○富岡由紀夫君
民主党の富岡由紀夫でございます。
私は、
民主党・新緑風会を代表して、
平成十九年度における
財政運営のための公債の発行の
特例等に関する
法律案及び
所得税法等の一部を
改正する
法律案に対し、反対する立場で討論を行います。
まず、
特例公債
法案に反対する
理由を申し上げます。
第一に、この
法案が将来世代、すなわち私
たちの子や孫の世代に赤字のツケを回す
法案であることであります。私
たちの子や孫は、増税や
社会保険料の負担増といった大きな負の遺産を背負わされているのです。
国と地方の借金は、財投債、
政府短期証券等を含めると、
平成十九年度末には千五十八兆円になります。
国民一人当たり約八百三十万円の残高になります。赤字国債はこれからも発行が続けられ、借金はこれからも増加するのに対して、
少子化により人口が減少しますので、一人当たりの借金残高は確実に増加することが見込まれます。
政府は、
財政赤字は問題である、先進諸国と比較してもGDPに対する債務残高比率は最悪である、増税は避けて通れないと声高に叫んでいます。確かにそのとおりです。しかし、ちょっと待っていただきたい。このような危機的
財政赤字の
状況をつくったのはだれなのですか。自然に
財政赤字はできたのでしょうか。
この赤字をつくったのはほかならない
政府そのものであります。無駄な予算の使い方はなかったのでしょうか。私は、まずこの
責任を明確にすべきだと考えます。政策の失敗を
反省していただきたいと思います。二度とこのような失敗の歴史を繰り返さないよう、原因をしっかりと究明し、
国民に対し説明
責任を果たすべきであります。
政府のつくった赤字のツケを
国民に増税や
社会保険料の負担増といった形で押し付ける前に、是非お願い申し上げます。
第二に、今回の
法案においても九百六十七億円もの
年金保険料を
社会保険庁の事務費に流用しようとしていることであります。
これは、
年金保険料は
年金給付にしか充当しないというこれまでの原則を逸脱するものであります。この
年金保険料の事務費流用は、
平成十年度より税収不足を
理由に始められましたが、
政府は景気の回復による税収の増加をうたうのであれば、早急に税金で負担するという本来の原則に戻すべきであります。
次に、
所得税法等の
改正案に反対する
理由を申し上げます。
第一に、今回の
法案が格差
是正に何も寄与しないという点であります。
三月二十日の
財政金融委員会での私の
質問に対し、財務
大臣ははっきりとそう答弁されました。これだけの格差が問題になっているときに、格差
是正策を税制
改正に織り込まなくてよいのでしょうか。例えば、
企業間格差についてはどうでしょうか。大
企業の一部は最高収益を上げる一方で、中小
企業や地方の
企業は赤字に苦しんでおります。こうした大
企業は、収益を上げるために下請
企業に対する発注価格をたたき、部品や原料の単価をたたき、従業員を解雇し、正規社員から非正規社員へ切り替え、別会社化等による給与体系の切替え等を
実施しております。
こうした中小
企業いじめ、従業員いじめによって上げた最高収益は、役員報酬や株主への配当として支払われております。二〇〇一年度と比較して二〇〇五年度は、
雇用者報酬が三%減少しているのに対し、大
企業の役員報酬は八八%の増加、配当金は一七七%の増加となっております。ワーキングプアや中小
企業の犠牲により、大
企業はいわゆる国際競争力を高めているのです。こういうことで得られる国際競争力は美しいものと言えるでしょうか。大多数の
国民の犠牲によって得られる一部大
企業の収益、国際競争力は美しいと自慢できるものなのでしょうか。
政府は、法人税率の更なる
引下げも
検討しているようですが、そもそも法人税率が引き下げられて喜ぶ
企業はどれだけあるでしょうか。言うまでもなく、法人税は利益を上げている黒字
企業が課せられる税でございますが、黒字
企業は全体の約三割しかありません。七割は法人税を払いたくとも払えない赤字
企業なのです。勝ち組
企業だけを優遇する法人税率の
引下げも美しいと威張って言えるものではないと思いますが、どうでしょうか。
また、個人の
所得格差、資産格差の問題もあります。定率減税の導入に合わせ、
平成十一年度
改正で高額
所得者の
所得税の累進税率の
引下げが
実施されました。累進税率が五〇%と四〇%の
部分が三七%になり、それぞれ八万人、十九万人の人がこの減税の
恩恵にあずかることができました。しかし、これらの人の
国民全体に対する比率はわずかに〇・〇六%、〇・一五%となっており、ごく一部の高額
所得者だけが喜んだにすぎません。大多数の
一般国民には
関係がなかったのです。定率減税は
廃止されましたが、この
所得税の累進税率は戻されませんでした。
資産格差を
是正する機能のある相続税も同様です。
平成十五年度
改正で高額相続資産に対する相続税率が七〇%から五〇%に引き下げられました。しかし、この
恩恵にあずかれる人は年間わずか五十人程度しかおらず、
国民全体に対する比率は〇・〇〇〇〇四%であります。
このように、
所得再分配機能を持つ
所得税の累進税率、資産再分配機能を持つ相続税の累進税率は弱められております。これでは、
所得格差、資産格差は拡大する一方であり、金持ち優遇と言うほかはありません。この税不足を補うために低
所得者層に相対的に負担の大きい消費税を引き上げることだけは御勘弁いただきたいものであります。
第二に、個別
制度にも問題点が散見していることであります。
再チャレンジ
支援寄附金税制として、
障害者や母子家庭の母を雇用する
企業に対する寄附金の税制上の優遇を掲げておりますが、どうして
障害者や母子家庭の母が再チャレンジなのか。
障害者や母子家庭の母は失敗した人とでも言うのでしょうか。
障害者や母子家庭の母に対する税制上の
支援は必要ですが、これを再チャレンジと言うのは不適切な表現と言わざるを得ません。
また、一人オーナー会社の役員給与の損金算入制限
措置の中途半端な
見直しをなぜ今回行うのでしょうか。我が党は、そもそも不公平な税制であるこの役員給与の損金算入制限
措置の撤廃を求めております。これに対して、
政府・与党の方針は極めて場当たり的な
対応であり、税制の抜本的
見直しの議論を
平成十八年度決算の実績を踏まえ秋口から行うという
政府の方針とも矛盾しております。
以上、二
法案に反対する
理由を申し述べましたが、格差の問題は国内だけの問題ではありません。一部の人々への富の集中は世界規模で生じております。
経済市場がボーダーレス化している現在、世界的な富の集中、偏在は大きな問題を生じさせております。一部資産家がヘッジファンド等を通じて敵対的
企業買収を行ったり、莫大な
資金を使って為替、金利、株式等のグローバル市場での攪乱を行った例もあります。
政府に対しては、是非この問題をG7、G8等でも議論していただきたいということを要望いたしまして、私の討論を終了いたします。(
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