています。そういうことによって、日本も大幅な削減が長い道のりで必要であります。  その必要なことをどうしていくのかということにつきまして、大規模排出源には、今、自主行動計画努力目標でありまして、約束ではありません。担保する方法がありませんから、先生が言われるのは協定でという趣旨だと思います。協定は約束であります。しかし、今日におきましては、それはもう遅きに過ぎると私は思っています。  九〇年代の終わりにドイツで協定を導入いたしました。そして、イギリスで二〇〇一年ごろいたしました。それを踏まえまして、欧米の国々では事業所ごとにキャップをかぶせ取引をするという仕組みを入れました。しかし、EUで始めましたところ、グランドファザリングで自ら、あなた方は幾ら排出しているんですかと聞きましたところ、二割も三割も増したものを出してこられました。その当時、そうですかとグランドファザリングいたしましたところ、オーバーロケーションだと今度反対をされていると、こういうことであります。  そういう経験を踏まえてオークションを原則にしていくんだという方向が今出ております。オークションであれば必要ないものは買わないでしょうと、こういうことで、必要なだけ買うでしょうと、それが削減に必要ですと。  イギリスにおきましても、それからヨーロッパEUの新しい指令案におきましても、アメリカのリーバーマンの法案にしましても、大幅なオークションを、基本はオークションを原則にして、そこにどう移行するかというオークション割り振りのプロセスまでできているわけです。そうした時代に、今協定でと言っているような悠長なことをしていては日本は全く乗り遅れると思います。  早く私は、来年、再来年には準備を終え、二〇一〇年からオーストラリアと同じように試行期間に入り、二〇一三年からはヨーロッパと並んでしっかりした取引制度を入れる。そのために、先ほど古川先生から大変鋭い質問がございましたけれども、御覧いただきたいのはこの省エネ法定期報告書です。  これだけ、九四年から新しい設備をどのように導入し、それがどのような削減効果があったのかといいますか、エネルギー効率の変化があったのかまで報告させているところで、公平なロケーションをすることが私はできないとは思いません。ある意味で、一定のものをし、もし不足があると、不満があるというのであれば、事業者にも教えていただければ、それは適正かどうかというすり合わせができる。その意味でのネゴシエーション、協定の話というのに代わるようなものという場面は出てくるかと思いますが、九四年からこれだけのデータを持っているというところはないと思います。  アメリカのリーバーマンの法案では、九四年からの実績をアーリーアクションとして加えようということになっておりますが、これは日本と並ぶデータの、日本においてはそのデータがあります。アメリカは、あるところとないところとがあります。大変大きな違いでありますから、これを日本がしっかり活用して、アメリカよりもしっかり、公平な仕組みはこうなんだという、それがベンチマークでは私はないと思います。ベンチマークは考慮します。しかし、総量の中で考慮する事項として、そうした個々の事業者の一つのベンチマークの指標としてお考えいただくデータがあると、そういうことであります。
  43. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。  最後に、諸富先生にお伺いしたいと思います。  なぜ日本温暖化対策企業、経済界の自主行動計画に任されたままになってきたのか。ヨーロッパとどこが違うのか。  私は、ヨーロッパ企業や経済界が元々環境問題、温暖化問題に非常に積極的だったわけではないと思います。科学者の警告を踏まえた政治のリーダーシップがあったでしょうし、それから市民やNGOの活動もあったと思います。是非、これから日本でも温暖化対策の後継者から先駆者にと転換するために、政治の活動についての期待また市民やNGOの活動についての期待についてお聞かせいただければと思います。
  44. 諸富徹

