○中上
参考人 住
環境計画研究所の中上でございます。
私は、現在、
経済産業省の総合
資源エネルギー調査会の省
エネルギー部会において
省エネ法の
改正に係る作業にかかわってまいりましたので、その
観点から、今回の
省エネ法改正にかかわる私自身の意見と、それから
我が国の今後の省
エネルギー政策のアジアに向けての展開に関しての個人的な考え方を陳述させていただきたいと存じます。
先生方に改めて申すまでもございませんけれども、省
エネルギーという言葉は、二度の
石油危機を経て市民権を得た言葉でございまして、当時、私どもいろいろ調査をしたりして意見を聞いておりますと、省
エネルギーという言葉は、どちらかというと節約、我慢といったニュアンスでありまして、昔の古い言葉で言うとダサいとか、非常に後ろ向きなイメージでございましたけれども、最近、若い方に調査をいたしますと、そうではなくて、全く逆でございまして、
地球温暖化を防止する非常にポジティブなイメージで理解されているようでございまして、大変うれしく思っております。
したがいまして、省
エネルギーは、もともとの出自が
我が国の
エネルギー安全保障にかかわる最も重要な施策の
一つ、そのほかに新
エネルギーであるとか原子力もございますけれども、常に省
エネルギーが前面に立って論じられてきたわけでございますし、また、昨今は、
温暖化対策において最大の排出源である化石
燃料の
使用の
削減ということで、やはりこれも新
エネルギー、原子力とともに三本柱の
一つとして大変大きな注目を得ているところでございます。当然、省
エネルギーをするということは、家計におきましても、あるいは
産業界におきましても
コストが
削減されるわけでありますから、
経済的なベネフィットもあるわけであります。
我が国の
省エネの水準は、これも先生方御
承知のとおり、私、掛け値なしに
世界の最高水準を行っていると思っております。私どもがよく海外でこういった
省エネの国際
会議に出ることがあるわけでございますけれども、特に、家電製品であるとか車のトップランナー制度という
省エネ法は非常に高い評価を得ておりまして、海外でそういったことを議論する場に行き合いますと、大変鼻が高い思いをするような機会が多うございます。
ただ、
我が国の
省エネ政策は、これまで数次にわたって改定されてきたわけでございまして、私も平成十七年に
参考人として意見を陳述させていただいたのが最近でございます。今回の
省エネ法改正に当たりまして、
省エネ部会の最後の報告書に「
省エネに終わりなし」という言葉が記載されております。まさにそのとおりでありまして、いつまでもこの省
エネルギーというのは、常に我々が考えていかなきゃいけないことではないかと思っております。
さて、今回の
省エネ法の
改正のポイントであります。支援と規制というふうないろいろな側面から
改正がなされたわけでありますが、
京都議定書の
目標年がスタートしたということもありまして、社会の関心も大変深まっております。ただ、私、個人的に言えば、もう何年か早くこの意識の高まりがあれば、もう少し
京都議定書に対しても楽に迎えたんじゃないかと思います。いささか遅過ぎた気はいたしますが、そうしましても、とにかく意識が高まっていることはいいわけであります。
特に今回の改定で着目すべきは、経営トップに対してかなり強い意識を持っていただくという意味において、そういった点に着目しまして
改正した点じゃないかと思います。特に、最近の経営者の方々、それは大企業は言うに及ばず、
中小の商店の方々におかれましても、企業の社会的
責任ということの
観点からも、省
エネルギーあるいは温暖化ガスの排出の
削減といったことはかなり高い評価ポイントになっているのでございまして、そういった意味でも、今回の
省エネ法改正は時宜を得たものじゃないかと思います。
申すまでもございませんが、これまで
事業所単位、いわゆる工場であるとか大口の需要場所を
特定して規制がかけられていたわけでございますが、これが
事業所から
事業者に変わったわけでございます。
一字変わっただけで大したことがないように思われますかもしれませんが、
事業者単位ということになりますと、当然、これまでの現場管理主体の対応から全社単位で対応しなきゃいけない。まさに、何度も申し上げますが、経営判断に基づいて高効率
設備の導入決定あるいは企業内の最適を図る
取り組みについて判断が下されることになるわけであります。
さらに、この
改正では、従来は、
事業所ですと工場が主なターゲットでございましたけれども、
事業者単位にしたことによりまして、
業務部門で、特に、
フランチャイズチェーンとか、いろいろなビルをたくさん持っていらして、ビル
