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2007-05-17 第166回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

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  1. 少年法等の一部を改正する法律案(第百六十四 (会議録情報)

    平成十九年五月十七日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  五月十六日     辞任         補欠選任      岡田 直樹君     若林 正俊君      関谷 勝嗣君     神取  忍君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山下 栄一君     理 事                 岡田  広君                 松村 龍二君                 簗瀬  進君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 神取  忍君                 山東 昭子君                 陣内 孝雄君                 谷川 秀善君                 江田 五月君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 前川 清成君                 松岡  徹君                 浜四津敏子君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 英明君    参考人        上智大学大学院        法学研究科教授  長沼 範良君        日本弁護士連合        会子ども権利        委員会委員長   黒岩 哲彦君        少年犯罪被害当        事者会代表   武 るり子君        元国立武蔵野学        院長       徳地 昭男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○少年法等の一部を改正する法律案(第百六十四  回国会内閣提出、第百六十六回国会衆議院送付  )     ─────────────
  2. 委員長(山下栄一君)(山下栄一)

    委員長山下栄一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、岡田直樹君及び関谷勝嗣君委員を辞任され、その補欠として若林正俊君及び神取忍君が選任されました。     ─────────────
  3. 委員長(山下栄一君)(山下栄一)

    委員長山下栄一君) 少年法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、法案審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、上智大学大学院法学研究科教授長沼範良君、日本弁護士連合会子ども権利委員会委員長黒岩哲彦君、少年犯罪被害当事者会代表武るり子君及び元国立武蔵野学院長徳地昭男君でございます。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ、また雨の中、本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  参考人皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方について申し上げます。まず、長沼参考人黒岩参考人武参考人徳地参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、意見陳述質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。  それでは、長沼参考人からお願いいたします。長沼参考人
  4. 参考人(長沼範良君)(長沼範良)

    参考人長沼範良君) おはようございます。上智大学長沼範良でございます。  本日は、本委員会におきまして、少年法等の一部を改正する法律案の審議に当たり、参考人として意見陳述の機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。  私は、警察官による触法少年に係る事件調査、十四歳未満少年保護処分保護観察における指導を一層効果的にするための措置の三点にわたり意見を述べたいと思います。  それでは、まず第一に、触法事件に係る調査の点でございます。  少年事件において事案の真相を解明することは、非行のない少年を過って処分しないため、また非行のある少年について個々の少年の抱える固有の問題に即して適切な保護を施し、その健全な育成を図るためにも不可欠の前提であり、また被害者を含む国民からの少年事件に対する信頼を維持するという観点からも極めて重要であります。刑罰法令に触れる行為の存否、内容、それに至る経緯、動機、さらにはそれらの背景事情について、少年保護事件審判に必要かつ相当な範囲で情報を収集し、それらを踏まえて当該少年の資質に応じた処遇選択をすべきであるからでございます。  ところが、現行法の下では、触法少年の行為は犯罪ではないから刑事訴訟法の定める捜査は実施できないとの理解により、一たび非行事実が十四歳未満の者によるものと判明しますと、刑事訴訟法の定める押収、捜索等権限は行使できず、また刑事訴追を前提とする証拠収集活動もあり得ず、ただ警察責務一般を定める警察法を根拠として任意調査がなされているという実情がございます。  しかしながら、少年事件における任意調査活動について、警察責務一般を定めた規定のほかに個別の授権規定がない状態は好ましいものではございません。対象者任意の協力、承諾に基づく調査活動であるとはいえ、対象者にはある程度の法的利益の制約が伴う場合があると考えられますので、いわゆる侵害留保の原則を持ち出すまでもなく、調査活動の目的を明示した根拠規定が存在することの方が望ましいことは明らかであると考えます。  さらに、このような任意調査活動だけをもってして、常に触法少年に係る非行事実の認定及び処遇選択にとって有益な情報が十分に収集できるか甚だ疑問であるように思われます。触法事件についても非行事実に係る数々の証拠物が存在するものであり、任意調査活動には限界があることが特に重大な触法事件において強く意識される事態も生じたところでございます。  そこで、少年健全育成にとっての事実解明の重要性にかんがみますと、触法少年に係る事件においても、公共の安全と秩序の維持に当たるべき警察調査権限を有することについて法律に明文の根拠規定を置くとともに、調査に必要な範囲内において押収、捜索等権限を新たに認めることとして、当該少年に係る福祉上の措置、あるいは保護処分の要否、内容を決するのに有益な情報を収集できるものとすることが適切であると考えます。  そして、このように警察調査権限を明示あるいは新設するとしても、対象児童及び保護者に対してどのような処遇が必要かを判断するために行われる児童相談所調査を侵食するものではなく、むしろ警察による非行事実そのものの調査により福祉上の措置あるいは保護処分の要否の判断が一層適切になされるようになるものと考えます。  以上、申し述べたことを前提にして、二、三の点について更に申し上げます。  まず、対象少年の点でございます。  当初示された政府原案では、触法少年と並んで虞犯少年がその対象者として規定されていました。例えば、特定の組織暴力団関係者との交友状況など、虞犯事由を基礎付ける具体的な事実関係について認定することが必要とされる場合があり、それらの情報を収集するための調査権限を明示することが適切であると考えられたためであると思われます。  しかし、虞犯少年に係る規定修正案において削除されました。調査対象の不必要な拡大を懸念する意見が多数を占めたためと理解しております。元々、触法事件及び虞犯事件のいずれについても強制処分によらない調査活動警察の責務として行われているものでございまして、今回の法改正はその点について明文の根拠規定を置くことを意図したものであると考えられますので、このような修正がなされましても現状で行われている虞犯調査が今後も実施できることには変わりがないと考えます。  また、触法少年であることの要件についてでございますが、当初の政府原案におきましても、触法少年である疑いのある者を発見した場合という定めであり、対象少年について十分な限定が付されていたものと考えております。もっとも、その後の修正案により更に幾つかの修飾語が付加されるに至り、その趣旨は一層明瞭になったというふうに考えます。  次に、少年の特性に対する配慮の点でございます。  修正案では、第六条の二第二項において、「少年の情操の保護配慮しつつ、」との文言が付加されました。警察による調査に当たっては、その目的や性質、少年の特性などへの配慮が必要であると考えますが、政府原案においては少年の情操の保護という文言は表れていませんでした。その理由として、少年法全体が少年に対して配慮を示していること、配慮が必要であることは触法少年虞犯少年犯罪少年とで区別がないはずであること、少年への配慮警察だけではなく手続に関与する者すべてに求められるはずであること、触法事件調査についてのみ配慮規定を置くと、それとの対比でかえって配慮を要するような強い権限がこの場面でのみ付与されているかのような誤解を生じかねないことなどの事情から、法律規定には含めないものと理解しております。  修正案は、触法事件事案解明に当たっては低年齢の対象少年の特性に留意する必要があることについて、少年の情操の保護に焦点を当てて明文化したものであり、立法技術上の観点はさておき、その内容において問題はないというふうに考えます。  また、修正案では、少年権利保護のための規定として、弁護士である付添人の選任及び質問に当たっての強制の禁止についての規定が新設されてございます。少年の正当な利益を擁護すべき付添人の役割を早い段階のこの場面でも期待するとともに、呼出し質問に当たっての当然の事理に関して明文をもって規定するものと思われます。  元々、少年事件における非行事実の事実解明は、児童相談所がその制度目的に即して行う調査活動とは別に、警察において事件送致の要否を判断したり、家庭裁判所調査審判に資する資料を保全したりするためのものと位置付けられるはずでありますから、対象少年自身あるいはその保護者事件関係者から非行事実及びこれに密接に関連する事項について供述を収集、保全しておくことは一般的な必要性が認められると考えられますところ、警察が行う調査の一環としての呼出し質問は、いかに任意調査活動によるとはいえ、対象者の意思に働き掛ける側面を否定できないものでありますので、一般的な調査権限規定とは別に、個別の授権規定を明文で定めておくのが相当であると考えます。したがって、呼出し質問が、本来、任意処分であって、対象者がこれに応じる法的義務を負わないものであることは、言わば当然の事理であると考えられるところでございます。  また、一定期間少年の身柄を拘束する処分を創設して、その期間を利用して非行事実の事案解明のための調査目的による質問をするという方途は、考慮の対象になってございません。したがいまして、法案において、警察呼出し質問権限に対する対象少年法的地位は理論上は明確であるので、あえて呼出し質問任意的な性格を持つものである旨の明文を設けるまでのことはしなかったものと考えられます。  もっとも、強制にわたることがあってはならないことを注意的に規定し、さらには警察内部の規則、通達等の指針とすることに意味がないわけではないと思われますので、修正案はその点において慎重な配慮を示したものと評価すべきだというふうに考えます。  これらに関連しまして更に配慮を推し進めますと、対象少年に対して供述拒否権の告知をすべきこと、弁護士である付添人質問に立ち会わせるものとすること、質問の過程を記録化すべきことなどの議論があり得るかもしれません。しかし、触法少年には刑事訴追可能性がないこと、対象少年が自分にかかわる事象について正直に思っていることを話すということも調査の目的に合致すると言えること、その場合に保護者その他適切な者を立ち会わせるものとすることが、対象少年の心情その他の事情により、ありのままを語らせることに差し障りとなることも考えられること、仮に保護者等を立ち会わせるものとする場合であっても、対象少年をめぐる人間関係は多種多様であり、法律家の在席が常に最善の選択とは言えないこと、対象者からの供述採取の過程を記録化することについては、成人の刑事事件においてもなお試行の段階にあることなどからしますと、直ちに法律に取り込むべき内容とは思われません。  もちろん、調査に当たりまして、少年の被暗示性脆弱性等の特性について十分な理解をもって臨まなければならないわけでございます。そのことについて、例えば警察内部の規則、通達等において十分配慮した内容が盛り込まれることを強く期待するところでありますし、警察官少年補導職員において、少年の特性を理解した上で調査に当たれるような人的体制を整えるべきことは論をまたないところであると考えます。  次に、強制処分対象事件の点でございます。  対象事件について、特に事案解明必要性が高い重大事件に限るという考え方もあり得るかもしれません。今回の改正案ができるまでの背景事情として、特に重大な触法事件事案解明必要性が挙げられていたことからしますと、例えば、所定の規定により、原則として家庭裁判所送致措置がとられる重大な触法行為をした少年、すなわち少年法第二十二条の二第一項に掲げる罪に係る触法少年事件に限って強制処分を認めるという立法判断もあり得るところかと思われます。  すなわち、原則家裁送致の趣旨が、重大な触法事件については、家庭裁判所調査審判を経て、非行事実や要保護性を的確に解明する必要性が特に高く、また被害者保護の観点からも、審判開始決定に伴う被害者に対する配慮措置が可能とするものであるとしますと、対象者の被る法益制約の程度が高い強制処分対象事件は、そのような重大事件に限るのが望ましいとも言えるからでございます。  しかし、窃盗や傷害に係る触法事件でありましても、少年健全育成の前提となる真相の解明の必要性は認められますし、少年非行事実を否認している場合などを考えますと、厳密な事実認定のための情報収集が必要になる場合もあると思われます。その場合、盗品や凶器等任意提出に応じない事態も考え得るところです。したがいまして、強制処分権限を特に重大な触法事件に限定することでは、その権限の付与としては必ずしも十分とは言えないように思われます。  その一方で、強制処分につきましては、刑事訴訟法の準用により、厳格な要件、手続の下でしか実施できないという法的保障がございますし、元々、刑事訴訟法においても、任意捜査の原則により強制処分は例外的に行使できる権限と位置付けられているところでございます。したがいまして、このような仕組みからしますと、理論的にも任意調査の原則が妥当するはずでありますので、法律改正案としては対象事件による限定は不要であると考えるところです。  第二に、十四歳未満少年保護処分の点について申し述べます。  十四歳未満少年であっても、深刻な問題を抱える者については、早期に矯正教育を授けることがその健全な育成を期する上で必要かつ相当と認められる場合があると考えます。少年法の理念からしますと、個々の少年の持つ固有の問題性に着目して最も適切な処遇を選択する方向が志向されるべきだからでございます。  したがいまして、現行の少年院法の定める初等少年院及び医療少年院の被収容者年齢の下限を撤廃し、これまで児童自立支援施設に送致するほかなかった少年についても、家庭裁判所が特に必要と認める場合に限って少年院送致ができることとするのが基本的には正当であると考えます。しかしながら、処遇選択家庭裁判所の合理的な判断にゆだねるのが本来の筋道であるとしましても、少年院における矯正教育実効性という観点からはおのずと一定の限界があると思われます。一律に数字的な形で明示するのは個別処遇ということからしますと困難だと思われますが、一応の目安として、早期の矯正処遇が特に必要とされる者の範囲をおおむね十二歳以上の者とすることは、以上の趣旨を実質的に損なうものではないと考えます。  なお、十四歳未満の者につきまして、児童自立支援施設強制措置申立ての併用によるべきであるとの考え方もあり得るところでございます。  しかしながら、詳しい理由は省略いたしますけれども、強制的措置の持つ対象少年への効果、児童自立支援施設本来の性格との整合性医療少年院に収容すべき個別の必要性等にかんがみますと、強制的措置付き児童自立支援施設送致という選択肢があることのゆえに、十四歳未満の者に対する少年院送致を否定すべきことにはならないと考えます。  このような趣旨から考えますと、十四歳未満少年につきましても例外的に少年院送致を可能にすることは少年に対する厳罰化というようなこととは全く関係がないものであり、個別の少年問題性に着眼しつつ、当該少年健全育成にとって最も適切な処遇選択可能性の幅を広げるためのものと位置付けるべきであると考えます。  なお、法律改正されることになりますと、少数ではあれ、少年院送致になる十四歳未満少年が出てくることは予想されますので、それを受け入れる側の少年院の体制の整備が今後の課題として極めて重要であると考えます。  第三に、保護観察における指導を一層効果的にするための措置について申し述べます。  保護観察に付された少年遵守事項違反を繰り返すなどして、社会内処遇としての保護観察の効果が必ずしも十分に上がっているとは認められない事例があると聞いております。これまでにも虞犯通告活用等の議論がありましたところでありますけれども、これらにつきましては、更に遵守事項に積極的な機能を持たせる必要がある点でなお改善の余地があるというふうに考えます。そこで、新たに保護観察所長による警告、その申請による家庭裁判所保護処分決定を設けることには大きな意義があるというふうに考えます。  このような手続について、類似の議論が既に昭和四十年代から五十年代にかけて存在したところでございますけれども、詳しい議論は省略いたしますが、新たに一定の事由があった場合に、保護処分執行機関家庭裁判所に通告をし、これに基づいて家庭裁判所が新たな審理を行うという案が大方の賛同を得たところでございます。  今回の法案に見られる新たな制度におきましても、遵守事項違反による保護処分決定は、当初の保護処分の基礎となった非行事実及び要保護性を根拠として再びなされるものではなく、重大な遵守事項違反を新たな審判事由とするものでありますので、同一の処分事由に基づく事後的な不利益変更ではないかとの疑念には理由がないと考えます。  このことは政府原案規定ぶりでも明らかであったと考えますが、修正案により一層明瞭になったと考えます。また、そうである以上、ここでいう重大な遵守事項違反は、その呼称や規定の位置をどうするかはともかくとして、少年法第三条に掲げる少年非行事由と並ぶものとして理解すべきであり、それ自体として当該少年の再非行のおそれを推認させるに足りるものであることを要すると解すべきでありましょう。  そして、このように位置付けるとすれば、この制度が威嚇によって少年遵守事項を守らせようとするものである旨の批判は正当なものであるとは思えません。そうでなく、少年が自ら改善更生に向けた努力を行うという保護観察という制度の基本的な考え方には変更がなく、むしろ、遵守事項違反を犯した少年を再びその枠内に引き戻すことを意図しているものと考えるべきでありましょう。  以上で私の意見陳述を終えます。  御清聴ありがとうございました。
  5. 委員長(山下栄一君)(山下栄一)

