○小川敏夫君 私は、
民主党・
新緑風会の小川敏夫です。
提出者を代表して、
安倍総理大臣問責決議案の
趣旨を説明いたします。
これに先立ちまして、昨日、
宮澤喜一元
総理大臣が亡くなられましたことに、謹んで哀悼の気持ちを表させてい
ただきます。宮澤元
総理は、現下の議会制民主主義を無視した
安倍総理の姿勢を憂えていたのではないかと、お気持ちを察するところでございます。
安倍総理、あなたは
国民の支持率を七〇%も得てさっそうと
総理に就任いたしました。初めての戦後生まれの
総理として、
国民はあなたに大きな期待を寄せていたのです。しかし、私はあなたには期待を寄せていませんでした。あなたが述べる改革や主張する外交なるものがどれだけ有効なものなのか、それとともに、
政治倫理の
確立や議会運営などの
政治手法についてどれほどのものなのか、大きく疑問に感じていたからであります。そして、私が抱いていた疑問はすぐに現実のものとなりました。あなたに対する
国民の期待と支持はしぼむ一途の道をたどって今日に至っております。
具体的に示しましょう。
あなたが小泉政権の中枢として直接かかわったさきの郵政民営化を争点とする総
選挙において郵政民営化に
反対して離党した
議員たちを復党させました。このことは、あなたの
政治姿勢がその場その場の御
都合主義であることを如実に示すものであります。
あなたは、
総理就任直後には、道路特定財源の見直しについて一般財源化を前提に見直すと明快に約束しました。ところが、わずか三か月後には、全額を
義務付けている仕組みを改めるだけとして、当初の一般財源化を前提に行うという約束がほごにされ、見せ掛けだけの改革もどきへと変えられてしまいました。このことは、あなたがいわゆる族
議員の抵抗に屈したもので、あなたの
指導力と改革への意気込みが欠如していることを露呈したものであります。
はたまた、あなたが自ら起用した本間
政府税調会長や
佐田行革担当
大臣がスキャンダルや
政治と金をめぐる問題で就任早々に辞任したことから、あなたの人事に対する
基本姿勢が問われることになりました。
年が明けると、更に続いて、
柳澤厚生労働大臣の女性は子供を産む機械という女性をべっ視する
発言があり、米軍再編問題では、当事者である久間防衛
大臣がアメリカは分かっていないなどと
発言し、アメリカ側の反発を招きました。このいずれの
発言も、当然に辞任を求め、あるいは
大臣を罷免するのが
総理としてあるべき本来の姿勢であるのですが、
政府税調会長や
佐田行革担当
大臣の辞任に続いて
任命責任を問われることを回避したかったのでしょう、
総理はこのような問題
大臣をそのまま居座らさせてしまったのです。
そして、更に続いて、松岡前農水
大臣の
事務所費、水道光熱費の不正計上問題が発覚しました。何とか
還元水という言葉が
国民の間に広く知れ渡りましたが、
国民のだれもが、水道光熱費が不要の
議員会館で年に五百万円を超える水道光熱費を計上したことは不適切と思っているのでしょう。
しかし、あなたは、
自身で任命した
大臣などが次々とスキャンダルや
政治と金の問題などでドミノ倒しのごとく倒れていく事態を回避したいとの一心だったのでしょう、あなたは、松岡前
大臣の処理は適正であるとあなた
自身も言い張るようになりました。そこには
政治倫理を尊重する姿勢は全くありません。
ただ、あなたが
総理の座に居座り続けることに執着している姿しか浮かんでこないのです。
こうして、
国民のあなたに対する期待はしぼむ一方となり、内閣支持率も下がり続けました。そしてまた、あなたの保身のために辞めるべき人を辞めさせないまま
国民の批判の矢面に立たせ続けたことが、松岡前
大臣に大きな不幸な事態をもたらす結果を招いてしまったのです。
政治と金にまつわる不正に対する
国民の怒りは松岡前
大臣に向いていましたが、真に批判を受けるべきなのは、
総理、あなた
自身ではなかったのでしょうか。
また、この
事務所費問題で大きく揺れていた今年の早い時期、あなたは決定的失策を重ねています。
一つは、今
国民の大きな怒りを呼んでいる消えた
年金記録の問題であります。
あなたは、今年二月十四日、
衆議院予算委員会で、
民主党の長妻昭
議員から、この問題に対して
加入者全員に加入
記録を
送付して
対応するように求められました。これに対して、
