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参考人(
笹森清君) 本日、
後期高齢者医療制度を論議する場に
参考人として呼んでいただきましたことを大変有り難く、心から感謝を申し上げたいと思います。しかし、誠に残念なのは、
国会の全体で言うと
与党、
参議院ではちょっと
立場が違うのかもしれませんが、
自民党、
公明党の
議員がおられない、これは一体どうしたことかなということを極めて不満に思いながら、しかし
意見を言わせていただきたいというふうに思います。
私は、今の
日本社会にとってこの
後期高齢者医療制度はあってはならない
制度だというふうに思っております。感情論というよりは心情論と言った方がいいのかもしれません。そして、手続論などいろいろありますけれども、私はこの
制度は、自体あってはならない
制度だという思いの中から、根本的に間違っている、だから絶対に撤廃しなければいけないということで
意見を申し上げたいと思います。
そうはいっても、私は専門家ではございませんので細かい数字のことはよく分かりませんけれども、そんな私が見ましても、これはおかしいと思うような数字が前提条件でつくられておる。
内容が極めて不備、おかしいということで、どこから見ても
制度、システムが間違っているとしか言いようがない。だからこそ、どうしても、何としてもこの
制度を撤廃をする、なくすんだということを
国会の役割として
お願いを申し上げたいと思います。
まず、
後期高齢者医療制度は、そもそもの基本である社会保障の基本理念、これが何なのかということを忘れております。それは、全体で支え合うということでつくられたのが社会保障
制度だったわけですね。それが忘れられている。なぜならば、先ほど
原中参考人も申し上げられたように、そもそもの入り方が違う、財政削減先にありき。その中でも社会保障の抑制、一番のねらいは
老人医療費の削減というところから始まったということで、この考え方の違いがこの
制度のすべての諸悪の根源になっているというふうに私は思います。そして、その根拠になっているデータ自体が数字合わせのための都合の良い寄せ集めで作られておりまして、全く信用できないまやかしの
制度になっているということです。
小泉内閣以来、
政府が出してくる政策は余りにもうそが多過ぎると思っております。先ほどいただいた資料でちょっと引用させていただきますと、イギリスの名宰相となった、ユダヤ人で初めてイギリスの宰相でありますが、ベンジャミン・ディズレーリ氏はこう言っているそうであります。うそに三つある、軽いうそはただのうそ、重いうそは真っ赤なうそ、最も罪の重いうそは
政府の統計ということなんですね。これは、今、これまでいろいろ出されている
政府の数字合わせのための都合の良い寄せ集めだと言っているところにつながるわけです。
そのうそに基づいて作られた資料、言ってみれば、社会保障費の削減、
高齢者医療の削減は二〇〇三年の小泉内閣の閣
議決定をされたわけですが、そのこと自体、したことが悪いんですけれども、そこに出された資料、そのときに正確なデータ、物すごく意図的でない数字に基づいて正常な判断というのがされるような状況が作られておれば、こんな決定はされなかったんではないかというふうに思うんです。これは、
与党とも
野党とも同じ条件に置かれたわけですから、すべて
与党だと言うわけにもいかないけれども、そういうことを常に出してくるという、こういう状況をまず直さないと、これからの問題も決して良くならないというふうに思っています。
そして、この中で特に
一つだけ申し上げると、例えば
高齢者の
医療費が急激に増えますよと言われておりますけれども、一人頭の
医療費はこの五年間の統計を取ってみても増えていないんです。大体七十五万円程度で推移をしているわけですよ。ところが、これが急激に増えるというのは人口構造の変化なんですね。一人頭は増えないけれども、掛ける人数分が多くなってくるから
医療費が増えるということなんです。ということは、この数字に基づいてだけ言っても、今のようなやり方で
