○輿石東君 民主党・新緑風会の輿石東です。
安倍総理の
施政方針演説を含む政府四演説に対し、会派を代表し質問いたします。
まず、
安倍総理の
政治姿勢についてお尋ねをします。
安倍総理は、
総理就任直前に出版した「美しい国へ」の本の帯に次のようなことを書いておられます。「わたしは
政治家を見るとき、こんな見方をしている。それは「闘う
政治家」と「闘わない
政治家」である。「闘う
政治家」とは、ここ一番、国家のため、国民のためとあれば、批判を恐れず行動する
政治家のことである。」「わたしは、つねに「闘う
政治家」でありたいと願っている。」。闘う
政治家、すばらしい表現です。私も拍手を送りたい。しかし、今改めて読んでみて、
安倍総理、どう思われますか。国民の目にはどう映っているのでしょう。
安倍総理が行ってきたことは、これとは裏返しのあいまいなことばかりではありませんか。
何事にもあいまいで、何をしようとしているのか、顔が見えないという
安倍総理の本質をこれ以上ないほど明らかにしたのが、例の復党問題でした。
一昨年の八月八日、小泉前総理が
郵政民営化だけを争点に衆議院を解散しました。その際に、党の方針に反する人を除名したのです。後継者を自認する
安倍総理は、その後、党の方針を変更したのでしょうか、党から追い出した
人たちの復党を許しました。
自民党にとっては、夏の
参議院選挙での票欲しさ、復党した
議員たちにとっては二億六千五百万円にも上る政党助成金ねらいであることは明らかであります。
小泉前総理の改革の旗は受け継ぎたい、しかし
小泉改革に反対して
自民党を離れた伝統的な
自民党支持層の票も戻ってきてほしい。どっち付かずの態度です。しかし、国民はよく見ています。この問題を
きっかけに国民の支持率は急降下いたしました。
続いて、
安倍総理の改革への取組が偽物であることを明らかにしたのが、
小泉政権から引き継いだ
行政改革上の大きな課題、
道路特定財源の
一般財源化の問題です。
安倍総理は、昨年十一月の
経済財政諮問会議で
揮発油税を含めて
一般財源化すると発言したにもかかわらず、
自民党道路族の反対に結局
リーダーシップを示せず、必要な道路は造るという一札を取られました。さらに、
法案提出を来年の国会に先送りした上で、玉虫色の方針をのまされてしまったのです。国民はここでまたもや裏切られました。
さらに、
安倍総理は小泉前総理に倣って
官邸主導を掲げて、官邸の中に限度一杯五人の
総理補佐官を任命しました。また、
総理直属の
教育再生会議や
日本版NSC、つまり
国家安全保障会議などを置くと宣言し、
首相官邸スタッフも各省庁から公募しました。あなたは
議院内閣制の日本を
大統領制と勘違いしているのではないですか。
しかし、肝心のあなた自身の
リーダーシップがなく、かといって
補佐官権限の根拠法もない状況で宙ぶらりん、官邸は船頭のない船となっています。それぞれ勝手なことばかりやっていて、総理、あなたの顔は陰に隠れてますます見えなくなっています。報道によりますと、つい最近、
総理補佐官の
権限強化法案の今国会への提出を見送る決定をしたということですが、そうなると官邸の混乱は当分続きそうです。
安倍総理は、就任早々中国と韓国を訪問し、辛うじて対話の窓口だけは復活させることができました。しかし、このような中国や韓国との
首脳会談の再開も手放しで評価するわけにはいきません。
安倍総理は、今回の訪中を実現するに当たって、過去の政府が出した
村山談話や
河野談話を就任前まで自ら厳しく批判してきたにもかかわらず、突然自分の内閣で全面的に受け入れると表明しました。そのこと自体の是非はここではおくとしても、わずかな期間での余りの
豹変ぶりに、
安倍総理は本当に信念のある
政治家なのか、国民は深い疑念を持っているのであります。
同様に、あなたが就任以来あいまいな態度を取り続けているのが、
小泉総理のとき大騒ぎになった靖国神社参拝問題です。あなたは、靖国神社に行くか行かないか、参拝したかしないか明言しないと繰り返し述べています。しかし、一国の
