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2007-02-22 第166回国会 参議院 政府開発援助等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十九年二月二十二日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  二月十三日     辞任         補欠選任         小林 正夫君     若林 秀樹君  二月二十一日     辞任         補欠選任         若林 秀樹君     那谷屋正義君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山崎 正昭君     理 事                 阿部 正俊君                 小泉 昭男君                 山下 英利君                 犬塚 直史君                 富岡由紀夫君                 浮島とも子君     委 員                 岩城 光英君                 岡田  広君                 岸  信夫君                 坂本由紀子君                 中村 博彦君                 野上浩太郎君                 朝日 俊弘君                 江田 五月君                 小川 敏夫君                 大久保 勉君                 加藤 敏幸君             ツルネン マルテイ君                 那谷屋正義君                 藤末 健三君                 高野 博師君                 大門実紀史君                 近藤 正道君                 亀井 郁夫君    事務局側        常任委員会専門        員        泊  秀行君        常任委員会専門        員        桐山 正敏君    参考人        法政大学人間環        境学部教授    下村 恭民君        日本総合研究所        調査部環太平洋        戦略研究センタ        ー主任研究員   三浦 有史君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府開発援助等に関する調査  (成長経済統合を続ける東アジア我が国O  DAの今後の在り方に関する件)     ─────────────
  2. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) ただいまから政府開発援助等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十三日、小林正夫君が委員辞任され、その補欠として若林秀樹君が選任されました。  また、昨二十一日、若林秀樹君が委員辞任され、その補欠として那谷屋正義君が選任されました。     ─────────────
  3. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 政府開発援助等に関する調査のうち、成長経済統合を続ける東アジア我が国ODAの今後の在り方に関する件を議題といたします。  本日は、法政大学人間環境学部教授下村恭民君及び日本総合研究所調査部環太平洋戦略研究センター主任研究員三浦有史君に参考人として御出席いただいております。  この際、参考人方々一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、下村参考人三浦参考人の順序でお一人二十分程度御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただくとともに、意見表明をお聞かせいただきたいと存じます。  御発言の際は、その都度委員長の指名を受けてからお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、下村参考人からお願いをいたします。下村参考人
  4. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 下村でございます。よろしくお願いいたします。(資料映写)  お手元に資料が二種類配付されていると思いますが、レジュメパワーポイントの打ち出したものがございますけれども、御説明パワーポイントを使って進めたいと思います。適宜、レジュメの方に触れながら御説明をしたいと思います。  まず、今回の目的でございますが、日本ODA経験をレビューしながら、東アジアに対する今後の援助取組方を考えたいと思います。その際、東アジアと一口に言っても、非常に多様な地域であるということを頭に入れながら進めたいと思います。  日本ODAにとっての東アジアというものはいろんな意味がございます。幾つかの意味についてお話をすることで、これまでの日本東アジアに対する援助経験について全体像が浮かび上がることを期待してお話ししたいと思います。  まず、量的な側面ですけれども、これにつきましては改めて申し上げることはございませんけれども、東アジア日本にとって最大援助供与先ですし、日本は一貫して東アジアにとって最大ドナーの地位を占めてまいりました。  もう一つ、余り日ごろ考えることが少ないと思いますけれども、日本ODAの源流を考えると、東アジアというのは非常に大きな役割を持っていたというふうに考えられます。日本ODAの、最近の言葉ですとインキュベーターというんでしょうけれども、ふ卵器、生まれ育つ段階賠償というものが非常に大きな役割を果たしました。もちろん、日本ODAの原点は、一九五四年のコロンボ・プランの加盟による技術協力の開始でございますが、その後のODAの影響という意味では、この賠償、準賠償がより重要な意味を持ったと思います。  これは、日本の侵略の償いの一部として実施されたわけですけれども、この仕組みが非常にその後の日本ODA仕組み共通しておりまして、レジュメに二枚だけ別刷りで図が配られておりますけれども、何か稚拙な図で申し訳ございませんが、そのうちの図の一、これが一九五五年以降の日本賠償中心であった役務賠償の基本的な仕組みでございますが、これインドネシアのホテル・インドネシア建設の事例ですけれども、日本政府インドネシア政府お金を移転して賠償したということではなくて、財とサービスを納入したということで、それを納入した日本企業日本政府が代金を支払ったという形でございますけれども、これは無償資金協力と基本的に同じ仕組みでございまして、これを通じて日本企業は、画面にもありますように、輸出市場海外経験の場を提供され、また日本政府はこういうものを通じて資金協力の準備をいたしました。  申し上げるまでもなく、賠償、準賠償のほとんどが中国を除く東アジアに対するものでありました。したがって、日本経済協力のまだ始まる前の揺籃期インキュベーターとしての東アジアというのは非常に大きな意味を持ったと思います。  次は、理念の点から考えてみたいと思いますけれども、日本ODAはいろいろ問題ございますけれども、独特の理念を持ったアプローチだということは言えると思います。それは卒業というものがキーワードになっておりますけれども、しかし、その前に日本援助理念などあるのかという非常に自然な疑問があると思います。  日本には、援助理念がないという主張は内外で広く行われてまいりました。理念なきばらまきとか、日本企業の利益に直結しているだけであるとか、あるいは途上国側から要請されて受け身で援助しているにすぎないというような主張がございました。これらはそれぞれ一定妥当性を持っていると思います。ただ同時に、これまでの日本経済協力あるいはその中の援助の営みをつぶさに見ますと、やはりほかの国にない独特の要素があると思います。それがキーワードとしての卒業でございまして、卒業というのはここでは援助に依存しない高度な自立の達成ということを考えておりますけれども、そこまでの長い道程、道のりを支援していくということでございます。  それで、再び別刷りの図の方に戻っていただきまして、図二の卒業へのプロセスというのをごらんいただきたいと思いますけれども、二つの大きな要素がありまして、一つインフラ整備、もう一つ農村開発中心とした貧困緩和でございまして、インフラ整備によって投資環境改善して輸出能力強化すると。それから、農村開発貧困緩和によって社会的な安定を回復して、それによって投資環境改善して輸出能力強化するということで、輸出能力強化輸出振興というのが一つキーワードになっております。画面でいうと、①、②の到着点輸出振興ですけれども。輸出が伸びていきますと、それによって生活条件改善をファイナンスする能力が高まりまして、それによって政治的、経済的自立の度合いが高まって卒業に向かうと、こういうシナリオになっております。  一方でインフラ整備、一方で農村開発と、この二つのものを複線型で実施するというのが卒業へのプロセスですけれども、これを今画面にありますようにオーソドックスな西欧援助理念と比較いたしますとこういうことになると思いますけれども、西欧の場合、理念の根底には慈善とか富める者あるいは力のある者、恵まれた者の責務であるノーブレスオブリージュというのがあるわけですけれども、この場合、支援する相手が将来どうなるのかと、どういう姿になっていくのかという、その将来の姿は余り明確に見えておりません。  それに対して、卒業への道を支援するという日本型の理念の場合は、途上国自助努力を通じて最後ドナーと同じレベルになるということを信じて、まあそうならない場合も多いですけれども、それを信じて長い道のりを支援していくということで、非常に大きな違いがあるかと思います。  先ほども図で見ていただきましたように、卒業考え方卒業へのプロセス、あるいは日本援助の仕方、考え方というのは二つの足を持って、二つの車輪を持っておりまして、一つインフラ建設による輸出振興輸出能力強化、もう一つ農村開発あるいは貧困緩和による社会的安定の確保を通じた投資誘致能力強化、それによって輸出能力強化ということになりますが、この複線型の開発路線というのは東アジアの多くの国々の意思でもありました。したがって、日本援助理念を実施するのに非常に良い環境東アジアにあったということは言えるかと思います。  実際に多くの卒業の例が出ている、あるいは卒業に近づきつつ、例が出ておりまして、OECDでは卒業というものについて具体的な、数量的な基準を設けておりますけれども、それに合致して卒業していった国としてはシンガポールと韓国がございますが、そのほかにまだこの基準には達しておりませんけれども、マレーシアとかタイとか中国はそれぞれの意味で、それぞれの状況自立、高度の自立あるいは卒業に向かっているということが言えるかと思います。まあそういう、五十年経過してこういうところまで来たということがあります。  一言で言いますと、東アジアは、もちろん国によっていろんな違いはありますけれども、日本ODAをうまく活用してくれたということだと思います。これも申し上げるまでもなく、日本ODAには多くの失敗例もありますし、非効率な面も数多くございます。いろんな社会問題、例えば住民移転のトラブルとか、あるいは環境破壊とかいうものも副作用としてなかったとは言えません。しかし、総体として東アジアにおいては貧困緩和と高度な自立一定成果を上げてきたということは言えると思います。これがもちろん日本援助だけの結果でこういうものが起きたということではないわけですけれども、それに一定貢献をしたということは言えるかと思います。  最後に、東アジア意味ということで援助資金の回収について申し上げたいと思いますけれども、二〇〇五年の政府の貸付けのデータを見ますと、貸付け一〇〇に対して返済が六四になっております。つまり、実質ネットで貸付けをするアウトフローは三六でいいということになっております。非常に政府付け円借款返済の金額が大きくなっておりますけれども、東アジアはこの返済の中で非常に高い比重を占めております。中国だけで元利合わせて一千億円を超える返済を毎年、今行っておりまして、こういう意味東アジアは非常に、現在日本援助関係の資金繰りに大きな貢献をしてくれているということが言えるかと思います。  この第一部の、この日本ODAにとっての東アジア意味ということを総括いたしますと、我々は五十年以上ODAをやってきて非常に東アジアに助けられたと。東アジアといういいパートナーがあったために日本ODAは非常に助けられたということがあるかと思います。  これから今後の問題になりますけれども、今後の在り方二つの面で御説明をしたいと思います。  一つは、東アジアといっても非常に多様なので、三つの国、グループに分けてそれぞれについて考えてみる必要があるかなと思います。特に、域内に取り残された低所得国卒業に向かう国々に対してはそれなりのメニューが必要だと思います。取り残された低所得国、まあミャンマーは特殊な状況でございますので、ラオス、カンボジアですけれども、これにつきましては非常に潜在能力が低いので苦労するところですけれども、結局、インドシナ半島ということで面で開発して、物とか金とか人の移動を加速して、それによって雇用機会をつくり出していくという、面で対応するしかないのかなというふうに考えております。  それから卒業ですけれども、卒業につきましては、マレーシアにつきましてもタイにつきましても中国につきましても、これから意識して卒業戦略卒業にだんだん近づきつつある相手国にどういうふうに対応したらいいのかということを常に明示的に計画を作っていく必要があると思います。その場合のキーワード環境先端技術で、これを合わせて環境保全先端技術というのが一つの、これだけではありませんけれども、一つ卒業最後の過程のポイントになると思います。  次に、ちょっと見方を変えまして、東アジア援助を通じて向かい合う上で、やはり東アジア共通リスクに注目する必要があると思います。共通リスクがありますから、それを軽減するということをお互いみんなで考えれば、それが共通のメリットになって協力が進みやすいかなと思います。  ここで、三浦さんなんかと一緒に研究した研究会の中で、この三つの、A、B、C、三つリスクを取り上げたわけですけれども、ドル急落リスク中国という巨大なリスク、これをどうやって軟着陸させるかと。このAとBにつきましては、援助で、ODAでできることというのは非常に限られていると思いますけれども、三番目の経済活性化が加速する中で深刻化する環境破壊にどうやって貢献していくかということにつきましては、ODA貢献できる領域でもありますし、また日本が優位を持つ領域ですので、環境ODAへの取組を集中的に考えて、そこで、これまでは各国あるいは各プロジェクトという、点で考えられていた面が非常に多いわけですけれども、それを面、もっと広げて、地域的に広げて全体的な計画を作り、それをシラミつぶしに実行していくということを考えることが重要かなと思います。これがまた日本らしい形のイニシアチブではないかというふうに思っております。  最後の第三部ですけれども、これまで東アジアに対してどういうことをやっていったらいいのかということを考えてきたわけですけれども、やはり成果を上げるためには前提条件整備が必要だと思います。  東アジア我が国ODAという大きなテーマになりますと、どうしても理念とか戦略とか組織の体制とか、そういう大きな問題に関心が集まりますけれども、やはり実施段階でまだ非常にたくさんある制度的な制約条件をどうやって緩和したらいいかということを考える必要があります。それがないと実効性につながらないということが言えると思います。  ここで三つ主要な課題を挙げておりますが、一つは、これが最も重要だと思いますけれども、権限委譲を更に加速する必要があると。官庁から実施機関への権限委譲実施機関の中で東京から現場への権限委譲。随分改善は進んでおりますけれども、まだ業務面の具体的な意思決定官庁が関与する、これマイクロマネジメントと言いますけれども、この例がまだかなり残っております。こういう例を詳細に洗い出しをして権限委譲を加速していくということが必要ではないかと思います。  二つ目の問題は人の問題ですけれども、現場は人手不足ですけれども、人材にとっては職場不足という状況がずっと続いております。その結果、多数の期限付の職員、三年限度の職員があちこち転々とするということになっております。これは組織にとっても人材にとっても非常に無駄なことでありますので、何とか、実施機関の定員を増やすことは難しいわけですけれども、この人手をどうやって安定的に使って能力開発を進めていき、知識を蓄積していくかということを考える必要があると思います。  最後に、新JICAは、独立行政法人になるわけですけれども、独立行政法人運営というのはどうしても縮小型、つまり、交付金、予算、事務の方の予算ですと毎年減らしていくというような縮小型の運営を求められることが多いので、やはりもっと未来志向で、必要なところには必要な資源を配分するという形の運営が求められると。それが制約条件の打破になるのではないかと思っております。  私からのお話はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  5. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) どうもありがとうございました。  次に、三浦参考人お願いをいたします。三浦参考人
  6. 三浦有史

