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桝谷参考人 石川県野々市町から来ました
桝谷と申します。よろしく
お願いします。
私どもの取り組みにつきましては、お手元にこういったパワーポイントのプリント、それとA3二つ折りのプリントが行っているかと思いますが、それをもとにお話をさせていただきます。
まず、石川県野々市町でございますが、そこの一ページ目の下に世代別人口が載っておりますが、非常に若い町でございまして、金沢市の南部に位置しまして、ベッドタウンでございます。青少年人口が石川県一の町でございます。団塊の世代、六十歳前後の方よりも三十歳前後の方が多く、いまだに小
学校の増築等を行っているような町でございまして、町内に金沢工業大学及び石川県立大学と二つの大学も抱えております。
そうした町ですので、当然、青少年健全育成
活動というものを町づくりの核にしなければ、町全体の
教育、文化の質の低下を招くということで、二ページ目に移りますが、町ぐるみで青少年健全育成
活動は昭和の終わりぐらいから積極的にやってまいりました。
そういう中で、どこの町でもございますように、愛と和の一声運動とか、町内一斉美化清掃等の通常的な
活動のほかに、下にございますように、住民運動として、町内が交通の要衝でございますので、ラブホテル建設の反対の運動とか、ゲームセンター出店阻止運動とかというような住民運動も町全体で行っております。これが、“のの
いちっ子を育てる”町民
会議という団体でございます。町内のPTA、
学校、その他
子供にかかわる団体六十団体が加盟して、
一つの大きな町民運動として行っております。
教育委員会の絡みとしては、私も
教育委員会職員でございますが、事務局の一翼を担いながら、町全体での運動を進めているわけでございます。
そこで、平成十二年ごろから、我々は、実は
携帯電話の問題に気づき始めました。
子供たちが少しずつ校内に持ってきたり、町の中で、特に大
学生あたりが大
学生狩りというような犯罪に巻き込まれたり、そのときにはよく、有職青年等が
携帯を使って集団で大
学生を暴行し、お金を奪うというような
事件も町の中に入ってまいりました。そういうことで、平成十二年ぐらいから、特に
携帯電話の問題について、二ページの下にございますような学習会を進めてまいりました。
そうこうしているうちに、平成十四年に、いよいよ
携帯が
大人から
子供へのツールというようなことが顕著になってまいりまして、特に
学校内において着信音が鳴ったとか、
メールで少しずつ
いじめのようなものが始まりました。
そういう中で、特に
学校サイド、
中学校の
先生方から、もう
学校だけではこの問題は対処できない、町全体で、町の
大人皆さんでこの問題に対処していただかないと
学校だけでは負い切れないという声が上がりまして、町の
生徒指導連絡協議会で協議をいたしまして、そこに、町づくり運動を今までやってまいりました町民
会議がその運動の主体となって、
携帯電話を小
中学生に持たせないという運動を平成十五年度からスタートいたしました。
その背景となりましたのは、まだ十四年度の末の段階で、町内において
小学生が七・一%、
中学生で一四・四%と、今考えれば低い
数字でございますが、そういった
数字でございましたので、まだこれは持たせないということが有効に働くのではないだろうかと。
そしてもう
一つは、先ほどからいろいろな
先生方がおっしゃっておるとおり、
思春期、
小学生等にこの
携帯電話というものが
本当に必要なのかどうか、その便利さよりも弊害の方が大きいのではないか、
社会性の未熟な
子供たちがこういったものを
本当に持っていいのかという論議を我々はいたしまして、持たせないというような運動を提起したわけでございます。
これが三ページの下にございますように、「プロジェクトK(携)」と。その当時、
NHKさんがプロジェクトXというものを大々的にやっておりまして、ぱくりました。Kというのは、地域の連携の携と
携帯電話の携でございます。あくまでも、地域の連携がないとこの運動は推進できないというもとで、この「プロジェクトK(携)」というものを行いました。
それで、表紙にございますように、一番先にやったのは、こういうロゴマークを最初につくらせていただきました。町内随所にこのロゴマークを張っております。また、
学校の
先生方が出すプリント、
教育委員会の封筒、その他ありとあらゆるものにこういったロゴマークを使って、
携帯は危ないんだぞと、まあ、業者からすれば鬼のような取り組みでございますが、こういった取り組みを進めておるわけです。
それで、実際、
子供の実態はどうかというふうなことですが、こちらのプリントをごらんください。最初のページのところに、昨年度末の実態が出ております。
携帯電話の所持率でございますが、中学二年生、これは町内全体の保護者
アンケートでございます、一二・三%です。先ほどの
尾木先生の
発表に比べますと非常に低い
数字になっております。
また、その運動に対して保護者がどう支持しているか、右下にございますが、八六・三%の保護者が積極的に支持、または必要な運動というふうに認識をしております。保護者の認識は、ほとんどが連れ買いです。A子ちゃん、B子ちゃんが持っているから私も欲しいわ
