○小里
委員 政策ビラの中で、米、たとえ一万円であっても補てんをしますと書いてあったわけです。それを、
生産費までも補償しないということはもう明らかになったわけであります。これは事実として確認をできると思います。
言うまでもなく、
食料自給率向上のためには、
生産過剰基調の米から、
自給率の低い麦、大豆等への転換、
生産拡大が必要となります。そのためには、麦、大豆について、米並みかそれ以上の収益性、所得を補てんしないと、実効は上がらないわけであります。
そこで、米について仮に平均の
生産費まで全額補てんし、その所得につり合うように麦、大豆に転作奨励金を乗せるとなりますと、大ざっぱな計算では、麦、米、大豆で現状程度の作付をするだけで、一兆円の費用が必要になるんです。これは、今回お出しになった試算値、そこで使われた数字を根拠にしております。それでいて、現在の
生産構造は変わらないということになります。
また、仮に転作が進み、麦、大豆の
生産が拡大すれば、それとともに費用はふえ、一兆円を大幅に上回っていくということになるわけであります。このため、米は平均の
生産費全部は補てんをしないということにして費用の圧縮を図られたのではないか、そんなふうに解釈をいたします。
気がつけば、麦、大豆の
支援単価が現状の水準を下回ってしまっている。要するに、一兆円ありきでありまして、数字をいじっているだけで、
現場の実情から乖離している、
制度の目的からそれてしまっているという
指摘をさせていただきたいと思います。
そもそも、さらに言えば、
民主党のビラで、米一俵一万円の所得補償とあるわけですが、これを行えば、米だけで一兆二千億円なんですね。米以外の
品目も含めて、先ほどからありましたように、貿易の完全自由化を前提にした
価格下落分、これを補償するということを想定しますと、先ほどのOECDの試算によりますと四兆七千億円が必要となるということになるわけでありまして、とにかくその政策ビラがいかにも無責任である、そこから発議者も苦労しておられるんじゃないか、そんなふうに推測をするわけであります。
農産物貿易自由化についてでありますが、これは先に答弁をいただきました。だから、
指摘だけにとどめさせていただきたいと思います。
政策ビラの中で、米一俵一万五千円が五千円になっても、あるいは、中国からどんなに安い
野菜や果物が入ってきても、その差額を補償しますと書いてあるわけでありますが、これはもう貿易の自由化を前提としているとしか思えない記述であるんですね。それは
指摘をしておきたいと思います。
そこで、先ほど発議者からもお話がございました、
消費者負担、すなわち関税による
価格支持をやめて、税負担、すなわち直接所得補償に移行するという
考えがやはり
民主党の
考えの根底にあるというのは間違いないと思うんです。
国際社会もそう見るんですよ。国際社会もそう見るんです。例えば、先日、
オーストラリアから国
会議員が見えて、日本の農林幹部に会われたそうなんですね。日本は戸別所得補償を導入するらしい、それであれば、もう関税とかなんとか言わなくてもいいじゃないかという
指摘をされたそうであります。そのようになってしまうんです。戸別所得補償
制度の導入で、日本もいよいよ
農産物の完全自由化に踏み出したか、そういう解釈を受けてしまいかねないんですね。
そういう所得補償でございますが、肝心なことは、所得補償には輸入調整
機能がないんです。関税が撤廃されますと、安い海外産品がどんどん入ってきて、
農産物価格が暴落をする。これを所得補てんしても追いつかないわけであります。品質やロット面で劣る
品目、あるいは内外
価格差の大きな
品目を中心にして、
価格は大きく暴落をする。そして、よいものをつくる、安定した収入を得る機会が失われて、
農家の
経営意欲が失われる、そして
自給率は下がっていく、これは想定をされるわけであります。そのような危険をはらんでいるのがこの戸別所得補償
法案である、そんなふうに思います。
そこで、発議者に申し上げたいのでありますが、我々も戸別所得補償
制度なるものを、このような
制度を全面的に否定するものではないんです。仮に貿易自由化が、あってはならないことでありますが、想定外に進んでしまって、日本の
農家は大変な
危機に瀕する、そういうことになれば、これは、米も含めて所得補償
制度の
充実を図っていかなければいけない、すべての
品目にわたってこれを図っていかなければいけない。これは
品目横断制度上もなし得るという措置になっているわけでございます。
ただ、申し上げたいことは、その前にやるべきことがあるということであります。すなわち、貿易自由化
交渉に毅然として対応して、日本の
農業を守っていく、そしてまた、
経営の体質の強化を図っていく、これが要諦である、このことをまた確認をさせていただきたいと思います。
ちなみに、
民主党のマニフェストにおきましても、貿易自由化と所得補償がセットになっているかのごとく記述がなされているわけであります。
自民党のマニフェストには、重要
品目の確保とか上限関税の導入阻止としっかり書いてあるわけでありまして、やはり、
民主党と
自民党では、その力点の置き方が違うということを
指摘しておきたいと思います。
貿易自由化につきましては、先ほどからもう
議論が相当時間を食っておりますので、ここで一応控えさせていただきます。
続きまして、
対象農産物についてなんですが、
民主党は、
参議院選挙で、すべての
農家に所得を補償すると主張し、かなりの
農村票を取り込まれたと認識をいたします。ところが、参議院での答弁を通じまして、選挙時の話とは随分違ってきたな、
対象農家をかなり限定するということが明らかになってきたわけであります。
例えば、政策ビラの中では、先ほど申し上げましたように、中国からどんなに安い
野菜や果物が入ってきても、すべての販売
農家の所得は補償される、さらに、その政策ビラの中のQアンドAにおきまして、
野菜、畜産等も所得補償の
対象としますと書いてあるんですね。ところが、
野菜や畜産、酪農は
対象にしないということであります。これでは、
民主党の所得補償を信じて投票した
野菜農家、畜産
農家、酪
農家を裏切ることになるんじゃないか、そんなふうに思います。
また、米についても、所得はおろか
生産費すら補償しないということでありまして、さらに、
対象作目に
生産数量
目標を課しまして、これに従わない
農家は補償しないということであります。これも、
対象農家を限定していると解釈せざるを得ないわけであります。
以上、失礼ながら、公約違反とのそしりは免れないと思いますが、公党としてどのように対応されるのか、お伺いします。