    参考人三浦有史君) 日本総研三浦と申します。よろしくお願いします。(資料映写)  今日私がお話ししようと思っているテーマは、そこに書いてあります主に四点であります。最初は、東アジア日本ODA、これは下村先生もさっきおっしゃいましたので若干重複しますが、簡単なおさらいです。二点目は、東アジアにおける経済統合、これも現状のおさらいでございます。三点目が、そうした経済統合が進む東アジア我が国日本としてどういう視点を持ってこれに臨むべきかということを、そこに書いてあります四点で整理をしてみました。最後に、この四点を受けて若干の提言を申し上げたいというふうに思います。  最初に、東アジア日本ODAでございますが、よくこの円借款経済インフラ東アジア、これが日本ODA特徴というふうに言われます。例えば、一番上の円借款中心というところを見てみますと、日本と、このDACと書いてありますが、DAC平均値意味しますが、九四年から九五年で日本援助のうちの借款部分が三割、DACが九%でした。これが二〇〇五年に、日本は随分減りましたけれども九%で、DAC返済が多くて新規が出ていないということでマイナスになっている。以下も同じような見方で見ていただけると、日本ODA特徴というのがお分かりいただけるかと思います。  このODAがつぎ込まれた東アジアがどのような経済発展を遂げてきたのかということをODAとの関係も含めまして見ますと、一点目に、世界開発途上国アジア、アフリカとか中南米とかそういう形で地域別特徴を出してみますと、東アジア特徴一つとして、ODA依存症からの脱却、先ほどもおっしゃいました卒業ということが言えると思います。  これはどういうことかといいますと、一人当たりGDPの高まるのに伴い、ODAのもらう額、経済と比べたときの相対的な額がどんどん落ちていっていると、成長とともにODAの額は減っている。あるいは、ODAをもらってもそれが政府消費支出、これは公務員の給料とか借金の返済に充てられるお金ですけれども、そういうのが増えていない。逆に言うと、一部の地域では、ODAをもらうんだけど、そのもらうことによって政府消費支出が増えるということが起きているわけです。東アジアはそういうことはなかったということです。  ODAと離れて見ますと、開放的な経済体制をつくってきたということです。世界経済に占める東アジアのシェアの拡大というのは改めて言うまでもありません。  この上の二つを可能にしたのは民間資金による開発であると、つまりODAではないというふうに見るべきであろうと思います。やはり雇用、貿易、イノベーションを促進し、経済活性化させるのは民間資金であります。政府は、この民間資金活性化させるために、自らがこぎ手となるのではなくて、市場経済をうまく機能させるかじ取りとなっていったというのが東アジア経済発展ポイントであろうと思います。  これを具体的に見たのが図表の一でございます。青いドットが東アジアでございますが、東アジア民間投資中心投資がなされてきたということがお分かりいただけようかと思います。  それで、ODA役割ですが、民間投資ODA関係を見ますと、東アジアではODA民間投資を触発するあるいは促進する呼び水としての機能があったというふうに評価をできるというふうに思っております。  二点目は、経済統合についての簡単なおさらいです。  経済統合にはいろんな段階がございます。左から右がいわゆる統合の形として深化をしていっているということになりますが、例えば日本が今目指しております、アジアと二国間で結んでおりますEPAというのはFTAプラスFTAプラスというふうに位置付けることができるかと思います。つまり、FTA労働力の移動とか、あるいは制度の協調化を含んでいるという点でプラスであると。ASEANが目指しておりますところはコモンマーケットマイナス、ここから幾つかの要素を取り除いたところが当面の目標であるというようなことをASEANの人は言っております。御承知のように、EUは一番進んだ経済統合というところに行っておるわけでございます。  世界のそのFTAの数と、地域別にそれがどういうふうに動いているかというのを見たのが図表三と四でございます。FTAがどんどん世界的にいろんなところでなされてきておると。それに参加しないことは著しく国益を損なうということになって、FTAが次なるまたFTA、あるいはその参加国の拡大を招くという循環が九〇年代に入って、WTOの交渉の挫折というのもありますが、そういう動きが世界で顕在化してきて、日本もそれに乗り遅れまいということになったということだと思います。  東アジアにおけますFTAの構図は、皆さんよく新聞等でごらんになるものをまたここに転写してきたわけですが、このとおりでございます。  次に、経済統合にいかなる視点で取り組むべきかということを考えるときに、地球上で展開されてます大きな経済統合を目指す組織といいますかエリアとして、東アジアだけではなくて、ヨーロッパにはEUがあって、アメリカ、中南米を含むところではFTAAというのがあります。それを三つを比較して見てみたいと思います。  この最初EUの図を出してありますが、縦軸は一人当たりGDPを取って、横軸に経済規模、丸の大きさは人口規模だとお考えください。横に千ドルを超えたところに線が引いてありますが、これは日本ODAにおいて無償援助卒業するラインだというふうにお考えください。  EUと、次、これがFTAA米州自由貿易協定、その次、東アジア、今三つを見てまいりました。時間がないのでざっと過ぎて恐縮なんですが、この三つをよくよく見比べて言えることが幾つかあります。  一つは、東アジアにおいて経済統合は一体だれが主導するんだという問題が出てきます。つまり、経済規模が大きいからその地域をリードするのか、あるいは成長率人口規模を掛け合わせたものが大きければその国を、リードするのかと。まあ大ざっぱに言って二つ考え方が、まあ政治力の話を除外するとあるわけですが、この二つで考えると、東アジアにおいては日本中国がやっぱり出てきてしまって、ヨーロッパのドイツ、フランス、あるいは米州におけるアメリカというような明確なリーダーシップが存在しないということです。  東アジアのもう一つ特徴は、東アジアの中には既にFTAで先行して共同体を目指しているASEANが存在すると。この東アジア経済統合ASEANが実際にはキャスチングボートを握るだろうと。これは、ASEANプラス3の枠組みがどうやってできたかということを見てもそういうことが言えようと思います。  ASEANは、キャスチングボートを握ることによって、右手に中国、左手に日本を置いて両てんびんに掛けてより有利な条件を引き出すということができるわけですが、これによって、一方で、東アジアではASEAN、ここで紹介した以外にもASEANは各国独自にいろんな国とFTAを結んでおります。そうやってそのFTAが重層的に重なることによってASEANは相対化をしてしまう危険性があります。この危険性をなくすためにはASEAN自体が東アジアで最も進んだ統合体であるということを示さなければなりませんので、統合のスピードアップを図らなければいけないと、しかしそれが本当にできるんだろうかというASEANの問題が浮上いたします。  日本ASEANのこの全方位外交に揺さぶられることになるわけですが、それよりもより深刻な問題としては、ASEANがスピードアップを図るんだけど、それによって統合の質が逆に低下をしていって、東アジアにおけるASEANの求心力が低下して、ひいては日・ASEAN連携が弱体化していくというシナリオもあり得るのではないかと、そういうことを懸念をしておる次第です。  もう一つは、ASEAN開発途上国が域内に非常に多く、しかも経済格差が大きいので、ODAに対する需要が強いということが言えます。その一方、ASEAN経済協力の枠組みを持っておりませんので、この地域ODAをするということ、ODAが重要だということになりますと、当然日本がその役割を担わざるを得ないわけであります。  日本にとっての課題は、一つ地域でマーケットメカニズムによる競争、FTAは基本的にそういう性格を持つものですが、それとODA、財政資金を通じてその開発を支援するという行為ですが、これをどうやってバランスを保つのかと。両方がうまく補完的に動けばいいのですが、場合によっては、その原加盟国、ASEANのオリジナルのメンバーは競争をASEAN内でどんどん促進するんだけれども支援はできないので、ASEAN内で不協和音が高まると、日本を見てどうぞお願いしますということになりかねない。あるいは、新規加盟国はそうした構造に不信感を高めて、弱い者同士で集まって弱者連合を結成して、日本ASEANの原加盟国あるいはアメリカ、中国も視野に入れて揺さぶりを掛けようとすると。これは、ASEANにとっても、あるいは日本にとっても好ましくない方向であろうというふうに思っております。  我が国ODAの課題としては、そこに挙げてあります信頼関係の醸成、ASEANの求心力の維持、あるいは各国の自助努力をいかに誘発するかという問題が課せられておりまして、これを要約すれば、ASEAN経済統合の一層の深化を促す、それによって日・ASEAN標準を東アジアのスタンダードにしてそれをその他の地域に広げるということをODA一つの目標にする必要があろうというふうに思います。  二点目は、開発課題の多様化、視点として、開発課題の多様化の問題であります。これは東アジアに限ったことではありませんが、グローバル化に伴って、社会不安が拡大する現象がいろんなところで起きております。グローバル化というのは資金とかマーケットで対外依存を必然的に高めますので経済発展のチャンスを得ることはできるんですが、それに伴うリスクも高まると。ミクロレベルで見ても、所得格差が拡大して、貧困層はよりそのショックに対して脆弱になるというような傾向が見られます。開放的な経済体制、例えばWTOに加盟すれば無条件で経済発展をするかというと、そういうことでも当然ないわけであります。  ここに、東アジアにおける幾つかの事例ということで紹介をしております。直近のタイのクーデターだけをここで取り上げてお話ししますが、いろんな見方があるとは思いますが、いわゆるタクシン政権下で市場経済にのっとって成長重視だということでいったその揺り戻しが今回のクーデターととらえることはできないだろうかというふうに私は思っております。  そういう東アジアで起きておりますいろんな摩擦、揺り戻しは、いろんな要因があろうかと思いますが、やはり共通点として、グローバル化によってその所得格差が拡大して貧困層の脆弱性が高まり、それによってナショナリズムが高揚するというメカニズムが働いているというふうに私には思えてならないわけです。  一方で、一橋大学の南先生という方が、第二次大戦前の我が国における著しい不平等が軍部の台頭を招いたという著書で指摘をなされておりますが、この指摘は、東アジアにおけるナショナリズムの高揚とか、あるいは、それが市場統合に与える影響を考える上で重要な示唆を与えるというふうに思うわけであります。  これは、図表九は、先ほど申し上げたWTO加盟によって必ずしも所得が伸びるわけでもないし、貿易が伸びるわけでもないということを確認したものであります。  開発課題の多様化として、もう一つ、グローバル化に伴い、標準モデル、つまり、こうすればこの問題は解決できますよという課題が非常に増えてきたということを申し上げたいと思います。  アジア通貨危機の後に、企業統治はどうあるべきかと、あるいは、資本の自由化どうあるべきだという議論は盛んに行われましたが、マニュアルが完成したわけではありません。あるいは、アジアで進む高齢化に今後アジアはどう備えるべきかという問題も正解のない問題であります。  我が国ODAの課題としまして、上の、さっきも述べました問題を受けると、開放経済体制及び社会変動に伴うリスクをいかに最小限にし、その成長の持続性を高めるかと、そのための政策はどうあるべきか、あるいはその政策をつくる能力をどう支援するかという、より高度な課題にODAは取り組まなければいけないのではないかと。  要約しますれば、従来、基本的には相手国の要請に基づいて我が国ができることを選択して援助してきたわけですが、開発国のニーズを見据えてすべきことに迅速に対応すると、そういう体制が我が国ODAに求められているのではなかろうかというふうに思っております。  三点目でございますが、視点の三点目は、国際的な援助潮流の変化にどう対応するかということであります。  国際的と申しますのは、ここに挙げているのは特に北欧諸国を中心とする援助潮流ですが、重視される点は、そこに書いてありますように、社会セクターを中心無償援助で、地域としてはサブサハラアフリカを中心にして、相手国のガバナンスを見ながら援助ドナーが協調してこれに当たりましょうということであります。  この援助協調というのは、協調という言葉は美しいんですが、実態上は、最も進んでいる地域では、相手国の長期開発計画と援助計画を整合させて各ドナーが協調してこれに開発に取り組むと。その結果として、援助の目的、手続、手法の共通化がどんどん進んでくると、現場で進んでくるということがあります。更に進みますと、相手国の法制度もそうした援助国のワンボイスの下に変わっていくということが起きます。  これはどういうことを意味しますかというと、金額が大きいからといってドナーコミュニティーあるいは受取国における援助国の存在価値が規定されないということです。協調は実質的には競争にもうなっておりまして、競争に敗れるあるいは参加しないということは我が国のプレゼンスの低下を招くということであります。  じゃ、どうするかということですが、日本としての課題としては、受取国及び他のドナーの支援を得られる包括的、効果的な援助戦略を出して、その成果を積極的に示していくということが今まで以上に必要になってくるというふうに思います。  四点目は、民間投資ODA関係でございます。  ODA大綱には国益ではなく国民益と書いてありますので国民益というふうに言いますが、直接投資を促進することもODA役割一つであるというふうに書かれております。実際、ベトナム、インドネシアでは、そこに書いてありますようなイニシアチブ、行動計画が立ち上がって、進出日系企業から投資上の問題点を聞いて、それを二国間政府の首相同士の合意の下で解決を図っていくというような動き、新しい動きがあります。これは、私は今までにないものとして大変評価をしたい。日系企業も高く評価をしているし、現地の政府からも高く評価されているというふうに思います。  しかし、これはどこでも通用するやり方かというと、そういうわけでもありません。企業の要望に基づくものですから、近視眼的で対象範囲も限定されがちですし、相手国政府と企業との対話の枠組みができれば、日本政府がそこにいつまでもとどまる必要はなくて退出をしていくというシナリオが妥当であろうと思います。  課題の四つ目として、日本政府ODAをどう活用すればいいんだろうということで、市場経済の主役である民に聞く、企業に聞くということは非常に重要であります。しかし、官の本当の役割はそこにとどまらず、より幅広い国民益を反映してプロジェクトを作ることではなかろうかというふうに思うわけです。  以上の課題を今三点挙げましたが、一点目の課題、ASEAN経済統合の深化、日・ASEAN標準を広げるということについて具体的に何をしたらいいかということですけれども、これは、ODAの議論とは別のところにあります問題を解決しなければならない。つまり、ODA云々を語る前に、ASEANとの質の高いEPAをまず締結すべきだということを申し上げたいと思います。  二点目は、韓国、タイとか、ODA卒業したあるいは今後卒業する国とどうやって連携を組むかということが重要になってきます。かつ、これらの国と政策対話と相互モニタリング、お互い経済改革をどう進めているのかというモニタリングも機能させながら、小泉首相、前首相がおっしゃった、ともに進み、ともに歩む率直なパートナーであるというふうにASEANを位置付けられたわけですが、これを具現化していくということが必要なのであろうというふうに思います。  課題の二と三で指摘した点につきましては、新生JICAが誕生しますが、その部分、そこの頭脳部分を拡充して、日本はもちろんなんですが、日本以外のリソースも日本援助戦略に取り込むような頭脳の拡充が必要であると。それに伴って、ODA関係組織として海外経済協力会議とかODA戦略会議、各省庁いろんな組織がありますが、あるいはその一方で、日本ASEAN行動計画とか政府内でいろんなイニシアチブ、構想が発表されております。そういうものをきちんと整理して、新JICAをそこにどう位置付けるんだという議論も必要ではないかというふうに思っております。  そして、下村先生もおっしゃいましたけれども、やはり新JICAは巨大な組織になるわけです。そこで生まれたいろんなノウハウをやっぱり蓄積して発信する能力を高めるというのが一番合理的だと思いますので、現地機能を強化するとともに、日本においてそれを支援する。権限を強化させるんだから評価体制もきっちりとつくるというような体制をつくっていくということが必要であろうと思います。  図表十は、先ほど申し上げました援助協調について若干のイメージを持っていただくために作ったものであります。左が援助協調前、右が援助協調後です。  コア業務の大きさ、つまり予算を遅滞なく執行するというその基本的な業務は、海外の日本援助機関においてこの業務が全体業務に占める割合というのは非常に小さくなっております。つまり、それだけ周辺業務が大きくなって、先ほど申し上げた課題にとても対応できる体制になっていないと。ゆえに、その図の部分を拡充をしていくということが重要であるというふうに申し上げたいと思います。  四点目の提言は、幅広い国民益を想定したプロジェクトの創造ということでございますが、既存の取組としてはそこに挙げてあるものがもう既に発表されております。しかし、それ以外にも、そこに書いてありますアジアバロメーター、詳しくは申し上げませんが、そういうものとか、東アジアの少子高齢化にどう向き合うかというようなことについても我が国ODAを活用する範囲があろうと。あるいは環境もそうであります。必要なことは、できること、我が国はこの分野に比較優位があるんだからこれをやりますということではなくて、相手側のニーズに立って知の蓄積と統合を図るということが重要なのであろうというふうに思っております。  時間の関係で補足ははしょらせていただきます。  以上でございます。
  7. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑及び意見表明を行います。  参考人に対する質疑及び意見表明を行う際は、御起立の上、御発言ください。  参考人方々の御答弁につきましては、各委員発言時間が限られておりますので、簡潔にお願いをいたします。  なお、御答弁は着席のままで結構でございます。  それでは、順次御発言願います。
  8. 岡田広