総理、あなたは驚くべき
答弁をしております。すなわち、そのような
対応をすれば、
年金に対する
国民の不安をあおる結果になる危険性があるからとして、その
対応を取りませんでした。しかし、問題が大きくなった今、
政府・
与党の中からも長妻昭
議員が指摘したその
対応を取ろうという声が上がっております。
総理、あなたは、この消えた
年金問題のように、
国民の関心が極めて高く、そして、
国民生活に直接重大な影響を与える
事件が生じたときに、
国民に知らせないままほおかむりしてしまおうとした御
自身を見詰めて、恥ずかしいとは思いませんか。消えた
年金問題の存在を知りながら、騒ぎが大きくなったら大変だからといって何の対策も取らないまま放置したことは、
国民の生活を守るべき
総理の職責を放棄したものであります。そして、この問題が
国民の知るところとなって大騒ぎとなるや、慌ててその場しのぎの対策でごまかそうとする
総理を
国民が支持するわけがありません。あなたの支持率がここに来て急落しているのは、
国民があなたに正当な評価を与えるようになったからであります。
あなたは、
国民の批判をかわそうとして、一年間で五千万件の統合を完了し、問題をすべて解決するかのように
国民に約束しました。しかし、これは
国民を欺く全くのでたらめであります。あなたが約束したことの中身は、コンピューターに入っている五千万件のデータの照合作業を一年間でやり終えるということであります。コンピューターに入っていない
記録や間違って入力されてしまったデータを調べ上げなければ問題は解決しないのです。
総理、あなたもこの事情は分かっているのでしょう。分かっていながら、あたかも単なるデータの照合作業をもって完全な問題の解決のように、真顔をもって真剣なまなざしと口調で訴えるあなたの姿は、相当な役者でも及ばないものがあると私は感じます。しかし、
総理、あなたにお芝居の能力があるとしても、
総理としては失格です。あなた
自身、単なるコンピューター内のデータ照合だけで消えた
年金問題がすべて解決するとは思っていないでしょうが、万が一そのように思い込んでいるとするならば、あなたは完全なる無能であります。
また、
年金時効特例法なども、
政府の
責任により生じた未払に対して
政府は時効を主張しないという、最高裁の判例にもある当然のことを定め
ただけで、問題の根本解決にはなりません。しかも、この点は
民主党が元々主張していたことであります。
消えた
年金問題の存在を承知していながら、ほおかむりをして適切な
対応を取らなかったため、問題の深刻さもさることながら、突然にこの問題を分からせる結果となったことによって
国民の動揺は更に大きくなりました。この一件だけをもってしても、
総理、あなたに
総理大臣を続ける資格がないことは明らかであります。また、あなたとともに
与党の
皆さんも、この消えた
年金問題について、
年金は消えていないなどとばかげた主張をしています。
国民から見て、掛金を払ったのに
年金に結び付かないのですから、
国民の視点からは消えた
年金であることは明らかです。
あなたや
与党の
皆さんは、自分のこの大きな失点を隠すために、このような言葉の問題にすり替えようというこそくなことはやめた方がよいでしょう。そして、
国民の
立場に立って、真の解決策を追求するよう最大限の努力をすることが、いずれ
総理あるいは
与党の座を明け渡すことになるでしょうあなた方に課せられた、最後に
国民に対して誠意を見せる重要な責務なのです。
二つ目は、いわゆる従軍慰安婦
発言であります。
あなたは御
自身の
発言が、とりわけ海外において大きな影響を及ぼすことを分かっていたのでしょうか。あなたは、軍隊が直接民家に上がって女性を連行してきたような強制性を裏付ける証拠はないとの
発言をしました。このように、殊更に
一つの定義を作り上げてまで、一国の
総理であるあなたが軍の強制性を否定する
発言をする必要がどこにあったのでしょうか。その必要もないあなたの
発言が大きな引き金となって、米国議会における決議を促す結果をもたらし、我が国に対する各国の信頼が大きく損なわれました。