一つ一つは大きくないんだけれども、合わせてみると相当な量になるというところに拡大されたことに大きな意味があると思います。こういった
事業所におきましては、大体類似の
設備であるとか類似の社会活動でありますから、同じような
省エネ手法で大きく網がかけられるという意味においては効果もまた高いんじゃないかと思われます。
こういったことで、経営全体を統括する本社から事業場に対して
エネルギー管理を指示する、あるいは徹底するということによりまして、今までの
事業所ごとに個別にやっていたものに比べれば、はるかに
カバー率が広がるんじゃないかと思います。
経済産業省の試算によれば、例えば
業務部門ですと、これまでは一割
程度しか
エネルギー消費量の面でカバーができなかったわけでありますが、
事業者単位ということにしますと、五割
程度まで
エネルギー消費量ではカバレッジが上がるんじゃないかと言われておりますから、非常に効果が大きくなったというわけでございます。
そのほかにつきましては、幾つかございます建築にかかわりますことは、後ほど村上先生からのお話があると思いますので、私からは割愛させていただきます。
共同
省エネ事業あるいはセクター別ベンチマーク制度、お聞きになったことがおありになると思いますけれども、例えば、共同
省エネ事業というのは、企業間で
省エネの
取り組みをする。
大体、
中小企業ですと、なかなかインハウス、すなわち抱えの、自前の
技術者も少のうございますし、資金的余裕もどうしても限られるものですから、
省エネ活動が滞りがちである。
それに対しまして大企業は、いろいろなノウハウもございますし、資金的な余裕も
中小企業に比べればあるようでございますから、例えば、大企業が
中小企業の
省エネ活動、
省エネ行動を支援するといった場合に、大企業が
地球温暖化ガスを減らしたというふうに認めようといった制度でございまして、これも、今まで手がつかなかったところに広げられたという意味では、大変意義があると思います。
次に、セクター別ベンチマーク制度でございます。これは、国際的にもいろいろ問題になっておりますので御
承知かと思いますが、
国内でも、こういったきめの細かい指標を見つけて、双方がわかりやすいような指標で
省エネに取り組もうということでございます。
現在、例えばビルなんかですと、床面積当たり幾ら消費しているというようなことを出しますと、ビル相互で比較ができる。あるいは、
製造業ですと、生産物当たりの
エネルギー消費量を提示することによって、多いか少ないか、どういうふうなターゲットがとれるかということがわかりやすくなるわけでありまして、非常にこれも有効な方策だと思います。
ただ、
業種や企業によっては非常に多種多様なものをつくっておったり、同じ飲食店と申しましても、おすし屋さんと中華料理屋さんでは全然
エネルギー消費が違うわけでありますから、これは、各論に行きますと相当細かい検討が必要だと思いますので、時間をかけて、ことしじっくりここを検討することになっておりますから、余り拙速であいまいな
数値をしてしまったのではせっかくの指標も役に立ちませんわけですから、ぜひきちんとやっていただきたいと思っております。
最後になりますけれども、省
エネルギーというのは、先ほど申し上げましたように、
エネルギーの安全保障という意味では非常に重要な施策でございます。
私、最近、ベトナムの省
エネルギーのお手伝いを
経済産業省の委託でやっておりますけれども、アジアのそういった国々に行きますと、年々すさまじい勢いで
経済成長、すなわち
エネルギーの需要の増加が起きているわけであります。供給が追いつかないほどでございます。こういった国々に対して、やはり
世界で最も進んだと言われる
我が国の
省エネ技術を一刻も早く移転してあげるような、そういう仕組みができないだろうか。
京都以降の、ポスト
京都の議論では、温暖化にかなり絞ったような議論が続いているわけでございますが、やはり省
エネルギーは、基本的に我々の生活、暮らし、あるいはその国の産業活動、社会活動を支える非常に重要な
資源でございますから、こういった地域に対して、
我が国の
省エネ技術がスムーズに移転できるような仕掛け、私はよく、EUがEUバブルというのをつくっているんだから、アジアバブル構想をやったらどうだというふうに言っておるわけでございます。
そういった意味で、ぜひ今後、省
エネルギーを
我が国のみならずアジアに対しても積極的な展開を図るという意味において、先生方の御協力をお願いしたいと思います。
以上で陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)