    ○岡田広君 自由民主党の岡田広です。  今日は、下村三浦参考人、本当にありがとうございました。  このODAにつきましては、過日、新聞でこんな記事が載っていました。「ODAで揺れる政府 国際公約守り倍増か 骨太方針通り削減か」という見出しで記事が載っていたわけでありますけれども、これについては、二〇〇五年のサミットやアジア・アフリカ首脳会議の中で、日本ODAを増額するという小泉総理がスピーチをなされました。この国際公約と歳出削減を目指す基本方針の間で政府が揺れているという、こういうことがマスコミに書かれていたわけでありますが、私は、ODAにつきましては、昨年、ASEANプラス3の労働大臣会議に大臣の代理で出席をさせていただきました。そしてまた、エクアドルのODAで病院建設の現場も視察をさせていただきまして、私は小泉総理の考え方に共鳴するものであります。  このODAにつきましては、両参考人の御説明の中にもありましたように、昨年、官邸に海外経済協力会議、そして外務省に国際協力企画立案本部が設置されまして、国際協力機構はJICA、ODA業務の一元的実施機関とする法改正も行われました。新JICA発足は来年の十月の予定と伺っております。ODAをより戦略的、効率的に実施するための改革が進められた年が昨年であったんではないかなと思っています。  そしてまた、来年も大変我が国ODA政策にとっては重要な年であると、そう思っています。途上国支援の在り方も主要テーマ一つになるであろうと思われます先進国首脳会議が我が国で開催をされるということです。議長国としてのリーダーシップが求められることとなり、さらに、我が国が主導して五年に一度開催をしてきたアフリカ開発会議がちょうど開催される年でもあり、冒頭述べました新JICAの発足に当たる年でもあるということで、そういう環境の中でこの参議院において両参考人をお招きしてODA在り方を聞き議論をするということは、大変時宜を得たものであると私は冒頭申し上げたいと、そう思っております。  限られた時間の中でありますから、何点か下村三浦参考人にお尋ねをしたいと思います。  第一点は、日中韓の援助戦略対話の必要性ということです。  これは、三浦参考人の連携型援助というこの研究会報告書も読ませていただきまして、大変すばらしいものがあるというふうに感動をしたわけであります。今日の我が国の厳しい財政状況を考えるときに、先ほど申し上げましたように、骨太方針どおり削減かという、こういう考え方もあるわけであります。そういう中で私は、これから単独で援助を行うんではなくして、関係国と連携をしながら効果的な支援を行っていくべきとの考え方に賛同をするものであります。ASEAN諸国間の格差を縮小させ統合を深化させる方向への支援として、ASEAN原加盟国のシンガポールあるいはタイマレーシアなど、ASEAN統合で利益を得る韓国とか台湾と連携して、ベトナム、ラオス等のASEAN新規加盟国への援助を行うという考え方は大変興味深いものがあります。  更に言えば、私は中国との連携をしっかりと考えるべきではないかと思うわけであります。我が国中国ASEAN諸国に影響力を行使しようとして競合する形で援助を行うということは、ASEAN諸国にとっても不幸なことであるというふうに考えております。韓国も含めて、日中韓で東アジアにおける包括的な地域援助在り方について戦略対話のようなものを行ってはどうかと、そういうことを考えているわけであります。  冒頭申し上げましたように、昨年、ASEANプラス3の労働大臣会議に出席をさしていただいてASEANのそれぞれの国の大臣や労働大臣と話したときに、これからはASEAN一つ一つの国ではなくしてASEAN全体で、世界の中のアジアという中で生きていかなきゃならないと、そのためには日本中国が仲よくしてもらいたい、そして日本中国と韓国と共同してASEANを引っ張ってもらいたいという意見がどの国の大臣、副大臣からもあったことが、私のASEANプラス3の労働大臣会議に出席した最大の感想であったわけでありますけれども、この考え方につきまして是非両参考人から御意見を賜りたいと思います。
  9. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 今言われました中国との援助連携、非常に重要な視点で、私もアイデアそのものについては賛成いたします。これが実現できれば、いろんな意味でいい成果が出ると思っております。  同時に、援助について、これ中国だけではございませんけれども、複数のドナーが連携するというのは非常に実務的には難しい問題を生みますし、事務量も非常に高まるということがございます。特に、中国の場合はOECDの開発援助委員会DACのメンバーでなくて、いろいろな意味でゲームのルールの違うところで援助しているわけですから、なかなか二つの、日本中国の、あるいは韓国も入るかもしれませんけど、ルールが調整される過程では大変な時間と労力が掛かるかと思います。ということは、それだけの人間のマンパワーを確保するということが、措置が併せて行われる必要があるということだと思いますけれども。  同時に、中国に限らずニュードナーと言われる、まあ中国は必ずしもニュードナーではありませんけれども、非常に新出のドナーではありますが、タイのようなニュードナーとの連携を通じて技術移転をしていくということは、日本のこれからの非常に重要な仕事になるというふうにも思っております。
  10. 三浦有史

