○菊池
公述人 皆さん、こんにちは。ただいま御紹介いただきました菊池でございます。
本日、
公聴会の方にお招きをいただきまして、私の所見を聞いていただく機会を与えていただくことを大変うれしく思います。大変光栄に思います。
今、水谷先生からは超緊縮のお話がございましたけれども、私は全く逆のお話を申し上げます。しかも、はっきりとここで申し上げておきたいことは、やはり現在
日本は大変な危機でございますけれども、これは
政策危機です。
財政危機ではございません。これは細かく、データをもって、出ているデータはすべて
政府、財務省、内閣府、OECDのデータを使っております。そういう客観的な視点からお話を申し上げたいと思います。
それでは、お手元に
資料を
幾つかお配りいたしまして、それから、私が書きました「実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠」という本、ちょっと御贈呈させていただきましたので、それは後ほど見ていただくことといたしまして、お手元の
資料で、
一つ、一番上にA4の一枚、レジュメが書いてございます。時間もございませんので、このレジュメをもとにして、私が申し上げたいことを最初に申し上げて、それから同時に、横長のこういうA4の
資料がございます、先ほど申し上げたとおり、すべて客観的データでお話しいたしますから、このデータを公述の中でごらんいただきながら申し上げたいと思います。
それでは、縦長のメモをごらんいただけますか。
私は、この
予算案には反対でございます。その理由と、閉塞感に陥っている現状の打開策ということを申し上げたいと思います。
私はもともと、小泉構造改革が始まりました二〇〇一年の四月、これは大失敗に終わるだろうと思っておりました。結果は、そうでございます。
議論の余地は、私はないんだろうと思います。すべてのデータがすべて悪化しております。よくなったのは、大企業の収益、それから輸出の増加だけです。それ以上何かございましたら、後ほど教えていただきたいと思います。
お手元のメモがございますね。まず、このレジュメの大きい項目を読みます。
一番上、構造改革が
日本の経済社会システムを崩壊させた。戦後、
日本は経済的、同時に社会的にも最大の危機だと私は思っております。
それから、二番目、下の方ですね、
日本は緊縮
財政のわなに陥り、悪魔の縮小不均衡現象を呈している。どういう現象かは
数字で後ほどお話しいたします。
裏を見てくださいませ、恐縮です。裏の一番上のところ、三番目、二〇一一年の
基礎的財政収支黒字化の
目標、
政府が立てておられますね、これを凍結していただきたい、と同時に、積極
財政への転換をしていただきたい。アメリカの実情を見ましても、一九八五年に、レーガンのときに、グラム・ラドマン・ホリングズ法という
財政均衡法を立てました。これは、結果的には大失敗だったんです。
それから、その下の方、クリントン大統領の
財政改革。その大失敗の後を受けて当選したクリントンが、結果的には五年で
財政を黒字にしました。それの具体的な数値、
方法をここで御紹介いたします。
一番
最後、未来にすくむな
日本人、
財政呪縛からの解放、危機唱えるより前に行動しろ、すべきじゃないか。我々
日本人のお金を
日本の成長のために使おう。使い尽くすんじゃないんです。運用するんです。運用して、果実を
国民に帰するように使うわけです。そうすればこの閉塞感は打破できると私は思います。これは三年、五年の計画です。
政策の全面的な転換が必要だというのが私の考え方でございます。
それでは、順を追ってお話をいたします。もとのメモの一ページに戻っていただけますでしょうか。恐縮でございます、いろいろ見ていただきますが。
まず、構造改革が
日本の経済社会システムを崩壊させた、戦後最大の政治、経済危機。政治というのは、経済はもちろん政治につながってくるわけですけれども、そういうことでございます。
ここに書いたことをずっと読ませていただきます。
