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2007-11-08 第168回国会 参議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十九年十一月八日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十一月七日     辞任         補欠選任      佐藤 昭郎君     岩永 浩美君  十一月八日     辞任         補欠選任      市川 一朗君     西田 昌司君      澤  雄二君     山本 博司君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         郡司  彰君     理 事                 主濱  了君                 平野 達男君                 加治屋義人君                 野村 哲郎君     委 員                 青木  愛君                 一川 保夫君                 金子 恵美君                 亀井亜紀子君                 高橋 千秋君                 藤原 良信君                 舟山 康江君                 米長 晴信君                 市川 一朗君                 岩永 浩美君                 西田 昌司君                 牧野たかお君                 山田 俊男君                 谷合 正明君                 山本 博司君                 紙  智子君        発議者      平野 達男君        発議者      高橋 千秋君        発議者      舟山 康江君    国務大臣        農林水産大臣   若林 正俊君    副大臣        農林水産大臣  岩永 浩美君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 朝雄君    政府参考人        農林水産大臣官        房総括審議官   佐藤 正典君        農林水産省総合        食料局長     岡島 正明君        農林水産省経営        局長       高橋  博君        農林水産省農村        振興局長     中條 康朗君    参考人        北海道農民連盟        委員長      西原 淳一君        東京大学大学院        農学生命科学研        究科長農学部        長・農業資源経        済学専攻教授   生源寺眞一君        財団法人日本農        業研究所理事・        研究員      岸  康彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○農業者戸別所得補償法案平野達男君外四名発  議) ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、佐藤昭郎君が委員辞任され、その補欠として岩永浩美君が選任されました。     ─────────────
  3. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 農業者戸別所得補償法案議題といたします。  本日は、参考人として北海道農民連盟委員長西原淳一君、東京大学大学院農学生命科学研究科長農学部長農業資源経済学専攻教授生源寺眞一君及び財団法人日本農業研究所理事研究員岸康彦君に御出席いただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  ただいま議題となっております法案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方について御説明いたします。  まず、西原参考人生源寺参考人岸参考人の順序でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。  また、参考人方々の御発言着席のままで結構でございますが、質疑者は、慣例により、起立の上発言することとしておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、西原参考人からお願いいたします。西原参考人
  4. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 私は、北海道農民連盟委員長を仰せ付かっております西原淳一と申します。  着席ですが、立ってでもよろしいですか。立った方がちょっとお話ししやすいものですから、お許しをいただきたいと思います。  今回、この農林水産委員会において意見公述の機会を与えられましたことをまず最初に心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。  私自身は、北海道のほぼ中央に位置します富良野地方、ラベンダーの町、中富良野町で妻と息子と三人で十五ヘクタールほど、北海道としては規模の大きい方ではありませんけれども、十五ヘクタールの中で水稲、タマネギ、軟白長ネギを中心に今経営をしている生産者でございます。  私は、今回の民主党農業者戸別所得補償法案、これについて賛成の立場から若干意見を述べさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いをいたします。  初めに、北海道農業現状についてお話をさせていただきたいというふうに思います。  今日の北海道農業農村に多大な影響を与えているのが、一九九三年に最終合意をされたガットウルグアイ・ラウンド合意でございます。この合意によりまして、一九九五年から二〇〇〇年までの六年間でAMSの二〇%削減などが約束をされたわけでありますけれども、このことによって我が国においては、黄色政策と位置付けをされた食管制度などが廃止をされまして米の価格形成市場にゆだねたということでございますけれども、そのことによって現在、米の価格については生産コストを無視した低水準で推移をしてございまして、この結果、我々北海道水田地帯においても所得の大幅な減少を招いておりまして、北海道稲作農家そのものが今経営破綻の、そのような状況に今追い込まれている現状でございます。  かつて、EUでは、デカップリング政策として農産物価格の引下げによる所得減少分を直接支払で補てんをされて、そのことによって農業経営を守って農業農村維持をしてきたわけでありますけれども、しかしながら我が国においては、平成十一年に食料農業農村基本法が制定をされまして、その中で食料安定供給多面的機能の発揮という二つ基本理念の下にこの制度スタートをしたわけでありますけれども、しかしながら、中身については、効率優先市場原理政策、そして規模拡大際限なく推し進めることによっての小農切捨てといいますか、そういう構造改革が進められてきたんではないかなというふうにとらえているところであります。  本年から我が国政府が戦後農政の大転換として導入をされました品目横断的経営安定対策について意見を述べさせていただきます。  結論から先に言わさせていただくと、直接支払の形は整えているというふうに私も思っているところでございますけれども、しかしながら、制度対象者担い手農家もということでございますけれども、この担い手農家支援水準も非常に低く、大幅な所得低下を招いておりまして、このことによってほとんどの農家が今のこの制度そのものに対する失望をしておりますし、来年の営農が果たして続けていけるのかと、そういうような大きな今心配を抱えているところでありまして、直接支払の形は整えておりますけれども、むしろ食料自給率低下を招くような、そんなような農業農村の崩壊を加速化させるような多くの問題を抱えているんではないかなというふうにとらえているところでございます。  まず、この品目横断的経営安定対策生産条件不利補正対策の直接支払について、農家所得確保の視点から欠落しているということでございます。  かつて政府与党皆さん方は、価格支持制度の改廃をしたときに、価格市場で、所得政策でと言ってきたわけでありますけれども、しかしながら、今回の直接支払は、農産物販売価格ただ上乗せをしてきた各種助成金を過去の生産実績に基づいて換算をした面積に置き換えているだけだというふうに思っているところでございます。この仕組みに変更しただけでありますし、残念ながら、EUで講じられているような国内支持削減等による農家所得減少を補てんする措置ということについては、今回も講じられていないんではないかなというふうにとらえているところでございます。  そんなことによって、今回のこの直接支払においても、市町村の緑ゲタ単価に用いる単収を、近年の生産性向上が反映されない共済引受け単収を採用したことによって緑ゲタ単価を低く設定をされてございます。このことによって、国の方針に従って、北海道においては規模拡大、そして生産努力をしてきたその分の単収増加につながっている近年の品質向上策が全くこの制度に反映されていない、そのことが大きな問題だというふうに我々はとらえているところでございます。その原因は、緑ゲタ単価面積換算に用いる単収を異なる単収を使ったことによっての農家に対する我々としては不利な仕組みでないかなというふうにとらえているところでございます。  二点目に、この対策は、市場原理の徹底を図りながら小規模農家切り捨て構造改革路線を加速化させるものであるというふうに思います。  このことは、これまでも規模効率を優先してきた経済合理主義農政を改めない結果が自給率低下を招き、食の安全性を後退させているんではないかな、そして際限のない農村過疎化をもたらしてきているんではないかなというふうにとらえているところでございます。  今回の農政転換は、こうした経済合理主義農政を強制的、画一的な手法で加速化させることによって、農業持続性農村存続基盤を根底から揺るがすものです。地方はますます衰退の一途をたどっておりますし、都市と我々田舎の格差はますます広がるばかりだというふうに思っております。この格差拡大は本当に実感として肌で我々も感じているところでございます。  農業生産の増大と食料自給率向上構造改革というのであれば、既得権を有するすべての農家皆さん方に直接支払を講じた上で、農業を担う本当の担い手という方々については、意欲を持っている方々に対するメリット措置というのはどうしても必要ではないかなというふうにとらえているところでございます。  三点目に、食料自給率向上ということからいくと、今回の緑ゲタは過去の生産実績に対して支払われるため、新規作付け規模拡大がされた方、この方々についてはこの対策支払われない、緑ゲタ支払われないということが起きておりますし、新基本法が目指す農業生産拡大自給率向上とは整合性が取れていないというふうに考えているところでございます。  特に、北海道主要作物でありますてん菜については、支援対象数量を過去実績から頭から縮減がされた中で取り組まれておりまして、このことが畑作全体の輪作体系にも大きな支障を来しているところでありますし、また当該年数量品質に応じて支払われる黄ゲタ内外価格差の三割程度ということで想定をされておりまして、生産条件不利補正対策の内訳で支払われる仕組みでございます。生産喚起を促し、品質向上を奨励するのであれば、生産条件不利補正対策上積み分としての加算もする必要があるのではないかなというふうにとらえているところであります。  四点目には、政府は今回この対策で千八百八十億円の予算措置をしたわけでありますけれども、しかしこの財源の多くが外国から輸入をされる麦や砂糖の関税収入の差益によって賄われているところでございまして、現在のWTOFTA交渉で将来的に農産物関税が段階的に引き下げられる、そういうおそれがあるわけでありますけれども、そのような事態になったときに、関税収入低下をしてしまうとこの財源そのものが枯渇をしてしまう、そういう心配もされるところでございまして、この品目横断的経営安定対策を恒久的な対策として将来にわたり安定的に運営していくのであれば、財源確保観点から一般予算化することがやはり必要ではないかな、その制度改革が必要であるというふうにとらえているところでございます。  続いて、先ほど申し上げましたように、今回の民主党農業者戸別所得補償法案、これについて意見を述べさせていただきたいというふうに思います。  同法案では、政策の目的を「食料国内生産確保及び農業者経営の安定を図り、もって食料自給率向上並びに地域社会維持及び活性化その他の農業の有する多面的機能確保に資する」ということでございます。私もこの私の組織も、ガットウルグアイ・ラウンド合意以後、このことを私たち組織の提言としてずうっと提唱してまいりました後、今回のこの法案理念については全く私も同感をするところでございます。  二十一世紀は食と環境世紀というふうに言われておりますけれども、人類の生存のために環境保全食料安定供給は欠かすことのできない対策だというふうにとらえております。近年、世界人口が急増する中で、異常気象農地砂漠化水資源不足など世界的に農業生産の低迷が続いております。さらに、農産物を原料としたバイオエタノール燃料の登場で、農業が果たす役割はますます重みを増しております。  こうした背景を踏まえ、同法案では、主要農産物ごと生産数量目標設定するとしております。自給率向上のためにもこの手法を明確に打ち出しています。現在問題となっている米の過剰作付け米価下落の防止にも有効な施策ではないかなというふうにとらえているところでございます。  また一方、生産目標との関連で交付金支払当該年生産面積としているところでありますけれども、WTO協定黄色政策に該当するのではないかという指摘がございます。しかしながら、国内自給カロリー自給率で三九%という、先進国の中でも極めて低いこの自給率我が国自給率向上が重要な課題だというふうにとらえております。そういうような観点から、WTO交渉等では、国家安全保障観点から、自給率の低い国に対する特別な配慮を求めていくということを強くお願いをしたいというふうにとらえているところでございます。  この交付金支払対象者販売農業者としたことに対してばらまきという批判があることに対してでございますけれども、これについても、我が国農家戸数は今二百七十九万戸前後だというふうにとらえております。その中で、今回のこの品目横断的経営安定対策に加入申請されている方が現在で七万二千四百三十一経営体、全農家の五%にも満たない、そういうふうに推定をされるところでございます。このような状況の中では、食料自給率向上も困難でありますし、また農家切り捨て地域衰退過疎化を進行させるのではないかなというふうにとらえているところであります。  すべての農家は、食料農業農村担い手であります。農業農村をはぐくむことや、地域経済の発展や社会の安定、国土保全水資源涵養、大気の浄化など、国民経済に大きく寄与しております。農業農村国民共有財産として次世代に引き継いでいかなければならないというふうに思っております。我が国販売農家は百九十一万戸でございます。全農家の約七割を占めるこの販売農家対象を、やはり農業政策はもとより、農村政策としてもこの法案というのは当然だというふうにとらえているところであります。  また、一兆円の予算についてでございますけれども、これらについても法案の中では具体的な交付単価計算方法面積換算手法が明らかにされておりませんけれども、お願いしたい点が二点ほどございます。  一点目は、交付単価についてでございます。農業者所得確保観点から、各作物が再生産可能な水準設定をしていただきたいというふうに思っておりますし、ここに来て、燃料生産資材、そういうものの高騰がされているわけでありますけれども、これらにもきちっとその都度、経済変動のあったときにやはり流動的に対応できるような対策も必要ではないかなというふうにとらえているところでございます。  二点目でございますけれども、交付金の額でございますけれども、これらについても生産面積を乗じた金額ということでございます。品目横断的な経営安定対策で不評な要因の一つ制度複雑化というのが我々農家の中にも大きく叫ばれているところでございまして、これらを、やはり制度仕組みを簡素化する、そのことによって、我々生産者農業者、そしてまた国民皆さん方にも理解をいただける、国民合意形成が図られるんではないかなというふうに思っているところでございます。  一兆円の予算でありますけれども、世界農政は、価格支持政策から所得消費者負担から税、納税者負担へと移行をしているところでございます。EU支払についても、相当部分が直接支払で占められておりまして、二〇〇一年の農業所得に占めるEUの直接支払は五〇%でございます。まして、アメリカでさえも四六%にこれが達している状況でございます。我が国においては、農業産出額、今八兆七千億程度でございますけれども、これに占める農業所得は三兆四千億程度でございますけれども、これの五〇%水準ということであれば、財源としては一兆七千億ぐらいの直接支払が行われても当然だというふうに我々は思っているところでございます。  そういうことからいくと、まだまだここは不足状況だというふうに思っているところでありまして、これは農水省だけではなくして、やはり各省庁横断的に、環境問題、それから農地維持だとか国土保全含めて、各省庁を横断した予算確保というのが必要ではないかなというふうにとらえているところでございます。  時間が過ぎてしまって大変申し訳ございませんけれども、今回、私たち北海道農民連盟は、北海道の二万五百九戸の農家対象品目横断的経営安定対策制度について緊急アンケートを今実施をしてございます。皆さんのお手元に配付をさせていただいているところでございますけれども、これらについては今まだ回収の段階でございまして、現在ではまだ七千九百十七戸からしか回答が戻っておりませんけれども、その中で七七%の方が対象農業者でございます。その中で、この制度満足と、まあまあ満足だと答えた方は三%にしかすぎません。七七%の方が、不満や、やや不満というふうに答えてございます。  その不満や、やや不満というふうに答えた方々の中には、この制度をやはり新たな仕組み制度改革にしていただきたいというふうに言われておりまして、これらについても是非我々、北海道農家皆さん方も今回の問題についてはやはり制度の改善が必要だというふうにとらえてございますので、よろしくお願いを申し上げたいなというふうに思っているところでございます。  まだまだ申し上げたいところがあるわけでございますけれども、お約束の時間、大変オーバーしてございますので、この辺で私の意見公述については終わらせていただきたいというふうに思います。  大変どうもありがとうございました。
  5. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ありがとうございました。  次に、生源寺参考人お願いいたします。生源寺参考人
  6. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) 生源寺でございます。  民主党提案農業者戸別所得補償法案と関連する事項につきまして、主として法案そのもの法案趣旨説明に基づきまして意見を述べさせていただきたいと思います。  私自身、去る七月初めをもちまして食料農業農村政策審議会委員を退任いたしたこともございまして、最近の農政の動きをつぶさに承知しているわけではございませんが、参院選における民主党の躍進、その前後の民主党からの農業政策の御提案を眺めておりまして幾つか感じたことがございます。  七月の参院選の結果は、いわゆる小泉改革の乱暴な手法にブレーキが掛かり、大都市以外の地方の実情に対しても国民の目が向けられるようになった、この点で私は大きな意味があったと考えております。ただ、このことと農政基本方向をめぐる判断、ここを直結することはすべきではないと、こう考えております。目下の農政改革小泉改革、そもそも小泉改革とは何ぞやということもあるわけでございますけれども、この二つは重なり合うわけではございません。農政改革は九七年に設置された食料農業農村基本問題調査会を起点にすればほぼ十年、さらに九二年の新しい食料農業農村政策方向スタート点と考えるならば十五年の歳月を掛けて積み上げてきたものでございます。選挙の結果の評価には慎重を期す必要があるかと思いますけれども、ただ、新しい農政の意図するところ、またその背景について、今なお農村の現場に十分かつ正確には浸透していない、こう受け止める契機にすべきだろうと、こう思っております。  関連いたしまして、与党皆さん方、まあこれは私の印象でございますけれども、参院選攻め農業あるいは強い農業を強調されたようにお見受けいたしました。このこと自体は必ずしも間違っているとは思いませんけれども、しかし、攻め農業、強い農業一本やりの、こういうところがございまして、これも農政改革イコール小泉改革という誤った印象を与える結果につながったような、こんな気がしております。  民主党の御提案を拝読してみまして、農村、中山間地域農村が大きな岐路に立っている現実あるいは基幹的農業従事者の六割は六十五歳以上、いつまでも高齢者地域農業を任せられるわけではありませんといった問題意識、これは私もそのとおりだと、こう思いますし、あるいは与党皆さんも同様ではないかと思うわけでございます。  ただ、問題は、そういった認識からいきなり戸別所得補償というアイデアが飛び出してくる点にあるのではないかと、こう思うわけでございます。まあいきなりというのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、本来、現状認識の次には、ではここからどのような農業農村を構想すべきか、この点の検討があって、その上でそうしたビジョンの実現に近づくためにはいかなる政策が適切かと、こういう議論のステップがあってしかるべきだと、こう思うわけでございますけれども、率直に申し上げまして民主党の御提案には、農業農村に関するビジョン検討、またそこから導き出される政策手法の吟味という、こういうステップが欠けている、あるいはやや弱いと、こう思うわけでございます。  その結果と言っていいかと思いますけれども、民主党の御提案の背後にあるイメージはどうも現状固定化ではないかと、こういう批判も出てくるわけでございます。批判が出てくることもやむを得ないのではないかと、こう思うわけでございます。  もう一つ、今日は率直に述べさせていただきますけれども、民主党農業政策の構想には、政策に対する制約条件配慮あるいは政策相互整合性検討といった点も弱いんではないかと、こうお見受けいたしました。  選挙前の民主党農政基本方針に盛り込まれました民主党政策INDEX二〇〇七、ここから抜粋したものがマニフェストと理解しておりますけれども、このINDEX二〇〇七には、戸別所得補償制度のほかに、米の備蓄三百万トン体制の確立、食料完全自給への取組、まあ完全自給意味はどうもはっきりしないわけでございますけれども、さらにはWTOにおける貿易自由化協議FTA締結の促進などが掲げられていたわけでございます。言葉はちょっと適切ではないかもしれませんけれども、どうもいいとこ取りの政策の列挙という、こういう印象を否めないわけでございます。  今回の法案の御提出に対して、かなり軌道修正を図られたというふうに理解しております。それはそれで大変結構なことだと思いますけれども、今挙げた政策は相互に緊密に結び付いているはずでございますから、関係する政策に修正があれば当然本体の政策にも何がしかの修正が施されるのが普通だろうと、こう思うわけでございます。この中には、必要な財源水準ということも当然含まれるはずでございます。あるいは、そこまでの緻密な検討を必ずしも経ていない、こういう御提案ということなのかもしれません。  次に、御提案の中身について幾つか気の付いた点をこれも率直に申し上げたいというふうに思います。  まず、提案趣旨説明におきまして、政府政策を究極の選別政策だと、こう批判されているわけでございます。私自身、そのように誤解されることがないようにと機会あるごとに主張してまいったわけでございますので、このような批判は誠に残念でございます。個別農家の場合も集落営農の場合も、既に要件を満たしている担い手をサポートする、このことの重要性はもちろん言うまでもございませんけれども、あと数歩で要件を満たす農家の後押し、あるいは営農組織の底上げを図ることで担い手を育成すること、ここに経営安定対策のポイントがあると、こう考えているわけでございます。もっと言えば、ここは私、政府政策にも弱い部分があるかと思いますけれども、担い手の卵を大切にすることも強調しておきたいと思います。  食料農業農村基本計画の作成の過程では、施策の対象をめぐって随分議論がございました。当初、農協の組織には、読みようによってはすべての生産者対象となるような、こういう御主張もございました。他方でハードルを高くして対象をもっと限定すべきだと、こういう声も聞こえてきたわけでございます。けれども、私は、いずれも現状の構造を固定する面が強いと、こういう意味では取るべき方向ではないと、こう考えた次第でございます。つまり、いかにして動きをつくり出すことができるか、ここに目下の農政の最大の課題があるわけでございます。  ある種の安定状態を保ってきた兼業農業は、層の厚い高齢農業者の大量のリタイアによってその持続性を急速に失いつつあると、こう判断するからでございます。農地が余り、人が不足する状態の下で、主たる職業として農業を選び、これから力を入れていこうという方にとって現在は農地確保することが以前に比べれば随分容易になった、こういう状況があるわけでございます。この点とも関連いたしまして、安定兼業農業や定年帰農の農業、こういったタイプの農業担い手農業は十分両立可能であろうとも考えております。  今、点検すべきことは、先ほど西原参考人もおっしゃいましたけれども、経営安定対策担い手にとって、あるいは担い手候補にとって、これならば農業に本格的に取り組んでみようと、こういう気持ちになるだけの水準になっているかどうか、あるいは現在の米価との関係もありまして、担い手農家経営のセーフティーネットとして十分に機能しているかどうか、ここをきちっと検証し、必要があれば追加的な施策を設けていくと、こういうことだろうと思っております。  民主党は、集落営農につきまして、入口で法人化計画や会計一元化を求めることはしないと、こうされております。法人化につきましては、組織の成熟の結果としてそうなるという面がございますから、これは議論の余地があるかと思います。  ただ、動きをつくり出す、こういう観点に立ちますと、経理の一元化を図り、特に生産物の処分の決定を組織として行う、このことを要件とすることは非常に重要だと、こう思っております。そのことで品目の選択あるいは販路の選択、こういう市場対応の感覚が引き出される、ある意味のスイッチが入る。集落営農組織に与えられた裁量権が生産規模拡大ですとかあるいは加工流通面への多角化に向かう、こういうエンジンとしても作用すると、こう思うわけでございます。これも動きをつくり出すことで農業に従来以上に深くコミットする人材を受け入れる土壌を形成していく、これがねらいだと、こう考えているわけでございます。  戸別所得補償制度と米の生産調整の関係にも疑問がございます。  生産調整ではなく需給調整だという、こういう何か御議論もあったように伺っておりますけれども、ただ、生産を市場メカニズム以外の要素でコントロールするということであれば、これは生産調整以外の何物でもないわけでございます。  そこの点はまあよいとして、首をかしげざるを得ないのは、生産目標数量を国、都道府県、市町村が毎年定め、その達成に努めるとされている点でございます。しかも、米以外についてもそうなさると、こういうことでございます。仮にこれが実行されるとすれば、農業者の主体性をできるだけ尊重しようというこれまでの流れに逆行いたしますし、特に市町村の職員に大きな実務上の負担と精神的な苦痛を強いることになるんではないかと、この点は非常に心配をしております。  また、農村集落の、これは趣旨説明の中にあったかと思いますけれども、伝統的な自治機能を高く評価されておりまして、この点は私も共感できるわけでございますけれども、現行の米の需給調整が自治機能の発揮された姿だと、こういう評価についてはにわかには同意し難いところがございます。無論、さほど問題なく生産調整が行われてきた集落もあるかと思います。私もそういう集落も承知しております。ただ、地域内に不幸なあつれきが生じたケースも少なくないはずでございます。例えば減反裁判の状況なんかを見れば、こういったケースは随分あるわけでございます。  私自身は、村社会の負の側面が政策的に利用されてきた面、生産調整についてはこういう面は否定できないんではないかと、こう思っております。集落の共同体につきましては、プラスとマイナスの両面をきちんと見ておくことが大切だと、こう考える次第でございます。  それから、だんだん細かな話になってまいりますけれども、販売価格と生産費の差額を補償すると、こういうことでございますけれども、仮に政府がこの方針を忠実に実行するとすれば、恐らく市場はこのような政府の行動を織り込むことになるだろうと。たしか事前にアナウンスということでございますけれども、その次の年には修正されるということが確実に実行されるということになれば、売る側も買う側もこれを織り込んでいくことになるんではないかと。下げのプレッシャーが働く可能性が私は高いと、こういうふうに思っております。  幾つかの問題を申し上げましたけれども、私自身、こういった形で農政の議論が効果的に行われることに関して大変良いことだというふうに思っております。私もその中にいるわけでございますけれども、農業政策の議論の分野では、例えば財界悪玉論とか、あるいは農協たたきをしておけばいいという、とかく何といいますかけんのんな言葉の応酬になりがちなんですけれども、したがってなかなか建設的な議論になりにくいという、こういう空気、気風があるわけでございます。  ただ、農村農業現状と、そこから可能なことをじっくりと検討して最善の政策のパッケージを設計すると、こういう発想に立てば、私は与野党の間の政策にそれほど大きな開きが出ることはないように思うわけでございます。いかがでしょうか。もちろん、政府政策には、西原さんもおっしゃったように、随分いろんな問題があるというふうに思っております。生意気なことを言うようでございますけれども、ここはじっくり議論を重ねて更に良い政策のパッケージへと前進していただければと、こんなふうに思う次第でございます。  以上でございます。
  7. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ありがとうございました。  次に、岸参考人お願いいたします。岸参考人
  8. 岸康彦

    参考人(岸康彦君) 本日は、こういう場で発言をする機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。  私は、現在、民間の研究機関に籍を置いておりますけれども、元々はジャーナリストでございます。今はもう廃止になってしまいましたけれども、旧農業基本法ができる直前、昭和三十四年でございますけれども、その年から新聞記者をしておりました。その検討が始まったころからずっと農業を見てきた者としまして、農業政策というものの難しさというのも痛感しております。  そういう意味で、日ごろから当委員会の皆様方が農林水産業を何とか元気付けようと御尽力いただいておりますことに心から敬意を表する次第でございます。  さて、私は、本日の案件である農業者戸別所得補償法案になるべく絞ってお話をしてみたいと思うのであります。必要に応じて品目横断などにも触れたいと思っておりますけれども、なるべく絞りたいと思っております。  この法案につきまして、既に当委員会質疑が行われておりますし、またジャーナリズムも今回は結構関心を持ちまして取り上げております。その過程で、例えば一兆円の積算根拠はどうなんだろうかとか、あるいは、米の生産調整を廃止と言っていたはずなのが、いつの間にやら数量目標設定するというようなことになっているんだけれども、これは一体どういうことなのかとか、さらに、戸別所得補償ということでWTO農業交渉に耐えられるのかというような、いろんな議論が出ていることはもう御承知のとおりでございます。また、民主党の方の提案者からの御説明がこの場でもあったと思います。  これらについての私の意見は後ほど機会がありましたら申し述べたいと思いますけれども、今は時間の関係もありますから、少し別の視点から、これまで余り議論されていないのではないかと思われることを中心に所見を申し述べてみたいと思うのでございます。  まず第一点は、これは法案とは直接には関係のないことでありますけれども、民主党がマニフェストの中に三つの約束一つとして農業を入れられたこと、これは正直言いましてやや意外でございましたけれども、これは大変うれしいことでございました。  率直に申しまして、従来、民主党農業政策には弱いという印象がありました。失礼ですけれども、これは多分、民主党皆さん方もそこは自覚なさっているんじゃないかという気がいたしますけれども、その民主党が……(発言する者あり)不適切だったらここを削除しても結構でございますけれども。その民主党が何と三本柱の一つ農業を掲げられた。もちろん、これも選挙戦略ということはあったに違いないんでありますけれども、それにしましても、ともかく民主党がこういう姿勢を打ち出されたこと、そのこと自体が私どもにとっては大いに歓迎できることでございます。  マニフェストの具体的な表れとして、今回、戸別所得補償法案を提出されました。もちろん、以前にも、農林漁業再生プランでしたか、あるいは、大変長い名前の基本法案をお出しになりました、昨年でしたね、お出しになりましたですね。それなりのことはしてこられたのでありますけれども、大変失礼ながら、政府与党の進めるいわゆる農政改革に隠れまして、影が薄かったと言わなくてはならないと思うのであります。  その点、今回は、この今日の民主党提案された法案が、それだけが言わば案件になっているわけでございまして、ようやく政府与党政策に対する対案の体を成してきたなという感じを持っております。そのことは、農政の前進と、そういう意味で大変喜ばしいことだというふうに私は思っております。  たまたま、一昨日でございますけれども、私も会員になっておりますある農政ジャーナリストの組織があるのでございますけれども、その会が、本当に久しぶりに自民党、民主党、両方からお一人ずつお迎えをいたしまして、この戸別所得補償法案を中心に研究会を開きました。ずっと昔は、時々、各党から代表をお呼びしまして、例えば与野党の農業政策をただすと、そんなようなテーマでもって我々議論をしたことがあったんでございますけれども、絶えて久しくそういう機会を持つことができなくなってしまっていたんですね。  もう今日はずけずけ申しますけれども、私どもから見ますと、野党側が農政ということに弱過ぎたと思うんですね。それがようやく今度復活をいたしました。もちろん、ジャーナリストのことでありますから、どの党の味方をするとか、いや、しないんだとか、そういうことではなくて、農政について我々が比較検討をしながら議論ができる、そのこと自体が大変にこれは喜ばしいことだし、これは農政の発展にとって非常にいいことだというふうに思っております。  少々、今私どもの会のことで脱線をいたしましたけれども、ともかくこの法案が出されたことによりまして既に自民党の側に強い反応が起きているということは、ここ数日間の大変慌ただしい動きからも明らかでございます。その意味でも、民主党が対案を出されたことの効果と申しましょうか、それは決して小さいものではなかったというふうに私は評価をしております。  自民党の反応からもうかがえますように、この法案が多くの農業者に喜ばれるというのは何だろうかと。それは、小さな農業者も排除しないということだろうと思うんです。もちろん、大きい農家あるいは法人の育成ということが必要なことは私も十分に承知をしておりますし、また民主党もそのことに反対しておられるわけではないと思いますが、だからといって、今の日本の農政は、私は排除の論理だと言っておるんですが、小さいものをはじき出しておるということを排除の論理というふうに言っておるんでありますが、排除の論理でもって大小の農家を仕分をすると、そういうことができるほどぜいたくな状況にはないというふうに思います。一人でも多くの担い手が我々は欲しいわけですよね。担い手、まあ担い手候補も含めてでいいんでありますけれども、必ずしも規模だけで決まるものではないわけであります。  例えば、私は大学に実は四年半いたんでありますけれども、私の教え子が二人、ふるさとへ帰って農業をやっております。彼らは本当に小さな規模なんですね。でも、実に生き生きと力強くやっているわけですね。彼らはじゃ担い手でないのかといったら、私はやっぱり担い手、少なくとも候補ではあると思うんですね。国際競争力ということからしたら問題にならないような農家であっても、しっかり農業やっているんだと。そういうのであれば、そのような農家農政対象から排除するのはもちろん得策じゃないと。こういう点で、これは別に自民党が排除しているということを今申し上げているんじゃないんですね、やっぱり農政全体として多少ともそういう排除するというふうな雰囲気をつくってしまってはいけないと、そういう意味でこの法案の意義を認めたいというふうに思っております。  ただし、すぐ付け加えなきゃいけないんですけれども、小規模農家を支持する方法につきましては別途の方策がないかどうかということもあります。つまり、先ほど生源寺さんは現状の固定じゃないかというふうな言い方もされておりましたけれども、別途の方策についても検討の余地がやはりあると思うんですね。その点については、後ほど私、産業政策地域振興政策と、この関係のところでこの問題と絡めて少しお話をしてみたいと思うんでありますが。  次は、この法案はこれでいいのかという点でございます。  まず第一点は、法案の題名そのものでございます。題名そのものでございます。民主党は以前、直接支払という言葉をずっと使ってこられたと思うんですね。それが戸別所得補償法案になったのは一体何なのかと、なぜなのかということでございます。  随分下世話な情報も伝わってきておりますけれども、所得補償というふうに言いますと農家には確かに喜ばれると思うんですね。非常に耳当たりいいんですよね。しかし、農家以外の国民にとってはどうか。そうか、農家というのは赤字になったら全部国が面倒見てくれるんだなというような誤解をされましたら、これはお互いにとって不幸なことだと思うんであります。  こんな言葉遣いの問題にこだわって申し上げますのは、今この日本の農政にとって極めて重要なことは、価格支持型の農業支援、消費者負担型というふうに言ってもいいわけでありますけれども、そこから財政負担型の農業支援、すなわち直接支払へと転換をしていくんだと、そういうことを何としても国民全体の納得、支持を得て進めなくてはならないという思いがあるからでございます。今こそこの直接支払、そういう言葉の意義を大いにPRしなくてはならない、そういうときになぜ呼び方を変えられたのかということを言いたいわけであります。  それから、同じく直接支払について、この法案では現行の中山間地域等直接支払制度をそっくり法案の中に取り込んでおられるわけであります。法律の中にきちんと位置付けるという意味では一歩前進かなというふうにも思いますけれども、それならば直接支払のもう一つの形態、手法であるところの環境支払をなぜ何らかの形でこの法案に位置付けることができなかったのかということを思うのでございます。  この場にいらっしゃる方々にはお釈迦様に説教するようなことになりますけれども、今、世界農政の潮流というものは、一つは直接支払への移行ですよね。もう一つ環境への配慮ということであります。この両方にかかわってくるのが環境支払なんですね。日本でいえば、例えば新しく始まった農地・水・環境保全向上対策の二階部分ですね、営農支援活動と呼ばれておりますが、あれは環境支払と呼ぶべきものだというふうに私は理解をしておるわけでございます。  環境支払につきましては、例えば滋賀県とかあるいは福岡県とか、そういうような自治体が非常に先駆的な試みをしてこられまして、私から見ますと国はむしろ跡を追っ掛けているような状況でありますけれども、私は、今後最も重視すべき農政の課題の一つはこの環境支払であるというふうに思っております。それだけに、中山間直接支払制度をこの中に入れたんだったら、どこかにもう一つ環境支払について言及があってもよかったんじゃないかと。私、法律家じゃございませんから、そういうことがうまくできるのかどうか分かりません。もしかしたら別々の法律にしなきゃいけないのかもしれませんけれども、何らかの位置付けというものをしなきゃいけないということではないかと思うんであります。  最後の問題であります。産業政策地域振興政策の関係について申し上げたいんでありますが、現在行われております品目横断的経営安定対策、これは産業政策であって、それは産業として言わば自立できる農業経営を増やす、こういうことをねらいとすると。その一方で、農地・水・環境保全向上対策地域振興政策であって、だからこそ農家だけじゃなくて、いわんや大きい農家だけではなくてすべての農家、さらに非農家を含む、あるいはNPOなんかまで含む多様な主体が地域振興と環境を守るために共同活動をするんだと、これに対して支援をするんだという、こういうことになっているわけですね。こういうふうに私は理解をしておるんでありますが。  一方、民主党の方では、この法案対象規模の小さい農家も全部含めることで農家全体の底上げを図っていくんだと、それによって地域の振興につなげていこうという立場をお取りのようであります。つまり、言わば、私の理解が間違っていたら教えていただきたいんでありますが、産業政策地域政策を一緒に進めようとしておられるのかなという印象を受けるわけでございます。それはそれで一つの考え方かなと。  私、一〇〇%の結論を持っているわけじゃございませんけれども、ただ問題は、そのことが結果として意欲を持って規模拡大に取り組む農業者を逆に排除しかねないようなことが起こるんだとしたら、これはかえって地域農業が活力を失うおそれがあるということが気になるのでございます。小さい農家地域政策としてもっと支援する方法はないかどうかということだと言っていいと思うんですね。ここは大変実は悩ましいところでございまして、この産業政策地域振興政策をどう仕分するかということについて、今、私に百点満点の解答があるわけではもちろんありませんが、そういう問題もこの法案は今度提起をしているんじゃないかなということを感じたわけでございます。  いずれにしろ、言えますことは、地域が活力を取り戻すには従来型の農政だけでは足りないということでございます。その点で、先ほども取り上げました農地・水・環境保全向上対策が非農家あるいはNPOとか、そういうものとの共同活動を目指しているということは、これ実際にやってみますとなかなか難しいんですよね。そうではありますけれども、もしこれが本当にうまくいくんだったら地域の将来に向けて一つの大きな可能性を持ち得る、そういう対策ではないかというふうに私は思っているわけです。是非、民主党皆さん方もこの点について御一考いただければというふうに思います。  同様に、行政においても省庁の壁を乗り越えた施策、そういう施策の展開がますます重要になってきております。  昨日の新聞にもたまたま地域活性化のために農林水産省と経済産業省が一緒になって新しい法案を提出するというふうなニュースが出ておりましたけれども、しかし、現実にはまだまだ国の機関の間の壁は大変厚いような気がしております。国の機関は農林水産省とか国土交通省とか厚生労働省とかいろいろありまして、分かれておりますけれども、現場の役場へ行きますとこれは一つなんですね。この地域振興というものは決して農政の枠内だけで考えていても実現できないと。そこにこそ本当は政治の出番があるんではないかということを申し上げて、とりあえず私の意見陳述を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  9. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 米長晴信