    参考人三浦有史君) 私も、おっしゃった考えがもし実現すればそれは大変望ましいことだというふうに思います。  一方で、現実、中国がどういう考えでどういう地域援助しているのかという現実の問題を見ますと、かなり悲観的にならざるを得ないのかなという印象を持っております。連携はコアの部分をつくって、それを徐々に広げていって、例えば中国がそこに入ってくるように、将来的により長い戦略を持って入ってくるようにしむけるという考え方もできると思いますので、最初みんな集まらないとスタートしませんではなくて、やれるところからやっていくと。そういう意味では、韓国、タイなどでは日本のかつて援助をしていた相手側が今援助をする側となって、その援助をする側の事務方をしているということで、非常に共有できる部分が多いわけですね。そういうところをコアにしてまずは始めてみるというのが重要ではないかなというふうに思います。
  11. 岡田広

    ○岡田広君 なかなかこれは難しい問題だと思っておりますが、やっぱり日中韓のこの援助、そしてASEAN諸国の底上げをするということはとても大事なことではないかなと思っております。  もう一つ関連でありますが、現在の我が国ODA政策の基本的な枠組み、ODA大綱、そしてODA中期政策、国別援助計画、個別案件という流れになっているわけでありますけれども、ASEAN地域全体をどのような戦略で支援していくのかといった視点の枠組みが欠けているように私は感じられます。  そこで、この中期政策と国別援助計画の間に地域戦略というようなものを策定すべきではないかなというふうに考えるわけでありますけれども、この点につきましても両参考人の御意見をお尋ねしたいと思います。
  12. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 中期政策の下に国別援助計画があるわけですけれども、その間に地域戦略を入れるというお考えは非常に適切なお考えだと思います。ASEANに限らず、いろいろな地域でそういうものが必要になると思います。  このASEANにつきましては、しかしながら卒業に非常に近づきつつある国と低所得で取り残されている国がまずありまして、しかもタイとか、あるいは非常にまだよちよち歩きではございますが、ベトナムとかがカンボジアやラオスに支援をしているという関係がありまして、いわゆる南南協力も進んでいるということで、これは援助戦略というよりも、むしろ、今先生が言われた精神でいうと、ドナー援助受入れ側のレシピエントが一体となって面的な、その地域という面の意味でどうやっていったら貧困緩和できるかということをお互いに考える。そこで、例えば日本ですとドナーだけですけれども、タイだったらドナーの面と援助受入れの面とある。ベトナムも圧倒的に援助受入れの方が多いと思いますけれども、それなりに技術、資金の供与を周辺のところにやる機能が少しずつ大きくなっていくというふうな形で、重層的に連携をしていくということになるのかなと思いますけれども。
  13. 三浦有史

    参考人三浦有史君) お話をいただいて、地域戦略というのは非常に重要であるというふうに私も思います。ないよりはあった方がもちろん望ましいというふうに考えます。がしかし、それをだれが作って、その文書がどういう位置付けになるのかと、ODA大綱、中期政策、国別、その中間というふうにおっしゃいましたが。ということについては慎重に考えた方がいいのかなというふうに、つまり、いろんな援助関係組織があって、一方でいろんな構想、イニシアチブがあって、文書だけがこうたくさん並んでいるような印象を受けなくもないので。  それが一点と、もう一つは、地域戦略アジアASEANについて書こうとすると、どうしても対中安全保障という観点が必要になってこようと思うんですが、それを文書にしてODA大綱や中期戦略のようにオープンにするということがどこまでなじむのかなと。  そういう観点から、だれが作ってその位置付けをどうするということは慎重であるべきかなというふうには思います。
  14. 岡田広

    ○岡田広君 ありがとうございました。  それでは、教育分野の支援についてお尋ねをしたいと思います。  二〇一五年に向けて国際社会が目指すべき目標を示したミレニアム開発目標の八つの目標の中に、初等教育の完全普及の達成というのが掲げられています。食事にも困っているような国、低所得国は貧困削減が第一という考え方もあると思いますが、しかし、その国が自立して発展していくためにはやはり、米百俵の精神ではありませんけれども、教育、取りも直さず初等教育を充実させることが大変重要であると思っています。教育援助一つ取りましても、G8の中でも日本は〇・九%、ほかのG7の国々は約一・七%ということで、G7のほかの国々に比べても約半分ぐらいということで、小学校に行かない子供も、一九九〇年代という資料を見ますと、この九九年に比べてみると約二千万人減ったということはありますが、また、約七千七百万の人たちが小学校に行けないでいると。  こういうことを考えますと、来年、冒頭申し上げましたように、サミットの議長国として途上国支援の問題でもリーダーシップを発揮する必要性があると思っています。アジアということであれば、カンボジアやラオスなどASEAN新規加盟国に対する初等教育分野への支援を行っていますけれども、ASEAN内の格差縮小を図る上で底上げ的なこれは効果を持つということだろうと思いますけれども、今までの支援も踏まえて、支援の経過も踏まえまして、今後は、初等教育の完全普及に向けて、アフリカ諸国等も含めて支援の一層の拡充を行うということ、大変大事だと思いますし、ほかの支援国にも働き掛けをしていくべきではないかと私は思うわけでありますが、この教育分野への支援の拡充、特にこの初等教育、これについての、完全普及の達成という目標に向かってのお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。両参考人お願いいたします。
  15. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 今日の対象地域東アジアでございますけれども、例えばラオスの田舎の村の小学校に行った場合、それからアフリカの例えば砂漠の周辺の村に行って学校に行った場合、全く様子が違います。東アジアはどんな貧困なところでも、とにかく小学校に子供たちがたくさん来て群がっていて非常に目を輝かしているというのが、これが今先生も言われた、今後、貧困緩和、格差縮小する上での一つの大きな資産だと思いますけれども、初等教育を考えるときに非常に重要なのは、就学率を高めることよりも、途中のドロップアウト、脱落する率を下げるということだと思いますけれども、この脱落がなぜ起きるかというと、結局、親が学校に通わせることができなくなるという、貧困と非常に密接に関係しているので、教育だけでは一本立ちできなくて、初等教育をしっかり根付かせるためには、その一定の範囲で生活が成り立つようなための貧困緩和の支援を組み合わせて同じ地域でやらないと持続しないかなというふうに思っております。
  16. 三浦有史

    参考人三浦有史君) 下村先生意見に基本的に賛成であります。  例えば、東アジアに限ってみれば、ベトナム、ラオス、カンボジアは大変貧しい国ですけれども、ベトナムはもう自力でその整備が可能な水準にあると思います。ラオス、カンボジアはなかなかそういう状況にないのかもしれません。  日本の資金をもってこれを学校というハードをつくるということは不可能ではないわけですけれども、そこにちゃんとトレーニングされた先生を置いて、その先生の給料をずっと払い続けるということは当然ODAではできませんので、そういうことを考えていきますと、初等教育の普及というのは、目標として世界が掲げている、それは誠に正しいんですが、それをいかに達成するかということを考えていきますと、ODAでする部分と、一方でその貧困をなくす、それはつまり親に雇用の機会を与えてその就業所得を得るという、やっぱり民間セクターなりの投資が起こってそういうことが可能になると、そのバランスを常に考えないといけないのではないかなというふうに思います。
  17. 岡田広

