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参考人(青木宏之君) 御紹介いただきました青木でございます。私、全国
中小建築工事業団体連合会の会長代行を務めさせていただいています。
今回の
法律案に賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
我々団体は、通称、長いもので、全建連という言葉を使わせていただいています。全国の
中小の工務店の経営者の団体の全国組織でございまして、現在、五十三団体、およそ七万三千社が所属して、地域に密着して木造の在来工法を主流に、日本の住まいを守るとともに大工技能者の育成を行っておる団体でございます。
ここで、なぜ今回の
法律に賛成したかを述べる前に、皆さん方は工務店という組織がどういうふうに印象されているかが分かりませんので、我々の全建連の所属する大体の工務店の像をちょっとここで述べさせていただきたいと思っています。
私も実は工務店を経営しておりまして、三代目でございます。昨年から四代目に移りまして、あと数年で創業以来百年という歴史で、ちょうど私の
会社が、祖父の時代、それから父親の時代、それから私の時代、それから息子の時代と、日本の
住宅史の変遷にちょうど合致しているような形なので、その辺を踏まえまして
説明をさせていただきます。
まず、祖父の時代として戦前。戦前には工務店という名前は、まあ竹中工務店というのがたまたまあるんですが、ほかには一般には工務店という名前はなかった時代だったと思います。一般的には棟梁とか番匠だとかという言葉で呼ばれまして、大工と何が違うかというと、人を使って、数人の職人を使って、そして左官屋さんだとか材木屋さんだとか屋根屋さんと、そういう人たちと一緒に協力、今と比べるともう圧倒的に少ない職種の協力の下に家を造り、そしてお客さんからは、お客さんも施主という言葉を使いまして、お客さんから指名されて家をメンテナンスをしたり、それで地域材、お客さんが集めた材木を使ってうちを造っていると、こういう時代が祖父の時代でございました。いまだに、ですからそのころ造った本当の
意味での在来工法のうちはまだ残っております、私の
会社。地域に対しては、人がいて職人がいるんで、まあ地域の冠婚葬祭の担い手であったというのが私の印象です。
その後、戦後になりまして、一式請負という
制度ができまして、棟梁から工務店の社長という名前でお客さんとの折衝に当たって、そして職人と一緒に仕事するというような、こんな時代になりました。戦後は、小さなうち、もううちでも十坪、十三坪、十五坪というようなうちを、家が足らないということで二十五年から金融公庫の融資と、それから当時、今もう三つともないんですが、殖産、電建、太平
住宅という割賦
会社ですね、そちらのローンというか、今で言うローンですね、そこから
お金を借りた人たちが大量にうちを造った時代だと思います。社長、棟梁なんですけど社長という名前で呼ばれた、まあ私の父親なんか社長と呼ばれまして、そしてお客さんとの打合せをするために現場では番頭と称して手配をする、今で言う
監督ですね、そんなような役目の人間が生まれた時代です。
そして、大体昭和四十年ぐらいになりますと、これ私の時代なんですが、職人以外の出身の工務店のおやじ、私も含めまして、そういう人間が増えてきました。その時代とともに建材メーカーだとかほかの業界から入ってきた人たちが
住宅メーカーと称してうちを造り始めました。多くの大工、工務店はそれをまねをした時代がありました。要するに、建材で造るうちというのは一般の
消費者にとってもきれいだとかモダンだとかという形で、それをまねした時代が続きました。そして、元々工務店という組織は家を営業して売るという、こういう土壌がなかったんで、うちを造るということに特化していましたんで、そこのところでかなり侵食されたというか、我々のサイドからいくと侵食されて、そして
住宅メーカーの下請として存在するという組織ができました。これがずっと続いていまして、後で申し上げますが、このままの土壌が続きますと大工職人を育成するという工務店の本来のところが、皆さんも御存じのように
住宅メーカーというのは全くその
部分は投資しませんので、その辺のところが危ういなと私自身は常々思っております。
そして、二〇〇〇年ぐらいから、今まで造る側の論理で全部造ってきたんですが、ここに
消費者という
考えができまして、
消費者、要するに建てられるお客さんについてどう
