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太田参考人 おはようございます。専修大学の
太田でございます。
本日は、このような機会をお与えいただき、ありがとうございます。
私は、
交通経済学の視点から、
道路財源特例法の改正案について
意見を述べさせていただきます。お手元にお配りいたしましたメモを見ていただければ幸いでございます。
きょうは、まず一番初めに、
道路特定財源の
一般財源化の論点を整理させていただきます。続きまして、
暫定税率の存廃問題につきまして、私なりの考えを述べさせていただきます。
最後に、中期
計画及び
道路財源特例法の改正案について私の
意見を申し述べたいと思います。
まず、
一般財源化の根拠として挙げられているもの、これは既にかなり広く言われているものでありますが、大体六つぐらいだというふうに思っております。
一つは、ノンアフェクタシオンの原則というものでありまして、
予算の硬直化を避けるために自由に使えるようにすべきだということであります。これは非常によく言われていることであります。
二つ目に、
自動車ユーザーは担税力があるという
議論であります。
三つ目と四つ目は、特別会計に関する話でありますが、
道路財源は余っているじゃないか、年間五千億円
程度の余剰金があったはずだということであります。四番目は、母屋はおかゆであるが離れはすき焼きを食べておるという
発言がありまして、それは広く知られております。特会自体は非常に運営に対する制限がきかないということで、放漫経営じゃないかという視点であります。
それから五番目は、これは先ほど
松下先生の方からも御指摘がありましたけれ
ども、無駄な
道路がつくられているんじゃないか。無駄と定義するかどうかはまた後ほど
議論があると思いますが、あるいは無駄遣い、目的外使用があるんじゃないか。恐らく、あるんだと思います。これに対する批判は非常に強いものがあります。
最後は、
一般財源化は小泉改革の一環であるというふうに言われているということであります。
私は、これらの六つの理由というのはかなり根拠が弱いものであるというふうに思っております。
一つ一つ私なりの考えを申し述べさせていただきます。
まず、ノンアフェクタシオンの原則、これは一般会計についてはそのとおりでありまして、一般会計に入ってきたものを縛るというのは問題があるというふうに思います。しかし、一般会計というのは、歳入と歳出の
関係がないからこそ、歳出を自由に使うべきだという
議論でありますので、歳入側につきましては課税の原則をきっちりと
議論しなければならぬというふうに思います。
一般会計の方の歳入と申しますのは、所得にかけるか、保有している資産にかけるか、消費にかけるかという、三つの税源に対してバランスよくかけるというのが基本であります。きょうは
道路特定財源ということでありますが、いろいろ複雑でいろいろな種類がありますので、ちょっと保有の話は横に置いておきまして、特に消費の話、
ガソリン税、揮発油税に絞って
お話をさせていただきます。
消費に対する課税というものは、消費税を導入したときに一律五%でかけるということが決められました。逆進的であるけれ
ども、一律みんなに平等に負担してもらうという公平性の原理で五%というふうに、初めは三%でありましたが、決まっているわけであります。もし
道路整備というものを一般会計で行うのであれば、私は、課税の原則からいって、本則税率も含めてすべて撤廃して消費税に一本化すべきだ、それが本来の課税の
議論であるというふうに思っております。そうしますれば、
道路の基本法でありますところの
道路法に書いてあります
道路無料開放の原則というものに合致する、それに近づいていくということになります。
ただし、当然、
道路を
整備するのに
費用はかかるわけでありますから、その
費用をどう負担するかという話になります。
一般財源で負担する、一般の税源で負担するということになりますと、一般納税者の負担ということになります。しかしながら、
道路の場合は、受益者、利用者というのが割と特定しやすい。特定しやすい人にやはり負担していただきましょうという考え方の方が合理的と思います。そういう
意味では、受益者負担の原則があるからこそ、消費税とは別に
道路特定財源というものが存在しているということになります。
そこで、
一つの実例で
一般財源化の
議論を私なりに解釈してみたいと思います。
平成十九年度には千八百億円が
一般財源化されました。この税源がどうかというのはいろいろありますが、今仮に、揮発油税の収入からこの千八百億円を一般会計の方に持っていった、
一般財源化されたといたしましょう。
ガソリンの消費量というのは年間六百億リットル弱であります。ということは、一リットル当たり三円ということになります。
ガソリンの価格が百五十円であるとすると、これは二%に当たります。つまり、
平成十九年度は、
ガソリンの消費税は七%であったということであります。ほかのすべてのものの税金は五%のところを、
ガソリンだけは七%取っていたということになります。これは課税の公平性の理念に反していると私は思っております。この問題は非常に大きな問題であると私は解釈をしています。
続きまして、特定財源の話でありますが、これはもう先生方よく御存じだと思いますけれ
ども、
道路財源が余っているのは、
シーリングをかけているから余っているだけであって、
道路に対するニーズがなくなったわけではありません。また、すき焼きとおかゆの話で言えば、一般会計の方が毎年毎年三十兆円借金しながらやっているわけですから、どっちかというと一般会計の方が放漫経営をしておる。一方、
道路特会の方は、先ほど申し上げましたように、むしろ余剰金を出しているわけであります。母屋の方が
シーリングをかけて、おまえは使うなと、自分の方は毎年毎年借金しながら支出をふやしている、そういうような状況でありますので、この四つ目の論拠もないということになります。
次に、無駄の問題です。これは非常に大きな問題でありますし、これは当然改善されなければならぬというふうに思います。これにつきましては、本日
議論されているような話、特会か一般会計かとか、特定財源か
一般財源かという問題とは別の問題としてきっちりと措置をしなければいけない問題であり、直接今回の法案には
