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福島委員 公明党の
福島豊でございます。よろしくお願いいたします。
総理にありましては、韓国の新大統領との会談、大変御苦労さまでございました。外交日程も大変お忙しい中でこの
委員会で質問させていただくことを、改めて御礼を申し上げたいと思っております。
総理は
国民の安心ということを強く主張しておられると思います。今、
国民の中にはさまざまな不安が広がっていると私は思います。
一つは、
高齢化がさらに進んでいる、その中で自分の
生活は大丈夫なんだろうか、こういう心配。そしてまた、
医療の崩壊ということも言われております。病気になったときに本当に診てもらえるんだろうか。たらい回しという事態もあるわけであります。そしてまた、少子化が進んでいるじゃないか、
日本の将来はどうなってしまうんだ、こういう心配もあると思いますし、本日も国の債務について新しい報告がありましたけれども、これだけ国の借金がふえて本当にこの国は大丈夫なのかねと。また、サブプライムローンの問題もあります。
日本の
経済はこれからも
成長を続けていくんだろうか。
こうしたさまざまな不安に対してきちっとこたえていく、これが今の政治の
役割であります。
国民のお一人お一人に安心をしていただける、そういう方向性をぜひ
総理のリーダーシップでお示しいただきたい、冒頭そのようにお願いを申し上げる次第でございます。
ただいまも
年金の問題についていろいろと御
議論がございました。
年金制度、
税方式か
社会保険方式か、こういう
議論があったわけでありますけれども、私は、いま一度現実に立ち返って、
年金というのは高齢期の所得保障の
制度であります。現在、
日本の高齢者の
方々の所得保障というものは本当にしっかりしているのかどうか、この事実をきちっとすることが必要だと思います。
昭和三十六年、
国民年金の創設によりまして
国民皆
年金制度がスタートした。そこから半世紀以上が過ぎたわけであります。
年金制度によって、どの程度
日本の高齢者の
方々の所得というものが安定してきているのか。
お手元に資料をお配りさせていただいております。これが、最近の
国民生活基礎調査等に基づく実態であります。
資料の1、高齢者世帯の年間所得分布、百万円未満の方は一五・七%。全世帯におきましては六・〇%でございますから、倍以上も高齢者においては多いということであります。約六世帯に一世帯は百万円未満の所得で
生活をしておられる。
二枚目は、高齢、特に女性単身世帯の所得の低さということであります。六十五歳以上の者のいる世帯、二千七百八十五万世帯の中で、男性の単独世帯は百二十一万世帯、女性の単独世帯は四百二十八万世帯。
この単独世帯に着目しますと、五十万円未満の年間の所得しかない
方々は、男性では六万世帯、女性は三十五万世帯と、女性の単身世帯の所得の低さということが浮き彫りになるわけであります。これを百万円未満まで広げましても、女性の場合には百十三万世帯、百五十万円未満に広げましても九十四万世帯と、男性を圧倒的に上回る数があるわけでありまして、合計しますと、百五十万円未満の世帯は二百四十二万世帯。これは実に、高齢女性単独世帯の二世帯に一世帯は百五十万円未満である、三世帯に一世帯は百万円未満である、そしてまた、十世帯に一世帯は五十万円未満の年間の所得で
生活をしておられる、こういうことになるわけであります。
そして、もう一枚おめくりいただきますと、三枚目のスライドということになりますが、単身高齢者の相対的貧困率の
変化、これは白波瀬佐
和子先生の資料でありますけれども、一九八六年と比較して二〇〇一年の段階で、相対的貧困率、これは世帯全体の等可処分世帯所得の中央値より五割に満たない比率というふうに定義されておりますけれども、どう
変化したか。
男性の場合には、死別の場合には五〇%から二四・七%、また、離別の場合には四七・四%から二七・八%と、これは一九八六年に比べると格段に改善をしておる。これは
年金の充実ということがあるんだと思います。
しかし、未婚の場合に、これはいろいろな事情があったんだと思います。もともと現役のときに所得が低いというようなことが背景にあるんだろうと私は思いますけれども、五八・三%が四三・五%、一五%程度の改善にしかすぎません。そしてまた、女性の場合は、特に離別の場合は六四・二%から五五・一%、実はこの十五年間で一〇ポイントも改善をしていないんですね。相対的な貧困率の高さがいまだに続いている、こういう事態が
指摘されるわけであります。
続いて四枚目でありますけれども、