    委員長山下栄一君) ありがとうございました。  次に、黒岩参考人にお願いいたします。黒岩参考人
  6. 参考人(黒岩哲彦君)(黒岩哲彦)

    参考人黒岩哲彦君) 日本弁護士連合会子ども権利委員会委員長黒岩でございます。  今回、意見を述べる機会を与えていただきまして、大変ありがとうございました。  私自身は、さき平成十二年の少年法改正につきましても、日弁連関係しまして法曹三者の意見交換会に参加させていただきました。平成十二年の改正、今回の改正と、二つ法改正について関与させていただきました。  まず、今回の法案についての総論的な意見でございますけれども、従前日弁連は、今回の法案提案理由とされています少年事件の低年齢化凶悪化理由がないということ、それから、今回の法案警察中心の取締り型に転換させる危険性があるということについて従前から主張したとおりでありまして、衆議院修正案でもその危険性は同様であると考えます。  しかし、他方、衆議院修正におきまして、虞犯少年疑いのある者に対する警察官調査権限が削除されたこと、それから二番目に、国選付添人選任の効力が少年の釈放後において最終審判まで維持されるようになったことについては積極的な意義があるというふうに考えております。  しかし、依然として、今回の修正案にも問題があると考えます。  第一点は、触法少年に対する警察調査権限の問題であります。  非行事実を正確に認定すること、これが少年司法手続の大前提である、出発点であることは当然のことであります。また、年少少年質問者暗示を受けやすい、また迎合的になりやすいという特性があることも周知のとおりであります。  日本弁護士連合会は、この間、年少少年事件につきまして事例の集積をしてまいりました。今日は、簡単に二件だけ御紹介したいと思います。  一件目は、浦添事件と言われる事件でございます。これは、沖縄県の浦添市で起きました中学二年生、十三歳の少年事件でございますけれども、連続の放火現住建造物放火未遂事件ということで警察事情聴取を受けて自白し、児童相談所に身柄付き通告された後に否認に転じました。少年は、警察官に髪を引っ張られるなど暴行を受けて怖くなった、虚偽の自白をしたんだという主張をしましたところ、平成十六年の九月二十九日の那覇家庭裁判所で、非行事実なし、触法事実なしという判定がされております。  二つ目事件は、三日前、平成十九年五月十四日に、大阪高等裁判所抗告審決定があったいわゆる大阪地裁所長襲撃事件と言われる事件でございます。この事件は、平成十六年二月に、大阪地裁所長が何者かから襲撃を受けまして、現金を奪われるとともに骨盤骨折の重傷を負うという重大な事件でございました。共犯とされました十三歳の少年が別件で児童相談所通告され、児童自立支援施設送致になりました。その後、延べ三十四日間の取調べによりまして、所長襲撃事件自白に至りました。この少年自白によりまして、成人、これは三十八歳と二十八歳の成人と、少年、十六歳と十四歳の少年につきまして逮捕され、それぞれの手続が進みました。  この事件につきましては、さき平成十八年三月の大阪地方裁判所判決で、成人については無罪判決が出されております。防犯カメラの映像と犯人と被告人らの身長に大きな差があると、また自白についても問題があるということで無罪判決が出されております。少年につきまして、それぞれ有罪の判決が出ましたけれども、このうちの十四歳の少年について判断が出たのが、さきの五月十四日の大阪高裁判決でございました。この中で大阪高裁は、少年取調べに当たって穏当を欠くと、府警の警察官が取り調べの中で机をたたいてどなったと、またそのメンバーの名前が非常に変遷している、またメンバーの服装が不自然に詳細過ぎて誘導にあるんだということで、大阪高等裁判所は大阪家裁の有罪の判決を取り消したわけであります。  私どもは、触法事件につきましても、いかなるゆえでも冤罪はあってはならないというふうに考えます。そのために、触法少年事件につきまして警察官調査権限を付与することは冤罪の危険性があるものであると考えます。じゃ、少なくとも、十四歳未満少年に対する警察調査への弁護士の立会い、また調査過程のビデオの録画を速やかに制度化することは必要不可欠であると考えます。  また、今回の修正案で、少年情操保護配慮すること、弁護士付添人選任質問に当たっては強制にならないという保護規定修正されました。この権利保護規定を置くこと自体、大変評価できるものと考えます。しかし、当然でありますけれども、権利は知らなければ行使はできません。十四歳未満少年がこれらの権利保護内容理解しているということは想定できません。  ここで参照になるのが、少年審判についての少年審判規則であります。少年審判規則の二十九条の二は、多くは十四歳以上の犯罪少年対象とし、しかも裁判所あてでありますけれども、裁判所は少年に対し供述を強いられないことを分かりやすく説明するというふうに規定しております。裁判所にすら分かりやすい説明を義務付けているのでありますから、ましてや警察につきましては、この規定趣旨、精神を生かしまして、警察少年審判権利保護内容を分かりやすく説明することを告知する規定を明記すべきであるというふうに考えます。  また、実際、触法少年を中心的に担うのは児童相談所であります。児童相談所が、現在、児童虐待への対応から大変多忙であるということは周知の事実であります。児童相談所が、児童福祉司や心理判定員等のスタッフの増員、専門性の強化、また少年非行対策班の設置など人的な体制の整備を進めるとともに、一時保護所の物的設備の改善、拡充を図ることが必要であると考えます。  次は、少年院送致年齢であります。おおむね十二歳とされている問題であります。おおむね十二歳とはせいぜい十一歳までということでありますけれども、依然として、小学生が少年院に収容される可能性が残っております。  私どもは、警察庁が出されています「少年非行等の概要」、これは平成十三年版以降でございますけれども、によりまして、十四歳未満少年で殺人事件という罪名が付けられた事件について分析してみました。  この分析で分かった第一の特徴は、被害者が家族が多いということであります。実父、実母、弟など、家族が被害者である場合が大変多いということであります。例えば、平成十三年四月の事件は、十一歳の小学校六年生の小学生が自殺を企図して自宅で包丁で指を切るなどしたところ、実母にとがめられて叱責を受けたため、実母の頸部を刺すなどして殺害したというものであります。このように家族が被害者である事件が大変多いのであります。  また、二つ目の特徴は、未遂が多いということであります。この傾向は、十四歳未満の子供の社会的な関係の狭さ、そしてまた精神的、体力的な未熟さから当然に常識的に理解できるところであります。もちろん、それぞれの事件につきまして生育歴等それぞれの事情がありまして不当な一般化は慎まなければなりませんけれども、弁護士付添人として少年とかかわっている実感は、とりわけ重大な事件を起こした少年、特に年少少年ほど人格形成が未熟であって対人関係を築く能力を欠いていることであります。家庭環境に大きな問題があるということも実感するところであります。このような少年には、まず温かい疑似家庭の自立支援施設で育て直すことが何よりも必要でありますし、有益であると考えます。私どもは、少なくとも、小学生を少年院に収容できるような制度は妥当ではないと考えます。  第三番目に、保護観察中の少年遵守事項違反であります。遵守事項違反理由とする少年院送致の問題です。  私自身保護観察中の少年の再非行事件につきまして当番付添人として事件を担当しました。このケースでは、保護観察所が家庭裁判所に虞犯として送致してまいりました。私どもとしては、付添人としてお会いする保護観察官また保護司が更生保護の現場で大変な御苦労をされているということについては十分に理解しているつもりであります。しかし、遵守事項を守らないということで少年院に入れるぞということでは、保護観察を確保するということで、信頼関係を基礎とした保護観察制度の真髄を失わせてしまうのではないかということを危惧するところであります。  私どもは、保護観察制度実効性を向上させるために、更生保護のあり方を考える有識者会議の平成十八年六月二十七日の提言にありますように、保護観察官の倍増、また保護司の選任制度につきましても公募制の導入など制度の見直しなどを積極的に推進することで、保護観察制度、更生保護制度自体のより一層の改善が必要だろうというふうに考えます。  次に、国選付添人制度につきましての更なる拡充の必要性と、日弁連の責任と決意であります。  今回の政府案によりまして、国選付添人制度につきまして、少年審判についての検察官の関与を前提としない国費での弁護士付添人制度が導入されたこと、また修正案につきまして、国選付添人選任の効力が少年の釈放後についても最終審判まで維持されるようになったことについては積極的に評価するところであります。しかし、選任対象事件が今回の法案では一定重大事件に限られております。  平成二十一年には被疑者国選制度が全面的に実施になりまして、必要的弁護事件にまで拡大されます。このままでは、平成二十一年になりますと、被疑者段階では国選弁護人が付くのに家庭裁判所送致されると国選付添人が付かない、こういう問題が生じるところであります。この矛盾を何としても解消しなくてはならないと考えます。  私ども日本弁護士連合会としては、対応能力につきまして努力しまして、人的な対応能力、数的な対応能力、また質的な対応能力についても一層努力するところであります。また、日本弁護士連合会の最大の行事であります人権擁護大会が今年が第五十回の記念大会でありますけれども、この中でも国選付添人をテーマとしまして、広く多くの国民の皆様方に国選付添人制度についての御理解を図るように努力しているところであります。  弁護士会としても、少年事件付添人の質的また量的な充実と、全面的な国選付添人制度の実現のために一層努力する決意であります。  以上でありまして、日本弁護士連合会としましては、今回の法案につきまして一層慎重に審議されまして、法案の問題点の更なる解消の行われることを希望して、私の意見とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  7. 委員長(山下栄一君)(山下栄一)