お母さんというのが、
子供が
携帯を持つ取っかかりでございます。ですから、二〇%を超えてから、
本当に必要な
子供が持っているのではなくて、
いじめに遭わないために
携帯を持つ、
友達と仲よくするために
携帯を持つというのが実態ではないかなというふうに考えております。
続いて、少し中のページに移りますが、ここは
携帯と少し離れますが、
子供の生活実態
調査でございますので、そこで明らかになったことを、少し脱線いたしますが、御報告いたします。
ここで注視すべきところは、保育園児の方が
小学生よりも平均の就寝時間が遅いということです。今、文部科学省は「早寝早起き朝ごはん」運動を展開しておりますが、この実態をいかが見るか。特に、なぜ我々がこの世代に注目をしたかと申しますと、まさしく、この保護者の世代が
携帯初期世代でございます。この方々がどういう
教育をこれからしていくかということが非常に大きな注目を集めなければならない世代だと思っておりまして、この保育園の保護者の世代の
子供たちの就寝時間が遅い、これは非常に注視すべき結果ではないかなというふうに思っております。
続いて、三ページ目の中の右下の方に、パソコンの使用の
状況ですが、
携帯だけではなくてパソコンの実態を調べました。それで、
中学生の家庭では、八三・二%の家庭に、
インターネットに接続したパソコンが町内にございます。それで、
子供たちが使っているのは実際に九五・九%ですので、ほとんどの
子供が、八〇%近くの
子供が家庭で
インターネットに接続したパソコンを使える状態にあります。
ところが、次の最後のページをめくってください。実際にフィルタリングをかけている家庭は一八%しかございません。つまり、我々は
携帯を持たせないという運動をしておりますが、家庭ではフィルタリングがかかっていないパソコンが既に八〇%以上
子供たちが使える状態になっているという実態も我々は把握しております。
そういう
状況でございますが、本論のページに戻らせていただきます。四ページ目をごらんになってください。
我々の運動ですが、別に法規制するわけでもございませんし、条例をつくるわけでもございません。
携帯電話の会社に圧力をかけるわけでもありません。こつこつと、保護者や
子供、住民の
皆さんで学習を積み重ねながら、学習をベースに、
携帯を持たないということを町ぐるみで行っております。
四ページには、小
中学生への学習機会の提供ということで、小
学校五年生から
中学校三年生まで、毎年のように、このような形で、町民
会議のつくったプログラムをもとに、
学校の
先生方や保護者の
皆さんに協力いただいて、こういった教室を開いております。また、保護者への学習機会ということで、PTAの
皆さんを中心にこういった教室等も行っております。
五ページ目をお開きください。
何分、こういった問題を学習しようにも、はっきり申しまして、我々のもとには
情報がございません。要するに、学習する教材がないんです。いろいろ国の方では、いろいろな協会等も含めまして、教材をつくっておりますが、実際に地方の末端までに、
インターネットで見ようと思えば見れるんですが、そういった教材がないというのが実態でございまして、我々は手づくりで、うちの町の
子供たちに合う教材ということで、こういった教材をつくりました。これが
中学生向けのプログラムでございますが、こういった学習教材等を
自分らでつくっております。
また、五ページの中ほどに写真がございますが、
子供たちに標語を考えていただいて、
携帯は要らないんだよという標語を立て看板にし、こういった立て看板を公共施設や
学校の前に張っております。ですから、
子供たちは、
携帯の危険性を、あえて難しい文章を読むわけでもなく、
学校の校門をくぐれば、
携帯は要らないんだよというようなことを毎日見たり聞いたりしておるわけでございます。
また、この運動が我々の市町村だけにとどまってはいけないだろうということで、近隣の市町村にも呼びかけをして、五ページの下にございますのは、能美市のプログラムでございますが、我々が協力しながら、能美市さんにおいてもこういった学習プログラムをつくっております。また、いろいろな交流事業を行いまして、群馬大学の下田
先生等の御協力もいただいております。
続いて六ページ目でございます。
六ページ目には、先ほど、
携帯初期世代の三十歳から三十五歳前後の保護者に対してどうこれから提供していこうか、特に
中学生の
携帯が非常に問題が多うございますが、では、
小学生や保育園の保護者にどう啓発をしていくかということを考えましたところ、この
携帯の問題の背景にテレビやゲームがあるのではないかと。我々の学習の積み重ねの中で、
携帯にすっと入っていくとき、
子供たちはゲームから入っているんじゃないかということで、実は、メディア全体の問題を考えようということで、昨年度からこういったテレビやゲームを含めたメディアの学習会を行っております。
というのが我々のおおむねの
活動でございますが、そこで、六ページの下に、布水
中学校、町内に二校
中学校がございますが、そのうち一校の