考えるか、保証するか等ですね、そういうような時代になりました。これは多分主に私の息子が担当するんだと思いますが、若い
消費者がやっぱり情報をたくさん持った人たちが工務店に頼み始めました。
そして、このころ、
平成十二年に
品確法ができました、品質確保促進法ができました。
消費者のための性能とか保証とか安全というような要求が工務店にされるようになりました。これが今回の
法律につながるんですが、住まいを造る元請として工務店が仕事をする場合には契約がどうあろうと、どういう条件だろうと十年間の
瑕疵保証というものが義務付けられました。そして、この
保険制度、今回の
保険制度があるまでは、人によっては私が保証しますから大丈夫だとお客さんに胸を張って言っていられる方もいるし、それから
住宅メーカーなんかは規模だとかいろんなことを表に出しながら言っているという形。このときに我々全建連は財団
法人住宅保証機構と連携しまして、そして地域優良木造
住宅、これ略語でちきゅう
住宅という言葉を使っていますが、高品質の
住宅を開発し、そして自前の検査員を育成して、そして第三者検査を導入しまして、特定団体として保証機構に
保険料の割引をお願いしまして、そして
保険付きの
住宅を造り始めました。昨今、年間で三千棟ぐらいを造っているという経験があります。この経験に基づきまして今回の
法律案を
考えているということです。
工務店にとっては、この
保険付きの
住宅のメリットは、万が一
瑕疵が発生しても
保険が
適用されるという
意味と、それからもう
一つ大事な
意味として、高品質の仕様の、いい性能を持った
建物が我々工務店、
中小工務店も造れるんだということを
消費者にアピールするという、これは勉強会を通じまして営業政策上にも非常にアピールするというふうな形で、この二つが
消費者に対して安心につながるということになると思います。
今回の
法律を全建連として解釈しますと、まず
一つとしましては、
住宅メーカーと同じ土俵で仕事をできるということで、これは全戸
適用になりますんで、
住宅メーカーだろうと
中小の工務店だろうと同じ
法律を
適用されますんで、今まで、時としては
瑕疵に対する保証の
部分で
住宅メーカーが規模だとか信用だとかという面で営業政策上攻めていた
部分ですね、工務店に対して、その辺のところが同じ土俵で仕事ができるということ。
それから、全建連は住団連という全国組織の一員ですが、住団連の方が心配を最初からされているように、
モラルハザードの問題なんですが、工務店というのは、地域に密着して、そこで
家族も住んで兄弟も住んで友人もいるという状態でずっと何とか生き残ってきた工務店、小さな組織です。そこでもし
モラルハザードに
関係するようなことをやったときには、やっぱり私個人で
考えても失うものが余りにも大き過ぎるんで、一般的にはやらないと私は思っています。これも皆さん方に、
中小だから危ないとかという印象は是非ぬぐい去っていただきたいと思っています。
そして、とはいえ、我々の仲間には、例えば七十代で後継者がいないという工務店の経営者がおります。そうすると、その七十代の方が十年間私が保証しますとおっしゃっても、若い
消費者の方は、十年たつと八十幾つだという形で、そういう問題が出てきます。それで、そういう方も、後継者がいなくてもこの
保険制度が
適用されますと、我々仲間でそれを引き継ぐというようなことも今後
考えられるんじゃないかということで、是非この
法律が通ればいいなと思っています。
それから、もう
一つとしては、我々、やっぱり全員がこの
法律に安泰して、そのまま
適用されるからいいやという形では残れないと思っています。ですから、やっぱり我々も切磋琢磨して勉強しまして、そして団体として、それから技術とか技能とかという水準を高めまして、団体
適用とされることで
保険料が安くなるという努力目標を是非ここで加えていただければ、我々は一生懸命努力してやっていきたいと思っています。
以上が今回の
法律に賛成する理由でございます。
最後に、やっぱりこれだけは言っておきたいんで、団体連合の会長として、第一級の技能者を育成しているのは
中小の工務店であるということをまず申す。それから、地域のボランティアも担っているのは私の知っている限りではやっぱり
中小の工務店がかなり担っている。ですから、
中小工務店が元気にならないと日本の地域社会は良くならないと私は常々思っていますので、我々も努力しますが、先生方も是非この
法案を通しまして御協力をお願いしたいと思います。
以上です。ありがとうございます。