    委員長山下栄一君) ありがとうございました。  次に、武参考人にお願いいたします。武参考人
  8. 参考人(武るり子君)(武るり子)

    参考人(武るり子君) おはようございます。  本日は、少年法等法案につきまして意見を述べる機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。  私の息子、長男孝和は、平成八年十一月、十六歳のときに、同じ十六歳の見知らぬ少年たちにいわれのない因縁を付けられ、何度も謝っているにもかかわらず、追い掛けられ、一方的な暴行で殺されました。  主人は事件と分かったとき、私にこう言いました。おれたちはもう見せ物パンダになろうと言ったんです。もうプライバシーも何もないぞと私に言いました。私は分かったと返事をしました。主人はこう言ったんです。外に向けて話をするんだったら都合のいいことだけ言っても伝わらない、すべてをさらけ出そうと言ったんです。そうやって約十年間、主人と私はすべてをさらけ出して話をし続けてきました。  確かに、被害者の人権、プライバシー、守らないといけないと思います。多くの遺族の人、被害者の人はそう望んでいます。だから、みんながそうしないといけないという話では決してないんです。でも、そういう遺族もいるということを知ってもらいたかったんです。  息子が事件に遭うまで、私は専業主婦で、人前で話をすることなど本当に苦手で、ほとんどそういう機会はありませんでした。でも、事件の後、理由がたった一つ、加害者が少年ということだけで、どこのだれが、なぜこんなことをしたのか、一体何があったのか、警察家庭裁判所も一切教えなかったのです。法律制度は、殺された息子のことも遺族のことも全く考えていないということを知ったのでした。特に十四歳未満少年事件はそれ以上です。事件があったとしても事件にならないわけです。そのことも知ったのでした。だから、専業主婦だった私は主人と一緒に声を上げざるを得なかったのです。  そして、翌年、平成九年十二月に、同じ思いの遺族とともに少年犯罪被害当事者の会をつくり、この十年間、その代表をしています。私たちは、一切の政治や宗教や思想に関係なく、子供を大切に思う親の気持ちだけで集まった会です。現在、三十家族の人たちと連絡を取り合っています。今日は、私の経験したこと、会の人たちのこと、そして連絡をもらった被害者やその遺族の人たちの現状を基に話をしたいと思います。  その当時、私たちの声を聞いてくれるところはどこもなく、被害者、遺族が声を上げると、死刑にしろとかやたら罰を与えろとか、そのことだけを言っているのではないかとよく思われました。その後、私たちのことが報道されるようになってからも、そして現在も、ただ厳罰だけを望んでいる会だと思われることが多いようです。一部だけが取り上げられることが多いからです。  もちろん、私は子どもを殺されて被害感情は持っています。加害者を一生許さないと思います。一生許せないことをしたからなんです。一生憎むと思います。でも、私は、事件の直後から、会をつくったときも、そして現在も、ただ厳罰にしてほしいということを言っているのではないのです。今日は、まずこのことを知ってもらいたいのです。  私は、どこに行って話をするときも、会の意見をまとめるときにも、次のようなことをいつも考えてきました、自分は被害に遭っているから被害感情がすごくあるって。だから、話をするときには、事件に遭ってない自分だったらどう考えるだろうと、事件に遭ってなかった自分のことを振り返るようにしています。そう想像しているんです。そして、周りの人に、マスコミの人も含めて必ず聞いています、おかしいことがあったら言ってねと。本当に確かめながら一つ一つ意見を言ってきたのでした。  だから、どこに行っても話を聞いてくださる方にお願いをしていることがあります。もし自分の家族が、自分の大切な人が少年犯罪に遭ったとき、十四歳未満少年にもし被害に遭ったときに本当にどう考えるだろうと、少し想像しながら話を聞いていただけたら本当に有り難いことです。  私はこう思うんです。少年事件であっても事実認定をしっかりしてほしいと、最初からそれだけをまず言ってきたんです。そして、それにはまず警察捜査が、そして調査が大切だと言っているのです。捜査をしっかりしてください、そして事実認定をしっかりしてくださいとお願いしているのです。そして、そこで初めて、その事実に対して、その罪に合った処分、時には十四歳以上であれば刑罰も必要ですと言っているのです。それは厳罰化ではなく、私は最初から言っているのです、適正化なんです。あるべきことだと思っています。  それは、今回の法案であります十四歳未満事件でも同じだと思うのです。何もやっていない少年にただ罰を与えろと言っているのではないのです。今回の法案にあります十四歳未満少年であっても、警察権限を持って捜査調査などができるようになるということはとても大切なことです。虞犯少年であっても大切なことであったので、そのことが削除されたことはとても残念なことでした。  といいますのが、私たち三十家族の遺族に対して百五、六十人の加害少年がいます。集団暴行事件が多いんです。その中には十四歳未満少年も入っています。その少年たちを見ていますと、よくニュースや新聞などで言います突然型だったとか、普通の子が事件を起こしたとか言います。ほとんど違います。百五、六十人の少年たちを見ていると、その前に何らかあるんです。深夜徘回をしていたり、いじめをしていたり、恐喝をしていたり、バイクを盗んでいたり、必ず前に何かをやっているんです。私は思います。だから、その後にやっぱり事件を起こすおそれがある子たちだったんですね。  そこで、私はしっかりと調査やその捜査をしてほしかったなと思うから、削除されたことがとても残念なのです。捜査調査をしっかりすることで、加害少年も自分のやったことに向かい合うことを学ぶスタートになると私は思います。絶対その加害少年にためにならないということはないと思うのです。そして、被害者や遺族にとっても、事件を知ることが事件に向かい合うためのスタートなのです。それをどうぞ分かっていただきたいと思います。  そして、加害者が、警察調査が入ったり捜査が入ると萎縮したり誘導されたりする心配があるということを言われます。でも、私は思うんです。今までその百五、六十人の加害少年を見ていますと、万引きとか軽犯罪は別としても、私たちの加害少年には必ずと言っていいほど弁護士が付いていたんです。うちの場合もそうでした。捜査段階から弁護士が三人付いていました。三人まで付けれるそうです。ほとんど弁護士さんが付いているわけですね。  そして、やっぱり加害者の保護、人権だというと、その権限を持っていない警察は、調査がしたくても、捜査がしたくても、必要であってもできないという現状があったんだと思うんです。しにくかったわけです。だから、権限を与える必要があると私は思うのです。  十四歳未満事件が起こっても、今までは保護だけこそが良いこととされ、起こった事件にふたをして事実認定に力を入れてこなかったことが現在の少年犯罪を生んでいるんだと思うんです。もちろん、大目に見たり、保護をしたり、教育をすることは大切なことです。でも、それを正しくするためにも、調査捜査が正しく行われなければ始まらないと思うのです。  そしてまた、黙秘権を与えるべきだということも言われていますが、本当は親や付添人が加害少年の心を開いて、ちゃんと自分のやったことを正直に言いなさいと教えるべきではないのでしょうか。未熟な少年だからこそ、丁寧にしっかりと正しいことを教え、正しい道に導いていくべきではないかと思うのです。  普通、親は子育てをしながら、自分の子供が悪いことをしたならちゃんと怒ります。そして、なぜそれが悪いことか教えます。それがしつけだと思うのです。それが犯罪であるなら、もっと丁寧に一つ一つを本当に教えることこそが大人の責任ではないでしょうか。そして、十四歳未満少年であっても、事実認定をしっかりした後、保護観察そして自立支援施設だけではなく、時には少年院送致も考えなければいけないときが来ていると私は思います。  そして、私は、手紙を少し読みたいと思います。私は会で一年に一回集まりをしています。今日、黄色いウイルというコピーを持ってきたんですが、黄色でない方もおられると思うんですが。一年に一回だけ自分たちの力で集まりを開いているんですね。ウイルと付けています。願い、希望、そして遺言という意味があるんですね。私たちが会を作って十年になるので、今年は石垣島で十年を記念してそのウイルというのをやったんです。そのときに一生懸命現状の話をしたんですね。  そこに集まってくださった四十人の中に小学校六年生の女の子がいたそうです、後で手紙をもらって分かったんですが。その女の子から手紙をもらった内容をお話しします。この前はお話を聞かせていただいてどうもありがとうございました。私は遺族の方の話を聞いて、何で人を殺してしまうのかどうしても分かりませんでした。そして、人を殺しても、少年だからということで保護観察となっただけとか、全然殺された方の気持ちを分かっていないし、その後もふだんどおり学校に行ったり、結婚したり、人は恐ろしいんだなと思いました。私は今月から石垣中学校に行きます。田本さん、田本さんというのは会の人です、田本さんが石垣中学校で亡くなったと聞いて、田本さんの息子さんがその石垣中学校時代に亡くなっているんです、少し不安もありますけど頑張っていきたいです。皆さんもこれからの活動を頑張ってください。皆さんの力で少しでも多くの人が犯罪をなくすことができればいいなと思っています。そして、今いじめられている人も少しは勇気をもらえると思います。頑張ってください、応援していますといった内容の手紙をもらいました。小学校六年の子供でも分かる話なんですね。悪いことは分かっています。ちゃんとやっぱり罪を犯した少年にも分からすべきだと私は思います。  常磐大学の学長の諸澤英道先生がラジオでこう話をされました。内容はこうでした。自分が正しく生きようと自覚していれば犯罪者にはならない。だけど、幾ら自分が気を付けていても被害者になり得る今は社会になってきたと言っていました。だからこそ、今はいろんなところでいろんな問題を考えないといけないと話をされました。そのとおりだと思います。  私は、加害少年に優しい社会だけでなく、先生方一人一人のお力で、もう少し被害者にも優しい社会になってほしいと願っています。その一歩として今回の法案を通していただきたいのです。  ありがとうございました。
  9. 委員長(山下栄一君)(山下栄一)

    委員長山下栄一君) ありがとうございました。  次に、徳地参考人にお願いいたします。徳地参考人
  10. 参考人(徳地昭男君)(徳地昭男)