総理大臣が
国内外ともに大問題となっていることにきちんと答えることができないようではとても務まりません。
以上、四点について総理の四か月を振り返ってみました。いずれもあいまいなままです。あなたの主張である闘う
政治家はどこへ行ったのでしょう。小泉前総理は、
郵政民営化、
道路公団民営化など、それが良いか悪いかは別にして、
自民党や官僚と闘いました。しかし、あなたは何と闘ったのですか。今挙げた復党、
道路特定財源、
総理補佐官、靖国の四つの問題についてお答えいただきたい。国民は、あいまいな総理ではなく、はっきりと主張する闘う総理を望んでいるのです。
次に、
安倍総理の目指す美しい国について聞きます。
総理が就任されてたった四か月の間に次々と現れてきたのは、美しい国どころか、政府・与党の旧態依然たる事件や
スキャンダルです。
まず、去年の暮れから
安倍政権の
主要メンバー、いわゆる
チーム安倍の
スキャンダルが相次ぎました。お
友達内閣、露骨な
論功行賞人事のツケが回ってきたのです。
例えば、
安倍総理の肝いりで、前任者の
石弘光教授を押しのける形で就任したばかりの
本間正明政府税制調査会会長が、去年の十二月二十一日に辞任しました。
経済財政諮問会議の
民間議員のときから都心の豪華な
公務員住宅に、
格安料金で、しかも奥さんではない女性と住み続けていると報道されました。そもそも本間氏は、そうした
公務員住宅を税金の
無駄遣いと批判し、売却の方針を打ち出した張本人であり、しかも当時は、何よりも襟を正すべき、国民から税を取り立てる
制度づくりの責任者の一人でした。
次に、
佐田玄一郎前
行政改革担当大臣。
政治団体が十年間にわたり
政治資金収支報告書に多額の
架空経費を記載していたと報道され、暮れも押し詰まった十二月二十八日に大臣を辞任しました。
これらの人々の責任はもちろん重大ですが、それにも増して重要なのが、これら国民を裏切るような人物を次々に要職に任命してきた
安倍総理自身の
任命責任の問題です。正に総理の資質が問われていると言えます。
次に、去年相次いだ
官製談合事件です。
特に、去年の一月に発覚した
防衛施設庁の
官製談合事件では、
空調工事をめぐり
防衛施設庁関係者三人が
東京地検特捜部に逮捕されました。
さらに、今月に入って、
水門工事の入札をめぐり
大手メーカーなどが談合を繰り返していたことが発覚し、
公正取引委員会は、談合に関与した
国土交通省の職員について、
官製談合防止法を適用することを決めたということであります。
こうした
官製談合の温床となっているのが、
国家公務員の天下りです。
ところが、政府が今国会に提出を検討している
公務員制度改革関連法案では、
天下り公務員による口利きなどを処罰する規定は作られたものの、何と
関係企業への天下りの制限は、強化されるどころか撤廃されるということであります。これではますます天下りは不正の温床になってしまうのではありませんか。
あなたは、美しい国を目指すとおっしゃる。しかし、実際には美しくないことばかりです。このような
人たちを任命した総理の責任についてどうお考えか、また談合をどのようになくすおつもりか、後を絶たない政治と金をめぐる疑惑への国民の不信にどうこたえるのか、明快な答弁をいただきたい。
次に、
安倍政治の具体的な問題点についてお聞きします。
我が国が抱える課題はたくさんあります。しかし、
安倍政権の実態を明らかにするため二点に絞って議論します。それは、格差と
社会保障及び
経済対策についてであります。
安倍政権の内政における最大の問題点は、言うまでもなく社会の様々な場面での格差の拡大です。所得の格差、雇用の格差、大企業と
中小企業、都市と地方、教育の格差、数えていったら切りがありません。そこで、私
たち民主党では今国会を
格差是正国会と位置付け、厳しく追及していくことにしています。
というのも、こうした格差の拡大の最大の原因が、
バブル崩壊以降の