年金額の格差ということで、これは
年金制度基礎調査の数値でありますけれども、これを見てわかりますことは、
厚生年金、正
社員中心で現役
世代に働いた方は、男性で二百十七・七万円ということで、これは大丈夫だろうという水準だろうと思います。しかし、女性は、正
社員中心で働いたとしても、やはり所得格差というものがありますから、百十九万七千円でしかない。それ以外の常勤パート、アルバイト等にいきますと、これは八十万円もいきません。これが実態であります。男性においても同じでございます。
そうしたことから、もう一枚めくっていただきまして、こうした
方々は最終的には
年金だけで
生活できないということから、被保護世帯、
生活保護の受給世帯に移っていくわけであります。
被保護人員数における高齢者の割合、これも
厚生労働省の調査でございますけれども、
平成十七年のものでございます。
総数百四十三万三千二百二十七人のうち、六十五歳以上は五十五万五千九十六人、三八・七%が高齢者であります。そのうち、女性が三十二万四千五百五十六人、二二・六%、男性は二十三万五百四十人、一六・一%。女性の単身者は、二十三万五千五百七十四人、一六・四%という比率を占めております。
先ほどもありましたように、所得が五十万円未満の女性の単身世帯は三十五万人でありますから、そのうち三分の二程度は
生活保護の方に移行しているということが言えるんだろうと思います。直接つなぎ合わせたデータではありません。
被保護高齢者における
年金の受給状況であります。これは、次のスライドでありますけれども、
平成十年と
平成十七年を比較しております。
被保護人員数九十四万六千九百九十四人から百四十七万五千八百三十八人と、五五・八%の増加をいたしております。このうち、六十五歳以上の者の増加率は、三十一万九千八百二十人から五十五万六千三百八十人と、七四%の増、平均よりも拡大をしている。
そして、
年金受給者に至りましては、十七万二千九百四十人から二十六万二千三百二十人。これは、五四・一%の受給率から四七・一%ということで、若干の低減がありますけれども全体としては増加をしておる。非受給者に至りましては、十四万六千八百八十人が二十九万四千六十人と倍増している。要するに
年金の、いわゆる所得保障というものが十分届いていないところがあって、そこのところが
生活保護の世帯の増加の
一つの大きな要因になっている、こういうことが言えるんだろうというふうに思います。
もう一枚めくっていただきますと、これは無
年金者数が将来一体どのくらい出るんだろうかと。
これはたしか長妻先生の要請で
厚生労働省が推計を出した数字だと思いますけれども、今後納付できる七十歳までの期間を納付しても二十五年に満たない者、六十五歳以上で四十二万人、六十歳から六十四歳では三十一万人、そしてまた六十歳から六十四歳で現時点において二十五年に満たない者、これは追納していただければ二十五年になるというものでありますけれども、そこまで入れると六十五万人。六十歳未満、下限は、これは四十五歳ということになりますけれども、四十五万人。これだけ予備軍が実は待機をしているというのが実態であります。
六十歳から六十四歳の方でありましても、実際にこれから七十歳まで追納して本当に
年金受給世帯になるんだろうかと言われると、私は、それは大変疑わしいんじゃないか、そのような資力というものを持ち合わせていないんじゃないかというふうに思います。
なぜこういうことになるのか。その次が、OECD諸国における
年金制度の構造ということで、最近OECDの本が翻訳をされましたけれども、一階
部分、二階
部分は、それぞれの国にあります。一階
部分は再分配的な
年金制度、そしてまた二階
部分は所得比例の
年金制度、これが一般的な形でございます。
日本の
年金制度というのはある
意味で特殊だと、私はこのOECDのレポートを見て思いました。
一階
部分については、OECDのレポートでは、
社会扶助、それから特定階層向け
年金、基礎
年金制度、報酬比例
制度の一部としての最低
年金、この四つの類型に実は分けております。そして、三十カ国のうち、どの国がどの
制度を持っているのか。
一つだけの
制度のところもありますし、複数の
制度を持ち合わせているところもあります。
基礎
年金制度に着目しますと、これは、一律の
年金を
給付するという
制度であります。それは十一カ国にあるわけでありますけれども、しかし、その中で三カ国、
日本、韓国、ニュージーランド、ニュージーランドは
税方式でありますけれども、これは基礎
年金制度だけなんですね。それ以外の八カ国というのは、特定階層向け
年金であるとか報酬比例