    参考人徳地昭男君) 本日は、意見を述べることができる機会を与えていただきまして、心より御礼を申し上げます。  また、本日、法務委員会の先生方が国立武蔵野学院の方に午後から見学にいらっしゃるということで、私の話のほかに、実際、目で現場を見まして、いかに少年院児童自立支援施設が違うのか、そういうようなことを実際見てほしいと思っております。職員また子供等、先生方がいらっしゃるのを心からお待ちしております。  私は三十七年間、教護院、現在の児童自立支援施設に勤務しまして、非行少年非行少女と呼ばれる彼らと、約千八百名の子供たちとの出会いがありました。その間十五年間、私たち夫婦の職員と、若しくは職員の家族と、それからまた子供たちと一緒に一つの棟の中で起床から就寝まで一緒に生活する、そういうようなことを経験しまして、七十八名の子供を社会復帰させました。現在、第一号の退院生は年齢的にはもう四十を過ぎております。今でも夜な夜な電話ありまして、自分たちの悩み等を言ってくる生徒もおります。  そういうことで、今日は、私の現場経験を通しまして、私の考え方を述べさせていただきたいと思っております。  感化院時代から児童自立支援施設に至るまで約百二十三年間の長い長い期間があるわけですが、一貫しまして保護者の養育能力に問題がある子が対象であります。広い意味でのネグレクト、養育の拒否、怠慢ですが、そういうふうな入所児童をすべて受け入れてきた施設と考えてよいかと思っております。それに対する行動化が実際、非行となって現れたと考えられると思います。児童自立支援施設は、その歴史の当初からそのような児童を対象としてきました。  それに対する最も有効な処遇としまして、児童自立支援専門員、それと児童生活支援員、昔でいいますと寮長、寮母、そういうふうな職員と子供たちが一つの疑似家族的な環境を用意しまして、その中で普通の家族が送るような生活に近い処遇を行うことを考えてきました。つまり、児童自立支援施設の歴史的処遇の在り方は、被虐待児に対する最も根本的な援助の施設であると思います。昔から大切にしてきましたのは、家族的な雰囲気、それから温かな人間関係を育てるための配慮です。職員が児童と生活をともにして、触れ合いながらつくり出す雰囲気を何よりも大事にしてきました。家庭的な雰囲気は少年院にはない特色で、存在意義も大きいと言われるところです。  施設に入所する児童の問題行動の背景には、当然、両親の不仲、それからまた離婚問題、人間関係の触れ合いの少なさなど、家庭的な問題が非常に大きく影響しております。施設の多くは自然に恵まれた環境の中に存在し、その自然との触れ合いの中で子供たちは少しずつ少しずつ気持ちが素直になりまして、やがて落ち着きを取り戻します。学校とか家庭の場面で安らぐ場所を持てなかった子供たちが、この児童自立支援施設に入所しまして、職員と学習それからまた掃除、食事、作業、それからまたレクリエーション、そういうふうなことを通じまして、児童本来の気持ちがだんだんだんだん現れてきます。また、職員や他の児童との交流を通じまして、少しずつ大人への不信感を取り除き、心を開いてまいります。施設での生活体験を通しまして自分の居場所を体得させまして、自立へ歩み出す支援を心掛ける施設であります。  さて、十四歳未満の児童を家庭裁判所が施設入所させると判断した場合、現行法では児童福祉施設しかありません。特に、保護処分でいいますと、児童自立支援施設か児童養護施設、この二つしかありません。重大触法事件では、児童自立支援施設、中でも行動の自由の制限が認められるという国立の施設に送致されてきました。そこで長い日々を子供たちと接してきました経験から、心身の発達が未成熟な十四歳未満の児童、特に小学生は、疑似家族的な環境を与え、職員との生活を通しまして、対人関係とかそれからまた基本的な信頼感、こういうものの構築が図ることが必要で、それができることから児童福祉施設での対応で十分ではないかと私は思っております。  国立武蔵野学院では、一九七七年から二〇〇四年まで、殺人若しくは傷害致死で入ってきた子供が全部で九名おりました。年齢的には十一歳から十四歳、学齢からいきますと小学校六年生から中学三年生ということです。当然、中学三年生、十四歳ですから、これは審判結果では大部分が現在では少年院送致になっていますけれども、当時は、いろんな事情をかんがみまして国立武蔵野学院の方に送致された件が一件ありました。事件前に警察児童相談所非行通告しましたのは二件のみで、他の児童は継続的な事例はありませんでした。といいますのは、多くのこの重大触法事件といいますのは、突発的なものが大部分であります。この九件の中で一件だけ途中で処遇変更しましたケースがあります。残りの八件のケースは、国立武蔵野学院を退所しましてから二十歳まで、家庭裁判所の方に係属したという記録が一件もありません。  以上の点をかんがみまして、私自身の考えですが、殺人若しくは傷害致死という重大事件を犯した児童が、決して大きな問題を抱えその処遇が困難であるとは言えません。それからもう一つ、私思いますのは、処遇内容重大事件の中には有効なものが児童自立支援施設の中にはあるんではないかと、そのために予後の成績も良好ではないかと考えております。  私たちの経験から、その予後の成績が一番不良なのは、窃盗など、事件は重大でなくても幼少期から非行の味を覚える、それが習癖化しまして、それで十三、十四歳になってから施設に入ってきます。こういうふうな子供たちの予後の成績というのは非常に良くありません。俗に専門用語で言いますと、太郎さんという呼び方で呼ばれております。子供からずっと成人になっても施設ばかりで生活してしまう、そういうふうな呼称が太郎さんと言われるわけです。  さて、二〇〇三年七月に、かの長崎幼児誘拐殺害事件、十二歳の少年がこの事件を犯しまして、児童自立支援施設送致になりました。児童福祉施設が、これだけの事件を起こしたのにこの少年にふさわしい施設なのか、一部マスコミは報じました。少年審判の鑑定で加害少年に発達障害があるという、そういうふうなことも指摘されまして、この子供はあくまでも医療少年院送致すべきじゃないかというようなことが騒がれたわけです。実際、審判の結果、彼は中学一年生でしたので、児童自立支援施設の方に送致されていきました。  少年院の入所年齢の下限をなくそうという主張の中には、必要な医療とか、それから心理的対応が現在の児童自立支援施設、そういうことでは期待できないから医療少年院送致すべきだというような意見も一部ありますが、重大事件の十四歳未満少年すべてが医療少年院対象になるとは私自身は思っておりません。  特に私は思いますのは、被害者やその家族が加害少年行為に対しまして、その事件の重大性とかそれから罪を本人が心の底から、心底反省してもらいたいと感じるのは、これは当然かと思います。以前、少年院では贖罪教育、現在では名称変えまして、被害者の視点に立った教育というものをやっております。児童自立支援施設はやっていないじゃないかというようなことがありますけれども、実際はやっております。  児童福祉施設というのは十八歳未満の子供たちが対象です。だからこそ、十四歳未満重大事件を犯した子供でも、現在の法律では児童福祉施設、特に児童自立支援施設それから児童養護施設ありますが、特に国立の施設に送致されるわけです。ですから、私自身は、それぞれの子供の適性に応じまして、また段階を踏まえまして、被害者の視点に立った教育というものを入れなければいけないと思っております。  犯罪を受け止めるためには、児童自立支援施設のように、子供たちが職員を心から信用できるものをしっかりと確立した後、矯正教育の矯正ではなく、あくまでも職員と一緒にともに生活する共生です、そういうふうな経験が必要なんです。ですから、職員が加害少年と寝食をともにする、このような子供たちの育て直しが児童自立支援施設の役割とともに大切な使命ではないかと思っております。  少年院の場合は閉鎖的で、十四歳以上の少年を収容し、集団的な規律、それから寮単位での集団生活が基本です。重大触法少年であっても、犯罪少年と比較すれば、家庭的な支援の必要な年齢です。国立武蔵野学院の昨年度入った少年の統計ですと、一人親家庭、昔でいいますといわゆる母子家庭、父子家庭、こういう家庭が七〇%の子供たちが入っております。両親そろっておりますのはたったの二〇%です。少年院の場合とはこれは逆転しているパーセントではないかと私は思っております。  もう一つ、発達的に心身の成長が非常にやはり未成熟です。特に、規則的な集団生活になじむかどうか。また、自我が成長、発達していないから、触法少年児童自立支援施設処遇が私は優先すべきではないかと思っております。それ以上に、自我の発達が未成熟な小学生に対しては、少年院送致するよりは、先ほど来説明しましたようなことにかんがみまして、非常に私自身は困難かと思っております。  学童期の児童は、情操の安定上いまだ家庭的な保護を必要とする年齢です。しかも、触法少年の場合は家庭的に虐待経験が非常に多いです。全国児童自立支援施設の中でどの程度の被虐待児が入っているかということを国立武蔵野学院が、今から七年前でしょうか、全国児童自立支援施設にアンケートを取りました。そうしますと、全国児童自立支援施設、六〇%の子供たちが何らかの被害を被っている、国立武蔵野学院では八三%の入所児童が虐待を被っているというような結果が出ています。  私自身の経験からいきますと、先ほど言いましたとおり、ネグレクトという親の養育の拒否、怠慢、これが一〇〇%、いわゆる放任家庭が非常に多いということが、私自身の経験がありますので、私自身は一〇〇%、児童自立支援施設に入っている子供たちは被虐待児童ではないかと思っているわけです。  となりますと、私自身は、こういうふうな児童自立支援施設というのは被虐待児童が中心の施設で、その行動化が非行という現象に現れたということを先ほど申しました。このようなことで、私自身、是非とも、少年法改正に当たりましては慎重な態度で検討してほしいと思っております。  以上で私の話を終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  11. 委員長(山下栄一君)(山下栄一)

    委員長山下栄一君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 岡田広君(岡田広)

    岡田広君 自由民主党の岡田広です。  四人の参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございました。これからの議論参考にさせていただきたいと思います。  時間の関係ですべての参考人皆様方質疑することできませんけれども、お許しをいただきたいと思います。  今回の法改正での最大の議論の一つが、十四歳未満少年について少年院送致を可能とする旨の改正であると思います。これについて、長沼参考人そして徳地参考人のお二人にお尋ねをしたいと思います。  御承知のように、政府は下限を撤廃する改正案でありましたが、衆議院法務委員会法案審議の中で様々な議論があり、小学生を少年院に収容するのは問題だなどの意見が出まして、衆議院の方でおおむね十二歳以上と修正をされたわけであります。おおむねは一歳程度の幅を持っているということでありますが、運用次第では小学生でも少年院送致される可能性があるわけでありますが、私は、原則送致は中学生以上という考え方であると思っていますが。  これについて政府は、事案真相解明するとともに、個々少年の状況等に応じてより適切な保護処分を行えるようにするためのものであって、少年健全育成に資すると説明していますが、他方で、十四歳未満少年、児童福祉的な措置がふさわしい小学生までも少年院送致が可能になることをもって厳罰化であると批判する立場もあるわけであります。  これらの立場に対する見解をお二人の参考人にお尋ねをしたいと思いますが、徳地参考人考え方を毎日新聞で私読ませていただきましたけれども、心身の発達が未熟な十四歳未満児、特に小学生は原則として福祉施設で対応すべきで、それは十分可能だということが書かれてありました。私もこの考え方はよしとしたいと思っております。  ただ、徳地参考人の今お話の中にありましたように、国立武蔵野学院の在職中に指導が難しくて医療少年院に送った少年が一人いたという話も伺いましたけれども、やっぱり十四歳未満でもそういう少年はいるんだろうと思うんです。  今回の改正の基本的な考え方は、あくまでも基本は児童福祉、教育の観点から、少年の育ち直しを少年健全育成に資せようということが考え方だろうと思うんですけれども、どうしても対応できない少年に対してこの少年院送致という考え方だろうと思うんですが、この点について、長沼参考人徳地参考人の御意見を賜りたいと思います。
  13. 参考人(長沼範良君)(長沼範良)

    参考人長沼範良君) ただいまの御質問の点でございますけれども、十四歳未満少年でございましても、非行事実あるいは要保護性ということからしますと非常に多種多様な子供たちがいるというふうに思われます。  もちろん、現時点での児童自立支援施設がその対応において不十分だと、こういう認識を私は持っておるわけではございませんので、きちっとしたやり方で教育的な措置を施している、開放的、家庭的な処遇を施しているというふうに思いますけれども、対応によりましては、やはり場合によっては強制的措置を付けざるを得ないという者もおりますし、現時点でも、現行はそのような措置を認めておりますので、更にそういった方面を拡充する必要もあるのではないか。  それから、今先生御指摘の医療の関係でも、やはり人員、体制の整った医療少年院の方がより適切であると、こういう人もいるのではないかというふうに考えております。  その点で、今度の改正案でも、特に必要があるときに限りという限定を付しておりますので、私は、このような考え方の方が多様な処遇選択の道を開くものというふうに理解しております。  以上です。
  14. 参考人(徳地昭男君)(徳地昭男)

    参考人徳地昭男君) 国立武蔵野学院では、夫婦の職員が子供と一緒に生活するということをやっておりました。重大触法事件少年たちが入ってきまして一緒にそういうようなところで生活するわけですが、夫婦の職員は、自分が預かった、いわゆる委託された子供に関しましては、最後の最後までやはり、最後の最後といいますのは、入所から退所までしっかりやはりケアしたいという気持ちでいるわけです。  しかし、なかなか、十三歳で重大触法事件を起こしまして入ってきまして夫婦の職員と生活するわけですが、必ずしもやはり夫婦の職員と子供たちが同じ気持ちで、それからまた退所に向けて生活する子供たちが全員かといったら、そういうような気持ちにはならないような子供がいるわけです。  今回、一人処遇変更ということを申しましたが、非常にやはり夫婦の職員は退所まで面倒を見たいという気持ちだったんですが、なかなか、本人の問題行動が頻発しまして、最終的にはやっぱり処遇変更をしなければならなかったと。処遇変更に当たりましては、何回も何回も職員会議それからスーパーバイザーの適切な助言等がありまして、それで、残念ながら十四歳になった時点で処遇変更をしたというのが一件のケースです。  国立武蔵野学院は、全職員があそこに付設されています国立武蔵野学院の児童自立支援専門員養成所というものを大学卒業しまして一年間出まして、やはり専門的な教育を受けておりまして、いろんなことを、実習が主体で、それとまた自分たちのいろいろな勉強を受けております。そういうふうな方が職員になっておりますので、非常にやはり専門的な教育を受けております。そういうふうな教育を受けている者が、どうしてもこの子供を処遇変更ということになりますと、非常にもう本当に気落ちしまして、自分はこの仕事に向いていない、そういうふうなやはり真摯な気持ちの職員が大部分です。  残念なことになりましたが、このケースに当たりましては、どうしてもやはり国立武蔵野学院の処遇は非常に難しいということで処遇変更をしましたわけです。
  15. 岡田広君(岡田広)

    岡田広君 着席のまま失礼します。  二点目ですが、今回の法改正で、これは触法少年事件あるいは虞犯少年事件に関して警察任意調査明文化されるとともに、警察は新たに押収、捜索、検証等の強制処分を行えるようになりました。先ほど武参考人からも、この虞犯少年事件警察による任意調査権は、衆議院の審議の中でこれは削除されてしまいまして残念というお話ありましたけれども、警察による任意調査権限を明記をしたということについて、これは事案真相解明につながり、少年健全育成に資するとともに、被害者を含む国民一般の信頼を確保する上でも大きな意義を有すると評価する立場もあります。  しかし、一方で、これらの改正は、本来児童福祉機関が担うべき調査権限警察に与えるものであり、少年福祉に反すると批判する立場もありますが、この点について武参考人の御意見をお尋ねしたいと思います。
  16. 参考人(武るり子君)(武るり子)