    参考人諸富徹君) なかなかそれを一言で言うことは難しいですが、先生のおっしゃったとおり、ヨーロッパ企業が取り立てて環境に対して先進的であったかというのはなかなか難しいと思います。  では、なぜああいうことが可能になったかということですが、一つは、やはり八〇年代ごろから既に議論の積み重ねがありました。環境税導入の議論なんかは、かなりヨーロッパは早いです。しかも、それが単に環境のために環境税を入れろとかいうだけじゃなくて、例えば、それがもたらす産業界側の懸念に対して環境税支持派がちゃんとこたえる研究も同時にやってきたわけです。  例えば、産業国際競争力はどうなるのか、それによって失業者が生まれるという批判に対しては、いや実はかえって雇用は増えるんですよと、こういうふうに制度をつくればかえって増えますよというようなことも含めてきちっと論争がありました。その論争の積み重ねの成果が、実は我々が見ている今の姿だというふうに思います。政策が出てくるというのは突然のように見えるんですが、そうではないと思います。  それからもう一つの非常に大きな要因は、政権交代です。なぜイギリスで気候変動税が入ったのか。これはもう労働党が政権に就いたからとまでは極言しませんが、やはりブレア党首の下で入ったことは間違いありません。それから、やはり同時にドイツの場合もシュレーダー政権になったと、緑の党が連立政権の中に入ったと、これは非常に大きなパラダイムシフトであったというふうに思います。  ただ、現在の時点からいいますと、ドイツでは今メルケル首相ですけれども、彼女は必ずしも社民党でもないし緑の党でもない。つまり、イギリスでも同じです。今野党にいる保守党は、じゃ環境に対して反対しているか。そんなことはないです。もう今やヨーロッパにおいては両方の政党がむしろ環境政策の前進を競っている。それは有権者が変化したということです。  そういう意味では、環境やメディアの役割も非常に重要だというふうに思います。
  45. 山下芳生

    ○山下芳生君 終わります。
  46. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  最初に、諸富参考人山根参考人にお尋ねをしたいと思います。  先日、ダボス会議で総理が演説をされました。国別の数値目標を明らかにしたと。これは今までになかったことで評価をされておりますが、しかし、中身につきまして、セクター別の積み上げ方式を取ったということ、そして基準年を今度は少し動かすという発言をされたということで、いろいろ議論が、評価が分かれております。  浅岡参考人は先ほどもうこのダボス発言について言及していただきましたんで、お二人からこの総理のダボス発言についての評価をお伺いしたいと。今二つ言いましたけれども、同時に私はイノベーションに少し偏り過ぎて改革は少し先送りになっているんではないかという、そういう思いも持っておりますが、お二人の参考人、いかがでしょうか。山根参考人から。
  47. 山根一眞

    参考人山根一眞君) 細かなことはちょっと私としてはよく分からないんですけれども、この問題が日本として、例えば日本代表である総理大臣が国際的な場で、ある提案をする、あるいは発言をするという、その背景が国内の議論なり国内のあるいは国会の意向なりを受けた上でのものなのか。いつもそうではないような気がするんですね。  この問題に関しては、単なる政治家の政治手腕といいますか、あるいは外交的な言わばテクニックとしてそういうものが出てくるのは、私は余り好ましいことではないというふうに思うわけなんです。今回の件も、どういう経緯でどういう裏付けがあってそういうことをおっしゃったのかというのが非常に分かりにくいですね。  この問題は私たち日本人の一人一人に対しても非常に大きな問題ですので、何か日本世界に対して発言をするというときの仕組みみたいなものをもう少しきちんと、私たちがこれでいくと、これで総理頼みますよというような、そういうものがないと、政権が替わるたびに思い付きでいろいろなものが出てくるということに非常に戸惑いを覚えています。  例えば、昨年は美しい星50というのがありました。今あれについて、もちろんそれは日本の基礎になっているんでしょうけれども、それについて語る人がほとんどいなくなった。二〇五〇年ということは余りにも遠過ぎる話ですよね。でも、それもどういう私たちの、国民の意を受けてでき上がってきたのか分からないということが多過ぎるなという感じがします。これは私の印象です。
  48. 諸富徹