構造改革はビジョンなき破壊活動である。これを見直さなければいけないということを、実は、二年前ちょうど
公述人でここにお招きをいただいた、ここでも私、結びの言葉で申し上げました。当時、小泉内閣でございました。
それで、これは間違った理念と手法でスタートしたんだから、結論、答えは間違ったことしか出てこないんですよ、さっき申し上げたとおり。それが
日本の、経済だけではありません、社会的にも大変に、破壊活動的なことが随所にございます。
まず、項目を整理していきますと、一番、デフレのときに緊縮
財政。緊縮
財政というのは、投資関連の
支出とか、
地方交付税交付金、国庫
支出金を削減しましたね。それから、
予算はゼロ成長
予算。これで何をねらったかというと、赤字の縮小、債務の圧縮をねらったんですよ。しかし、結果はどうですか。全く逆の結果ですね。デフレが促進した。
財政赤字が拡大した。債務は増加した。そのツケが、実は、医療の極端な圧縮。お産したくたって、たらい回しでお産もできない。小児科も消えている。医療費は、緊縮
財政が非常に大きなウエートを占めています。大部分と言っても言い過ぎではありません。そういうことで医療システムが崩壊している。それから、教育費の圧縮。先ほど片山先生は大変いいことをおっしゃいました。私も本当に危機感を持っております。
それから、二番目、不良債権を加速処理すれば銀行貸し出しが増加し、景気が回復する。こうやって竹中さんがしょっちゅうおっしゃっていました。どうですか、今は。全く銀行貸し出しは伸びていません。
どうなったかといいますと、二〇〇〇年度の不良債権比率というのは五%だったんですよ。私は、長く東京銀行におりましたから、銀行屋でした。実態から申しますと、五%というのは、これはもう大体、不良債権、終わっているんです、回収は。ですから、二〇〇〇年度といいますと、これはとてもいい年だったんですね。九九年から二〇〇〇年度にかけては非常にいい年で、税収も上がりました。五十一兆まで上がりました。現在はそこまでいっていないんですから。
ところが、二〇〇一年に小泉内閣ができて、不良債権がどうなったか。八・四に上がったんですよ。小泉内閣が緊縮
財政をとったから不良債権がふえたんですよ。その八・四を半分にしようというのが当時の金融再生プログラムで、時価
会計とか減損
会計によって健全な企業と銀行をつぶし、デフレで貸し出しが低下する、ペイオフとか自己資本比率で金融機能が減殺しているということですね。例えば、UFJ銀行がつぶれましたね。あれは、私の
意見では、金融庁がこういう手段で意図的につぶしたんであろうと思います。私、本に書いてあります、きちっと客観的データを。私はそう解釈しております。
それから、三番目、金融
政策への過度の偏重。ゼロ金利とか流動性供給をしましたね。それでデフレを解消しようと思った。いまだに解消していません。ですから、マネタリストといいますか、マネー、金融
政策でデフレが解消するという考え方は、はっきりこの五年間で否定されたんです。
それから、四番目、乱暴な規制緩和。一例はタクシーの台数ですね。最近、問題になっています。運転手さんの給与は、その前に比べたら四割ぐらい下がっている。台数も多い。交通事故も多いんですよ。こういうような秩序立った規制というものを、はっきりと、規制というものはどうあるべきか、いい規制があるわけです、それを、むやみにやればいいということでこういうことが起きている。
それから五番目、
一つの理念は市場
原理でありまして、しかし、この市場
原理による社会的な乱れというものは大変に強いものがありますね、厳しいものがあります。
市場
原理というのは、皆さんはよく御存じのとおりですが、これは
経済学のもともとの
原理、言葉ですけれども、
経済学というものは、
三つの要素がございます。金と物と人です。そのおのおののものをできるだけ安く買って、高くなって売る、これが市場
原理の一から十まで、すべての根幹です。人間もそうなんですよ。安ければ雇う、要らなかったら捨ててしまえ。だから、市場