    ○米長晴信君 山梨県選出の米長晴信と申します。民主党・新緑風会・日本所属でございます。  本日は、お忙しい中、戸別所得補償法案に関する参考人意見ということでいらっしゃいまして、本当に心から御礼を申し上げます。  戸別所得補償法案の審議とはいえ、この法案には品目横断的経営安定化対策の廃止というのが盛り込まれているわけですから、白黒どちらかの方向性に進まなきゃいけないという観点から、両者を比較するような形で分かりやすく質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  この両法案、簡単に、細部まで入り込まずに簡単に分類すると、前者は、前者というのは戸別所得補償法案は小さい農家も助けるということでばらまきという批判が行われており、それをしない今の政府案が切捨てという、その両者が相反するわけですけれども、どちらの方が総合的にいいかというのを、そういう角度でお話をさせていただきたいと思います。  まず、西原参考人ですけれども、先ほどアンケートを拝見しましたけれども、今の政策に対しては七割の人が、しかも比較的優遇されている北海道で七割の方が不満を持っていらっしゃるということなんですけれども、これは、選挙の話を先ほど生源寺参考人されましたけれども、選挙でそれが支持されたか否かというのは、選挙は年金の問題ですとかもっと大きい問題をやるものですから、必ずしもその部分では比較できないんですけれども、ただ、西原参考人に、農家の感触として我々のこの法案、そしてそれがこの選挙に支持されたか否かというのを、この八割の人が不満と答えたのを踏まえて、ちょっと農家の感触をお聞きしたいんですけれども。
  11. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 今の御質問があった件でございますけれども、この品目横断的経営安定対策、俗に北海道農家のためにある政策だというふうに、これできる前はよく言われていた対策であったわけでありますけれども、先ほどもうちのアンケート調査を御紹介させていただいたように、非常に農家方々はこの対策について不満を持っておりまして、今回の参議院選挙については、北海道においても、この制度そのものがどうということではなくして、やっぱり今の品目横断的経営安定対策だけでは再生産可能な所得水準確保できない、そういう観点から、選挙でもやはり民主党のこの農業者戸別所得補償法案に期待を寄せたというのは事実でございます。
  12. 米長晴信

    ○米長晴信君 あと、道を除く府県を中心に小規模農家について触れさせていただきたいと思うんですけれども、先ほど岸参考人の方からは、そういったのを守ることで意欲をそぐ部分もあるのではないかということなんですけれども、現実としては担い手の意欲云々という余裕もないほど今、小規模農家は厳しい状況だと思うんですけれども、この戸別所得補償法案小規模農家にとっての期待というのはいかがなものか、お伺いしたいんですけれども。
  13. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 今回はやはり小規模農家まで対象というこの民主党さんの法案でございまして、北海道といえども大規模農家ばかりではございません。私の町、先ほど申し上げました、私、上川管内中富良野町でございますけれども、私のところは全体で今四百八十七戸の農家が全体で四千四百ヘクタールの面積維持しているわけでありますけれども、その中で十ヘクタール以上、私も十五ヘクタールでございますけれども、十ヘクタール以上の農家というのは私の町でも三七%にしかすぎません。あとは全部、小農家といいますか、五ヘクタール以下の小さい農家でございます。  今回のこの品目横断的経営安定対策は、北海道対策だと言われていながら、私のような町では四割の方々がやはり対象になっておりません。そういうことからいくと、どうしてもやはりそういう方々対策に、何で我々を救ってくれないんだ、我々は何の支援の対象にならないんだという農家の声というのは非常に大きな声があります。  そういう中では今回のこの法案というのは、そこもやっぱりある程度生産費を補償してくれるという、再生産可能な所得確保してくれるという支援については、まあ水準がどうなるかというのはまだ私たちも分かっておりませんけれども、そこに対する期待というものは大きなものがあるというふうに私も現場では実感をしております。
  14. 米長晴信

    ○米長晴信君 引き続き西原参考人に伺いますけれども、もう一つ食料自給率目標といいますか、それに向かってのプロセスでございますけれども、今の政府案は四五%という数字に向かって進んでいるものの、逆に今減少傾向にあるという実態があるんですけれども、西原参考人はこの今回の戸別所得補償法案、今の政府案と比べまして、食料自給率観点からはいかが思われますでしょうか。
  15. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 食料自給率がここまでやはり下がってきているというのは、やはり国内にとっては危機的状況に来ているんだというふうに私たちはとらえております。  そういう中で、今回のこの品目横断的経営安定対策スタートしたことによって、北海道においても小麦だとか大豆、てん菜だとか、やはり土地利用型作物といいますか、今回のこの品目横断的経営安定対策に該当のある作物については、やはりこぞって全部、北海道の中でも面積が今年大きく減少してございます。このことはやっぱり食料自給率を相当下げる作用に働いてしまっているというのは事実でありますから、そういう意味からいくと、やっぱり食料自給率を上げる、そしてある程度米もカバーできるという面では、この法案に対する期待というのは私自身も大きく持っているところでございます。
  16. 米長晴信

    ○米長晴信君 では、同様の質問を生源寺参考人に伺いますけれども、生源寺参考人は今回の選挙であたかも小泉構造改革路線と混同されてしまったというようなことをおっしゃったように思いますけれども、私が聞く限り、この今の政府法案というのは小泉構造改革の弱者切捨て以外の何物でもないように逆に感じたわけでございますけれども。  やはり小規模農家あるいは中山間地、個別には特別措置のようなものをとっておられますけれども、大枠としてはこの品目横断的経営安定対策に入ってないということなんですけれども、この小規模農家というのもいろいろありまして、主業農家、副業的農家、兼業農家とありまして、兼業農家とか副業農家の数%しか収入のうちの農業がないようなところの底上げにもなってしまうんじゃないかなんという話もありますけれども、ただ、とはいえ、小規模でも主業に近いような形で必死でやっておられる農家も中にはいるわけで、そのような農家を軸に考えますと、やはり切捨てというふうに見られてもおかしくないのが今の政府政策でございますけれども、そういった小規模農家に対する支援というのは今の政府案ではどのような形で取っているか、もう一度説明をお願いします。
  17. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) 私、政府と一心同体ということでございませんので、何といいますか、政府の考え方というよりも私自身の整理ということでお答えいたしたいと思うんですけれども、これだけ農業農村の、農家自体も多様化していますし、それから農業農村に期待している機能も随分多様化しているということはあるわけですね、例えば三十年前辺りと比べますと。そうしますと、昔は多分価格政策と公共事業の二つですべてをカバーして、大体それで効率的に事が進んだ時代があったと思うんですね。ただ、今は、この側面に対してはこういう政策、この側面に対してはこういう政策という形で、ある意味では切り分けて、しかし全体がパッケージですよということをきちんと説明するような、こういう体系が求められているんだろうと思うんですね。  先ほど岸参考人がおっしゃいましたけれども、農地・水・環境保全向上対策のうちの地域資源の保全の方はむしろ面ですよね。あるいは、すべての農家というふうに申し上げていいわけですね。それから環境保全の方は、これも大小ではなく、環境保全という行動を取っているかどうかと、こういうことですよね。今回のものは、品目横断と言われているものは言わば経営政策であるわけですね。その意味では、主たる職業として農業を選ぶ人を応援しようという、こういうことであって、全体のパッケージとしてバランスが取れているかどうか。かつ、これは山田議員なんかと随分議論があったわけですけれども、集落営農という形で参加していただくような動きをつくっていただくならば、所有面積は小さくても担い手になっていくような道を考えていく、それも加えているわけでございますので、切捨てというのは非常に言葉として響く言葉ではございますけれども、必ずしも当たらないんではないかと。また、そうなってはいけないような形できちんと政策を理解していただき遂行する必要があると、こう考えております。
  18. 米長晴信

    ○米長晴信君 では、続きまして、自給率の話については先ほど西原参考人の方からもありましたけれども、自給率観点から、今の政府案と比べまして、今の戸別所得補償法案の方がより理にかなった政策であるように、あるいは今の政府案が自給率向上させるような要素が際立ったものは見当たらないわけでございますけれども、それについて所見をお願いします。生源寺参考人
  19. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) 三九%に下がったということは、ある意味でいいますと、私なりの考え方を申し上げれば、農政改革の遅れなりあるいは農業再建の遅れのバロメーターであって、これは何とかしなければいけないということかと思います。  それで、ただ、農業の実力が上がって農業の資源もきちんと確保される中での自給率向上と、ちょっと言葉もまた変な言葉を使いますのでしかられるかもしれませんけれども、カンフル剤といいますか、予算をかなりつぎ込んでみれば、これは上げることは私は可能だろうと思うんですね。つまり、財源の問題は一応おいておくとして、麦についてこれほど、あるいは大豆についてこれほどということにすれば上がると思います。これはこれまでの転作政策で正にそういうことがございます。  ただ、それが長続きするかという、ここだろうと思うんですね。その点、必ずしも私否定するわけではございませんけれども、しかし農業の実力が付いたことによってしっかりした技術を持った人がいるような農業の構造の下で確保された自給率と、ほうっておくとまた崩れていってしまうような自給率は区別して考える必要があるだろうと。  民主党の場合に、例えば自給率目標とそれぞれの品目の政策の結び付きが必ずしもはっきりしているような形でないと思うんですね。政府の方は一応、これこれの施策で麦についてはこうこうこういうこと、大豆についてはこうこうこういうことと、これがどれほど妥当であるかどうかは別として、品目的に積み上げているという点ではそれなりの戦略性を持っていると、こう言ってよろしいかと思いますけれども。
  20. 米長晴信

    ○米長晴信君 時間もちょっと少なくなってきましたので、今度は岸参考人に、お二人の話を踏まえて総括的にお話をさせていただきたいと思うんですけれども、切捨てかばらまきかというところで、戸別所得補償法案の方は農家農村とか多面的機能、そんなものも守っていくという、理念法ではないにしてもそういう理念で作られた法律であって、担い手法の方はどちらかというと経営政策であるというような位置付けで、どちらかというと、もう前者により多く予算を投入しているか、あるいは経営政策としてより少なく予算を組んで、それがどちらが国にとっていいんだろうかというところだと思うんですけれども。  まず、先ほど岸参考人、排除の論理といいますか、排除、小さい規模でも何でも一人一人の農家というものを切り捨てること自体は良くなく、それについては今法案配慮しているということですけれども、この部分で両法案を比較して、小規模農家の存続という観点でちょっともう一度御所見をいただきたいんですけれども。
  21. 岸康彦

    参考人(岸康彦君) 品目横断的経営安定対策は、いわゆる効率的かつ安定的な経営に育てるということ以外に、集落営農を取り入れたことで、かなり小さい規模も含めて、あるいは特例を設けるというようなことで、小さな方も取り込む方向へ来ていると思うんですね。ただ、やっぱり集落営農をやってみましても、いずれ法人化しなきゃ駄目だというようなことを言われますと、なかなかそこに入っていけない人も結構いるわけですよね。  特に、私の先ほど教え子の二人の例を申しましたんですが、彼らは例えば自然農とか、そういうやり方をしていますとなかなか入っていけないんですね。小さい農家でやって、もう一人っきりでやっているというようなことになってしまっている。だから、やっぱりそこに落ちこぼれて、まあ落ちこぼれという言葉は大変良くないんで使いたくないんでありますが、網の目からやっぱり落ちてしまう農家がいると思うんですね。つまり、そうした政策対象になりたくてもなれないというようなことがあるんだろうと思うんです。ただ、それを経営安定対策で救っていくのかどうかというところが分かれ目だろうと思うんですよ。  彼らは、見ていますと、必ずしも経営安定対策で救ってもらおうとも思ってないんですね。つまり、消費者と彼らは結び付いちゃっていまして、余りそういうことを考えないでやっているような実態もあるんです。つまり、農家というのは非常に多様なわけですよね。そういうものを一つ政策で全部を支援していくというのはなかなか難しいような気がします。だから、そこのところは先ほど申しました地域振興政策で手を打っていく以外にはないのかなという気がしているということを申し上げたかったわけであります。  販売農家総ぐるみで支援をしていくということになりますと、先ほどもちょっと申しましたんですけれども、農家だけはえらいいい目しているなという印象をやっぱり国民に与えかねないと思うんですね。これは、ばらまきという言葉で言うのは私は好きじゃないんですね。仮にばらまきであっても、それが本当に役立っているんだったら僕はいいと思うんですけれども、しかしどうもそうは受け取られていない。特に、現在みたいに格差社会ということが言われましてワーキングプアというような言葉が随分広がっておりますでしょう。本当に働いても働いても金にならない人がいるんですね。そういう人たちから見ると、いや、農家というのはそんないい目しているのかというふうに取られかねない。  ですから、これは、この法案をもし実行していくんだったら、相当なこれは説明を要するだろうというふうに思っております。  以上でよろしいですか。
  22. 米長晴信

    ○米長晴信君 ありがとうございます。  もう時間がわずかですので、財源といいますか予算ですけれども、先ほど、この政策自体、省庁の壁を越えて横断的にやるべきということだったんですけれども、財源の話になると、我々民主党というのは政権与党ではないものですから、非常にどの法案についても厳しい立場に追い込まれる場合もあるんですけれども。  ただし、我々の主張で、政権取ったら予算全体の枠組みを考慮すると。その中には、もちろん無駄の排除というのは第一義的にあるんですけれども、それだけではなくて、やはり環境省ですとか国土交通省だとか、そういうところも横断的にこの法案に例えば組み入れるということも、そういうことも視野に入れた答弁を恐らく発議者はしているかと思うんですけれども。  それについての理解というのは国民に得られると思われますでしょうか。岸参考人
  23. 岸康彦

    参考人(岸康彦君) おっしゃるとおりだと思うんです。  私、省庁の壁を越えて考えなきゃいけないと言ったのは、当然予算も含んでおります。  私はかねがね、米の備蓄などというものは防衛省の予算でやったらどうだと、これは国防なんだという考え方を取るべきだということまで、ちょっと極端でありますが言っているんでありますけれども、一農林水産省の予算の枠内でやろうとしたら、それは一兆円、なかなか大変じゃないですか。どうでしょうか、これは。いろんな試算をしておられますけれどもね。私は、そういうところにこそ政治が動いていただかなきゃならぬということを最後に申し上げたかったわけであります。
  24. 米長晴信

    ○米長晴信君 本日は、お三方、短い時間でつたない質問ではございましたけれども、お忙しい中ありがとうございました。  以上、終わります。
  25. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 自由民主党の野村哲郎でございます。  今日は、三名の参考人皆さんには大変お忙しい中御出席いただきまして、心から御礼を申し上げます。特に西原参考人につきましては、また生源寺参考人もそうでございますけれども、昨年の五月三十一日の品目横断のいわゆる担い手三法のときにも参考人としてお越しいただきまして、大変示唆に富んだ御指導をいただきましたことを心から重ねて御礼を申し上げる次第でございます。  私どもこの審議をずっと通じて考えておりますのは、農業政策には自民党でも民主党でも共産党でも皆さん思いは一緒だと、やはり農家経営安定、そしてまた地域農村活性化、あるいは先ほど来あります自給率向上、このことは皆さん同じ思いでやっておりますので、そのことは西原参考人にまず御理解をいただきたいと思います。  そこで、早速御質問申し上げたいと思いますけれど、まず西原参考人、先般の参議院の選挙民主党から配られましたこのチラシ、マニフェスト、ごらんになったことがございますか。
  26. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 見ております。
  27. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 どのようにお受け止めになりましたか。
  28. 西原淳一

    参考人西原淳一君) マニフェストを見た段階では、まだ財源の問題だとかその辺の問題がはっきり分かっておりませんでしたし、どういうふうになるのかというのはありましたけれども、やはり品目横断的経営安定対策が直接支払の形を取りながら今の制度の、制度の欠陥というよりも、やはりその単価を決めたときの設定のところに問題があったんだというふうに思っていますけれども、そういう不満がくすぶっている中では、やはりこれも、こういう生産費を補償してくれるというのは我々常に思っているところでありますから、そういう意味では、このマニフェストについても、やっぱりある程度期待を持ってこのマニフェストを見たというのは事実でございます。
  29. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 多くの農家皆さん方は、多分これを見て、大変にこの民主党農業政策に私は期待をお持ちになったと思います。これはもう間違いないことでありまして、私は先般の委員会でも発議者皆さん方に御質問を申し上げました。そのとき何を言ったかといいますと、すべての販売農家と、すべてといいますと、いわゆる作目を問わないというふうに皆さん受け止めた。  私の地元の白菜農家皆さんが、一昨年赤字を出しました。すき込みました、過剰になりまして。で、生産費までは賄ってくれるんだと。そして、私は発議者にも言いましたけれども、これは白菜なんです。これは、錯覚した農家が悪いのか、これを作った民主党が悪いのか分かりませんが、そういうようなことをやられた。これは生源寺参考人もおっしゃいましたけれども、いいとこ取りでこれをお作りになっているんじゃないかというふうに私どもは実は思っているんです。ですから、そういう意味におきまして、野菜の農家対象にならないということも質問の中でお答えになりました。  それからもう一つは、西原参考人の盟友の中にはたくさんの酪農家がいられると思います。今、酪農家は、乳価が抑えられている、そして飼料は高くなってきた。北海道はどうか分かりませんが、私の鹿児島の三百十九戸の酪農家は生産費を賄えないんです。大体五十頭規模でございますので、二百万の赤字であります。その農家が大変喜んだんです。こういう政策を自民党出したことあるか、一回もないだろうがと。民主党の政権になればそこまではきちっと補てんしてくれるんだというふうに受け止めたんです。これは受け止めた農家が悪い、そう言えばもうそれっきりですが、ただ、すべての販売農家というこの書きぶりが、やはり私は、農家皆さん方に大変そういった意味での印象を与え過ぎた、期待を持たせ過ぎた、そういうふうに思うわけでありまして、このすべての販売農家、これが大変なインパクトを与えたなというふうに思います。  そこで、西原参考人の盟友の皆さん方、どういうふうにこれを受け止めておられるか。いや、これは米と麦と大豆なんだぞ、そのほかは省令で定めるんだぞと、このことを御存じですか。
  30. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 今御質問いただいたように、当時といいますか、この民主党さんの農業者戸別所得法案、これができたときには、米、麦それから菜種だとか、そういう北海道にない作物、これらが入っておりまして、北海道の基幹でありますてん菜だとか原料用バレイショだとか、この辺が初めは入っていなかったというのは事実でありまして、私たちはそれについて、民主党さんの方に対しても、こういう北海道の基幹作物であるこれらも含めた対策としてその作物を入れてほしいということは要請もさせていただいたこともありますし、北海道、先ほども私が意見の中でもお話しさせていただきましたけれども、これ私も調べておりますので間違ってはいないと思いますけれども、全国の農家戸数が二百七十九万戸前後だというふうに思っていますけれども、その中に、今の民主党さんのすべての販売農家というのは販売農家百九十一万戸に対しての直接支払ということだというふうに私たちは理解しておりますので、北海道についてはこの販売農家というのはほとんど、農家イコール全員が販売農家でありますから、北海道についてはやっぱりそういう面では期待をしている部分が多いというふうに思っています。
  31. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 今、ビートのお話をされました。私は、今回の法案、先ほど申し上げましたように、民主党さんお出しになりました。非常に期待をお受けになりました。ですが、今おっしゃいましたビートそれからバレイショでん粉、これは先ほど要請して入ったというふうに私お伺いしたんですが、入ってないんです、法律には。入ってないんです。法律には、米そして麦、大豆、その他政令で定める農産物と、こうなっているんです。だから、ビートもバレイショも入ってないんです。  一方、昨年法案化されましたこの担い手法案、これの第二条です。この第二条には、この法律において対象農産物とは、米穀、麦、大豆、てん菜、でん粉の製造に要するバレイショと。法律で書いてあるんです、法律で。ということは、これは法律でバレイショもビートも担保されております。しかしながら、今回の民主党さんの法案にはその部分がないんです。これ、私はやっぱり、この法律を作られた、あるいはこのことを構想された皆さんが米単作地帯の方々じゃなかったのかなと、こういうふうに思ってしまうんですが。  私のところも畑作が六割です。(発言する者あり)いやいや、だから、私は、畑作のこのビート、基幹作物ですよ、北海道の、そしてバレイショでん粉、これが入ってない、法律で担保されてないというのが一点。それから、政令で定めるとなっていましても、本当に政令で定めていただけるのかどうか。これは多分発議者皆さん方は定めるよとおっしゃるかもしれませんが、いろいろ法的な問題があります。これは、今日はそういう場じゃございませんので、私はやはり、今日は盟友の皆さんもたくさんお見えになっているというお話でありますから、バレイショもビートも入ってない、不安だと、そういうふうに思われているのではないのかなと、こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  32. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 先ほども言ったように、初めは、今先生からおっしゃったように、今回の民主党さんのやつにも入っていなかったのは事実であります。  そして、私たちも、何としてもやっぱり今回のこの法案北海道の基幹作物としてのてん菜、原料用バレイショについても是非入れていただきたいということを再三にわたってお話をさせていただいて、でも間違っているかどうかは分かりません。これを、私も今資料持ってきておりませんので定かではありませんけど、要請をさせていただいて、てん菜についても原料用バレイショについても入れていただいたということでの理解はしているんですけれども。
  33. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 いや、これは皆さん方には、この民主党から出されました法案の中に入っているかどうかというのは後で法案を是非御検証いただきたいと思います。今日は西原参考人発議者ではありませんので、二人のやりとりというのはもう余り(発言する者あり)いや、失礼じゃなくて、どういう受け止め方をしているかということを私は、だから誤解をしちゃいけませんので。私が質疑者ですから黙っておいてください。  それで、生源寺参考人にお伺いいたしたいと思います。  今回、民主党から出されました農業者所得補償法案は幾つか私は特徴がある。やっぱり、きらきら光るものもあるというふうには私も十分認識をいたしておりますし、理解もできます。  ただ、その一つが、先ほど来申し上げておりますようなすべての販売農家対象になっておるわけでありまして、これは水田の場合は皆さんよく分かると思います、すべてということで。これは販売農家であれば、米作農家はすべて対象になる。  ただ、私どもが質問の中で発議者に申し上げてやりとりをした中で、こういう答弁をいただいております。これも事実だし私はそのとおりだと思うんですが、高齢農業者方々、特に米農家については多くの農家が生産費以下の状況の中で生産を続けている。なぜそのような生産を続けるのかといえば、高齢農業者方々は、私が農業をやめたら、耕作をやめたら、放棄したら受け手がない、受け手がいないから体の続く限り米作をやると、こういうふうにおっしゃっております。これは事実だろうと。私どもも地元を見たときにそうだろうというふうに思っておりますし、ただ、この人たちを大事にするためにはせめて生産費を償えるようなこういう法案が必要なんだと、それもよく分かります。  参考人も、現況の水田農業の実態を詳しく分析されております。先生からいただきましたいろんな資料も見させていただきました。その中の分析の中で、水田農業を支えているのは昭和一けた世代の頑張りであると、しかし二〇〇七年中に昭和一けた台の一番若い世代でも七十三歳になる、この人たちがリタイアすることによって水田農業を持続するポテンシャルを急速に失いつつある、現状農業構造の固定化は水田農業衰退を放置することになるというふうに述べておられます。まさしく私も、自分の地元を考えたときにそうだろうということで十分理解できるわけです。  私は、今回のこの民主党さんの法案につきましては、先ほど来申し上げておりますように理解はいたしておりますが、ただ現況を単に維持するだけで今農村や水田農家が抱えている構造対策になり得るのかなと、今単なる問題の先送りではないのかなと、こういうふうに思えてならないんですが、そのことについてひとつ参考人の御所見をいただきたいと思います。
  34. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) 議員がおっしゃった認識と私は基本的に変わりございません。  現状固定化、世の中動いていくわけでございますので完全に固定しているわけではございませんけれども、今の年齢構成等から見て、このままいきますと、要はその地域農業を引っ張っていくような方がほとんどの集落でゼロになるような、こういう状況をもう目前にしておりますので、そのリーダー格のような方を作り出すような、こういう手を打たないと、結果的にはこれ現状固定で衰微するに任せると、こういうことにつながりかねないと、こう思っております。  それから、高齢農家の方の頑張りについて、これにある意味では敬意を表するということは非常に大事だと思います。頑張りを更に次世代につなげていくということも大事だと思いますけれども、それは、この戸別所得補償という枠組みの中で行うよりも更に目的にかなったやり方があるだろうと、こういうふうに思っております。
  35. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 それと、もう一つお伺いしたいのは、要は、生源寺参考人はいろいろの、食料農業農村基本計画の審議会の企画部会のメンバーでもございました、山田議員も一緒でありましたが。その中でのを見ましても、参考人がおっしゃっているのは、この計画のキーワードは担い手だと。そしてその担い手には大きく二つのカテゴリーがあると、こういうふうにおっしゃっていました。一つは個別の農家であり、もう一つは集落営農ということをおっしゃっておられます。そして、その中で私は非常に、御質問するわけですけれども、この集落営農組織は新たな担い手を生み出す舞台装置としての役割を果たすはずだと、このようにおっしゃっているわけですね。  ですから、先ほど来申し上げますように、民主党の今回の法案、確かに集落農業を排除はしておられません、対象に当然されておるわけですが、非常に積極的に集落営農をやっぱりつくっていかなきゃならない、そういう意気込みといいますか、積極性というのがどうしても感じられないわけであります。ですから、何か積極的に集落営農をつくり上げるというとインセンティブが働くのかな、働かないのかなと、こういう販売農家すべてに所得を補償するということが第一点であります。  ただ、これはもう参考人も、全国の八万八千の水田農業のうちの約五割はいわゆる主業農家がいないと、こういうこともセンサスの中から数字を出しておられるようでありますけれども、私は、その集落営農は新たな担い手を生み出す舞台装置になるはずだという集落営農の期待も寄せられておられますが、それと、先ほど法案の答弁の中で出ております耕作をやめたら受け手がないんだと、受け手がないからこの所得補償方式でやるんだと、こういうのがもうずっと私ども答弁をいただいた中身なんです。そこのところが、集落営農の部分と戸別補償の部分というのは大きな乖離があるように、インセンティブがどう働くのかなというのがあるものですから、そこのところをひとつ専門にやっておられる参考人にお聞きしたいと思います。
  36. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) 集落営農といっても、もういろんな形があるわけでございます。それで、個々の農家の仕事を補助するというか、例えば機械を共同で持って持ち回りで使うようなやり方もありますし、あるいは作付けの協定を結ぶということもあるわけです。  ただ、こういう集落営農ですと、これに意味がないとは申し上げませんけれども、これが、支えている個々の農家が高齢化によってその地域からいなくなれば集落営農も必要なくなると。ですから、集落営農の中から内発的な動きが出るかどうか、このきっかけとしてこの政策、この政策というのは経営安定対策の方でございますけれども、これをうまく使うことができるかどうか、これが問われている、こういうふうに考えております。  それから、受け手がおられないという議論、私、必ずしも承知しておりませんので、どういう文脈のことか分かりませんけれども、受け手がないという状況の中でもうしばらく頑張ってくださいという、これは分からないでもないんですけれども、これはもうしばらくで終わる、その受け手をどうやってつくっていくかということがあれば、あれば、地域農業は再建される、こういう筋道だと思いますけれども、戸別所得補償で受け手がいないのでもう少し頑張っていただきたいということだけでは結局、先送りというふうに表現されましたけれども、そういう格好になるんだろうと、こう思っております。
  37. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 岸参考人には、質問を用意いたしておりますけれども、もう時間が、私の持ち時間が半まででございましたので、大変恐縮ですけれども、お二人の参考人の質問だけでとどめさせていただきます。  ありがとうございました。
  38. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合正明です。  本日は、参考人の皆様、本当にお時間をいただきましてありがとうございます。  私の方からまず質問させていただきたいのは、やはりこの法案の議論のポイントとなるのは、原則すべての販売農家所得補償をしていくということが、それは固定化になるのか、あるいは今の現行の政府政策はそれは切捨てなのかと、極端な話、そういうキーワードがあるわけでございます。  まず、岸参考人にお伺いしたいと思います。  先ほどのお話の中では、今いろいろ政府政策について、大規模あるいは小規模、それを選別して排除できるほどの余裕はないんだという趣旨のお話をいただきました。ただ、そうはいっても、受け手、担い手に対して働き掛ける、いわゆる支援策をしっかり充実させていくということは大事な視点で私はあると思っておるんですね。まず、今回の民主党提案については先ほど、今の農村構造の現状認識があって、しかし、民主党所得補償法案がいかに法案に書かれている目的とその政策がリンクするのかという課題提起もあったわけでございます。  私の方から質問させていただきたいのは、今回の私は民主党提案では若干農村構造を固定化させてしまうのではないかという危機感を持っております。その点、岸参考人に、今回の民主党の本法案が中長期的な農業構造の展望を考えたときに、果たしてどれだけ戸別所得補償が受け手が育っていくそういう誘因策になっていくのかと、その点についてお伺いをしたいと思います。
  39. 岸康彦

    参考人(岸康彦君) 先ほど申しましたように、私は、今の品目横断的経営安定対策対象としているような効率的かつ安定的な経営を育てるということについては、民主党の方でも別に反対をしていらっしゃるわけじゃないと思うんです。なぜなら、民主党食料農業農村基本法には賛成をされたわけでございますね。そこのところの基本はやっぱり一つ置いておく必要があるだろうと思うんです。ただ、それだけで済むかどうかということを考える必要が私はあるんだろうと思うんですね。その場合に、その販売農家総ぐるみでやっていいのかどうかというところが今の議論の分かれ目じゃないかと思っておるんです。  ただ、繰り返しになりますけれども、私は、農村というものは農政だけで持ちこたえられるようなものではないと思っているんです。だから、さっき申しましたように、農政の枠を超えたような政策を考えなきゃいかぬ。要するに、もう総力戦なんですよ、農村は。あらゆる施策をやっていかないことにはもたないという状況になってきているところが一杯ありますよね。私がさっきから申し上げているのはそれなんですよ。つまり、振り落とすとか排除するとか、そんなことを言っている余地なんか全くないんだと、そういうことを申し上げたいわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  40. 谷合正明