    参考人(武るり子君) 私は皆さんのように専門家ではありませんので、みんなの遺族の人、被害者の人の経験を聞いている、その中で話をしたいと思います。  見ていますと、十四歳未満だと児童相談所に送られるわけですね。児童相談所というのは福祉の施設です。そして、その福祉の施設というのは、これから加害少年がどうやって生きていったらいいか考えるところだと言います。それは家庭裁判所も同じでした。今でこそ、事実をしなければいけないということが言われるようになりましたが、以前はずっとそういう根強いものがありました。家庭裁判所調査官もはっきりおっしゃいました。ここは事実関係をどうのこうのするところではない、加害者がこれから先どうやって生きていったらいいか考えるところだと言ったんです。そういう考えがまだ根強い、児童相談所はまだまだそういうところだと思うんですね。そして、家庭裁判所もそういうところです。そういうところが捜査調査をできるとは思えないんですね。やっぱり警察がするべきことだと私は思います、それが加害少年を追い詰めることではありませんし。  先ほど言い忘れたんですが、私たちの会、百五、六十人の加害少年を見ているんですが、本当に自分のやったことが分かっている少年、一人もいません。その中には十四歳未満少年ももちろんいます。一人もいないんです。謝罪すらない。自分のやったことすら分かっていないんですね。そして、私たちは民事裁判を仕方なく起こすんです。責任をはっきりさせたいからです。そしたら、判決や和解をします。守られるケースも少ないです。ほとんどが守られない。それが現状です。
  17. 岡田広君(岡田広)

    岡田広君 ありがとうございました。  それでは最後に、保護観察中の少年の扱いについて、これは長沼参考人黒岩参考人にお尋ねしたいと思います。  保護観察保護処分に付された少年保護観察所長から警告を受けても遵守事項違反を繰り返して、その程度が重くて、保護観察では少年改善更生が図れないという場合には、少年院又は児童自立支援施設送致されることとする規定が盛り込まれています。このような規定につきましては、保護司あるいは保護観察官など少年保護観察の現場からの賛成の声もあります。  しかし、一方で、単なる遵守規定違反で少年少年院へ送るものであって行き過ぎだという考え方もあるわけでありますが、この点についてお二人の参考人から御意見を伺いまして、質問を終わりたいと思います。
  18. 参考人(長沼範良君)(長沼範良)

    参考人長沼範良君) 遵守規定違反につきましての御質問でございますけれども、私の理解によれば、遵守規定違反の一点をとらえて保護処分対象にすると、こういうことではなくて、それがやはり一つの徴憑だろうというふうに思います。保護観察中の少年でありましても、新たに要保護性が、ある意味で新たな事情が発生していると、その事情を徴憑する一つのものとして遵守事項違反というものがあるだろうと。  したがいまして、わざわざ程度の点において重大なという限定が付け加えられておりますので、それ自体が少年問題性について更なるその判断をする必要を示しているのではないかと、このように理解しております。
  19. 参考人(黒岩哲彦君)(黒岩哲彦)

    参考人黒岩哲彦君) 遵守事項違反の点でございますけれども、現場の保護観察官や保護司でも大変苦労されているということについては、私ども十分に認識しているつもりであります。  しかし、一方、私も自分の経験をお話ししましたけれども、現行法でも、その少年が要保護性が解消しないで将来また再非行可能性があるということになれば、虞犯という制度がありまして、これが現行法でも適切に運用されている、またされるべきだろうというふうに思っています。  そういう意味では、新たに遵守事項違反少年院送致という制度を設けるのではなくて、現行法の虞犯制度ということを適切に運用することがより妥当であろうというふうに考えます。  以上でございます。
  20. 岡田広君(岡田広)

    岡田広君 ありがとうございました。これからの議論参考にさせていただきたいと思います。  終わります。
  21. 前川清成君(前川清成)

    ○前川清成君 おはようございます。民主党の前川清成でございます。  四人の参考人の皆さん方からは、それぞれのお立場から大変専門的な御意見を承ることができました。本当にありがとうございます。とりわけ、武参考人からは御自身の大変おつらい御経験もお話をいただきました。  私も小学校六年生の男の子と中学校三年生の女の子、二人の子育て真っ最中でして、三年前に、私が暮らしています奈良では、富雄北小学校に通う女の子が誘拐され殺害されてしまうという事件がありました。朝元気に出掛けていった子供が夕方また元気に帰ってくる、おなかをすかして、時には泥んこになって帰ってくる。その親としての当たり前の幸せを守ることがまず政治の一番大切な責任ではないかと私も考えています。  武参考人からは、虞犯少年に対して警察調査権限が削除されたのは残念だというお話がありました。普通の子が突然非行犯罪を犯さないというようなお話がありました。私もそういう場合がほとんどではないかなと、そう思っています。  ただ、警察調査して、そこから後どうなるのかなという疑問があります。警察が調べて、例えば徘回している子供たちに声を掛けていろいろ調べて、じゃ、そこからその少年が直ちに立ち直るのか。犯罪を犯さない、社会に対して迷惑を掛けない子供にすぐになるのかというと、もう少し何か手段といいますか方法といいますか、そういうのが必要ではないかなと、そう思っているんですけれども、武参考人におかれて、その警察調査の先の手続について御意見や御感想あれば是非お聞かせいただけませんでしょうか。
  22. 参考人(武るり子君)(武るり子)

    参考人(武るり子君) 警察が、例えば深夜徘回をしていたり、何かやってはいけないことをやって、見付けたときには、やっぱり段階というものがあると思うんですね。  一回目は注意をする。例えば、それを何回も繰り返すなら、それを児童相談所なりに送る。そして、それでも駄目なら、それでも繰り返すようならばやっぱり家庭裁判所に送るといったように、その加害少年の行動によって段階を踏まえて、何というんですか、連携というか、警察児童相談所家庭裁判所の連携が私は大事だと思います。  警察の中にも、少年サポーターとか、加害少年を一生懸命指導するというそのグループみたいなものもあるんですね。だから、そういったところでまずは一生懸命注意をしたり、何遍もしながら、やっぱり加害少年にちゃんと責任を与えるべきときには、そういう法律にのっとって、何ていうんですか、段階を踏まえるべきだと私は思います。  うまく今言えなかったんですが、済みません。
  23. 前川清成君(前川清成)

    ○前川清成君 黒岩参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  私も先生と元々は同業者でございまして、委員長をなさった瀬戸先生は会派の先輩でもありますし、昨日は山田日弁連副会長からも大変熱心にいろいろと御指導をいただいたところでございます。  一年ぐらい前ですが、ちょうど奈良弁護士会の皆さん方も御意見をお寄せいただきました。そのときに、警察調査権は駄目だと、児童相談所が頑張るべきだと、こういうふうな御意見でした。  私はそれとは違う意見を持っていまして、例えばネグレクトによる子供の死亡事件等々、今の児童相談所というのは私は信用できない、そう思っています。そうなると、本来、児童相談所が果たすことが理想かもしれないけれども、今の現状を考えると、警察調査権限がある程度拡充しなければならないのではないだろうか。  先ほどの武参考人にもお伺いしていましたけれども、じゃ、警察調査権限の後の手続を考えるべきではないか。警察調査して、じゃ、いきなり、親が不仲だから、あるいはネグレクトだから、虐待を受けているから、じゃ、いきなり児童自立支援施設に入れていくというわけにもいかない。そこの間の制度を考えていかなければならない、こう思っているんですが、この点について黒岩参考人の御意見、いかがでしょうか。
  24. 参考人(黒岩哲彦君)(黒岩哲彦)

    参考人黒岩哲彦君) 十四歳未満少年につきましてですけれども、一つは、やっぱり私どもは警察捜査することで冤罪の危険性があるということについては非常に危惧しているところであります。中学二年生の途中以下は年少少年でありまして、そこについての誘導等の危険性があるんじゃないかというふうに思っています。  先ほども御紹介しましたけれども、最近でも大阪の事件ではやはり警察の誘導ということを裁判所が認定しているところでありまして、この辺の危険性が解消されることが是非とも必要だろうというふうに思っています。  今までの各参考人のお話もありましたけれども、やっぱり基本的な事実が何かということをきちんとするということでありまして、冤罪が起きるということは、加害少年と言われた少年にとってだけでなく、被害者にとっても大変深刻な状況になるだろうと思っています。犯人がだれだか分からないということはとても許されないことだろうと思っています。  そういう意味でも、冤罪をなくすということのために、やはり私どもは、十四歳未満少年については警察捜査権限を与えることは適切ではありませんけれども、仮に与えるとするならば、手厚い権利保障の手続が必要だというふうに考えているところでございます。
  25. 前川清成君(前川清成)

    ○前川清成君 私も先生方が冤罪を防がなければならないということは大変よく分かりますし、釈迦に説法ですからそこは繰り返しませんが、ただ同時に、やはり武参考人がおっしゃったように、多くの市民の皆さん方は、自分が犯罪に巻き込まれるのではないか、自分の子供が犯罪に巻き込まれて命を落とすのではないか、そういう不安な気持ちを持っておられて、それがやはりこの少年法改正であったり刑罰の厳格化であったり、その一連の動きになっていると思うんですね。もちろん、冤罪があってはならないことですから、そこを今更言うつもりはありませんが、もう少し社会といいますか市民の不安に対してこたえる努力が必要ではないかなと、私はそう思っています。  それで、次に、徳地参考人にお伺いをいたしたいと思います。  今日午後、武蔵野学院にお邪魔をいたしますし、私たち民主党の法務部門でも一度伺いました。  徳地参考人のお話で、子供たちの一〇〇%ネグレクトの対象だったと、八三%は虐待を受けていたと、こういうふうにおっしゃっています。本当に私もそう思いますし、不幸な立場にある子供たちが非行犯罪に走ることも多いと思います。ただ、母子家庭であっても頑張っている子供もいるし、つらい立場であっても社会に迷惑を掛けていない子供たちもいます。  そこで、不幸な立場にある子供たちが非行に至る前に、例えば児童自立施設に入る前に何か社会的な手を差し伸べる方法というのが考えられないのかどうか。先ほど黒岩参考人の方からは、一つの具体的なアイデアとして保護観察官を倍増すべきだというような御意見がありました。私も、うろ覚えですけれども、実働の保護観察官は全国に六百五十人、保護観察対象者は六万五千人、確かに一人の保護観察官が百人の対象者を見ていると、これは異常ですので、保護観察官を倍増あるいはもっと増やさなければならないと思っていますが、しかし保護観察官を増やせばそれだけで解決するのか。いや、そうじゃなくて、いろいろまだ細かな制度構築が必要ではないかと、私はそう思っています。  そこで、徳地参考人の御経験に基づいてお伺いしたいんですが、不幸な立場に育つ子供たちが非行犯罪に至らないために何か方法はないのか、その点を、制度として何かないのかということをお伺いしたいと思います。
  26. 参考人(徳地昭男君)(徳地昭男)

    参考人徳地昭男君) 先ほど説明しましたとおり、こういうふうな児童自立施設に入ってくる子供というのは、家庭では非常にやはり虐待を受けたり、学校へ行っても学校の先生からまた阻害され、それからまた地域では地域で阻害されるというようなことがあるわけです。そしてまた、事件、事故等を起こしまして警察の方に保護されても、警察では一方的にお説教のみで、児童相談所へ行ってもお説教のみ、家庭裁判所へ行ってもお説教のみと言える。彼なんかはお説教中毒というようなことを言っていて、ですから私は思うんですが、彼なんかは非常にだれか適切な助言若しくはそういうふうなことをしっかりやっぱり援助してくれる人を待っているんですね。  昔のように、社会的な構造も随分変わっております。学校は学校でそういうふうないろんな相談機関等はありますが、非常に今は引きこもり等の関係で学校の相談員の先生方も忙しいということで、私が思いますのは、やはり地域のネットワークがある程度そういうふうな子供たちを温かく迎えるような、そういうふうなものを、市の方でもそうですが、また地区の方でもそうですが、そういうふうなしっかりした基盤がなければ、これからは彼なんかはやっぱりやっていけないんじゃないかと私自身は思っております。  昔のように雷おやじがいまして、そのお父さんが一喝すれば子供たちはどんなわんぱく小僧でもみんなそのおじさんの言うことを聞いたとか、今そういうふうなことをやる人もおりませんし、またそういうふうな事態も大分少なくなってきております。  ですから、地域がそういうふうな子供たちに対してしっかりやはり考えてくれる、そういうふうな場所、居場所の提供ということを私自身は考えている次第であります。
  27. 前川清成君(前川清成)

