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藤井参考人 成田空港検疫所の
藤井でございます。
本日は、この大事な場所にお話をさせていただく機会をいただきまして、心より感謝を申し上げます。
私の方からは、検疫所を中心といたしました水際
対策の現在の取り組み
状況、また現在の
課題といったものにつきまして、
資料を
もとにしまして御
説明を申し上げたいと思っております。
先ほど
岡部先生の方からもお話ございましたが、
新型インフルエンザはまだ出現していない未知の
ウイルスでございます。ただ、過去の
経験を
もとにいたしまして事前の
準備を整えることにより、人類史上初めてということになると思うんですが、その
流行を最小限にとどめる、コントロールできるかもしれない、コントロールしたいんだ、そういう思いで鋭意私
たちは
準備を進めさせていただきたいというふうに思っております。
まず、一枚目をおめくりいただきたいのですけれども、上の方には、
新型インフルエンザフェーズ4以降
対策ガイドラインというものが簡単に図示してございます。これは、平成十九年の三月に
専門家会議におきまして作成をされまして、関係省庁
対策会議等で御了解を得て公表されたものでございます。
全体といたしましては、上に水際
対策というのがございます、下が
国内対策でございまして、
医療対応、
社会対応。
医療対応の中には、当然ながら、早期発見の話あるいは
患者さん等の調査の話、
ワクチンの話、抗
ウイルス薬の話等々。
社会対応といたしましては企業や家庭での取り組み
状況などが書いてございます。先ほどの話にもありましたように、水際
対策と
国内対策というのは両輪でございまして、両方がきちんと
対応できて初めて
国内での蔓延が防げるものだと思っております。
下の二
ページ目でございますが、それでは、水際での検疫
対応、どういうことが
役割なのかということを簡単に御
説明申し上げたいと思います。
主に
二つあると思います。
一つは、この図で示しておりますように、基本的に
新型インフルエンザは海外で
発生するものというふうに
想定をされておりますけれども、海外から船あるいは飛行機でお戻りになってまいります。この方
たち、何も
対応いたしませんと、電車等にお乗りになって地域に帰っていかれるわけです。その中に
患者さんがお一人いらっしゃると、左の赤で示しますように、お一人の方が三人にうつすとは限らないのですけれども、ネズミ算的にふえてまいります。潜伏期につきまして、例えば五日と
想定をいたしますと、五日、十日、十五、二十日、一週間でも一カ月以内でこのような
状況になってまいります。
そこで私
たちは、右の方に「STOP」と書いてございますが、一人でも二人でも、その
患者さんが地域に帰ることを防ぐことができれば多くの方
たちが黄色のまま、あるいは、左から二番目でございますけれども、
患者さんをきちんと治療する、あるいは
感染をしないように防御するといったようなことを果たせば、一部分の方の
感染でとどまります。この間、
医療の提供ですとか
ワクチン等々の
国内対策がきちんと追いついてくれば何とか蔓延というもののスピードを遅くすることができる、具体的に申し上げますと、
患者さんの数のピークを遅くするあるいは低くするということが可能かと思っております。
二つと申しましたが、もう
一つは、当然、この方
たちは海外から帰ってまいります。先ほどのお話にもございましたけれども、この方
たちの行動パターン、外出を自粛するあるいは不要不急の用事以外では外に出ない等々の
対応をきちんと一人一人がやっていただければ、それが非常に大きな効果をもたらすというふうに言われています。空港あるいは港の検疫所におきまして、通過する方
たちにこのことを十分理解していただき、それを地域で行動していただく、そういう動機づけの機会にする、そういうことも非常に大きな
役割かというふうに考えております。
次の
ページ、三
ページでございます。特に成田空港の話を中心にお話をさせていただきますが、海外から
国内に入ってこられる方のボリュームのイメージをお示ししております。
これは年間の
数字でございますが、飛行機でございますと全国で十六万機、人数でいいますと三千万人以上の方が国外から入ってこられます。これを一日で申し上げますと、入国者数は一日八万人以上ということになります。
