○神本美恵子君 私は、
民主党・
新緑風会を代表し、ただいま
議題となりました
学校教育法等の一部を
改正する
法律案外六
法案について、
総理、
文部科学大臣並びに参法
提出者に
質問いたします。
一九七〇年代後半から急増した中学生の校内暴力や高校生の中途退学、八〇年代に顕在化し相次いで起きた
いじめを苦にした
子供の自殺
事件、増え続ける不登校、これらを解決するため幾ら校則や体罰を厳しくしても、形を変えて
課題が噴出するだけで、何ら根本的な解決にはならないことを
学校関係者は実感してまいりました。
一九九六年七月に出された第十五期中教審答申は、「二十一世紀を展望した
我が国の
教育の在り方について」と題して、
知識の量よりも、自ら
課題を見付け、自ら
考え、自ら解決していく生きる力をはぐくむとして、新しい
学力観を打ち出しました。しかし、
政府は、これらを実践するために必要な人的、物的、
財政的な
教育条件や
環境の
整備を完全に怠ってまいりました。
さらに、昨年成立した行革
推進法において、
教職員の定数削減が盛り込まれました。
教育改革が
安倍内閣の最
重要課題というのならば、
教育予算こそ増額すべきであります。せめて他の先進諸国並みに
教育予算を増額し、国際水準にまで一学級当たりの
子供の数も引き下げる必要があります。今回、
政府提出の
教育関連三
法案の前に、まず
教育条件の
整備と
教育予算の増額が必要ではないでしょうか。
総理の見解をお伺いします。
あわせて、
民主党の
法案提出者にお伺いします。
民主党は、昨年に引き続き、
学校教育の
環境の
整備の
推進による
教育の
振興に関する
法律案を提出いたしました。そこで、
教育の現状についてどのような認識の下に同
法案を提出されたのか、御
説明をお願いします。
学校現場の切実な声があります。私の
事務所には、毎日のようにたくさんのはがきやメールが届いています。その中の一つ。私たちの仕事は、目の前の
子供たちの姿から
課題を見付け、どんな力を付けたらいいのか、どんな
内容でどんな教材を作ったらいいのか、日々悩みながら実践していくものです。しかし、今、
子供と向き合う時間が取れず、教材研究をする時間もありません。このような、叫びにも聞こえる
現場の声をこのままほっておくわけにはいきません。
四十年
ぶりにやっと
実施された文科省の勤務実態調査結果からも、
子供と向き合う時間が十分に取れないという実態が浮き彫りになりました。
子供と向き合う時間が欲しいという
学校現場の願いにこたえるために、文部科学省はこれまでどのような
施策を講じてきたのか、伊吹文科大臣に改めてお伺いをします。あわせて、
民主党の見解をお聞かせください。
ここ数年、ゆとり
教育批判と聖域なき構造
改革の掛け声に翻弄されて、不登校も
いじめも
教育格差も
子供、
保護者、
学校の自己
責任と言わんばかりの
施策が
教育改革と称して次々と繰り出されてきております。なかんずく象徴的なのは、安倍政権における
教育再生会議の
議論であります。競争と自己
責任が強調される格差
社会の中で、だれもが子育てにも
教育にも不安を抱えています。政治がなすべきことは、こうした問題の
社会的背景を丁寧に分析し、必要な支援
環境を整えることではないでしょうか。報道によれば、自民党の議員の中からさえも
教育再生会議の在り方や
議論の進め方に批判が出ているではありませんか。ゆとり
教育の見直しについては、厳密な総括もなく、その全否定が
議論の出発点になっているとか、
教育時事放談になっているとして、
教育改革の
改革をこそやるべきと痛烈な批判が出ています。
安倍総理は御存じでしょうか。
国家百年の計と言われる
教育の大きな
制度改革に当たって、これまでの
政府の
教育政策の成果や
課題について多角的な分析、検証もせず、官邸主導で初めに結論ありきの
政府三
法案が提出されたのではないでしょうか。このような検証なき
教育改革は、
教育そのものを土台から崩壊させ、
再生困難にしてしまいます。
総理の見解をお伺いします。
次に、
免許法等
改正案について
質問いたします。
教員免許更新制度については、二〇〇二年の中教審答申において問題が多過ぎるとして見送られていましたが、昨年からの
教育再生会議の
議論の中で、不適格
教員排除のための
免許更新制度導入が再浮上しました。そして今回、
法案化に当たり、中教審は
更新制の
目的をいわゆる不適格
教員の排除を直接の
目的とするものではないとし、
教員の
資質、
能力の刷新、リニューアルに置くとして
導入を答申しました。
教育再生会議と中教審では明らかに
更新制の
目的に違いがあります。
一方、
安倍総理は昨年十二月の衆議院特別委員会で、不適格
教員のチェックのために
更新制を
導入すると明言しています。これは、
提案者の
理念があやふやなまま
法案が提出され、
趣旨が途中で変えられてしまったのでしょうか。それとも、本当のところは今回の
更新制の主
目的は不適格な
教員の排除であり、本音では今の
教員を全部入れ替えてしまいたいとでも言うのですか。
もちろん、だれが見ても不適格と判断される
教員がいたとすれば、それは十年更新期限を待つまでもなく迅速に対応すべきです。既に、そのための分限
