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参考人(武
るり子君) おはようございます。
本日は、
少年法等法案につきまして
意見を述べる
機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。
私の息子、長男孝和は、
平成八年十一月、十六歳のときに、同じ十六歳の見知らぬ
少年たちにいわれのない因縁を付けられ、何度も謝っているにもかかわらず、追い掛けられ、一方的な暴行で殺されました。
主人は
事件と分かったとき、私にこう言いました。おれたちはもう見せ物パンダになろうと言ったんです。もうプライバシーも何もないぞと私に言いました。私は分かったと返事をしました。主人はこう言ったんです。外に向けて話をするんだったら都合のいいことだけ言っても伝わらない、すべてをさらけ出そうと言ったんです。そうやって約十年間、主人と私はすべてをさらけ出して話をし続けてきました。
確かに、
被害者の人権、プライバシー、守らないといけないと思います。多くの遺族の人、
被害者の人はそう望んでいます。だから、みんながそうしないといけないという話では決してないんです。でも、そういう遺族もいるということを知ってもらいたかったんです。
息子が
事件に遭うまで、私は専業主婦で、人前で話をすることなど本当に苦手で、ほとんどそういう
機会はありませんでした。でも、
事件の後、
理由がたった一つ、加害者が
少年ということだけで、どこのだれが、なぜこんなことをしたのか、一体何があったのか、
警察も
家庭裁判所も一切教えなかったのです。
法律、
制度は、殺された息子のことも遺族のことも全く考えていないということを知ったのでした。特に十四歳
未満の
少年事件はそれ以上です。
事件があったとしても
事件にならないわけです。そのことも知ったのでした。だから、専業主婦だった私は主人と一緒に声を上げざるを得なかったのです。
そして、翌年、
平成九年十二月に、同じ思いの遺族とともに
少年犯罪被害当事者の会をつくり、この十年間、その代表をしています。私たちは、一切の政治や宗教や思想に
関係なく、子供を大切に思う親の気持ちだけで集まった会です。現在、三十家族の人たちと連絡を取り合っています。今日は、私の経験したこと、会の人たちのこと、そして連絡をもらった
被害者やその遺族の人たちの現状を基に話をしたいと思います。
その当時、私たちの声を聞いてくれるところはどこもなく、
被害者、遺族が声を上げると、死刑にしろとかやたら罰を与えろとか、そのことだけを言っているのではないかとよく思われました。その後、私たちのことが報道されるようになってからも、そして現在も、ただ厳罰だけを望んでいる会だと思われることが多いようです。一部だけが取り上げられることが多いからです。
もちろん、私は
子どもを殺されて被害感情は持っています。加害者を一生許さないと思います。一生許せないことをしたからなんです。一生憎むと思います。でも、私は、
事件の直後から、会をつくったときも、そして現在も、ただ厳罰にしてほしいということを言っているのではないのです。今日は、まずこのことを知ってもらいたいのです。
私は、どこに行って話をするときも、会の
意見をまとめるときにも、次のようなことをいつも考えてきました、自分は被害に遭っているから被害感情がすごくあるって。だから、話をするときには、
事件に遭ってない自分だったらどう考えるだろうと、
事件に遭ってなかった自分のことを振り返るようにしています。そう想像しているんです。そして、周りの人に、マスコミの人も含めて必ず聞いています、おかしいことがあったら言ってねと。本当に確かめながら一つ一つ
意見を言ってきたのでした。
だから、どこに行っても話を聞いてくださる方にお願いをしていることがあります。もし自分の家族が、自分の大切な人が
少年犯罪に遭ったとき、十四歳
未満の
少年にもし被害に遭ったときに本当にどう考えるだろうと、少し想像しながら話を聞いていただけたら本当に有り難いことです。
私はこう思うんです。
少年事件であっても事実
認定をしっかりしてほしいと、最初からそれだけをまず言ってきたんです。そして、それにはまず
警察の
捜査が、そして
調査が大切だと言っているのです。
捜査をしっかりしてください、そして事実
認定をしっかりしてくださいとお願いしているのです。そして、そこで初めて、その事実に対して、その罪に合った
処分、時には十四歳以上であれば刑罰も必要ですと言っているのです。それは
厳罰化ではなく、私は最初から言っているのです、適正化なんです。あるべきことだと思っています。
それは、今回の
法案であります十四歳
未満の
事件でも同じだと思うのです。何もやっていない
少年にただ罰を与えろと言っているのではないのです。今回の
法案にあります十四歳
未満の
少年であっても、
警察が
権限を持って
捜査、
調査などができるようになるということはとても大切なことです。
虞犯少年であっても大切なことであったので、そのことが削除されたことはとても残念なことでした。
といいますのが、私たち三十家族の遺族に対して百五、六十人の加害
少年がいます。集団暴行
事件が多いんです。その中には十四歳
未満の
少年も入っています。その
少年たちを見ていますと、よくニュースや新聞などで言います突然型だったとか、普通の子が