長期不況に加えて、
小泉政権から
安倍政権に受け継がれた
競争重視の小さな政府の政策であることは間違いないからであります。そして、これらの格差こそが今日の
日本社会が直面している様々な問題や社会不安、犯罪の増加などの根底にあるのです。
格差をまず雇用の面について見ますと、日本ではこの十年間に
正規雇用者が四百万人減った代わりに、
パート労働者が五百九十万人増加し、企業で働く人の三人に一人が
パート労働者という異常な事態となっています。中でも、幾ら働いても収入が
生活保護のレベルにさえ達しないいわゆる
ワーキングプアと呼ばれる
人たちの数は四百万世帯ともそれ以上とも言われ、明日への希望のない生活を強いられています。
これに対し、
安倍内閣は今回の予算の中で、再
チャレンジ支援総合プランという枠で一見たくさんの対策を盛り込んでいます。しかし、その中身を見ると、これまでの
産業振興策の看板の掛け替えのようなものばかりで、本格的に社員を非
正規雇用から
正規雇用へ移行するための
制度設計となっているようなものはほとんどありません。また、政府が今国会に提出するとしている
パートタイム労働法も、その
適用範囲は極めて限られています。
私たちは、今日の日本の社会不安の最大の原因の一つが、こうした非
正規雇用の
パート労働者の増大などによる
終身雇用制の崩壊であると考えています。
そこで、私
たち民主党は、
終身雇用を我が国にふさわしい
セーフティーネットとして再評価し、
長期安定雇用を基本とする新しい
雇用法制を打ち立てようと考えています。具体的には、官民とも管理職については徹底した
自由競争の仕組みを導入する一方で、非管理職の労働者については
終身雇用を原則とする、そうした提案に対し、総理の考えを伺いたい。
また、去年の六月成立した
医療制度改革関連法案は、
国民不在の
医療改悪以外の何物でもありません。合理的な根拠のない
医療給付費の将来設計を基に
医療費削減だけを目指したものと言わざるを得ません。
とりわけ深刻なのが
高齢者への負担の増加です。例えば、来年四月から、七十歳から七十四歳までの
患者負担を二倍に引き上げるとともに、七十五歳以上については、新たな
高齢者医療制度を創設し、加入してもらうことになっています。これらは
高齢者の医療の質の低下を招く危険性があります。
近年、
高齢者にとって、
医療保険に限らず、年金、介護などの
社会保障は、給付は削減され負担は増すという、言わばダブルパンチです。また、
療養病床の再編成が行き場のないまま介護の場を追われる
人たちを生み出す可能性が高いと指摘されており、また、この改革は最近深刻になっております産婦人科など特定の分野の
医師不足にも的確に対応できていません。
さらに、
介護保険法の改正により、去年の四月以降、
介護予防への
見直し認定を受けた
高齢者に対し、
ホームヘルプやデイサービスなどのサービスが受けられず、閉じこもりや自殺を招く深刻な事態となっております。
今、
介護施設や
訪問介護の現場は深刻な
人手不足と離職率の高さに悩んでいます。
人材不足を解決し、魅力ある
労働環境でプロとして働き続けてもらうためには、
介護労働者の賃金や
労働条件を改善することが最も重要であり、そういった
事業運営が可能な
介護報酬が必要です。
総理自身がまだ若く、
家庭環境にも恵まれているせいか、ほとんどこうした問題について意見を述べるのを見たことがありません。しかし、
高齢者をないがしろにしてどうして美しい国と言えるでしょう。こうした問題点にどう対応していくか、お聞かせいただきたい。
さて、内閣府が今月十三日に発表した
国民生活に関する
世論調査では、日ごろの生活で悩みや不安を感じている人が五八年の
調査開始以来最高の六八%にも達しています。悩みや不安の内容では老後の
生活設計が五四%と最も高く、特に五十代では約七割を占め、定年を控えた
団塊世代などの老後不安を浮き彫りにしております。
これを受けた形で、年金などの