    ○岡田広君 ありがとうございました。
  18. 藤末健三

    ○藤末健三君 民主党・新緑風会の藤末でございます。本日は、下村先生三浦先生、貴重な話をありがとうございます。  まず私は、下村先生に御質問したいことがございます。  昨年、内閣府が、外交に関する世論調査というのを行っておりまして、その中で、今後の日本経済協力在り方という調査の結果を見ますと、四五・二%が現在程度でよい、二三・一%が積極的に進めるべきであると、そして二二・一%がなるべく少なく減らしていくべきだという回答がございます。  一つ御質問がございますのは、ODAに否定的な立場を取る理由としまして一つございますのは、どのようなODA経済協力が行われているかが非常に見えないと、不透明であるというのが四九・一%ございます。そしてまた、我が国の財政状態が良くない中でODA途上国の支援をやるのかという意見が五七・〇%とございまして、私が思いますのは、下村先生資料の中でおっしゃっていましたように、独法化されたJICAの予算が、これ減らされるのではないかという議論はあると思います。ただ、私が思いますのは、やはり今のこの財政状況の中において、やはり明確なそのODAの効果、国益の観点からのその費用対効果みたいなものをきちんとこの国民に、有権者に、そして納税者に示すことが非常に重要だと思うんですが、その点について何かお考えをお聞きしたいと思います。それが一つでございます。  そして、二点目にございますのは、ODAに肯定的な意見としまして、途上国の安定に貢献し、世界平和に役立つというのが何と六七・二%ございます、約七割。で、下村先生が日経の記事で、我が国は兵器の輸出をしていない国であるから、そういう兵器を輸出していない国としてのODAを打ち出すべきじゃないかというふうに書かれておられました。私も同様に、日本国憲法の前文にございますように、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れて平和に生存できるようにするという、これを達成しますということが憲法前文に書かれているわけでございますんで、私は、その日本ODA理念、今いろんなことがODA大綱にも書かれてございますけれども、憲法前文にあるようなこの平和というものを打ち出してはどうかと思うんですが、その点につきまして御意見を伺えればと思います。よろしくお願いします。
  19. 下村恭民

    参考人下村恭民君) ありがとうございました。  世論調査については先生おっしゃったとおりの趨勢がずっと続いているわけですけれども、私はこの世論調査について少しちょっと視点を変えて工夫してみる必要があるんじゃないかなと思っておりまして、今あるちょっと調査をしておりますけれども、経済協力についてどう思いますか、あるいはODAについてどう思いますかという質問をする場合と、国際貢献、国際協力という言葉を使って同じ質問をする場合では、恐らく反応が全く違うんだろうと思いますね。  それで、やはり、今も言われましたように、経済協力、特にODA援助という言葉は、相当ダーティーイメージというか負のイメージで受け取られていると。それが国際貢献という言葉になると、あるいは国際協力でも恐らく相当違った反応があるだろうと思って、そういう今調査を別途しております。  同時に、そういう負のイメージがどういう媒体、どういう情報源から出ているのかという調査も併せてやっておりますけれども、これは費用対効果を明示的に示すということはそのとおりですけれども、それを政府の広報でやっても私は説得力は非常に薄いんではないかと。やはり一番反応がいいのは、どうもモニターのような形で現地に行って見ていただくというのが、そういう方は一番どうも反応がいいようで、後のですね。  やはり、広報の在り方も含めて、皆さんがどういう媒体に触れていて、そこからどういうイメージを得ているのかということが、結局みんなに費用対効果の正しい姿あるいは実態を示す上で重要な、そういう調査をする、把握をすることが重要だと思っております。  私の感じでは、マスメディアは否定的なネガティブな報道が比較的多いように思いますけれども、一般の人たちが更に否定的なイメージを受けるのがどうもNGOのウエブサイトであるという調査の感じも非常にいたしますので、その辺の情報源への適切な、あるいはバランスの取れた情報の提示ということも地道にやっていく必要があるんではないかなと思います。  それから、平和につきましては、平和構築という言葉は非常に今、旬の用語になっておりますけれども、しかし平和構築を熱心にやりながら途上国に兵器を売っている国が大きなドナーの中に今たくさんあると。そこをやはりもう少し、平和を乱すもとになる兵器、特に小型武器の、これは売る人がいるから買う人がいるわけであって、途上国が軍事予算が多いとかいうことを批判するだけでなくて、やはり何らかの形で売る方に網がかぶせられないかと、それが本当の今見逃されている平和構築のポイントじゃないかというふうに思っております。
  20. 藤末健三

    ○藤末健三君 下村先生、本当にありがとうございました。  確かに、モニターって僕も何かアイデアとしてはすごくいいと思いますし、あと、またカンボジアで今我が国が小型武器の回収プロジェクトをやっているじゃないですか。僕はああいうのも進めるべきだと思っておりますので、国会の方からいろいろ頑張ってやっていきたいと思います。  続きまして、三浦先生にお聞きしたいことがございます。  それは、先生が今東アジアにおいてODAをうまく戦略的に使い、そしてFTA関係とかを述べられておられますけど、私もやはりこのFTA、まあ日本ではEPAと、経済連携協定と言っておりますが、そのODAとの連携がやはり必要になってくるんではないかと思っています。  ただ、先ほど岡田委員からも御指摘がありましたように、今ODA仕組みがどんどん変わっていまして、一つ海外経済協力会議というのが総理大臣そして四大臣含めて動き出すということでございますが、そこでの議論を見ていると、余りこの経済連携協定というものとODA関係、そしてまたエネルギー安全保障、先生がおっしゃっているようなエネルギーの共同備蓄、食料安全保障、食料の共同備蓄といったような議論がほとんどされてないような状況でございまして、それをどうすれば進めることができるかと、総合的なODAのみならず、もっと広い視野での外交戦略をつくるにはどうすればいいかということについて、アイデアをいただければと思います。  私は、一つ期待していますのが、来年度の予算要求の中で、アジア版OECDといいまして、東アジアの国が集まりOECD的な研究機関をつくろうではないかということで、日本が三十億ぐらい出すという話がございますので、そういうものが機能していけば動くんではないかとは思うんですが、その点につきまして三浦先生の御意見をいただければと思います。お願いいたします。
  21. 三浦有史

    参考人三浦有史君) 非常に難しい問題をいただきました。  アジア版OECDは私も目にしておりますが、それがうまく立ち上がって機能すれば問題がもちろんないわけですが、ただ考えてみますと、アジア開発銀行の研究所も日本にあるわけです。そういういろんなところ、政府系のJICA、JBICにも研究所があり、外務省にも研究所があって、少なからずそういう考え、発想をお持ちの方がそれぞれ勤務をしておられると。  アジア版OECDの紙を政府のウエブサイトで見ましたときの私の印象は、この交通整理は一体どうなるんだろうと。もちろん、別の考え方として、それぞれが切磋琢磨してよりいいものを出すように競争すればいいという考え方も一方ではあります。ただ、そういうふうにうまくいけばいいんですが、そうではなくて屋上屋を重ねるようなことになりはしないかという懸念をむしろ私は深めております。  したがって、少なくとも予算運営の資金とするような団体については、交通整理をしてから、それぞれの業務で何を目指すべきかということをもう一回整理をした方がいいのではないかという印象も持っております。
  22. 藤末健三

    ○藤末健三君 確かに、御指摘のとおりかもしれません。私ちょっと個人的に思っていますのは、日本には今独立した外交の研究機関がないじゃないですか、正直申し上げて。ですから、それをまずつくるということもあるのかなということをちょっと思っておりますが、これはちょっと質問するとまた時間が掛かるので、次の質問に移らさせていただきたいと思います。  これは両先生にお聞きしたいんですが、やはりお二人、先生の御議論を見ていますと、私一つ感じていますのは、我々はやはり国会議員のこのODAに対する影響というのが非常に重要じゃないかなという気がしております。政治の主導によるODAの運用ということが非常に重要だと私は感じておりまして、また、御説明をお聞きしても思いました。  我々今このODA委員会ということでいろいろな議論をさしていただいているんですが、私は、ちょっと調べてみますとアメリカの開発援助庁、USAIDという組織がございますけれども、そのUSAIDの活動をだれが規定しているかということを見ますと、何と対外援助法という法律がございまして、そのODAのいろんな大きな枠組み、方針を議会が議論しているということ。まだちょっと条文まだ手に入れていませんので、細かい運営は分からないんですけれども、ということが、情報がございます。  そのようにODAと、そして議会との関係ということにつきまして、両先生のお考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
  23. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 議会の役割は大変重要で大きいという点は全く同感でございます。  ちょっと二点申し上げたいと思いますけれども、いわゆる基本法的なものを持っている重要なドナーと持っていない重要なドナー二つありまして、アメリカは、今おっしゃったアメリカは持っている方ですけれども、持っていないドイツのようなあるいはフランスのような国もございます。どちらがいいかというよりも、議会がどういうふうに機能をしているかということがかぎになるんだろうと思います。  企業としてはやはりどれだけ、特にパフォーマンスについて中途の段階のモニタリングと、パフォーマンスの事後評価について正確な情報を得て、どれだけチェックして今後改善に結び付けていくかというところに特に力を入れていただくと、そこのところが、事後評価も非常に外部の人も入れてたくさん行われておりまして、その情報を議会の方で、国会の方で包括的に把握していただいて、それについて問題提起を次々に出していただくということが一番重要なお願いしたい点じゃないかというふうに思っております。
  24. 三浦有史

    参考人三浦有史君) 御指摘いただいた点は、ODAをめぐる日本関係者の間では少なからず前から問題意識がある問題でございまして、アメリカ型にすべきだという人が日本の中にもいるわけですが、それが果たして日本の外交なりあるいはその中でODAが担う役割と果たしてマッチしているのかと。つまり、そういうことを考えると、私は個人的にはアメリカの議会がチェックしていくやり方は日本にはなじみにくいのかなという印象を持っております。  議会の役割については下村先生のおっしゃった意見に全く賛成でございまして、その前段の投入部分はやはり外務省なりあるいは新生JICAの頭脳部分を私は大きくすべきだというふうに申し上げましたが、やはりそこにかなり権限を与えて、あるいはもっと現場に権限を与えて自由にやらせたらいいのではないかと。その代わり、その権限を与えた分、しっかり評価をしますよ、そこを国民の前にきちんと出していきますよと。  費用対効果というふうに前にお話が出ましたけど、ODAはどうしてもその部分があいまいになりがちなんで、数字できれいにその企業の売上げが費用対効果に出てこない部分が相当あるわけですが、そこら辺を議会の判断を含めて国民の前にきちんと出していくという役割は、議会として私などはむしろ積極的にやっていただきたいというふうに思う次第であります。
  25. 藤末健三