    ○谷合正明君 私も、農業農政、産業政策だけで、一本で、到底それだけでできるとは思っておりません。その意味では、参考人の今の御意見、非常に分かるわけであります。しかしながら、所得補償法案がすべて解決するともなかなか思えないというところの問題認識は持っております。  次に、生源寺参考人にお伺いしたいと思います。  この質問に関連するわけでありますが、今、岸参考人は、農政の枠を超える、産業構造の枠を超えるようなことをしていかなければ今の日本の農業農村構造の問題をなかなか解決の方向には持っていけないんだというふうな提起がございました。私の方から、その点について生源寺参考人の御意見を伺いたいのと、現行の政府品目横断的経営安定対策について、私は中国地方、岡山なんですけれども、やはりその面積要件がかなり厳しくて、もう少し配慮をしていただきたいという声はたくさん伺うわけであります。  もし仮に、現行の政府政策を見直しする、あるいはもう少し配慮するとすればどういった点に課題があるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  41. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) 今の農政の枠を超えたという岸参考人からの発言、これに関連する御質問でございますけれども、例えば中山間地域の直接支払がございますね。これは、耕作放棄を防ぐという、こういうことに着目して、大小無関係に支払をするという、こういうことでございます。これは農政として私は非常にいいものだと思いますけれども、ただし、このまままいりますと、言わば地域社会維持されているからこそそこに人がいて、したがって水田が維持されているという、こういう因果関係が強いということになりますと、この直接支払だけであればある意味では裸の政策、孤立した政策で、いずれ集落の消滅とともにその政策も要らなくなってしまうと、こういうことになりかねないと思うんですね。  したがって、むしろ、ある地域についてすべてを今のまま維持することができるかどうか、これはちょっと別といたしまして、やはり国土政策なりあるいはその地域に就業機会をきちんと確保するといった、こういう政策がかみ合うことで初めて実は直接支払も長期的に意味のある政策になっていくんだろうと思います。これは一例でございますけれども、平場にも同じような状況というのはあるかと思います。  それから、品目横断について仮に見直すとすればどういう点があるかということでございますけれども、これは西原参考人の御趣旨と重なるかどうか、ちょっとここは私はあれでございますけれども、まず、きちんとセーフティーネットになっているかどうか、それから、努力した方がきちんと報われるような形になっているかどうか、これは過去の努力も含めてでございますけれども、こういった点は、始まったばかりでございますので、なおさらきちんとチェックする必要があるだろうと。  それから要件でございますけれども、私は、これだけ南北に長い日本の非常に自然条件なり地域条件なりあるいは所得の条件も違う中であれば、これは農政全般に言えることでございますけれども、全国一本の基準で本当にいいかどうかということは、これは政策手法として考える必要があるだろうと。今、格差係数というような形で弾力的な条項はございますけれども、それぞれの地域の条件を組み込むような、こういう要件の設定ということも今後の課題として私は存在しているというふうに思っております。
  42. 谷合正明

    ○谷合正明君 分かりました。  次に、生産数量目標について、これも岸参考人西原参考人にお伺いいたします。  今回の民主党提案には、基本的に国や自治体の関与というものが強まりました。つまり、国や自治体が対象農産物ごとに生産数量目標を下ろしていくと、そしてその生産数量に従った農家に対しての交付金という、ここはしっかりリンクしてきたわけでございます。  この行政による生産数量目標設定のようなことが果たして実行可能なのかと。かつてのような計画経済的と申しましょうか、そういったことが可能なのかということを岸参考人にお伺いしたいのと、また西原参考人には、生産者立場としてこういった手法生産数量目標の決め方について、これをどのように現場としてはとらえていらっしゃるのか、その点についてお伺いいたします。
  43. 岸康彦

    参考人(岸康彦君) 率直に言いまして、この法案の生産調整の方式、私にはちょっとよく分からない部分があります。今の地域協議会で決めていく方式とこの今度の方式、法案提案されている方式ですね、どうも行政の関与の度合いが強まるということなんだろうという程度までは分かりますけれども、どこが具体的にどう違うかということはよく分からないんです、正直言いまして。  ただ、今でも実態としては行政はかなりかんでいるわけですよね。それでなお、しかし過剰作付けはなくなってないんです。それはもう既に信念を持って過剰作付けやっているわけですから、簡単になくなるとは思えない。  そういうことが、この法案提案されているような行政主導型と言っていいのかどうかちょっとそこもよく分からないんですけれども、そういう方式になっていった場合に、今とどれくらい違う効果を上げられるかというのは、これはもう率直に申し上げますが、私よく分かりません、正直言いまして。済みません。
  44. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 今先生の方からお話ございましたけれども、まさしく今年の米の状況を見ていただければ分かると思うんですけれども、今年から米の生産目標数量というのは農業者主体で配分をすることに変えたわけでありますけれども、行政の関与というのを全く後退をさせてしまったわけでありますけれども、昨年までやはり米の生産目標数量についても、農業者もかかわって、やはり農協が主体的にその生産数量の配分というのはかかわってきたわけでありますけれども、そのちゃんとお目付役みたいな形で行政というのはきちっと監視役でいたことが、米の消費減退もありますから、米の過剰米というところについては別な問題もありますけれども、去年まではやはりその生産目標数量を守らなかった県というのは七県しかありませんでしたけれども、今年農業者だけが主体になって生産目標数量を配分したことによって三十三の県でこの目標数量を守らなかったということが今回の米の下落だとか過剰米の発生に大きくやっぱり作用したんだというふうに私はとらえているんです。  そういう観点からいくと、やはり国土をきちっと保全する、農地保全するという立場からも、やはり行政も、いろんな生産目標数量に対しては行政もやはり関与をするべきだというふうに私たちは思っております。
  45. 谷合正明

    ○谷合正明君 せっかくですので今度は生源寺参考人にお伺いしたいんですが、先ほど市町村の職員のいわゆる事務が膨大になるんじゃないかと。いわゆる、例えば生産数量目標は決めていくと、そしてそれに従うかどうかというのを各農家ごとに、特に米農家の場合は今回初めて補てんをするという、基本的に差額を補てんしていくということになりますと、さらにそれを市町村のだれが担っていくのか定かではありませんけれども、その点について、つまりこの生産数量目標であるとか、そしてそれに従った農家がどれだけいるかというその効率性であるとか正確性をチェックする体制というのは果たしてでき得るのか、その点について、参考人、お伺いいたします。
  46. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) 今回の戸別所得法案と生産調整の関係は、岸参考人もおっしゃったように、ちょっとはっきりしないところがあるのでやや漠とした言い方になるかと思いますけれども、そもそも多分、所得補償法案ですね、これ百万とかそれ以上のオーダーの農家の方が対象になるとすれば、それ自体かなりの行政コストが必要になるかと思います。これはもちろん、そのこと自体がいい悪いということではなく、その効果なりと比べてどうかという、こういう議論は一つしておく必要があるかと思います。  それから、目標数量の配分でございますけれども、今は米も農業者あるいは農業者団体ということになっているわけですが、同時にその販売実績をベースに目標数量を決めるという、こういうやり方をこの数年間試みてきているわけなんですね。ある意味では私は、部分的には自己決定的な方式というふうになっているわけですけれども、そういう観点からいいますと、また六九年、七〇年にスタートした、あるいは五十三年に強化された生産調整の方式を持ち込むとすれば、これいろんな問題がございますけれども、市町村の職員が言わば間に立って非常に苦労されているという、こういう実態がこれまであったわけでございます。  ここも、まあ中身が分かりませんのでどうも何となく妙な言い方になりますけれども、もしそうであるとすればこれは、市町村の職員ということは反対しにくい微妙な立場にもありますので、そこは気を遣う必要があるかなと、こう思っております。
  47. 谷合正明

    ○谷合正明君 皆さん、まだその具体的なものが分からないので答えづらいというようなこともあったので、それにちなんで、やはりいろいろ、例えば対象農産物あるいは交付単価も含めて政令にゆだねているところも多くて、なかなかはっきり具体的に分からないという声も多いわけであります。  その中で、今回の所得補償法案の全体一兆円と言われるその積算根拠というのはないと。そして、一兆円というものは獲得する宣言であると。財源については基本的にどれを持ってくるというその確たるものは示しておらないわけでありますが、そういう中で、果たして国民の理解、納税者の理解というのはこれ得られるのだろうか、あるいは得られたと考えるのか、その点について、まず西原参考人に伺います。いわゆる国民の理解、得られるのか、得られたのかと、その点についてお伺いいたします。
  48. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 私たち生産者立場からその一兆円の予算規模についてどうのこうのということは言うべきではない。法案が通ればそれに基づいてきちっとその財源確保するというのは、それはやはり国の責任だと思いますからそのとおりだというふうに私たちは思っています。  ただ、その財源がどこから持ってくるかというところについても、私たちがそれをどうのこうのそこまで言う、生産者から、何というか、要請するということじゃなくして、私たちはずっと、先ほども申し上げましたように、ガットウルグアイ・ラウンド農業合意されてから、ずっとEUやほかの諸外国みたいにやはり直接支払をするべきだと。そのために、再生産可能なやはり水準の直接支払というのは必要だというふうにとらえておりますから、そういう意味での今回は戸別所得補償法案に対してある程度期待を寄せているところでありますし、財源については法案が通ればそれは国の責任できちっとやっぱり確保できるものだというふうに私たち信じております。
  49. 谷合正明

    ○谷合正明君 その直接支払に対する期待というのは分かるんですけれども、なかなか、私の質問は、国民の理解に対して、生産者という立場であるからなかなか答えづらいという話もあるかもしれませんが、一方で、その点についてどう考えるのかという点であったんですけれども、まあちょっと時間がありませんのでおいておいて。  生源寺参考人に同じ質問をさせていただきますが、この点についてどのように考えられますでしょうか。
  50. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) 初めてこういった具体的な御提案だということでございますので、なかなか細部が詰めにくいという、こういう事情は分かりますけれども、しかし、あらましの財源の必要額なり、あるいはこういうことが起こった場合にはこれはこうなるかもしれないというようなことは、やはりプランとして政策である以上提示をして、その上で議論ということが望ましいというふうに思います。  怖いのは、実際にこれが具体化されていくプロセスで、消費者あるいは納税者の目から見てこれは何だという話になる、あるいは逆に、農家の側から見て期待感と随分違うんではないかということになりますと、これはもう政策として一種のダッチロール状態になりかねないと思うんですね。したがって、検討の段階でやっぱりきちんとした情報を出していただいて積み上げがあってやるべきであって、こちらに振れてまたこちらに振れてというようなこと、それこそそんなことをやっている余裕のないのが日本の、特に水田の農村だろうと、こういうふうに思います。
  51. 谷合正明

    ○谷合正明君 以上でございます。ありがとうございました。
  52. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  最初に、参考人皆さん、今日はお忙しい中、時間をお取りいただきましてありがとうございます。  最初に西原参考人にお聞きいたします。  前回も参考人としてここにおいでくださっていろいろ御意見をいただきましたし、品目横断的経営安定対策のときにはそれを決める最終段階は北海道地方公聴会ということでやりまして、その中でも農民、生産者の代表の皆さんなども含めて出ていただいて、最後のもうぎりぎりまでやっぱり非常に不安がたくさん出されていて、それで当時は中川農水大臣だったわけですけれども、採決の前に、この法案自身が、効果が未知の部分があるということではやっぱり実際にどうかということで、見直しも検討しながら実態を踏まえてという話もされるぐらい。だから、本当に不十分な中でこれが決まったという経過があったわけですよ。  ですから、私、じゃ、その後実際どうなったのかということでお聞きしようと思いましたら、今日この貴重なアンケートを取っていただいて、北海道でいうと上川から網走、十勝、全体ですね、管内またがって、途中だということではありますけれども、それでも八千近い回答ということでまとめていただいた貴重な資料を提供いただいて、ありがとうございます。せっかくこれ出していただいているので、これの中から少し質問したいと思っております。  それで、この二ページ目のところに、要約した結果の中で、農業経営状況の見込みということで、前年よりも収入が減少するというところが七七%で、約八割の農家が減収見込みってあるんですね。それで、畑作地域が八割以上が減収、米を作っているところの七割以上が減収だと。  それで、減り幅もかなりあるというふうに思うわけですけれども、先日、私、北海道の網走地域というところと、それから十勝ですね、ここでやっぱり農業者皆さんにお聞きしたところが、本当に一戸当たりの平均で百万とか、そういう単位で減収するという、ほとんど減収だと言われたんですよ。増える人いますかと言ったら、いや、ほかのもの作っている人だろうねという話で、それぐらいやっぱり大変な、深刻な状況だということを思ったわけですけれども、改めてこれ見ますと、やっぱり全体にそうなんだということがよく分かるわけです。それで、前年とほとんど変わらないという人が一割程度ということになっていますよね。  それで、その次に、収入が減少する理由のところでは、作柄が悪くて減収したというのもありますけれども、品目横断政策の影響という人たちが五割というふうになっていて、非常に経営に大きな打撃を受けているということが示されていると。特に、畑作地域で八割以上が品目横断の影響で減収というふうになっているわけですよね。  このことが具体的にはどういうふうな形でそういう減収になっているのかという辺りを少し話をしていただければと思います。
  53. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 今、紙先生からお話ございましたように、私たち、この品目横断的経営安定対策スタートする前から北海道対策だと言われながら、いろいろそういう心配されるところがたくさんありまして、最後の最後までその辺の詰めの要請というものをやらさせていただいたんですけれども、一つには、例えば麦だけとらえていきますと、やはり、全体もそうですけれども、何で今回、過去の数量面積換算したかということが一つございます。  それと、今回の基準単価、基準収量の取り方、これについてでありますけれども、全国の基準単収については作物統計の七中五の単収を採用しているんですけれども、各町村の農家支払単価になる単収については共済単収の七中五を使っていただければ一番良かったというか、共済単収の七中五か、今回の過去実績を算定した十六、十七、十八年の直近三年間の基準単収を取るかであれば良かったわけでありますけれども、ここが、共済単収の七中五を共済組合が二十年間のトレンド修正をやっている単収を使ったことによって大幅に単収が下がったというのが原因であるんではないかなというふうにとらえております。  一つに、これ、比較といいますか、私たちが調査をやっているところでありまして、北海道八十九の市町村を今対象に調査をしてございます。その中で、畑作専業地帯、網走管内の斜里町の、例えばでありますけれども、斜里町の秋まき小麦でお話を申し上げますと、十六、十七、十八年の直近三年間の平均単収が秋まき小麦で六百四キロでございます。共済組合の七中五の基準単収、平均単収が五百六十五キロでございます。ところが、今回の緑ゲタ算定の単収については、先ほど申し上げましたように、共済組合の七中五を二十年間のトレンド修正をやった単収を使っているものですから、四百九十八キロに落ちてございます。これが緑ゲタとして支払われている単収になりますから、大幅に下がっているということであります。  ただ、これ、網走管内の斜里町、畑作専業地帯、規模も大きいですから、このぐらいの影響でありますけれども、もう一つ、檜山管内の今金町、ここは水田と畑作と混在している地域でありますけれども、ここにおいては、秋まき小麦は収量についても大変畑作ちっちゃいから少なくて、直近三年間でも三百九十六キロしか取れてございません。共済組合の七中五の平均でも三百十七キロでございます。  ところが、今回の緑ゲタの単価になった単収については二百四十九キロと大幅に、直近三年間の平均からすると六三%しか該当になっていないというんですね。このことが大きく今回の収入減につながっているんだというふうに私たちはとらえてございます。北見管内や網走管内、すべてではありませんけれども、うちの組織のあるところ十二農協すべての農協の全生産者の今年の小麦の品代を一俵二千三百円から二千四百円ぐらいの単価で設定をした中で計算をしたわけでありますけれども、それで今回の緑ゲタ黄ゲタ、それから品代、これら含めて、すべて十二農協の現在の麦の農家支払われた金額と、これから支払われるであろうという品代を含めての算定をさせていただくと、平成十八年、昨年度から比べると、十二農協で二十七億八千四百万の減収でございます。これだけ大きな減収が生まれたというのは、先ほど申し上げました基準単収がそこまで下げたということが大きな原因ではないかなというふうにとらえてございます。
  54. 紙智子

    ○紙智子君 これだけやっぱり減収になってしまうと、幾ら担い手が意欲がわくようにといっても、これはそうならないだろうと。本当に減っていくということで心配される中身で、やっぱり本当に打開するということが急がれる中身だというふうに思うわけです。  それからもう一つ、集落営農という問題なんですけど、先ほどの西原参考人が質問に答えていた話の中で、中富良野においては四百七十八戸あって、それでそのうち担い手ということで対象になるのが、十ヘクタール以上が三七%って言いましたっけ、で、その四割が対象にならないという話がありました。ならない人たちはどうしているのかなというのはあって、生源寺参考人が、切捨てじゃないんだと、要するに集落でやったらいいという話があったわけだけど、集落になかなかなれていかないというか、旭川でやった公聴会のときにも、農民連盟の方が、いや集落でって、できないですよって答えていたんですよ。どうやってやれるんだと。今までの歴史がずっとあって、そう簡単になんていかないんだという話をされていたんですけど、今もやっぱりそういう声というのは農村地域にあるんだと思うんです。それはもう北海道だけじゃなくて、東北なんか回ったときもそういう声ありましたしね。  だから、そこのところが、実際上、集落になってなかなかいけない現状といいますか、それはどんな状況なのかということをちょっと今の時点でお話ししていただければ。
  55. 西原淳一

    参考人西原淳一君) ここについては、北海道全体ではやっぱり個別規模拡大での完結型というか、そちらに向かっているんですけれども、なかなかそれに所得が伴ってこないというのが実態だというふうに思っています。  先ほど私の町のお話をさせていただきましたけれども、私の町は、北海道全体の中ではそういう方向には全然向かっておりません、うちの町だけちょっと特異なところなんで、ちょっとお話をさせていただきますけれども。  私のところは、先ほど申し上げましたように、五ヘクタール以下のところが四十何%もいて、今度の制度についても、規模要件では北海道は十ヘクタールですから、乗れなかったという農家がそれだけいらっしゃいます。そんなことを、うちの町については、平成十六年の米改革大綱で新しい米政策が十六年の四月からスタートしたときから、そういう小さい農家対象に、北海道ではまれ、国からも北海道でそんなことをやる必要があるのかと言われましたけれども、うちの町では集落営農やってございます。今年の、この品目横断的経営安定対策に移行した今年の経理一元化の中での私の町の集落営農は二十七組織今年あって、集落営農として今やってございます。それと個人での個別経営型と両方向、同じ方向で今走っておりますけれども、これは北海道の中でうちの町だけでございますので、これはちょっとほかのところではそういうことは北海道ではありませんので、そこはちょっとほかのところとは違うということだけ御認識いただければなというふうに思います。
  56. 紙智子

    ○紙智子君 集落の場合も本当に歴史があって、以前から地域で協力し合いながらやってきて、その上に成り立ってやっているところであれば、そこをもっと応援するという施策でいいと思うんだけれども、上から当てはめてやるというやり方がうまくいかないということも随分出されてきましたし、今の時点でも、集落を無理してつくったはいいけれども収入は減るということになると、つくった集落営農そのものが、この後、一体どうしたらいいんだということで大変なことになってしまうなというふうに思っているんですよね。  それで、生源寺参考人にお聞きしますけれども、この集落営農というやり方を提言もされて、この間議論されてきた方でもあるわけですけれども、今の現状をめぐっては、その原因なりその対策なり、方向性というんですか、今収入も下がっているという中では、一体どうしたらいいのかということについては、何かありますか。
  57. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) まず、支払の単価なり水準なりが、今、西原参考人がデータとともにお示しになったように十分な形になっているかどうか、ここがまずチェックすべき大きなポイントだろうというふうに思っております。つまり、インセンティブとして十分なものになっているかどうかという、こういうことだろうというふうに思っております。  それからもう一つは、北海道の集落あるいは内地の集落でもいろんな形のものがございますので、例えば今年中にやらなければということでは私はないんだろうと思うんですね。かなり話をして、まあ、けんかもしながらということもこれありということもあって、話がまとまったので次の段階に進んでいくと。様子を見ながら、二年後というようなケースも私はあっていいんだろうと思うんですね。むしろ、今議員御指摘のように、無理やりつくって、さあどうぞということになりますと、これは何のための経営政策かということになりかねないと思います。  それから、今、西原参考人もおっしゃいましたけれども、その場合に大事なことは、やはり幾つかのモデルがあって、そこから学び取ることができるような、こういう手当てをもう一方でする必要があるかと思っています。財務、税務についてはかなりいろんなアドバイスが及んでいるようなところございますけれども、どうやって話をまとめていくかというようなことについては、例えば中富良野の事例に学ぶというようなことも必要かなと、こんなふうに思っております。
  58. 紙智子

    ○紙智子君 次に、米の問題なんですけれども、米問題をめぐっては、この間、緊急対策ということでこの暴落に対する対策は取られているんですけれども、本当はもっと抜本的な対策が求められているというふうに思いますけれども、生産調整ですね、この生産調整についてはすごく苦労されていると思うんです。  それで、米の過剰対策ということで、私もずっと北海道を回ったときに言われたのが、過剰米対策ということで、生産団体、生産者のところでこれからは処理するんだよというふうに制度が変わって、そういう中で、実際に余ったものについては自分たち市場に出さないようにということでやってきたわけだけれども、これが本当に機能できるかどうかということをめぐっては、この米政策、この政策が出された時点で、私はそのときもたしか生源寺参考人に質問したと思うんですけれども、もしも麦やほかのものを作って、価格が上がらない、下がるという事態になったときに、もうそうなったら経営のためには米だって作らざるを得ないということになったときに、歯止めが掛からなくなったら、せっかく生産調整してもどんどん下がり続けることになるんじゃないのかと、そういう心配はないんですかということを聞いた際に、いや、そこはそうならないようにという話が政府の方の答弁からもあったわけですけれども、実態としてはやっぱり下がってきていると。  このことに対しては、やっぱり、回るときにいつも言われる、何が原因なのか、その検証をしてほしいと。検証して、どうしてそうなったのかということを政府としては責任ある答弁する必要があるじゃないかということで訴えられるわけですけれども、この辺のところは生源寺参考人はどんなふうに考えておられますか。
  59. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) この点につきましては、昨年の春から夏にかけて生産調整の方式を新しいシステムに移行する際にかなり数字的なものも含めて検証を行った経緯があったかと思います。  それで、生産調整に参加していない方が、どちらかといいますと小規模で比較的都市近郊に立地する方が多いという、こういう結果がございまして、ここの部分については経済的なインセンティブというような形ではもうとても、何といいますか、参加していただくことができないだろうと。これが一点あろうかと思います。  それからもう一つは、これはそれこそメリット措置水準にもかかわってまいりますけれども、経営判断あるいは収益性の判断でもってどちらを選ぶかということであれば、比較的規模の大きな担い手の方は割と参加されていると、こういうことだろうと思うんですね。ただ、私自身は、今の形の生産調整に対して、今回自民党が備蓄を増やすという方針を御決定されたようでございますけれども、こういう形で対処していってちゃんと着地点が見付かるのかなという感じはいたしております。  むしろ今回やるべきであったのは、それがまた今後の政策にも私は結び付いていくというふうに思いますけれども、正に担い手、あるいは担い手の候補でも結構でございますけれども、その方で参加されている方にはきちんとセーフティーネットが張られるような、こういう環境をつくるということが大事だろうというふうに思っています。それで、上からといいますか、これだけ作れ、作るなというような世界、またそれがもたらしたいろんな意味での摩擦等はもう繰り返すべきではないだろうと、こういうふうに思っております。  全体として需給が緩むというのは、これはもう何といいますか、政策的あるいは人為的な力でもってなかなかいかんともし難い、こういう状況があるかというふうに思っております。
  60. 紙智子

    ○紙智子君 私は、すべて市場に任せるとやっぱり歯止め掛からないというのか、これには限界があると。そういう意味では、政府が全部放棄してしまって責任を取らないというのは、やっぱりそれは良くないというふうに、そういう考えなんですけれども。  いずれにしても、やっぱりこの問題というのは本当に打開していかなきゃいけない問題だというふうに思っていますし、これからのやっぱり課題というか大事な問題だというように思っております。  それから、岸参考人は先ほど、農村の疲弊ということを考えたら農業政策だけじゃなくてと、地域全体として見なきゃいけないという発言されていて、私もそのことは非常に大事だと思っていて、やっぱり農村地域地域全体が本当に経済的に沈んできているという中で、やっぱり農業も大変だし商店も大変だし、それからその地域の工業なり本当に中小企業が大変だという状況ですから、そこが本当に全体視野に入れながら農村地域そのものを引き上げていくとなると、もっとやっぱり総合的な農業政策だけじゃない対策というのはもちろん必要だというふうに思うわけです。  それで、ちょっとごめんなさい、時間がなくなったので、あと一点だけ、今度出されている民主党さんの戸別所得補償制度ということで、お三人の方に、それぞれ期待できる点と……
  61. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 時間が来ております。
  62. 紙智子

    ○紙智子君 それから不安を持っていることということで、一言ずつお願いいたします。
  63. 郡司彰

    委員長郡司彰君) それでは、西原参考人、簡潔にお願いいたします。
  64. 西原淳一

    参考人西原淳一君) 今回の民主党さんの法案については、私たちは、根本は、もうけられなくてもいい、もうからなくてもいいけれども、きちっと次の世代、後継者にきちっと譲っていける、その所得確保できる対策、これであればやっぱり私たちは前に向かっていける、苦しくても前に向かっていける、そういうふうに思っています。今のところそういうものが全く見えなくて、そのことによって後継者がどんどん減っているというふうに私たちは思っていますから、是非ともそういうふうな対策お願いしたいなというふうに思っています。
  65. 生源寺眞一

    参考人生源寺眞一君) 具体的なことはいろいろ申し上げましたので繰り返しません。  今回の議論は、日本の農業農村、これからどうあるべきかというこのきっかけになったという意味で非常に貴重な民主党からの御提案であったというふうに思っております。望むべくは、これがもう少し都会の人も含めた議論に広がっていくことを期待いたしたいと、こう思っております。
  66. 岸康彦