    ○前川清成君 地域ネットワークが大切だというお話でございました。しかし、私は、もう今の社会で地域ネットワークを再構築していくというのはほとんど難しいんじゃないかと思っています。地域ネットワークというのは、やっぱり日本の社会が稲作を中心に、農業を中心にやってきたので、田植えを一緒にやっていかなきゃいけない、同じところに固まって暮らしている、だから地域ネットワークがあったわけで、一時間掛かって東京や大阪の工場に働きに行って寝にだけ帰ってくるという、そういう今の社会で地域ネットワークを構築していくというのは難しいのではないかなと、私はそう思っています。  その点で長沼参考人にお伺いしたいんですが、少年犯罪少年非行を少なくしていく、なくす、被害者をなくす、これはどなたも御意見異ならないところだと思います。今、私が徳地参考人にお尋ねしたような問題意識で、地域ネットワークなんて今更つくれないと、かといってすぐに厳罰化もいかがかなと思う、味気ないと思う、何かいい社会をつくっていく方法というのはないのかなと、その点を、時間が余りありませんので恐縮ではございますが、ちょっと短くお答えいただけると幸いでございます。
  28. 参考人(長沼範良君)(長沼範良)

    参考人長沼範良君) 大変難しい御質問でありまして、私が勉強しておりますのはたかだか法律の世界ですので、法律というのは結局後始末の世界でございます。  したがいまして、より展望的な、心理学的、教育学的あるいは社会学的な、そういった専門的な知見を結集しまして、こういった根本的な問題について分野をまたがった研究というのは今後ますます実施していかなくちゃいかぬのじゃないかなと、こんなふうに思っております。
  29. 前川清成君(前川清成)

    ○前川清成君 終わります。ありがとうございました。
  30. 参考人(武るり子君)(武るり子)

    参考人(武るり子君) 済みません、少しだけいいでしょうか。済みません。
  31. 委員長(山下栄一君)(山下栄一)

  32. 参考人(武るり子君)(武るり子)

    参考人(武るり子君) 地域がかかわれないというか、それは私は人権の問題があると思います。私の周りにはおせっかいな、いい意味でおせっかいな人がたくさんいます。気になったら声も掛けます。でも、それが人権侵害だとか言われれば声を掛けにくくなってしまうんです。だから、あわせて、人権とは何か、本当に守る人権なのかどうなのか。時には、本当に人間として大事な、おせっかいも大事なんですね。それを人権侵害と取る、そういうふうな空気にしてしまったことが私はいけないと思います。それを、常に人権のことは言い続けていただきたいと思います。  ありがとうございました。済みません。
  33. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 四人の参考人の方、本当にそれぞれの立場で、それぞれの経験から貴重な御意見をこの少年法改正にいただきまして、本当にありがとうございます。  まず、四人の参考人皆さんにお聞きしたい点がございます。  それは、御意見の中でもおっしゃっていただきましたが、今回は衆議院における修正で、少年院への送致可能な年齢をおおむね十二歳以上というふうにしたことで、小学生もある意味では少年院送致することができるというようなことになったわけでございます。  この十四歳未満少年少年院送致という問題については、少年の健全な発達や成長の妨げになると、小学生については入れるべきではないというような意見がある一方で、この法改正の元々の議論のときに、これは法制審の議論でもございましたが、今は大人のような十三歳もいて子供のような十八歳もいると、年齢で線引きをしないというのが改正法の哲学だったはずだというような御意見もあったことも事実でございます。  そういった中で、今回、おおむね十二歳以上という下限年齢を設定したわけです。これは一つの見識であり、いい形だったんじゃないかなと私どもは思っておりますが、このおおむね十二歳以上という下限年齢を設けたことに対してどのように皆さん方が評価をなさっているのか。つまり、もう一つは、おおむね十二歳以上という下限年齢の合理性みたいなことについて、何かお考えがあればお伺いをしたいと思います。四人の参考人すべてにお伺いしておきたいと思います。
  34. 参考人(長沼範良君)(長沼範良)

    参考人長沼範良君) 私は、先生今御指摘の下限の点でございますけれども、基本的には法律で書くのが非常に技術的に難しいという観点があったのであえて明示をしなかったと、こういうことだろうというふうに理解しております。  下限の年齢を書いていないということは、いかなる年齢少年であろうと、どんな年齢であろうと少年院送致が適切であると、そういうことを意味しているのではなくて、個々少年ごとの問題性に応じて家庭裁判所の方で慎重な判断をして、その裁量によって最適な処遇選択すると、こういう趣旨だったのではないかなというふうに思います。その限りで、一応の目安といいましょうか指針としてこれくらいのところということを設けるのは、その趣旨を決して損なうものではないのではないかと、こんなふうに思っております。
  35. 参考人(黒岩哲彦君)(黒岩哲彦)

    参考人黒岩哲彦君) 黒岩でございます。  まず、下限の年齢が設定されたこと自体について私どもは評価しております。全く下限がなかったことについて、こういう下限年齢が設定されたことはいいことだと思っております。  しかし、もう一歩やっぱり努力していただきたいなということでございます。この二年間の例えば殺人事件を見ましても、やはり先ほど私言いましたけれども、十二歳の男の子が十一歳の妹さんを殺したとか、十三歳の男の子が実父を殺したとか、家庭内の紛争が全部でございます。これが殺人事件として、事件として立件されているわけでございます。  そういう意味で、先ほど徳地先生がおっしゃいましたけれども、家庭に問題があるということになれば、やっぱり児童自立支援施設で育て直しというのはこの非行の状況からいっても有益であろうというふうに思っています。  以上でございます。
  36. 参考人(武るり子君)(武るり子)

    参考人(武るり子君) 私は先ほどから言っていますように、会の人たち三十家族に対して、集団暴行事件が多いので百五、六十人なんですね。それで、その中で、やっぱり集団暴行が多いものですから、一つの事件に対して年齢がいろいろなんです。  例えば、こんな事件があります。十四歳が三人いて一人が十三歳だった場合があります。全く同じように事件にかかわるわけではないんですが、やっぱり責任としては大きなすごい死亡事件にかかわっているわけですね。でも、年齢で十三歳の子が自立支援施設だったんです。十四歳の子たちは皆少年院でした。やっぱりそれはおかしいと思いました。  そのために、やっぱりこうやって十四歳未満であっても少年院送致が可能だということを入れてもらうことはよかったと思うし、私は年齢ではないと今も思っています。といいますのは、やっぱり集団暴行が圧倒的に多いわけですね。そんなときに、グループの中でも私はそういう話は出ると思うんです。なぜおまえは自立支援施設で、なぜおれたちは少年院なんだということにも私はなりかねないと思います。その差があってはいけないと思います。
  37. 参考人(徳地昭男君)(徳地昭男)

    参考人徳地昭男君) 私たち現場の人間はこういうようなことを頭の中に入れて仕事をやっております。非行少年の立ち直りというのは、何をやったかということではなしに、そうではなしに、なぜやってしまったのか、こういうふうなことを解明できないとなかなかやっぱり処遇の筋道ができないということなんですね。  ですから、先ほど黒岩さんがおっしゃいましたとおり、彼なんかの非常にやはり幼少期もそうですが、いろいろ家庭的な、不全感もそうですけど、非常に家庭的には大変な状況の中で生活していて、それでやむにやまれなくなってこういうふうな状況になったということが一つあるわけですね。  ですから、そういうようなことをしっかり解明できてから初めて、私は、どこの施設に入所させるのか、そういうことを解明して初めてやはり送致すべきではないかと思っております。
  38. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 長沼参考人に。  今回、警察官による任意調査権限の明確化の問題が起きまして、強制捜査権限が付与することができるという問題があった。この問題について黒岩参考人からは、これだけ権限が強化されるんであれば、当然いろんな途中の過程の、つまり警察官触法少年権利保護内容を分かりやすく告知するような規定を設けてみたり、準則やルールの問題等の御指摘が黒岩参考人からあったわけですね。  その中で特に私たちも感じているのは、一つは大阪高裁の話がございましたね。結局、冤罪の問題ですね。あの中で、取調べ官が取調べ中に机をたたくなど穏当を欠いたというようなことを実際に指摘をするような問題が起きていると。こういう問題があると、本当に長沼参考人がおっしゃるような程度でいいんだろうかというような疑問をやっぱり持たざるを得ないようなところが一部出てくるんじゃないか。  その辺に対して、この冤罪という問題に関してどのようなお考えを長沼参考人が持っていらっしゃるか、一言お聞きしたいと思います。
  39. 参考人(長沼範良君)(長沼範良)

    参考人長沼範良君) ただいま先生が御指摘の点ですけれども、今回の法案に関連して申し上げますと、触法少年事件について任意調査調査権限があるということを明確化するということは、恐らく現状の何か任意調査の在り方について根本的な改変を加えると、こういうことを考えているのではなくて、元々できるはずの性質のものをどの範囲でできるのかをしっかり書き分けておこうと、こういう話だろうと思うんですね。  それに比べまして、その強制的な処分を付与するというところは全く新しい部分でありますけれども、これも何も刑事訴訟法の一部を移植すると、こういうことではなくて、全く目的性格も違うものではありますけれども、対象者に対する利益侵害という観点からは非常に類似しているものの形をこちらの方の調査でもかりると、こういうことなんだろうと思います。  そこで、任意調査の件ですけれども、その点ではもちろん先生御指摘のようないろんな配慮が実際上必要であることはこれは間違いないことでありまして、私もその点については反対の意見を持つものではございません。ただ、それを法律に書くことがふさわしい事項なのかと、こういう観点からいろいろ、我々理論を勉強しておりますので、理論的に考えますと、その点についての法律の書き分け、説明ということまでは恐らくはちょっと違うのではないかと、こんなふうに理解しておるわけです。
  40. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 黒岩参考人に、冤罪根絶のためにということで幾つかの点の御指摘を先ほど御意見でいただいたわけですね。様々な御意見いただきました。  私はその中で、少年事件に限ったことではないんですけれども、やはりそろそろ我が国も、いわゆる可視化という問題ですね、こういう問題を取り組まなければいけないところに来ているのではないかなということを強く感じている一人なんですけれども、ともかく様々な点を御指摘をいただいているんですけれども、御指摘をいただいたこの冤罪根絶のためにという四項目いただきましたが、その中でもやはりまずはこれは優先して取り組むべき問題ではないのかと黒岩参考人がお感じになっている点があれば、並列化じゃなくて、この中でこれだというような御意見があるなら伺っておきたいと思います。
  41. 参考人(黒岩哲彦君)(黒岩哲彦)

    参考人黒岩哲彦君) 衆議院修正権利保護規定を厚くしていただいたということについては、私どもは積極的に評価しているところであります。しかし、一方で、少年自身弁護士選任できるという独立の権限を与えていただいたということについても積極的に評価しているところであります。  しかし、一方、少年がその権利を知らなければその権利のしようがないだろうというふうに思っています。そういう意味で、触法少年権利保護内容についてやっぱり分かりやすく説明していただくということが何よりも必要ではないかと思っています。  先ほど御紹介しましたけれども、現行法でも少年審判規則で、裁判所に、しかも十四歳以上の少年を主に審理する手続権利の告知の規定が置いているわけでありますので、やはり十四歳未満となればより分かりやすい権利の告知の規定を置くということが是非とも必要であろうというふうには思っています。  以上でございます。
  42. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 武参考人に、先ほど、今回のいろんな改正の中で、虞犯少年の問題を取り上げていただいてお話をしていただきました。  ただ、この少年法改正そのものは、正に皆さん方がこれまで悩まれていた点、ここだけは変えてもらいたいという点についてはかなり組み込んだ形での改正少年法になっているんではないかなと、平成十二年のときと比べてみても大きな前進があっているとは思っておりますが、それでも、皆さん方から見て、今回改正していく、でもこういう点がもう少し私たち言わば現場、悩みを抱えた人間にとってみれば、もう少しこの辺についてはお取り組みをというか、取り組んだ方がいいんではないかというような問題をもし持っていらっしゃるならば、この際お伺いをしておきたいと思います。
  43. 参考人(武るり子君)(武るり子)