    ○藤末健三君 もうあと時間が余りないので簡単にちょっとお答えいただきたいんですけれども、私は、今こうやって国会議員が、参議院議員が集まりましてODAの議論をしているわけでございますけれども、この議論した内容を何か報告書かレポートかにまとめて政府にぶつけるようなことを僕はすべきじゃないかなと思っております、正直申し上げて。  そういうことにつきましては、先生方お二人はどうお考えでしょうか。もう個人的な御意見で結構ですので、お願いします。
  26. 下村恭民

    参考人下村恭民君) それは大変結構なことだと思いますけれども、できれば非常に大きな、大所高所の総論と合わせてそのときそのとき少なくとも一つの具体的な、極めて実質的なポイントを具体的に入れていただくということが有り難いかなと思いますけれども。
  27. 三浦有史

    参考人三浦有史君) 下村先生と同様の考えでございます。
  28. 藤末健三

    ○藤末健三君 最後に。  下村先生三浦先生、本当に貴重な御意見ありがとうございました。また最後に、今回の私の質疑を手伝っていただきましたうちの事務所のインターンでございます秦祐一郎君にお礼を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。失礼します。
  29. 高野博師

    ○高野博師君 下村参考人三浦参考人に、貴重な御意見をありがとうございます。  私が質問したかったことはほぼ先生方の意見の陳述の中にありましたのですが、何点かちょっと確認をする意味で質問させていただきたいと思います。  ODA日本の外交の唯一の手段だということはもう議論の余地はないと思うんですが、ODAという言葉はかなり手あかが付いている、マイナスのイメージがあるということも事実だろうと思いますが、これ以上ODAを減らすということは、我が国の国際社会におけるプレゼンスを低下を招くという意味でも、もう限界に来ているのではないかなと思います。  外交力の強化ということも我が党としても一生懸命力を入れてまいりました。したがって、ODAを量と質という点から充実させるということは非常に重要であろうと思っておりますが、人間の安全保障等のきちんとした理念に基づいてやるということも重要でありますし、最近は国益とか戦略というような点にかなり重点が置かれておりますが、国益ばかりではなくて、地球益、人類益という意味での例えば温暖化対策ということも視点として入れる必要があるんではないかなと思います。今日のテーマであります東アジアの発展と日本ODAということでありますが、正に戦略と国益ということを考えると、東アジアに重点的にODAを供与していくということは重要であろうと思います。  そこで、東アジア共同体、これを形成する方向にありますが、その過程で日本はどんな役割を果たすのか、あるいは、中国との主導権争い等の政治的な側面もありますけれども、その中で、FTAあるいはEPAとODAとの関係、連携、これをどうしたらうまくやれるのかということが質問であります。経済のグローバル化、市場経済化の中で、格差という問題も起きている、あるいはテロというような問題も起きている、そういう中で、東アジアも国の間の格差が大きくなっている、あるいは国内的にも格差というのが大きくなっているという事実があるんだろうと思いますが。  ちょっとこれは余談になりますが、中国も格差問題を抱えていると、都市部と農村で十倍と言われているんですが、私が最近一番注目しているというか驚いたのは、中国は農民税を廃止したと。これはもう二千六百年前にできた、春秋時代にできた農民税を廃止した、そして農民の子弟の教育費を無償にしたと。これはすごいことをやるなと思ったんですね。これは、歴代の政権の末期には必ず農民の反乱が起きていたというような歴史的な事実も含めますと、農民税に頼らなくても中国はやっていけるだけの経済発展があったということと、もう一方では、胡錦濤国家主席の主導権は、もう完全に権力は掌握したのかなと。そういうことかと思いますが、日中関係改善された中で、戦略的互恵関係というのが日中関係の今キーワードになっていると思いますが、具体的にそれをどうするのかという中で、環境問題、エネルギー問題、こういうところがこの戦略的互恵の具体化の中身になってくると思いますが、中国に対しては、もうODAではない枠組みで環境協力をやっていこうということになるんだと思います。  それから、先ほどのEPAとODAの有機的な効果的な連携、活用という点で、じゃ具体的にプロジェクト、案件を発掘するのはどうするのかということでありますが、私も東南アジア国々へ行きますと、日本ODAに対しては中国カードを結構切ってくるんですね。中国はこういう分野をやってくれているけれども日本はやってくれないのかとか、中国はこういうかなりの量をやるけれども日本はというような比較をしたり、これに対しては、日本中国は違うんですよと、そもそも先進国と途上国という関係の中でODAの供与できる分野というのは全然違うんですよと、そういう説明をするんですが、なかなかそこは理解されてない。  そこで、現場ODAが、いろんなODA理念とかいろいろ議論の中で、実際に現地に行くと、ODAの案件というのは意外と単純なものしか出てこない。そこに戦略性があるかというと、必ずしもそうでもないと私は感じておりまして、それはやるかやらないのかというような感じでありますので、そのプロジェクトの形成、あるいはプロジェクトの創造、発掘、そこはかなり専門性というか、そういう専門的な人材がいないとなかなかいい発掘ができないんではないかなと思うんですね。そういう中での、さっき言いましたようなEPAとかFTAというこの連携の中で、どういう案件を発掘するかということは非常に重要だと思うんですが、そういう分野でかなり限界があるのかなと私は思っております。  そこで、お二人の先生にその東アジア共同体をつくっていく中でのEPAと、そしてそのODAとの連携、例えば農業協力をある国でやりましたと、相当そこの農業が発展しましたと、しかし、今度はEPAを結ぶ段階になって、今度は農産物が自由に入ってくると日本の農業が影響を受けますということになっているところもあるわけですね。すると、これは全然全く連携が取れていないということになると思うんです。こういう点についてどうお考えか、お伺いしたいと思います。
  30. 下村恭民

    参考人下村恭民君) いろいろ重要な問題を数多く指摘されましたので三点に絞ってちょっとお話ししたいと思いますけれども、一つ戦略ということですけれども、我々どうしてもODAの話をしていると、戦略とか国益とか援助を出す側の視点が非常に濃厚になってしまうわけですけれども、この援助の受け手と出し手というのはあくまでもパートナーなわけですから、やはり両方の視点が同じぐらいのウエートを持って考えられる必要があると。  そういう意味で、最近西欧型のドナーの発想に非常に近づいて、援助を出す側の戦略ということが非常に重視されるようになったのはやや危ないなという感じを持っておりまして、やはり援助を受け入れる側の立場に立って、できるだけその強みを生かすという、あるいは彼らの主体性を生かすということもバランスを取って行われる必要があるかなというふうに思っております。  それから二番目に、格差について触れられたわけですけれども、ASEAN国々ですね、特にタイとかインドネシアとかマレーシアが一九七〇年代、八〇年代に経済発展したころは非常に所得格差、地域格差について気配りをしておりました、指導者が。しかし、中国とインドはそれと全く違うと。まず成長して、それから分配するという感じに非常に近くなっていて、これはさっき三浦さん触れられましたけれども、かなりこれも危ういものを含んでいると思います。これはもう時代の流れではございますが、それだけに今先生が言われたその格差についての補正ということが援助する上での非常に重要なテーマになってくると思います。  それから最後に、地域協力ODA関係。これは三浦さんが先ほどかなり触れられまして、またそこについて御説明されると思いますので、私一点だけ申し上げますと、やはり国同士のバイの、二国間のFTAのようなものが非常に広がっていくと、そこではじき出されるのが結局、東アジアでいうとラオスとかカンボジアのような国々であって、結局それは魅力がないから二国間の枠内に入ってこないわけですけれども、そういうところにやはり参加資格を与えられるようにするためには結局援助しかないと。そのFTAとかEPAとかいうものについては、ODAよりもむしろ民間の役割の方が圧倒的に大きいわけですけれども、それに参加できるようにすることがODAの役目になるのかなというふうに思っております。
  31. 三浦有史

    参考人三浦有史君) 問題が非常に多岐にわたる御指摘をいただきましたので、何点か絞って。  一点目は、おっしゃったことの一つとして、農業支援をやって、その後に日本輸出した農産物は日本は受け入れてくれるのかという御指摘、全くそのとおりでございまして、順序としては、やっぱり質の高いEPAを結ぶということがまずある。そのためには、人の受入れと農業をどうするかというそこの日本の覚悟をきちんと示さないで援助しますよというのは、一方でブレーキを踏んで一方でアクセルを踏む、開発途上国の側から見ますと非常に矛盾した行動に映るというふうに思います。  プロジェクトの創造という、二点目、おっしゃいましたけれども、これもおっしゃるとおりで、私はやっぱり、この部分はなかなか霞が関の中央省庁とかあるいは国会の場で議論していても現場のニーズというのを把握することは非常に難しいですから、創造のためにやっぱり現地の機能を強化して現地の権限を大きくすると。  で、新JICAはそれの非常にいいきっかけになるんじゃないかというふうに思っております。是非ともそういう役割を、頭脳部分を拡大させることで新JICAに担ってほしいなと。逆に、それができない新JICAって何なんだと。言われたことを実行するだけの援助機関になってしまってはいけないというふうに思います。  最後は、EPAとODA関係ですが、いろんな関係があろうかと思いますが、今日の私の発表も、ASEANのどちらかというと後発国の視点から申し上げたつもりですが、EPAとODAがうまくいっているかいないかの判断基準一つとしては、ASEANの後発加盟国の意識がどうなっているかと。つまり、競争に参加するのは非常につらいので、できるだけODAをたくさんいただいてやっていかないと我々はやっていけないということになるので、そういうことを言い出すような状況は恐らくEPAとODAのいい関係が構築できていない。  やっぱり、ODAは必要なんだけれども、我々、その域内の格差を解消するのはODAではなくて、この国の経済民間投資中心活性化していくことによってその格差は縮まるんだと、その過程で必要であればODAによる支援をしてほしいというふうにもし彼らが言うのであれば、それは恐らくODAとEPAが非常にいい補完関係を築いているというふうに言えるんだろうと思いますね。  ちょっと抽象的な話でございますが、それを一つの価値判断に置くことはできるのではないかなというふうに思います。
  32. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございました。
  33. 大門実紀史