    参考人諸富徹君) 私も、福田首相がそういう形で国別の数値目標に言及されたことは非常に大きな前進だというふうに思っています。それ以前は、私は、多分日本政府というのは、そういう国別数値目標には反対であって、グローバルな形でセクトラルアプローチという形で、国別に目標を絶対量で設けない形で議論を進めていかれる方針かなというふうに思っていたものですから、そういう意味では、数値目標を出されたというのは一定程度評価をしたいと思います。  ただ、先生もおっしゃった積み上げ式というのがこれから問題になると思います。プレゼンテーションの中でも言いましたように、積み上げでやっていくということは、日本で現在できることは何かということを、情報ボトムアップで上げていきまして、それを足し合わせたところで日本のできる量というのは出てくるわけですね。  ただ、アプローチはまたトップダウンでもう議論していかれるわけで、そういう意味で、IPCCの報告書なんかをベースにして、二〇五〇年に向けてどういうペースでどれだけ削減していくのかという議論は一方であるわけです。そこから、先進国途上国でどうやって削減努力の配分をし、先進国の中でどういうふうに枠を、努力を配分しようかという議論があるわけですね。その中で日本はどうすべきかというような、決まってくるプロセスがありますね。  この積み上げ式とトップダウンからきたものとが併されなければいけないと思うんですが、福田首相の発言というのは、下から積み上げて国別数値目標でやりますよと言うんですが、それが、例えば国際的に決まったものとの間でどう整合性を取るのか、ここの部分が不明なままなんですね。ここがこれからの議論の焦点にならなければいけないというふうに考えております。
  49. 近藤正道

    ○近藤正道君 基準年の移動の点についてコメントいただけますか。
  50. 諸富徹

    参考人諸富徹君) ちょっと私自身は基準年についてはまだ定見を持っていないんですけれども、やはり動かすというのは、日本は九〇年から比べて増えているので、後にしていただければ日本としてはやりやすくなる、アメリカもそうだ、本音のところはそうなんでしょうね。  しかし、それがどれだけ科学的根拠に基づくものなのか。そして、例えばヨーロッパから見た場合に、それは公平なものというふうに、ヨーロッパや中国やその他インドから見て、日本世界的に見てもフェアな提案をしてきているというふうに見られるかどうか。  そこが非常に重要なポイントであって、日本が苦しいから苦し紛れに移してくれと言ってきているんだな、日本の非常に国益の観点から言ってきているんだなというだけのもし提案であれば、なかなか国際的な賛同は得られないんであろうというふうに思っています。  私自身として、じゃ何年にすればいいのかという定見はちょっと私はまだ持っておりません。
  51. 近藤正道

    ○近藤正道君 浅岡参考人にお尋ねをいたします。この間のNPOの活動に敬意を表したいというふうに思っています。  先ほど話の一番最後に、自然エネルギーのことに少し触れたいような、そういう感じの部分がありました。環境地球温暖化防止政策の中における自然エネルギーの拡大の方向を目指すに当たっての問題点と課題についてお話しいただけますか。
  52. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 自然エネルギーの問題につきましては、本日お手元に配付いただきましたスライドの最後から四枚目のところにデータを出してあります。  とりわけ再生可能エネルギー、太陽光や風力につきまして日本が大きく後れを取ってきている、太陽光におきましてもドイツに抜かれているというのは明らかな政策の違いであるということは、もう先生方御案内のとおりでありますので、そうした投資家、普及させ導入しようと思う方が投資に見合うようなインセンティブを与える仕組み、固定価格での買取り制度というのがヨーロッパで成功したかぎでありますけれども、入れていくということとともに、これから排出量取引などとの関連も大きなことだろうと思います。  ある意味ではオフセットというふうに理解されたりしておりますが、目標達成のために自然エネルギーをこうして入れていくということをカウントできるような仕組みになるということで加えていけることになろうかと思います。  国内の自然エネルギーの政策が動かなかったことにつきましては、日本の原子力政策のまた非常に大きな優先課題があったということでありまして、そこでは、スライドの最後から三枚目、とじてある最後から三枚目のところに、目標達成計画関連の予算がどういうところに使われてきたのかというところを見ていただいても、やはりこのお金の使い方において拡大する政策ではなかったということがうかがえるのではないかと思います。
  53. 近藤正道