    参考人(岸康彦君) 私も最初にそのことを、今、生源寺さんがおっしゃったようなことを申したつもりでございますけれども、一言だけ付け加えておきますと、この案でもしかしたらいいところかもしれないなと思いますのは、直接支払の額を作目ごとに決めようとしておられますよね。これがうまくいくかどうかというのは私、実はよく分かりませんけれども、少なくとも米について言いますと、転作作物をそれで持ち上げていくということは、可能性があるのかどうか、私、計算していませんから分かりませんけれども、そこに一つ可能性がどうなのかなというふうに思っているということだけ付け加えさせていただきたいと思います。よく御検討いただきたいと思います。
  67. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見を拝聴いたしました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。ありがとうございました。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  68. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、澤雄二君が委員辞任され、その補欠として山本博司君が選任されました。     ─────────────
  69. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農業者戸別所得補償法案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、農林水産大臣官房総括審議官佐藤正典君外三名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  71. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 農業者戸別所得補償法案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  72. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 亀井亜紀子でございます。  今日が初めての国会質問になります。慣れないことも多々ございますけれども、よろしくお願いをいたします。  私は、夏の参議院選挙国民新党公認で戦いまして、当選をいたしました。選挙区は島根でございます。典型的な保守王国、自民王国と言われているところですけれども、今、その田舎で何が起こっているか、私がどういうメッセージを感じたか、そういうことも含めながらお話をしていきたいと思います。また、私は、民主党と今会派一緒にしておりますけれども、ただ、民主党員ではありませんので、この法案について少し客観的な立場からもお話をしたいと思います。  まず初めに、小泉・竹中路線の構造改革と、この担い手経営安定新法との関連性について伺いたいと思います。  私は、今回の参議院選挙で、実は構造改革を真っ向から批判して戦いました。つまり、二〇〇一年に小泉改革が始まって、それで改革改革という大合唱に国民は皆期待したわけですけれども、六年たって世の中を見てみたらちっとも生活は良くなっていなかった、特に都市と地方格差が広がって島根は大変なことになっていた、それが現実だと思います。  これを農業だけに限らず分野ごとに見てみても、まず、先ほど申しましたとおり、都市と地方格差広がりましたし、医療制度改革をやったらば、今度また田舎に医師が足りなくなって、大病院が集中して医者を集めるようになりましたし、雇用の格差も広がって、一部のまた大企業がもうける一方でワーキングプアも出てきた。あらゆる面で格差が出てきたわけですね。そのことと農業構造改革ということは無関係じゃないと思うんです。  先ほど、政府参考人の御意見の中に、小泉改革農業農政改革が一緒にされたということは残念だという発言がございました。それに対して民主党の質問者が、いや、地方切捨てそのものじゃないかというふうに後で質問されておりましたけれども、私はこの点を整理してみたいと思います。  まず、小泉改革が何であったのかという、その総括がされていないと思いますが、私は、小泉それから竹中路線の改革のキーワードというのは規模効率と規制緩和だと思います。ですから、規模、つまり大きいことはいいことだと、強いものをもっと強くして大きくすれば全体が良くなるという発想に基づいて改革が進められてきたと思います。その過程において徹底的に効率性を高めていく、そして規制緩和をして、より自由な条件の中で戦わせるという、それが構造改革の基本的な考えであると思います。  これは何かといいますと、新自由主義、ネオリベラリズムだと思います。この考えが今アメリカのいわゆる政権の、政策の中心を成している考え方ですし、それに対して、私の所属する国民新党は、いや、間違いであると。ある程度政府の介入と規制が必要であるという、そういう立場で今までの小泉改革の路線を突き進んできた自民党とは立場は明らかに異なる、そういう立場を取っております。  それで、この担い手経営安定新法なんですが、この目的、それは、効率的かつ安定的な農業経営農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造を確立するとあります。つまり、農業生産の相当部分を集約して大きなところにやってもらいましょうと、そういうふうに農業構造改革を行っていく、規模を大きくして効率を高めてという方向に進んでいると思うんですね。その過程において今回、参議院選で農村の反乱があったわけですけれども、小規模農家切り捨てられたと、そういうふうに感じた、だから自民党は選挙で負けたんだと思います。  そして、規制緩和ですけれども、この規制緩和の最たるものが今交渉が進められているWTOであり、そしてFTAでありEPAであると。こうした世界の流れの中で、規制が外されていくかもしれない。特に、日本はオーストラリアとのFTA・EPA交渉に入りました。  ですから、私の質問は、まず、この大きいことはいいことだというその構造改革の考え方が基本にあって、農業の競争力も高めましょうということでこの担い手経営安定新法というのが生まれてきたのかどうか。そして、その裏にはやはり、例えばオーストラリアとのFTA交渉の中で、日本が関税を引き下げざるを得なくなるかもしれない、あるいは撤廃せざるを得なくなるかもしれない、そういう農業の自由化を見据えて日本の農業を強くしなければならないという、そういう発想で作られた法律なのかどうか、その辺り、背景について伺いたいと思います。大臣に伺いたいと思います。
  73. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 今政府が推進をしております農業政策、とりわけこの品目横断的経営安定対策などにつきまして、これは小泉改革の流れの中でできているんじゃないかと、こういうお話があったと思います。  実は、その前から、委員御承知かとも思いますけれども、旧農業基本法を改正をして新しい農業基本法を作らなきゃならないという議論がずっと十数年来行われてきたわけでございます。そういう論議の中から新しい農業基本法を作るという方向性が出まして、食料農業農村基本法という法律が制定されたわけでございます。  もちろん、小泉内閣におきましてもこの方向というものは進めていくという立場に立っているわけですけれども、実は、国会での論議を通じて決定を見ました食料農業農村基本法という新しい法律に沿ったものでございまして、委員が引用をされましたことは実はこの新しい農業基本法の二十一条に書いてあるんですよ。  ここで望ましい農業構造の確立をしなきゃいけないという項目を立てまして、二十一条は、国は、効率的、安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するということを農業政策の基本の柱として立てているわけでございまして、その基本政策に即して各種政策が行われております。  畜産あるいは果樹、野菜その他の諸作物についての対策もその方向に沿っていくわけですけれども、どうも土地利用型農業、とりわけ米の稲作経営についてはなかなか思うように効率的かつ安定的な農業経営を確立するための経営の体制強化ができないということがございまして、そこで新しく土地利用型農業について対策を講ずると、その中の対策として生み出されたものでございます。  その意味で、おっしゃられるような小泉構造改革そのものから出てきたというよりも、大きく改革を進めなきゃならないという、そういう路線の中から出てきたものと御理解をいただきたいと、このように思うのでございます。  時間が限られておられるでしょうから、もしいろいろとお話ございましたら更に詳細立ち入って御説明をしたいと思いますけれども、基本はそういうことでございます。
  74. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 私が先ほどの質問をいたしましたのは、例えばWTO、FTA、EPA等で農産物関税など国境措置が全面的に撤廃された場合にどういうことが起きるか、その農水省の試算というのがございまして、その場合に、食料自給率は当時四〇%から一二%に落ちるであろう、国内農業生産は約三兆六千億円減少するであろう、これは農業産出額の四二%に当たります。そして、約三百七十五万人の就業機会が失われるのではないか、こういう試算が前に出ているんですが、これに対して経済財政諮問会議のEPA・農業ワーキンググループが、この影響を農業の構造調整、構造改革によっていかに減らすかが政策の役割であると言っているんですね。ですから、こういったことがあったので、やはり集約的な農業に向かっているのではないかと、そういうふうに私は考えました。  次に、今回の参議院選挙でも感じたことですけれども、この集約営農に加わることのできない小規模農家不満は大変なものがございました。この人たちは、やはり切り捨てられたと感じたわけなんです。それで、それに対して民主党の今回の戸別所得補償法案というのは、この小規模農家を救ってあげましょうということで、切り捨てられた人たちをどう救いますかという発想の下に立って作られているものだと思うんですね。  それに対して、確かに予算一兆円の根拠はどこにあるかですとかいろいろな御指摘はありますけれども、政府の、自民党さんの答弁を聞いておりますと、小規模農家を救う方法として、別に戸別所得補償のこの法案でなくてもいいだろうと、ほかに方法があるはずだという発言がございますので、それであるならば、その小規模農家を救う方法として政府は今どのような方法をお考えなのでしょうか。これも大臣に伺いたいと思います。
  75. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) まず、このたびのというか、今年から実施に入っております品目横断的経営安定対策におきましても、小規模農家、いろんな形の小規模農家ってあるんですね。  多様化しておりますから、もう高齢で、年金をもらいながら生きがいとして農業をやっているという方もいらっしゃるし、かなり安定的な、県庁とか役場とかその他の企業にお勤めをしながら、なお時間的余裕があるから農業を、特に稲作については土曜、日曜だけでできるというような技術体系も経営組織もできていますから、それでやっているとか、いろんな人たちがおりますから、小規模農家ということを一概に言って、一概に全部をひっくくった対策というのはなかなか難しいんですけれども、少なくとも稲作、水田利用に関していえば、品目横断的経営安定対策についても、一つは、個別の農業者として、小規模であるけれども、なお将来の規模拡大を意識しながら農業に意欲的に取り組んでいるというような人たち、こういう人たち地域状況によって対象に加えていくという意味で、一般原則としては四ヘクタールという基準を設けておりますけれども、中山間地農業でありますとかあるいは多目的な複合経営をやっている場合でありますとか、そのような場合における規模の特例措置というのをかなりきめ細かく設けて、個別でも参加できる道を開いております。  もう一つは、集落営農でございます。集落営農組織に参加することによってそれぞれの営農組織内における役割分担を担いながら、規模の大きな経営の中で自分たち農業へのかかわりで所得確保していくと、そういう道はこの制度の中でも開いているわけでございます。  しかし、それ以外に小規模農家が例えば温室、花に特化していく、花の栽培をする、あるいは野菜作りに集中的にやるために小規模であるけれども野菜の生産をしていくとか、いろいろな対応がありまして、それはこの品目横断対策だけで対応するのではなくて、それぞれ作目別の生産対策対象として農業での維持、継続、発展が可能のような道を開いているということでございます。  なお、農業の持っております多面的な機能、いろいろな機能があるわけですけれども、それらの中で、特に地域づくりとしての地域の協力体制を確立するためには農業生産条件の整備が必要でありまして、それは、農地・水・環境保全対策ということで、農業経営規模の大小にかかわらずそれに参加をいただいて、その中で生産面における共同の対応策というのもメニューに入っておりまして、それらの共同農業経営、共同して農業経営を営む場合における助成策もその中に入っておりますから、そのような諸対策を講じているということでございます。
  76. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 大臣の答弁を伺った感想ですけれども、全体的には、小規模農家がやはり集約営農に参加できるその規模の要件を少し特例を出してあげるけれども参加していく道を推進していきますと、そういうふうに私には聞こえます。  ですから、それであるならば、今後、小規模農家というのはやはりなかなか存続するのは難しいのではないかと私は率直に今感じました。  最後の質問になりますけれども、では、そういう大型の農家が中心となった日本の農村社会というのがどういうものに将来なるであろうかと、そのことをよく表したエッセイが一つありますので御紹介をしたいと思います。  これは、出典は全国農業新聞の二〇〇七年十一月二日付けのものでございます。筆者は、エッセイスト・画家・ワイナリーオーナーの玉村豊男さんです。  この内容、要約をいたしますけれども、農家というのは今まで妻や息子など身内の人間が無償で働くことは暗黙の了解とされてきたけれども、最近は、その農村の慣習に対して、まあ古いということで、また女性の地位を認識させ、これを向上させ、また農家経営体として自立させるためにも一般の会社に近いシステムを採用してみましょうと。そういう試みがあって、つまり家族にも給料を出す、そういうスタイルの経営が生まれてきているということです。  そしてまた、若者、仕事として農業に取り組みたいと考える若い人たちの中には、一般の会社と同じように週末に休みが取れて、そして労働時間も定められた範囲内で収まるようなそういう条件を求める人もいます。ですから、株式会社が農業分野に進出してくることになれば、ますますこうした傾向は顕著になって、農業の仕事も普通の会社の仕事と何ら変わらないようになっていくかもしれないと示唆しています。  そうなると、どういう日本の田舎が出現するのでしょうか。ここで、例えなんですが、見渡す限りの広大な田畑が広がる中、コンピューターと大型機械を駆使して生産効率を上げる農業生産会社、サラリーマンのように労働時間や休日のシフトが管理され、休みの日には若い家族が会社の近くのしょうしゃな住宅で都会的な暮らしを楽しむ、これは欧米型の農村生活をモデルにした一つの美しい風景であるかもしれないけれども、何十年か後に日本の農村がどこもかしこもそんなふうになっているとしたら、これは違和感を覚えるのは私だけでしょうかと、そういう問題提起なんですね。  彼は、農業は日々の暮らしの中にあるもので、平日でも雨が降ったら休み、天気が良ければ日曜日も働くというのが農業の本質じゃないかと言っているわけなんですけれども、こういった将来の農村社会を想像してみたときに、この風景に大臣は違和感を覚えられますか、それが一つ目の質問。  そして、農業の今多面的な役割ということが言われておりますけれども、それについてどのようにお考えでしょうか。つい最近、岩永大臣は、ASEANと日中韓農林大臣会合で、多様な農業の共存が重要であるというふうにおっしゃっておりますので、これが多面的役割ということと同じような意味であるのか、その点も含めてお伺いしたいと思います。同じことを……(発言する者あり)そうですね、じゃ、大臣お願いいたします。
  77. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 初めにおっしゃられましたこのエッセイでございます。  私が子供のころ育った農村風景というのは、正に多分エッセイストが念頭に描いているような農村風景、農業状況であったと思います。私もその中でかなりの農作業に従事をした、そういう、苦しいけれどもそれなりに汗をかいて家族全体で経営を支えてきたという、そういう体験を懐かしく思い出しているわけですが。  やっぱり世の中の変化がずっと進んできますと、そういう家族だけで農業経営をやっていくということは家族関係においても難しくなってきていますし、また一方で、全体に所得が上がってきていますから、他産業所得との間に大きな格差が生じてきます。その他産業所得との格差を何で埋めるかと。農業経営だけで埋めようと思えば、相当の規模拡大をするか、あるいは今までと違った農業を、花でありますとかあるいは野菜の集約的な栽培でありますとか、かなり変えなければ、今までどおりではやっていけなくなる。あるいは、今までどおりでやっていこうと思うと、他産業に従事しながら、言わば兼業所得として、むしろ兼業所得の方が多くなって、農業所得部分がずっと割合を下げてくるという形で経営をするというようなことになるでありましょう。  技術の進歩が裏打ちになり、また所得拡大の必要性が高まるにつれまして、土地利用型農業につきましてはかなりの規模を想定をした経営転換していかざるを得ないと。ある種の、昔を思いながら、小鮒釣りしあの川というような、そういうイメージというのはなかなか難しくなってきていると私は思うんです。  これは日本だけではないというふうに思うんですけれども、特に日本のような複合的な経営で家族経営を基盤にしているところというのは、今までのままの経営ではもう維持できなくなってきているという認識がございまして、これはもう、昭和三十七年ですけれども、あのころで農業基本法というのを制定をいたしました。それでももう対応できなくなって、新しいまた農業基本法というのを制定をして農業の構造変化を促してきたということでありますから、思いとしては、そういう農業、昔の農村風景を描かれるような形の農業が懐かしいということはありますが、それをそのままもう維持していくことは困難になっているという認識を持っております。  多面的機能につきましては、WTOの中でもそれを大事に議論をしているのが言わば輸入を主たる、している国々でございます。農業は、ただ単に食料の供給のみならず、伝統とか文化とか、あるいは災害の防止だとか国土自身の望ましい景観の維持だとか、いろいろな役割を持っているんだから、そういう多面的機能ということも考えていかなきゃいけないということを我々は主張してきているわけですね。それなりの理解は得つつあると思っております。  その基礎として、それぞれの国が、これは輸入国に限りませんけれども、やはりそれぞれの国が国民に対して食料を供給すると同時に、農業が果たしている経済的、社会的、また伝統、文化を含めたそういう価値観を持っている農業が、様々な形の農業が共存できるということが大事だと。これはアジアの、先ほど副大臣出席をされています、アジアの国々はみんなそういう認識でいるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  78. 藤原良信

    ○藤原良信君 藤原良信でございます。質問をさせていただきたいと存じます。  このたびの農業者戸別補償法案につきましては、委員会審議を通じまして十二分に議論をし尽くされてきているように思います。重複することが多々出てまいりますけれども、私は大まかな項目で二点に絞りまして政府並びに発議者の御見解をお聞きをしていきたいと思っております。  一点は、これは私の政治信条でございますけれども、食料は安全保障であると、安全保障の重要な一角をこの食料が占めていると思っておりまして、国内の自給率をどう高めていくかということが大きなテーマであるということが一点。  それから、農政は産業政策地域政策の二本柱を基本としているんだということは大臣もこの間述べておりますけれども、私もそのとおりだと思いますけれども、その中で地域政策という分野について重点的にお尋ねをさせていただきたいと思います。  それの関連でございますけれども、このごろの出来事でございますけれども、各国がいろんな諸状況の中で輸出規制等をし始めてございます。これは高騰する国際食料価格を受けてのことだと思いますけれども、インド、ロシアなど六か国、米や小麦、乳製品の輸出規制、禁輸あるいは輸出税といった規制を導入しようとしておるんであります。この輸出規制につきましては、昭和四十八年の米国における大豆の輸出規制措置による我が国の大混乱を思い起こさせます。この事実関係について農水省はどのように把握をされているかということが一点。  それから、これとともに、WTO農業交渉における輸出禁止・制限等に関する議論についても、これについてもお尋ねをしたいと思いますが、WTO農業交渉で日本提案は二点ございました、主なもので。輸出補助金等の輸出奨励措置に対する規律の強化、二点目といたしまして輸出禁止それから制限措置の輸出税化等の規律の確立が必要であるというふうに日本提案では述べられております。これは理由があってのことでありますから、このことについてはここで申し上げませんが、したがいまして、現在のWTO交渉におきまして、輸出禁止・制限や輸出税化についてどのような議論が行われているんでありましょうか、政府参考人に簡潔にお願いいたします。あわせて大臣には、この大臣の所見もお尋ねをいたしますので、食料の安全保障をいかに確保すべきかという点で簡潔にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
  79. 佐藤正典

    政府参考人佐藤正典君) お答え申し上げます。  まず、農産物の輸出国における輸出規制につきましては、委員御指摘のとおり、不作による国内需給の逼迫等を原因といたしまして、例えばベトナムにおきましては米についての政府間契約を除く新規輸出契約の禁止とか、インドにおきましては小麦等についての輸出許可の停止、アルゼンチンにおきましては穀物や畜産物の輸出許可の停止といった措置が講じられております。このほか、ロシア、ウクライナ、セルビアといった国でも輸出規制措置が講じられているものと承知をしているところでございます。  それからもう一点でございますが、WTO農業交渉におきます輸出規制に関する議論でございます。  我が国平成十二年提出いたしました日本提案以来、輸出入国間の権利義務のバランスの回復と食料輸入国の食料安全保障の観点から、輸出禁止あるいは制限措置に関する規制強化を主張したところでございます。  現在の交渉のたたき台となっております農業交渉議長のモダリティー案では、これまでの議論を踏まえまして、既存の輸出禁止・制限措置につきまして、基本的に交渉妥結後一年以内に撤廃するという選択肢を含めまして、農産品の輸出禁止・制限を強化する内容が盛り込まれているところでございます。  交渉に当たりましては、引き続き、輸出、輸入国間のバランスの取れた貿易秩序の構築を目指しまして努力する考えでございます。
  80. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 輸出規制に関する各国の措置WTO農業交渉における議論を踏まえて、どのように食料安定供給確保していくかということでよろしゅうございますね。  もう今更申し上げるまでもありません。国民の生存にとって不可欠であります食料の安定的な供給を確保するということは国の基本的な責任であると、このように認識をいたしておりまして、そのためには、大きく言いまして三つの方向性を明らかにしているところであります。  一つは、農地担い手確保するなどによりまして、国内の食料供給力を確保向上をする、同時に主要穀物についての備蓄を図っていくと。二つ目は、食料の輸出国との関係を安定的にいたしまして、貿易関係を円滑にしていく、そういう体制をつくり上げていくということであります。三つ目は、国内外の食料需給に対する情報の収集、分析をすると、こういうことで対応をしているところでございます。  このような基本的な考え方を踏まえまして、WTO農業交渉について、我が国は多様な農業の共存を基本理念としまして、輸出国と輸入国とのバランスの取れた貿易ルールを確立しなきゃいけないということを繰り返し主張をいたしておりまして、交渉グループの中ではG10、スイスなど食料の輸入をいたしておりますその輸入国のグループの代表としても、このような輸出国、輸入国のバランスの取れた貿易ルールの確立という視点から、いろんな意見を出しているわけであります。  今後とも、国内生産の増大を図っていくことを基本としながら、安定的な輸入の確保や適切な備蓄の運営に努めまして、また国際交渉にも適切に対応することによりまして、我が国食料安定供給確保を図ってまいりたい、このように考えております。
  81. 藤原良信

    ○藤原良信君 発議者にお尋ねをいたしますけれども、ただいまの流れの中で、農業者戸別所得法案の目的におきまして、「将来において世界的に食料の供給が不足する事態が予想され、」と明記をされておりまして、食料安全保障を念頭に置いた法案となっていると認識をいたしております。  発議者といたしまして、各国の輸出規制の動きに対してどのような認識をお持ちであるのかをまずお尋ねをいたしたいと思いますし、あわせて、時間の関係もありますから、この法案の支援内容と食料自給率向上への寄与についてもお尋ねをしたいと思います。併せてよろしくお願いを申し上げたいと思います。
  82. 平野達男

    平野達男君 まず、世界的な食料不足が懸念されるんではないか、そういう中で、各国、食料輸出国とされる国々が輸出の規制を、措置をとり始めているということだというふうに思っています。  この食料不足については需要と供給の両方から見る必要があると思っています。  需要につきましては、もう御承知のように日本は人口減少社会に入っていますけれども、世界的にはまだまだ人口が増えていく、当然その観点から食料の需要は伸びていくということがございます。  そしてもう一つは、御承知のように経済の発展に伴って食生活が変わっていく。例えば肉一つ取ってみても、鶏から豚、豚から牛というふうに消費が増えてまいりますと、それに伴っての穀物需要は飛躍的に増えてまいります。そういう経済の発展段階に従って穀物の需要が増えていくということがあります。  それから、最近、特に注目を浴びているのはアメリカでの動きでありまして、御承知のようにこの委員会でも議論が出ましたけれども、今までにない需要が出てきた。それは主要作物、いわゆる作物燃料作物に回すということでありまして、現にアメリカではトウモロコシをエタノール生産に回しながら、その結果としてトウモロコシ価格の高騰、関連する大豆の価格の高騰などが起こっているということです。  一方で、供給面はどうかということですけれども、これも今様々な問題が指摘されているわけです。例えば水問題。水というのは農業の生産の要素の重要な要素でありますけれども、これはもう御承知のように、例えばアメリカの中西部、特にミシシッピ川から西側の地域というのはオガララ地下水盆という、オガララ・アクアファーという、地下水に依存した農業生産をやっていますが、これはもう化石水ですから、これが今、地下水位がどんどん低下しているということはもうここ二十年ぐらい言われてきたとおりであります。  あとは、アラル海が水のくみ上げ過ぎで消えつつあるとか、そういった水資源の争奪という問題が起きていますし、それから、農地のいろんな、オーバーカルティべーションと言うんですけれども、要するに農地が耐え得る以上の作付けをするために、その結果として塩基集積の問題でありますとか、これは排水路の、排水の不備の問題とかいろいろありまして、そういったいろんな不確定な要素、そういった要素が出てきていまして、この食料不足の危機というんでしょうか、そのファクターというのは非常に増してきているんではないかというふうに考えております。  以下、この法律と食料自給率向上については舟山委員から答えていただきたいと思います。
  83. 舟山康江

    舟山康江君 まず支援内容ですけれども、基本理念としては、やはり国民への食料供給に寄与している現在の販売農家ができるだけ農業経営を継続できるようにするためにはどうしたらいいのか。そのような観点で、やはり再生産可能な所得をきちんと補償してあげましょうというのが基本であります。  そのために、生産数量目標に従って主要農産物を生産する販売農業者に対しまして、ここで言う主要農産物というのは、法律の中での例示は米、麦、大豆でありますけれども、その他政令に定める。これも法律の中で申しておりますけれども、生産費が販売価格を上回るようなものについて弾力的に政令で対応するために、例示として、法律の中では例示としてはその三つですけれども、政令の方でそれを定めていくというふうになっておりますけれども、そういった販売農業者に対しまして、標準的な生産費と標準的な販売価格の差額を基本として、その時々の需給の状況に応じて定めた金額を直接農業者に補てんするといった、こういうようなやり方によりまして、今の販売に供している農業者ができるだけ生産を続けていっていただく、それによって自給率向上に貢献してもらうといったような基本的な考え方であります。  今、平野発議者からもお話し申し上げましたけれども、自給率向上のためには、当然供給面だけではなくて消費面というのも非常に大きな影響を与えるわけでありますけれども、この法案ではまずは供給体制の強化ということを考えております。  まず、自給率の今現在低いような品目に関しましては、そういったものにできるだけ生産をシフトしていただけるような、そういった加算措置を講じながら生産を刺激していく、供給体制の底上げを図るといったようなことを考えておりまして、具体的には麦とか大豆、それに関しては非常に今自給率が低い状況にありますので、こういった自給率の低い品目に対して生産を刺激するような加算措置を考えております。それによって底上げを図っていく、これで自給率を上げていこうというようなことであります。
  84. 藤原良信

    ○藤原良信君 そこでですけれども、食料自給率向上対策につきまして政府の方にもお尋ねいたしますけれども、政府参考人とそれから大臣でございます。  一日のこの委員会大臣からは、担い手経営安定新法は米以外の土地利用型農業についての生産振興を図ることをねらいとしたものであると、自給率向上を直接の目的とした法案ではないという説明をいただきました。食料農業農村基本法第十五条二項におきまして、食料農業農村基本計画に食料自給率目標を定めることが規定されておりますのは御案内のとおりでございます。現在、食料自給率目標を具体的に進めるためのどんな手法を用いて取り組まれようとしておるのか、これは政府参考人の方へお尋ねをいたしたいと思います。  そして、併せまして大臣の方にお尋ねいたしますけれども、担い手法、すなわち品目横断的経営安定対策交付金とこの食料自給率向上の関係でございますけれども、食料自給率向上させるために私は穀物の生産量を増やすことが必要であり、効果的であると思います。  なぜならば、米の自給率はもう既に九五%、主食用で一〇〇%でございまして、国内で増産しても自給率のこれ以上の向上は余り貢献がありません。したがって、自給率の低い麦、大豆、菜種あるいは飼料作物などを作付けることが効果的であり、政策誘導をする必要があると思うのであります。  平成十八年までは麦作経営安定資金や大豆の交付金などで個別の作物ごとの生産奨励が行われてきたのであります。しかしながら、品目横断的経営安定対策の導入によりまして、農家への支援は過去の実績に基づく固定払いが中心となりました。必ずしも過去実績の算定根拠となった作物を作付ける必要がありません。麦、大豆を生産すればいわゆる黄色ゲタが支払われますが、これを不要と考えれば作付け作物に制限はないということになります。政策誘導の働く余地が非常に少なくなるんではないかと思うのであります。  麦や大豆の生産営農を確実に誘導しなければ自給率向上は私は難しいと思うのでありますが、この点についての御所見を大臣にお尋ねいたします。併せてお願いいたします。  時間があとないので、私の持分がなくなりましたのでこれで、大臣お聞きしてからもう一点ぐらいで終わりますから、よろしくお願いいたします。
  85. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 基本的な重要な事項を三点も御質問になりまして、これを簡潔にと、こう申されましても甚だ当惑をいたしておりますが、しかしこれ大事なことですから、私の方としてはきちっとした答弁をさせていただきたいと思います。具体的に食料自給率をどう向上させていくかというのがポイントでございます。  委員御承知のように、食料農業農村基本計画におきましては、消費面、生産面での課題を示しながらも、食料自給率向上については十年後の平成二十七年には四五%を目標として設定をしているわけでございます。このために、現行基本計画に基づきまして、何としても自給率のというふうになりますと、消費面が大事であります。  消費面では、食事バランスガイドの普及活用などによって分かりやすく実践的な食育を進めるということでございます。国内生産の可能なものにできるだけ国内の消費需要が向くような形で、日本型の食生活を中心に推進していく必要があると考えているわけであります。生産面では、食品産業と農業の連携を強化するなど、需要に応じた生産を推進をしてきているところでございます。  しかし、委員も御承知のとおり、十八年度のカロリーベースの食料自給率は三九%に低下をするというような状況になっておりますので、私どもも危機感を持ってこの自給率問題に取り組む必要があると考えているわけでございまして、平成二十年度予算も視野に入れましてこれまでの取組を点検、検証しながら施策の推進に最大限の努力を図っていくところでありますが、特に自給率に影響の大きい米、米は委員おっしゃられるように過剰のベースにありますから、これはむしろ消費の拡大。それから、飼料の作物、油類、油脂類です、それから野菜といったような重点品目については集中的に消費、生産の両面で取組を強化してまいっているわけでありまして、具体的には、自給率に関する戦略的広報の実施とか、米の消費の拡大、飼料自給率向上、油脂類、油類でありますが、その過剰摂取の抑制、また野菜の生産の拡大、食育の推進というもの、六つの取組を柱立ていたしまして、関係者と連携を図りながらこれを進めているところであります。  また、穀物として麦、大豆などへの生産の誘導が当然考えられるわけでございまして、品目横断経営安定対策はあたかも自給率と無関係であるかのような御認識があるとすれば、それは違うのでございまして、麦とか大豆への生産は、従来行われました品目別の生産対策をこの品目横断対策の中に統合をいたしまして、米、麦、大豆などの土地利用型農業対象としたこの品目横断的経営安定対策を推進するということにいたしているわけでございまして、この中で、麦、大豆を対象とすると同時に、他の作物も含めまして、産地づくり交付金という形で幅広くいろんな作物対象にして国内の生産の増大を図るということを可能にしているものでございます。  以上、申し上げました。
  86. 藤原良信

    ○藤原良信君 ただいま御答弁をいただきましたけれども、大臣の御答弁に対しまた御質問をしたかったわけでございますけれども、改めまして次の機会にさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  ありがとうございました。以上です。
  87. 金子恵美

    ○金子恵美君 民主党の金子恵美でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  今日の日本農業新聞の一面、集落営農四割が赤字、米価の下落で打撃という記事がございます。  米の緊急対策についてまず質問させていただきますが、政府はこの米の緊急対策として、米三十四万トンを政府備蓄米として年内に買い入れ、そして販売を当面は原則抑制するということとして、また、全農が自らの十八年度ウルチ米の販売残十万トンを飼料処理することに政府がその費用の半分を負担するということを決定しております。  そこで、発議者にお伺いいたしますが、この米緊急対策についてどのようなお考えをお持ちでしょうか、所見をお伺いいたします。
  88. 平野達男

    平野達男君 先般、政府の方から米緊急対策が打ち出されたことについては、今委員からお話があったとおりです。  この柱は二つありまして、一つは、備蓄百万トンまで積み上げましょうということで、今たまたま米価下落背景にあるのが米の過剰であるということがありまして、三十四万トンをまず百万トンまで積もうということが一つの柱であったと思います。これについては、この間も申し上げましたけれども、備蓄の目標水準までにすき間があったということでございますから、これに対しては特にああだこうだということを異議を挟むつもりはありません。  もう一つの柱は、全農が十万トン飼料に、主食用の米を飼料に振り向けるということでございまして、それに伴うコストを政府が半分負担するということですね。これはどう見ても、需給をタイトにして価格を浮揚するという政策だと思います。私に言わせれば、PKOという、プライス・キーピング・オペレーションだということなんでありますが、今のこの状態の中では、多分、もうこれ、ここまで米価が落ちてきたらこういう措置をとらざるを得ないという意味での困った、困ったというか、そこまで追い詰められたという感じの措置なのかもしれません。  私は、この措置につきましては二つの点を指摘しておきたいと思います。  一つは、この措置によって、多分、価格の浮揚は図られると思います。しかし、その結果によって、生産調整に参加している人と参加していない人、その効果はひとしく及ぶということです。しかも、二つ目として、その結果として、来年の需給調整あるいはこれからの需給調整、どうするんだろうか。需給調整に参加しても参加しなくてもこういう価格の浮揚策でメリットが被るということでありますと、需給調整が一遍に緩んでくるのではないかという危惧を持つわけでありまして、この措置は、多分短期的な措置としては効果が相当出てくるんだろうと思います。多分価格は上がると思いますし、既にその兆候は出ている。しかし、その一方で大変な副作用をもたらす措置であって、まあ劇薬といえば劇薬だと思います。  こういう措置を出す以上は、来年からはこの米価下落対策、需給調整をどうやるんだということをしっかりとした対策を示してセットでやらないと、このままでは、これからの来年以降の米作り、市場に、それから農家に大変間違ったメッセージを発することになるというふうに思っております。
  89. 金子恵美

    ○金子恵美君 ありがとうございました。  ただいま、今回の対策につきまして問題点があるということを発議者の方からございましたけれども、まず、そこで大臣にお伺いします。  ただいまの発議者の方からの今回の米緊急対策についての意見、これについてどのように思われますでしょうか。  そしてまた、今回の全農の十万トン飼料処理のような価格浮揚対策はどのような基準で発動されるべきでしょうか。今後また米価が下落した場合、このような浮揚価格対策を発動させるに当たり、基準が必要であるということも今発議者の方からも示唆があったというふうにも思いますけれども、いかがでしょうか。
  90. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) この十九年産米の米価対策については、当委員会においてもしばしば御意見をいただいてまいったわけでありまして、認識としては、このような異常な事態は米作農家に大きな打撃を与えるおそれがあると、特に経営規模の大きい農業者を直撃をするというようなことでございまして、その意味では有効な対策を緊急に講じなければならない、こういう認識の下に取られたものでございまして、その意味で、今回の米緊急対策は本年の特殊な状況にかんがみて決定をしたものでございまして、発議者がお話ございましたけれども、御指摘がありましたように、明確な発動基準を設けて対応するというような性格の対策の内容ではないというふうに思っております。  今回の対策を振り返ってもう一度簡単に御説明をいたしますと、先ほどからお話ありましたように、政府の備蓄米でございますが、百万トン程度という適正水準まではこれを積み増すということにして三十四万トンを年内に買い入れまして、市場への放出は当面原則として抑制をしていくということでございます。  そのほか、委員も御指摘ございましたように、十八年産で全農が抱えておりますウルチ米の販売の残が十万トン相当ございます。これを放置しますとそれが市場に出ていくというふうに考えられるわけでありますから、十万トン相当量は非主食用、具体的にはえさ用に処理をしてもらうと。このことについては全農もこのことを理解をいたしておりまして、やろうじゃないかということになってまいりましたので、政府はこれに対して一部助成を行う。過去においてもこのような形で需給の調整をしたことにより効果を上げたことがございます。今回も異常の事態としてこれをしっかりやってもらおうということでございます。  余り議論をされておりませんけれども、問題は来年、二十年産の需給でございます。二十年産につきましては、この生産調整をきちっとしないと、また同じような形で供給過剰というものが生じてきますと価格への影響が今年と同じように出てくるわけでございますので、この二十年産米につきましては、私どもはこの生産調整の目標は、主食用の販売数量と併せて作付面積につきましても二本立てとして都道府県に示し、そして都道府県間の調整が可能なようなスキームをつくらなければいけないというふうに考えておりまして、そのような方向検討をいたしております。また、目標の配分、作付け、収穫などの各段階で、都道府県、地域における取組状況をもっとその時点時点で把握をして、強力に指導をできるような調整体制をつくらなければいけないというふうに決めております。また、生産調整を実施しない人に対する強力な働き掛け、取組結果に応じた産地づくり交付金などによる配分格差というようなものも考えて、積極的にこれに協力をしている地域につきましては産地づくり交付金の面で配慮をするということも決めております。  また、非主食用の米の生産につきましては、これは今も可能ではあるんですけれども、その取扱方が非常に複雑であり、また明確になっていなかったということもありますので、これを生産調整にカウントすると。えさ米とか、米をエタノール化する場合のエタノール用の米でありますといったようなことでありますが、これらを生産調整にカウントする仕組みを構築をしよう。  また、作況とか過剰作付けによる生産オーバー分を生産者団体が主体的に処理する出口の対策、今後またこういうことが起こってきたときには生産者団体が主体的にこれを処理をするというような考え方を仕組みとしてビルトインをしていくというようなことを決めているわけでございます。  そのほか、農協系統、特に全農による米価安定のための取組、いろいろな各種の取組を強化してもらう、生産者の信頼できる品質表示や適正流通を確保する、そして米の消費拡大をする。  これらを全部取り込んだのが言わば今度の米の緊急対策でありまして、それら総合的な対策でありますから、何かこんなことになれば発動するといったような基準を画一的、一義的に決めることはないのでございます。
  91. 金子恵美

    ○金子恵美君 必要のない部分もお伺いしたような気がしますけれども、私は基準をどうするのかということだけを聞いているのであって、その基準がないことによって、生産調整、あるいは需給調整と申し上げた方がいいんですけれども、それにどのように影響を与えているかということが大きなポイントでございまして、その内容云々と来年度からの生産調整について聞いていたわけではございません。  さて、発議者にお伺いいたしますけれども、これまでの政策と比較をしまして、農業者戸別所得補償法案、これはどのように効果的に米の需給調整を進めることができるのでしょうか、お伺いさせていただきます。
  92. 平野達男

    平野達男君 米価の下落の防止ということについては何といってもやっぱり需給調整が基本になるというのは、これは今後とも変わらないんだろうと思います。  しかし、その需給調整は、ちょっと今後ろの方にお伺いしたら、三十年間生産調整やってきているわけです。生産調整をやってきた結果、なおかつこれだけうまくいかないということに対してのまず総括がしっかりされなければならないんだろうと思います。今の大臣のお話を聞いていても、いろいろな小さな、各いろんな政策がちりばめられているように見えましたけれども、今までの需給調整と何が違うのか、来年から需給調整は大きく何が変わるのか、これはなかなか見えてこないというのがやっぱり私は大きな問題だと思います。  私どもは、ここの需給調整を進める上での最大の問題点は、参加する人としない人に対してのきちっとした差別化、参加する人にはそれなりのメリットが与えられるような、そういう仕組みが大事だというふうに思っています。かつまた、過剰生産が起こった場合には、結果として過剰生産になった場合には価格下落が起きるわけでありますから、その価格下落については需給調整に参加しない人が一義的にそのデメリットを被るというような仕組みが大事だと思っていまして、実はこの考え方は今までの生産調整、需給調整の考え方にはなかった措置であります。  私どもは、今回の農業者戸別所得補償法案で用意いたしましたのは、計画に沿って米を作る農家に一定の所得補償をしましょうということでございまして、計画にのっとってということはいわゆる需給調整に参加するということです。参加した農家については、価格下落に対してのセーフティーネットが用意されていますということで、私どもの考え方は、米価は市場価格に任せればいい、しかしその結果として、実は過剰以外に、私もこの委員会で何回も申し述べましたけれども、構造的に米価はやっぱり下落する方向にあるんではないかというふうに見る必要があると思っておりまして、そのためのセーフティーネットを需給調整に参加する農家にのみ限定して用意をするということは、この需給調整をうまく進める上にも非常に効果的ではないか。少なくとも今までの需給調整のやり方とは大きく違いますし、少なくとも今までの需給調整よりは効果があるのではないかというふうに思っております。  以上です。
  93. 金子恵美

    ○金子恵美君 時間になりましたので、農業者所得補償法案こそが農村そして我が国農業を本当に救うのだというようなことを確信いたしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございます。
  94. 牧野たかお

