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福井参考人 お答えを申し上げます。
ただいま議論を重ねておられますとおり、アメリカ
経済はかなり大きな不良債権問題に直面しているということでございます。
不良債権の処理というのは、
委員つとに御
承知のとおり、
経済の中で生み出されるキャッシュフローを使って、あるいは、足りなければ既に蓄積された資本を取り崩して損失の穴埋めをするということでありますので、本来前向きに使われるキャッシュフローあるいは資本が、そういうふうに後ろ向きに使われる間は、どうしても
経済が前に進む力をそいでしまう。アメリカ
経済が今減速過程をたどっているのは、基本的にはそういうことでございます。
世界
経済全体としてその
影響が全くないかといえば、それはやはりじわじわと
影響が出てきているということだと思います。幸い、世界全体としては、減速しながらもまだ拡大しているという
状況でございますけれ
ども、先行き、もう少しダウンサイドリスクが強まっている、こういう
状況だろうというふうに思います。
そして、
金融資本市場におきましては、今までリスクを甘く見過ぎていた、
委員おっしゃるとおりでありまして、その反省から、今、リスクを避けよう、こういう動きが非常に強くなっておりまして、株式市場などにもその
影響が強く出ており、
日本の株式市場についても強くその
影響が出ている、こういう
状況だろうと思います。
したがいまして、
実体経済の方も、それから
金融資本市場の方も、しばらくこの調整過程が続く。この調整過程を極力秩序あるものとして、調整過程を全うさせなければいけない、これがこの間のG7の基本的な命題であったというふうに思います。したがいまして、情勢
認識を共有しながら、それぞれ自分の国の
政策領域の中において最適な
政策を果敢に打っていく、このことが
認識共有をされたというふうに思っています。
私
ども、
金融政策の分野でこれを受け持つわけでございますけれ
ども、意識されましたのは三つぐらいあると思います。
一つは、
金融政策の部分。これは、それぞれの国で最も適切な金利
水準を今後ともきちんと設定していくというだけでは不十分で、
金融市場が不安定な
状況にありますので、
金融資本市場すべてのかなめの位置にあるマネーマーケットに必要な流動性をきちんと供給していく、これが一つでございます。
二番目は、不良債権処理の過程。これは、米国、欧州において今ウエートが高いわけでありますけれ
ども、
金融システムの安定性を害しない強いコミットメントを当局としてはしていく。したがって、市中
金融機関が不良債権の処理をみずからの
努力でどんどん進めるように後押しする。当局としても、必要な手ということはきちんと用意しながら、
金融システムが壊れる心配がないということを世界じゅうの人々が
認識できるように持っていく、これが二番目でございます。
それから最後は、これから将来に向かって、
委員がおっしゃいましたとおり、そんなに甘いリスクをとるんですかというふうな
状況がないように、やはりリスクの評価の仕方、ディスクロージャーの仕方、そして個々の
金融機関におけるリスク管理のあり方というものをもっと改善してもらいたい。改善してもらいたいとただ言うだけではできないかもしれませんので、当局も知恵を出して、新しいアイデアを示しながら
金融機関の
努力を促す、この
努力を強めていこうということを明確に打ち出しております。
そういう
状況の中で、
日本経済をどう見るかということでありますけれ
ども、
日本経済自身、決してそうした世界の
経済、
金融の調整から無縁な
状況にあるわけではありません。日々かなりのショックが及んできていることを我々も感じております。
ただ、幸いにも、やはり過去の不良債権問題の処理が終わった現在の
日本経済は、生産、所得、支出の前向きの循環を何とか基本的に維持しておりますので、これを壊さないように次の局面に持っていかなきゃいけない。
それから、
金融システムの面でも、
金融担当大臣がおっしゃいましたとおり、
日本の
金融機関の今回の新しい不良債権問題は比較的小さくとどまっているし、過去の経験の反省もあって、
日本の
金融機関のリスク管理能力というのはかなり前進しているところがございます。しかし、これで満足できないわけでありまして、将来に向かってもっとリスク感覚を研ぎ澄まし、新しいビジネスモデルをきちんと築いていってもらいたいということで、この方向でも我々としては、
金融庁、
日本銀行が
努力して促していきたいということでございます。
一言で申し上げれば、
日本経済も今後とも世界
経済のダウンサイドリスクをより強く受ける心配は残っている。
金融システムの面でも、もう少し問題が大きくなる心配は残っている。これらをうまく包摂しながら、この調整過程を
日本経済に関する限りはきちんと全うしたい。これは短期の問題です。
より
長期的には、こういう調整過程の中にあればあるほど、世界の
投資家はうんと将来を見て、どこの国の
経済が有望かという目で改めて総点検するわけでございます。そういう目で
日本経済について将来を洗い直されるということを、やはり強く意識しなければいけません。
したがって、少子高齢化の問題にせよ、
財政再建の問題にせよ、あるいは、
金融技術革新だけでなくてもっと広い技術革新を促して
日本の潜在
成長能力を上げていく、ここに官民挙げての
努力が結集されているんだということを世界に見せていく必要がある、こういうふうに思っております。