社会保障改革を望む声が前回に比べて一一・四ポイント増の七二・七%にも上がっていますが、
憲法改正や
教育改革だけに熱心な
安倍内閣にはこうした声にこたえるつもりは毛頭ないようです。
例えば、すべての年金の基礎とも言える
国民年金は、未納と未加入者が四百万人を超え、深刻な空洞化が懸念されております。
安倍総理は今の
保険料制度を維持するべきだと主張していますが、到底現実的とは思えません。全額を税で賄うべきです。
国民年金の
加入対象者であるフリーターや
ワーキングプアと呼ばれる
人たちは、
年金保険料を怠けて払わないのではなく、彼らの給料では払い切れないのです。このままだと、年金は
セーフティーネットとしての役割を果たせず、社会不安がますます増大するのは目に見えています。
私たちは、このような国民の
年金制度への不安を解消するためには、どうしても
年金制度の根本的な作り直しが必要であると考えています。つまり、現在政府が進めようとしている
厚生年金と
共済年金の統合にとどまらず、
国民年金も含めたすべての年金の統合を行い、文字どおりの年金の一元化を実現しなければ、年金の
セーフティーネットとしての意味はなくなってしまいます。総理はそのようにはお考えにはなりませんか。
年金不安を一層増大させているのが、
年金資金で造った施設の膨大な
無駄遣いや
加入記録の
不正閲覧といった
社会保険庁の相次ぐ不祥事です。
このため、政府はいったん、改革のため、ねん
きん事業機構法案を国会に提出したものの、新たな
不祥事発覚によって、無責任極まりないことに自ら撤回し、現在は非公務員型の組織による新しい案を検討していると言われます。具体的にどのような内容になるのか、例えば
徴収業務はどこがどのような権限で行おうとするのか、ここで明らかにしていただきたい。
私たちは、不正と無駄をなくす観点から、
社会保険庁と国税庁を統合する歳入庁を設けるべきだと主張しています。これが最もすっきりしていると思いますが、いかがですか。
このように、
安倍総理の言うことは、弱い者には冷たく、格差を拡大するようなことばかりです。その典型が来年度から三年間かけて段階的に廃止される
生活保護費の
母子加算です。
母子世帯の自立を促すというきれい事の理由が付いていますが、そんなことは
母子家庭のお母さんが子供を預けて安心して働けるような社会を実現してから言うべきだと思いますが、いかがですか。
同じことは、去年施行された
障害者自立支援法にも言えます。これによって、
障害者が自立を目指して働くために施設を利用すればするほど負担が重くなり、多くの
障害者が働くのをやめてしまっているのが実情です。このような法律を
障害者自立支援法と名付けるのは、たちの悪い冗談としか思えません。平成十八年度
補正予算案には、この対策費として九百六十億円を計上しており、一方で負担を重くしながら他方で補助をするという、政策の一貫性、整合性が全くありません。直ちにこの一割負担の部分を凍結すべきだと考えますが、いかがですか。
強きを助け弱きをくじく、小泉・
安倍政権の本質を見事に表していると言えます。
以上が格差と
社会保障の問題です。
次に、これに関連して
経済対策について聞きます。
今国会に提出された
安倍内閣の初の予算案は格差を縮めるどころか、むしろ増幅する予算となっております。
安倍総理は、
上げ潮政策と称して
経済成長路線を取り、今回の予算案に
減価償却制度の見直しを始めとする
法人税減税を盛り込み、露骨に大企業の優遇策を実施しています。
安倍総理はこれを、
財政再建の切り札であるとともに格差を是正することにもなると主張しています。経済が成長すれば、税収が伸び、給与の形で会社員にも還元されるという理屈です。
しかし、企業が収益を増大させたとしても、社員の賃上げに反映される保証はありません。企業は競争に勝つため、もうけを更に新しい
設備投資や株主への配当に回すことも考えるでしょう。現に、
日本経団連は企業の
