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土屋(正)
分科員 きょうは、子
ども農山漁村交流プロジェクトという新しい画期的なプロジェクトが
平成二十
年度予算で可決をされ、決定されたわけであります。
文科省が中心になって、農水省そして総務省、三省一体となった画期的なプロジェクトが
予算に組まれたことをまず
大臣に心から御礼を申し上げるとともに、恐らく将来の
教育のターニングポイントになるんではないかという気持ちがしておりますので、そういう角度で、さらに進めるという立場で、
大臣並びに
政府参考人の皆さんに
質問させていただきたいと存じます。
最初に、
大臣には現在の子供たちの置かれた状況、そしてなぜ農山漁村交流自然体験プロジェクトのようなものが必要なのかということについての御見解をお尋ねいたしたいと存じます。
私は、昭和二十年代に
小学校を卒業し、昭和三十年代に中学、高校の言ってみれば人格形成期を送ったものでありますが、まだ至るところに自然が残っておりましたし、また非常に貧しい
時代でありましたから、すき焼きなんというのがあるともうすっ飛んで帰って、まずしちりんの前で今か今かと母親がつくってくれるのを待っている、そういう経験をしながら人格を形成していった、そういう世代であります。恐らく
大臣もそういった御経験がおありだと存じます。
こういう
時代に比較をいたしますと、今日の子供たちをめぐる状況というのは、一見、物すごい恵まれていて、飢えることもないし、生まれながらにエアコンのきいた中にいて、暑さ寒さからも逃れることができるといった、これを恵まれているといえば恵まれているわけでありますし、
開発途上国の皆様から見ると、本当にうらやましいような話なんでありますが、しかし、こういう
生活様式の変遷といったようなものが決定的に子供の
教育に影響を与えているのではないか、このように
考える次第であります。
子供たちの学ぶ意欲が低下している、あるいは何を目標にして生きてよいかわからない、子供たちのひとみが輝いていない、すぐキレる、子供たちが根深い疲労感がある、こういうさまざまな
専門家が
指摘をする現象の根っこにあるものというのは、私は、第一に物が豊かになった、貧乏という偉大なる教師が去ってしまった。二番目は、先ほど申し上げましたが、エアコンのきいた人工空間に生まれながらにいて、そうして暑い寒い、おなかがすいたといったような、そういう生物としての体験をしていない。また、過度の都市化によって、飛び回れる空間やスペースがなくなった。また、四点目として、核家族化の進行により、家庭の中における切磋琢磨、集団化あるいは会話、こういうものがないためにコミュニケーション能力が極めて衰えている。また、さらにそれを加速したのがIT化の促進、こういった五つぐらいの大きな原因が
考えられるんではないか、このように
考えております。
子供の遊びという角度から物を見ても、昔は戸外で集団で体を動かして遊んでいたわけでありますが、今の子供の遊びというのは、私は武蔵野市長
時代に何回か子供の
生活実態
調査をしたわけでありますが、昔は、今から二十年前ぐらいまではプラモデルというのが一位でございまして、二番目がテレビ、三番目が漫画でございました。七、八年前にとったときは、第一位はファミコンであります。第二位がテレビ、第三位が漫画であります。このように、かつては戸外で集団で体を動かして遊んでいたものが、今は室内で一人で指と目と神経だけ動かしている、こういう状態になってきたわけであります。極めて憂慮すべき事態になっている、このように
考えているわけであります。
私、こういった現状
認識から、これではだめだ、ちょうど私も子育てをする
時代が集合住宅、マンションという集合住宅にいたものですから、遊ぶところもなく、自分の子育ての体験の中からも、これでは子供がだめになると思って、さまざまな試みをやってきたわけでありますが、そのうちの一つが、お手元に資料をお配りさせていただきましたが、セカンドスクールの試みであります。
セカンドスクールというのは、自然に恵まれた農山漁村に実は一週間、今は一番長い学校では九泊十日という長い期間行きまして、そこで民泊などしながら農業体験をしたり、自然を観察したり、暗やみ体験をしたり、時には地びき網を引いたりといったような極めてリアリティーのある体験をして、そのことによって総合
学習をしよう、こういう試みなんであります。
ここに至るまでには非常に長い歳月がかかったわけでありますが、幸い、
教育委員会と校長会の全面的な協力を得て、一九九五年の春から始めたわけであります。既にもう十二年、十三シーズンがたっているわけであります。
さて、この特徴は、何といっても、夏休み、春休みにやる特別
活動ではなくて授業時間の中でやるという、いわゆる正規の授業時間としてやっているところが特徴なんであります。
こういうことをやった結果、さまざまな現象が出てきたわけでありますが、その典型的なものがお手元にお配りをした資料で、これは武蔵野市の
教育委員会の資料なんでありますが、
大臣、一番最後のページ、子供や父母の感想文が載っているんでございますが、これをちょっとごらんいただきたいと存じます。
六泊七日から九泊十日までの間でございますが、子供の感想は、一つだけ読ませていただきますが、三番目に「民宿の人たちは、まるで自分の子
どものように私たちのことをかわいがってくれました。民宿の子
どもになったような気がして、お別れのときはすごく悲しかったです。」お別れのときに、私とおばさんをつないだテープは今でも大事にとっている。大体、テープなんかを大事にとっているような子供はいないですよね、今は。それはやはり思い出のこもったテープだからであります。
保護者の感想もいろいろでありますが、ここに書いてあるように、
保護者の方も非常に深い感銘を受けているわけであります。
このように自然の中で農作業をやったり、あるいはブナの木に、その写真、カラーの資料でございますが、ちょうどこれは飯山の天然のブナの中に聴診器をつけて、木が水を吸っているところを観察するという自然観察なんでございますが、こういう体験を通じて、子供たちは心身ともにたくましく、表情のなかった子供が表情が出たり、非常に無表情で、LDだとかそういうことじゃないかというふうに心配していた子供が、そうじゃない、もう泣いたり笑ったり、感情豊かになったりして復活をするわけであります。何といったって、登校拒否していた子供が行っちゃったりして、成長するんですね。もっとも、帰ってきてまた登校拒否になったりするんですけれ
ども。
それはともかく、そういう過程の中で子供たちが成長していく、こういうことが非常に大事なことだと私は思っております。次の世代が心身ともにたくましく育つための、国を救う根本的な
教育だ、私はこのように
考えて、かねがね市長
時代から、たまたま私も中教審の
委員などを仰せつかっておりましたので、そういう場をかりて、長らく主張してきたわけでありますが、幸い、
平成十六年から
予算をつけていただいて、ことしになって、画期的、飛躍的なことになったわけであります。
また、さきの
学習指導要領の
改訂には、
小学校の中に自然体験
教育という項目を一項目入れていただきまして、ちなみに、中学校では職場体験
教育、高校では奉仕体験
教育、体験
教育重視、こういうことになったわけであります。
暑い寒い、おなかがすいた、こういう生物としての体験から人とのコミュニケーション能力、こういったことを総合
学習する、こういう営みを、十億という
予算をつけていただいたことに大変感謝すると同時に、
大臣としてどのようなお立場でこれをお進めになろうとするか、自然体験
教育の意義と今
年度の
予算執行についてお尋ねをいたしたいと存じます。