原理の中には、人間性の尊厳とか魂というものは全くない。
最近の事例をお考えになりますとよくわかりますね。この数年間、社会の乱れ、例えばホリエモンだとか、村上世彰さんなんかがありました。もうけりゃいいんでしょう、何が悪いんですかと。インサイダー的なこともやっている。裁判所に行ったら、全面的に否定する。そういうような気風が物すごく蔓延しました。
そして、社会的な連帯感、倫理観の欠如、収益至上主義、これがあっという間に広がりましたね。
日本はもともと宗教的な束縛が弱い、家庭内でも弱い国だったからでしょう。恐るべきことです。これは全面的に変えるべきではないかと思います。「国家の品格」というのを書かれたお茶の水大学の藤原正彦先生は、市場
原理はけだものの
原理だとおっしゃっています。私も全く同感です。
それから、本質的な誤りは、需要を喚起する
政策をとるべきところを、需要を極端に圧縮した。
日本は資金余剰国でありますから、公共投資とかいろいろな形で資金を循環させなければ経済は
活性化しません。それを極端に圧縮したものですから経済規模が縮小する、だから税収が不足する、さあ緊縮
財政だ、さあ増税だということになっちゃって、それでこれが結局格差の拡大になっております。
そこで、まず、お手元の
資料の図表を見てくださいますか。恐縮ですが、お手元にデータをお持ちと思いますが、右上に1とございます、これをごらんいただけますか。
まず、「いざなぎ以来の景気拡大は大ウソ」と書きました。率直に書いたんです。皆さん、景気は実感ないと言いますね。それから、イザナギ以来の景気拡大だと
政府とか内閣府は言います。しかし、これはデフレの裏返しにすぎないんですよ。
一番下の
グラフをごらんください。今のデフレというのは、一九九八年から始まっています。橋本
財政改革は九七年、これで極端に抑えつけた。そこから始まっているんです。これは
財政デフレです。その後、金融危機等もありましたけれども、依然として続いているのは
財政支出、特に公共投資をどんどん落としていきます、その波及効果。したがって、デフレでまだ新しい民間投資も余り出てこない。
地方なんかほとんど皆無に近いですよ。だから、一番下、ずっと落ちていますね。これは、一九九八年から見ていますと、ちょうど二〇〇六年までの八年間で八・八%のデフレなんですよ。
一方、上の方をごらんください。名目成長というのが真ん中に書いてありますね、五百七兆と、上の方にGDPがございます。その上に五百四十八兆、実質ですね。実質がふえた、ふえたとおっしゃるけれども、実はこれも、一番最初の方に言った、デフレの裏返しにすぎないんですよ。こういうところに、大きな
一つの問題といいますか、我々の認識を誤らせている大きな根幹がございます。これは非常に気をつけなければいけません。
それから、イザナギ景気以来だとおっしゃるのであれば、右下のところを見ますと、イザナギ景気というのは一九六五年十一月から七〇年まで五年間ありまして、この間、名目成長で一七%、実質では一一%。それで、一番のポイントは、あのイザナギ景気のころは、毎年減税しながら、ほぼ五年間で税収は倍になっているんですよ。しかし、今、
日本、税収はどうですか。一番上の
グラフを見ていきますと、二〇〇〇年には五十一兆あったんですよ。どんどんどんと落ちましたね。小泉内閣になってから落ちたんです、税収は。それで、二〇〇六年、小泉さんの
最後の年ですら四十九兆しかいっておりません。ここに大きな問題が実質上ございますね。
その次、めくってくださいますか。これをめくっていただきますと、格差というのがどうして起きたかということが
数字の上では御了解いただけると思います。
これは、
地方交付税と補助金の推移というのを二〇〇〇年度からずっと見てみたんです。二〇〇〇年をベースにして、毎年ずっと落ちていますね。左上、
地方交付税交付金と補助金、国庫
支出金というのは、実は、この七年間で三十六兆落ちているんです、国から