業績向上分は賞与、一時金に反映すべきとして賃上げを強く否定しています。実際、最近の統計でも、企業がもうかっても会社員の給与はほとんど増えず、イザナギ景気超えなどと言われながら、
一般庶民にとって
景気回復の実感はほとんどありません。
今回の予算では、税収の増加によって国債の発行額が過去最大の減額となり、政府・与党は、これを
上げ潮政策による
景気浮揚の結果であると盛んに吹聴しています。
しかし、現実には
定率減税の廃止など、家計への増税の効果がかなり大きいのではないでしょうか。今年一月から所得税、六月からは住民税の
定率減税が廃止されるなど、税と保険料を含め、家計への負担の増大は五兆円に上ることになります。要するに、家計の犠牲の上に立った
財政改善なのです。しかも、巨額の
国債発行は今も続いており、国と地方の
長期債務残高は今年度末で七百七十三兆円にも上り、対
GDP比で見ますと先進国中最悪の水準となっております。
また、現在の
景気回復は、大企業、中でも
輸出企業中心で、
中小零細企業までは波及していません。ここに見られるのも格差の拡大であります。
さらに、今回の予算には、職を失った人、職に就けない人、負担の増加する
高齢者や
障害者などを支援し、生活の安定を確保するような具体策がほとんど見られません。
個人と
中小企業を勇気付けるために、
所得控除制度を
税額控除制度へと改め、控除し切れない額についてはその額を給付するという所得税の
抜本改革や、
オーナー課税の廃止といった
中小企業を元気にする改革が是非とも必要であると考えますが、総理の意見を伺います。
しかも、こうした
経済成長政策の背景にあるのは、
参議院選挙を意識し
たこそくな
消費税隠しであります。
安倍総理の
公約どおり、平成二十三年の
基礎的財政収支、いわゆる
プライマリーバランス達成を実現し、なおかつ
国民年金の
国庫負担率アップに対応するためには、
消費税の引上げが避けられません。
しかし、苦戦が予想される今年夏の
参議院選挙をにらんで、
消費税の引上げにあいまいな態度を取り続けるためには、うそでも
経済成長政策を言い続けることが不可欠なのです。最近では、
上げ潮政策によって好調な税収が今後も持続するので、もはや
消費税を上げる必要はなくなったなどという声さえ与党の内部から出ています。
選挙目当ての露骨なやり方であります。
しかし、今後、景気の回復に従って
長期金利が上昇すれば、税収の増加の効果が相殺されてしまう可能性もあります。だれにも確実に予想できない未来の極めて楽観的な
経済状況を前提に実際の
経済政策を策定するというのは、とても責任ある政府のやることとは思えません。
実際、今月十八日、日銀は、まだ
日本経済がデフレから完全に脱却していないことを理由に利上げを見送る決定をしました。しかし、その背景には、経済の客観的な分析よりも、日銀の独立性を無視した
自民党の
中川幹事長や
大田経済財政担当大臣の露骨な
利上げつぶしがあったことは周知のとおりであります。
さらに、これにも増して見逃すことができないのは、これに屈服した
福井総裁の姿勢です。
福井総裁は去年の六月、
村上ファンドへの投資が発覚し、当然辞任すべきだったところを政府に擁護してもらいました。今回利上げを見送った理由にこのことが関係しているとすれば、日銀の独立にとって大きな問題だと考えますが、総理の見解を伺いたい。
ところで、
安倍総理は、来る
参議院選挙の最大の争点として
憲法改正を挙げています。もちろん、私たちも憲法の諸問題について議論することにやぶさかではありません。しかし、それは果たして
国会議員が敵味方に分かれて争う
国政選挙の争点にすべきものなのでしょうか。しかも、
安倍総理は憲法のたくさんの議論の中で何を争点にしたいのかいまだ明示しておらず、このままでは不毛な議論に終わるのは目に見えています。去る十七日の
自民党大会直後に
自民党の
加藤紘一元幹事長も、
憲法改正で
参議院選を戦うのは大変な間違いだと発言しています。
憲法改正については、もっと時間を掛け、