右下に、成田空港、その他の空港での割合でございますが、成田空港におきましては約半分、五〇%から六〇%の飛行機あるいは乗客の方が通過をされていかれるという
状況でございます。
左の方には、後ほど御
説明申し上げますが、
新型インフルエンザが
発生した場合に、空港の場合ですと全国の四カ所、成田、中部、関西空港、そして福岡空港に
発生国からの飛行機を集約するということが
想定をされております。この四カ所だけで、右のグラフで見ていただくと、大体八〇%から九〇%がフォローされているという
状況になっております。
下の方、四
ページでございます。
それでは、中国等々を含めました
発生の蓋然性が高いと言われている国からの
数字でございますけれども、これは成田空港の
数字でございます。平成十九年の五月の
数字でございますけれども、中国からは、現在の
状況では、一日約五十五機、お人でいうと九千人ほどの方が帰ってこられます。そのほか、ベトナムですとかインドネシア、あるいはトルコ、エジプトといった鳥から人に
感染した可能性があると言われている国からの便は約二十機、四千人以上の方が利用されているという
状況でございます。
今申し上げましたのは直行便でございまして、実はそのほかにも、
発生国からほかの国を経由して帰ってこられる便というのがあるということがもう
一つ大きな
課題かと認識しております。
次の
ページをごらんくだ
さい。次の
ページは船の
状況でございます。
海港につきましては、左の図で書いてございますように、横浜、神戸、関門に集約をして、右の方には客船の
数字しか書いてございませんが、ちょっと手元に
数字がなかったものですから、あとクルーズ船といったようなものも使って海外から帰ってこられるという
状況になっております。
六
ページ、下の方をごらんくだ
さい。
これは、現在、成田空港、あるいはほかの検疫所でもそうなんですけれども、行っている検疫
対応でございます。
左上に「質問票の回収」というふうに書いてございますけれども、実は、コレラ等の消化器
感染症は、昨年、検疫
感染症から外れまして、現在は質問票をいただいておりません。ただ、ペストですとかエボラ出血熱等々の
感染の可能性がある国から御帰国される方には、質問票を書いていただきまして、回収させていただいております。これは検疫ブースでございます。
また、空港を利用されていらっしゃる
先生方、テレビが置いてあるのを見ていただけたのではないかと思うんですけれども、お一人お一人につきまして、お客様が通られるブースを絞りまして、確実にサーモグラフィーの前を通っていただきまして、そちらで体温の確認を検疫官がさせていただいております。
真ん中の方に、上下に顔がかいてございますが、ちょっと色がおかしいのですけれども、実際に熱が三十八度、九度ある場合には、このように首から上が真っ赤っかで、お面をかぶったような形で、明らかに発熱しているということを確認いたしまして、そういう場合には検疫官がお声をかけさせていただきまして、どちらの国から帰っていらっしゃったのか、いつからこういうふうになっているのかというようなことをお尋ねいたしまして、検疫
感染症として少し様子を見させていただいた方がいいという方につきましては、右に書いていますように、健康相談室で医師が詳しい診察をさせていただくという
状況になっております。
実際に、ここには書いてございませんが、検査につきまして、例えば新型として出現する蓋然性が高いと言われているH5N1につきましては、現在、検疫所におきましても検査ができる体制ができておりまして、これまでも、鳥から人にかかったかと疑われているH5N1につきましての検査実績もございます。
次の
ページ、七
ページになります。少しややこしい図です。
先ほど
岡部先生の
資料にもありましたけれども、そちらの方がわかりやすかったのかもしれないんですが、全体の
対応の様子をまとめさせていただきました。
左の方に、フェーズ4地域指定、これがWHOで示されるわけですが、
我が国ではそれに基づきまして検疫の強化等々のフェーズ4の
対応が開始されます。下の方に「フェーズ4指定地域の出入国者の自粛等」というふうに書いてございますが、恐らく外務省等が、渡航を自粛するようにですとか、あるいは航空会社に運航を自粛するようにといったような呼びかけがなされるものと認識しております。その下の方に、先ほど申し上げました検疫空港ですとか検疫港が集約をされます。