地方へ回すのは。それから、左下は公共投資。これも同じような基準にしますと、累積しますと十一兆です。合わせますと四十七兆。
つまり、小泉構造改革になって、構造改革がスタートしてから、ことしもその延長線と考えていいですね、実に、
地方へ本来ならば回っていた四十七兆円を回せなくなったんですね。それは
地方も干上がっちゃいますよ。それは
地方の
事業を促進するという名目はあるでしょう。しかし、短期間にこれをやったら格差が拡大するのは当然じゃないでしょうか。
地方財政が破綻するというのは当然です。こういうところに大きな問題点といいますか、
数字上ではっきりと格差の問題がございます。
それでは、レジュメに戻ってくださいますか。あっちへ行ったりこっちへ行ったりで恐縮でございますが、レジュメの真ん中下、二番目です。
日本は緊縮
財政のわなに陥り、悪魔の縮小不均衡現象を呈している。
これはどういうことかといいますと、今までのところの五年間をよくごらんいただくと、こういうことだったと思うんです。緊縮
財政、十年間で
歳出増加はゼロです。そうすると、経済が不活発になる、税収が減少する。それで増税しましたね。例えば定率減税はこの二年間で三・三兆円、
国民から、所得税の増加になっております。そうすると消費も減少する。民間投資とか公共投資、ともに落ちます。それから名目のGDPが停滞する。これは十年間、
日本だけです、停滞しているのは。この後
グラフでお示しします。それから税収が減る。さあ大変だ、今度はまた緊縮
財政だ、増税だ。そうすると、経済規模が縮小する、GDPが縮小する。さあ、どうするか、また緊縮だ。こういうことになってくるんですね。
まさにこれは悪魔の縮小不均衡ですよ。なぜ悪魔と言うかといえば、
日本はお金があるんですから、お金があるのを使わないからこういうことになるということですね。
では、本当にどうなのか。今、
グラフを見ていただきましたね。恐縮ですが、
グラフの右上の3というのをごらんいただけますか。
これは、名目のGDPの国際比較をしたものです。一番下、ずっと低迷しているのは
日本です。これは一九九七年を一〇〇にしたんです。というのは、一九九八年からデフレが始まっています、
日本は。そうしますと、
日本は九七年に比べて二〇〇六年は一〇〇にもいっていないんです、九七です。一方、上の方はどうですか。アメリカ、イギリス、九七年に比べれば大体一・五倍になっています。ユーロ
地域で一・四倍、ドイツで一・二倍。ドイツは若干統一等で厳しい緊縮
財政であったとはいえ、一・二倍に伸びています。これも全然伸びていないんですよ、経済成長が。
だから、何がここにあったかということですね。これはもちろんデフレ
政策をとってきたんですが、その次のページをめくってくださいますか。
次に、これが
予算です。
日本は
財政規模が小さ過ぎる。
日本は小さい
政府だとおっしゃいますが、そうではありません。もはや小さ過ぎる
政府です。
これを見ていただきますと、これもやはり一九九七年を一〇〇にいたしました。それでずっと見ていって、二〇〇六年、一番下、一〇二とありますね。つまり、この九年間、全然伸びていない。新年度
予算も入れれば十年間、ほとんど伸びていないのは
日本だけです。アメリカは一・六倍、イギリスも一・六倍、それからフランス、ドイツあたりで一・二倍ぐらいいっていますね。
つまり、
財政支出というのもそれぞれの経済の大きな指標なんですよ。デフレ
政策を
政府がとるよと言えば、もう釈迦に説法みたいなことを申し上げますけれども、企業は縮み思考になる、自分も投資しないよと。さあ、
政府がこういうふうにやるんだ、積極的にいこう、減税もしようと思えば、そうか、需要が起きるね、じゃ、投資しよう、こうでしょう。この相乗効果なんですよ。
ですから、
政府がこのように緊縮
財政のわなに陥って、さあ、どこも見えなくなった、緊縮だ、緊縮だと言っているとこういうことになるのですね。これが一番大きな原因です。はっきり言いまして、これは世界から見ますと、本当に、ちょっと言葉が厳しい言い方をしますと、笑い物です。