    牧野たかお君 私は、この七月の参議院選挙で静岡県選挙区から当選いたしました自由民主党牧野たかおでございます。この四月まで県会議員を十二年、その前は、今日はいらっしゃいませんけれども澤議員、そして米長議員がおられたフジテレビの系列のテレビ局の記者として静岡県の農業にかかわらせていただきました。また、私の家は代々農林業でございまして、父を早く亡くしたことで私も農家資格を持っております。その立場から今回の法案について質問をさせていただきたいと思います。  さて、まず、参議院選挙のときの民主党農家に対する所得補償の公約と、現在審議されております農業者戸別所得補償法案の違いについてであります。このことについては、先日、野村議員、また佐藤議員も質問されましたが、私は確認の意味を含めて再度質問をさせていただきます。  参議院選挙のとき、民主党は、政府与党農業政策は大規模農家だけが恩恵を受け、小規模農家高齢者農家切り捨てていると主張し、一兆円の戸別所得補償制度の創設を訴えたと思います。佐藤議員もお使いになりましたが、くどいといえばくどいかもしれませんけれども、もう一度使わさせていただきます。(資料提示)  このチラシとマニフェストを見ていただきたいと思いますが、マニフェストの中では、三つの約束のうち三つ目、「農業の元気で、地域を再生。農業の「戸別所得補償制度」を創設します。」と掲げておりますけれども、そのマニフェストの中には農産物を特定する文言は一言も書かれておりません。そして、これを、チラシ拡大したものでございますけれども、すべての販売農家という言葉がこことここにわざわざ赤い字で強調してあります。ここの中にも、対象作物、ここですけれども、ここには米、小麦、大豆、そういうふうに書いてありますけれども、その下の二番目のところに、地域農業振興に欠かせない作物と書かれております。これを見た全国の農家所得補償をされる範囲をどう見たと思いますか。  私が選出されました静岡県を例に取りますと、農業産出額平成十七年で二千五百十六億円、全国十二位です。この内容は、一番がお茶で六百五十二億、二番が野菜で六百三十三億、三番がミカン、イチゴ、メロンなどの果物で二百七十六億、四番目が米で二百二十五億円となっております。静岡県というのは、県全体では農業県でありますけれども、お米だけ見た場合は自給率四〇%の消費県です。静岡県でいうならば、販売農家ということを指す言葉は、米以外の農作物を作っている農家が産出額のベースで考えた場合九〇%以上になります。こうした農家民主党の公約をどう受け取ったかといいますと、当然のことながら、自分たち、米以外のものを作っている、お茶や野菜を作っている農家も果物を作っている農家も、みんな自分たち対象になるというふうに思ったと私は思っております。現に、私も県内を回ったときにそうした声を多く聞きました。同じことが多分、全国のお米以外を作っている農家方々にも言えるんじゃないかと思います。  このように公約と法案では対象農家が私は変わってしまったというふうに受け取っておりますけれども、実際にこれは変わったと思われているのか、変わっていないと思われているのか、まずそのことをお聞きしたいと思います。
  95. 平野達男

    平野達男君 私どものいわゆるマニフェストには、「原則として全ての販売農家戸別所得補償を実施します。」という規定をしていまして、「原則として」という言葉を掛けております。そして、今回の法律の中で具体的な中身を示したということです。  なお、このリーフレットにつきましては、初日からずっと様々な形で取り上げられまして、いろいろな見方、評価があるということについては重々承知しております。
  96. 牧野たかお

    牧野たかお君 平野議員の御答弁は私も何回も伺っておりますんで、平野議員のお気持ちとこのマニフェストのチラシを作った方たちとはちょっと多分違うのかなというふうに私は受け止めておりますが、そうであったとしても、私は、政党で公党である以上、それを公約としてうたったことは私は大きな、もしこの法案との中身が違うというならば大きな私は問題があると思います。  次に行きますけれども、野菜やお茶などのお米以外の農産物の販売額が要するに生産費を下回らない、前の要するに説明の中では政令で定めるということで、ある意味では米、小麦、大豆以外のものも理論上は考えられるというようなお答えだったんですが、それは今でも同じでしょうか。
  97. 平野達男

    平野達男君 ええ、変わっておりません。
  98. 牧野たかお

    牧野たかお君 もしそのことをお考えだという場合ですと、私は、お米とか小麦とか大豆というのは管理された農産物市場価格だけじゃなくて、要は行政がかかわってきたり農協がかかわってきたりということで、生産費も、そしてまた販売額も把握ができると思うんですが、お茶のことを一つ例に取りますと、非常にその流通経路が複雑で、要は販売の標準額単価も生産の単価も私は把握するのは非常に難しいと思うんですよ。だから、実際には米、小麦、大豆にしたというのは、ほかの農産物はそういう把握ができないから外したんじゃないかと勝手に推測をしておりますけれども、事実上、そういうことなんでしょうか。
  99. 平野達男

    平野達男君 例えば、米についても生産費調査というのはこれは政府が出していまして、これはやっぱり信頼するに値するというか、信頼するしかないデータだと思っています。  私どもは、今回は、それに対しての市場価格、これを何にするかということについてはこの委員会で私は何回も庭先販売価格だというふうに言いました。要するに、農家が直接米を売ったときにどれだけ、一俵当たりどれだけのお金が入るかということなんですが、このデータを何ぼ探しても出てこない。これは不思議なんですね。私はこれびっくりしました。もっとひどいのは、農家に聞いても、大きめの農家は別かもしれませんが、いわゆる高齢者方々に話聞くと、一俵どれだけ、米売るとどれだけ手元に入りますか、前渡金は一万一千円だったな、あと精算されているんだけど、どうなっているのかな、分からないと言うんです。それは農協に通帳を預けているから行き先が分からないんですよ。こういう事態があるというのは事実なんです。だから、そういうことに対して、じゃそういうデータをしっかり把握、いかにして把握するか。米ですらこういう状況だから、多分いろいろ問題があると思います。  ただ、あとはこれをどこまで、精度をどこまで追い詰めるか。あるいは一定のところで一定のモデル計算をして庭先の販売価格を決めるとか、いろんなやり方はあるんだろうと思っております。そういった実際のデータ、それからそのデータを追求するに当たってのコスト、そういったものを考えながら、その差額の根拠となるようなモデル作りなりデータを作っていくんではないかというふうに考えております。
  100. 牧野たかお

    牧野たかお君 何回も繰り返しになりますけれども、先ほど冒頭の質問で申し上げたみたいに、私は、この法案自体は事実上は米を作る農家、麦を作る農家、そして大豆を作る農家に限られてしまうと思うんですけれども、何回も御答弁の中で、要するに、赤字でも土地を荒らしてはいけないと思って、犠牲を払ってもその土地を守っている高齢者や小規模な米農家のお話が何度も平野議員のお話の中で出てきますけれども、私の身の回りでは、そういうのは米農家ばっかりじゃなくてすべての農家の中でそういう方が一杯いるというふうに私は思っております。それも自分のところの話ですけれども、やっぱりお茶を作るにしても野菜を作るにしても、だんだん手作業では肉体が、体力が衰えてきますので、赤字覚悟で機械を購入して土地を守っているお年寄りも何軒も私のところにもあります。本当に日本の農業を私は下支えをしている大切な農家だと思っておりますけれども。  私のところで、川根本町という、ちょっと自分のところで恐縮ですけれども、人口一万人ぐらい、一万人弱ですけれども、高齢化率が四〇%の小ちゃな町があります。そこは山間部ですので、実は米の販売農家は一軒もありません。もちろん自家消費しているところはありますが、少なくとも売っている農家は一軒もありません。ですので、そういうところでは、幾らお米を作りたくても、平らな土地がありませんから米を作れないんですよね。だから、そういう方たちを私はある意味では、土地を守るための大切な農家とおっしゃるならば、そういう方たち対象にしないのはある意味ではちょっとおかしいかなと思っております。  選挙のときのことを何回も言って恐縮なんですが、その方たちも実は民主党が唱えた公約というのは自分たち対象になるとそう思って、私が選挙のときのことを申し上げますと、隣の山田さんには申し訳ないんですが、選挙区は地元ですから私を応援してやると、ただ比例区は自分たちのことを考えてくれる民主党を支援すると、農村部でありながらそういうことを何人にも言われました。  ですので、こうした方たちの中には、おじいさん、おばあさんだけじゃなくて、本当に赤字覚悟で農業経営をされている方も一杯いらっしゃいます。皆さんは、これまで農村維持とか環境保全などの農業の多面的な機能の確保を目的に挙げていらっしゃいますけれども、こういう山間部の、米農家ではない、本当に厳しい条件の中で必死に農地を守っている、そういう方たちを事実上対象から外したわけでありますけれども、このことをどういうふうに思っていらっしゃいますか。
  101. 平野達男

    平野達男君 いずれ法律の枠組みについては、これは何回も申し上げたとおりですけれども、標準的な生産費と標準的な販売価格との差額を基本とした交付金ということで、その尺度をやっぱり維持するのは原則だと思っています。  それで、今の牧野委員のお話にあった、いわゆる条件不利地域というような地域については、多分今の中山間地域直接支払制度はそれがそのまま適用できる場合が多いのではないかというふうに思っていまして、もしそういった標準的な生産費と販売価格に差がないような作物を栽培されている場合には、今回のいわゆる交付金というのは対象になりませんけれども、条件不利地域の今の仕組みそのものは対象になる場合もあると思います。  いずれそうした地域の、こういった言葉は妥当かどうか分かりませんけれども、限界集落という言葉が出ていますけれども、集落の中で一生懸命土地を守って農業を守っている方々にどういう支援をするかというのは、この法律の中でもし対応できない部分があるとすれば、これはもう本当に、いわゆる与野党を超えて与党さんも我々も、これ不足の部分については考えていく部分ではないかというふうに思っています。
  102. 牧野たかお

    牧野たかお君 おっしゃる趣旨は分かりますが、これは後ほど申し上げますけれども、やっぱり公約として広く世間に示した内容が法案とは違うということは、私はかなり問題としては残ると思います。それは最後の方に申し上げますけれども。  この法案の名称なんですけれども、そもそも所得補償の所得という意味なんですが、これは私だけじゃないと思いますけれども、収入という言葉と同義語で使われる場合もありますけれども、一般的には利益という意味として受け取る方の方が私は多いと思います。私自身もそう思いましたし、私が話をした農家もそうでありました。ほとんどの農家が、これは法案というよりも選挙時の話ですけれども、ほとんどの農家農業を営んで農地を守ることの代償として交付金を受け取れるというふうに私は認識したんじゃないかなと思います。  それで、何回も御説明があるみたいに、販売額が生産額を下回った場合、それをその差額として支払うというふうに書いてありますけれども、これは販売額が生産費を下回った場合というのはこれは利益じゃなくて、要は言葉で言うと利益が出ない、ちょうどゼロのところに持っていくことになりますよね。ですので、私は所得という言葉じゃなくて、というのは適当な言葉じゃなくて、収入ならまだ分かりますけれども、所得の補償という言葉はちょっとこの法案の中身とは当てはまらないんじゃないかと私は思いますけれども、いかがでしょう。
  103. 平野達男

    平野達男君 私ども所得という言葉を使ったのは、労賃も物財費も含めて投入したことに対して市場価格がどういう値段で形成されるかということから考えて、本来であればその労賃と、少なくとも労賃と物財費は賄われるような値段で価格が形成されることが望ましいんだろうと思います。そして、その労賃と物財費の部分が本来でいうところの受け取る額の総売上げといいますか、所得といいますか、そういう形で言葉でとらえて、その差額が出た場合に本来受け取るべき収入が、収入と正におっしゃいましたけれども、収入の部分が不足していると、そこの部分を補てんするということです。  そして、厳密な意味所得だとかそういう概念でとらえますと、いわゆる所得という概念とは違うという御指摘は多分出てくるかと思います。しかし、今私どもが言っているのは、本来受け取るべき販売総収入、販売額に対して不足が起こっている、そこの部分を補てんすることによって結局はやっぱり所得を補償することになるんだという考え方でこの法律の名称を考えているということです。
  104. 牧野たかお

    牧野たかお君 それもおっしゃる意味は分かりますけれども、要は平野議員にしても、こういう農業問題にお詳しい方、また、要は農業の中でいえば農業所得というのは今おっしゃったみたいにそういう部分も入ってくるのかもしれませんけれども、やはり法案として、法律として使う以上、私は、農業者の中で使われている用語だけじゃなくて、やはり世間一般的な中での言葉として使われた方がいいんじゃないかなというふうに思います。  それと、これちょっと直接的に今のお話とは違うんですが、何回も販売額と生産費の差額とおっしゃっていますけれども、それ条文の中に第四条第二項で書かれておりますけれども、これも言葉の文章で言うと、要は標準的な販売価格と標準的な生産費の差額としか書かれてないものですから、うがったことを言いますと、差額だから逆の場合でもこれ適用されちゃうんじゃないですか。要するに、下回ったという言葉を一切使われていないから、しかも順番で読んでいくと販売額とその生産費の差額と書いてあるから、条文とするとちょっと言葉が適切じゃないんじゃないかと思いますけれども。
  105. 平野達男

    平野達男君 いろいろ御指摘いただいておりますが、選挙中に誤ったメッセージを送っているかもしれないとか、そういった御指摘をいただいておりますが、いずれ、今回私どもがこの法案で示した姿がマニフェストで言ったところの戸別所得補償の考え方でありまして、これからキャラバン隊を張って全国に一斉にこの法案の概要を説明してまいります。  その中で、もし、今いろんな御指摘いただきました、そういったメッセージで取られているということについては、きちっと御説明をして、そこのそごはないようにやっていきたいというふうに思っています。
  106. 牧野たかお

    牧野たかお君 しつこいと言われるかもしれませんけれども、もう一つ法案の名称で言いますと、農業者という言葉が頭に使われておりますけれども、再三繰り返しておりますが、農業者というとすべての私は農業者対象になる、そういうふうに受け取られると思います。仮に、販売農家としても農産物を特定しているとは受け取れませんので、この法案の中身では事実上、米、麦、大豆の生産農家に限られておりますので、この農業者という言葉も私は適当ではない、適切ではないと思いますが、いかがでしょう。
  107. 平野達男

    平野達男君 御意見としてよく承っておきたいと思います。
  108. 牧野たかお

    牧野たかお君 それでは次に、これも何回も出ている話なんですけれども、対策費用一兆円についてお伺いしたいと思いますけれども。  これまでの説明、答弁の中では、平野議員は一兆円というのは宣言であり、枠であるというふうにおっしゃっておりますけれども、それも精神論として私も分かるんですけれども、そもそもその対策費用がしっかり積算できていないのに法案の中にこういう具体的な額を入れるということは、法律を作る、法案としては異例ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  109. 平野達男

    平野達男君 今回の場合は実施法でありまして、普通の、例えば品目横断にしても先般の政府担い手法案にしても、これは予算関連法案ですから予算とセットで多分法律も出されたと思います。あっ、あれは逆、担い手は先に法律走ったかな、順番どうだったですかね。通例では、いずれにせよ法律の段階では、詳細な単価についてはその段階では普通は公にしませんから、それで単価が決まっていない以上、予算のバックとかなんか多分できないと思います。  今回の場合も、何回も御答弁申し上げましたけれども、米の交付水準をどのようにするか、あるいは麦、大豆、そもそも最終作物をどこまで限定するか、そういったことについてはこれから法案が通った段階でぎっちり詰めていくという課題として、とりあえず先送りされております。  したがいまして、今のこの現状の段階では、かくかくしかじかで、米についてはこれ幾ら、麦に対してはこれ幾らというようなバックは作れないということなんです。そしてまた、いろいろな法案の提出の今までの手順としては、そういう手順を取ってきて、それ自体はおかしいことではないというふうに思っています。  じゃ、しからば一兆というのは何かということなんですけれども、私が宣言として申し上げたのは、直接支払として農家に直接行くような、しかも、本来受け取るべき収入が受け取れていない農家に対して、どれだけの直接支払の額を確保すべきかということで一兆円だというふうに言っているわけです。  そして、この一兆円は、もう一つ言えば、これも一番最初に申し上げましたけれども、過去十年間ぐらいで生産農業所得農家の収入は一・八兆円ぐらい落ちております。そういったことも視野に置きながら、一兆というその枠組みを設定して、そしてこのお金を大事に使いながら、米農家、あるいは自給率上げるために畑作農家の生産意欲を刺激しながら、農業維持農村維持を支える大きなツールにしたいというふうに思っていると、そういうことです。
  110. 牧野たかお

    牧野たかお君 弁舌さわやかな御答弁聞いておりますと、何か説得させられそうな気がしますけれども。  私、あえて申し上げますけれども、これもうがった見方といえば、そちらの方からすればそういうふうにおっしゃられるかもしれませんけれども、私は、やっぱり選挙時に一兆円というもう額を公約として挙げちゃいましたよね。だから、その一兆円というのを、本当は一兆円でなくても、私はここの、要するに平野議員がおっしゃるみたいに宣言として言うならば、一兆円でなくてもいいと思うんですよね、額をもし入れるとしたら。ところが、一兆円と入れるのは、これは選挙時に公約で言っちゃった以上もうこれ変えられないからこの一兆円というのを入れたんじゃないかというふうに私は推察いたしますけれども、いかがでしょう。
  111. 平野達男

    平野達男君 例えばこういう例が妥当かどうか分かりませんけれども、政府が例えば公共投資何か年計画って、何兆円ってぽんと出すわけです。それで、じゃそれ全部積算バックあるかといったら、そこからブレークダウンを始めるわけです、毎年毎年の予算の中で。そういう手法を取りながら、まず政治の姿勢を大枠として示しておいて、こういう中で我々は実行しますよということで姿勢を示すわけです。後、我々がその言葉に対して信用できないというならば、だれも支持してくれないでしょう。一兆円ということは、一兆円を出しながら、こういう制度設計をしながらこれでやっていきますよということで説明していくわけですから、後は私ども民主党は責任を持ってやりますよと言っているわけです。  そして、その考え方についても、何回も何回も申し上げましたけれども、米に対してはこういう考え方で単価を設定していきたい、麦、大豆についてもこういう考え方で単価を設定していきたいという、その制度の考え方の大枠を示しているということであります。
  112. 牧野たかお

    牧野たかお君 それについては、おっしゃる精神論的なことは私も理解をしておりますが、多分平行線になりますのでそれについてはここでやめまして、最後に総論としての質問をさせていただきます。  これまで民主党皆さんの答弁、説明を通して、日本の農業を本当に守ろうという熱意、そして弱者に対する配慮というのは私は強く感じております。私も自民党の参議院議員にさせていただきましたけれども、皆さんのおっしゃることはちゃんとそれを受け止めて、私たちもやらなきゃいけないということは一杯あるかと思います。また、これからも皆さん方にいろいろ様々なことを教えていただくことがあろうかと思いますけれども、それは有り難く思っております。  ただし、今回の選挙公約からこの法案までの流れを見ていますと、やはり選挙ありきの私は提言になってしまったというふうに感じざるを得ません。くどいようですけれども、やっぱり民主党政策の広報に対して、すべての農業者が、農地を守る、守るということは公共性があるということですけれども、その農地を守る公共性の代償として土地何反、何ヘクタールに対して幾らという交付金をもらえるというふうに認識したというか、錯覚したと言うと私は言い過ぎだと思いますけれども、そういうふうに受け止めた農家は本当に私は多いと思います。  そうしたことで、これは先輩の議員の前で言ってはいけないのかもしれませんが、やっぱり自民党の農業政策の中で私が言われたのは、自民党は自分たちに夢を与えてこなかった、今度の民主党のこの公約は夢を与えてくれる、希望を与えてくれる、そういうふうに言われました。私は相当ショックだったんですけれども、新人ですので何も言うこともできませんでしたが。そういうふうに夢を与えたのも希望を与えたのも、この民主党の公約は、本当に与えたというのも事実だと思います。  ただ、与えておきながら、今度の法案を比べた場合に、私は、その方たちがやっぱり夢、希望が大きく懸け離れているということで、私は失望された方も多いかと思います。実際に自分たち対象になると思っていたのに、ふたを開けてみたら違ったと。そういう方たち、大勢の方たちに対してどういうふうに御説明をされますか。
  113. 平野達男

    平野達男君 夢とおっしゃいましたけれども、夢かどうかは別として、私どもの挙げた政策に対していろんな解釈がされたということはあったかもしれません。ただ、大事なことは、私どもの挙げた政策に対してそれだけの反応があったというのは、今までの農政がそれだけひどかったということでしょう。そしてまた、今農村も大変な状況を抱えているということでしょう。この段階からどうするかということじゃないでしょうか。どうも今までの話を聞いていますと、何か、自分たちは何もできません、だけど民主党はこんなことをやって支持を取り付けました、悔しい、そればっかししか聞こえないんですよ。  だから、本当にこういうものに農家が飛び付いてきたという現状って一体何なんだということを皆さんも冷静にやっぱり分析してみたらいかがですか。そして、そこから今の農業農村の要するにどうあるべきかという多分議論がスタートするかもしれません。  それから、いろいろ御心配いただいています。私どもが過大広告だとかアドバルーンだとかなんとかいろいろ言われましたけれども、そういう批判があったことは真摯に、真摯でもないですけれども、淡々と受け止めたいと思います。  そして、繰り返しますけれども、私どもは、これからこの法案背景にこういう考え方で直接所得補償をやっていきます、こうやればこういう方向になるというような、できるだけ具体化のイメージが開けるような説明を全国でこれからやっていきたいと思っています。その結果として、何だ、民主党は随分大ぶろしきだけだったなという批判が来れば、それは受けなくちゃならないでしょう。いや、そうじゃなくて、いや民主党は本当にまじめに考えているなということであれば、それなりの評価が来ると思っています。私どもは後者だと信じております。  以上です。
  114. 牧野たかお

    牧野たかお君 終わります。
  115. 山田俊男

    ○山田俊男君 一日の質疑では、提案法案の内容を明確にする観点質疑を起こさせていただきました。それ以後も、この質疑を経験する中で多くのことがだんだん分かってきているということだと思います。  ところで、今も平野委員からありましたけれども、参議院選挙で公約を出したその内容について、法案が成立したり、さらには法案の具体的なより内容を伝えるための対策を講ずるというふうにおっしゃっていただいているわけです。  私も、一日の質疑の中で、一つは、生産目標を示すと、それの達成を図った対象者農家制度対象であるというふうにおっしゃっていることは、すべての販売農家対象にするよというふうにおっしゃっていたこととは違う点ですねということを申し上げたところでもありますし、さらには、販売農家につきましても、すべての販売農家と言っているわけですが、しかし、それは生産コスト販売価格のその差額が生じているものについて対象にすると。そうなっていくと野菜等については対象に想定していませんという話があったわけですから、その点が明らかになる必要があります。  それから、公約では強制減反を廃止するというふうにおっしゃっていたわけですが、繰り返しますけど、生産目標をちゃんと達成してもらわなければ対象にならないよということがあるわけでありますから、それらの点。  さらには、生産費と販売価格との差額を補てんする、所得補償するという言いぶりなんですが、実は米については、どうしても過剰ですから、そこは需要と供給の動向を踏まえたものにならざるを得ないんですよということで、下げるという言葉には納得してもらえませんでしたが、その差額の圧縮といいますかね、それが生ずるということをおっしゃっておられるわけですから、是非是非これらの考え方を変えられた点、それをやはり明確にされて、そして説明をしていただきたいというふうにこれはお願いします。これは大丈夫ですね。
  116. 平野達男

    平野達男君 考え方を変えたというふうにおっしゃっていましたけれども、私どもは考え方を変えたという考え方は持っておりません。いずれ今回の法律の中身、考え方についてはきちんとしっかりと説明していくということです。
  117. 山田俊男

    ○山田俊男君 牧野委員が私の前に質問していただきました。  それは、この法案の中で販売価格と生産費、その差額を基本にして所得補てんするという、法律上はそうなっております。言葉の上で、平野委員は私とのやり取りの中でも販売価格と、これは標準販売価格と標準生産費、その逆転の状況を踏まえて対策を講ずる、逆転という言葉を使っておられるわけであります。舟山委員は、先ほどの質疑の中でもこれは生産費の方が販売価格を上回っていると、こんなふうにも言葉としておっしゃったというふうに思います。  差額という言葉、逆転という言葉、上回っているという言葉がありますが、法律は差額を補てんすると、差額を基本に補てんするというこの条文だけでちゃんと誤解のないように説明ができるものなんでしょうかどうか、それをお聞きしたいと思います。
  118. 平野達男

    平野達男君 いや、正に条文のとおりであります。それを今答弁のやり取りの中で差額と言ってみたり生産費が市場価格より上回っていると言ってみたり、あるいは逆転をしているという言葉を使ったかもしれません。  しかし、あくまでも今回は法律の審議ですから、法律の審議の中で、この中で標準的な生産費と標準的な販売価格の差額を基本とした云々というのは、これは微動だにしない。これは根っこであることは間違いないです。
  119. 山田俊男

    ○山田俊男君 この表は小さくて見えませんが、もうずっと頭に入っておられると思いますが、平野委員からお出しいただいた生産費の表であります。  これ見て、ごらんになりますように、規模の小さいところから規模の大きいところまで生産費は様々です。しかし、販売価格、すなわち手取り価格は多分いろいろ銘柄によって違いはあったりするでしょうが、基本的には一本としてあります。  その中で標準生産費と標準販売価格を見て、そこが差額部分について補てんをすると、こうおっしゃいますから、米についてはその対象になるよと、こうおっしゃっておられると見ていいと思いますが、その際米については、御案内のとおり、規模の大変小さいところはずっと生産費が上回る、さらに、規模の大きいところは場合によったら、これ上がる下がるの言葉で悪いんですけれども、販売価格の方が生産費を上回っている事態があります。しかし、それについても、標準の差額でもって補てんするというふうにおっしゃっている。それでいいですね。
  120. 平野達男

    平野達男君 そのとおりであります。
  121. 山田俊男

    ○山田俊男君 米についても、価格が高く推移したところ、それから、ここに見られるようにどうしても低く推移したところがあります。場合によったら、米についてはこの生産費を上回って価格が形成される可能性もなしとはしません。しかし、この場合でも、この米についての所得補償はあるというふうに考えていただいていいですね。
  122. 平野達男

    平野達男君 今の前提条件は、価格が生産費より上回っているという状況ですか、という御質問だったですか。
  123. 山田俊男

    ○山田俊男君 そうです、はい。
  124. 平野達男

    平野達男君 ということですか。それはもう、価格は要するにもう生産の補償する水準を超えていますから、今回は発動されないということであります。
  125. 山田俊男

    ○山田俊男君 この点はうまく平野さんも乗っかっていただきましたんで、大賛成。この点は、この所得補償方式のこのことを現在実施するに当たって、とりわけ過剰な米の状況の中でこの仕組みを展開するに当たって基本的な私は論点だというふうに思うんです。  だって、どうしても米については、御案内のとおり生産過剰が続きます。だって、値段がずっといいところだって、作柄が悪くって値段がずっといいことあります。そのときに補てんがないよといったときに、そのときに、いやいや、所得補償の対象がないといったときに、それでも生産調整をといいますか、生産目標を定めてそれをこなすという作業が必ず必要になるんです。その言うなれば所得を補てんするということと、もう一つは、過剰な米について具体的に需給均衡を目指してどういう対策を効果的に打つかというこの二つの関係をどう整理するかということと、この仕組みが非常に大事でありますし、この仕組みについて、そういうことを念頭に置いて仕組まれたものなのかどうなのかということが大変議論として出てくるところだと思いますから申し上げた次第であります。  御意見があれば、ありそうですから、おっしゃってください。
  126. 平野達男

    平野達男君 あるんではなくて、今ちょっと私、山田委員の御質問を聞いていて、何が問題なのかというのがいま一つよく分かりません。  要は、今回の米の、今米を限定に、じゃ米で話していきますけれども、米の生産費と市場価格に差がある、これは当然、これは所得補償と言っているんですから、その対象は標準的な生産費と標準的な販売価格の差、そこに農家が受け取るべき収入が来ないということを想定していると、これは明々白々です。  しからば、これは階層別に差がありますね、これはそのとおりです。この法案では、そういったところについてはあえて着目しないで、標準的な販売価格と標準的な生産費という概念でとらえて、一本でとらえるわけです。その結果として、多分所得水準は、規模の大きい農家でも小さな農家でも、高い米作っている人も安い米作っている人も、一俵同じあれが乗ると思います。そういうイメージです。
  127. 山田俊男

    ○山田俊男君 過剰が常態化した米についてはどうしても、御案内のとおり、生産目標を抑制する中で、その目標を達成する農家にはメリットとして一定の補償がないと目標を達成する取組は進まないわけです。だから、説明するまでもなく、今の現状、米の現状は正にそうなわけで、先ほど来議論がありましたが、生産調整をどうしても未達成になる事態が一方出ているわけで、そこをどうするかというのが課題でなっています。  ところで、この達成生産調整、すなわち民主党案で言うと生産目標の達成、未達成を考えるときに、コストを上回って販売価格を実現している大規模農家は、補償がなくても米を作って、そして抑制した生産目標を配分しようにも、それはもう結構だと、自分はやれるからと、こう言う。それからさらに、流通経費が少なくて済む地域、御案内のとおりイメージで分かりますね、この関東の大市場を相手にした隣県は流通コストが非常に少なくて済みますから、コストが安くて済みます。そういうところは所得補償がなくたって米作りを、というのは生産目標の配分をもらわなくたって、その達成を気にしなくたって米作りを展開してしまうという事態が多いわけで、そういう意味では、要は作りやすい米以外の対策をどう具体的にきちっと打つか、手だてを講ずるかということがなければならないんです。
  128. 平野達男

    平野達男君 やっと委員問題意識分かりました。  まず、本当に経営マインドというか、自ら経営の判断できるような多分農家経営の判断というか、きちっと将来見通した、ある程度将来見通しに立って自分の経営がどういう状況かというのを判断できる農家を多分想定されているんだと思います。そういう農家は今回の、この間、谷合委員にも同様の質問を受けたんですけれども、今回の措置では、例えば一俵当たりどれだけになるか分かりません、千円なのか二千円かは分かりません、それと自分が生産調整に参加することの多分、必ずてんびんに掛けるはずです。どっちが有利かで判断するはずです。そして、どうしても私はやっぱり、もう販路も確保しているし高い金で売れるし、そんなもの要らないやという農家は、これはもうどんなに押さえ付けようとしても、立派に自立している農家ですから、自分で動くんだろうと思います。その代わり、その農家は、万が一価格が下落すれば、セーフティーネットがありませんから、そのリスクは抱えますね。一方、そういったリスクを勘案して、かつまた一俵当たりの、一俵二千円か千円か分かりませんが、それと、自分が生産調整に参加して他の作物転換した場合の収益がどうなるかということの総合的な判断でやるんだろうと思います。  他方、今、山田委員の御指摘あったように、いずれ米の需要がもしもっと下がってくるというようなことがあるし、今現に米は過剰ぎみだというふうに言われていますから、米をきっちり需給調整すれば水田に何を植えるかということは大きな問題になってきます。そのときに、麦、大豆にせよ飼料作物にせよ、米に対して比較して、そんなに遜色のないような水準の単価を設定するというのは大事だと思います。  しかし同時に、そちらに、作物に単価を設定すると同時に、私は、米にある一定の水準を乗せることで他の作物に対しての作付けもしやすくなるんではないか。つまり、所得が安定していますから、そういった副次的な効果もこの対策によって期待し得るんではないかというふうに思っています。
  129. 山田俊男

    ○山田俊男君 平野委員は、コストが高くて年金を補てんしてまで生産をしている小規模・高齢農家があると、そこに対する所得補償の仕組みを何とか実現していく必要があると、こうおっしゃってこられたわけでありますけれど、小規模・高齢農家が作りやすい米を抑制して、そして麦や大豆を生産することになるんです。こうした、そうですね、小規模農家、高齢農家であっても生産目標数量を配分して、そしてそれをきちっと達成するということがあって初めて対象になるわけだし、需給調整にも役立つ。だから、こうした農家にも対策が必要なわけでありますが、こうした農家は、むしろ自分たちは作りやすい米を作った方がいいということがあるわけで、なかなかこれも生産抑制的な生産目標に乗っかってこないという構図が現にあります。地域によっては、ですから二十アールや三十アールの飯米農家に対しては現行でも生産調整の目標はもう配分しないと、これらの農家は飯米農家なんだからということで処理している、協議している、そして決定している事実もあるわけであります。  と考えたときに、本当にこのきちっとした過剰下における生産調整を達成するためには、この一律な所得補償の仕組みではなくて、ないしは、それもどう仕組むかということはありますけれど、同時に産地づくり推進交付金を含めた、これら作りにくい、しかしこの作物をきちっと定着させて需給均衡を図っていくという対策が必要なのに、民主党の案は、この法律の中のごく一部において、米に代わる農産物の生産と要素を加味するという言葉が入っているだけ。これでは根源的な解決につながらないんではないかということを申し上げたいと思います。
  130. 平野達男

