○藤原正司君
内閣委員長の藤原正司でございます。
内閣委員会に付託されました
国家公務員法等の一部
改正案の
審議状況につきまして、
中間報告を申し上げます。
その前に、一言申し上げることをお許しいただきたいと存じます。
私が本院に籍を置かせていただいて六年、幾たびかこの場に立たせていただきました。会派を代表しての質問、
討論、そして
委員長報告など、
内容や
立場は異なっても、一つ一つが私にとって心躍るものでございました。
しかし、本日、今ここに立つことは、そのこと自身、断腸の思いとしか言いようがありません。それは、本日の
中間報告が、
委員会の持つ
審査権を剥奪し、
審議を打ち切り、議決を行う上でのステップにすぎない中で、私がその役回りを演じさせられているからだけでは決してありません。
与党を含むほとんどの
皆さんが感じておられる、今
国会運営の異常さに要因があります。
立法府である
国会に行
政府である内閣、官邸が平然と手を突っ込み、とりわけ
参議院に対しては、本年が通常選挙を控えた特別の年であり、
十分な
審議の環境が整っていないことを承知の上で
法案を送り続け、その成立を求めるとともに、このためになりふり構わず
会期の延長すら行ってまいりました。このことに対し、
皆さんは、与
野党を超えて怒りを感じられたはずです。にもかかわらず、まるで本院が法律製造会社の下請であるかのごとき官邸の振る舞いに対し、唯々諾々と
中間報告で対応するとの結論しか取り得なかった本院に無上の悲しみと怒りを感じざるを得ないのです。
参議院は、これまで
衆議院のカーボンコピーと言われながら、自らの
改革のため、長い間
改革努力を行ってまいりました。独自性を具体的に持つための努力も行ってまいりました。近年においても、決算監視機能の強化、ODA特別
委員会の設置等、与
野党が一致して努力してまいりました。
参議院の役割強化のためには与
野党の壁はない、すなわち同志だったのです。しかしながら、本院がこの暴挙に走るならば
改革の努力は水泡に帰します。
参議院は自爆の道を歩むしかないのです。
あえてもう一度申し上げます。
参議院の同志の
皆さん、今、この場、このときは、
国家公務員法等の改正が成るか成らないかだけが問題ではないのです。私たち
参議院が
参議院らしく行動できるか否かが問われているのです。
参議院の存在そのものが問われているのです。
皆さんの理性ある行動を心から願うものであります。
それでは、
内閣委員長といたしまして、
国家公務員法等の一部を改正する
法律案につきまして、現在までの
審査の経過を御
報告申し上げます。
本
法律案は、国家
公務員に係る
制度の
改革を進めるため、人事評価
制度の導入等により能力及び実績に基づく人事
管理の徹底を図るとともに、離職後の就職に関する規制の導入、再就職等監視
委員会の設置等により退職
管理の適正化を図るほか、官民人材交流センターの設置により官民の人材交流の円滑な実施のための支援を行う等の
措置を講じようとするものであります。
本
法律案は、四月二十五日に内閣から
衆議院に
提出されました。しかしながら、
国会法が常会の
会期を百五十日間と定め、また
政府が
法案提出の締切りを三月中旬とするのは、
国会における
審議期間の
確保のためであり、
法案提出の締切日を大幅に過ぎて、
会期の後半、しかも連休直前にかかる重要
法案を
国会に
提出し、その成立を強引に図ろうとすることは
国会の
審議権を著しく制約するものと言わざるを得ません。
また、本院が先議し、既に
衆議院に送付していた重要で緊急性の高い道路交通法
改正案の
委員会審査を
衆議院では後回しにし、官邸の強い圧力によって後から
提出された
国家公務員法等改正案の
審査を優先させたとするならば、これは正に官邸によって結果的に
参議院の意思を軽視したものと言わざるを得ません。
本
法律案は、
衆議院の
審議を経て六月七日に本院に送付されました。これは、当初の
会期終了日であった六月二十三日のわずか二週間前であります。本院におきましては、六月十一日に本
会議において趣旨
説明の聴取と
質疑が行われ、同日、本
法律案は
内閣委員会に付託されました。
会期末までの残された
審議期間はわずかであり、また他の重要
法案も山積し、関係
大臣の本
委員会への
十分な
出席が困難視される中で、
十分な
審議時間の
確保は当初から無理があったと言えます。しかしながら、
法案が付託されました以上、
委員長の職責として、
理事会等での各会派の
十分な話合いと合意に基づき、中立公正かつ円満な
委員会運営を旨として、粛々と
審査が行われるよう最大限の努力をしてまいりました。
委員会におきましては、
法案付託の翌日に趣旨
説明を聴取した後、これまで、
公務員制度改革の基本法制に先行して
法案を
提出する
理由、中央人事
行政機関の在り方、
法案による
天下り規制の実効性、ハローワークとは別に官民人材交流センターを設置する必要性、再就職に係る事前規制を廃止する
理由、能力・実績主義及び人事評価の在り方、国家
公務員の
キャリア制度の見直し、
公務員に対する労働基本権付与の是非等について
質疑が行われてまいりました。
しかしながら、本
法案には
委員会において更に精査すべき点が山積しております。
与党には、形式的な
審議時間数のみをもって
十分な
審議が行われたとする考え方がありますが、これは
参議院の自殺行為につながり、
参議院の役割を形骸化させるものであります。
委員会質疑では、
公務員制度改革の中での
法案の位置付けに関する
質疑に対して渡辺担当
大臣はまともに答えず、
大臣の持論を長々と述べるといった状況が頻発しており、これは
与党委員の
質疑に対しても同様の傾向が見られました。さらに、六月二十七日の
質疑におきましては、再就職規制違反に係る処罰規定について、渡辺担当
大臣の答弁が
訂正を繰り返しながら二転三転し、担当
大臣自身が
法案そのものについて
十分な理解をしていないことが明らかになりました。このような状況では、
参議院らしい
審議が行われたとは到底言うことができません。
衆議院では、
安倍総理の
出席を求めて
委員会質疑が行われました。これに対して、本
法案の成立に強い意欲を示し、そのために
会期延長まで強行してきたと言われている
安倍総理に対する
質疑すら
委員会では行われておりません。
残り
会期は一週間もあり、
内閣委員会において更なる
審査を続けることが不可欠であるにもかかわらず、本日突然、このような理不尽とも言える
中間報告を行わざるを得ないことは、良識の府、そして再考の府である
参議院の存在意義を根底から否定するものであることを指摘せざるを得ません。
国会法第五十六条の三に基づく
中間報告制度は、
委員会中心主義の例外として
委員会の
審査権を強制的に剥奪するものであり、本来、
国民生活や安全にかかわる緊急の場合に限られるべきものであります。しかしながら、
平成十六年六月、前回の
参議院通常選挙前の
国会で行われた金融二
法案に係る財政金融
委員長の
中間報告に続いて、本日再び
中間報告を求められたことは、本院において積み上げられてきた先人の労苦の結晶を根底から覆し、破壊するものであることを再度指摘せざるを得ません。
本来、国家の基本となる
公務員制度の
改革は、与
野党の違いを超えて取り組むべき課題であり、
参議院選挙目当ての政争の具にすべきではありません。私は、
政府・
与党の猛省を強く促すとともに、この本会
議場におられる
皆さんの良識をもって、
法案の
内容も
委員会の
審議も含めて不
十分で、しかも施行まで
十分な時間があり緊急性もない本
法案を、この
中間報告の後、拙速に成立させることのないよう強く要請いたしまして、
内閣委員会における
審査の経過
報告といたします。(
拍手)
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