○福山哲郎君 私は、ただいま
議題となりました
法律案、いわゆる自動車NOx・PM法の改正案について、民主党・新緑風会を代表して
質問をいたします。
まずは、
我が国の温室効果ガスの排出量が
増加していることにかんがみ、昨今国際的な動きが活発化している地球温暖化問題について、
関係大臣に
質問をいたします。
京都
議定書が
締結されて今年で十年。
思い起こせば、六年前の四月、私はこの同じ壇上から
米国の京都
議定書離脱を批判するとともに、
我が国の早期批准を求めました。その
米国に大きな変化が生じています。そして、いよいよ来年、二〇〇八年に京都
議定書の第一約束期間の開始が迫っています。
IPCCの第四次評価報告書によれば、過去百年間で
世界の平均気温が〇・七四度上昇し、温暖化の
影響が地球規模で深刻化していることが明らかにされるとともに、科学的に九〇%以上の確率で温暖化の
原因が化石燃料の消費などの人為的活動によるものであるとして、懐疑論争に決着を付けました。また、このまま温室効果ガスを
増加し続ければ、今世紀末までに最大六・四度の上昇、平均海面水位が最大五十九センチ上昇すると予測され、極端な高温や熱波、大雨の頻度が更に
増加する
可能性が
指摘されています。
こうした中、地球の生態系を守るという
観点以外に、地球温暖化問題を舞台とした新たなグローバルスタンダードをめぐる主導権争いが始まっています。
世界の温暖化対策は急速に動き出しています。
EUは、二〇〇五年から排出権取引制度を導入するなど、かねてより非常に前向きな姿勢を取っていますが、さきの閣僚理事会では、二〇二〇年までに温室効果ガスを二〇%
削減すること、再生可能エネルギーの比率を二〇%に
向上させることで
合意しました。
特に英国は、二〇〇五年グレンイーグルズ・サミットで対話の開始、昨年のスターン・レビューの発表と、戦略的に指導的
役割を担ってきています。スターン・レビューでは、地球温暖化に対して何の対策も取らなければ、
世界全体で毎年GDPの五%以上の被害が生じる
可能性があると
指摘する一方で、今から対策を行えばGDPの一%の費用で被害を食い止めることができるとしています。
一方、温暖化問題に消極的とされてきた
米国でも、映画「不都合な真実」のヒット、カトリーナによる被害、ガソリン代の高騰等を経て、国内
議論が盛り上がっています。
連邦議会では、昨年の中間選挙での民主党の躍進を受け、目標年次を定めたキャップ・アンド・トレードの導入によって排出
削減を目指す何本かの議員立法が提出されています。中には、マケイン、ヒラリー、オバマ氏など民主、共和両党の有力大統領候補がそろって賛同しているプレジデント
法案と呼ばれるものさえあり、州レベルにおいても、西部と東部でそれぞれ域内排出権取引制度が構想されるなど、二十八の州で温室効果ガス
削減へ向けた行動
計画が策定されています。また、十二の州が独自の排出
削減目標を掲げています。また、GEやデュポンなど大手十社からも規制政策の早期導入を求める声が上がっています。
さらに、米連邦裁判所は、今月、気候変動の被害が深刻なことは広く知られているとして、二酸化炭素を始めとする温室効果ガスを大気汚染物質と判断し、その規制を強く促す判決を下しました。
こうした
世界的な動きの中で、現在、地球温暖化問題については、京都
議定書、G8プロセス、アジア太平洋パートナーシップという三つの国際的枠組みが同時並行的に動いており、これらすべてのトラックに参加しているのは
日本、
我が国だけでございます。
また、来年のG8サミットが
我が国で開催されることもあり、その対応に注目が集まっていますが、
我が国のポジションは明確ではなく、その取組は遅れていると言わざるを得ません。
二〇〇五年度の
我が国の温室効果ガス排出量は一九九〇年度比八・一%の
増加となっており、今のままでは目標である六%
削減を達成できず、ポスト京都
議定書の
議論についてもイニシアチブを発揮することが難しい状況になっています。
地球温暖化対策は、現時点において想定し得るあらゆる施策を排除することなく
検討し、京都
議定書の目標達成はもちろん、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を
安定化させるという究極の目標に向けた対応を即刻進めていかなければなりません。
安定化させるためには、
世界全体の排出量を早期に現在の半分以下にまで
削減することが求められています。
我が国も早急に長期目標を定め、必要な施策を
実施し、
世界を主導していかなければならないと
考えますが、環境
大臣及び経済
産業大臣の認識をお伺いします。
また、EUのETS市場、
米国の議員立法、中国での市場開設など、
世界各地で起こりつつある排出権取引市場創設の動きは、
途上国の参加も視野に入れた本格的な
世界炭素市場の出現に向けて一気に加速する
可能性もあります。
そんな中で、
我が国には排出権取引市場がまだありません。排出権取引制度の導入に対して国内の一部に強い抵抗がありますが、経済
システムに環境をいかに内部化させるかが二十一世紀の大きな課題となります。
我が国が
世界の流れに乗り遅れないためには早急にキャップ・アンド・トレード型の排出権取引制度の創設を図る必要があると
考えますが、環境
大臣及び経済
産業大臣の見解をお伺いします。
重ねて、現在一%にも満たない再生可能エネルギーの導入割合を現状よりも大きく引き上げることが必要であると
考えますが、両
大臣の認識をお伺いします。
温暖化問題に対する
世界の対応は大きく変化しつつあります。この五年が転機となると