私はよく、毎年ニューヨークとかワシントンへ行きましていろいろな方にお会いします。そういたしますと、どうして
日本はこんなに
財政支出を抑えたりなんかしているんだ、どうして減税しないんだとはっきり
政府の要人の方がおっしゃいますよ。オウンファイナンス、自分の金でできるじゃないかと。アメリカは
日本に
国債を買ってもらっているために景気も拡張できると喜んでいますね。アメリカ人というのは率直ですからね。
日本はどうしてやらないんだと何回も言われましたよ、私は。
では、その次のページを見てくださいますか、五番目。
要するに、投資不足というのはこの数表でよくわかるんです。上の方は民間の純投資。投資がどの程度かということには純投資という概念を使うといいんですね。これは、投資の増加額と、投資というのは減価償却いたしますね、毎年返ってくる、それを引いたもの、ネットの投資、これがふえていくということが経済成長に結びつくんです。投資というのは経済のエネルギー、動脈ですから。動脈というより、まさにエンジンですね。
そうすると、上を見ますと、民間投資、小泉さんになってから
中小企業が一時マイナスになりました。また少し戻ってきても細々としていますね。左の方、ぐっといったのがバブルでしたから、その後、九七、八年もよかったんですね。小泉さんが出てくる前はよかったんですよ。
小泉構造改革というのは何かといえば、一応その前の一九九九年とか二〇〇〇年で経済が回復し始めた、これは小渕さんのころですね、小渕さんとか森さん。これは結構うまくいってきたんです。テークオフしかかった経済を墜落させちゃったのが小泉構造改革ですよ。これは歴然としています、事実で。
下をごらんください。公的資本を同じようにネットで見ますと、実は一九九七年からマイナスです。つまり、回収の方が公共投資も多くなってきた。
日本というのは八割ぐらいが山岳地帯ですから。今一番の大きな問題は、内閣府が二〇〇一年に公共投資のGDP比率を欧米並みにしようとしましたね、二・五か六に。その前は四%ぐらいいっていました。だけれども、体質的にも違うんですよ、経済構造からいって。さっき言ったとおり、貯蓄をうまく回さなきゃいけないという構造。これは民間だけじゃ回らないんです。民間には今百五十兆ぐらいの余資がありますから、これは民間だけじゃとても回りません。だから一生懸命外へ外へとみんな投資していますね。内需を喚起しないから、今でも税収は上がらないわ、名目GDPは上がらないわと、こういうことなんです。物すごい悪循環。これを悪魔の縮小不均衡と私は呼んでいるわけです。
それでは、メモの二ページ目を見てくださいますか。惨たんたる
日本経済。その次に書きましたけれども、これは御存じだということで省略します。
ですから、二〇一一年の
基礎的財政収支黒字化の
目標、これを凍結していただきたい。そして、それによって、では、何だ、
日本は
財政危機じゃないのかといいますと、私は、
財政危機だとは思っておりません。
データで申しますと、あっちこっち行って恐縮でございますが、
資料の七ページへ戻ってくださいますか。
資料を中心にお話ししましょう。
今、プライマリーバランスというのが問題になっていますね。しかし、プライマリーバランスをふやしたのは構造改革の結果です。よろしいですか。ここの基本認識はしっかり持たないといけないんです、我々は。構造改革、ごらんになってください、下の方に黒くなっていますね。小泉内閣になってから、どんどんこれがふえたんです。
そして、さっき申し上げたような形で
交付税交付金を削除して、
地方からほぼ三十六兆円ぐらい、はっきり言えば召し上げる、出さないようにする、公共投資を十一兆も落とすというようなことをしてやってきたわけですね。
それでも、実は二〇〇八年度、このままいきますと、プライマリーバランスは予想どおりいかないだろう、これが大体公の見方です。私も、絶対いかないと思っています。二〇〇八年度はもっと経済は厳しくなると思います。これでもう完全に行き詰まっているわけです。早くこれを凍結して、新しいビジョンに立った方がいいわけです。これを強行しますと、