あなたは、四月下旬、決議がなされることを回避させなければならない問題を抱えて訪米しました。このように負の問題を抱えて外交に臨むことは、国益を損なう危険を伴うものであります。実際、あなたの訪米は、きっとあなたにとっては不本意であったのでしょう、従軍慰安婦問題に対する反省の弁から始まりました。そして、米軍移転費用の負担、自衛隊のイラク派遣延長、米国産牛肉の輸入拡大など、日米の外交場面はアメリカが一方的に有利な外交展開となっております。
あなたの不必要な従軍慰安婦
発言は、あなたの人権感覚の欠如を表し
ただけでなく、外交感覚の乏しさと外交手腕の稚拙さをはっきりと示しました。もはや、あなたには我が国を切り盛りする資格は全くないのです。
また、私が当院
予算委員会で、あなたの
発言が我が国の国際信用を大きく損なう結果をもたらすのではないかと指摘した際に、私を日本の歩みをおとしめようとしているのではないかと誹謗しました。自分を批判する人は言わば非
国民だと誹謗するあなたには、民主主義を基調とする我が国の
総理を務める資格はありません。
このように、人の
意見に耳を傾けず、自分の考えだけ押し通せばよいし、批判する者があれば排除すればよいというあなたの姿勢は、今国会の運営においても、強行
採決の連発など随所に示されました。もはや、あなたは議会制民主主義を守るという観点からすると最大の危険人物であります。
あなたは、いじめ自殺の連鎖や未履修問題など、教育の根幹にかかわる問題が山積しているのに、これらに対する適切な
対応策を放置する一方で、
責任の所在が不明確で、中央集権の強化などを盛り込んだ教育関連
法案を強行
採決により成立させました。
このように、内閣の保身のために他人の
立場も考えず、なりふり構わない姿勢は、今国会の会期延長においても示されています。
参議院
議員選挙の
投票日が本年七月二十二日と事実上決定され、日本国じゅうがそれに向けて動いていたものを、直前の今になって、会期延長に伴って七月二十九日に変更されてしまいました。このことが、
選挙に臨む方々だけでなく、多くの
国民に少なからず影響を与えています。開票事務に当たる全国の市区町村職員の中には、夏休みの家族旅行を取りやめにした人々も多くあるのではないでしょうか。
選挙事務の変更や投開票会場に充てられる施設の利用の変更など、大きな不便と損失をもたらしました。こうした不便と損失を回避するため、これまで
投票予定日の直前変更は避けられ、参議院
選挙のある年の会期延長は努めて避けられてきたものであります。
しかし、
総理は、これに意を介さずに会期を延長したのです。その
理由たるや、天下り
法案の成立のためというものでありますが、この
法案がまた実にいい加減なものでありますから問題なのであります。
あなたはこの
法案について、
公務員の天下り
規制を加えるものと言っております。しかし、現行法上、天下りは二年間という不十分な実態ではあるとしても禁止されているのです。
法案は、この禁止を解いて、天下りに
一つのルールを設けた上で認めることになっているのです。すなわち、
法案は、天下り
規制の強化ではなく天下り解禁
法案なのです。
その上、あなたは天下りについて、職員のあっせんを禁止し、天下り者の行為
規制を設け、違反者の処罰規定を設けたと説明しています。しかし、
法案をつぶさに検討してみますと、職員に禁止されているのはあっせんではなく、命令と依頼でありました。天下り者の行為
規制については、二年間だけで以後は自由という、言わば二年
経過後の働き掛け奨励
法案でした。そして、その処罰規定も、不正行為を行った者だけが処罰され、単なる違反者には何の処罰もないという内容でありました。
このように、看板に偽りあり、すなわち天下り解禁
法案をもって、あたかも天下り抑制の切り札であるかのようなでたらめの説明による
法案の
審議のため議会無視の会期延長を行った
総理には、その資格がないことこの上ありません。このような偽りの天下り
規制法案を、
審議時間がないことが分かっているのに参議院の
審議に上げた
総理の考えは、結局は、自らの失政が招いた消えた
年金問題などからの
国民の目をそらすために仕掛けた目くらまし作戦に出たものと認められます。
しかし、このような軽薄で卑劣な作戦に
国民がだまされることはないでしょう。あなたの築き上げた失政の数々は、到底あなたに
総理にとどまることを許すものではありません。
国民から厳しい審判の結果を受けることは必至の状況の今、あなたが取るべき唯一の道は……