    大門実紀史君 今日は、お忙しいところありがとうございます。  私がお聞きしたいことは既にもう随分取り上げられましたんですが、今のFTAODA関係についてもう少しお聞きしたいといいますか、東アジア経済連携というのは私も重要だと思うんですが、FTAODAというのはおっしゃるほど結び付いて考えなきゃいけないのかなというふうに思ったりいたします。  FTAODA関係で、確かに、ODAで、円借款相手国インフラ整備すれば日本から輸出をしやすくなると、こういうことはあると思うんですが、一方で、今、高野先生から日本の農業ありましたけれども、相手国の農業を考えますと、この前のFTAもそうでしたけれども、相手国が農産物を日本輸出すると、これは大抵商品作物でございます。日本で売れるものを作ります。それを仕切っているのはメジャーのアグリビジネスが多かったりするわけですね。それで、その国の農民は自分のところの国の食料よりも売れるものを作り出すと。したがって、東アジアの食料自給率が今低下しているわけです。それと、なおかつそういう大規模生産やっていますから、農村での貧富の差が広がっていると、貧困が広がっているという関係になっています。  そこで考えると、日本ODAで農業の技術支援をやるとか自給率を高めるようにやろうとするとか、あるいは農村の貧困を打開するために援助するということとFTAとが矛盾する場合も出てきたりすると思います。  したがって、東アジア共同体というのは、広い概念とODAというのは重要に結び付くと思いますけれども、FTAODAというのを余り結び付けて考えると後で混乱もするんではないかと思いますが、その辺、また御意見三浦参考人の方に御意見あればお聞きしたいと思います。  もう一つは、下村参考人先ほど言われた中で、時間がちょっと少なかったんでよく意味が分からなかったんですけれども、制度的制約条件の克服というところで、権限を委譲すると、権限委譲の加速というところがあります。官庁から実施機関へ、さらに実施機関の本部から現場へというふうに御提案をされております。  これはちょっと具体的に聞けなかったんですけれども、この現場というのはどこのことなのか。例えば現地のJICAとかJBICのことなんでしょうか。私は余りそういうところに権限委譲していいのかなと思ったりもするところありますんで、そのことによって、もし違ったら説明してもらえばいいですが、現場権限委譲すればどうして効率化が図れるのかと、その辺ちょっと具体的に教えてもらえればと思います。
  34. 下村恭民

    参考人下村恭民君) ありがとうございます。  先ほど最後お話しした制約条件の緩和の中の権限の委譲ですけれども、これは一つは東京で中央官庁から実施機関にまだまだ委譲ができると思っております。例えば、無償資金協力もまあ六割と大づかみに言われておりますけど委譲される。それ、更に詳細に洗い出しをすればもっと大幅に委譲できるだろうと思いますし、技術協力の国際間の約束の仕方も工夫すれば更に仕事が減ると。  要するに、権限委譲するということによって仕事が減って、それによって限られたマンパワーを本来の仕事に振り向けるということできるようにするということですけれども、それで、それと併せて、実施機関は、東京で判断をすることが必要なものももちろんありますけれども、できるだけそれが適当な場合は現地に移すと。それはもう、現地が、現場が、途上国の首都にある事務所、あるいは事務所から更にそのプロジェクトの現場にいる人たちが要するに肌で触って足で立って状況を見ているわけですから、そういう人たちができるだけ意思決定できる範囲を高めるということが、結局適切な判断をし、迅速に判断できるということにつながるわけですね。  それで、やはり組織組織の間の情報のやり取り、受渡しというのが結局一番時間を食うわけですから、できるだけ当事者が意思決定ができるようにすると。ただし、御懸念のありますように、それで暴走されると困るということはあるかもしれませんし、稚拙な判断をされるのも困ると。しかし、それはあくまでも事後的にチェックしていって、組織的に改めるべき部分は改め、個人の属人的な意味で問題があればそういう人はそういう仕事から外すということで整理をしていくということだと思いますけれども。
  35. 三浦有史

    参考人三浦有史君) FTAODA関係で質問をいただきました。  日本として後で矛盾するようなことがある可能性もあり、余りここを強く結び付けるのはどうかというお話のように理解しましたが、今直面している問題ではないかなとおっしゃった点は、つまり、日本は今、EPAをフィリピンとかいろんなところと交渉をして、人の受入れをどうする、あるいは農産物の受入れをどうするということで、必ずしも相手国側の期待に沿うような条件は出しておりません。これは外交交渉ですから、初めのうちから手のうちを見せてやるというのは外交交渉の原則に反するものかもしれません。できるだけ手のうちを見せないで相手から有利な条件を引き出すというのが交渉の常套手段であろうと思いますが、私は、日本中国の存在を踏まえた上で東アジア経済統合においてリーダーシップを発揮すると、そういうもし意思を持つのであれば、そのEPAにおける外交交渉は、手のうちを見せないで相手から有利な条件を引き出すんだという交渉のスタンスはいささか間違ってはいないだろうかと。もうそういう意思を明確に持つのであればそこは思い切った踏み込みを行うべきで、日本においてそれなりの、農業をどうするんだ、人の受入れをどうするんだというその長期的なロードマップを日本国内においてしっかり作るべきだと。それがあって初めてODAとEPA、FTA関係が成り立つのだろうと。そこの関係が今あいまいなままに来ておりますので、FTAODA関係もどうしてもあいまいもことしたものにならざるを得ない状況我が国は今置かれているんじゃないかなというふうに思います。
  36. 近藤正道

    ○近藤正道君 近藤正道でございます。お二人の先生、貴重な御意見ありがとうございました。  質問が後になりますと、先の皆さんに問題一式、先に聞かれてしまいまして、私も今のFTAODA関係を聞きたかったわけでございますが、ちょっとこれ以上の私もネタがございませんので、それは終わりにさせていただきまして、極めて初歩的な質問を下村先生の方にさせていただきたいというふうに思います。  先ほどお話の中に、日本援助理念などあるのかという、こういうお話がございました。私は、理念はちゃんとあるんだろうというふうに思っておりまして、先ほどお話もありましたけれども、憲法の前文の中にきちっとそれが書かれていると。飢餓と貧困という、この撲滅と、それぞれの国で平和的に生きる権利、そのためにこの国はやっぱり努力をすると。この憲法の前文がこのODAの最高の言わば根本規範になっているんだろうと、こういうふうに思っております。そういう意味では、政府は憲法に拘束されるわけですから、そういう立場の援助をしっかりしなければならないと。これは正に政府の義務だ、憲法上の義務だというふうに思っております。しかし、ODAのすべてがそれでいくということは多分ないだろうと。  私は、言わばイメージとしては一階部分と二階部分がありまして、一階部分はそういう飢餓と貧困に対する人道的あるいは地球環境的な援助、言わば地球市民としての義務の履行と。そしてその上に二階があって、その二階は正に日本の独自のODA、ここは正に外交戦略の一環として、そして正に国益という立場を前面に出してやるべきそういう領域。だから、一階と二階、一階は普遍的な領域、二階はかなり国益、外交戦略と密接不離に結び付いて展開する、そういう二層構造になっているんではないか。  私は常に思っていることなんですけれども、ODAを、これは区別はなかなか難しいんですけれども、どっちのODAなんだということをそれなりに色付けをちゃんとして、白と黒でもいいですよ、これは言わば一階部分のODAですよ、これは二階部分のODAですよというふうにすれば、とりわけ二階部分のODAについてはそれは正にけんけんがくがくの議論が可能になるんではないかと。そういうところをごっちゃにしているからなかなかいつまでたったって、何のために援助をするのかとか、そういう議論が繰り返されると。国民の多くは、その一階部分の援助であれば私はそれなりに受け入れると。しかし、二階部分については、非常に不透明なことだとかいろんな絡みがあって、物すごくやっぱりうさん臭い目で見ていると。こんな経済状況の中で、財政状況の中で何でそこまでするのかと、こういう質問をやっぱりやってくるんだと思うんですね。  そこで、私は、そういうふうにきちっと識別をした上で国民の前に出したらいいんではないかと。そういう仕分をきちっとやれば、もっとすっきりして分かりやすくなるんではないかといつも思っているんですけれども、下村先生、どんなふうにお考えでしょうか。  先生の参考資料の中にも、国際社会との価値観の共有ということと日本独自の援助理念という二つの言葉を使って整理されておりますけれども、これは私が今申し上げたような一階と二階の話と通ずるようなものではないんではないかなと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  37. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 今おっしゃった、憲法の前文を引いておっしゃった先生のお考え、非常に感銘を受けました。それは、私もそういう考えは十分成り立つと思います。  ただ、私は飢餓と貧困を、途上国の飢餓と貧困を見捨てておけないので、それに対して支援するということが、慈善とかあるいはまあ富める者の義務ということでないと、そこがそうでなくて、そこで飢餓と貧困で終わりだと西欧と同じですけれども、そこをくぐり抜けた後はいずれは生活条件改善することを自分でファイナンスできるようにすると。そのためには輸出をしなければいけないので、どうやったら外貨を稼げるようにするかということを一緒に考えて、最後自立するというところに持っていくと。そこが日本独自のということなんだろうというふうに考えておりますが、そこはもういろいろな考え方はあると思います。  それで、二階建ての二階の方で強調された国益ですけれども、それは正におっしゃるとおりだという、そういう考え方も十分成り立つと思いますが、私は、国益というのが、やはり先ほど申し上げましたけれども、余りにも強調されると、援助の出し手の方の都合だけが先行するということで、これは私が申し上げても説得力がないので、リー・クアンユーが言っているこういう話をちょっと読ませていただきたいと思いますけれども。  ODAについて日本がやろうとしていることが、日本自身ではなく、むしろアジア諸国にとって大きな利益があるという点をきちんと説明し、納得させ、それによってアジア各国の信頼をかち取ることが必要でしょうと、日本はまだそれができていない。まだできていない国が国益を過剰にかざすと、非常に長期的な意味の国益を損ねるのではないかというふうに今危惧しております。
  38. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 三浦参考人、あれば。
  39. 近藤正道

    ○近藤正道君 いや、いいです、いいです。済みません。
  40. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) いいですか。
  41. 近藤正道

    ○近藤正道君 いいです。  私はODAの基本は一階部分だというふうに思っておりますし、二階はむしろこれは国益に資するという、そういうやつをはっきりさせた方が、国民の中で議論が活性化むしろすると、そういう意味で申し上げたわけで、国益を前面に掲げてやれというふうに言っているんではないんだということだけ一言申し上げておきたいと思います。  もう時間ですか。はい、済みません。ありがとうございました。
  42. 亀井郁夫

