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犬塚直史君 そういう細かい例のもう
一つとして、例えば前車輪の軽い接地とさっきのWOWの不作動というところも、非常にこれも面白い部分なんですけれども、つまり、
飛行機が後輪から着地をして前輪が着くと。前輪が着いて一秒たったらこの前輪を動かしていいよと、だから真っすぐ行くのに役に立つんだよということなんですけれども、この機械によると前輪が着いていなかったというんですけれども、実際は前輪着いていたんじゃないかと。そのために、一生懸命いろいろ
パイロットが元に戻そうとしても、前輪が軽く接地していたために滑走路外に出てしまうことを防げなかったということがここに書いてあるんですね。
報告書の二十五ページです。前脚柱が充分に圧縮されず、前車輪のWOWセンサーは接地を検知するに至らない状況であったものと考えられると、こう二十五ページに書いてあるんですね。まあこんなこともあるのかなと思います。あるいは、その下に書いてあるんですけれども、ステアリング機能の不作動が本重大インシデント以前に八件発生していたが、抜本的な対策を講じておらず、ステアリング・ライトが点灯した
原因等についても十分に探求はされていなかったということなんですね。
何を言いたいかといいますと、またこの図をちょっと見ていただきたいんですが、
事故調査をするに当たって今申し上げたように推定
原因というのはたくさんあるわけですよね、物すごい一杯推定
原因があると。例えば、そのうちの
一つは、
機長のブレーキ操作の量が足りなかったんじゃないかと。じゃ、何でそんなになったかというと、どうも
機長が足の置き方が悪かったんじゃないかと。かかと、足を着けていたからいけないんじゃないかと。あるいは、コー
パイロットが六十ノットのコールをしなかったということも書いてあった。あるいは、マスターコーションライトが点灯したのをコー
パイロットがコールしなかったというのも推定
原因の
一つ。あるいは、今申し上げた前車輪の軽い接地がWOWの不作動によって検知できなかったんじゃないかということもあると。あるいは、そういう機械的なこともあれば、人為的なこともあれば、トレーニングのこともあれば、マニュアルを読んでいなかったということもあれば、もう何しろ無数にあるこの推定
原因の中で
一体何が本当の
原因かというのは非常に難しいんですね。
何でこんなことを言っているか。ここの黒い網掛けてある犯罪捜査、実はこの
事故調査の大きないろいろな推定
原因の中で犯罪捜査というものがあって、犯罪捜査はもちろん法令遵守と、法の執行の部分ですから、これはもうあくまでも厳格な証明が必要なわけですよね。そういう犯罪捜査と
事故調査の
関係が
日本の場合はどうも逆転していると。
つまりは、今回の出たばかりのこの判決なんですけれども、
JALの七〇六便、これは二〇〇七年の、今年の一月九日、名古屋高等裁判所で最終的に無罪判決が言い渡された事例であります。この判決の中をちょっと読ませていただきます。これは、第一審で無罪になって、それを上告しまして、高裁で今年もう一度無罪になったという判決なんですけれども、ちょっと読みます。
原審公判における各供述、これは検察官に対する供述です。検察官の
質問に端的に答えず、証言を実質的に回避しようとする意図がうかがわれ、真摯性にも欠ける上、それぞれの
日本航空株式
会社内での立場、同僚である被告人への配慮、被告人が有罪判決を受けることによる自社への悪影響、捜査段階で被告人の注意義務を基礎付ける事実について積極的に供述したことへの負い目や、自己保身から真実を供述できない状況にあることがうかがわれるのに対し、上記各調書、これは裁判所ではなくて警察が取った供述調書のことなんですね。この供述調書における同じ両名の供述は、ほかの文書とも中核部分において符合しており、特に信用すべき状況の下にされたものであると認められるのであってというのが上告をした理由なんですよ。
つまり、これ、私何言いたいかというと、つまり、こういう供述をすることは犯罪捜査にあっては当たり前のことなんですね。黙秘権がありますし、そして本人に不利になることは別に述べなくてもいいわけですよね。ですから、罪の有無を判定するために黙秘権が認められている、しかも本人に不利になることを述べなくてもいいというこの枠内で行われる犯罪捜査の中で、
事故原因を
究明して将来の
事故防止につなげていくということ自体にこれは無理があるんですよ。
そこで、今日はせっかく来ていただいております
JALの
西松参考人に御意見を
伺いたいんですが、特に高裁でこのような判決が出たわけですが、警察あるいは今までの
調査の中で十分な
事故防止に向けた
調査が行われるというふうに感じておられますか。