歳出削減だ、さあ医療費削減だ、三割削減だ、どんどんこれは社会的な基盤が広がっていきます。このことをしっかりと我々は認識すべきです。
その次のページ、見てくださいますか、表の8。
私が
財政危機ではないと言うのは、実はこの表なんです。左側で、八百三十四兆とありますね、粗債務、借り入れ。ところが、
日本は五百八十兆ぐらい金融
資産を持っているんですよ。最近、
埋蔵金とか何かいいまして、ようやくこの辺の
特別会計のことなんかが出てきましたけれども。
そうすると、どういうのがあるか。一番下だと外貨準備百十兆ありますね。これは、
政府の短期債務に結びついています。それから、財投債というのは、こっち側の内外投融資と二重記帳です。それから、
国債の中でも建設
国債とか内外投融資に入っている部分は二重記帳です。あと、
社会保障基金、恐らく二百六十兆今あると思います。確実な
数字では二百四十兆、二年前にありましたけれども。二百六十兆あると思います。これは
年金基金と健康
保険の積み立てですね。そういうふうに見ていきますと、純債務というのは二百五十兆ぐらいしかない。
だから、私はよくアメリカにも行きますし、いろいろなところに行きますが、海外の主たる
日本のことを知っている人は、
日本が
財政危機だと思っておりません。これはもうはっきりしております。私は文芸春秋に書きましたので、お手元にもございます。
それから、その次のページを見てください、図表ですね。ここに金融
資産の内訳が出ております。
社会保障基金も書いておりますし、外貨準備も書いております。
それから、その次のページをごらんくださいますか、右上の9。ここには、
加藤寛さん、前の税制調査会長を十年もやられた方が、
日本は
財政危機ではない、純債務は二百五十兆円程度だ、債務の半分は二重記帳だと書いているわけですね。つまり、税制調査会長を十年もおやりになった方がちゃんと産経新聞に書いていらっしゃるんですから、これは間違いはないと思います。
時間の関係もございますから、では、どうすべきかということで、あとはお聞きください。
何とかして、やはり
財政資金を活用した景気振興策が必要です。デフレのときには
財政資金を活用する、これはもう歴史的な教訓です。昭和恐慌の解決もそうです。大恐慌もそうでした。それからアメリカでもそうです。二〇〇三年から四年にかけて、デフレが出たときに思い切ってやったら、減税しましたね。これは最近でもそうです。もう金融ではだめだ、
財政だということをして、思い切って十六兆、ブッシュがやりましたね。そういうようなことであります。
では、どういうところへ出したらいいか。ここで、社会的共通資本という言葉を使いました。皆さん、今まで余りお聞きになったことがない言葉と思いますが、公共投資というと、ああ、
道路かという
議論になりますけれども、決してそうではなくて、もっと幅広い概念。これは、実はクリントンのときに入れたんですけれども、ソーシャル・コモン・キャピタルという概念で、環境とか自然の保護、医療、教育、下水道、公共交通それから通信、いわゆるライフライン、そういった幅広いもの。それからあとは、私は特にここには書きませんでしたけれども、入れたいことは、エネルギーですね、脱石油。これはもう本当に爛頭の急務だと思いますけれども、そういうものに対して、しっかりとした、五年計画ぐらいのもので金をつける。毎年五、六兆円出せばいいんです。
そうすると、一時的には、債務の、
国民所得の負担は高くなります。しかし、これはいずれ、二年、三年で税収も上がり、景気がよくなってきますから、必ず減ってきます。これが実は
財政政策であり、大きな経済
政策だ。こういう
政策は、今
日本には非常に乏しい、乏しいというかほとんど皆無です。そうすべきだと思います。