国民的合意を得て成立させることが重要です。国民は、今国会でも
参議院選挙でも、もっと生活に身近な福祉や格差などを問題にすべきだと政府に期待しているのであります。身近な福祉や格差に手を付けず
憲法議論をするのは、現実から逃げていると言わざるを得ません。
私
たち民主党は、政治は生活の理念に立っています。来る
参議院選挙の争点について総理の見解を伺います。
次に、外交・
安全保障について伺います。
今、イラクは事実上の
内戦状態に入ったとも言われ、
毎日大勢の市民が犠牲になっております。
アメリカ軍の死者も、
イラク戦争の
きっかけとなった同時多発テロの犠牲者を上回り、今年の元旦までに三千人を突破しました。
今月十日、追い詰められたブッシュ大統領は、イラクの治安回復を図るために米軍二万一千人を増派するイラク新戦略を発表しましたが、これはうまくいかなかったこれまでのやり方の繰り返しであります。この政策がアメリカの期待どおりに成功するのか、
安倍総理の見通しを是非伺いたい。
また、この席でブッシュ大統領はこれまでのイラク政策を失敗であったと認めていますが、
安倍総理は今なおこれまでの日本政府のイラクをめぐる取組に問題があったことを認めていません。今日のイラクの悲惨な現状を前にして、これが結果に対して責任を負わなければならない
政治家としての正しい態度でしょうか。大局的に見れば、他国に先駆けて
イラク戦争への支持を表明するなど、イラクでのアメリカの失敗に日本が一役買ったことを否定することはできません。どこが
安倍総理の言う主張する外交なのですか。
また、このことに関連して、日本は現在もイラク特措法に基づいて航空自衛隊をイラクに派遣していますが、この法律の期限が今年の七月に切れます。報道によれば、政府はアメリカのイラク撤退が遅れることを考慮して一年の延長を検討しているとのことですが、日に日に悪化するイラク情勢の中で航空自衛隊の任務は危険を増しています。できる限り早く撤退すべきだと思いますが、いかがですか。
このような国際情勢の変化もあって、北朝鮮をめぐる外交で日本は次第に厳しい立場に追い込まれています。
去年の暮れ、一年一か月ぶりにようやく再開された北朝鮮の核開発をめぐる六か国協議も何の成果も上げずに休会し、日本はその中で拉致問題を議題にのせることさえできませんでした。日朝の二か国協議も行われませんでした。これでは、拉致問題の解決を看板に掲げる安倍外交の名前が泣きます。
さらに、今月中旬、
自民党の山崎拓元幹事長が議員外交と称して北朝鮮を訪問し拉致問題について協議しましたが、
安倍総理は二元外交だと不快感を示されたということです。北朝鮮に対し、圧力を優先すべきか、それとも対話を優先すべきかということについて、政府・与党内部の意見の不一致が明らかになりました。このような有様で、どうして巧妙な北朝鮮外交を突き崩すことができるのでしょう。総理はこれまでに山崎氏からこの訪朝についてどのような報告を受けていますか、明確にお答えいただきたい。
拉致問題の解決なくして国交正常化なしは当然の姿勢ですが、核及びミサイルの問題も拉致問題も、解決に時間を掛ければ掛けるほど状況は深刻化します。
安倍総理としては今のようなこの膠着状態をどのように打開していくおつもりか、具体的にお答えいただきたい。
次に、地方分権について伺います。
国としての活力を生むためには地方が元気になることが不可欠です。そのためには地方分権を一層進めていかなければなりません。これまでに第一次分権改革が行われましたが、地方の自由度の拡大など課題は山積しております。
さきの臨時国会で成立した地方分権改革推進法に基づき、三年の時限立法で新たな地方分権改革が取り組まれることとなります。この新たな改革において、どのような目標を立て議論するのか、地方分権の推進についての基本的な見解を伺います。
現状では全く地方の活力が感じられず、過疎地を始め貧しい地域では住民の働き口もなく、人口流出に歯止めが掛かっておりません。