制度の一部としての最低
年金、これは
制度がちょっと違うわけでありますけれども、そういうものを組み合わせている。それは、高齢者の所得に応じて一定の配慮が加えられるような
制度になっている。
このOECDのレポートを見ると、
日本の基礎
年金制度はすべての人が全部同じ額をもらっているような報告になっていますけれども、現実問題としては、すべて同じ額をもらっているわけではありません。それは、現役のときに
年金の
保険料の
未納期間というものがある、所得が低ければ低いほどそういう期間は長い、したがって、もらえる
基礎年金の額も低い、こういうことになるわけであります。そういう事態に対して、それをきちっと補完するような
制度、これはさまざまなOECDの諸国にあるわけでありますけれども、
日本は裸のままの基礎
年金制度だ、ここのところに実は一番大きな問題があるのではないかというふうに思います。
もう一枚めくっていただきますと、
国民年金制度、基礎
年金制度の問題点ということで、現役
世代のときに所得が低い、
国民年金の
保険料も納められるか納められないかわからない、かつかつのところで納める。ですから、
年金記録の問題については大変な怒りが沸き起こったということもあるわけであります。
資産形成も同時に不十分であるでしょう。結果として、受給資格が得られないとか、受給資格を満たしたとしても低
年金だとか、こういう
方々が発生してきて、そしてそれは
生活保護という形で、これはラストリゾートでありますけれども、対応する、こういう流れになっている。
今、
税方式か
社会保険方式かということで、
未納、未
加入の問題がいろいろと
議論されます。そこからいきなり
税方式というのは、私は話が少し飛躍しているんじゃないかという気がいたします。問題は、こうした
年金が不十分で、高齢期の所得保障が十分なされていない、こういう
方々に対して、今の
日本の
年金制度をどう変えるべきなのか、安心していただくためにはどうすべきなのか、こういう
議論がなされるべきではないかと思います。
実際に、
未納、未
加入の
方々の問題にしましても、全体の五%の問題であります。五%の問題だから小さいということではなくて、この
方々に対して本当に高齢期の所得保障がしっかりできるような
制度を今こそ
議論すべきじゃないか、私どもはそう思っております。
そこに、
最後に私の意見のまとめですが、
税方式への転換、
先ほど丹羽先生からもいろいろとありましたけれども、いろいろな問題があることは事実であります。巨額の
財源をどうするのか、移行期の問題をどうするのか、移行期の組み方によっては、こうした無
年金、低
年金の問題というのは十分解消しないということにもなります。そしてまた、みずから納めた
保険料について、それの貢献をどう評価してくれるんだ、もう少し上乗せの
年金が欲しい、こういう意見も当然私は生まれてくると思います。
何よりも、
制度を大きく変えるということは、大変な事業であります。むしろ私は、高齢者の所得保障という、
年金が何をしなければならないのか、こういうところに着目して、今の
年金制度の足らざる
部分を真正面から見据えて、どう
制度改革するんだ、こういう
議論をする方がより現実的ではないかというふうに思っております。
現実的には二つあると思います。
一つは、被用者
年金を拡大する。ただこれは、今まで拡大していなかったので、これからそれがきいてくるには相当時間がかかりますけれども、被用者
年金の拡大。現在、
政府が法案を出されておりますけれども、その成立をぜひとも図るべきであるというふうに思っております。
一方で、これは新しい
制度として、低
年金や無
年金者の
方々への所得保障を充実させる方法を
考えるべきだ。補足
年金という
制度、私どもは加算
年金ということを、本年はいろいろと、いろいろな場で主張してきましたけれども、そういう
制度について
考えるべきではないか。そしてまた、これから発生する人を少しでも減らすためには、受給資格期間を短くすべきではないか、そしてまた追納の拡大をすべきではないか、こういった対応をすべきではないかと思います。
税方式か
社会保険方式かということでさまざまな
議論がありますけれども、やはり、原点に戻って、高齢者の
方々の所得を安定させて、安心して
生活していただく、これに対してどういう答えを出すのか、こういうことで、私は、
社会保障国民会議でもしっかりと御
議論していただきたい、そのように思っております。
社会保障国民会議では
年金の問題も当然大きなテーマになるわけでありますが、
総理のこれからの取り組みについての御決意をお聞きしたいと思います。