制度を始めとする既存の
制度があります。この
制度をきちんと活用すればいいことではありませんか。一部の不適格
教員を排除するために百十万人もの現職
教員の
免許を取りあえず
更新制にするというのは、
目的と手段を履き違えた対応としか言いようがありません。
免許更新制の
導入の
目的は何なのか、改めて
総理及び
文部科学大臣の見解を伺います。
衆議院審議でも、
更新制が必要な根拠について説得力ある答弁はなされませんでした。伊吹文科大臣は、
職業としての先生を後押しすると答弁されましたが、根拠は不明です。それどころか、逆に職が不安定となり、新規の
教員志望者が減少したり、早期退職者が増加するのを後押しするという副作用の方が大きいのではないでしょうか。
また、現在、
学校には様々な雇用形態の講師が増え、こうした
教員によって
学校は支えられています。今後ますますこの傾向は強まります。非常勤講師も
免許更新の
対象であるとすれば、例えば、一度非常勤講師としてある一定期間採用されたとします。その後、期間が空いてまた採用されるなど、
学校現場には断続的な採用となる非常勤講師も多くいますが、その
人たちの
免許更新はどうなるのでしょうか。どのようにカウントされるのか、採用を前提とした受講しか認めないとする
政府案では全く明らかになっていません。
政府は
教育職を目指すあらゆる人が納得できる
説明をすべきです。
そもそも、まず
導入ありきの
議論が進められ、
更新制が必要であるという明確な根拠も
財政面を含む
制度設計も具体的に示されていません。このような
免許法の
改正案は直ちに撤回し、養成、採用、
研修の在り方を総合的に検討して、
子供にとって大切な
教員の
資質や
専門性を高めるための
制度をこそ構築すべきです。
安倍総理の見解をお伺いします。また、
民主党の
提案者には、
民主党の
免許法改正案と
政府案との違いをお聞かせ願います。
続いて、
学校教育法等の
改正案について
質問します。
改正案では、副
校長や
主幹教諭などの新しい職を置くことができるとされていますが、そのための定数
措置はされるのでしょうか。
学校現場では、さきの文科省勤務実態調査で、
教職員の一日の休憩わずか九分、超過勤務は四十年前の何と五倍から八倍という結果が出ています。
教職員は、
子供たちや家庭との対応あるいは
事務的な仕事に追われ、忙しさを増しているのが現状です。まず第一にやるべきことは、新しい職を置くことではなく、
教職員の定数増、カウンセラーなどのスタッフを
充実すべきだと思います。
これについて、
総理の御所見とともに、
子供に直接かかわる
教職員定数増の必要性についての認識を伺います。また、この点についての
民主党の
考え方もお伺いしたいと思います。
次に、地教行
法改正案について伺います。
まず、
改正案の四十九条、五十条では、
文部科学大臣が都道府県・
市町村教育委員会に対して
是正の
要求、
指示を直接行うことができるとされています。これは、一九九九年の
地方分権一括
推進法により削除となった地教行法第五十二条、文部大臣又は
都道府県教育委員会の
措置要求の復活なのでしょうか。つまり、国と
地方の対等な関係を縦の関係に引き戻すことになり、
地方分権の流れに逆行し、国の
管理強化につながる可能性を否定できません。
改正教育基本法により、「
教育は、不当な支配に服することなく、この
法律及び他の
法律の定めるところにより行われるべき」と
規定されましたが、
法律を国会で決めればどうにでもできるという
趣旨ではないはずです。
例えば、
教育委員会が一生懸命問題に取り組んでいても、文科省から見て不十分だと
認定すれば怠りに該当するのでしょうか。
地方における特色ある
教育の実践が、時の
政府の一方的判断によって国の基準を逸脱しているとされ、
是正の
要求の
対象となるのではないかとの懸念はぬぐえません。そうならないというのなら、きちんとした歯止め
措置が必要です。
政府としての明確な姿勢をお示しください。
文部科学大臣の答弁を求めます。
次に、
是正要求と
指示の関係について、
是正要求を行っても
改善しない場合、
指示を行うことになるのか、両者の区別、発動の要件、手続等明確な基準を示していただきたい。あわせて、
文部科学大臣の見解を求めます。
最後に、
教育再生を論ずるとき、なぜ真っ先に
学校現場の
子供たちの声を聞き、
保護者や
教職員の
意見を求めないのでしょうか。また、
教育の
専門家や学者の研究成果を生かし、実態を学問的、客観的に分析し、
課題と対策を明らかにすることに役立てないのでしょうか。
学校現場を無視した
改革は、現状を悪くし、
教育の
現場は活気付くどころか、かえって疲弊していきます。これでは、
日本社会にとってもマイナスです。参議院選挙までに
法案を成立させるという政治的意図を優先した
国民不在の三
法案の撤回を強く求めます。
民主党は、
学校の
教育力を高め、
現場に根差した地域からの
教育を一刻も早い政権交代により実現することをお約束し、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