貧しい地方を応援するのが地方交付税の役割ですが、平成十二年度に二十一・四兆円あった交付税総額は平成十九年度には十五・二兆円になりました。実に六・二兆円、約三割の減です。地方では都市と異なり、税が大幅に伸びているわけではありません。交付税の削減が地方経済を直撃し、また自治体はぎりぎりの財政運営を強いられています。このままではますます都市と地方の格差が拡大するのは目に見えているのであります。
政府は頑張る地方を応援すると言われていますが、頑張ろうにも財源がありません。地方の間にも勝ち組と負け組が生まれ、工場は海外に出ていって、働く場がないところがたくさんあります。どのように地方で働く場をつくるのかなど、地方が活力を取り戻し、都市と地方の格差がこれ以上拡大しないようしっかりと地方交付税を確保すべきだと考えますが、見解を伺います。
ところで、参議院に対する総理の認識についてお伺いします。
参議院は、時として衆議院のカーボンコピーと呼ばれることがあります。しかし、二院制はほとんどの先進国で採用され、安定した政治のためには欠かすことのできない制度であります。とりわけ、今ほど
国民生活のすべての分野において税金の使い方、使われ方が問われているときはありません。この分野で参議院の果たす役割は大きいと考えます。
実際、私たち参議院は、予算先議権を持つ衆議院との役割分担として、決算重視の方針の下、会派を超えて協力し、税金の
無駄遣いの監視に力を入れてまいりました。会計検査院法の改正を参議院の議員立法で行うとともに、一昨年以降は参議院独自の調査団を対象国に派遣するなどして、ODAの使い方を追求し実績を上げてまいりました。
安倍総理は、このような参議院の独自の在り方についてどのような見解をお持ちか、伺っておきたいと思います。
最後に、教育問題についてお聞きをします。
総理は、
安倍内閣の最重要課題として教育再生を掲げておられます。そこでまず、改正教育基本法について伺います。
教育は人格の完成を目指すという普遍的な理念に立って行わなければならないことは言うまでもありません。しかし、
安倍総理は、いじめ、履修漏れなどの教育現場の実態には目を向けず、タウンミーティングのやらせ質問に見られる世論操作までして改正教育基本法を自公の強行採決で成立させました。この改正教育基本法の理念について改めてお尋ねをいたします。
また、教育委員会制度の見直しについても見解を求めます。
次に、首相直属の私的諮問機関である
教育再生会議についてであります。設置の目的は何か、どのような方向に日本の教育を持っていこうとするのか、そのためにどのような議論を期待しているのか、教育振興基本計画には何を盛り込むことを想定しているのか、財政措置が保障されるのか、中央教育審議会、中教審との関係をどうするのか、以上の点について総理の明快なお答えをいただきたいと思います。
さらに、
教育再生会議の第一次報告による出席停止措置と教員の免許の更新制についても見解を伺います。間違っても、出席停止で子供たちから愛と信頼を奪い、免許の更新制で教職員から自信とやる気を奪うことのないようにと願わずにはいられません。
教育は未来への先行投資であり、国民合意の
教育改革こそが今求められています。学校に、そして教室に、勝ち組、負け組という教育格差をつくることは絶対に許されません。
私
たち民主党は、人づくりから国づくりを始め、政治は生活であるとの基調に立っています。その上で、政治を国民の手に取り戻すため、今国会を
格差是正国会と位置付けました。
今こそ、子供たちに夢を、青年に希望を、そしてお年寄りには安心を取り戻さなければなりません。何事もあいまいで、愛も信頼も感じることのできない
安倍内閣に替わって、愛と信頼の政治と教育を実現するために、もはや政権交代以外にないことを強調し、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣
総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