思います。目先の利益にとらわれることなく、与野党を超えて脱温暖化社会の設計を行っていくべきです。脱温暖化社会の実現を
国家目標に据え、更なる温室効果ガスの
削減を実行することにより、現在、そして未来の子供たちと地球全体への
責任を果たすことが私たち政治家の使命であると
考えます。
さて、自動車排気ガスによる大気汚染の問題は一九七〇年代以降深刻さを増しました。その対策のために、一九九二年、現在の自動車NOx・PM法の前身である自動車NOx法が制定されました。しかしながら、自来十五年、いまだに大気環境が環境
基準に達しない局地的汚染
地域が数多く
存在します。この間、沿道
住民はぜんそくなどの健康被害に苦しみ続けています。司法の場でも、西淀川判決以来、国は五連敗でその
責任を認容されています。総務省の政策評価においても、局地汚染対策、交通量対策等の
検討、
実施が強く求められています。
長年にわたり、国はなぜ有効な対策を講じ得なかったのでしょうか。これまでの経過とその
責任の所在について環境
大臣の
答弁を求めます。
局地汚染と健康被害の因果
関係については、国は科学的知見が十分でないと裁判等の場で否定してきました。
しかしながら、二十年も前の一九八七年から何度となく衆参両院で公害健康被害補償法改正案の附帯決議に示されてきた、科学的知見が十分でないことにかんがみ調査
研究を早急に推進することと被害救済の方途を
検討することの文言は、一体いつどのように
実施されてきたのでしょうか。国会の意思をどのように受け止めてきたのでしょうか。
驚くことに、これらぜんそくの発症と沿道での自動車排出ガスの暴露との因果
関係についての疫学的評価のための調査は、つい最近の二〇〇五年度になってやっと開始されたのです。これでは不作為と言われても仕方ありません。国は、局地汚染と健康被害の因果
関係について、調査が終了する二〇一〇年度には新たに判断を行うものと
考えてよいのでしょうか。
重ねて、東京大気汚染公害訴訟の和解協議をめぐっては、原告団が
総理官邸を訪ね、東京が提案しているぜんそく患者への医療費助成制度に国も
資金負担するよう
要望されたことを受けて、
総理は誠意を持って対応していかなければいけないと答えました。また、環境
大臣も翌日、金銭的な
負担を伴うことも含め、和解に向けた追加策を用意する
考えを示しています。この具体的な中身はどのようなものでしょうか。併せて官房長官の認識を
お尋ねします。
他方で、健康被害者の肉体的、精神的苦労を
考えれば、因果
関係や
責任の問題とは切り離して、一時的にも被害者を救済する制度を創設すべきだと
考えますが、官房長官、更にお答えください。
本改正案の目玉である重点対策地区の指定に
当たり、都道府県知事は都道府県公安委員会や国土交通省など
関係道路管理者と協議することとされています。重点対策地区の局地汚染対策は主に国や地方の様々な
関係機関が主体となって
実施することとなっていますが、その
実効性はどのように確保されるのでしょうか。また、局地汚染の
関係者、特に都市構造や道路構造の改善の面から国土交通省の
協力が十分担保されるべきだと
考えます。環境
大臣及び国土交通副
大臣の
所見をお伺いします。
中央環境
審議会では、流入車対策として、対策
地域内の非適合車の走行禁止や車種規制等の全国への適応拡大など六案が
検討されましたが、改正案ではトラックなどの
使用台数などにより
事業者を限定した上での自主的取組によるものと後退した
内容となっています。しかし、汚染者
負担原則や
事業者間の公平性、さらには一部の都道府県で施行されている非適合車走行禁止条例を参考に、流入車対策の一層の強化を行うべきと
考えますが、環境
大臣の見解はいかがでしょうか。
環境基本法に基づき定められる環境
基準は、科学的知見の充実とともに見直されるべきものと
考えられますが、現行の粒子
状物質の大気環境
基準は一九七三年の設定以降何ら変更されていません。また、ディーゼル車からの黒煙など微小粒子
状物質PM二・五については、
米国など諸外国では既に対策が進められているにもかかわらず、
我が国では環境
基準すら設定されていません。
東京大気汚染訴訟の和解に向けた対応も含め、PM二・五の
基準設定や常時観測体制の
整備を始め、粒子
状物質に関する大気環境
基準について全般的に見直すべき時期にあると
考えますが、併せて環境
大臣の見解をお伺いします。
大気汚染対策、地球温暖化対策の双方に共通して重要な政策は、やはり交通需要管理や公共交通機関の
整備ではないでしょうか。
我が国では、渋滞対策という名目で道路の拡幅やバイパスの
建設などが行われ、それがかえって大都市部における自動車流入を招き、交通量を
増加させ、更なる大気汚染を引き起こしてきたとの
指摘もあります。環境ロードプライシングなど大都市における交通量そのものを抑制する交通需要管理を積極的に行うべきと
考えます。
また、今後、高齢社会が進み、自動車を運転できない人々の
増加、高齢者が加害者となる事故の
増加が懸念され、コンパクトシティーなどの歩いて暮らせるまちづくりや公共交通機関の充実が望まれます。
これらを踏まえると、今後、
我が国の交通政策は、道路、鉄道等を一体に
考えた総合交通体系の構築が必要であり、道路
整備から公共交通機関の
整備へシフトさせることも
検討すべきだと
考えますが、環境
大臣及び国土交通副
大臣のお
考えをお伺いをしたいというふうに
思います。
これで、私の
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣若林正俊君
登壇、
拍手〕