○
武藤参考人 いろいろたくさん御下問をいただきました。順次お答えさせていただきたいと思います。
まず最初に、このところの超低
金利政策、これの功罪いかんということかと思います。
確かに、二〇〇一年に
量的緩和政策を採用して以来、五年間にわたりまして短期金利はゼロ%という
状況でありました。それの副作用があるではないかという御指摘だと思いますが、それはおっしゃるとおりだと思います。
まず第一に、預金金利が低位に据え置かれましたので、預金者がそれだけ利益を失っているのではないかということであります。第二に、さまざまな機関
投資家の運用利回りというものが非常に低下しておって、そこに問題が生じております。そのほか、ゼロ金利ということになりますと、
マーケットがなかなか機能しないといったような、そういう
状況もございます。
しかし、このことは、第二の御質問にもかかわってくると思いますけれども、
デフレスパイラルのふちにあった、あのバブル崩壊から失われた十年という中からどうやって
日本経済を立ち上げるかということに関連しているわけでございます。そういう
状況の中で、金利を引き上げるという
政策が本当に適切だったかどうかということだと思います。
私どもは、この低金利によって、やはり
企業家にとっては、
企業金融に潤沢な資金を供給しましたので、煩わされることなく、専らみずからの構造改革に専念することができたというふうに思います。当時、
過剰債務、
過剰設備ということを抱えていた
企業にとっては、それを専ら構造改革によって乗り切ろうとしたわけでございます。
そういうことでございますので、低金利には確かにプラスもあるし
マイナスもございますが、我が国
経済の置かれた
状況を考えた場合には、やはり低
金利政策が必要かつ適切であったというふうに私は思っております。
それから、この表、いろいろ
意味するところが非常にたくさんありますので、全部お答えする時間があるかどうか、ちょっと私もわかりませんけれども、確かに、この最初の一ページにありますとおり、
日銀の保有国債残高が非常に膨れ上がりました。ただし、これは、まさに
量的緩和政策をやった結果であります。
この中で、
日銀券に対応する部分といたしましては、長期国債の買い入れ、そういう問題がございます。これは、この点についても一番
最後に御下問がございました。この保有国債残高の中の大体四十数%が長期国債でございます。
十年物の長期国債の買い切りオペをなぜやったかということでございますけれども、これは専ら
金融調節上の必要性に基づいて、これは二〇〇二年に行われましたので、私が副
総裁になる前の年でございますけれども、
日本銀行の
政策委員会で
決定されたわけでございます。
これが、国債を買い入れることによって長期金利を引き下げる、要するに、財政を支援するために行われたのではないかという御懸念かと思いますが、そういうことでこれを実施しているわけではありません。あくまでも、ここにありますとおり、
日銀券が非常に大きく伸びておる、これは
金融緩和の結果なのでございますけれども、これは
日銀の、
日銀券というのは負債でございますので、資産の方にどういう資産を持つかということが問題になるわけでございますけれども、そこには短期の資産と長期の資産の望ましいコンビネーションが必要なわけでございます。いわゆる
成長通貨の供給のためには、長期国債を買うのが合理的だ、結論だけ申し上げますとそういうことでございます。
したがいまして、仮に、
日銀券が何らかの要因でもってもうちょっと下がってくる、残高が減ってくるということになりますれば、この長期国債の買い入れオペというものに対しても何らかの
影響を与えるという
可能性は十分あると思いますが、現時点におきましては、
日銀の
政策委員会の総意によりまして長期国債の買い入れを続けているということであります。繰り返しますが、あくまでも
金融調節上の必要性に基づくものだということでございます。
それから、私が次官時代に二百八十五兆円の国債発行があって、それに対して
日銀は買い切りオペをやっているので財政規律がなくなりつつあるじゃないかということでございます。この点は、確かに非常に重要なことでございます。
国債も国債
市場において価格が決まる、
マーケットによって決まるということでありまして、これに何らかの介入をすれば必ず後からしっぺ返しを受ける。要するに、利払い費がかさまないように長期金利を引き下げたらいいではないかというような御意見もありますけれども、そんなことをしたところで、それは結果的に長期的に見れば、
経済が何らかの要因で悪化して、それは財政に不利に働くようになる。決して長い目で得にならない。
マーケットにおける国債価格というものを尊重するべきだと私は思っております。
そのためには一定の財政健全化というものが必要でありましょう。なぜならば、国債金利といいますものは、実質
経済成長率プラス
インフレ率プラス財政プレミアム、財政の
信認の部分によって国債金利というものは動くわけでございますので、財政のサステーナビリティーというものを向上させ、
国民が国債というものに
信認を置けば、おのずと長期金利は安定し
市場は安定する、そういうことでございまして、それを何か人為的に、
日本銀行が買い取ることによってそれを操作するというようなことは考えてはいけませんし、また、そんなことは実現不可能なことだというふうに私は思っております。
それから、
アメリカ経済減速というのはおっしゃるとおりでございます。この問題は非常に深刻でございまして、時間の経過とともに事態は少しずつ悪化の方向にあるように私には思えます。一体この先どういう状態になるのかというのが非常に問題でございます。
したがって、今は、
アメリカ経済が
減速しても、すなわち
アメリカに対する
日本の輸出が減少しても、その他の
経済が非常に堅調でございます。BRICs等の
経済が堅調でございますので、
日本の輸出はそちらの方向に向かって伸びておりますので、全体としては、
世界経済が
成長し
日本の輸出も順調でございますので、
日本経済の最初の活力の起点であります輸出は今のところ順調でございます。ただ、これがいつまで続くかという
課題がございます。そういう中で、内需に基づく
経済成長ということが必要なことはもう御指摘のとおりでございます。
ただ、個人消費なり設備投資なりをどう活性化させていくかということになりますと、税制というお話がありましたが、私は今の立場では税制問題に対してコメントすることは差し控えさせていただきますけれども、
日本銀行といたしましても、この個人消費でありますとか設備投資の
動向というものには十分注意してまいりたいというふうに考えております。
すべてお答えできたかどうかちょっとわかりませんけれども、以上、お答えさせていただきました。