    ○亀井郁夫君 国民新党の亀井でございますけれども、今日は両先生にはいろいろと貴重な御意見をありがとうございました。私、最後でございますので、一点だけ教えていただきたいと思います。  それで、下村先生お話にも出ましたけれども、このODAが抱える問題で、賠償と準賠償が非常にもう、そういう考え方が非常に問題だと言われましたけれども、確かにそうだと思うんですね。特にアジア地域においては、特に東アジアについてはこういう問題は避けて通れない、しかもそれがはっきりしないままに、賠償か、賠償じゃなくて富める国として援助するんだということ、いろいろその辺をはっきりしないままにやっていたということが実態ではないかと思いますね。そして、特に中国については、もう今更、よその国を援助するようになったんだから、そこでその国まで援助するのはおかしいじゃないかという単純な疑問もあるわけであります。  そういう意味で、そういった問題を、賠償問題をはっきりさせないままにODAを続けることについては問題があるんじゃないかと思うんですけれども、こうした問題についてどのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。
  43. 下村恭民

    参考人下村恭民君) おっしゃったとおりだと思いますが、ちょっと確認ですけれども、特に中国を念頭に置いて今お話しになったということだろうと思うんですけれども、中国の場合は、私も十分な知識がないので申し訳ないんですけど、非常に外交の経緯というか、歴史で非常に複雑な難しい経緯があるので、今おっしゃったようなあいまいな部分を多く含めながら、日中国交回復以後、巨額の援助が出たということであろうと思います。そういう意味ODAの中でも非常に特殊な、韓国と併せて非常に特殊な部分ですので、なかなか難しい面もあると思いますけれども、今御指摘になった点はそのとおりだと思います。  非常に残念なことですけれども、中国に対する援助、個別の事業については、恐らく、かなりよく調べてみると効果を上げている部分が大きいと思いますけれども、それが先方の評価を得ることができず、あるいはそれがまた日本側の反発を生むというような悪循環に陥ったことも事実ですし、それは非常に残念なことではありますが、やはり長い間の、戦後だけでなくて長い間のいろんな複雑な事象の絡み合いの中で、恐らくセカンドベストをお互いが選びながら来たということの結果だというふうに私自身は一応考えておりますけれども、さらに、おっしゃったように、よく事実関係を調べて、忘れないで、いつもあいまいにしないまま、引き続き長い間お互いに意見を交わしていくということが重要なんだろうというふうに思っております。  ありがとうございました。
  44. 三浦有史

    参考人三浦有史君) 特にそのODAの歴史についての深遠な知識は私余り持ち合わせていないものですから申し上げることはないんですが、今のようなお話は、恐らく、でき得ますれば、我々、開発教育と言っていますが、高校なり中学の教科書とかでちゃんと取り上げられて、その問題意識が、教育課程終わったときに、日本の繁栄はアジアの繁栄なくしてあり得ないという意識を若い人が持ってくれるようになればいいのかなというふうに思います。
  45. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) これより十分程度参考人に対する質疑及び意見表明を自由に行っていただきます。  発言を希望される委員は、挙手をしていただき、委員長の指名を受けて御発言ください。  また、多くの委員に御発言いただきたいと存じますので、御発言はなるたけ簡潔にお願いをいたします。  それでは、発言を希望される委員の挙手を願います。  中村博彦君。
  46. 中村博彦

    ○中村博彦君 本当に、参考人お話を聞いておりますと、ODA予算の使われ方というのは本当に重要なんだなと、我が国の国民感情、また当事国での国民感情、それと同時に隣接国家の国民感情、この三位一体的な感情というものを配慮しなくてはいけないんだなというように感じました。  そこでお伺いいたしたいんですけれども、日本政府ODAの四原則というのがございますけれども、特に中国に対してはその四原則に反しておるところが大変多うございます。開発環境保護が両立されること、ODAが軍事的用途や国際紛争助長のために使用されないこと、ODAが大量破壊兵器やミサイルの開発・製造及び武器の輸出入のために使用されないこと、ODA対象国において民主化が促進され、市場型自由経済が発展し、基本的人権及び自由の保障がなされていることと、こういうような四原則がございますけれども、こういうような部分。それと、今お二人からお話を聞きましたけれども、本当にこの東アジアでも国の選別、事業選別というのが重要だと思います。低開発国が東アジアでも多くある。  そういうような意味合いで、この対中国への援助をどのようにお考えになるか、下村参考人三浦参考人にお聞かせをいただきたい。  それと、時間の関係がございますので、国民総生産、GNPの〇・七%が国連ミレニアムプロジェクトでは妥当でないかと言われておりますけれども、我が国の適正範囲というのはどのようにお考えになられるか、お二人とも簡単にお答えをいただいたら有り難いかと思います。
  47. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 後の、〇・七%も含めて、予算の規模あるいはそれが増減どちらの方向に向かっているかということだと思いますが、これは、財政とかODAの問題と同時に、日本が国際社会にどんなメッセージを発信するかということでもありますので、日本はこういうメッセージを発信しているんだという意思を持って予算を決めていただきたいというふうに思っております。  それから中国でございますが、御指摘の点はそのとおりだと思いますけれども、同時に、私、中国だけでなくていろんな国を見ると、パキスタンとかインドに対して非常に最近援助が、巨額な援助が出ております。その辺を、やはりこの四原則というのはある意味で政治的な条件付け、政治的なコンディショナリティーですけれども、政治的なコンディショナリティーを運用するということは非常に矛盾に満ちた形でやらざるを得ないということになるわけですけれども、同時に、政治的コンディショナリティー、この四原則を掲げるということはそれだけでも非常に難しいことなんだということを十分認識して、機械的な運用、機械的な適用は避けた方がいいのではないかと。  この大綱にも総合的に判断の上実施すると書いてありますので、総合的に判断するということは国会の正に役目だと思いますので、その辺、是非、パキスタン、インドも視野に入れながら総合的に御議論いただくということで妥当な運用ができるかなというふうに思っておりますけれども。
  48. 三浦有史

    参考人三浦有史君) まず最初中国についてでございますが、日本中国に行っておりますODA案件のかなりの部分がもう既に環境案件に移行しております。その一方で、御指摘のような中国に対するODAは果たして妥当であるのかという議論は、広く日本の中にも少なからず私はあるんだろうというふうに思っております。  そこで、下村先生の話と重なるんですが、私は、日本は原則を掲げてそれによってODAをしっかりと選別すべきなんだという考えの方がいらっしゃいます。要は、アメリカをモデルとしてそういうふうに白黒はっきり付けODAをすべきだという主張をなさる方がいらっしゃいますが、私はその考え方にどちらかというと懐疑的であります。つまり、アメリカのような世界のリーダーたる自覚と、ほかの国のそういう意識が、それを認めるという意識のない日本がアメリカと結局同じように立ち振る舞えるかというと、資源もない、ほかの国との相互依存関係の中で繁栄している日本がそういう立ち振る舞いはできないだろうと。したがって、好むと好まざるとにかかわらず、総合的に判断するという言葉がそこに入っているんだろうというふうに思っています。  二点目の、そのミレニアム目標の〇・七%ですけれども、これは投入ベースの話です、予算幾らという。国際場裏で日本が声を出してもなかなかそれが通りにくいという問題はあるのかもしれませんが、でき得ますればこういう投入ベースの議論からアウトプット、成果ベースの議論に、このミレニアムもそうですが、サミットも移行していくべきなんだろうというふうに思います。  重要なのは、下村先生もおっしゃいましたけれども、投入をしたから必ず成果があるとは限らないので、こういう成果を出すんだというその意思をしっかり示してそこにどう貢献するか。それは、金額はもちろん重要ですけれども、金額以外、でないところの貢献もたくさんあるわけで、そこの部分で日本はより強いメッセージを出すことで、仮に何%が適当かというのは私もよく分かりませんけれども、金額がほかの国より劣ったとしてもその辺でカバーできる余地は私はあるのではなかろうかというふうに思っております。
  49. 中村博彦

    ○中村博彦君 最後
  50. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 時間がありませんので。  江田五月君。
  51. 江田五月

    ○江田五月君 民主党・新緑風会の江田五月でございます。  今日、お二人の先生方、貴重な御意見ありがとうございました。もう時間も過ぎているので簡単に申し上げますが、下村参考人卒業という問題提起、それから三浦参考人の補足の中にある、今もおっしゃいましたが、投入ではなくて成果という問題提起、共通をしているところがあるだろうという気がしますが、問題は卒業して何になるのか、成果というのは何をもって評価するのかというところで、最終的には、やはりお互い国際社会をつくっているその国際社会の構成員として国際社会をうまく動かしていく、そういうそれぞれの国なり国民になっていただくことだろうという気がするんですね。  そうしますと、やはり先ほどの四原則もそうですが、四原則はあくまで日本が出すときのこちらの基準ですけれども、もっと進んで、例えば草の根無償なら草の根無償でプロジェクトをつくるときに向こうの住民の皆さんがどれだけそのプロジェクトに入ってきているのか、あるいはこちらがそのプロジェクトを実施するときにどれだけ日本の若者がそこへ入っていっているのか、それによってどれだけこの国際社会の中で人の交流ができてきて、そういう人がどれだけ基本的人権とか民主主義とかいうことについて素養を持って民主主義の政治の動かし方を上手に動かしていけるようになっていくのかと、そういう息の長いプロセスではないかという気がするんですが、そんな意味で、ODAの実施過程でNGOの皆さん、これは現地もそうだし日本もそうだし、こういう皆さんがどれだけかかわっているかということをひとつ重要に考えていくべきではないかという気がするんですが、簡単で結構です、お聞かせください。
  52. 下村恭民

    参考人下村恭民君) 今先生おっしゃった指摘は全くそのとおりだと思います。  それで、最後の点ですが、NGOですけれども、ODAはあくまでも相手国政府をパートナーにして進めていくわけですけれども、それが限界があるということは、非常に大きな限界があるわけで、もう一つパートナーを、NGOというパートナーを見付けて参加を促すという形で、参加って、先方の人々の参加を促すという形で、二つのパートナーを巧みに有効に使って、その長所を生かしながら援助を進められれば少し良くなるかなと思いますけれども、NGOだけではやはり先方の行政、政府機能が育たないということになりますから、やはりパートナーは二つあって、それが両立をしながらいくということが目標、難しいですけれども、目標だというふうに思っております。
  53. 三浦有史

    参考人三浦有史君) 基本的に下村先生のおっしゃったのと同じで、ASEANのベトナムとか状況を見てみますと、現地でベトナム政府世界銀行、ADB、日本政府、その他の欧米ドナー、あるいはNGOも入って、あるいは現地の関係者の団体も入っていろんな会議が催されております。おっしゃったようなことは一部の地域ではかなり動いておりますので、そういうものを一つのモデルケースとして世界に広げていくと、それを日本がどうしたらうまく動くんだということを世界説明していくというようなことも重要かなというふうに思います。
  54. 江田五月

    ○江田五月君 終わります。
  55. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 予定の時間が参りましたので、これをもちまして参考人に対する質疑及び意見表明を終了いたします。  参考人方々一言ごあいさつ申し上げます。  本日は長時間にわたり大変有益な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございます。当委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時十三分散会