制度をつくっていっても、あるいはびほう策を施しても、抜本的解決にはならないんです。どんなに見事な処理をするような案を出されても、この根本的な問題は直りません。
ということは、この
老人医療費を減らすというのは、今の
政府が出している案で、そして今実施をされている
内容から見ると、答えは
一つしかないんです。人を減らすしかないんですよ、対象になる人を。ということは、巷間メディアでも言われているように、
高齢者は早く死ねということかということを役所が言っているんじゃないかということですね。それはまさに一番裏側にある本音の部分を現しているんではないかというふうに思っています。先ほど
原中参考人もおっしゃられておりましたが、終末期診療の問題だとか人間ドックや健康診断の問題だとか、まさにこのことで、何をか言わんやというふうに今私は思っております。
その上で、それはどういうことかというと、
日本の人口構造の変化に
対応できていない
制度になっているということで、今日は
参考資料として幾つか出させていただきましたけれども、この中で少子・
高齢化・人口減少社会の進行というグラフを付けておきました。
説明をする時間はございませんので後で御参照いただきたいと思いますが、戦後急速に人口が増える、そして子供の数も多かった、しかし、二十一世紀に入る直前に子供の数をお年寄りの数が上回る、そして二〇一〇年を過ぎていくと、このお年寄りの中でも前期、後期と言われている
人たちの中で後期の
人たちの方が増えてしまうという人口構造の変化、このことと、一番右側に書いてある
平均寿命の延び、これが本当はシステムやルールを人生六十年時代、七十年時代の設計から人生八十年時代、九十年時代の設計に変えなきゃいけないのに、そのシステム変更ができていないというところがそもそもの根本問題になっているわけで、びほう策を施してもどうにもならないということを私はまず申し上げておきたいと思うんです。
そして、このことをやっていく中で、極めて恐ろしい表現が取られておる部分を申し上げると、閣
議決定をされた大綱の中に、
高齢者が安心して
医療にかかれるような
制度をつくりました、若い人も国からも応援しますと書かれてあるんです。しかし、この
制度をつくって、その枠の中に
高齢者を入れてから、
高齢者に対しては二年ごとに
医療費増を押し付けていく
制度になっているということですね。
これは、
介護保険を例に取ればよく分かります。
介護保険の場合には、おおむね三年を通じて財政の均衡を保たれるものでなければならないというふうに書かれています。したがって、二〇〇〇年スタート、二千九百十一円でスタートしました。今までに二回見直しが行われ、来年三回目の見直しが行われることになっていますが、財政の均衡が保たれないという
理由で、来年の三回目の見直しはスタート時点の倍以上の六千円を超えるというふうに言われておりますね。
今度の
後期高齢者医療制度はどうか。ここの表現が全く同じ中で見直しの年数だけが違うんです。おおむね二年程度を通じて財政の均衡をと書かれています。ということは、三年に一回の見直しが二年に一回でスピードが速まる、その上で、この均衡が保たれるはずでないから、六千円全国平均のスタートが二〇一五年には一万三千円を超すというようなことがもう言われているわけです。
ということは、
年金から
天引きをされる六万六千円程度の基礎
年金だけの方が
介護保険料六千円、そして
後期高齢者医療制度一万三千円、約二万円近くが抜かれる。その上で、住民税もこれから
年金天引きをするんだということになれば、憲法で保障されている生存権を脅かすことにつながりかねないし、つながっているということ、こういうことをやるようなこと。その上で、今まで長年積み立ててきた人に対しては、あなたはこの年齢になったらこういう
制度があって、老後の
生活を安心して送れるように保障しますよと言っていたことを裏切ったわけですから、これはまさに詐欺行為以外の何物でもないというふうに私は思います。
その上で、今回対象になる七十五歳以上の
方々は、昭和二十年終戦時には十二歳以上の
方々だったわけです。戦争体験者、中には戦場に行かされた
人たちです。そして、戦後の
日本の復興を担ってきた