ですから、定率減税も復活する、それから住宅ローンの減税も拡充する。アメリカでは、実は、円にして六兆円ぐらいの住宅ローンの減税がずっとあるんですよ。
日本は今五千億円ぐらいです。それから、
中小企業の投資減税。
法人税を下げる必要はありません。投資減税をして、特に
中小企業で投資をしたら減税する、こういうふうにすればいい。
法人税を下げたって、そのお金が国内の投資に回るかわかりませんからね。財界はそういう御
意見ですけれども、私はあれは反対です。経済的効果はほとんどないと思います。
クリントン大統領の改革というのは、これは、ちょっと時間がありませんので、後ほどどなたか御質問いただけるならありがたいと思います。
最後に、未来にすくむな
日本人。だから、
日本は、幸いなことに金融
資産があるんです。アルゼンチンとは違います。したがって、この金融
資産をしっかりと活用していけばいい。
例えば、先ほど、
社会保障基金に二百六十兆あるとしますね。一%の運用益で二・六兆円の運用益が出ます。
消費税一%上げると二・五兆円ですから。だから、
消費税は上げる必要はないんです。ちゃんと持っている
資産を運用して、その運用益を
社会保障基金に使っていけばいいんです。そういうふうにして、もっと資金を回すことを考えなきゃいけないんですね。
最後に申し上げたいことは、我々
日本人のお金を
日本の成長のために使おうじゃないか。
あと、補足として申し上げると、経済
財政諮問会議、これを廃止していただけないかと私は思っています。官邸内の対日投資会議とか規制改革会議、日米投資イニシアチブとございますね。これは、官邸の中でできておりまして、しかも、そういう
委員は、
国会議員の先生方の認可といいますか承認を得ておりません。我々が、
国民が選んだのは、皆さん方先生方、衆議院の代議士であり、参議院の先生方です。ですから、そういう人が、ぴしっとして
議論をした上で決めていただきたい。
現在では、諮問
委員会で決まったものは、すぐに内閣に行ってしまう。御存じと思いますが、第二次改革というのが去年の十二月に出ました。新聞にはちょこっとしか出ないんですよ、
国会の
議論じゃないですから。ですから、こういうものは廃止いただきたい。しかも、これが非常に危険なのは、かつてヒトラーが独裁政権をとったときには、こういうものを使ってヒトラーは合法的に首相に選ばれたんですから、
国会で。それが、結果的にはああいう、独裁化した。
最後に、各省庁の
審議委員、これもすべて
国会の承認人事としていただきたい。それで、任命期間を四年にしていただきたい。
ということは、私は、専門の金融、
財政で見ますと、十年前の金融危機のころにその
審議委員なんかやっていらして、不適切だ、余り適切とは思えない
意見を言われた方が、今でも残っていらっしゃいます。だから、よくなるはずはありませんよ。
ですから、せめて、二期二年としたら、二年で、四年でもうおしまい。そして、もっと
政府間も風通しがよくなる、それで我々が選んだ先生方の
意見がもっと通るようにしていただきたいなと思っております。
日本は、本当に現在、危機的な状況です。やはり、オバマじゃありませんけれども、オバマにあやかるわけじゃありませんが、本当にチェンジなんですね。根本的に考えなきゃいけない。これは、
財政呪縛からの脱皮です。
日本は
財政危機じゃないんです。はっきりとした
数字でお話ししている。これは非常に
議論があると思いますから、幾らでも
議論は申し上げますし、私はすべて客観的データで申し上げたいと思っております。
時間の関係もありますから、もし、いろいろ御
意見等、御異論もあれば、後ほど聞かせていただけたらと思います。
あと、クリントンの
財政改革。これは、クリントンは、債務王国でございましたアメリカが、結局、積極
財政をやって、それによって、それを先ほど申し上げた社会的共通資本というところに集中投資した、それが効果を生んだんです。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)