○島田智哉子君
民主党・新緑風会の島田智哉子でございます。
私は、
民主党・新緑風会を代表し、短時間
労働者の
雇用管理の
改善等に関する
法律の一部を改正する
法律案に対し、反対の立場で討論を行います。
就業形態の多様化が進んでいる今日、パート
労働者の数は千二百五万人に上り、
雇用者の四人に一人がパート
労働者となっています。パート労働は、子育てを終えた主婦による家計補助的なものではなく、今や日本経済を支える基幹労働力となっているのです。
先日、厚生労働
委員会がスーパーマーケットを視察し、私もパート
労働者の方と懇談する
機会を得ました。パート
労働者の方が正社員との均衡待遇を強く望んでいることを実感し、均衡待遇の重要性を改めて認識した次第です。
賃金格差について争われた
裁判の
判決においても、労働法における差別禁止
規定の根底には、およそ人はその労働に対し等しく報われなければならないという均等待遇の
理念が存在するとされています。すべてのパート
労働者に対し、その働き方に応じ、公正な待遇の確保が求められているのです。しかしながら、今回の
法案は
委員会でも多くの問題点が
指摘されたように、すべてのパート
労働者の待遇を
改善するものであるとは到底言えません。
以下、
法案に即しまして具体的な問題点を挙げさせていただきます。
反対する
理由の第一は、
法案では、差別的取扱いをしてはならない短時間
労働者が正社員と同視できる短時間
労働者に限定されていることです。
差別的取扱い禁止の
対象となる短時間
労働者については、柳澤
大臣は全パート
労働者の四、五%程度と答弁するなど、今回の
法案がパート
労働者の均衡待遇の実現にどの程度の
実効性を持つのか疑問を抱かざるを得ません。これで再チャレンジができると言えるのでしょうか。
また、差別的取扱い禁止
対象の
要件も問題です。
法案は、
要件の
判断について、第一義的には各事業主が
判断するとしています。事業主の
判断、解釈で差別的取扱い禁止の
対象となる短時間
労働者の範囲が違ってくるなど、通常はあり得ないことです。さらに、転勤
要件を含めることについては、均等法で禁止されている間接差別に該当するおそれすら
指摘されています。こうした合理的説明の付かない
要件によって差別的取扱いが禁止される
対象者を不当に限定してしまうと、差別的取扱い禁止
規定を設けた意味が失われてしまいます。
反対する第二の
理由は、正社員と同視できる短時間
労働者以外については、賃金や福利厚生等について均衡待遇の配慮が努力義務にとどまっていることです。
また、
対象となるべき賃金については通勤手当を含まない、福利厚生には慶弔金、慶弔休暇等を含まないなど、均衡待遇の徹底がなされていません。
委員会においても、通勤手当等も均衡考慮の
対象とすべきだとの
意見が再三にわたり出されましたが、結局、通勤手当等を含めないことについて合理的な説明はなされませんでした。
反対する
理由の第三は、
法案の
実効性確保に係る
規定、
体制の不備です。
今回、新たに紛争処理の
規定が創設され、それに伴い都道府県労働局の
雇用均等室がその
役割を担うこととされています。この
雇用均等室について、私は
機会あるごとにその組織としての
体制、職務に臨む姿勢についてただしてまいりました。実際に、ある
雇用均等室を視察し話をお
伺いしても、均等
行政を担う
第一線機関としての気概が感じられませんでした。
現行法に基づく助言等について、過去五
年間を見ても勧告、
指導はゼロ件と、全く機能していません。こうした状況で新たに紛争解決
援助の
役割を与えたところで、負担となるばかりで機能低下を招くだけではないでしょうか。そもそも、根本から
雇用均等室の
在り方を見直さない限り、現在の
体制では
法案の
実効性が確保できるとは到底思えません。
反対する
理由の第四は、改正により、正社員の労働条件が切り下げられるのではないかという懸念が解消されないことです。
政府は、合理的
理由のない労働条件の不利益変更は許されないという一般法理を根拠に、そのような懸念には及ばないとしています。しかし、
現実には正社員の労働条件に関する相談は増加しています。事業主の
判断、良心に任せるだけで、
厚生労働省は
労働者保護のための
行政の
責任を果たしていると言えるのでしょうか。
反対の
理由の第五は、本
法案がすべてのパート
労働者を
対象としていないことです。
パートと呼ばれている
労働者の中には、所定労働時間が通常の
労働者と同様か、それ以上となっているいわゆるフルタイムパートの方もいらっしゃいます。こうしたフルタイムパートの方は短時間労働法の短時間
労働者の定義に当てはまらず、適用
対象から漏れています。本来、真っ先に差別禁止や均衡待遇がなされるべきフルタイムパートの待遇の
改善を図らず、そのまま放置するこの
法案は全くの欠陥
法案だと言わざるを得ません。
民主党は、パートや有期契約を含むすべての
労働者を
対象に均等待遇の実現を目指す本格的な立法が必要であると考えます。
以上、反対する主な
理由を申し述べました。
今、日本の労働法制は大きな危機を迎えています。労働分野における規制緩和により、
企業が生き残りを懸けた熾烈な競争を展開する一方で、そこで働く
労働者の労働環境は劣化、悪化の一途をたどっています。また、医療などの専門職でさえ、人件費の削減、正規職員の多忙さゆえに短時間
労働者が増加していることは我が党の
委員が
指摘したとおりです。にもかかわらず、政府の規制
改革会議は
雇用分野の一層の規制緩和を推し進める方針を打ち出しました。私はこうした状況に深い憂慮の念を覚えます。
民主党は、短時間
労働者はもちろんのこと、正社員やフルタイムパート、有期契約
労働者を含めたすべての
労働者の待遇
改善、労働条件の
改善に向けて真剣にかつ全力で取り組むことを
国民の皆様にお約束をし、私の反対討論といたします。
ありがとうございました。(
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