関係ないというふうに思っております。
最後に私が強調したい点は、小泉改革の基本というのは意思決定の分権化であります。その
意味で、具体的には規制緩和、民営化、市場化、あるいは
地方分権、
減税というのが小泉改革の本質でありますが、この
一般財源化はそれに対して逆行しているということになります。一内閣の
道路政策としては、有料
道路の方は民営化します、だけれ
ども一般
道路の方は集権化しますということで、
道路政策としては矛盾していたというふうに私は判断をしております。
一ページ目の下のところに書かせていただきましたが、結論としては、特定財源
制度は、うまく使うのであれば有効に機能する、一般会計よりすぐれているというふうに私は考えております。しかしながら、無駄遣いの問題とか談合の問題とかいろいろな問題がありますので、かなり批判が高まっている、それはそのとおりだというふうに考えております。
そこでどうするかということでありまして、二つの方向がある。
一つは特定財源
制度の中で改革を進める、もう
一つは枠組み自体を変えるということであります。私は前者の方がよいと考えております。なぜならば、対象が小さいので
議論しやすい。しかしながら、世間の流れが
一般財源化ということであるのであれば、その方向の中で最善のもの、セカンドベストを選んでいく必要があるかなと考えております。
二ページ目の方にお願いいたします。二ページ目の図は、
政府・与党及び野党の提案を私なりに解釈したものです。特定財源であれば、高
整備・高負担、あるいは低
整備・低負担という割と単純な選択が可能です。しかしながら、一般会計ということになりますと、歳入と歳出は
関係ないのが基本でありますから、高負担・低
整備、低負担・高
整備というものが可能になります。そうしてもよいということになります。
なお、この図では、高い、低いと書いてありますが、これは二重線で結んだもの同士の間の相対的な問題であって、高負担・高
整備だと書いてあったとして、これが五十九兆円だとしても、五十九兆円が高い負担なのか高い
整備なのかということを示しているものではありません。相対的なものとお考えください。
さて、先ほど申し上げましたように、福祉や国債、国の借金の返済のために
道路関係諸税を充当するというのは、高負担・低
整備となります。これは、先ほど申し上げましたように、
道路利用者を税において差別するということになります。今般、
平成二十年度で提案されているもの、あるいは今回の
法律に関して申し上げれば、結果としてこのような課税の差別を回避するように措置しているというふうに私は考えております。
実際、
平成二十年度の
予算におきましては、
一般財源化の枠は千九百億円余りということですが、これは
自動車関係に支出されるということになっております。純粋に
一般財源化されて、
自動車利用が、ある
意味においては不当に増税されたという状況が
平成二十年度は改善されているというふうに考えております。
一方、一般会計の原則に従いまして本則税率を
廃止する、あるいは、ちょっと根拠は定かではありませんが、
暫定税率のみを
廃止するということになりますと、低
整備・高負担ということになります。この場合は、
一般財源、一般の税金によって
道路整備を行うことになります。これは
国土交通委員会としては非常に大きな問題があるというふうに考えております。
と申しますのも、これは、
鉄道、航空等から見るとダンピングだということになります。モーダルシフトを進めなきゃいけない、あるいは
環境に優しく
自動車利用を抑制しなきゃならぬという話の中で、このような措置を行うことはかなり大きな問題ではなかろうかと思っております。
時間の
関係で、ちょっと三は飛ばさせていただきます。
結論
部分でありますが、私は、
道路財源特例法は、
国民の支持が高い
一般財源化というものを実現しつつ、受益者負担の原則を
維持する
工夫がなされているというふうに考えております。
この法改正によりまして、実は、やろうと思えば純粋な
一般財源化も可能になっております。したがいまして、将来の内閣がみずからの意思によって福祉等他のものに利用することも可能は可能になりました。このような場合は、確かに課税における差別はありますが、国会における
予算審議を通じるということでありますので、結果として民意が反映されるのであろうというふうに思っております。
中期
計画につきましては、
事業量ばかりが注目されて、この額は何だということが
議論されております。しかし、私は、これまでにないほど画期的なものだと思っております。
それは、先ほど
松下先生からも話がありましたけれ
ども、選択と集中という
言葉で、
効果の高いものからやるということが実は宣言されております。これまでは公共
事業の評価というのは、BバイCが一あるかどうかが重要で、一を超えていたら採択可能リスト、採択候補になっていたわけですね。その中から、BバイCが一をちょっとだけ超えたものでもいいということになっていましたので、より
効果の大きいものを押しのけてでも
効果の低いものが実は実行されていた、あるいは実行される可能性があったと言えます。しかし、今回の中期
計画はそれはやらないということを宣言しているというふうに私は考えております。これは、実際そのように運用されるかどうかはきちんと監視しなければなりません。
そこで、
暫定税率の話になりますが、
効果が高いものから実施すると言っております。もし中期
計画の
事業量が五十九兆円の半分の三十兆円を大幅に下回るというものであればいろいろ話は変わるわけですが、そうでないとすると、五年後の見直し規定があるわけですから、今からの五年間は
効果の高いものから順番にやっていくわけです。
道路の
事業量が三十兆円必要だとするならば、五年間は
暫定税率を
維持し、それを
道路整備に充てることによって
整備を進める、そして五年後に、やはり適切な水準は五十兆円だったねということになれば、その時点で残りの二十兆円分を、五年間ということであれば一年ごとに四兆円ということになりますが、縮減すればよいというふうに考えております。
以上のような理由によりまして、今回提出されております
道路財源特例法の改正案は適切なものだというふうに私は判断をいたしております。
以上です。(拍手)