    平野達男君 大変重要な御指摘をいただいたと思います。そのとおりだと思います。  特に、中山間地域では七反、八反持っている農家高齢者が頑張っている。そこで単独で生産調整しろと言ったって、もうほとんど無理です。だから、そういうところでは多分集団転作をするとか、そういった土地利用調整も併せて必要だと思います。  と同時に、そういうことをやるために、それをやるためのインセンティブ、正に今委員おっしゃられたような産地づくり交付金、ああいった考え方に立った、単純なる麦、大豆の生産費と市場価格の差を補てんした交付金に、更に転作をする場合には一定程度の加算をするということで、米に代わる、これ、条文を書くときに確かにもっと、これは見えないじゃないかと、もっとはっきり書けという御趣旨であれば、そこは個人的には私も同意します。私も本当はこれは、余り言うと何かあれですけども、もっとここは、米についてはもっと端的に書きたかった気持ちもあったんです。特に、米に代わる作物の部分については具体的に入れたらどうかという話もあったんですが、まず法律はコンパクトにしようということでこういう規定になりまして、米に代わる、特に、繰り返しになりますけれども、転作作物としてそれを推進するためにはそれなりの措置が必要であって、繰り返しになって恐縮ですけれども、産地づくり交付金のようなああいう交付金にするか、品目ごとになるか、これからも皆さん方の御意見聞きながら考えたいと思っていますが、そういう仕組みは絶対必要だというふうに考えています。
  131. 山田俊男

    ○山田俊男君 先ほど、民主党の金子委員の御質問に、平野委員は、米価は構造的に下がると、そしてその方が需給調整上も課題の解決につながるというふうに御発言されておられました。詳細は議事録で確認してもいいわけでありますが、多分そういう趣旨かというふうに思います。  このことを、正にこのことをきっちり議論をするということがない限り、この仕組みは生きないのではないかというふうに私は思うんですが、その点、いかがですか。
  132. 平野達男

    平野達男君 私が言ったのは、今の中では、米の価格が下がれば構造の改革に資するという、そういう趣旨だというふうに御発言がありましたけど、そういうことは考えていません。私が言ったのは、米の価格を形成するのに今回の米緊急措置対策、これは必要、やむを得ない措置だったのかもしれません。こういった措置によって価格の浮揚をするということではなくて、価格形成はできるだけ介入しない。  しかし、私はこの委員会で何回も申し述べましたけれども、人口も減っていく、米に対する見方はうんと変わってきています。かつてみたいに特別なものだという見方も変わってきて、パスタとかパンとか、そういったもので同列に見るという見方も広がってきている中で、米の価格が下がる可能性があるわけです。そういう中でしっかりとした生産を続けてもらうために一定のセーフティーネット、今回のような所得補償でやることが大事じゃないかという、そういう文脈で言ったつもりであります。
  133. 山田俊男

    ○山田俊男君 この点に関連して、一番最後に残そうと思ったんですが、もうやっちゃいます。  結局、所得補償を言うだけでは問題は解決なかなかしないのであって、多様な、今おっしゃった仕組みをどう盛り込んでいく必要があるわけであります。そういう意味では、むしろ、ここからなかなか大事なところなんですけれど、むしろ、この所得補償の法案は余りきれい過ぎて、かつ余り単純過ぎて機能させられないんじゃないかというふうに思います。もっといろいろ補完する対策が絶対あってこそ生きてくるというふうに思います。  ところで、しかし参議院選挙であれだけ公約されて、分かりやすいせいもあって、単純で美しいからどんと出たのかもしれません。しかし、これは議論すれば議論するほど、多くの危ない方向を持っているんじゃないかというのが私の意見なんです。  じゃ、何が危ないかということなんですけれど、この制度は、小沢代表や輿石代表代行の言うように、貿易立国として農産物を完全自由化する、日本は世界で自由貿易の恩恵を最も受けている国の一つであり、農産物だけ例外というわけにはいきませんという、市場原理主義や自由貿易主義の論理の下に、自由化を進める戦略の下に、農産物価格の低減を補完する制度として打ち出したものと言わざるを得ないんじゃないかと思うんです。  もっと議論すればこの間に一杯あるんですけれど、どうもそういうふうに言わざるを得ない。この点、大事なところですので、ちょっとお聞きしたいと思います。
  134. 平野達男

    平野達男君 まず、ちょっと今手元に、輿石私どもの会長の本会議での演説の内容ですけれども、確かにその表現を使っておりますけれども、こうも言っているんです。国内農業拡大を図らなければなりません。それから、掛け替えのない環境維持食料の安全保障という見地から、国内農業拡大を図らなければならない、こういうことも言っているんです。基本は農業を守ると言っているんです。これは何回も申し上げたつもりですけれども、日本は貿易立国、FTA、WTOの推進もやる、しかし同時に守るべきものは守るということを輿石会長は演説で言っているんです。だから、そこの部分だけとらまえますと、多分輿石会長、不本意だと言うと思いますよ。
  135. 山田俊男

    ○山田俊男君 輿石会長の農産物だけ例外とはいきませんと言っているところの意味は、やはり私は大変重要だというふうに思います。  ところで、平野委員は、一日の私の質疑の中でも、守るべきものは守る、必要な作物には関税措置は必要だというふうにおっしゃっている、これは議事録からです。そこは私も意見が一致します。このアジア・モンスーンの下における水田農業、稲作を主体にした我が国を始めとするアジアの多くの国々、圧倒的に、我が国もそうですが、農産物の輸入大国になってしまっております。そして、それは、このアジア・モンスーン下における水田農業がどうしても宿命的に背負った小規模零細な経営構造にあるわけです。  もうこの中で圧倒的な農産物を輸入しているこの国、我が国に対して更なる自由化の議論は、悪魔にこの国の農業食料国民生活の安全を売ることにならないかと思うんですよ。それはどうですか。
  136. 平野達男

    平野達男君 まさしくそういう気持ちで私たちも臨みたいと思っています。
  137. 山田俊男

    ○山田俊男君 そこは平野委員のこれからの審議なり政治活動、多面のところありますから、是非是非、それからこの委員会もどんどん続くんでしょうから、その中でしっかり、一体この日本の農業が抱えている、アジアの農業が抱えている課題をどう解決するか、しっかりやろうじゃないですか。  ところで、私が、悪魔にこの国を売るんじゃないかというふうに心配している、危惧していることは、我々だけじゃないんです。WTOの交渉で我が国が連携しているG10という世界の輸入国のグループの農業団体があります。彼らも当然のこと、小沢代表の発言読んでいます。そして、著書も読んでいます。そして、この直接支払法案を、所得補償法案をお出しになったという状況を彼らも把握しています。  その中で、要は、日本は農産物の完全自由化に一歩踏み出したのかと、有力な野党の代表が経済界と一緒の主張を行っているんじゃないかと言うて心配しているわけであります。このような受け取り方は、平野さんの本意としてはそれは本意ではない、違うというふうにおっしゃるというふうに思いますが、この提案された法案の目的と重なってきているということについて、世界の国々も心配しているということを是非是非念頭に置いておかなきゃいかぬ。  言うなればそのことが、代表の発言も含めて、このことが、農業多面的機能も含めた輸入国としての食料の安全保障のもう本当に切ないまでの主張、追い込まれてしようがない中での切ないまでの主張に水を差しているといいますか、そういうことになっている、そこは非常に残念であります。  いずれにしても、この国の食料農業のありようを憂えるものとして、先ほども言いましたが、日本型の農業をどんなふうにつくり上げていくか、活力ある地域をどうするかということを目指して知恵を出していく必要があるというふうに考えます。  ここで終わりませんでして、高橋局長に出てきてもらっておりまして、どうしてもここで確認をしておきたいところもありますので申し上げます。  前回、集落営農組合の意義と位置付けについて議論をさせてもらいました。民主党法案には、集落営農組合を対象とする、集落営農組合は販売業者に対象するというふうに位置付けてもらっております。私はその際に、菅代表のあの口を極めた集落営農の批判、すなわち、コルホーズ、ソホーズ、人民公社というこの規定は、全く納得のいかない誹謗中傷というふうに思っていますから、これは民主党のどなたかが是非菅代表に言っておいてもらいたいというふうに思うところでありますが、ところで農林省にお聞きしたいわけです。  前回、これも高橋局長にお聞きしました。経理の一元化も個人の口座まで一緒にすることまで求めておらず、交付金をもらうための口座は用意してくださいというものであったと、こんなふうに御発言あったと記憶しているんですが、これだとわざわざ経理の一元化なんといって紛らわしくて、菅さんがコルホーズ、ソホーズと言ってくるような、大きな誤解なんだけれども、ああいうのをわざわざ言わせるようなことをしなくていいんじゃないかというふうに思うんですが、この点いかがですか。
  138. 高橋博

    政府参考人高橋博君) 集落営農組織につきましては、今委員御指摘のとおり、基本的に対象作物の販売に係ります販売収入、それから当然のことながらそれに伴います交付金ということでございますので、この対象作物を中心とした営農活動について一つの口座を設けていただく。当然のことながら、繰り返しになりますけれども、個人の口座についてこれを一緒にしてくれということは毛頭考えているわけではございません。したがって、これはやはり集落営農組織としての処理、経理処理の第一歩なんですけれども、そういった形での一元化という形で言わさせていただいております。  まあ、何といいましょうか、用語の是非、不適というのは、これは私どもも注意しなければならないと思っておりますが、少なくともこれについては生産現場、集落現場にはきちんとこれまでも御説明させておりますし、また誤解があるようでございましたらまたきちんと御説明してまいりたいと思っております。
  139. 山田俊男

    ○山田俊男君 是非、言葉の使い方大事でありますから、是非内容も含めて御検討お願いしたいというふうに思います。  もう一点、時間の限り。法人化について、一体、これは六年後の法人化を目指すということをおっしゃっているわけで、何を求めたのかということなんです。経営体として確立することなんだということだったかというふうに思いますが、赤字の場合の処理の仕方、それから施設や機械の更新、農地の所有権の扱い等、法人化するということで一体何を求めているのかと。どうしても法人化しなければならないのかということがあるんです。  といいますのは、平成二十七年を目指した効率的かつ安定的な農業経営の展望というのが、局長、ありますよね。その中に、家族農業経営を三十三ないし三十七万戸、法人経営を一万戸、一万ね、そして集落営農を二ないし四万組織をつくるという展望が出て集落営農の位置付けがなされております。その集落営農の二ないし四万組織というのは決して法人化してなきゃ駄目だと言っているものではないはずなんです。だって、法人経営は別途一万あるんですから。もっと緩やかな作業の受託組織であったりしているんではないかというふうに思います。  そういう意味で、是非、是非ですよ、今後の我が国農業の発展を考える、それから地域における実態を踏まえた担い手、多様な担い手を考えていくという観点からこの法人化の規定について見直しといいますか、議論をもう一度しっかりやっていただきたいというふうに思います。  とりわけ、福田総理が所信表明におきまして、「高齢者や小規模農家も安心して農業に取り組める環境をつくり上げる」と、こうおっしゃっておられるわけでありますから、このことを具体化するために一体どういう対策を講ずると考えておられるのか、この要件の見直しの議論も含めて、考えがあればお聞きしたいと思います。
  140. 高橋博

    政府参考人高橋博君) 集落営農組織の法人化の関係でございますけれども、基本的に、例えば税制につきましても、赤字欠損金の繰越しの問題でございますとか、あるいは準備金制度におきます経営発展の制度等の税制上の措置、あるいは、集落営農組織でございますのでやはり規模が大きくなります。そういった意味では、機械投資についての融資に関する法人のメリットというのがございます。さらには、実際に農地の権利関係の主体になり得るということもございます。もろもろのこのような条件、さらに、いろいろあるわけでございますけれども、やはり任意組織に比べれば地域組織体としては安定的なものであるので、したがって、そちらのいわゆる法人化の方向で進んでいただきたいということで現状の要件があるわけでございます。  ただ、この要件につきましても、従来から申し上げておりますとおり、何が何でも五年たった段階で法人化をしていなければ、それで、けしからぬ、これはもう交付金の打切りですとか、そういうようなことを一切言っているわけではございません。この部分についてもやはり誤解があろうかと思っておりますけれども、やはり集落の営農組織の熟度というものは地域地域であるわけでございます。今の段階で五年ということを一つ目標にしていただいているわけでございますけれども、その時期、時期に応じて検証して、五年たった段階でどうしてもやはりなかなか当初目標どおりいかない場合には、さらに次の目標に向けてというような弾力的な形にもさせていただいているわけでございます。  いずれにいたしましても、やはり今後の五年、十年先の集落、水田集落というものをどのように地域として維持をしていくのかと、それが集落なのかどうかも含めて御検討いただくということを基本として対応してまいりたいというふうに思っております。
  141. 山田俊男

    ○山田俊男君 時間が参りました。ありがとうございました。  今朝ほどの参考人の御意見の中にもありましたが、この民主党提案が一石を投じたことは間違いない、こうおっしゃっているが、私も一石を投じたのは間違いないというふうに思います。ここで、これらを契機にして、そしてあるべき日本農業の姿、それから強固な生き生きした日本の農業農村をつくり上げるという観点で是非是非今後ともしっかり議論をさせてもらいたいと、こんなふうに思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  142. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 高橋委員、簡潔にしてください。
  143. 高橋千秋

    高橋千秋君 先ほど平野委員からずっと答弁をさしていただいておりますが、平野委員個人の感覚ではなくて、我々は党として答弁をさせていただいているということは御認識をいただきたいと思いますし、山田委員は長年集落営農に対してずっと御努力をされてきておられますから、そのことに対する思い入れというのはかなりあって、多分菅代表代行のコルホーズ、ソホーズというその部分がもうぴんときたんでしょうが、やはり小沢代表、それから輿石会長のそれぞれの発言についても、前後のところをよく読んでいただければ私たちの思いというのはよく分かっていただけると思いますし、日本の農業が今危機的になっていて、お互いに助けたいという思いはこれは共有をしていると思います。  そして、先ほど政府委員の方から御答弁があった集落営農の経理の一元化や法人化についても、昨日だったかの農業新聞の一面にも出ていたかと思うんですが、ほとんどの方がこれは無理だと言われている。それは、今の話を聞くとそれを無理やりするわけではないという答弁でありましたけれども、それは熟知をされていないということは先ほど言われておりましたが、我々のこの戸別補償政策についてもまだまだやはり熟知はされていないのかも分かりません。これから我々も努力が必要だと思います。  ただ、それについては、やはり認識は、同じように日本の農業を何とか救っていきたい、そういう思いは一緒だということを述べさしていただいて答弁とさしていただきたいと思います。
  144. 加治屋義人

    加治屋義人君 自由民主党の加治屋でございます。  私からは、さきの参議院選挙の公約、その際に配布された政策ビラと今回の法案との関係を確認をさせていただきたい。今日まで自民党、たくさんの質問をさせていただきましたけれども、私が最後でございますので、確認という意味で御意見申し上げながら進めさせていただきたいと思います。  民主党は、参議院選挙前に農政についていろいろな公約を主張されて議席を伸ばされた、これはもう事実でございまして、私も認めるところでございます。この法案も正にそうした公約を具体化するという一環として提出されたものと理解をしているところでもございます。  必ずしも賛意ばかりではないと思いますが、ともかくこの法案が、公約や政策ビラの記述を受けた農家農村地域の大きな関心を背負ったものであることは間違いがないと思います。民主党もこうした見方を否定されることはないと思っております。平野発議者とは当委員会でお互い理事といういい御縁をいただいておりまして、これからも我が国農政についてともにやっていかなければいけない、そう思いながらも、悪いことは悪いと指摘をすることもこれまた必要なことではないかと、そのように思っております。  まず、この対象となる農家について確認でございます。  今まで、牧野委員の答弁で確認はできたものの、民主党政策ビラでは、制度対象農家が単にすべての販売農家となっております。対象農産物には米、麦、大豆、菜種などの例示はありますが、食料自給率向上に役立ち、地域農業振興に役立てばいいわけでありますから、早い話、何でも対象になり得るように書いてありますこの政策ビラ等を見ましたときに、農家はどんな品目であろうがすべての販売農家所得が補償される制度だと、こういう、今でも、事実、私の地域でもそういう声が出ているわけであります。  これまでの答弁では、先ほどもそうでしたけれども、一つには、対象となる農産物は米、麦、大豆などであって、生産費を上回っているだろう野菜や果樹あるいは畜産物などは、法の対象外である品目しか生産しない農家である、米を含め、設定された生産数量目標に従って生産をしない農家対象にならないと、こういう御答弁をいただいておりまして、このことにつきましては、先ほど牧野委員からの質問で確認をさせていただきます。  少し私のコメントをさせていただきたいと思いますが、政策ビラには、中国からどんな安い野菜や果物が入ってきても、こういうふうに載っているんですけれども、前の野村委員が指摘したように、イラストの背景には正に私ども鹿児島の、何というんでしょうか、白菜が植わっているわけでございまして、特に気付くのでありますけれども、それぞれの委員が御報告したとおり、野菜農家、果樹農家を始め、それらが、この政策ビラには生産数量目標に従う、従わないという難しいことは全く書いてないんですよね。民主党はすべての販売農家に品目も要件も関係なく無条件に所得が補償してもらえるとの期待を植え付けた、そしてその期待を裏切ったと。  更にひどいことに、政策ビラにある、中国からどんな安い野菜や果物が入ってきても、米がたとえ一俵五千円になってしまったとしてもとの書きぶりについては、平野委員は、作成担当者が効果を大きく見せるためにそう書いたんだろうと、前の答弁でこうされております。民主党の責任ある立場の方が、実際には想定していないことを書いて農家の関心を引いた。要するに、まあ平野委員との仲ですので、うそという言葉は使いたくないんですけれども、偽りである、そういうふうに思えてならない。公党の姿勢としてとても看過できるものではないと、このことをまず申し添えておきたいと思っております。  それから、これも先ほど、またその前にも山田委員が触れられた問題ですけれども、生産費と販売価格との格差を基本として補てんするものなのかという点であります。平野委員は、支援単価について、米では生産費と販売価格の差を取ると五千円近くになるので、需要と供給等の動向を勘案して水準を決めなくちゃならぬ、軽々に出すべきではないと。そして、答弁のその中にも、二千円になるのか三千円になるのか、こういう例も出されました。  そこで、お伺いしたいと思っていたんですが、これも先ほどの山田委員の質問の中でしっかり確認をさせていただきましたので、これも私のコメントに代えさせていただきますが、要するに、少なくとも生産費までは補てんされるという確証が全く得られない。米は、今までになかった交付金を新たに設けたので単価は余り重要ではなく、それでよしとしたのではないかと、私はそう感じるのであります。また、何らかの生産調整をしている対象品目は米と同じように抑制的な単価設定が行われるとすれば大きな問題なんだろうと思います。  とにかく、これまでのような答弁を繰り返しておられるとすれば、マニフェスト以前に言ってこられたことが全くあやふやでありますし、農家の期待を持たせたのは何だったのかと、このことも確認を申し上げておきたいと思います。  次に、米の生産調整について伺います。  先ほどの話もございましたけれども、強制減反を廃止する、生産調整を廃止する、こう言われてこられました。今回の法案とに矛盾がないと主張をされておられますけれども、その理由として、計画的に米を作ることを支援するので、強制減反ではないし、政府が今までやってきた問題のある生産調整とは違うとの説明、そのように受け止めております。生産数量目標設定して、農家ごとに配分された数量の範囲内で作った場合にしか補償金を払わないということは、過剰米が生じないように生産量を抑制するということではないのかと、そういうふうに思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  145. 高橋千秋

    高橋千秋君 加治屋委員にお答えしたいと思います。  先ほどからというか、ここずっとこの委員会でこのビラの提示をしていただいて、こんなに選挙のときにみんなに扱っていただいたらもっと勝てたのになというふうに思うんですが、先ほどの対象となる農家についても、それぞれの答弁でございましたけれども、ここにすべての販売農家というふうに確かに書いてございます。しかし、やはりルールというのは当然必要なものでありますし、お金を交付するということでありますから、これは当然ルールの中でそれぞれのルールに従っていただいてそれぞれの農家に交付をしていくというのは当たり前のことでありますから、それは委員も御理解をいただけるんではないかなというふうに思います。  確かに、このビラでこのように強調してあることが誤解を与えているのかどうか、我々は皆さんからずっと御意見をいただいていることに対して真摯に受け止めたいと、御意見として受け止めたいというふうに思いますが、先ほどから平野委員がずっと答弁をしておりますように、これについては今後もそれぞれの方に熟知をしていただけるように、私たち政策をきっちりとそれぞれの方々に説明をしていきたいというふうに思います。  それから、生産調整については、これも何度も答弁をさせていただいておりますけれども、私たちは需給調整、生産数量目標というものを持って、その制度にちゃんと従っていただく方にはきっちりとそれをお支払いをしていこう、この制度を守っていただけない方、その方々が一番リスクをしょうという、そのことによって需給調整をきっちりやっていくということで、皆さんの御懸念のことは解消していけるというふうに確信をしております。  これは生産調整とどう違うんだというふうに言われておりまして、この委員会の中でも平野委員がポジとネガの違いだというお話をさせていただきましたけれども、正に農家というのは自分たちが作るということに誇りを持ってこれまで農業に従事をされておられます。今もそうだというふうに思います。そういう作るということに誇りを持っておられる方々にきっちりと作っていただくために、私たちは作っていただく方に生産補償、所得補償をしていくという、そこが需給調整であって、私たちがこれまで言ってきたように、生産調整はしないということに変わりはございません。  先ほどからマニフェスト、加治屋委員だけでなくて、マニフェストと違うじゃないか、法案になったら変わってきたじゃないかというふうに御指摘をいただいておりますけれども、私たちは決して変わっていないと思います。私たちは、そのマニフェストで提示をさせていただいた農業政策をきっちりと法案に落とし込んで、今回提示をさせていただいております。  確かに、先ほどの生産費と販売額の差の問題で、これでは読み取れないではないかというお話もありましたけれども、しかし法案というものはなるべく簡潔にしていかなければならない、その運用の中できっちりと皆さんに熟知をしていただく、そういうことは当たり前のことでございますので、是非御理解をいただきたいというふうに思います。
  146. 加治屋義人

    加治屋義人君 このマニフェストと今の法案と変わりないというふうなことですけれども、文字が示しているんですよね。そう理解をしておきたいと思います。  政策として生産量を抑制するということは、まあ世間様では常識的に考えて生産調整を実施すると、こういうことなんですよね。米にも支援するとかしないとかいうのは関係ないんですよね。支援をするということと調整というのは関係ないんですよね。この米の生産調整を廃止するということは、すなわち農家の自由な判断で米を作っていいですよと、こういうふうに多くの農家は思っている、民主党のこの公約をそう見ているんですね。事実そうだと思っております。  しかし、今いろいろ答弁を今日までお聞きした中では、民主党の案はそうではないと。民主党がどのような解釈をしても、どのような言葉を使われようが、農家が米を自由に作っていいわけではないという点で歴然としないわけでございまして、これは公約違反ではないのかねと、そういう気持ちを持って立たせていただいておりますが、米の生産数量目標設定には所得補償というメリット措置を付けたので、現在の生産調整と全く違うと、よりうまくいく、こういう発議者の見解について問題を指摘をしておきたいと思います。  需給調整に参加しない人は下落した価格での収入しか得られなくなるので、生産費まで補償される制度に参加するようになる、結果として、結果として需給調整がうまくいく、こういう説明に私は受け取っているのでありますが、いかがでございますか。
  147. 平野達男

    平野達男君 まず、具体的にお答えする前に、加治屋委員の御指摘については、耳を傾けるべきについては傾けなくちゃならないと思っております。  事実、生産調整については、正直なところ、米を本当に全部作っていいんですかというふうに私は問い掛けられたことがあります。いや、そんなことはありませんと、需給調整はしっかりやるんですよというふうに答えました。しかし、その農家は意外なことにそれに何と言ったか。それで安心しましたと、民主党さんはきちんと考えておられるんですねという、そういう答えでした。  いずれ、私どもがこれから法案を説明する中で、多分、地域によってはこの委員会で指摘されたような話は出てくると思います。それに対して私どもは真摯に、こうこうこうこうこうで、前からこういう形で考えていましたということをぎっちり説明していきたいというふうに思っています。  それから、需給調整につきましては、もう今、加治屋委員がおっしゃられたように、今回の法案ではきっちりとした需給調整をしなければならないと考えています。そして、メリット措置をやることで需給調整が完全になるとは思っておりません。需給調整は本当に大変だと思います。そのことについてもこの委員会で何回も申し述べました。そもそも総体の、総量の翌年度の米の生産量をいかに見ていくかとか、あるいはこのメリット措置だけで今生産調整に参加していない方が本当に乗ってくるのかどうか、その辺についても不確定要素は様々ありますし、しかし、さはさりながら、今の生産調整の中での最大の問題点の一つ、それは生産調整に参加する人と参加しない人との農家の中での差別化がされていない、生産調整に参加する人の、農家メリット措置がないということが大きな課題になっていまして、そこに対しては我が方の今回の法案はきちんと答弁をしたということであります。
  148. 加治屋義人

    加治屋義人君 コメントをさせていただきたいと思いますが、例えばミカンなどでは、価格下落時に一定価格までを固定的に補償した結果、価格低下傾向になったという経験が過去にあるわけであります。販売価格が下がれば補てん額が生産額と販売価格の差に対応して増加される、この仕組みの下で品質向上努力がなくなる、価格へのこだわりがなくなる、生産者の米価に対する関心が薄れて、したがって米価が下がっていく、こういうことも考えるわけでございますし、米価の下落を助長し、ひいては莫大な補償金が必要になるものだ、そのように思えてなりません。そういう、この価格水準維持がねらいである需給調整をする意味がなくなると、そう思えてなりません。  まずは、標準的な生産費を下回る低価格帯の米の価格が下がって、そうなれば高価格の米の値段も釣られて下がる可能性が出てくるのではないかと。農家が丹精を本当に込めて作った米が外国産米との競合もないのにどんどん安くなっていく、でも生産費の補償をするからいいではないかと、そのように聞こえてならないんですよね。いえ、これ質問ではないんですけれども、より良い米を作ってやはり消費者に評価されて高く買ってもらうことは農家のやりがいそのものだと思っておりますだけに、民主党案は言うなれば農家のやる気の気持ちを踏みにじっているんではないかと、そういう仕組みであるということもひとつ認識をさせていただいたと、こういうふうに思っているところでございます。  最後に、貿易自由化について確認をさせていただきます。  小沢代表が再三、農産物を含めた貿易自由化論に言及しておられるにもかかわらず、民主党は一度も農産物関税を引き下げてよいなどと言ったことはないと言われております。今でもそう思っております。  では、民主党の党としての見解を確認しますけれども、参議院選挙時に公表した政策リスト三〇〇ですか、これを見ますと、WTOやEPAの推進に関する項目の中で、農業を含む政策を抜本的に見直すことで我が国の通商分野で主導権を発揮する環境を整えますと、そう言っておられるんです。前回の佐藤委員の質問でも、戸別補償法案はこの農業を含む政策に該当すると答弁されているんですね。とすれば、戸別所得補償制度をつくることは通商分野での主導権の発揮につながる、そういうふうに理解するのでありますけれども、いかがでございましょうか。
  149. 平野達男

    平野達男君 まず、いろいろ今御発言がございましたけれども、直接支払、我が方で言うところのこういう所得補償が価格の形成にどのような影響を与えるか。これは先ほど、午前中の参考人質疑の中にも、生源寺参考人の方から価格形成に織り込まれるのではないかという発言がございました。私は、これ聞いてちょっと意外に思いました。世界で直接支払というのはあちこちで行われています。その直接支払の結果において価格形成が相当ねじ曲げられたというような例は私は聞いていません。要は、その物に対しての財が、米なら米ということに対してどのように評価するか、そういうことがきちんと評価されるような市場である限りにおいてはそういうことは起こらないんではないかというふうに思っています。  現に、稲作、稲経安定対策、これも価格下落対策であります。価格下落対策をやったからといって、じゃ米の価格が別段落ちたか、これは政府がきちんとした見解を出されているんでしょうか。補助金を出したりある一定の対策をしますと、価格形成にある一定の、全く影響がないとは言いませんけれども、織り込み済みで価格が形成されるとか、そういったことにはまずならないんではないかというふうに思っています。  それから、貿易の自由化に関しましては、何回も申し述べましたけれども、関税は引き下げないと言って関税は引き下がってきたのが今までの日本の経過なんです。気持ちとして今の状況を守りたい、この法案ガットウルグアイ・ラウンドの今の枠組みを前提にして作っているというふうに申し上げました。  そして、これからの関税をどうするか。基本は、繰り返しますけれども、農業と農山村を守っていくんだと。それについては、いろんなWTOやFTAの交渉を進めながら、場合によったら、これは今までの経過を見れば分かりますけれども、取るべきものは取る、譲るべきものは譲るというのが国際交渉でありましたから。しかし、それはそのことで関税を引き下げていることを容認しているんだというのは、これは幾ら何でも言い過ぎじゃないでしょうか。私どもはそんなことは言ってないんです。交渉の実態がそうだということを申し上げているわけです。  そういったことを踏まえて、もしそういうことがあれば、基本は農業、農山村を守ることだから、直接支払、この所得補償で対応する場合もあるし、これも前に申し述べましたけれども、直接補償でどうしても対応できないのもあると思います。その場合は関税を体を張って守るということも私も申し上げたとおりであります。そういう意味で、基本的には考え方は、多分与党さんと我々は、貿易の自由化の問題については変わってないというふうに思います。  ただ、もう一つ、今日ここであえて申し述べさせていただきますけれども、どうしても皆さん方はこの法律が貿易の自由化を前提としたものだというふうにやりたいみたいですね。しかし、それを言えば言うほど、皆さん方が懸念するときの、農業交渉が今進めているときに、民主党が要するに自由化、自由化を進めているんだということで、足を引っ張られる思いだというふうに中川大臣が言いました。私らは違うと言いました。私らは違うと言っているんです。  しかし、この国会で繰り返し繰り返しあなた方は、完全自由、完全貿易主義者だとか農産物の自由化を前提にしているって、言えば言うほど国論を二分しているような状況を要するに外に発することになりますよ。私どもはそうじゃないと言っているんですから。代表は違うと言っているんです。私らがそういうふうにこの場で言っていればそうなんです。それを信用できない信用できないといって、ばんばんばんばんと騒げば騒ぐほど、ああ日本という国はこれ真っ二つに割れているんだなということで付け込まれますよ。  私どもは完全自由化とか貿易の自由化を前提にしてこの法律を作ったんじゃないんです。あくまでも、今の現状の中において得るべき所得が得られてない、それをきちんと補てんすることで農業、農山村の振興を図っていきたい、維持を図っていきたいという、その一点でやっているということだけは繰り返し繰り返し述べてきたとおりでありまして、殊更そこの部分を際立たせてやるというのは、かえって私は、日本がこれからいろんな貿易交渉に臨む上で本当にマイナスになっているんじゃないかという気が強くいたします。
  150. 加治屋義人

    加治屋義人君 農業を含む政策を抜本的に見直すことで我が国の通商分野で主導権を発揮する環境を整えますと、これだけ読ませていただきますと、本当に国民あるいは農家というのは、農産物輸出国や途上国が強く要求をしている農産物関税の大幅削減などを本当に思い切って応じるのではないかと、工業製品などを含めた交渉全体の主導権を握る、そういうカードが切れるように農産物関税を大幅に削減したときのための農業政策を準備しているのではないかと、こういうとらえ方をするんですよ。そのことも一つ受け止めていただきたいと思っております。  民主党政策全体から見ますと、農業政策は通商交渉を有利に進めるための一つの道具であると、これは私が言うんですから、そういう考え方が見事に表れているのではないかと思えてなりません。そうではないという答弁ばっかりを繰り返されますけれども、公約にはっきり書かれていることを違う違うということで繰り返されても簡単に信じることはできない。農家は本当に純情なんですよ、純情なんです。民主党のこの政策ビラに一目ぼれする純情さを持っているんですよね。そういうことを考えましたときに、この法案は本当に完全に純情な農家を裏切っている、私はそう思えてならないんです。  以上、確認してきましたように、民主党が参議院選挙前に農家農村地域に期待をさせたことの多くはこの法案に反映されていないと言わざるを得ません。  この理由は、選挙対策として華々しいことをアピールしたけれども、現実には制度設計ができなかったということにほかならないと思っております。そして、議員は再三、米は一粒たりとも受け入れないと決議したのに現実的な問題としてミニマムアクセス米の七十七万トンを受け入れた、そういうことを繰り返されますけれども、申し上げておきたいんですけれども、これは細川政権のときで、我が党はそれこそ下野していたときのことであることも申し添えておきたいと思います。  私ども自民党は、こうした事態を決して繰り返さないように肝に銘じて我が国農業を守っていくとともに、農業農村が直面している課題に直視して、具体的にきめ細かい政策をしっかり今後とも進めていくことを改めて決意を新たにしたところでございます。  幾つかの確認についてはしっかり確認させていただきました。私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  151. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合正明です。  発議者の皆様、合計三日間、大変にお疲れさまでございます。私もずっと質問に立たせていただいておりますが、それ以上に、平野発議者におかれましてはずっと答弁の時間も私よりも本当に大変長く、しかしながら誠実に答えていただいていることをまずは感謝申し上げたいと思います。しかしながら、しっかりと詰めなきゃいけないことは多々ございまして、今日はこれまで質問できなかったところも含めて質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、米の需給調整についてであります。  これは、前回も私、質問をさせていただきました。これは度々この委員会でも質問出ております。今、米の過剰が問題となる中で、どうやって民主党さんが提案されている米の生産目標、これをしっかりどのように目標達成するのか、これが本当に大きなポイントであろうと思っておるわけであります。  その所得補償によって確かに需給調整がうまくいくのかというところをまず問いたいわけでありますが、生産調整は廃止すると、しかしながら需給調整はしっかりやるんだということであります。その需給調整について、米の需給調整については今までのやり方と変わらないという話でございました。ただ、何が違うかといえば、メリット措置があるんだと、生産目標に従った農家に対しては所得補償というものがきっちりあるんですよという話でございました。  しかしながら、現行でも需給調整というのはしっかりしていると。しっかりしているというか、私が言いたいのは、需給調整はしっかり持っていると、考えが。また、生産調整に従う担い手に対しては米価下落対策としてナラシがあると。担い手以外に対しても稲作構造改革促進交付金、稲構もあると。そう考えてくると、民主さんの言っているところと今のやっているところと何が抜本的に違うのか。  今回、所得補償によって需給調整は確かに機能するのかという点について、まずお伺いをしたいと思います。
  152. 平野達男