事件を起こしたとか言います。ほとんど違います。百五、六十人の
少年たちを見ていると、その前に何らかあるんです。深夜徘回をしていたり、いじめをしていたり、恐喝をしていたり、バイクを盗んでいたり、必ず前に何かをやっているんです。私は思います。だから、その後にやっぱり
事件を起こすおそれがある子たちだったんですね。
そこで、私はしっかりと
調査やその
捜査をしてほしかったなと思うから、削除されたことがとても残念なのです。
捜査、
調査をしっかりすることで、加害
少年も自分のやったことに向かい合うことを学ぶスタートになると私は思います。絶対その加害
少年にためにならないということはないと思うのです。そして、
被害者や遺族にとっても、
事件を知ることが
事件に向かい合うためのスタートなのです。それをどうぞ分かっていただきたいと思います。
そして、加害者が、
警察が
調査が入ったり
捜査が入ると萎縮したり誘導されたりする心配があるということを言われます。でも、私は思うんです。今までその百五、六十人の加害
少年を見ていますと、万引きとか軽
犯罪は別としても、私たちの加害
少年には必ずと言っていいほど
弁護士が付いていたんです。うちの場合もそうでした。
捜査段階から
弁護士が三人付いていました。三人まで付けれるそうです。ほとんど
弁護士さんが付いているわけですね。
そして、やっぱり加害者の
保護、人権だというと、その
権限を持っていない
警察は、
調査がしたくても、
捜査がしたくても、必要であってもできないという現状があったんだと思うんです。しにくかったわけです。だから、
権限を与える必要があると私は思うのです。
十四歳
未満の
事件が起こっても、今までは
保護だけこそが良いこととされ、起こった
事件にふたをして事実
認定に力を入れてこなかったことが現在の
少年犯罪を生んでいるんだと思うんです。もちろん、大目に見たり、
保護をしたり、教育をすることは大切なことです。でも、それを正しくするためにも、
調査、
捜査が正しく行われなければ始まらないと思うのです。
そしてまた、黙秘権を与えるべきだということも言われていますが、本当は親や
付添人が加害
少年の心を開いて、ちゃんと自分のやったことを正直に言いなさいと教えるべきではないのでしょうか。未熟な
少年だからこそ、丁寧にしっかりと正しいことを教え、正しい道に導いていくべきではないかと思うのです。
普通、親は子育てをしながら、自分の子供が悪いことをしたならちゃんと怒ります。そして、なぜそれが悪いことか教えます。それがしつけだと思うのです。それが
犯罪であるなら、もっと丁寧に一つ一つを本当に教えることこそが大人の責任ではないでしょうか。そして、十四歳
未満の
少年であっても、事実
認定をしっかりした後、
保護観察そして自立支援施設だけではなく、時には
少年院送致も考えなければいけないときが来ていると私は思います。
そして、私は、手紙を少し読みたいと思います。私は会で一年に一回集まりをしています。今日、黄色いウイルというコピーを持ってきたんですが、黄色でない方もおられると思うんですが。一年に一回だけ自分たちの力で集まりを開いているんですね。ウイルと付けています。願い、希望、そして遺言という意味があるんですね。私たちが会を作って十年になるので、今年は石垣島で十年を記念してそのウイルというのをやったんです。そのときに一生懸命現状の話をしたんですね。
そこに集まってくださった四十人の中に小学校六年生の女の子がいたそうです、後で手紙をもらって分かったんですが。その女の子から手紙をもらった
内容をお話しします。この前はお話を聞かせていただいてどうもありがとうございました。私は遺族の方の話を聞いて、何で人を殺してしまうのかどうしても分かりませんでした。そして、人を殺しても、
少年だからということで
保護観察となっただけとか、全然殺された方の気持ちを分かっていないし、その後もふだんどおり学校に行ったり、結婚したり、人は恐ろしいんだなと思いました。私は今月から石垣中学校に行きます。田本さん、田本さんというのは会の人です、田本さんが石垣中学校で亡くなったと聞いて、田本さんの息子さんがその石垣中学校時代に亡くなっているんです、少し不安もありますけど頑張っていきたいです。皆さんもこれからの活動を頑張ってください。皆さんの力で少しでも多くの人が
犯罪をなくすことができればいいなと思っています。そして、今いじめられている人も少しは勇気をもらえると思います。頑張ってください、応援していますといった
内容の手紙をもらいました。小学校六年の子供でも分かる話なんですね。悪いことは分かっています。ちゃんとやっぱり罪を犯した
少年にも分からすべきだと私は思います。
常磐大学の学長の諸澤英道先生がラジオでこう話をされました。
内容はこうでした。自分が正しく生きようと自覚していれば
犯罪者にはならない。だけど、幾ら自分が気を付けていても
被害者になり得る今は社会になってきたと言っていました。だからこそ、今はいろんなところでいろんな問題を考えないといけないと話をされました。そのとおりだと思います。
私は、加害
少年に優しい社会だけでなく、先生方一人一人のお力で、もう少し
被害者にも優しい社会になってほしいと願っています。その一歩として今回の
法案を通していただきたいのです。
ありがとうございました。