    ○近藤正道君 その点なんですけれども、更に浅岡参考人にお尋ねをしたいと思いますが、私、この間の対行政との質問の中でもお聞きをしたんですが、二十年度の京都議定書の目達計画関連予算の中で、それが総額一千六百億円余なんですけれども、そのうちの一三%が原発関連の予算で占められていると。しかも、原発の稼働率が非常に現実離れをして高めに設定をされているという、これはやっぱり問題ではないかと、もう少し現実に根差した計画に見直すべきではないかという、こういうちょっと質問をさせていただいたんですが、この関連で浅岡参考人の御意見をもう少しいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  54. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) このスライドの最後から、ちょっとページ数が途中で切れておりまして、ちょっといろんなページが入って、最後から六枚目のところを御覧いただきましたら、発電部門で七千六百万トンも不足するということの理由はどこにあるかと申しましたら、原子力発電所の稼働率をかつてない水準にまで高いところを想定をする、また石炭火力発電所を炭素税等の、あるいは排出量取引等の政策のないまま稼働率が下がる、発電量が下がるという見通しをする、両方で無理な想定をしております。  これは、今の政策がないままでは、現状どおり推移するのに少し良くなるかぐらいのところであろうと。そうすると、七千万トンぐらいの不足量がして、今後、それが五年間どころかその後もずっと長期的に足りない構造が続くということになりますと、とても日本のお金が海外に出ていくばかりだと。排出枠を買って埋めるとすることになれば、そういうことになるわけです。  そんなことできないから日本削減目標を小さくしてほしいと、こういうことになっているという大きなことでありまして、やはりこの現実をしっかり見た上で、これを変えていくためにどういう政策が必要なのか。  やはり石炭火力発電所をより稼働することが、電力会社にとってそれが負担になると。天然ガスの発電所の稼働率を石炭と替えるだけでも相当に排出量は減るわけでありますから、同じ発電しましても減るわけですから、そうすることによって消費者に価格転嫁をしなければいけないものもあるかもしれません。私は消費者にそれを言えばいいと思います。それが炭素税でありまして、五%電気代が上がる、しかし五%電気の消費量を減らそうじゃないかと、そういうメッセージを出していただければ十分に達成できると、そう思っています。税とはそういうものだと思います。
  55. 近藤正道

    ○近藤正道君 時間の上で最後の質問になろうかと思いますが、今日は割と排出量取引の話が中心でございました。しかし、経済的手法としては、排出量取引環境税のポリシーミックスということが多分現実の問題として進んでいくんだろうというふうに思っています。  この排出量取引環境税のあるべき姿等について、諸富参考人浅岡参考人、一言ずつコメントいただけますか。
  56. 諸富徹

    参考人諸富徹君) 私自身も、そのポリシーミックスとしては、先ほども少し言及いたしましたように、やっぱり大規模排出源に対しては排出量取引制度をちゃんと入れてキャップを掛けることをするべきではないかというふうに考えています。それ以外のセクターに対して税を入れられないかというふうに考えております。  イギリスがやっていますように、完全に大規模排出源に反映する取引制度を入れたからといって、税を掛けなくていいわけではないかもしれません。例えば、イギリスがやっているように、大規模排出源に対しても、相当な割引の税率で、例えば通常の税率二〇%とか、そういう方法もあります。いずれにせよ、メーンは排出量取引制度に外れるセクターに対して税でコントロールできないかということを考えております。  ただ、そこで考えなければいけない点が幾つかありまして、やっぱり先ほども御指摘があった負担ですね。消費税と同じように、低所得者に対して逆進的な負担にならないかということをどう考えるか。そういう場合には、やはりヨーロッパがやっているような税収中立的にやって別の税を相殺することで、そういったマイナスの効果を緩和できないかといったことは考えなければいけないと思います。  それから、税を掛けられただけで簡単に家庭や中小企業、先ほども御指摘がございましたが、削減できない可能性もあります。税を掛けさえすれば自動的に済むというわけではない場合にどう工夫するか、併せて考えなければいけないと思います。
  57. 浅岡美恵