    参考人(武るり子君) 今回の法案というのは十四歳未満事件のことなんですけれども、私たちが問題を抱えているのは、十四歳以上の少年犯罪の問題もたくさんあるものですから、今回の法案に限って言えば、今までにあるべきものがやっと盛り込まれていたなというのをまずは感想として持っています。ただ、削除されたところは本当にがっかりしました、正直。だから、すごくこれが通ってほしいなと思っています。  でも、その先にはやっぱり十四歳以上の少年犯罪のことをまたこの後考えられるようですけれども、少年法五年後の見直しというのがありますので、そのときに私はたっぷりと意見を言いたいと思います、今日言うのにはとても足りないので。たくさん問題は抱えております。  私はいつも思うんです。被害者、遺族を有利にしてくださいとお願いしているのではないのです。被害者感情を特に配慮してくださいとお願いしているわけでもないんです。私たち被害者、遺族、被害者が普通に社会で生きていけるようになってほしいわけです。情報をもらえなかったり意見が言えなかったり、それは加害者の条件ですごく違うんですね、十四歳未満だと本当にないわけですね。そうすると、被害者、遺族はそれから先、生きていくのがとても苦しいんです。だから、普通に生活をするためにあるべきものなんです。それを強く知っていただきたいと思います。
  44. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 ありがとうございました。終わります。
  45. 仁比聡平君(仁比聡平)

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。  まず、事実解明重要性という点からお話を伺いたいと思うんですけれども、先ほど来、武参考人から、この点での少年司法の関係者あるいは関係機関の従来の対応が余りにひどかったじゃないか、あるいはひどいじゃないかというお話がございます。  黒岩参考人にお尋ねをしたいと思うんですけれども、これは、実は私は、武参考人がおっしゃっているというだけではなくて、従来の少年司法手続における事実認定の問題、あるいはそれを被害者との関係でどのように現場の方々が運用してきたかという意味で、いろんな問題を実は抱えているのではないかと思うんですね。先ほどは、裁判所に行けば、ここは事実をどうのこうのする場ではない、加害少年をこれからどうするかだけが問題なのであるというような対応をその当の被害者、当事者にされるとか、そのようなたぐいのお話は、被害者の方々がお書きになられたものや集会などでの御発言を聞いていると、これはもうたくさん出てくるわけです。  私自身弁護士として少年事件付添人活動も、それから被害者の方の代理人としての活動も行ってまいりましたけれども、例えば私が、非行事実が存在しないということで不処分決定に至った事件の中では、目撃証言があるんですが、その目撃証言をした少年がいた位置からは実はその加害行為の現場は全く見えない。なのに、大変リアルな目撃証言の供述調書がたくさん作られているわけですね。実際に現地に臨んで、その証言をした少年がいたところから加害行為があったという現場を臨みさえすれば、見さえすれば、そんな証言はあり得ないということが分かるにもかかわらず、そのような目撃証言を中心とした警察の調書がもう多数にわたって固められているというような事件がございました。  事実解明において余りにもひどくないかという国民的な思いもあるかと思うんですけれども、この辺り、黒岩参考人、いかがお考えでしょうか。
  46. 参考人(黒岩哲彦君)(黒岩哲彦)

    参考人黒岩哲彦君) 少年事件につきましては、今でもやっぱり冤罪事件があるというふうに私どもは認識しております。こういう中で、うその自白が、間違った自白が取られるケースがあるだろうと思っています。  とりわけ、先ほど武さんからずっとお話ありましたけれども、少年事件の特徴は、一つは家庭内の事件が多いということと、もう一つは集団の事件が、共犯事件が大変に多いということでございます。その中で一つの捜査の手法として、例えば年少少年自白を取って、ここから全体の事案解明しようというのが警察の一つの捜査手法であろうと思います。しかし、元々の出発点が間違っていたら全体の関与者が間違ってしまうと、こういう危険性が大変にあるのが少年事件の特徴だろうと思っています。  とりわけ、もう何回も言いますけれども、先ほどの大阪地裁所長襲撃事件は、十三歳の少年自白から始まって全体の自白事件に広がっていった。これが成人もそれから十四、十六の少年も冤罪である可能性があるということで裁判所も認定しているところであります。  そういう意味で、是非とも、警察における捜査につきまして、きちんとした捜査の可視化等を含めて冤罪をなくす方向での一層の努力ということが必要であろうというふうに思っています。
  47. 仁比聡平君(仁比聡平)

    仁比聡平君 その事実解明が何よりも出発点じゃないか、あるいは少年事件を直接携わる専門家にしても、非行事実があるのかないのかという認定がまず最初じゃないかという、そういうことは当然だと思うんですね。  その上で、児童相談所家庭裁判所のその機能に対する言わば不信感がある中で、武参考人は先ほど、警察にしかできないのではないだろうかという御趣旨だったと思うんです。  その点で、武参考人にちょっとこれはお尋ねをしたいのは、一方で、警察に対する少年犯罪被害者犯罪被害者の方々からの厳しい批判があるわけですね。被害に遭っている、命を取られるかもしれないという思いで被害届けに行ったのに、まともに対応してくれなかった、実際に動いてくれたのはもう殺されてしまった後だった、そしてその後も、遺族やあるいは関係者を証人、証拠としては扱うけれども、実際に何が分かってきたのかもマスコミを通じてしか伝わってこない、様々な問題がありますよね。  その中で、警察被害者の方々に情報を明らかにしないときの理由として、それは少年法があるからだというんだけれども、マスコミには伝えていることも被害者に伝えないわけですね、少年法があるからといって。一方で、加害少年に対しては、先ほどの冤罪のお話のように、本当に少年法を守って、適正手続を守って調査捜査をしているのか、そのこと自体に重大な不信がある。  こういった警察のありようについて、思いがあればお聞かせいただければと思うんですが。
  48. 参考人(武るり子君)(武るり子)

    参考人(武るり子君) 私の感じていることは、警察少年犯罪の場合に調査捜査がしにくいんだなというのをまず感じています。といいますのは、年齢が低ければ低いほど人権、プライバシーと言われます。となると、やっぱり警察もしにくいわけですね。  もう一つあります。年齢が低ければ低いほど、どうせ児童相談所に送られるだけだとか、どうせこれは家庭裁判所に送られて保護処分になるんだとかいうことが、今まで道というのが決まっていたんですね。年齢で割と、十四歳未満だと児童相談所に行って、時には、もう極端に言えば何日か後には学校に通えていたんですね。死亡事件であっても、会の人はそんな人がいます。だから、今まではそういう流れが決まっていたので、警察は、どうせ一生懸命やってもという、力が私は入らなかったんじゃないかという思い、思いというか、何件も見ていてそういうことを感じるんですね。  だから、そうではなくて、少年犯罪であっても、やっぱり流れは幾つか法律改正して変わったんですよ、一生懸命しないと刑事裁判になることもありますよ、十四歳未満でも家庭裁判所に送られることがあります、そこには検察官が立ち会うこともある、いろんなことが、もし道がたくさんできたとしたなら、もっと私は警察は力が入ると思うんですね。だから、今までは本当に力を入れてこなかったという事件も私はあると思います。  だから、力を入れてほしいと思いますし、そのためには、人権人権と加害者の人権ばかりを言い過ぎないことが私は大事だと思います。もちろん、あるべき権利は大事です。人権は大事です。でも、今のように保護や人権、そして将来がある、そればかりを言うことはやっぱり私は間違いだと思うんですね。  警察に不信感がすごくあります。それはなぜかというと、事件に遭った後、まず会うのが警察なんですね。遺族も被害者も混乱状態にあります。そこで、今は犯罪被害者等基本法ができまして、情報をちゃんと被害者にも伝えなさいということになってきつつありますが、以前は何も情報をもらえないわけですね。警察がちゃんと調べていたとしても、情報をもらえないので不信感を持つんです。一番最初に会うのが警察だからです。  この人はちゃんとしていないんじゃないかと私も不信を持ちました。けんかではないのにけんかとしているんじゃないかと思ったわけです。それはなぜかというと、何の刑罰も与えなかったからなんですね。十六歳以上であっても逆送されなかったという結果だけを見て遺族は警察に不信感を持つわけです。でも、よく私はその後警察の人と話をしたりいろんな話をして、遺族の経験を聞いていくと、あっ、警察はやっぱり調べてはいたんだということが分かったんですね。  だから、確かにそういうふうに力を入れていない警察もあるけれども、それは私は一部であるんじゃないかなと思うわけです。ほとんどは一応調べていて、だけれども、ちゃんと被害者に伝えなかったという、そういう仕組みがちゃんとされていなかったことも不信感を持つ理由だと思うんですね。だから、お互いにやっぱり被害者の立場で、そして警察の立場、いろんなところで話をし合うことが、私は理解をし合うことが大切だなと思います。変な誤解を受けてしまうからです。  でも、やっぱり少年犯罪には力を私はもっと入れてほしいと思います。点数が付かないということも聞いたことがあります。
  49. 仁比聡平君(仁比聡平)

    仁比聡平君 もし今、武参考人が懸念をされているような背景でそういう事態が起こっているんだとしたら、私はそれは許せないと思うんですね。つまり、一方的なリンチ事件であるということが明らかなのに、それをけんか両成敗だというふうに言われるような現場対応というのがよく聞こえてくるわけですよね。まして、児童相談所家庭裁判所送致すればそれでもう終わってしまうじゃないか、点数にもならないしみたいな発想がもしあるとしたら、それはやっぱりきちんと正さなければならないと思うわけです。  被害者の方々にお話を伺ったり読ませていただいたりするときに、今日、武参考人も冒頭におっしゃいましたけれども、どこのだれが一体どうしてと。なぜ御自身の、死亡事件であればお子さんが亡くなられるということになったのかということを知ること、そしてそのことを、加害少年やその親が自らの行った行為犯罪であることをきちんと認識をしてほしい、そうでなければ子供が浮かばれないし何にも始まらないというお話をよく私もお伺いをいたします。この行為の重さを加害少年がきちんと認識するということ、つまりその重さがどのような重さなのか、どのようにその重さを受け止めるということが重さを受け止めたことになるのかというのは、これ大変難しいことだと思うんですよね。  ここで、ある研究者はこんな表現をされていて、私もなるほどと思ったんですけれども、荒れ地に種をまいても育たないように、被害者の思いや被害の重さを受け止めるためには少年にそのための準備がなされていることが必要となるという表現をある研究者はされておられるんです。  少年に、行為犯罪である、そしてその結果、あるいは被害者の皆さんの現状や思いですね、これを理解させるというのは少年司法関係者にとっては大変大きな課題であり続けてきたと思うし、今複雑化すると言われる中でこの点どう考えるのかということが改めて問われていると思うんです。  そこで、徳地参考人に、武蔵野での御経験や、それから子供たちの事件が複雑困難化しているのではないかというか、事件全体がというよりも、複雑困難な事件が起こっているのではないかという国民的な思いもあるわけですけれども、この加害行為の意味を理解させるためにどう取り組めばいいのかという点について、更に思いを聞かせていただければと思います。
  50. 参考人(徳地昭男君)(徳地昭男)

    参考人徳地昭男君) 児童自立支援施設はあくまでも矯正教育少年院とは全然タイプが違うわけですね。例えば、少年院のいわゆる被害者の視点に立った教育というのは、それなりのプログラムを一つ立てまして、それで系統立ててやるわけですね。児童自立支援施設というのはあくまでも児童福祉施設ですので、先ほど言いましたとおり、職員夫婦が子供たちと一緒に生活をともにしながら、それで自分のやっていることを振り返って、それで職員夫婦とそれから子供たちとの集団的なそういうふうなものからいろんなことを自分で考え直すという、そういうふうなものが基本なんですね。ですから、あくまでも立ち直りを支援する施設というようなことが言えるかと思うんですね。少年院のように、もう君たちはこういうふうなことをやったんだから、こういうふうないわゆるプログラムですべてやるというような、そういうふうなものはやっておりませんので。ですから、あくまでも矯正教育と児童福祉施設との違いというのはいろんな面で違うわけですね。  ですから、今日、先生が武蔵野学院に行かれるかどうか分かりませんけれども、実際見てみましたら、もう本当に塀もありませんし、夜間は武蔵野学院の場合は施錠しますが、日中は本当に、食事取りに行くときも一人で行きますし、それからまた少年院のように、生徒同士がしゃべっていいなんかいうことは、まずはしゃべってはいけないということが少年院なんですが、児童自立支援施設の場合は、もう本当に食事しながら、職員と一緒に談話しながら、それからまたそういうふうな非常にやはり家庭的な雰囲気が一番大事な大事な施設なんですね。  ですから、そういうふうなことを是非頭に入れながらやらないと、悪いことをやった人たちだからこそそういうふうなものが必要なんだという見方ではなしに、あくまでも児童自立支援施設というのは、対象児童は昔と随分違いまして、単に非行少年非行児童だけが集まるような施設ではないんです、今は。非常に、先ほども言いましたとおり根底に虐待がありますし、その虐待の反動というものもありますし、それからまた本来の非行児童もいますし、それからまた発達障害の子供も非常にやっぱり多く入っております。そういう点では、非常にやはり昔のような一つの集団処遇ではなしに、発達障害なんか特にやはり個別処遇、個別ケアしなければやっていけないような状況なんですね。  ですから、昔のような、単に非行を犯す、若しくは犯すおそれのある子供ではなしに、今は家庭的な環境、理由が非常にあるような子供が、十年に児童福祉法が改正されまして対象児童の幅が大きく広がりました。それと同時に、どこの施設でもやっていけない子供はもう児童自立支援施設しかないんだという、やっぱり最後のとりでとして非常に今活用されているのが私は児童自立支援施設ではないかと思っております。  ちょっとお答えになっているかどうか分かりませんが、一応、ですから、少年院と非常にやっぱり大きな違いがあるという、そういうようなことを申し述べたいと思っております。
  51. 仁比聡平君(仁比聡平)

