○加藤公一君 民主党の加藤公一でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
少年法の一部を
改正する
法律案について
質問をいたします。(
拍手)
犯罪被害者基本法には、「
犯罪被害者等は、
個人の
尊厳が重んぜられ、その
尊厳にふさわしい
処遇を保障される
権利を有する。」と明記をされております。このことから、
犯罪被害者等に対し
一定の場合に
傍聴を認めることは十分考慮に値します。しかし一方で、
少年審判の持つ特殊性にかんがみれば、
傍聴を認める要件や態様については格別の
配慮が必要であり、現状の
改正案のままでは十分とは言えません。以下、この立場から
法務大臣に
質問をいたします。
まず初めに、今回の
法改正のねらいと位置づけについて伺います。
少年法は、昭和二十三年に成立して以来、
基本的にその構造を維持したまま現在に至っております。つまり、この間、制定時の
理念はいささかも変わっていないと理解できるわけであります。この
状況を踏まえて、今回、
少年審判において
一定の要件を満たす場合に、
被害者等の
傍聴を認めようとする
理由はどこにあるのでしょうか。これまで
被害者等の
傍聴を認めてこなかったものを、どのような社会情勢の変化を
理由にして、
傍聴を認めるべきだと判断をされたのでしょうか。具体的な事実をもとにお答えをいただきたいと
思います。
現行の
少年法では、その第二十二条第二項において
少年審判の
非公開をうたっております。しかし、今回の
改正で
被害者等の
傍聴を認めることになれば、この
非公開原則に例外が設けられる形になります。
そこで伺いますが、
政府はどのような
理念に基づいて現在の
少年審判が
非公開になっていると認識をしているのでしょうか。
また、
被害者等による
少年審判の
傍聴を認めることにより、その
理念が変化をするということはないのでしょうか。この点も答弁を求めます。
現在、
少年審判では、
非行事実の確認と
非行の背景を解明した上で、更生に向けてふさわしい処分を決定しております。しかし、
被害者等の
傍聴を認める本法案によって、この
少年審判の
目的や性質が変化することはないのだろうかという危惧の声があるのも事実でございます。また、
被害者等が
審判の場にいることによって、
審判廷が責任追及の場に変容してしまい、
少年の健全な更生が阻害されることはないのだろうか、このように心配する声も上がっております。これらの
意見について
政府はどのように考え、どのように認識をしているのか、大臣の答弁を求めます。
次に、
傍聴が認められる要件について伺います。
本法案では、
少年の
年齢及び
心身の
状態、
事件の性質、
審判の
状況その他の
事情を考慮して、
家庭裁判所が相当と認めるときに
傍聴が可能になると
規定をしておりますが、この
相当性は何を基準に判断をするのでありましょうか。具体的にお答えください。特に、「その他の
事情」として考えられるものは何か、
加害少年の生い立ちや家庭環境なども含まれるのか、例を示して御
説明をいただきたいと
思います。
また、考慮
事情として
少年の
年齢、これも挙げられております。一口に
少年と言っても、ほとんど大人と変わらない者から、小学校に入るか入らないかの幼年児までさまざまであります。成長途上の子供においては、たった一年の年の違いが、精神、身体の発達において大きな違いとなってあらわれてまいります。その意味で、
触法少年、すなわち十四歳
未満で刑罰法規に触れる行為をしてしまったその
少年の
審判に関しては、特に格別の
配慮が必要であると考えますが、
法務大臣のお考えを伺います。
あわせて、
心身の
状態という考慮
事情については、疾病はもちろんのこと、発達段階におけるさまざまな障害の有無についても十分な
配慮が求められると考えております。この点について、
少年の健全な更生、成長の観点からも、また一方で
被害者の心情をおもんぱかる立場からも、特に丁寧な対応が必要だと考えておりますが、大臣の率直なお考えを伺わせていただきます。
法務省の統計によりますと、
傍聴の
対象となる主な
保護事件の新受人員等は一年間の平均で約三百八十名程度と聞いております。このうち、どの程度の割合で
傍聴が認められることになると見込んでこの法案を提出されたのでしょうか。答弁を求めます。