携帯電話の所持率の推移の表を載せてございます。当初、平成十五年前後は二〇%ございましたが、現在は一〇%前後になっております。
全国平均から見るとかなり低い数値となっております。
そこで、七ページをごらんください。
管内でございます松任
警察署の不良行為の件数の推移を載せてございます。赤いラインが私どもの町のラインでございます。管内的には数値が低くなっているのでございますが、特に野々市町の
数字が低くなっている。
携帯を持たないからイコールではございませんが、
携帯がこういった不良行為に及ぼす
影響を考えますと、決して関係なくはないだろうというふうに考えておりますので、我々も時々こういった
データを注視しながら運動を進めておるわけでございます。
同じように、松任と書いてあるのが旧松任市でございますが、松任市については
携帯を持たせない運動はしておりません。ということで、逆に、不良行為等は松任市においては上がっているという
状況も片一方にございます。
そこで、運動の成果と課題でございますが、先ほど申しましたように、八ページ目に移ります、成果で申しますと、保護者はやはり八五%以上の方がこの運動を支持しております。と申しますのは、不必要なものを買わなくてもいいという消費者の
視点でこの運動がまず成立しております。また、こういった危険性のあるものを持つことによる
いじめ等のこういったトラブルからも回避できるということもあって、保護者自身にすれば非常に助かった運動となっております。そういう中で、
子供たちへの浸透ということで、非常に低い所持率となっております。
それで、次に行きます。
九ページ目に移らさせていただきます。本年度につきましては、
携帯電話対策事業のほかに、特に我々は、WEBチェッカーズというものを町でつくりまして、
大人たちが余りにも
子供たちの
インターネットや
携帯の使い方がわからないということで、実は、我々の有志の仲間でこういったWEBチェッカーズという、十ページの中ほどでございますが、こういったロゴマークも入っておりますが、みずからウエブ巡視を行って、今まで五回ほど定例会を開いておりますが、地元の
中学生の
いじめにつながるような書き込み等を見つけております。やはり
大人たちが
子供たちの世界もしっかり見ているんだぞというメッセージを
子供たちに送ることも、これから非常に重要な課題ではないかなというふうに思っております。
また、十一ページ目をお開きください。
先ほどメディア全体の問題を町ぐるみで行っているというふうな話をいたしましたが、十一ページ目にございますように、ノーテレビ・ノーゲームデーというものを本年度から実施しております。ことしの九月から実施いたしました。やはり、
携帯電話を持たない、テレビを見ないだけではなく、家庭の中でこういったテレビやゲームを消して親子で話し合う時間が必要ではないかという運動の提起も片一方でやっております。
そういう中で我々が気づいたことは、下に書いてありますように、
情報化が進んでも大切なことは変わらないということです。ゲームより、テレビより、
携帯よりも楽しいことを知っている
子供を育てようということです。また、
大人の役割というのは、大切なことを
子供にしっかり伝えるということ、不必要なものは買わないということです。それで、生身の人同士のぬくもりを持っていこうということです。
また、次の、運動の気づきですが、
子供の
携帯の使い方と
大人の
携帯の使い方は決定的に違います。
大人は仕事のために使います。
子供は楽しむために使います。ですから、
大人から幾ら見ても
子供の世界は見えません。そしてもう
一つは、
ネット社会は決して安全なコミュニティーではないということです。コミュニティーの原則は、信頼と秩序です。今の
ネット社会には、二つがあるんでしょうかということです。
最後でございますが、
携帯電話の所持は自己責任とか家庭の問題というふうにおっしゃいますが、実は、この
ネット社会、我々
大人は通ったことがないんです。
子供たちの手を引いて横断歩道を渡して、自転車を買ったとき危ないよと注意をして、免許証を取ったとき注意をするようなことは、だれも通っていないんです、この
ネット社会は。そういう意味で、
子供たちにこの道の歩き方を教える
大人は非常に少ないんです。そうなってくると、だれが
子供たちに伝えていくのかということがこれから大きな課題ではないかなということで、我々は町ぐるみで
子供たちに伝えようとしております。
最後でございますが、
携帯電話、こんな便利な道具を
子供が肌身離さず持ってもいいのですかと書きましたが、電話機とファクスとテレビとゲームをベッドの中に入れて
子供を寝かすのですか、一昔前で考えれば、そういったことを我々はやっておるわけです。
そして最後に、私
たちは、指先一寸の
子供を育てるのですかと。指先一寸です。口先三寸という
言葉もございますが、今の
子供は指先一寸だけで
コミュニケーションをしようとしています。そういった
子供たちを我々日本人は育てるかどうか、再度考える時期に来たのではないかと思いまして、私の
発表を終わらさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)