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風間直樹君 私は五月の十七日の再放送を見ました。大変衝撃を受けたわけでございます。ちょっとこの番組でも紹介された経緯をざっと申し上げます。
まず、このオシラク原発がフランスの協力で七〇年代にイラクに建設をされたわけでございます。米国が相当
外交努力でこの建設を止めようとしたけれども果たせなかったと。イスラエルもかなりの諜報活動でその破壊工作を試みたようですが果たせなかった。最終的には、イスラエルの当時のベギン首相が苦悩の末、攻撃、破壊を決断した。これがちょっとびっくりしたんですが、当時イスラエル
政府は、米国の偵察衛星、これを使用して、その宇宙軌道を変更する権限を持っていたというんですね。どういうことかといいますと、この偵察衛星でイスラエルの
国益上非常に重要だと思われる施設の目標、これを選択すると。その施設を衛星で撮影できるように宇宙軌道からの撮影パターンを変更する最終的なアクセスの権限を米国
政府の許可の下、保有していたと。これが述べられております。
こうして得られた情報から、この攻撃当日、八機のF16で約千百キロの距離を高度三十メートルで飛行した。目的地では炉心のみを完全に破壊して、イラク空軍機のスクランブルもなく、また高射砲の命中も全くなかったと。八機全部が無事生還をしたわけであります。同時に、イラク
政府はイスラエル
政府による臨時発表までだれが攻撃したのか一切把握できなかった。これが一連の事実であります。
この中で
一つ興味深い事実がございまして、当時NSAの長官でありましたリチャード・アレンが、米国の
政府、国務省なんでしょう、からこういう事実があったという緊急の連絡を電話で受けて、すぐにキャンプデービッドにいた当時のレーガン大統領に電話で連絡をしたそうであります。そのときレーガン大統領が何と言ったかというのが本の中で紹介をされているんですが、本は「イラク原子炉攻撃」というタイトルで並木書房から出版されております。
何かねというレーガン大統領の問いに対して、大統領、イスラエルがF16でイラクの原子炉を破壊しましたとアレンが報告した。そのほかには。それだけです、あとは報告を待っているところですと。レーガンさんがここで、やつらがなぜやったと思うかねと、こう質問をして、その答えを待たずに
自分で答えたと。やれやれ、少年はいつまでたっても少年だなと。これ原文で言いますとボーイズ・ウイル・ビー・ボーイズと、こういう原文なんですけれども。番組の中ではこれが生で紹介をされておりまして、私はそれを見て大変、当時のレーガンさんのイスラエルに対する姿勢というのは、ある
意味好意的といいますか、随分寛容な姿勢だったんだなということを強く感じたわけでございます。
この攻撃自体は
世界で初のいわゆるプリエンプティブオプションというか先制攻撃でございまして、米国も当初は政権の閣議で相当混乱をし、イスラエルの行動に対する反発の声が上がったそうであります。しかし、最終的には先制攻撃をしたという事実に対してのみ怒りを表明して事実上制裁を行わなかったと。八一年の九月、攻撃から三か月後には、攻撃によって保留をしていたF16を追加売却し、同時に攻撃から約三か月後にベギン首相がワシントンを公式訪問していると、こういう推移であります。
私が注目をしましたのは、このときにベギン首相が取ったその行動とその決断、さらにその背景にある苦悩の深さであります。
番組の中でこのベギン氏の当時の発言が引用されておりましたけれども、何よりもベギン氏の念頭にあったのは、いかにして第二のホロコーストを避けるか。
自分たちのまさに同世代あるいは父親、祖父母の世代がホロコーストで大量虐殺された、その悲劇を再び繰り返してはならないと、核攻撃によって起こしてはならないと、それをいかに避けるかと、それを避けるためにぎりぎりの判断をし攻撃を決断したと、こういうことであります。
当然、先制攻撃ですとかそういった手段を講じるということは、私ども
日本人の立場としてはこれは非難をしなければならない、とても許容できる発想ではないと私は
考えているところでございますが、ただ、先制攻撃をしたという事実をちょっとわきに置きまして、国家の首脳が自
国民の安全を守る上での非常に深い決意と、同時に毎晩眠れぬ日々が続くという
意味での苦悩、こういう姿勢、その
部分はやはり同じく国政に携わる者として示唆に富むものではないかと思うわけであります。
両
大臣にお尋ねをしたいんですが、我が国も現在、北朝鮮がこれは核を保有しているのかしていないのかまだ分かりません。ただ、実験をしたという公表を北朝鮮はしたと。近い将来、保有をする可能性も視野に入ってきていると、こういう
状況だと
思います。
そうした中で、このイスラエルの先制攻撃という事実は少しわきに置きまして、国家首脳が自
国民の生命の
保護にこれだけの深い決意を持って当たるというこの姿勢に対して、両
大臣、どんな
思い、感想をお持ちでいらっしゃるか、お尋ねをしたいと
思います。