人たちですよね。税金も
保険料も払い続けてきたんですよ、ずっと。そして、今でもまだ払っている方もおられます。その
人たちが今度は支えられる側になったときに、
自分のことは
自分でやれと言われているんですね。
負担は増やしますよ、お医者さんにはかかれませんよ、そう言われたんです。これでは、国家による詐欺行為と私は断じたいと思う。悪徳商法をやる悪質業者よりひどいということです。
そして、反面、若い
人たちが不公平だというふうに言うけれども、今までそれぞれの世代の
人たちがそれぞれの世代で
日本を支えてきたのではないでしょうか。
日本社会というのは、夫婦のきずな、家族の情愛、そのことによる地域のコミュニティー、それが物すごい大切に守られてきて、そのことによって
日本社会が成り立っていた。しかし、この
制度が実際に実行されるということになった場合に、この
日本社会を一番形成をしてきた大切なものを失わさせるということに私はつながっていくというふうに思っています。
その上で、私に知人の女性がこういう話を持ち込みました。私の父は九十六歳、母は八十八歳です。通知が来ました。計算式は書いてありました。しかし、両親はどう計算しても答えが出てこない、私が計算しても答えが出てこない、にもかかわらず
年金から
天引きをされた。変わりますよという通知は来た。しかし、あなたは幾ら引かれますよという通知は、
年金天引きになって初めて金額が分かったんです、いまだに来ないんですよ。
年金をいただくときには申請主義だからお上に
お願いに行きます。やっと出してもらいます。取られるときには、幾ら取られるかも分からないのにいきなり
年金から
天引きですよ。これは給料から引かれるというのとは決定的に違うんです。お年寄りの
年金は、ほとんどの人はとらの子の財産なんですから。このことをよく考えてほしい。
国民をだまして苦しめるような
制度はやめて、だれもが穏やかな老後を過ごせるような
制度を是非つくっていただきたい。
その上で、この
制度がスタートしてからほとんどの人が、そして今おられない
国会議員の
方々も、間違ったんじゃないかなと思っている方が大多数だと思います。その証拠に、
政府提案をされた
与党の中からもいろいろな声が出ておられるし、
自民党の元総務会長堀内光雄さんは、これでは
高齢者が殺されるという寄稿を文芸春秋にも寄せられた。元財務大臣の塩川さんも、こんなに温かみのない
制度は初めてだと言われた。
この思いは当事者のみならず
国民全体が持っていることなんです。ということは、通ってしまったから、もうこの
制度ができてしまったからやる以外にはないというのではうその上塗りになるし、そういうことではなくて、
国民を欺く数字合わせのための無理な政策はもういいかげんにやめて、うそのない透明な税金、
保険料の使い方をすることで私は
日本は再生できるし、
国民生活、特にお年寄りの
生活は安定をさせると思っております。
激変緩和
措置と言われています。お年寄りの
生活は激変させてはいけないんです。何が激変させて緩和なんだというのがお年寄りが訴えてくる本当の気持ちですよ。
私は、「
後期高齢者医療制度」を撤廃する会の呼びかけをいたしました。
高齢者を抱えている多くの団体の
方々に声を掛け大変な賛同をいただき、資料としても出させてありますが、お年寄りの方が
国会前に、どうしても我々が
意見を言いたいという場をつくってほしいということで物申す場を設定をいたしました。今日御
出席になられている
議員の
方々も激励にお見えいただきましたけれども、炎天下の中、そして雨の中、お年寄りがああいうところで座り込んで訴えなければならないなんていうのは、こんな悲惨なことはないんです。そんな政治をしてはいけないんですよ。
だから、私はどうしてもこの
制度、もう世界に例のない悪法、これは何としても撤廃をさせなければいけない、その上で税制と社会保障を一体的に見直しをして新しいシステム、ルールを作り上げなければいけない、その橋頭堡、突破口がこの
後期高齢者医療制度、何が何でも撤廃をする、そのことを是非
お願いをしたいと思い、今日は
意見を言わせていただきました。
ありがとうございます。