精神、身体の発達がいまだ十分でない
少年については、
少年審判の場面において、みずからの能力だけで適切に対応することが難しいという場合も多く、その意味で付添人の果たす役割は大きいと考えられます。したがって、
被害者等による
傍聴がなされる場合であっても、付添人の
意見を聞いた上で、
少年の健全な更生、成長を阻害するおそれがないと認められる場合に限ってこれを許可すべきではないかと考えますが、
政府としての考え方、認識について
お尋ねをいたします。
次に、
傍聴における物理的な設備、施設について
お尋ねをいたします。
現在使われております
審判廷は、一般の
法廷と比べるとはるかに狭いのが現実であります。昨年、私も含め民主党として東京
家庭裁判所の
審判廷を視察してまいりました。現状では、
加害少年の位置と
傍聴席、仮に
法改正が行われたとしたときの
傍聴席というのは非常に近く、このままで本当に順調に
審判が進められるのだろうかという疑問を持たざるを得ませんでした。また、全国にはこの東京よりもさらに狭い
審判廷も数多く、平均でも約三十平方メートル程度しかそのスペースがないとの
説明を受けております。
このような
事情を勘案いたしますと、
傍聴を許可する場合には、
少年と
傍聴人との間に通常の裁判と同程度の距離を
確保するなど、物理的な施設の
整備も必要になると考えますが、
政府はいかがお考えでありましょうか。また、この点を考慮した場合、今後どのように施設の
整備を行っていくつもりなのか、具体的な計画をお答えいただきたいと
思います。
審判の
状況によっては、
被害者の方に
傍聴を認めることが難しいという場合も当然あると
思います。また、
被害者等がみずからそれを希望しないというケースも考えられます。そのような場合に、
加害少年に
事情を伝えた上で
被害者等が
審判の様子を別室のモニターで視聴する方法もあり得ると考えますが、この方法について
政府はどのように評価をしているか、お答えください。
本
改正案においては、これらモニターなどによる視聴については全く触れられておりませんが、これは、モニターなどによる視聴は不適当であるとの判断があるのでしょうか。それとも別の考え方をお持ちなのでしょうか。御見解をお聞かせください。
最後に、今後の
被害者保護施策についてお伺いをいたします。
被害者等による
少年審判傍聴は、あくまでも
犯罪被害者保護の一側面であり、全体としての救済
制度はさらなる広がりを持ったものであるべきであります。
犯罪被害者等基本法第三条にあるとおり、国は、
犯罪被害者等が受けた
被害の回復及び
犯罪被害者等の社会復帰を支援する責務を有しており、今後さらに
犯罪被害者保護のための
施策を
充実させていく必要があると
思います。
例えば、個々の
被害者等が受けたその
被害の回復に資する形で、処分決定後、あるいは
少年院退院後も含め、
被害者等と
加害少年との接見、謝罪あるいは和解のプロセスなどを促進するための
施策を講ずる必要もあるかと考えます。また、
被害者の
方々が一刻も早くその
被害から回復をして平穏な生活に戻れるよう、
経済的な支援のみならず、心理専門職やあるいは医師などによる精神面でのサポート体制をさらに
整備するなど、
被害者支援
制度の
充実は急務であります。この点についての
政府の方針、計画と
法務大臣としての御決意を伺いたいと
思います。
理不尽にも
犯罪の
被害に遭われた
方々の心情を抜きにして罪を犯した
少年の
処遇については語れません。その一方で、恵まれない家庭環境やさまざまな障害など、本人の力ではどうすることもできない
事情も十分に考慮しなければなりません。どのような形で
犯罪被害者の
方々の
思いを生かした
制度を設計し、また運用していくことができるか、そして、
少年の反省を促すとともに健全な成長につなげ、社会に貢献できる人材を
育成することができるか、これらの大変大きな課題の答えを導き出すためには、この
国会においても理性的で、なおかつ真摯な議論が求められていると
思います。
私たち民主党は、今後も丁寧な議論を積み重ねることによって、よりよい
制度を実現していく、その決意を表明いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山邦夫君
登壇〕