いずれにしても、初動の態勢というのが非常に大切だと思っておりまして、ここにタイムラグがあると、そのタイムラグの間に多くのことが起きてしまうといったようなことを危惧しておりまして、私
たちも、初動態勢をいかに早く立ち上げるかということが重要な認識だというふうに思っております。
右の点々の中は、直行便に対する
対応です。
指定地域から帰ってくる便、この便につきましてはすべて、航空機あるいは客船の場合は、
患者さんの有無、なしの場合も含めて事前に通報いただくという仕組みができております。これは現在もしていただいております。
その中で、有症者がありの場合、恐らくこれは
新型インフルエンザの
感染の可能性が高い方ですけれども、この方に対しましては、飛行機が飛んでいる間に、アテンダントさんにお願いをいたしまして、乗客等に対して、席を移っていただいたり、マスクの着用をしていただいたり、質問票を書いていただいたりということをいたします。
また、到着後でございますけれども、飛行機の場合ですと、一機一機検疫官が
対応いたしまして、質問票あるいはサーモグラフィー等で健康のチェックをさせていただきます。その上で、
症状がある方につきましては、医師、看護師が診察を行いまして、検査等を行って、左下、入院をしていただく。
濃厚接触者というのは、旅行中同行された方ですとかたまたま席が近くの方だったとか、そういう方ですけれども、そういう方
たちにつきましては、
感染しているリスクが高いということで、ホテル等で十日間停留をして経過観察をさせていただく。そのほかの方につきましては、先ほど申し上げましたように、
インフルエンザの基本的な知識を御
説明申し上げた上で、マスク等を着用して自宅へ帰っていただき、自宅で十日間健康観察をさせていただくということでございます。
その周囲に、航空会社、都道府県云々のところに赤い枠で囲ってございますけれども、このあたりが今回の法改正によりまして初めて私
たちの
対応として実際にできるようになる部分であります。
航空会社、船舶への御要請、あるいは、都道府県につきましては、健康監視は都道府県の方にお願いをすることになっております。と申しますのは、先ほど中国便五十機以上というふうに申し上げましたが、一機に二百人乗っているとしますと一日当たり一万人の方が健康監視の対象になります。十日間フォローいたしますと十万人の方の健康監視をするという
状況になりますので、検疫所におきまして物理的にも非常に困難でございますので、都道府県の保健所に乗客の
情報を御提供申し上げて健康監視をしていただくという仕組みにしていただくというふうになっております。
下の方が、昨年の十一月に、政府それから関係省庁、地元の千葉県、地元の
医療機関等々と一緒に訓練をした様子でございます。今申し上げたようなこと、事前通報をいただき、機内に検疫官が乗り込んでいく、検査を行う、
患者さんを病院に運ばせていただく、あるいはそのほかの方
たちにつきましては健康調査をさせていただく、消毒を行う等の一連の動きの確認をさせていただきました。
ガイドラインに基づいて行いましたが、これにつきましてもいろいろ、
課題ですとか、あるいは私
たちの工夫があろうかというふうに考えております。
最後の
ページです。今後の
課題でございます。
先ほど申し上げました、
新型インフルエンザが
国内に入ることを可能な限り防止すること、それからきちんと
情報提供するということが大きな目的だと思っております。そのために、マンパワーを最大限に活用いたしまして、確実な
対応ができるよう、今体制の整備を進めているところでございます。
また、これは
対応の
準備をしてつくづく思うのですけれども、空港あるいは検疫所、あるいは厚生労働省だけでの
対応ではなかなか十分な
対応が行き渡らないという自覚がございます。
自治体あるいは空港関係者、海港関係者、そのほかの関係者を含めて、共通認識をきちんと培いながら、理解を得ながら協力を得るように努力したいと思っております。
先ほども申し上げましたが、一番下ですが、水際
対策だけで一〇〇%阻止をする、蔓延を防ぐということは難しいものというふうに思っております。
我々、最大限努力はいたしますが、先ほど申し上げましたように、その後に
国内対策がきちんと追いついてくる、あるいは整備をしていただくということを私
たちは信じながら、水際での
対応をきちんとやっていきたい、そういうふうに考えております。
どうもありがとうございました。(拍手)