    平野達男君 まず、この話は米に限っての話ですから米限定で話を進めさせていただきますけれども、我が方の今回の措置は、誤解のないように申し上げておきますけれども、需給調整を円滑にするための措置ではないと。あくまでも、一定の所得確保して農家の生産を継続していただく、あるいは近い将来いろんな変貌する農村に沿った農地の流動化とか生産の組織化を進めてもらうと、そのための基盤、そういったものを整備したいということであります。  しかし同時に、今回こういう措置をとることで需給調整に対してもかなり効果があるのではないかというふうに思っています。これは何回も答弁で申し上げましたけれども、生産調整、需給調整、もう三十年間やってきて、いまだにうまくいっていないということがあるわけですが、その理由の一つに、やっぱり生産調整に参加した人と参加しない人との差別化がされていないということが再三指摘されています。先ほど、今委員の御指摘の中にナラシ対策、かつての稲経対策、そして今あと稲得があるんだということですけれども、この措置については、委員が御承知のように、価格が下落して低いところにとどまってしまえばもう補てんはありません。下落が続いている中での一定の補てんをするという、そういう仕組みですね。  我が方は、これから検討してまいりますけれども、標準的な生産費、その目標設定しておいて、その差額についてはある程度固定した形で固定支払するということを考えていますから、このメリット措置といいますか、措置は全然違ってきます。農家にははっきりと見える措置でありまして、ここで明確な差別化ができるということでありまして、この差別化することによって、需給調整に今までは参加していなかったけれども、じゃ乗るかという農家は今までより出てくると思いますし、あるいは同時に、地元で地域協議会の方々あるいは市町村の方々が、何か需給調整参加しませんかということを話を進める上で話がしやすくなるという面は、これは確実にあると思います。  しかし、今の問いの中で、需給調整はこれで完璧になるのかというようなもし御趣旨の質問があったとすれば、完璧なんというのは多分私はこれは難しいと思います。ただ、今まで以上の、需給調整よりはうまくいく可能性がうんとあるということであります。
  153. 谷合正明

    ○谷合正明君 大臣にお伺いいたしますけれども、今の発議者の答弁に対して、大臣の考え方についてお伺いしたいと思いますが。
  154. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 米について申し上げますと、御承知のように、産地ごと、銘柄ごとに市場評価や販売状況に大変差が出てきているというのが現実でございまして、価格面におきましても大きな格差がそこにあるわけでございます。  生産調整につきましても、そういう意味で、全体として需給バランスが取れるように留意しつつも、そうした産地ごと、銘柄ごとの動向というものを踏まえて、農業者農業者団体がどのような銘柄の米をどの程度生産するかというのはやはり主体的に決定をしていきませんと、全体、需要に応じた生産体制というのが組み立てられないと、このように考えているわけでありまして、このために、食糧法におきましては、農林水産大臣が国全体の需要の見通しを立てた上で、生産者団体などが生産調整方針を定めて生産調整に主体的に取り組んで、行政はこれをサポートするという仕組みにしているわけでございます。  一方、民主党農業者戸別所得補償法案におきます需給調整の仕組み方でございますが、私もこの委員会におきます議論を聞かせていただいておりますが、いまだにそこのところが不明なところが多くございます。そして、生産調整に参加する方に支払われる補償金の額というものがメリット措置になって、それがあるから、そのメリット措置があるから生産者の方は抑制的にお米を作るであろうということを念頭に置きながら、行政側が生産者のそういう意向を踏まえて生産数量目標設定するというふうに規定をしたのではないかと思うわけでございますが、配分の主体が行政側になっております。  長年の体験、経験からいいますと、先ほど来の議論の中にもありますが、米を作りたいというその生産者の欲求というのは必ずしもそろばんずくだけではない要素が非常にありまして、土地を、水田を遊ばせておきたくない、よって米を、そろばんに合わなくても米を作っているというような実態もあります。  米に対する生産意欲というのは非常に高いわけでございますから、一度生産者側にその補償額を提示しながらといえ、生産者側から希望を取ってそういう作付け目標生産者側から上げたのを市町村、県、国と上げていって全体調整をして、これは多分多く出ると思うんです。多く出たのを、今度、国から県、市町村と下ろしていって現場で生産者と行政とが調整をするというのは、一度希望数量を出したものを抑えるというのは大変な行政との間に摩擦が起こってくると私は危惧するものでございます。かなりの生産者不満を持つと。しかし、その補償額というのは、ある算定の基礎をもってして決めたら、これは変えるというわけには多分いかないんでしょう。これでやってもらうというような調整を現場でかなりやらなければならなくなるというふうに危惧しております。  そういうようなことを考えますと、やはり初めから行政が個々の農業者ごとの生産量を設定するということではなくて、やはり今、今年から具体的に下ろしておりますけれども、産地ごと、銘柄ごと、そして生産者がこれだけは売ることができるというような見通しをJAなど生産者団体と調整をしながら決めていくという仕組みにしておかないと、実際、需給を全国需給、都道府県別需給、産地ごとの需給に合わせながら予定調和的に現場で農家ごとにこれを、生産目標量を満足いくような形でセットするということは至難の業だというふうに考えておりまして、その消費者ニーズに合致した生産を進めていくという意味では難しくなるのではないかと、こんなふうに考えております。
  155. 平野達男

    平野達男君 こっちに質問してください。こちらに質問してください。
  156. 谷合正明

    ○谷合正明君 丁寧な御答弁、本当にありがとうございます。平野委員の答弁したい気持ちは分かるんですが、時間の関係上、済みません。  関連してなんですけれども、民主党さんは、参議院選挙選挙公約の中で、米の三百万トンの備蓄体制を確立すると。それを超える余剰米と一定期間保有した備蓄米を海外援助やバイオマス利用に充てるとしておりますけれども、この考え方に変更はございませんでしょうか。
  157. 平野達男

    平野達男君 まず、その前に、大臣はある相当のイメージをこさえてしまって答弁されていますね。私らは、国、県、市町村の関与はさせますと。正直言って、それを具体的にどうするかというのはこれからの制度設計にもかかわる話ですから、かくかくしかじかのことは申し上げられません。ただ、私たちが言いたいのは、生産調整に参加している人たちと参加していない人の中に差が設けられていませんねということに対してはきちっと、今までと違う形でちゃんとした差が設けられていますから、その点においては需給調整をやりやすくなるんではないでしょうかということを言っているだけです。  そして、大臣のお話を聞いていると、多分、生産調整にうんと御苦労されているから今こういうお話があったと思うんですけれども、そういういろんな御苦労されている仕組みの中でこの形を入れるということは決してマイナスではないということを言っているわけです。  そして、今の問いでございますが、三百万トンの備蓄体制という選挙公約は今も変わらないかということでございますね。これは、マニフェストには備蓄のことは書いてございません。INDEXには書いてございます。それから、法律については備蓄のことはちょっと入れておりませんで、法律の外という話になります。  現段階ではINDEXは生きておりますから、我が方の方針は三百万トンの棚上げ備蓄ということになりますが、今党内では、これ本当にこれでいいのか、三百万トンの棚上げ備蓄やった場合の処理費はどうなるのか、本当に三百万トン備蓄する必要があるのか、そういった今様々な議論が起こっておりまして、この備蓄のやり方そして数量については、もう一度これは検討が必要ではないかというふうに思っております。
  158. 谷合正明

    ○谷合正明君 INDEXに残っているということで、ただ、むしろ今の答弁聞いておりますと、これむしろ三百万トンというのは撤回した方がいいのではないかというような御趣旨に承りましたけれども。それは例えば、三百万トンの根拠、数字の根拠であるとか、あるいは買入れ価格だとか売渡価格の差損の問題もあろうと思います、保管費用の問題もあろうと思いますが。  何が一番あれですか、見直しをしなきゃいけないと思っている点になるんでしょうか。例えば、三百万トンの根拠がまず崩れているのか。あるいは、三百万トン備蓄に係る財政負担、これが余りにも巨額になるのか。それが、果たして今回の戸別所得補償の一兆円という更に枠外に設けなきゃいけないのか。そういういろいろな論点があろうと思いますけれども、今どのように考えていらっしゃるんですか。
  159. 平野達男

    平野達男君 まず、三百万トンの根拠については、平成五年のいわゆる大不作のときに米を約二百五十万トン緊急輸入した経過がございまして、それを踏まえた上で三百万トンという数字を出しています。  今議論のありましたのは、これ棚上げ備蓄ですから、棚上げ備蓄でこれは何年で回転するかということが問題になってきますが、そのときに、例えば今、今年からやっとえさ米としてトン当たり三万円で売出しを始めました。それを多分市場で買いますと、トン当たり二十二万とか二十三万だろうと思います。あるいはもっとすると思います。その差額を補てんするのにやっぱり相当負担が掛かりますねということで、それだけの負担をするんであれば、例えば麦、大豆の方の振興にもっとお金使ったらどうかとか、やっぱりそういう議論が出てきているということであります。  そして、この備蓄というのは、私どもはいずれ備蓄はきっちりやらなくちゃならないというふうに思っておりますけれども、そういった観点からこの備蓄の在り方についてもう一度検討すべきだという声が今、中に出ているということを申し上げたわけであります。
  160. 谷合正明

    ○谷合正明君 今後検討しなきゃいけないということなので、ちょっと用意していた質問は、三百万トン棚上げをやるという前提に立った質問を用意しておりましたので、余りこれ以上……
  161. 平野達男

    平野達男君 是非、問題提起、問題意識として指摘していただければいいですよ。
  162. 谷合正明

    ○谷合正明君 いいですか。  例えば、トン当たり、先ほども多額な財政負担があると。例えば、えさとして売る場合にトン当たり、いろんな試算があると思いますが、十八万円ぐらい損失があると。これが例えば百万トンぐらいの規模になってくると一千八百億円ぐらいの損失もあるという試算もあるわけであります。  こういうのはなかなか、保管料についても、米一トン一年間保管するだけで一万円の保管料も掛かってくると。今だってそれは保管料が掛かっておるんですけれども、これを三百万トンにすれば、それは掛ける三の数字に、オーダーになってくるわけでありまして、なかなか、現実考えますと、私は、この三百万トンの備蓄体制というこれ従来から主張をしているものは、その当時どういう根拠を主張していたのかというところが問題になろうかとは思うんですね。  当時の主張と今の考え方の差があろうかと思いますが、当時は何を想定していたんですか。
  163. 平野達男

    平野達男君 これは農林漁業再生プランというのを今から四年前に、私もメンバーだったんですが、作りました。  そのときに、正直に申し上げまして、生産調整をめぐって激しい意見の対立がありました、中で。米は自由に作らせたらどうかとかですね。そこでやっぱりかなり割れていたんです。当時は、当時の考え方では、やっぱり生産調整は廃止すべきだという人と継続すべきだというところで、中で割れていたんです。そういう中で、余った米は備蓄に回せばいいじゃないかというような議論があって、三百万トンという中では数字が出てきたというのが、本当これぶっちゃけた、正直なところなんです。  そして一方で、そのときに議論があったのは、もみであれば長期貯蔵が利くとか安いコストで保管ができるとか、そういった議論もありました。  そして、今その流れの中で三百万トンというのが来て、前回の基本法の提出のときから、やっぱり需給調整はしっかりすべきだということで明確な姿勢出していましたので、そういった流れの中でこの棚上げ備蓄の水準ですね、そういったその方法なんかについて検討すべきだというような声が上がっているということでありますが、我が方は今回の政府の米の緊急対策の対案としても出しましたけれども、方式としては回転ではなくて棚上げがいいんじゃないかという方向ではほぼ固まっております。
  164. 谷合正明

    ○谷合正明君 三百万トンか百万トンか、その数字はまだ確定してないということですが、ただ、棚上げは方向性として出したということであります。  こういうのは、民主党のこの棚上げ備蓄という考え方に対して、これが例えば需給調整とか米価安定に対してどういう影響を及ぼしていくのか、これ大臣にお伺いしたいんですけれども。
  165. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 百万トンでありますのかあるいは三百万トンでありますのか、このことは民主党の方御検討中と今お話がございましたが、いずれにしても相当膨大な在庫を抱えるということになるわけで、その在庫は棚上げ備蓄方式だと、こういうお話でございますが、棚上げ備蓄としても、それはいつまでも保有をしているわけにはいかない、品質が劣化してきますからどこかで入れ替えていかなきゃいけないということで、これを他の用途に供するのでない限りは市場に出すわけですね。そういうような存在として、こういう膨大な在庫を持つということ自身がまずは市場に対して米価下落の思惑を含めて要因となるというふうに危惧するものでございます。  そうして、同時に、これがいわゆる食糧法上想定した百万トン程度という通常の在庫を超えて持つということを意味するとすれば、それが棚上げ方式になると。棚上げ方式になりますと、先ほど来お話ありました多額の保管料に加えまして、一定期間保有後の、これを援助に使うとかえさに回すとか、そういう差損というのは大変な財政負担になります。  委員もおっしゃっておられましたが、仮に一トン当たり二十四万円で購入した米を三万円でえさ用に販売するということになりますと、一万トン当たり約二十一億円の差損になりますし、これが三百万トンということでありますと六千三百億円という額になります。  同時に、この金利、倉敷というのは一トン当たり年間一万円と大体想定されますから、金利、倉敷だけで三百億円ぐらいの費用が掛かるということになるわけでございますので、財政資金の使い方としてはこのような使い方は政策の選択としていかがなものかというふうに考えるのでございます。
  166. 谷合正明

    ○谷合正明君 ここはもうこれ以上いいです。いずれにしても、参院第一党としてこの所得補償法案を出されるのであれば、これは当然、ここの備蓄体制というのはこれはセットに考えなきゃいけない話でありますので、ここがぐらぐらしているようでは、この法律案というのは私はまだ不十分であるということは指摘をさせていただきたいと思います。  次に、農地・水・環境対策について、これも確認をさせていただきます。  この法律、この法律というのは農業者戸別所得補償法案ですね、法案が通った暁には、今の現行の農地・水・環境対策というのは民主党さんは廃止する考えでしょうか。どのような取扱いをされるんでしょうか。
  167. 平野達男

    平野達男君 廃止をするというようなことは考えておりません。
  168. 谷合正明

    ○谷合正明君 つまり、この農地・水・環境対策なんですけど、またビラを出して恐縮ですけれども、自民党さんの方も三回連続ビラを出されておりますので、それを援用させていただく形で見てみますと、例えば用水、環境保全の名目で金を出してやるという、チラシの左側の下の方の話なんですけれども、水・環境対策費で総額三百億円と極めて少額にすぎず、農家の目をそらすために仕組まれたもの、選挙が終わったら順次撤廃される方向というのは、これはこの農地・水・環境対策のことを言っているんですか。
  169. 平野達男

    平野達男君 これは予算補助だから、要するに恒久的措置ではないということを言いたかったんだと思います。  選挙が終わったら順次撤廃される方向というのは、まあ正直申し上げまして、私もコメントのしようがございません。
  170. 谷合正明

    ○谷合正明君 正直なコメントだと思うんですけど、要は根拠がない多分書きぶりだと思うんですね。  私は、この農地・水・環境対策については、これはしっかり政府には今後引き続き取り組んでいただきたいと思うんですね。これは二十四年でいったん区切りが付く措置なんでありますが、当然私はこれが順次撤廃されるなんてことは思ってもおりませんし、当然継続すべきであると思っております。  まず、今農水省の大臣のお考えを、今の時点のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  171. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) かねて申し上げておりますけれども、いわゆる産業政策としての生産担い手対策と、それらの生産が行われています地域の水、環境を含めました地域対策というのは、やはり車の両輪として進めていくべき政策であるというふうに考えておりまして、そういう意味での地域対策の中でこの農地・水・環境保全対策というのは重要な役割を果たしているものというふうに認識をいたしておりますので、農地農業用水などの資源を将来にわたって保全していくために、また地域の共同活動を支援していくということのために、この対策は継続的に実施していく必要があると考えております。  本対策は、予算上は本年から平成二十三年までの五年間を対策期間といたしているわけでございますが、農業振興地域におきます農用地のおおむね半分での実施を目標として進めているところでございますけれども、この間は現行の基本的な枠組みの下で実施したいと考えております。また、その後の対策の在り方については、現行のこの五年間において対策を実施しつつ適切な政策評価というものを行いましてこれを検討をしてまいりたいと思いますが、今後とも、多くの地域でこれが取り組まれ、政策の更なる浸透に努めてまいりたいと思いますし、その政策の効果というのを見極めまして、これを拡充を要するんであれば更に一層拡充して進めていきたい、このように考えております。
  172. 谷合正明

    ○谷合正明君 是非、継続と拡充をしていただきたいと思いますし、また民主党さんにおかれましても、順次撤廃されるなんということを言わずにしっかりとここは取り組んでいただきたいと、そのように申し上げたいと思います。  次に、WTOとの関係について質問させていただきます。  この戸別所得補償法案は、WTO上、言わば当該年度の生産面積に基づく支払とされているわけでありますが、この法案が。何色の政策になると考えていらっしゃるんでしょうか。
  173. 平野達男

    平野達男君 まず米につきましては、需給調整がございますから多分青に入るんだろうと思います。それから、ほかのものについては、基本的には黄色に該当するんだろうというふうに思っています。
  174. 谷合正明

    ○谷合正明君 一部、例えば何か、これは緑とも言えるんじゃないかということを民主党さんの議員なんかでも言う方がいらっしゃるんですが、そこはどうなっているんですか、まとまっている話なんですか。
  175. 平野達男

    平野達男君 ええ、大変失礼いたしました。今、産地づくり交付金は緑であります。いわゆる生産調整を実施する中での加算金というものは、姿を変えてもこれは当然緑だというふうに言うことができると思っています。
  176. 谷合正明

    ○谷合正明君 済みません、確認ですが、麦、大豆は緑ということですか。麦、大豆に対する所得補償というのは緑というふうに言っているんですか。
  177. 平野達男

    平野達男君 多分黄色だと考えています。面の皮を厚くして緑と一緒にすることはできるかもしれませんが、多分認められないでしょう。
  178. 谷合正明

    ○谷合正明君 そういうんであれば、この黄色というのであれば、WTO上これは黄色という場合は削減対象政策であります。もちろん、AMSでしたっけ、まだ枠が十分あるからというような話も聞くんですけれども、ここの点についてはどのように考えていらっしゃるんですか。WTO黄色政策に該当する、黄色というか削減対象政策であるならば、将来的に安定した政策なのかどうか。この点について、どのように今考えていらっしゃるのか。
  179. 平野達男

    平野達男君 まさしく今委員おっしゃられたように、WTO上の上限は黄色政策、いわゆるAMSの削減ですが、日本に割り当てられている枠は約四兆円ございます。現在使っているお金は六千四百億円ということで、まだまだすき間はあります。ですから、これはもう日本に割り当てられています権利ですから、堂々とやっていいと思っております。
  180. 谷合正明

    ○谷合正明君 まだまだ余裕があるということでいいんですけれども、先ほどのあの関税の話と一緒で、関税だって米の関税が七〇〇%で、これが決して今後も下がらないとは言えないんだと。関税は引き下げないというふうに言ってきたけれども結果として下がってきたということを考えてくると、今の時点ではいいかもしれないけれども、将来にわたってどうなのかというところが問われるんじゃないかなというふうに思うわけでありますが。
  181. 平野達男

    平野達男君 今までの御質問は、民主党はそれを加速するんではないかという御質問、何か自由化、完全自由主義者とかというお話ありましたけれども、今の谷合委員の質問は、要するに政府がのんだら変わってくる、自由化をのんだら、自由化を進めたらそういう何というか状況も生まれるのではないかという、こういう御質問ですね。
  182. 谷合正明

    ○谷合正明君 まあ、自由化まではまだ。
  183. 平野達男

    平野達男君 いや、何かよく分かりませんが、私らはもう何回も言っていますけど、ガットウルグアイ・ラウンド状況でこれ作っていますから、この状況が変わったらその状況のときでやっぱり考えるしかないと考えています。
  184. 谷合正明

    ○谷合正明君 分かりました。今日は、WTO上何の政策と考えているのかというところで、民主党さんの考え方を確認さしていただきましたので、分かりました。  次に、もう一度、消費者、国民への理解が果たされているのかどうかという点についてお伺いしたいと思います。  第一回目の質問のときに、私は、今消費者というのは高い米価を払っている一方で、今度もし所得補償をやるんであれば、更に米に対する所得補償をするんであれば、いわゆる消費者負担とあるいは納税者負担、両方掛かってくるんじゃないかなという問題意識の上での発言でありまして、その当時、そのとき余り正確に私も発言してなかったかもしれませんが、そのとき舟山委員は、今は市場で、米価は市場で決まるから高い米価を価格維持しているわけじゃないんだと。だからそれは、高い米価を払っているという指摘は当たらないというふうに言われました。  ただ、一方で、こうも言えるわけでありますね、関税で米は守られていると。関税ということは、これは平野委員がこのように答弁されているんですけれども、関税ということは一種の間接的な価格支持政策とも取れると。価格支持政策というのは、農産物の国内の価格を上げておいて、それを消費者に転嫁していく、それで再生産を確保するということでありますと。ですと、いろいろ答弁聞いてくると、関税もしっかり守るんだと、そして、一方で直接支払もするんだということが今の民主党さんの考えであるならば、やはりいわゆる消費者として価格を払っているという面と、そして、納税者として新たに払わなきゃいけないという面が今回新たに生じてくると私は思っているわけであります。  そんな中で、今回、一兆円の積算根拠はない、そして財源についても明確なものはないと。果たしてそれで消費者の理解を得られると思われているんでしょうか。少なくともその点について得られると思うんであれば、ちょっと私は、そこまで考えて、それは発議者の何というか、ちょっと消費者に対する配慮がまだ足りないのじゃないかというふうに思うわけでありますが、どうでしょうか。
  185. 平野達男

    平野達男君 まず、これもじゃ米中心にお話を進めさせていただきますけれども、今の米価は標準的な生産費より大きく下回っているということはこの委員会でも何回も申し上げたとおりで、委員もそのことについては御承知のとおりだと思います。ということは、生産者が、今米を買うときに払っているお金では農家は困っているということなんです。そこで、どうしましょうかということで戸別農業所得補償が出てきて、そこに税を投入して、農業農村を守って、多面的機能維持を図りましょうということでありますから、ここはきっちり消費者に説明して理解を得られることだと思っています。  それからもう一つは、じゃ財源を示さないから消費者の理解を得られないんじゃないかというのは、これは財源として、要するにまず一つは、一兆円という枠はもう示しています。政治の決断としてこの一兆円をこれから予算編成しながらしっかり確保していきますというふうに言っているわけですから、まず消費者が、要するに理解得られなければ、いや、民主党なんか信じられないといって、次の選挙のときに駄目になるでしょう。私らは、そういうことにならないようにきちっと説明をしてやっていくということを言っているわけです。そして、それなりにこの枠組みの考え方をこれから、今度批判を浴びないようなパンフレットを作ったりとか、あるいはいろんな集会をつくりながら、こうやってアピールしながら理解を得ていきたいというふうに思っていますし、理解は十分得られるというふうに思っております。
  186. 谷合正明

    ○谷合正明君 得られると思うと言われますけれども、少なくともこの時点ではまだ得られたとは私は思っていないわけであります。何というんでしょうね、実際に一兆円獲得する宣言だというふうに宣言されたあの言葉はかなりセンセーショナルでございまして、本当にそれで大丈夫かという声も起きているわけであります、実際のところ。  ですから、国民の理解を得るということを非常に大事にされているということを民主党発議者も言われておりましたので、そういうことを考えるとやはりもう少し丁寧な説明が必要になってくると、私はそのように思います。  最後に、いわゆる農業構造の展望のところに質問移らせていただきたいと思います。  言わばこの所得補償法案が、基本的に原則すべての販売農家、その販売農家対象面積も十アールに引き下げていくんだということで、かなり対象を広げられました。で、所得補償をすることによって私が担い手は育ってくるのかと聞いたときに、まず農業全体、農村全体の底上げを図っていくんだと、そうした中から担い手が育っていくという趣旨で承ったんですけれども、この所得補償によって本当にその担い手というものが育っていくのか、この点についてもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  187. 高橋千秋

    高橋千秋君 この委員会の中でも、何度もそれぞれの地域農業の今の危機的な状況というのはそれぞれやり取りがございましたけれども、私の地域見ても、耕作されている中心的な世代というのがもう七十前後ですね。それで、今のこの米の下落を見ても、このままではもう農業やっていけない、そういうふうに考えている方が非常に多くて、特にもうあと数年の間にこのままほうっておけば離農をする人というのは確実に増えてくるし、離農せざるを得ないという人が確実に増えてくるのはもう委員認識されているとおりだと思います。  その中で、我々はこの戸別所得補償を使って、今そういうふうに考えておられる方々にちゃんと所得を補償することによってその地域でこれからも農業を続けていただける、そういうふうな確信を持ってこの法案を提出をさせていただいているわけで、委員の質問のように、これで離農が止められるのかどうかという御質問だと思いますけれども、私たちはこのことによってそういう小規模農家、それから地域でその農地を守る、農業を守るというふうに一生懸命考えているけれども、もうやっていけない、ぎりぎりだというところの方々を私たちは救って、それぞれの離農を防いでいくということはできるというふうに考えています。
  188. 平野達男

    平野達男君 ちょっと補足させてください。  今日午前中の生源寺参考人意見を聴いて、ああ、やっぱりなと思ったことがありました。それは、生源寺参考人も固定するという言葉を使いましたね、農業の構造を。ああ、こういう前提で担い手法案のあれをつくったのかというのを改めて分かりました。  私どもは、その固定ということ、これは全く間違っていると思っています。今、農村というのは、私はこの委員会で昨年来、中川昭一大臣のときからずっと申し上げていますけれども、固定なんて言っているような状況じゃないですよ。今までにない物すごい急激な変化を今迎えつつあるんです。だから、どんなにどこをどういうふうにやろうが、固定なんていうのはあり得ないですよ。  そこで、今何が起こっているかというと、今、先ほど言った、高橋議員も言いました、小さな農家が赤字出しながらやっている。そこで今、一歩崩壊のところを防いでいるんですよ。そういうところにどういう措置をやっていくかというのが大事だというふうに思います。  こういう戸別の所得補償が固定だというから、固定だからおかしいなんていうのは違うんです。この急激に変化していく中に、私はむしろ余りにも激し過ぎるから、これを黙ってほうっておったら本当に激しい何かが起こって、その結果として耕作放棄地が出てくる、集落が崩壊する。そういう今激しい変化にあるからこそ、四ヘクタールだ、二十ヘクタールだって小難しい理屈並べるんじゃなくて、まずは今頑張っている人、頑張ってくださいというふうな形で支えておいて、その上で、しかし、残念ながら、何回もこれ申し上げますけれども、六十八歳、七十歳の人たちが頑張っていますけれども、あとこの人たちは十年も二十年も頑張られませんよ。  そういう中で、そういう状況を踏まえた上で、その地域に合った、集落営農いいですよ、集落営農やればいいですよ。だけれども、十ヘクタール、二十ヘクタールでなくたっていいかもしれない。五ヘクタールからスタートしたっていいと思いますよ。担い手で、私はこれからちょっと余裕できたから利用権設定規模拡大してもいいと言う人がいるかもしれない。今、一ヘクタール、ちょっと引き受けて二ヘクタール、この人だってその集落にとったら立派な担い手ですよ。  そういった考え方、正に多様な担い手というのをさっき、今日、山田委員もおっしゃいましたけれども、そういうものを育てていかなくちゃならないということだと思います。  繰り返しになりますけれども、固定という考え方で担い手の、要するに私は、今日、本当に確信しましたけれども、あの考え方で担い手育成の要するに品目横断を制度設計されたというのは大変な間違いだというふうに思っています。
  189. 谷合正明

    ○谷合正明君 私、離農が減っていくというのはまあ分かるんですけれども、担い手が育って、それは多様な担い手なんですけれども、多様な担い手が育っていくのかと。先ほど、離農は減っていくと、一時的にでも歯止めをしていくんだと。その上で、やがて担い手が育っていくと。その上での、やがて、そこにどうつながっていくのか、私、まだはっきり分からないんです。  むしろ、多様な担い手というのは当然ですけれども、担い手育成であるとか意欲ある農家に支援を集中していくということも、それも大事な視点であると私は思っているわけであります。  この点についてどうでしょうか。
  190. 高橋千秋

    高橋千秋君 担い手に集中していくということですが、まず担い手がいないわけですからどこに集中するのかという話ですよね。その前に、その地域でそういう農業を持続的にやっていただいている方をちゃんと守っていくということが担い手の次の担い手に育っていくわけで、それを崩壊しておいて、急に担い手出てこいといっても出てこないですよね。  今、それぞれの地域でやはり農業をやりたいと思っている方はたくさんいるはずなんです。だけど、今のままではもうとても、農業に新たに従事しようとか親のものを継いでいこうという方がもう今の所得の段階ではできないということからどんどん離農していくわけで、その担い手を持続してつくっていくためには、今の段階でやるべきことを全部やって、その上で担い手をつくっていく、その方々に集中をしていくということであればまだ可能かも分かりませんが、担い手に集中していくということになれば、今担い手がいないのに担い手にどうやって集中するんでしょうか。私はそこが必要ではないかなというふうに思っています。
  191. 谷合正明

    ○谷合正明君 じゃ、その上で担い手を育てていくということであれば、やはり今の所得補償法案というのはまずは一時的な歯止めであるというふうに理解をしてよろしいんですね。担い手をつくっていくということはまた別途これから、その暁にはということですね。ということだというふうに認識をしたわけであります。──いや、済みません、時間があれなんで。  現実問題として、ここが一番、政府民主党さんの一番の考え方の違いであります。現実問題として、原則すべての販売農家、その対象も広げてきた、その販売農家に対する所得補償というのがいわゆる将来の農業構造展望へどうつながっていくのかと、ここを大臣の見解、評価について伺いたいと思います。
  192. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 当委員会におきます民主党提案法案をめぐる論議を伺っておりながら、また提案者のいろいろな御答弁を伺いながら、いろいろ分からない部分の一つが今の点でありまして、いろいろ御説明をお聞きしておりますと、もう今緊急の事態になっているんだと、こういうお話でございます。その意味では、この民主党法案というのは緊急避難的な性格なんではないかというふうに思うんですね。  この食料農業農村基本法で定めております二十一条にある望ましい農業構造を確立するんだという政策方向、はっきり法律で明らかにされているわけでありまして、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するために、営農の類型及び地域の特性に応じて、農業生産の基盤の整備の推進、また農業経営規模拡大その他の農業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずるものとするというふうに明確にされています。  その意味では、この提案者の方々に、一体どのような農業経営農業構造のビジョンをお持ちなのか、どのような農業経営の姿というものを描いておられるのか、そして農村地域地域農村構造というものをどんな姿形でとらえようとしておられるのか、その点のところをもう少し明確にお示しいただきたいなと、こういうふうに思うのでございまして、今のような緊急避難的な対策で補償金を交付するというようなことで、私の昨日の答弁は不評を買っているようですけれども、しかし高齢化は依然として進んでいくと。今安定した兼業をやっておる人も、定年を迎えてリタイアをしていくと安定兼業としての兼業収入も入ってこなくなるというような状況は年を追うごとに出てくるわけでありまして、農地を有効に利用するという利用のシステムというものをどういうふうに組み立て、そしてその農地の利用の中でどういう経営がこれを、農地利用を進めていくかといったようなことがこの基本法との関連において明確にされないと、政策の正当性あるいは政策整合性というのは図られないんではないだろうか、こんなふうに思うのでございます。  そういう意味で、果たしてこれからの農業の姿というものはここから描けるのかどうかということについて大変危惧の念を持っております。
  193. 谷合正明