    参考人浅岡美恵君) 私も、今後は、世界流れを見ますと、大規模排出事業所へのキャップ・アンド・トレードを基準とし、それを基本的にオークションへと流れております。  オークションというものは、ある意味で税と取引とをミックスしたものであります。そうして得られたオークション収益をどう使うのかという財政の議論を伴うわけです。これは、アメリカの法案におきましてもEUの新指令におきましても、努力をされる事業者に対してももちろん還元されます。そして、アメリカの法案でもヨーロッパの法案でも特徴的なのは、そうした大きな仕組みの中で貧しい人々に対する支援策と、家を補修しようとする費用を充てていくとか、そういうことも組み込まれております。  そういう意味でのポリシーミックスの基本というものが、今アメリカ及びヨーロッパにおきまして非常にダイナミックに示されております。日本特徴排出実態も踏まえ、日本市民、中小事業者の方の事業所、事業実態も踏まえ、小口のところをどう環境マネジメントを入れながら削減インセンティブも与える仕組みを入れていくかというものを大きな枠組みの中に取り入れていくということを考えるべき時期に来ているのではないかと思います。
  58. 近藤正道

    ○近藤正道君 ありがとうございました。  終わります。
  59. 加藤修一

    委員長加藤修一君) 以上で各会派の質疑が一巡いたしましたので、これより自由質疑を行いますが、相当程度審議時間が超過しておりますので、一人一問にとどめたいと思います。  質疑のある方は、挙手の上、指名を受けてから御発言願います。轟木利治君。
  60. 轟木利治

    轟木利治君 民主党の轟木でございます。  一点だけお聞きいたします。山根参考人にお聞きしたいと思います。  日本の役割という考え方でお聞きしたいと思うんですが、今日本の国内の温暖化の削減というのは大変重要でございますけれども世界に対する日本の役割というのもこれまた重要だと思います。  先ほど、物づくりの現場をずっと見てもこられたということも踏まえてお聞きしますと、日本のその技術というのが、省エネ等に対しての技術が非常に優れていると、これをもっと世界にオープンにして供与していくべきだという考えを持っておりますけれども、相手側も設備、技術に対して、コスト削減になるものは当然買っていくとは思うんですけれども、そうでないものは逆になかなか買ってくれない、買わない。  そうすると、国のODAを含めて国がどうそこにサポートをして援助をしていくかということが大事なんではないかと思いますし、さらに日本がその技術を更に発展させていくためには、当然開発にお金、資金が要りますし、そういったところをもっと国が関与すべきではないかと思うんですが、山根参考人のお考えを一言お伺いしたいと思います。
  61. 山根一眞

    参考人山根一眞君) 海外の方に行って、やはり日本技術貢献をお願いしたいという声は物すごく聞きますね。実際、具体的に何が日本技術貢献なのかということはよく分からない。  それから、企業の側が、日本の高度技術を持っている企業ほどその技術を供与したがらないと、こういうふうに私たちは受け止める部分がありますけれども、これは違います。  つい先日もある鉄鋼の大手メーカーのトップと話をしましたら、私はすべて出すと。もちろん、極めて特許といいますか根幹にかかわる、それは別に出さなくてもいいわけですね。温暖化に関する部分についてはもうすべて出すという、そういう覚悟でいるんですよというふうにおっしゃっていました。これは僕は事実だと思います。  ただ、おっしゃったように仕組みがない、あるいは国としての言わばそういう温暖化対策外交というものが機能していないということが大きいと思うんです。動き出せば日本企業はやります。それによって日本に対する、あるいはメード・イン・ジャパンに対する信頼が上がるということは日本企業にとってもプラスのはずですし、これはギブ・アンド・テークということではなくて、大きな流れをつくろうと思えば、その気になれば、皆さんができると僕は思います。極めて大きな貢献があると思います。  ちなみに、先ほどのIPCCのパチャウリさんが、インドが日本に最も求めている温暖化の技術は何ですかと質問をしたときに、しばらく考えて、にやりと笑って一言、新幹線と言いましたね。
  62. 加藤修一

    委員長加藤修一君) 予定の時間が参りましたので、これをもちまして参考人に対する質疑を終了いたします。  参考人方々に一言御礼申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を拝聴させていただき誠にありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時四十一分散会