    仁比聡平君 ありがとうございました。  長沼参考人に、本当はどんな事実解明、具体的な例などを伺いたいと思ったんですが、ちょっと時間がなくなってしまいました。これで失礼いたします。  本当にありがとうございました。
  52. 近藤正道君(近藤正道)

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  今日は四名の参考人の皆さん、本当に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。とりわけ、武参考人のお話、胸に迫るものがございまして、深くこれからいろんなお話を更に反すうをしながらよく考えてみたいというふうに思っております。  最初に、今ほどの話の続きで徳地参考人にお尋ねをしたいというふうに思いますが、今回の法改正で、衆議院修正が行われまして、最大の論点の一つが少年院への収容年齢の問題だというふうに思っているんですね。従来は、触法少年については、とにかく少年院ということではなくて児童自立支援施設ということだったんですけれども、少年非行をめぐる状況の中で少年院へという話も出てきまして、今それが小学生も場合によっては対象にするのかといういろいろ議論になっております。  今日、徳地参考人からいろいろ感化院以来の歴史、皆さんの御努力、いろいろ聞かさせていただきました。皆さんのお話を聞いておりますと、本当に皆さんの懸命な取組に頭の下がる思いでございますが、しかし児童自立支援施設少年院は違うと、全然違うものだというお話をされればされるほど、私はある意味で、基本的に違うということはそれはいいけれども、もう少し融合するといいましょうか、というものもあってもいいのではないか。  例えば、児童自立支援施設のそれなりのメリットと同時に、デメリットはそれなりにやっぱり今問題になっていて、そこが言わば過度に強調されているのかあるいは当然に強調されるのか分かりませんが、そこが今いろいろ問われて、やっぱり児童自立支援施設ではちょっと限界があるのではないか、こういう話が出ているのではないかと思うんですよ。  二つしかない国立の児童自立支援施設については一定体制があるけれども、そうでないところにはなかなか十分なものがないと。例えば、専門的な素養を持ったスタッフがいるのかどうかとか、あるいは非行事実によっては一時期ほかの子供たちと少し隔絶をして、切り離して対応した方がいい、そういう場合もあるのではないかと。ところが、そういう施設がない、体制になっていない。  そこで、私がお聞きしたいのは、少年院児童自立支援施設というのは違うんだけれども、もう少し双方のいいところを少しずつ取り入れて、結論でいえば、児童自立支援施設をもう少し改良する、そうすることによって、せめて小学生は少年院という矯正教育の場ではなくて、児童自立支援施設でちゃんとこれでもって大丈夫だよという体制をつくって、だからここでやらさせてもらいたいというふうな提起がもっとあってもいいんではないか、こういうふうに思うんですよ。  そこで、長年この施設にずっといて頑張っておられた徳地さんに、もう少しこういうところを良くすれば、せめて小学生は少年院に行かなくてここで十分育ち直しができる、そのためにはここをこういうふうに直してもらうと有り難いと、そういう意見があるんではないかと思うんですが、あったら聞かせていただきたい。
  53. 参考人(徳地昭男君)(徳地昭男)

    参考人徳地昭男君) ちょっと私も近藤議員と同意見なんですけど、今まで、矯正教育少年院と児童福祉施設での児童自立支援施設、同じような対象児童を扱っていて、年齢でいくと違いますが、片方は法務省、片方は最近ですと厚生労働省、その前は厚生省だったんですが、同じ施設でありながら職員同士のやはりそういうふうな話合いもないし、いろんな研究会もないんですね。  というのは、片方は、法務省の場合はすべてやはり国立の施設ということで、それでは児童自立支援施設は何かといいますと、国立は五十八か所のうちたったの二か所しかないんですね。片方は、今日いらっしゃいますが、国立武蔵野学院と、女子の方が国立きぬ川学院という、もう何回か行かれた方があるかと思うんですが、これは栃木県のさくら市というところにあります。残りの五十六か所のうち民間がまだ二か所ありまして、残りの五十四か所は公立の施設ということです。  そういうことで、片やすべてが国立の矯正施設と、それからまた、民間だ、国だ、それから公立の施設というような、そういうふうな施設との職員交流というものはまずありません。昔はそういうこともなかったんですが、法務省の場合、一番最初できましたのが八王子にあります多摩少年院、それからまた大阪の浪速少年院というのが一番最初、少年院としてできたんですが、実は、浪速少年院なんといいますのは、国立武蔵野学院の教官が浪速少年院の初代の院長として行かれたわけですね。その方はその後、二代目の多摩少年院院長になったかと思うんですが、そういうふうに昔は、児童自立支援施設、当時の感化院ですが、感化院と少年院との交流というのは昔はありました。  最近はそういうわけで、片方がすべて国立、片方が非常にやはり多種多彩なものがあるということで、それでも最近、少しはお互いの、法律改正ということが念頭にあるかと思うんですが、実は先般、先般というのは昨年の十一月ですが、国立きぬ川学院が中心になりまして児童自立支援施設、関東の研究会ですが、関東の施設、十二施設あるんですが、そこの教官と、それから法務省の教官とのいわゆる一泊二日の連絡会といいましょうか研究会といいましょうか、そういうものがありました。  これ、今まで初めてそういうふうなことをやったわけですね。ですから、私自身もそのときのパネリストとしまして参加しまして、少年院院長、私、それからまた臨床心理士の方がパネリストとしまして、研究会、それからまた午前中の方は、女子少年院院長被害者の視点を取り入れた教育ということで勉強しました。一泊二日ですから、その後いろいろ勉強会等、夜遅くまでとことんいろいろ話し合いました。  そのときの結論を申しますと、やはり少年院の方の方は、余りにも児童自立支援施設のことをよく分からなかった、もうちょっと勉強すべきだと、また同じように、児童自立支援施設職員も、こんなに少年院の方が勉強しているのか。非常にやはり専門性が高いのが少年院です。そういうことで、これからはそれじゃ一緒にいろんなことで、この限りで終わりではなしに、二回、三回と、こういうふうなことを続けていこうという、そういうようなことがあったわけですね。  少年院の方は、昔から非常にやはり言語化していますし、それからまた処遇の行動化、いわゆる処遇の科学化を図りまして、学会等なんかでも非常にやっぱり血気盛んにいろんなことを発表しております。児童自立支援施設の方と申しますと、そういう点ではおくてといいましょうか、なかなか、そういうふうなことに発表するよりは、君たちは一生懸命子供と一緒に生活する方が基本なんだという、昔ながらのそういうふうな考え方が今でも私たち自身は残っているんじゃないかと思うんですね。  そういう点では、非常にこれからは、先ほど近藤議員が言いましたとおり、もう少しやはり児童自立支援施設の方も職員のますますの研修を図りまして、どんな子供が来ても自信を持ってやはり処遇をできなければいけないような、そういうような体系化が是非とも私自身は必要ではないかと思っておりますし、もう少し少年院だっていろんなことをやっています。ですから、少年院の方のいろんな参考とすることをどんどん児童自立支援施設の方も組み入れまして、それを勉強しなければこれからはやっていけないかと思っておりますので。  特に、やはり先ほど来、いろいろやっております被害者の視点に立った教育、贖罪教育。本当に今、私自身が施設長やっているとき、非常に重大事件の子供が入ってきます。彼らなんかは非常にやはり口では、善くない、悪いことをしましたということを言っています。例えば、ある少年が一年後、大きな事件を起こしたために新聞に載るわけです。私自身もその子供に対して、その新聞をもちまして、実は被害者のお父さんがこういうふうなことを書いているんだということを本人前にして読み聞かせたわけですね。本人は神妙な顔をしております。しかし、どの程度本人が理解しているかどうか、これは内面はよく分かりません。  ですから、これからはそういうふうな被害者のことも重点を置いて教育しなければ、児童自立支援施設は非常にやはり少なくなってしまうんではないか。それからまた、勤務体制が大分変わってきてしまっています。少年院の三分の一、千九百名が児童自立支援施設におります。少年院、特に中等少年院は今非常にやっぱり過剰収容な状態なんですね。何かそれだけやはり少年院の方がいろんなことで期待度が高いか、そんなこともやはりしっかり自分たちの危機感として持たなければ私自身はいけないかと思っております。  以上です。
  54. 近藤正道君(近藤正道)

    ○近藤正道君 ありがとうございました。  今回、少年院への収容年齢のことで、児童自立支援施設というものについていろいろ勉強する機会を得まして、その中で、少年院はかなり過剰収容、それに比べて児童自立支援施設は空きの状態がかなり続いていると。さらに、専門性を持った、科学的な知見を持った専門スタッフの体制も、どうひいき目に見てもやっぱり充実しているなどとはおよそ言えないと。そして、非常にある意味では画一的に、とにかくきめ細かな体制が取れる制度になっていないと。  これではやっぱり複雑な触法少年の本当に寄り添った育ち直しの体制としては私は非常に不十分だと。この際、個々児童自立支援施設の現状などというものはもっとやっぱり前に出して、ここをしっかり改革をしていくということは私は非常に大事だと。  その上で、子供たちの、年少の子供たちの処遇場所としては一体どこが科学的にふさわしいのか、こういう議論をやっぱりきちっとすべきだと、こういうふうに思えてならないんですが、重ねて徳地参考人に、御意見ありましたらお聞かせいただきたいと思いますが。
  55. 委員長(山下栄一君)(山下栄一)

    委員長山下栄一君) 予定の時間が迫っておりますので、答弁は簡潔に。もう時間ありません。
  56. 参考人(徳地昭男君)(徳地昭男)

    参考人徳地昭男君) はい、分かりました。  私自身思いますのは、先ほど説明しましたとおり、全国五十八か所、この施設あるんですが、昔は大部分の施設が、説明しましたとおり、夫婦の職員、若しくは夫婦の家族と子供たちが一緒に生活をともにした小舎夫婦制という形態が非常に多かったです。ここ何年かの間に勤務形態が随分変わってきまして、職員のなり手がいないとか、それから建物が古いから新しい建物にする、そういうふうなことをちゃんとしまして、交代制勤務、いわゆる少年院と同じように、一つのコテージに五名から八名の職員が交代でやはりそういうふうな職員と子供たち一緒に生活をともにするというような制度になってきました。  と申しますのは、三年でそういうふうな交代制の職員というのは大部分転勤しちゃうわけです。片や、小舎夫婦制というのはずっと転勤しないで、中には新任職員から退職するまで約三十七年間ずっと夫婦の職員と子供たちが一緒に生活をするというような形態をやっている施設もまだありますが、残念ながら二十一か所ぐらいが、その小舎夫婦制という形態が大分変わってきました。これからはますます交代制勤務の方のそういうふうな形態が増えてくるかと思います。と申しますのは、先ほど来言っていますように、この施設のいいのは、一番大事なのは、子供と職員がいかにやはり濃密な人間関係を構築するか、これが基本なんですね。  といいますのは、交代制の場合は三年ぐらいで次から次へと職員が替わってしまう。そういうふうな勤務体制の場合は、やはり幾ら子供が好きでこの仕事に就いたとしても、三年間で転勤すれば、子供との一番大事な、特に年少児童、家庭的に非常にやはりいろいろな面で問題がある、いわゆる崩壊家庭の子供たちが入ってきて、それのお父さん、お母さんの代替にならなきゃいけないわけですね。しかし、そういうふうな年少の子供が入ってきても、職員が替わってしまえば非常にやはり目が移ってしまう、目が変わってしまう、そういうふうな見方をするわけですね。  ですから、これからそういうふうな形態が変わるんだったら、そういうふうなデメリットをいかにプラスの方向に持っていくか、これをこれから非常にやはり検討しなければ私はいけないかと思っております。
  57. 近藤正道君(近藤正道)

    ○近藤正道君 終わります。
  58. 委員長(山下栄一君)(山下栄一)

    委員長山下栄一君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時十四分散会