    ○谷合正明君 私も、民主党提案戸別所得補償法案では、現状の零細な農業構造に歯止めを掛けるという役割は果たすかもしれないけれども、しかしその先の望ましい農業構造に対してどう展望を切り開いていくのかというところがまだ見えてこないと、そういうふうにこの三回の質疑を通じて実感しております。  今回、いろいろ長い質疑やってまいりましたけれども、いずれにしましても私は、対象農家対象品目を生産する販売農業者と非常に幅広くとらえている点ではありますが、ただ、これでは将来の農業構造の展望には必ずしも直結しないと。もう一つは、やはり予算財源そして積算根拠等を含めてまだまだ不明確なところがあるということを指摘させていただきまして、私の質問とさせていただきます。  ありがとうございました。
  194. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  今日は、食料自給率の問題についてお聞きしたいと思います。  本法案の説明でいいますと、十年後に食料自給率が五〇%で、将来的には六〇%に達するように目標設定しておりますけれども、二〇〇六年の十二月の政策マグナカルタ、この資料の中に入っていますけれども、このマグナカルタの中を見ますと、この中では、食料完全自給を目指すというふうになっています。このことの意味と、それから、出している法案との関係について明らかにしていただきたいと思います。
  195. 舟山康江

    舟山康江君 御指摘のとおり、政策マグナカルタ等にそのような記述があるのは承知しております。  まずは、今日午前中にも何人かの委員からの御指摘等ありましたけれども、世界的に今食料需給が逼迫しているというのはもう皆さん御承知のとおりでありますし、幾つかの国におきましては今輸出の規制措置をとっているような国もあります。そのような非常に国際需給が厳しい中で自給率向上を目指すこと、これは安全保障の基本として何としても取り組まなければいけないことだというふうに思っております。  その第一歩として、まず法案の中では五〇%を置き、完全自給を目指すというのは、やはり安全保障を考える上で本来あるべき姿、政党としての基本的な姿勢としてそのようなことを掲げております。
  196. 紙智子

    ○紙智子君 そうしますと、食料完全自給ということでいうと、どういう手段で、どういう段取りでそれをやっていこうということなんでしょうか。
  197. 平野達男

    平野達男君 今の食生活、これをこのままを前提にして食料完全自給を、一〇〇%というのは、これはなかなか難しいと思います。しかし、さはさりながら、国である以上、国民食料についてはできるだけその国の食料確保するというのはどの国も基本的方針なんだろうと思います。  それで、じゃその上でこの自給率をどうやって上げていくか。それは、一つは食生活の、これも何回も申し上げましたけれども、できるだけ地産地消を進めていくとか、それから、日本人は今どうしてもオーバーカロリーということで、欧米化が進み過ぎて、必ずしも健康にも良くないというようなことも言われております。そうした食生活の改善でありますとか、そういったことがまず一つあると思います。  それから、他方、やっぱり今の自給率の低い作物についてはできるだけこの自給を高めていくということでございまして、しかしこれには、今回の農業者戸別所得補償でもそうなんですが、やっぱりコストが掛かるということでございまして、そのコストを国民皆さん方に示しながら、これだけのコストであれば自給率はこれだけ上がっていきますというようなことをやり取りしながら自給率をできるだけ高めていくということが大事だというふうに思っていまして、まずは五〇%、できれば六〇%まで高めていってその先の自給率という、更に高めるという意識を明確に持ってこの農業政策に当たるんだということを、そういう姿勢を示したものであります。
  198. 紙智子

    ○紙智子君 そうしますと、完全自給ということはずっと先の将来、目指すところの先のところの目標ということで、そこに向けて取りあえずは五〇%、そして六〇%というふうにしていくという考え方ということなんでしょうか。  もう一つ、この資料の中に農林漁業再生プランというのが載っていますよね。この中見ますと、(3)のところに食生活スタイルの見直しというのがあって、これは自給率のアップも考えていくと、それは食生活の見直しによってということなんですけれどもね。国産食料の消費拡大自給率の算定の基礎となる食料消費、すなわち食生活の見直しによる自給率アップも考えていく、例えば米の消費等は五十年前の半分の六十二キロ、一人となっているが、これを一人五キロ余計に食べれば二%自給率がアップするということが書いてあるわけですよね。  そうすると、この本法案食料自給率目標五〇%というのにこれが含まれているのかどうか。それから、国民に、じゃどのようにして米五キロを余計に食べてもらうというふうに考えておられるのか。この点はどうでしょうか。
  199. 舟山康江

    舟山康江君 まず、一点目の御指摘でありますけれども、この五キロ余計に食べればというところは含まれております。  そして、どのようにして消費の拡大を目指していくのかというところは、先ほど平野委員からもお答えいたしましたけれども、例えば日本型食生活の推進ですとか、あと地産地消、それから、今学校給食で大分米飯給食の回数が増えてきたとはいえ、まだ地域によってばらつきがありますし、平均まだ三回以下というふうになっておりますので、こういった食育にも絡めまして学校給食での米飯給食の普及、また地産地消の推進、このようなことも必要だと思います。また、最近、米粉のパンなども非常に普及し始めておりますけれども、こういうので別の形で米の消費拡大を図るということも、取組も大事だというふうに思っております。
  200. 紙智子

    ○紙智子君 私は、この食料自給率を食生活の見直しで引き上げていくということ、もちろん意識して、そういうことをみんな意識するというのはこれは大事なことだとは思うんですけど、しかしながら、引き上げることに重点を置くということはちょっと問題があるんじゃないかなと思っているわけです。それで、食生活の見直しができないから食料自給率が上がらなかったと、だから責任は食生活を変えた消費者にあるという議論になると、これは本末転倒になるなと。  そこでお聞きしたいのは、なぜ日本の食料自給率がこんなふうに低下してきたのか。政府は食生活の西洋化ということが主な原因というふうに言われるんですけれども、民主党としてはそのことについてはどのように原因を分析されているでしょうか。
  201. 平野達男

    平野達男君 まず、先ほどの舟山発議者の答弁の中に、五キログラムを余計に食べてもらって自給率を二%上げるということが五〇%の自給率向上の中に含まれているというようなニュアンスの発言がございましたけれども、先ほどの、ちょっと訂正させていただきますが、こういう食生活の改善によっても自給率を上げていくということを申し上げたわけで、具体的に五キログラムをどんどん消費を増やして二%ということの数字までを今の五〇%の中には織り込んでいるわけではないということをちょっと申し述べさせていただきます。  そして、その上で次の質問でございますが、なぜ欧米化の、自給率が下がったかということですね。これはもうなかなかいろんな要素があると思いますが、まあ私なんかはもう学校給食はコッペパンでしたし、脱脂粉乳で育ちました。当時言われたのは、米食うと頭が悪くなる、パン食えば頭が良くなるとか、そんなことも言われたし、魚よりは肉を食べた方が大きくなるとか、今にして思うとあれはだれがそんなことを言ったんだろうかなというふうに思いますが、結果として米離れが進んでパンの消費量が増えてきた。そして肉の消費量も増えてきた。もちろん、所得水準が上がって食生活が変わったということもございますけれども、そういった様々な要素があったんだろうというふうに思います。  ただ、一貫して今こうやって思いますと、やっぱりもっと米を大事にしようとか、日本食を大事にしようというような、そういった姿勢はどこかからかちょっと欠け始めていたような気も今はしております。そんな答弁でよろしいでしょうか。
  202. 紙智子

    ○紙智子君 私どもは、我が党としては食料自給率低下の原因の第一のやっぱり問題というように思っているのは、これ一九六一年ですね、農業基本法にあったというように思っているわけです。なぜかというと、そこで選択的な拡大が決められたと。当時、アメリカの余剰農産物を大量に日本に輸出しようということになって、それで、そこに邪魔にならないものを日本で作らせるというのがあったわけですね。だから、小麦や大豆や飼料、それから油ですね、油料、こういう作物については米国からの輸入に依存をすると。で、日本は果実や酪農や畜産などの生産を拡大するという方向性が定められてきたと。  この結果、穀物自給率が一九六〇年のときにはこれは八二%だったわけですけれども、一九七〇年、このときには四六%まで下がっているわけです。それで、小麦でいいますと、自給率は六〇年のときには三九%あったわけですよね。それが七〇年のときには九%まで下がると。大豆の自給率も六〇年は二八%だったものが七〇年には四%まで下がったわけです。  穀類のこの輸入量というのは、六〇年、四百五十万トンだったものが七〇年には千五百八十万トンですから、三倍以上に増えたわけですよね。この結果、カロリーベースの食料自給率というのは六〇年の七九%から七〇年の六〇%、一九%、まあ二〇%近く下がったと。本当に急落したと言っていい下がり方を示したわけですけれども、この点についてはどのように受け止められるのか。まず、ちょっと民主党さんが答えていただいて、その後、大臣の方から答えてもらいたいと思います。
  203. 平野達男

    平野達男君 私は、農業基本法にはいろんな見方がございますけれども、私はもう本当に単純にあそこで言われた選択的拡大というのは国民の消費動向に、変化に応じた国内生産振興を図るんだという思想であったろうと思います。  しかし一方で、今日ずっといろいろ議論になっていました、農産物の自由化ということが議論になりましたけれども、この間、農産物の、残念ながら、残念ながらといいますか、自由化が進んだというのも事実です。そしてまた、為替も随分変わりました。安い農産物が為替相場の変動によって大量に入ってくるようになってきた。そういう中で内外価格差という問題が今まで以上に顕在化してきているわけですね。そういう中でこういう自給率が下がってきたということだと思います。  一方で、やっぱりその流れに余りにも今まで安易に、安易にというのは言葉が悪いんですけれども、任せ過ぎたということもあると思います。やっぱり国内産の、できるだけ、地産地消じゃないですけれども、国民食料はこの国で生産したものを供給するんだという姿勢をもっともっと明確に出していれば今日のような状況にあるいはならなかったかもしれないという、そんな気もいたします。
  204. 紙智子

    ○紙智子君 じゃ、大臣の方からお願いします。
  205. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 今、平野議員からお話がございました。私も基本的な認識としては、この農業基本法の言う選択的拡大という言葉は実は消費のことを言っているんではなくて、消費の変化というものを予測しながら、消費が米中心の食生活から変わっていかざるを得ない、畜産とか果樹とかそういう方面に変わっていくのに応じた生産構造、生産体制をつくらなきゃいけないというのがあの旧農業基本法であったわけでございまして、その農業基本法を受けまして、果樹の振興対策とか畜産の種々の生産対策でありますとか、いろいろな関連施策を集中的に講じたわけでございまして、選択的拡大というのは米からほかの需要の方に変化させようという意図は全くなかったのでございます。  さてそこで、所得向上に伴いまして食生活が変わってまいります。これは我が日本だけではありませんで、今中国辺りは大変な悩みを抱えておりますし、韓国の変化のテンポも非常に早くなっております。そこで、そういうのをなすがままに任せるのではなくて、健康、栄養管理の面からそれぞれもっと食育の指導を徹底しなきゃいけないということは強力に進めなきゃいけませんけれども、それにしても、ここまで拡大をしてきた肉類あるいは油脂類の消費の水準というものを安定的に供給していくためには、例えば油に、油脂類についていえば、油に搾れるような大豆が日本で作れるかという問題になるわけでございます。日本の大豆は作ってもお豆腐などに向くんですけれども、脂肪分が少ないものですから油用にはならないんですね。ですから、油脂類が増えていけば輸入大豆が増えるというようなことになります。  それに、小麦についてもいろいろな需要が拡大した、パンの需要についても、日本の小麦はうどんなどには適していますけれども、なかなかパン用には適合しない。もちろん、試験場などで品種改良で新たな油脂分の多い大豆の品種改良とか、あるいはまた適合するような小麦の改良とか、そういうのを進めておりますよ。進めていますけれども、しかしそれは限界があるという意味で、二十七年の需要の予測を立て、それに見合った生産をしていくという意味で、自給率目標につきましても四五%、そして目標を更にその先の目標として五〇%というのを掲げたのはそういう事情でございます。
  206. 紙智子

    ○紙智子君 聞いた以上のことをちょっと言われると時間が過ぎちゃいますので、この次また聞きますので。  それで、食生活が変わったということを常に言われるわけですよ、自給率が下がっていることの背景ということで。でも、これはあくまでも現象面だと思うんですよ。なぜ変わったのかというと、今私言いましたように、やっぱり政策が、そういう政策が変わったことで現に自給率は下がってきた、これは事実だと思うんですね。  それで、更に言いますけれども、食生活の洋風化というふうに言うわけですけれども、そのきっかけになっているのが、その次でいうと一九六九年です。第二次資本自由化で、このとき飲食業が対象になりました。日本でマクドナルドやケンタッキーフライドチキン、これが外資による外食産業が展開を始めたということがあるわけです。外食産業の展開でいいますと、低価格を武器にやらなきゃいけないというので、そうなると食材を輸入食品に依存するということで進められてきたわけですね。これが食料自給率にマイナスに作用すると。  そして、食料自給率低下の第二の原因ということでいうと、今度は一九八五年のプラザ合意というものがありました。これはアメリカで、当時レーガン大統領だったわけですけれども、レーガン経済の政策の失敗と、これを日本は当時ドル安の通貨政策協調で救うということで話をしたわけですよ。これによって日本は九年で二・三倍の円高になったわけです。そして、この円高は国内農産物や国内食料品の価格競争力を奪って、大手の食品メーカーや大手の外食産業や大手スーパーは商社と一体になってこの食料輸入を加速していったわけですね。農産物の開発輸入というのもこのときからどんどん加速すると。その結果、食料自給率は、一九八五年、このときは五三%だったのが九四年には四六%まで下がったわけです。  この点についてどう思われるか、また民主党さんと政府からということで、ちょっと短めに答えていただけませんか。
  207. 平野達男

    平野達男君 今、紙委員が言われたことについて、ここはおかしい、ここは違うんじゃないかというようなことを言う必要はないというふうに思います。大部分はそういうことは言える面だというふうに思っています。  大事なことは、そういう状況の中で、繰り返しになって恐縮ですけれども、日本の食料生産をどうやって守るか、農村農業をどうやって守るか、その姿勢、覚悟に少し欠けていた面があるんじゃないかなというような感じが私どもはしておりまして、だから今回、農業者戸別所得補償法案というのを出して、この四〇%を割って三九%まで落ちた自給率をできるだけ上げていこうということを今考えているということでございます。
  208. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 今委員が御指摘になりましたような為替管理の変更でありますとか、あるいは各種の食品の、スーパーもあるいはマクドナルドなどのようなものの進出といったものは、これは大きな経済の流れの中で発生をしてきているわけでございます。それを法的に国が規制をするというような手段を持ち合わせているわけでございませんので、そういう消費者側の需要の変化、そういうことを望む流れというようなものが非常に激しく進行をしていった結果であります。  そういう変化に対して、国内の食材の供給の体制というものをどうつくり上げていくのか。それで、そこのところが十分でなかったために輸入食材が急速に拡大していったというようなことについては、私もそんな認識を持っております。
  209. 紙智子

    ○紙智子君 これまで何度か、食料自給率がなぜ下がったと思いますかということに対して、いつも答弁で政府の方から出てくるのは、一つはやっぱりそういう食べ方が変わったという問題と、それから生産者のニーズに合わない生産の在り方というようなことが返ってきていたわけですけれども、私は、やっぱりもっとその背景にある政策でもってこういう事態が起こったということについてはきちんと自覚をすべきだし、そのことにもう一度やっぱり焦点を当てていま一度考えてみる必要があるんだと思うんです。それで、今多くのことの中で、そういう部分もあるというお話だったかなと、大臣の答弁はそうだったかなというふうにちょっと受け止めたんですけれども。  もう一つ、第三の低下の原因ということで指摘をしておきたいのが、一九八八年ですけれども、このときは牛肉・オレンジの自由化でした。そして、農産物の十二品目が自由化をされました。それから今度は、九五年にWTO協定が受入れということになったと。このとき、米を含む輸入農産物の更なる増加ということになっていったわけですね。牛肉・オレンジの自由化で、一九八八年に五八%あった牛肉の自給率は二〇〇〇年の段階には三三%まで下がりました。そして、ミカンの生産は一九八八年は二百万トンあったんですけれども、二〇〇〇年には百十四万トンまで半分近く減少しました。農産物の十二品目の自由化で、リンゴの自給率は八八年のとき九八%だったものが二〇〇〇年には五九%まで下がりました。米も一〇〇%自給だったのが九五%まで今下がっていると。  こういうふうに見ますと、日本の食料自給率というのは、私は、日本政府政策の結果もたらされたものであって、食生活の洋風化という自然現象のものでないというのは明確じゃないかと。この点について再度、民主党さんと政府から答弁をお願いします。
  210. 平野達男

    平野達男君 貿易の自由化でありますとか、為替の固定相場制から変動制への移行などといったことは、日本だけではなくて世界的に進んできた傾向ですね。その一方でヨーロッパは、そういう中で自給率が上がってきた国が多いです。何をやってきたか。これがやっぱり直接支払なんだろうと思います。そうした貿易の自由化が進んでくる、あるいは為替相場が変動するという中で、農業の生産に係る内外価格差が顕在化してきたわけです。日本は直接支払ということを明確に打ち出してきたのはつい最近じゃないでしょうか。恐らく政府としてきちんと出したのはこの品目横断対策が初めてだと思います。我が党は四年前に、これからの農業政策は直接支払でやるべきだ、これを農林漁業再生プランで打ち出しました。  アメリカは、農業大国で規模も大きいからそういう直接支払をやっていないか。やっていますね。何でアメリカが綿花の世界最大の輸出国か。これ、輸出補助金を付けているからです。直接支払だけじゃなくて輸出補助金まで付けて農業を守っている。何でヨーロッパが砂糖の輸出国か。これは、三圃式農業という伝統があって、どうしてもビートを生産しなくちゃならない。そういったことの背景があって、直接支払をしながら農業を守っている。そこに相当の補助金を使っているということなんです。  ところが、日本はそういう努力をしてこなかった。いろんな国際の波の中において日本の農業をどうやって守るべきかということについての原則を確立しないままここまで来たということがこの結果だろうと思います。  国民の生活は変わります。国民の生活、食生活は変わってくる。嗜好も変わってきます。これは止めようがありません。マクドナルドが入ってくる。これも私は、大臣、多分、ほぼ同意します。入ってくるなと言いたいですよ、それは、本当は。だけど入ってくる。これは今の貿易の枠組みの中ではしようがない。しかし、その中でどうやって日本の農業を守るかということについては、やはり先ほど言った直接支払あるいは所得補償というような制度を利用しながらやっているというのが世界的な潮流であって、日本も今やっとそういう方向性に走った、その入口に立っているという、そういう状況ではないかというふうに思います。
  211. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 委員が、オレンジ・牛肉の自由化など、それらを契機として外国の農産物の攻勢を受けて著しく後退をしていったと、それは、オレンジ・牛肉にとどまらず、他の作物についてもそうではないかというお話がございました。  政府としては、この国際的な貿易の拡大ということに総合的に対応をしてきたつもりでございます。全体として言えば、この貿易の拡大によって実は我が国の国益自身は非常に大きな利益を受けてきたわけでございます。我が国の国益を判断するに当たってどうするかという中で、私は通じて農業政策にかかわっておりましたので、ちょうどオレンジ・牛肉の自由化問題などもそうでございますけれども、これを守るべく、いろいろな手段を講じ、知恵を出し、対応をしたことをついこの間のように思い出すのでございますけれども、国全体としての貿易の拡大による国益の、利益のためにこれは譲歩せざるを得ないという事態に陥り、そして、譲歩したことに伴って国内対策も精一杯の生産対策などを講じてきたつもりでございますが、これが十分に農業生産を再編成するところまでにつながっていかなかったというようなことは紛れもない事実でございまして、今のような苦しい状況に立ち至ったということは申し上げざるを得ないと思いますけれども。  しかし、その間、果樹でありますとか畜産、これは酪農品も含め、肉類まで含めた畜産全体についての生産性の向上などによる供給力の持続的確保ということについては、それなりの効果を上げてきたものと考えております。
  212. 紙智子

    ○紙智子君 貿易というのは私も大事だとは思います。ただ、やっぱり本当に、それぞれの国の経済の主権とかあるいは食料の主権とか、そういうところを本当にしっかりと尊重して進めなきゃいけないものだというふうに思うんです。  それで、私、WTOの香港の閣僚会議のときにちょうど議員会議がありまして、たしか若林大臣も一緒でしたし、あのときは松岡当時の農水大臣も一緒でしたし、主濱さんも一緒だったと思うんですけれども、そこに参加をしたんですけれども、ちょうどWTOから十年目ですよ。それで、十年たって、ずっと私は疑問に思っていたんだけれども、一体各国ではどんな議論になっているんだろうかと、日本の中でこういう影響を受けながら各国で問題になっていないはずないし、どんな議論が議員の中ではされているんだろうかという問題意識を持っていて、それで、そういう意見を聞ける場にちょうど行けて非常に勉強になったんですね。  そうしたら、やっぱり十年たって各国の議員が発言していたことは、十年間で一体何がもたらされたんだと。結局、この地球の中で富めるところはますます富む、貧しいところはますます貧しくなる、そういう格差がもっと広がることになったんじゃないのかと。力ずくで力の強い国が弱い国を経済力でもって押し付けるということは変えなきゃならないという発言と、やっぱりずっと出されて強く思ったのは、WTOのその協定も公正なルールにすべきなんだと、そういう意見が物すごく強く出されていたんですよね。そういう意味では同じ思いなんだなということを痛感したわけですけれども。  ですから、すぐに今WTOの関係で価格支持はいけないということで、緑だとか黄色だとか青だとかという何か細かい話になっているんだけれども、でも今、日本が陥っているところは三九%という異常に低い自給率で、それこそ国の存立にかかわるような重大なところに立っているときに、やっぱり日本政府は、これではやっぱり国を維持できないんだから、だからWTO協定そのものを本当に変えていくと、それぞれの主権を守るという立場で変えていくという方向でどうして言えないのかということを常々思ってきたわけです。  これはもうWTOでしようがないんだ、もう圧力はしようがないんだということではなしに、そこをやっぱり変えていく取組というのが、各国の今挙がっている意見、いろんな意見出されていますけれども、そういうところから見てやっぱり主張していくことが大事だと思うし、国益のためということなんですけれども、確かに工業の分野やそういういろんな分野含めてもっと発展したいというのはあるんですけれども、やっぱり全体の中で食料という問題の位置付けがそこで余りにも薄過ぎるんじゃないのかということを指摘をしたいと思うんです。  そういうところに立って、今後のやはり農業農政ということで、私も全力を尽くしたいと思いますし、そのことを一言申し上げて、終わらせていただきます。     ─────────────
  213. 郡司彰

    委員長郡司彰君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、市川一朗君が委員辞任され、その補欠として西田昌司君が選任されました。     ─────────────
  214. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  ただいま議題となっております農業者戸別所得補償法案予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本法案に対する意見を聴取いたします。若林農林水産大臣
  215. 若林正俊

    ○国務大臣(若林正俊君) 参議院議員平野達男君外四名提出の農業者戸別所得補償法案につきましては、政府としては反対であります。
  216. 郡司彰

    委員長郡司彰君) これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  217. 野村哲郎

    ○野村哲郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、民主党提出農業者戸別所得補償法案に反対の立場から討論を行います。  そもそも民主党提出戸別所得補償法案については、民主党が多数の議席を獲得したさきの参議院選挙での公約を具体化するものであると、我々自民党議員のみならず、多くの国民はそう理解していたと考えます。ところが実際には、選挙公約ですべての販売農家対象にすると強いメッセージを発しておきながら、野菜農家や畜産農家対象にする考えがないこと、強制減反、生産調整は廃止するとし、米が自由に作れるような印象を与えながら実質的に生産調整を行うものであることなど、参議院選挙において農村地域を中心に強い関心が寄せられた公約を実行できる法案とはほど遠いものでございます。  法案の内容に関します反対理由を述べる前に、公党として著しく誠実さに欠けるこうした姿勢に断固抗議せずにはおれません。  続いて、法案の内容に関しまして、反対の理由を申し上げます。  まず第一に、今回提出された法案は、法案審査に必要な具体的内容を伴っていない点であります。  審査を通じ、支援対象となる農産物の範囲、生産数量目標設定、配分の考え方や実施状況の確認の方法、支援単価の水準、単価に加味するとしている要素などについて答弁を求めてまいりましたが、あいまいかつ観念的な説明に終始し、結局、具体的にはほとんど何も明示されませんでした。  一兆円という金額の積算根拠、財源についても同様であります。高らかに宣言された一兆円という投入額ありきで、具体的な内容はすべて後で考えるという話であります。これでは、法目的に掲げる食料自給率向上地域社会維持活性化にどのような効果があるのか、農家所得はどうなるのか、全く検証できません。  米の需給調整に効果があると主張する点についても、具体的な支援水準や備蓄運営の考え方などを明確にしないままの根拠のない主張にすぎません。  一方では、国民の大事な税金を無駄遣いするおそれがあるばかりでなく、農家を始め都道府県、市町村に過大な事務負担を課す弊害さえ否定できません。  第二に、我が国農業の将来展望を描かないままに提出された法案である点です。  農業従事者の減少、高齢化、グローバル化の進展など、我が国農業が直面する状況にどのように対応し、国民農家が安心できる将来展望を示すことは、政府与党政策に対案を打ち出す政党として最低限の責務であります。  提出者の答弁にあったように、我が国農業においては現在でも小規模農家や高齢な農家が重要な役割を果たしておられることに全く異論はありません。しかしながら、すべての販売農家を同列に扱うことで我が国農業にどういう展望が開けるのか、明確な説明はありません。むしろ、戸別を強調し補償金を支払仕組みでは、地域農家が知恵を出し合って将来を考え合うような機運の誕生を阻害しかねないと考えます。  農家に甘い言葉を掛けながら、実のところその農家農業の将来を、そして国民の食を十分に考えているとは言い難い法案と断じざるを得ません。  このほか、指摘したい点は枚挙にいとまがありません。  最後に、民主党提出、農業者戸別所得補償法案は、投入額の大きさばかりが宣伝される一方、農家のため、地域のため、国民のためにどのような具体的効果を持つのかが説明されない未熟極まりない法案であることを強調して、私の反対討論といたします。
  218. 青木愛

    ○青木愛君 民主党・新緑風会・日本の青木愛でございます。  私は、民主党・新緑風会・日本を代表して、ただいま議題となりました農業者戸別所得補償法案に対して、賛成の立場から討論を行います。  まず、日本の農業現状ですが、食料自給率は、統計のある昭和三十五年度の七九%から、平成十年度には四〇%まで落ち込んでしまいました。政府は、平成十二年三月に食料農業農村基本計画を策定し、食料自給率目標を掲げて諸施策を講じていました。しかし、食料自給率は全く上がらず、平成十八年度の暫定値ではついに三九%と、四〇%を切ってしまいました。販売農家数もこの十五年間で二百九十七万戸から百九十六万戸と三分の二に減少しました。また、農業に就業している方の六割が六十五歳以上と高齢化が進んでおり、多くの農村で後継者がいないという状況です。  さらに、耕作放棄地は平成十二年から平成十七年までの五年間で一〇%以上も増加し、およそ三十九万ヘクタールに至っております。今頑張っている農業者方々が今後リタイアせざるを得なくなったとき、耕作放棄地が大幅に増大するのではないかとの懸念があります。このように、日本の農業農村は重大な局面に直面しております。  現在、政府は、農業担い手に支援を集中化、重点化するとともに、平成十九年四月には、効率的かつ安定的な農業経営体が中心となる農業構造を確立するために、一定以上の農業経営体や集落営農を対象にした品目横断的経営安定対策を導入しました。私どもは、効率的で安定的な農業を否定するものではありません。しかし、政府品目横断的経営安定対策は、経営規模によって国の支援する農業者を入口で絞り込むという究極の選別政策であり、農業構造改革を性急に推し進めるものであります。このままでは、農業構造改革より先に、個々の農業者の離農、そして農村の崩壊が進んでしまいます。  また、農業農村は、食料の生産はもとより、国土や自然環境保全、そして地域社会維持活性化といった多面的機能を担っています。農業農村の役割は、大規模農家小規模農家、専業農家や兼業農家など多様な農業者と、非農家など様々な住民によって担われているのであって、一定規模以上の農業経営体、すなわち政府の言う特定の農業担い手だけでは決して果たすことができないものであります。  このように、政府品目横断的経営安定対策では、重大な局面にある日本の農業農村を立て直すことは難しいと考えます。  他方、農業者戸別所得補償法案は、対象農業者をその規模、その形態によって選別することはせずに、生産数量目標に従って主要農産物を生産するすべての販売農家に対して戸別に補償金を交付することにしています。これは、地域における農業者の共生、農村集落を始めとする地域社会維持、そして活性化に直結するものです。  また、対象となる農産物は、政府品目横断的経営安定対策では五品目だけですが、農業者戸別所得補償法案では、米、麦、大豆など標準的な生産費が標準的な販売価格を構造的に上回る主要農産物対象にしております。このことにより幅広い農産物が支援の対象になるので、実効性を持って農業者経営の安定が図られることと考えます。  さらに、主要農産物の種類ごとに生産数量目標設定し、その目標に従って生産する販売農業者を支援することとしております。このことにより、実効性のある需給調整が実施されることとなり、また食料自給率向上を確かなものとすると考えます。  以上申し上げたように、元気で力強い日本の農業農村を再生するために、また、食料国内生産確保し、食料自給率向上させるためには、この農業者戸別所得補償法案を実行に移す以外、方法はないと考えるものであります。ゆえに、農業者戸別所得補償法案に賛成いたします。  委員の皆様の御賛同を賜り、全会一致で可決いただきますようお願い申し上げまして、討論を終わります。
  219. 谷合正明

    ○谷合正明君 私は、公明党を代表し、農業者戸別所得補償法案に反対の討論を行います。  我が国農業が直面する厳しい現状、すなわち農業従事者の減少と高齢化に見られる農業構造の脆弱化、それらに伴い顕在化している耕作放棄地の発生や農地農業用水等の維持管理の問題、そしてWTOの動向や自由貿易協定の進展を見据えた国際競争力の強化に的確に対応していく必要性については、与野党の区別なく一致しているものと考えます。  今回、民主党が国内の食料生産の確保農家経営安定を目指し、戸別所得補償法案を提出されたことについて、委員会審議を通じ、一致点を見いだすことができないか真剣に議論をさせていただきました。しかし、残念ながら、法案の根幹にかかわる多くの部分について具体的かつ説得力のある説明がなされたとは言えず、賛成することはできません。  以下、反対の主な理由を申し上げます。  反対の第一の理由は、対象農家対象品目を生産する販売農業者と非常に幅広くとらえている点であります。これでは、特に水田農業で顕著な小規模零細な農業構造が温存され、いつまでたっても農業担い手は育ちません。民主党は、今求められている消費者ニーズに合った生産体制の確立や待ったなしの国際競争力の強化については、具体的にどのような手順で実現していかれるおつもりでしょうか。  反対の第二の理由は、本法案の実施に必要な予算規模とその財源確保策が全く明確にされていない点であります。  まず、予算規模については、参議院選挙でも声高に叫んでおられた一兆円で果たして収まるのかどうかを指摘しましたが、本委員会の審議では、一兆円の積算根拠はない、一兆円を確保するという宣言だと、意外にもすんなり準備不足をお認めになりました。  また、財源確保の見通しについても、政府の無駄を省く、公共土木予算削減するお考えのようですが、具体的にどういった事業を幾ら削減するのか、最後まで明らかにされませんでした。これでは国民の理解は到底得られません。財源の問題は、右肩上がりの高度経済成長のような時代を別にすれば、限りある財政の中で最大の政策効果を上げ、後世に借金のツケを回さないためにも、是非ともはっきりさせておく責任が我々政治の側にあると考えます。それが明らかにされない以上、賛同することはできません。  以上、反対の理由を申し述べましたが、最後に付け加えておかなければならないことは、参議院選挙マニフェストや政策ビラで書かれた、すべての販売農家対象とする、生産調整を廃止する、たとえ米一俵五千円になっても、中国からどんなに安い野菜や果物が入ってきても、すべての販売農家所得は補償され農業が続けられるなどの説明が、本法案では必ずしもそのとおりにはなっていない点です。これは有権者を誤解させたおそれがあるだけでなく、重大な公約違反ではありませんか。本法案の具体性と実現性の乏しさが今後徐々に明らかになったとき、農政不信が一気に高まり、緒に就いたばかりの農業構造改革にも悪影響が生じるのではないかと大変危惧の念を抱きます。  農業農村現場への混乱を生じさせないためにも、綿密な制度設計と我々が納得できるような具体的で説得力のある説明を強く求め、反対の討論といたします。
  220. 紙智子

    ○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、農業者戸別所得補償法案に賛成の討論を行います。  この間の自民党農政、とりわけ圧倒的な農家切り捨て品目横断的経営安定対策の強行によって、日本農業農村は今深刻な事態となっています。このような中で本法案は、米、麦、大豆など主要品目について生産費と販売価格との差額を補てんするものであり、しかもその対象をすべての販売農業者としております。  これが実現すれば、日本農業農業者に対する支援措置になります。特に米を対象としたことは、現在生産費を大きく下回っている米価の下落対策としても有効なものと言えます。また、中山間地域等直接支払制度を法的に裏付け、恒久化することは、中山間地対策としての制度を安定化することになります。  なお、日本農業を守るためには最低でも現状の国境措置維持が必要です。この点で、民主党農産物輸入自由化に対する基本姿勢をめぐっては問題点を指摘せざるを得ませんが、今置かれている農業者の救済につながるとの判断から、賛成といたします。  以上、討論を終わります。
  221. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  農業者戸別所得補償法案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  222. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 賛成多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十五分散会