○
大久保勉君 まだ非常にあいまいもことしていまして、もう少し理論的に若しくは
リスクファクター別に分析した方がより理解が進んでいくと思いまして、まず
一つの資料を作ってまいりました。
皆様の方に渡しています資料で、運用利回り、合計特殊出生率と所得
代替率の関係、
平成十六年財政再計算に基づく分析。この資料といいますのは、厚生労働省に計算をお願いして、厚生労働省から出てきた資料であります。ただ一点だけ私の方で変えた部分は、①の五%上昇した場合、二〇ポイント上昇になっていますが、元々の資料は五九%でした。これは、金利が上昇した場合に最低所得
代替率が上昇しますが、五九%がキャップになっているということで五九がありましたが、このキャップを外しましたら二〇%に値するというものです。
まず、前提に関して申し上げますと、物価上昇率が一%、賃金上昇率が二・一%、運用利回りが三・二%で財政再計算がなされております。
なじみが深いのが②の部分です。合計特殊出生率と所得
代替率の関係ということで、これはよく公表されてもうおなじみの数字でありますが、二〇五〇年の合計特殊出生率によってどのくらい最終所得
代替率が変わるかということがこの表です。
例えば、中位推計でもし出生率が一・三九でしたら五〇・二、つまり、現役世代の所得の五〇・二%年金でもらえますよと、こういった考え方です。ところが、出生率が一・一〇まで下がっていたケースでしたら、五〇%を割りまして四六・四%しかもらえないという
状況です。ですから、国を挙げて少子化
対策をしないといけないと。もし少子化
対策の結果出生率が一・五二まで上がった場合は、五一・七%ということになっています。この数字は極めて重要な数字ということで、政府が一丸になって何とか少子化
対策をしていこうということで今行っている数字だと思います。
ちなみに、国の少子化予算は一・七兆円というのがさきの厚生労働省での質問で返ってきました。つまり、一・七兆円掛けまして少子化
対策をした結果、二〇〇五年度が一・二六の出生率が二〇〇六年には一・三二、まあ〇・〇六ポイント上がったという
状況です。ですから、出生率は上げていくことは重要ですが、その予算が一・七兆掛かったということです。
それに対して、運用利回りと所得
代替率の関係、これは意外と議論されていないんです。私は、極めて重要だということでこの数字を出してもらいました。
もし、運用利回り三・二%と推定していますが、一%上昇したらどのくらい上昇するか。これは、人口推計を基準ケース、中位ケースが一・三九のときに五〇・二%になっていますが、これに対して三・二%の運用が四・二%まで上がった、つまり一%上昇した場合は四ポイント上昇しますと。つまり、五四・二%の所得
代替率になるという数字です。非常に大きいんです。二%でしたら当然八ポイント、つまり一%当たり四ポイントの効果なんです。ですから運用利回りを上げないといけないですねと。日銀の
金融政策というのは年金に多大な
影響をしているわけなんです。
どうしてこれだけ大きいかといいましたら、年金というのは百年安心、百年間で均衡水準になっています。私は、百年安心というよりも今の百年間飛ばしている、百年飛ばしと思っていますが、百年間で計算していますから運用利回りと最終所得
代替率の関係が極めて大きくなっています。
ちなみに、②の推計を見てもらいたいんですが、少子化進行ケース、一・一〇の場合でも、金利が、運用利回りが〇・九五%上がりましたら最終所得
代替率を四六・四%から五〇・二%まで引き上げることができます。さらに、一・三二五%運用利回りが上がりましたら、少子化改善ケースと同じ五一・七%を維持することができます。もちろん出生率は一・一〇であったとしてもということです。ですから、運用がどれだけ重要かというのは是非認識してもらいたいんです。
下の方にまとめとしまして、合計特殊出生率が〇・一上昇すると所得
代替率は一・二ポイント
程度上昇すると。特殊出生率〇・一に相当する運用利回りといいますのは〇・三%です。私も運用の現場におりましたから、〇・三%運用利回りを上げることは比較的簡単です。ちなみに、一九七〇年代の長期金利の水準は七%台でした。二〇〇〇年代の金利水準は一・五%前後ですから、六%金利が下がっています。逆に、七〇年代と同じような金利水準に戻しましたら五%上昇したケースに近いように最終所得
代替率は相当の上昇をします。もちろんこれは、運用利回りが六%
程度上がった段階では賃金上昇率もありますから若干相殺はされますが、いかに運用利回りが重要かと、つまり日銀の政策がいかに重要かということなんです。
これまで、日本
銀行としては預金の金利に関してはおっしゃっていました。また、さきの衆議院の古本
委員の質問によりましては、家計というのは住宅ローンが多いですから、金利を上げた場合は利払いが増えて景気に、消費にマイナスの
影響があるといった分も議論されていたんです。ここで議論したいのは、日銀の金利政策が年金に
影響するということなんです。
では、どのくらい
影響するかに関してここで御説明します。
現在、公的年金の運用
金額は百五十兆円です。そのうち八〇%は国内
社債で運用しておりますから、金利が上がりましたら並行的に上がっていきます。百五十兆円で八〇%ですから、百二十兆円の部分は金利に連動します。もし金利が一%上がりましたら、年間一・二兆円の運用利回りの運用益が上がってくるんです。それが十年間で十二兆円になりますから、無視はできないと思います。さらに、公的年金以外には年金の二階部分とか三階部分があります。これは厚生年金基金だったり
企業年金基金です。資金量は膨大です。ここも国内債で運用している部分が多いですから、金利に連動する分が多いと思います。
ですから、日本
銀行が低金利政策をすることによって年金の運用利回りが下がり年金財政が悪化、そして年金に対する不信、消費が低迷すると、こういったパスもあると私は思います。この点に関して
福井総裁の御認識はどうか、確認したいと思います。